(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2組のランプユニット集合群が備えられ、前記各組のランプユニット集合群に、ハイビームを照射する2つのハイビームユニットがそれぞれ備えられている車両用前照灯装置において、
前記2組のランプユニット集合群のうち、一方の組におけるランプユニット集合群では、一方のハイビームユニットが、ハイビーム照射に基づき、第1配光パターンを形成するように設定されていると共に、他方のハイビームユニットが、ハイビーム照射に基づき、前記第1配光パターンに対して並設される第2配光パターンを形成するように設定され、
前記2組のランプユニット集合群のうち、他方の組におけるランプユニット集合群では、一方のハイビームユニットが、ハイビーム照射に基づき、前記第2配光パターンを形成するように設定されていると共に、他方のハイビームユニットが、ハイビーム照射に基づき、前記第1配光パターンを形成するように設定され、
前記一方の組におけるランプユニット集合群の前記一方のハイビームユニットに、該一方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第1配光パターンを水平方向に移動させるための第1配光パターン用移動調整手段が、前記一方の組におけるランプユニット集合群の前記他方のハイビームユニットに対して独立した状態で関連付けられ、
前記他方の組におけるランプユニット集合群の前記一方のハイビームユニットに、該一方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第2配光パターンを水平方向に移動させるための第2配光パターン用移動調整手段が、該他方の組におけるランプユニット集合群の前記他方のハイビームユニットに対して独立した状態で関連付けられ、
前記第1配光パターン用移動調整手段が、前方対象物が存在しないとき、前記一方の組におけるランプユニット集合群の前記一方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第1配光パターンを、該一方の組におけるランプユニット集合群の前記他方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第2配光パターンに対して、その第1、第2配光パターンの並設方向内方側において重ねた状態にするように設定され、
前記第2配光パターン用移動調整手段についても、前方対象物が存在しないとき、前記他方の組におけるランプユニット集合群の前記一方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第2配光パターンを、該他方の組におけるランプユニット集合群の前記他方のハイビームユニットがハイビーム照射によって形成する前記第1配光パターンに対して、その第1、第2配光パターンの並設方向内方側において重ねた状態にするように設定されている、
ことを特徴とする車両用前照灯装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜
図3において、符号1Aは、第1実施形態に係る車両用前照灯装置を示す。この車両用前照灯装置1Aは、2組のランプユニット集合群として、左前照灯(一方の組におけるランプユニット集合群)1Lと、右前照灯(他方の組におけるランプユニット集合群)1Rと、を備えている。この左前照灯1Lと右前照灯1Rとは、車両前部に車幅方向両側において取付けられており、その両者1L,1Rの構成は、車幅方向中央部を基準とした対称的な関係の下で同じ構成とされている。このため、以下、左前照灯1Lを中心として説明し、右前照灯1Rに関しては、特徴的な部分のみを説明し、その他の部分については、
図3等において、左前照灯1Lと対応関係にある同一構成要素と同一符号を付して、その説明を省略する。この場合、左前照灯1Lの要素に添字として「L」が付されたものに対応する要素については、対応関係を明確にすべく、添字として「R」を付す。
【0015】
前記左前照灯1Lは、
図1、
図2に示すように、その外観が、前方が開口されたランプボディ2と、そのランプボディ2の開口を覆う前面カバー3とにより形成されている。
【0016】
前記ランプボディ2は、
図2に示すように、上下方向に起立する背壁部2aと、その背壁部2aの周縁部から前方に張り出す周壁部2bと、により構成されている。背壁部2aは、一定高さを維持しつつ横方向(
図1、
図2中、左右方向)に延びており、その背壁部2aには、その横方向内側部分2aa(
図2中、左側部分)とその横方向外側部分2ab(
図2中、右側部分)との間において段差部2acが設けられ、背壁部2aの横方向外側部分2abが背壁部2aの横方向内側部分2aaよりも後方(
図2中、上方)に引っ込んでいる。周壁部2bは、背壁部2aの横方向外側部分2abが横方向内側部分2aaに比して後退した位置に位置されていることに伴い、周壁部2bの横方向外側部分2bbが横方向内側部分2baよりも後方に引っ込んでおり、その周壁部2bの横方向外側部分2bbは、横方向内側部分2baに比して前方に向かうほど横方向外側に開くように傾斜されている。この周壁部2bは、背壁部2aと協働して収納空間4を区画しており、周壁部2bの先端部は、横長形状の開口5を区画している。
【0017】
前記前面カバー3は、
図2に示すように、前記ランプボディ2の周壁部2b先端部に対して着脱可能に取付けられている。この前面カバー3は、ランプボディ2の開口5に対応して横長形状とされており、前面カバー3は、横方向内側から横方向略中央付近まで略横方向に延び、略横方向略中央付近からは横方向外側に向かうに従って後方に傾斜ないし湾曲されている。これにより、前面カバー3とランプボディ2とは、横方向内側から横方向略中央付近までは前後方向の長さを一定に維持しつつ略横方向に延び、略横方向略中央付近から横方向外側にかけては後方にシフトした灯室6を形成している。この前面カバー3は、透光性を有する材料をもって形成されており、その灯室6において発光する光は、前面カバー3を介して外部に照射される。
【0018】
前記灯室6内には、
図2、
図4に示すように、板状の金属製支持部材(例えばアルミダイキャスト製品)7が配設されている。支持部材7は、ランプボディ2の背壁部2aにエイミングスクリュ8a、エイミングピボット8b、レベリングアクチュエータ8cを介して支持されており、その支持部材7の板面は、前後方向を向きつつ、背壁部2aから前方側に離間された状態で配置されている。支持部材7には、該支持部材7を階段状に折り曲げることにより、第1〜第3段部9〜11が形成されており、その第1〜第3段部9〜11は、横方向外側に向けて順次、後方にやや後退しつつ並んでいる(
図2参照)。第1段部9、第2段部10、及び第3段部11のうちの横方向内側領域部分11aは、その各後面7a(
図2中、上面)が、平坦面とされた状態で後方に向けられており、その各後面7aには、熱を放熱するための放熱フィン12がそれぞれ取付けられている。第3段部11のうちの横方向外側領域部分11bについては、その上下方向内方部分が切り開かれて、前方に突出する上下一対の支持板部13a,13bが設けられており(
図5参照)、この一対の支持板部13a,13bは、上下方向に一定間隔をあけつつ対向した状態で配置されている。この一対の支持板部13a,13bのうちの下側支持板部13b外面にはスイブルアクチュエータ(第1配光パターン用移動調整手段)14Lが取付けられており、そのスイブルアクチュエータ14Lの出力軸14Laは、下側の支持板部13bを貫通して上方に延びている。
【0019】
前記第1段部9の前面7bには、
図1、
図2に示すように、ロービームを照射するためのプロジェクタ型のロービームユニットLU
Lが取付けられ(固定され)、前記第2段部10の前面7bには、ロービーム拡散光を照射するためのプロジェクタ型のロービーム拡散光ユニットLDU
Lが取付けられ(固定され)ている。また、第3段部11のうちの横方向内側領域部分11a及び横方向外側領域部分11bの各前面7bには、ハイビームを照射するための直射型のハイビームユニットHU1
L(一方のハイビームユニット)、ハイビームユニットHU2
L(他方のハイビームユニット)がそれぞれ取付けられている。
尚、
図1においては、ロービームユニットLU
L、ロービーム拡散光ユニットLDU
L、ハイビームユニットHU1
L、HU2
Lの前方に前面ガラスが存在するが、見易くするために便宜上、これらユニットLU
L、LDU
L、HU1
L、HU2
Lについては、実線をもって描かれている。
【0020】
前記ロービームユニットLU
Lは、ロービーム照射に基づき前方(例えば25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上)にロービーム配光パターンLP
Lを形成するように設定されている。このため、ロービームユニットLU
Lは、
図2、
図4に示すように、車両前後方向に延びる光軸L上に配置された投影レンズ16と、その投影レンズ16の後方焦点よりも後方において配置された光源としての発光素子(例えばLED)17と、その発光素子17からの光を投影レンズ16に向けて反射するリフレクタ18と、そのリフレクタ18からの反射光の一部を遮光する遮光シェード19と、を備える構成とされている。これにより、ロービームユニットLU
Lは、そのロービーム照射に基づき、
図7に示すように、上記ロービーム配光パターンLP
Lとして、V−V線(車両の前後方向に延びる灯具光軸の前方延長点であるH−V点を通って鉛直方向に延びる鉛直基準線)を中心としつつ、H−H線(車両の前後方向に延びる灯具光軸の前方延長点であるH−V点を通り水平状態をもって左右方向に延びる水平基準線)の下側付近で左右方向に拡がる反転像を投影する。このとき、遮光シェード19(の明暗境界形成部)が、上記ロービーム配光パターンLPにおいて、対向車線側が低く自車線側が高い段付きのカットオフラインCLを形成することになる(
図7参照)。このロービームユニットLU
Lに基づくロービーム配光パターンLP
Lは、本実施形態においては、ロービームユニットLU
Lが支持部材7に固定されていることに基づき、基本的に独立して左右方向に移動することはない。
【0021】
前記ロービーム拡散光ユニットLDU
Lは、ロービーム拡散光照射に基づき、前方に拡散配光パターンLDPを形成するように設定されている。このロービーム拡散光ユニットLDU
Lは、基本的に前記ロービームユニットLU
Lと同じ構成のもの(
図4参照)が用いられ、構造上、投影レンズ16の曲率、焦点距離等が異ならされて、拡散配光パターンLDP
Lが、
図7に示すように、前記ロービーム配光パターンLP
Lの周囲に拡大された状態で形成されることになっており、この拡散配光パターンLDP
Lの光度は、ロービーム配光パターンLP
Lの光度よりも相対的に低い。また、このロービーム拡散光ユニットLU
Lに基づく拡散光配光パターンLP
Lも、本実施形態においては、ロービームユニットLU
Lが支持部材7に固定されていることに基づき、基本的に独立して左右方向に移動することはない。
【0022】
前記ハイビームユニットHU1
Lは、
図1、
図2に示すように、左前照灯1Lの一方のハイビームユニットとして最も横方向外側に配置されている。このハイビームユニットHU1
Lは、
図5に示すように、前方に向けて開口された有底筒状の灯具ハウジング20aと、その灯具ハウジング20aの開口を覆うように設けられる投影レンズ21aと、灯具ハウジング20aの内底部に設けられる発光素子22a(例えばLED)と、灯具ハウジング20a内に発光素子22の前側において光軸Lから横方向にずれた状態で配置される仕切部材23と(
図1、
図2参照)、灯具ハウジング20aの底部外面に設けられる放熱フィン12と、により概略構成されており、このハイビームユニットHU1
Lの灯具ハウジング20aは、上下一対の支持板部13a,13bに支持軸24を介して回動可能に支持されている。本実施形態においては、下側の支持軸24としてスイブルアクチュエータ14Lの出力軸14Laが利用されており、そのスイブルアクチュエータ14Lの駆動により、ハイビームユニットHU1
Lは、上下方向に延びる支持軸24(駆動軸14La)の軸心を中心として、横方向(左右方向、水平方向)に回動可能となっている。
これにより、ハイビームユニットHU1
Lは、前方において、横方向に延びる略長方形状の第1配光パターンHP1を形成することができると共に、その第1配光パターンHP1を横方向(水平方向)に移動させることができる。この第1配光パターンHP1は、
図8に示すように、初期状態においては、その大部分がH−H線よりも上方側に位置された状態の下でV−V線を基準として左側に配置され、その第1配光パターンHP1の車幅方向内方側部分だけが、V−V線を超えてやや右側にはみ出している。この第1配光パターンHP1は、その車幅方向内方側において鉛直方向に延びる明瞭な縦カットオフラインCL1を有することになっており、この縦カットオフラインCL1は、発光素子22aの光を遮る仕切部材23により形成される。このはみだし量は、V−V線から0〜5°程度に設定されている。これは、後述の第2配光パターンHP2と相まって、V−V線を中心とした領域を明るくすると共に、前方車両等へのグレア付与の防止措置を実行する際に、縦カットオフラインCL1の横方向への移動量を適度にするためである。
【0023】
前記ハイビームユニットHU2
Lは、
図1、
図2に示すように、左前照灯1Lの他方のハイビームユニットとして、前記ハイビームユニットHU1
Lよりも横方向内側に配置されている。このハイビームユニットHU2
Lは、
図6に示すように、第3段部11のうちの横方向内側領域部11aに一端部が接続された筒状の灯具ハウジング20bと、その灯具ハウジング20bの他端開口を覆うように設けられる投影レンズ21bと、灯具ハウジング20b内において第3段部11のうちの横方向内側領域部11aに取付けられた発光素子22b(例えばLED)と、により概略構成されている。
これにより、ハイビームユニットHU2
Lは、
図8に示すように、前方において、横方向に延びる略長方形状の第2配光パターンHP2を形成する。この第2配光パターンHP2は、初期状態において、その大部分がH−H線よりも上方側に位置された状態の下で、V−V線を基準として右側に配置されており、その第2配光パターンHPの車幅方向内方側部分だけが、V−V線を超えて左側にはみ出している。このはみだし量も、前記第1配光パターンHP1同様、V−V線から0〜5°程度に設定されている。
【0024】
右前照灯1Rも、
図8に示すように、そのハイビームユニットHU1
R(一方のハイビームユニット)と、HU2
R(他方のハイビームユニット)とにより、前述の左前照灯の場合同様、初期状態において、第2配光パターンHP2と第1配光パターンHP1とを形成できることになっている。これら第2配光パターンHP2、第1配光パターンHP1は、前記左前照灯1LにおけるハイビームユニットHU2
L(他方のハイビームユニット)、HU1
L(一方のハイビームユニット)が形成する第2配光パターンHP2、第1配光パターンHP1と同じ大きさ、形状をしており、初期状態においては、各第1配光パターンHP1同士、また、第2配光パターンHP2同士は、重なる。
【0025】
この場合、ハイビームユニットHU1
Rは、
図8に示すように、右前照灯1Rの一方のハイビームユニットとして第2配光パターンHP2を形成するが、その際、その第2配光パターンHP2は、その車幅方向内方側において鉛直方向に延びる明瞭な縦カットオフラインCL2を有することになっており、その縦カットオフラインCL2は、発光素子22aの光を遮る仕切部材23により形成される。また、ハイビームユニットHU1
Rには、ハイビームユニットHU1
L同様、スイブルアクチュエータ14Rが関連付けられており、そのハイビームユニットHU1
Rが形成する第2配光パターンHP2は、ハイビームユニットHU1
Rをスイブルアクチュエータ14Rにより回動させることにより、横方向(水平方向)に移動させることができることになっている。
【0026】
右前照灯1RのハイビームユニットHU2
Rは、ハイビームユニットHU1
Rの横方向内側に配置されて、そのハイビーム照射に基づき、左前照灯1LのハイビームユニットHU1
Lと同様、前方に第1配光パターンHP1を形成することになるが(
図8参照)、このハイビームユニットHU2
Rに基づく第1配光パターンHP1は、本実施形態においては、ハイビームユニットHU2
Rが支持部材7に固定されていることに基づき、基本的に独立して左右方向に移動することはない。
【0027】
右前照灯1RのロービームユニットLU
Rも、前述の左前照灯1LにおけるロービームユニットLU
Lと同様のロービーム配光パターンLP
Rを形成することになっており、そのロービームユニットLU
Rに基づくロービーム配光パターンLP
RとロービームユニットLU
Lに基づくロービーム光配光パターンLP
Lとは、
図7に示すように、H−H線の下方付近において、V−V線を中心として、左右方向に広がった状態で互いに重なることになる。このロービームユニットLU
Rに基づくロービーム配光パターンLPも、本実施形態においては、ロービームユニットLU
Rが支持部材7に固定されていることに基づき、基本的に独立して左右方向に移動することはない。
【0028】
右前照灯1Rのロービーム拡散光ユニットLDU
Rも、前述の左前照灯1Lにおけるロービーム拡散光ユニットLDU
Lと同様、ロービーム配光パターンLP
R(LP
L)の周囲に拡張された拡散配光パターンLDP
Rを形成することになっており、そのロービーム拡散光ユニットLDU
Rに基づく拡散配光パターンLDP
Rとロービーム拡散光ユニットLDU
Lに基づく拡散配光パターンLP
Lとは、
図7に示すように、互いに重なることになる。このロービーム拡散光ユニットLDU
Rに基づくロービーム配光パターンLPも、本実施形態においては、ロービームユニットLU
Rが支持部材7に固定されていることに基づき、基本的に独立して左右方向に移動することはない。
【0029】
前記車両用前照灯装置は、
図9に示すように、ライトの選択モードに応じた照射制御を行うべく、制御手段としての制御ユニットUを備えている。
制御ユニットUには、対象物検出手段としてのカメラ26からの入力映像信号、ライトモードスイッチ27からのライトのモード選択信号、左右各前照灯1L,1Rにおける各ユニットHU1
L、HU2
L、HU1
R、HU2
R、LU
L、LU
R、LDU
L、LDU
Rの点灯の有無を検出する点灯検出機構28(例えば後述の電源回路29)からの点灯検出信号が入力される。カメラ26としては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、ステレオカメラ26等が適宜、用いられ、そのカメラ26は、左右前照灯1L,1Rの中間位置、例えば車両室内におけるルームミラーの背面部等に取付けられる。ライトモードスイッチ27は、運転者近辺の操作パネル上等に配置され、そのライトモードスイッチ27の操作により、照射(ライト)のモードが選択できることになっている。
一方、制御ユニットUからは、各ロービームユニットLU
L、LU
R、ロービーム拡散光ユニットLDU
L、LDU
R及び各ハイビームユニットHU1
L、HU2
L、HU1
R、HU2
Rの点消灯を行う電源回路29、前記スイブルアクチュエータスイブルアクチュエータ14L,14Rに対して制御信号がそれぞれ出力されることになっている。
【0030】
制御ユニットUは、複数のユニットHU1
L、HU2
L(HU1
R、HU2
R)、LU
L(LU
R)、LDU
L(LDU
R)を備える左右各前照灯1L(1R)に対して、点消灯制御、スイブルアクチュエータ14L,14Rによる駆動制御を行えることに基づき、種々の観点から複数のライトモードを作り出すことができるが、ここでは、そのうちでも特に配光パターンを高い自由度をもって形成できることを利用した前方車両等へのグレア付与防止制御について説明する。
制御ユニットUは、前方車両等へのグレア付与を防止する観点から、点灯・消灯決定部と、前方対象物位置演算処理部と、縦カットオフライン位置決定部と、駆動量演算部と、制御実行部と、を備えている。
点灯・消灯決定部は、ライトモードスイッチ27からのモード選択信号を受け入れて、それに基づき、ロービームユニットLU
L(LU
R)、ロービーム拡散光ユニットLDU
L(LDU
R)、各ハイビームユニットHU1
L、HU2
L(HU1
R、HU2
R)の各発光素子17,22a,22bが点灯又は消灯することを決定する機能を有している。例えば、ハイビーム、ロービーム及びロービーム拡散光を照射する状態下で、前方車両等へのグレア付与防止を考慮した照射を行うライトモード(以下、自動部分遮光モードという)が選択された場合には、ハイビームユニットHU1
L、HU1
R、ロービームユニットLU
L、LU
R及びロービーム拡散光ユニットLDU
L、LDU
Rに対する点灯を決定し、その他のユニットHU2
L、HU2
Rに対しては消灯を決定する。
前方対象物位置演算処理部は、カメラ26からの画像データを取り込んで、前方車両等を既知のアルゴリズムに従って検出し(前方車両の場合には、車両の前照灯又は尾灯に相当する部分を検出)、その位置をH−V座標系において特定する機能を有している。
縦カットオフライン位置決定部は、前方対象物位置演算処理部からデータを受け取り、前方対象物位置演算処理部が特定した前方車両等を、H−H線上において間に挟むことができる位置を特定し、それを、移動すべき左右の縦カットオフラインの位置としてそれぞれ決定する機能を有している。この場合、前方車両等を間に挟む位置関係を特定するに際しては、多少、余裕をもたせることが好ましい。
駆動量演算部は、現在における左右の縦カットオフラインCL1,CL2の実際の位置(H−H線上の位置)を取り込み、前方対象物位置演算処理部が特定した左右の各縦カットオフラインの位置と、現在における左右の各縦カットオフラインCL1(CL2)の実際の位置(H−H線上の位置)との差分を演算し、その各演算値に基づき左右の各ハイビームユニットHU1
L、HU1
Rのスイブルアクチュエータ14L,14Rの駆動量を導く機能を有している。
制御実行部は、ライトモードスイッチ27により選択されたライトモードを実行すべく、点灯・消灯決定部の点灯、消灯信号を電源回路29に出力すると共に、駆動量演算部からの演算結果を制御信号として左右のスイブルアクチュエータ14L,14Rに出力する機能を有している。
【0031】
次に、上記制御ユニットUの制御概要について説明する。
ライトモードスイッチ27により自動部分遮光モードが選択された場合には、初期状態の態様として、左前照灯1Lにおいては、ハイビームユニットHU1
L、ロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
Lが点灯され、ハイビームユニットHU2
L、が消灯される。右前照灯1Rにおいては、ハイビームユニットHU1
R、ロービームユニットLU
R及びロービーム拡散光ユニットLDU
Rが点灯され、ハイビームユニットHU2
Rが消灯される。これにより、
図10に示すように、左前照灯1Lによる照射に基づき、ハイビームユニットHU1
Lの照射に基づく第1配光パターンHP1が、V−V線を基準として左側にその大部分を占めるようにして形成され(初期状態)、H−H線の下方側においては、V−V線を基準として左右方向に延びるロービーム配光パターンLP
Lが形成されると共に、その周囲において拡散光配光パターンLDP
Lが形成される。また、右前照灯IRによる照射に基づいては、ハイビームユニットHU1
Rの照射に基づく第2配光パターンHP2が、V−V線を基準として右側にその大部分を占めるようにして形成され(初期状態)、H−H線の下方側においては、V−V線を基準として左右方向に延びるロービーム配光パターンLP
Rが形成されると共に、その周囲において拡散光配光パターンLDP
Rが形成される。結果、その合成配光パターンとして、第1、第2配光パターンHP1,HP2が、その車幅方向内方側部分において重なりつつ、左右方向に並設された状態となり、H−H線の下方側においては、ロービーム配光パターンLP
L(LP
R)及び拡散光配光パターンLDP
L(LDP
R)が形を変えることなく重なった状態となる。
【0032】
このような状態において、前方車両等31が検出されたときには、その前方車両等31の状態がどのような状態であっても(前方車両等31の状態に応じて)、その前方車両等31の位置が検出されると共に、その前方車両等31を間に挟むべく、第1、第2配光パターンHP1、HP2の縦カットオフラインCL1,CL2の移動位置が導かれる。そしてそれに基づき、
図11中段、下段に示すように、左右のスイブルアクチュエータ14L,14Rが駆動され、第1、第2配光パターンHP1,HP2は、その第1、第2配光パターンHP1,HP2間に前方車両等31を位置させるように的確に移動される。これにより、前方車両等31へのグレア付与が確実に防止される。
尚、
図11においては、ロービーム配光パターンLP
L(LP
R)及び拡散光配光パターンLDP
L(LDP
R)の図示は略されている。
【0033】
図12〜
図14は、前方車両の大きさ、位置に応じて、上記制御内容に基づき、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動を変化させた態様を示している。
図12は、前方車両等31との車間距離の短縮に伴い、前方車両等31が大きくなった場合を示しており、この場合には、第1、第2配光パターンHP1,HP2が離間する方向に移動されてその両者HP1,HP2間のスプリット幅が拡大され、その第1、第2配光パターンHP1,HP2間にその前方車両等31が位置されることになる。
尚、
図12においては、ロービーム配光パターンLP
L(LP
R)及び拡散光配光パターンLDP
L(LDP
R)の図示は略されている。
【0034】
図13は、前方車両等31が右側位置にシフトした場合を示しており、この場合には、第1、第2配光パターンHP1,HP2が右方向に移動され、その移動した第1、第2配光パターンHP1,HP2間に前方車両等31が位置されることになる。
このとき、ロービーム配光パターンLP
L(LP
R)及び拡散光配光パターンLDP
L(LDP
R)は、第1配光パターンHP1及び第2配光パターンHP2が右方向に移動したとしても、当初の状態がそのまま維持され、第1、第2配光パターンHP1,HP2に追随することはない。これにより、車両前方(手前)において特に明るいロービーム配光パターンが追随することに基づく乗員の違和感を防止できることになる。
【0035】
図14は、V−V線から左右方向のいずれか遠くに前方車両が寄りすぎて、第1、第2配光パターンHP1,HP2の一方が移動しきれない場合(
図14ではスイブルアクチュエータ14Rのスイブル限度)を示している。この場合には、スイブルアクチュエータ14L(又は14R)によりスイブルにより追従できないハイビームユニット(発光素子)HU1
L(又はHU1
R)は消灯される。
尚、
図14においては、ロービーム配光パターンLP
L(LP
R)及び拡散光配光パターンLDP
L(LDP
R)の図示は略されている。
【0036】
次に、上記制御ユニットの制御例について、
図15、
図16に示すフローチャートに基づき具体的に説明する。
図15、
図16中、Sはステップを示す。
先ず、S1において、自動部分遮光モード(左前照灯1LのハイビームユニットHU1
L及びロービームユニットLU
L、右前照灯のハイビームユニットHU1
R及びロービームユニットLU
Rが点灯状態の下で前方車両等に対するグレア付与の防止を図ったモード)がライトモードスイッチ27により選択されたか否かが判別される。このS1がNOのときには、その判別が繰り返される一方、そのS1がYESのときには、S2において、左前照灯1LのハイビームユニットHU1
L及びロービームユニットLU
L、右前照灯1RのハイビームユニットHU1
R及びロービームユニットLU
Rが点灯されると共に、フラグFがF=0が設定される。このフラグFは、前方車両等の検出から初めての処理(1回目の処理)が終了したか否かを設定するもので、F=0は初回の処理が終了していないことを意味し、F=1は初回の処理が終了していることを意味する。
【0037】
次に、S3においては、カメラ26からの入力情報、縦カットオフラインCL1,CL2の現在の実際位置(当初は初期状態位置)等の各種情報が読み込まれる。前方車両等へのグレア付与防止のための情報を得るためである。次いで、S4において、前方車両等へのグレア付与防止処理を開始する必要があるか否かを判別すべく、前方車両等が存在するか否かが判別され、S4がYESのときには、S5において、前方車両等の位置が検出され、次のS6において、S5における情報に基づき第1配光パターンの縦カットオフラインCL1、第2配光パターンの縦カットオフラインCL2の移動位置(移動すべき位置)が決定される。
【0038】
次に、S7において、F=1か否かが判別される。当初は、前方車両等の検出直後の処理であり、このときには、S7の判別はNOと判断される。そして、次のS8において、スイブルアクチュエータ14L,14Rにより対応できるかどうか(駆動できる範囲か)を判断するために、縦カットオフラインCL1の移動位置が、移動できる限界位置までの範囲を超えているか否かが判別され、S8がNOのときには、縦カットオフラインCL1を前方車両等の左側に移動させるべく、S9において左前照灯1Lにおけるスイブルアクチュエータ14Lの駆動量が演算され、S10において、それが記憶される。
一方、S8がYESのときには、スイブルアクチュエータ14Lでは対応できないため、S11において左前照灯1LのハイビームユニットHU1
L(発光素子)は消灯され、S12においてスイブルアクチュエータ14Lの限界位置までの駆動量を演算した上で、次の処理に迅速に対応すべく、前記S10に移行して、その駆動量が記憶される。
【0039】
次に、S13において、縦カットオフラインCL2の移動位置が、移動できる限界位置までの範囲を超えているか否かが判別される。スイブルアクチュエータ14Rにより対応できるか否かを判断するためである。S13がNOのときには、S14において、縦カットオフラインCL2を前方車両等の右側に移動させるべく右前照灯1Rにおけるスイブルアクチュエータ14Rの駆動量が演算され、次のS15に進む。
【0040】
これに対して、前記S13がYESのときには、スイブルアクチュエータ14Rでは対応できないとして、S17において、右前照灯1RにおけるハイビームユニットHU1
Rを消灯した上で、S18において、次の処理に迅速に対応すべく、スイブルアクチュエータの限界位置までの駆動量が演算され、S15に進む。
S15においては、スイブルアクチュエータ14Lに対してS10の駆動量(S9又はS12の駆動量)が実行されると共に、スイブルアクチュエータ14Rに対してS14又はS18の駆動量が実行され、次のS16において、フラグFがF=1に設定される。
【0041】
前記S4がNOのときには、S19においてF=1か否かが判別される。S19がNOのときには、前方車両等が現れることを考慮してF=0を維持すべく、リターンされる一方、S19がYESのときは、前方車両等が検出された後、途中で、その前方車両等が検出されなくなったときであり、このときには、フラグFがリセットすると共に初期状態(
図10参照)に戻した後(S20,S20−1)、前記S3に移行される。
【0042】
前方車両等の検出後、初回の処理を終えて再び前記S7に至り、そのS7がYESと判断されたときには、S21において、各縦カットオフラインCL1、CL2の移動位置(移動すべき位置)が前回と同じか否かが判別される。第1、第2配光パターンHP1,HP2の縦カットオフラインCL1、CL2をグレア付与の防止の観点から移動させない必要があるか否かを判断すると共に、無駄な多くの処理をしないためである。このS21がYESのときには、リターンされる一方、S21がNOのときには、S22において、縦カットオフラインCL1の移動位置が、移動できる限界位置までの範囲を超えているか否かが判別される。このS22がNOのときには、S23においてハイビームユニットHU1
Lが点灯中か否かが判別され、S23がYESのときには、直接、S24において左前照灯1LのハイビームユニットHU1
Lに対するスイブルアクチュエータ14Lの駆動量が演算され、S23がNOのときには、S25においてハイビームユニットHU1
Lを点灯した上で、S24においてスイブルアクチュエータ14Lの駆動量が演算され、次のS26において、その駆動量が記憶される。
【0043】
一方、前記S22がYESのときには、ハイビームユニットHU1
Lが点灯中か否かが判別され、ハイビームユニットHU1
Lが点灯していないときには、S28において、限界位置までのスイブルアクチュエータ14Lの駆動量が直接、演算され、ハイビームユニットHU1
Lが点灯しているときには、消灯した後(S29)、限界位置までのスイブルアクチュエータ14Lの駆動量が演算される(S28)。この後、前記S26に移行し、S28の駆動量が記憶される。
【0044】
次に、S30において、縦カットオフラインCL2の移動位置が、スイブルアクチュエータ14Rにより対応できるか否かを判断するべく、移動できる限界位置までの範囲を超えているか否かが判別される。S30がNOのときには、S31においてハイビームユニットHU1
Rが点灯しているか否かが判別され、S31がYESのときには、S32において直接に、右前照灯1Rにおけるスイブルアクチュエータ14Rの駆動量が演算され、S31がNOのときには、ハイビームユニットHU1
Rを点灯させた後(S33)、右前照灯1Rにおけるスイブルアクチュエータ14Rの駆動量が演算される。
【0045】
これに対して、前記S30がYESのときには、S35において、右前照灯1RにおけるハイビームユニットHU1
Rが点灯中か否かが判別される。このS35がNOのときには直接に、スイブルアクチュエータ14Rの限界位置までの駆動量が演算され(S36)、S35がYESのときには、ハイビームユニットHU1
Rを消灯した後(S37)、次の処理に迅速に対応するべく、スイブルアクチュエータ14Rの限界位置までの駆動量が演算される(S36)。
前記S32又はS36の処理を終えると、S34において、スイブルアクチュエータ14Lに対してS26の駆動量(S24又はS28の駆動量)が実行されると共に、スイブルアクチュエータ14Rに対してS32又はS36の駆動量が実行され、その実行を終えると、リターンされる。
【0046】
したがって、このような制御例を用いた場合には、第1、第2配光パターンHP1,HP2の縦カットオフラインCL1、CL2は、前方車両等の状態に応じて、その両者CL1、CL2間に前方車両等を位置させるように的確に移動されることになり、その配光パターンを高い自由度をもって位置変更できることを利用して、前方車両等へのグレア付与が防止される。
この場合において、本実施形態においては、前方車両等が左右方向のいずれかにシフトし過ぎてスイブルアクチュエータ14L(又は14R)の駆動範囲では対応できない場合には、対応できない側のハイビームユニットHU1
L(又はHU1
R)は、消灯される。
またこの場合、左右前照灯1RのロービームユニットLU
L,LU
R,ロービーム拡散光ユニットLDU
L,LDU
Rが、ハイビームユニットHU1
L(HU1
R)の移動に追従して、移動しないことから、車両前方(手前)において明るいロービーム配光パターンLP
L,LP
R及びロービーム拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rは、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動に追随せずに、その位置状態が維持され、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動に伴うロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの追随に基づく乗員の違和感が防止される。
さらに、種々の態様の配光パターンを形成できるようにすべく、左右各前照灯1L(1R)に2つのハイビームユニット等を備える構造の下でも、ハイビームユニットHU2
L(HU2
R)の消灯操作等を利用して、左右各前照灯1L,1Rにおける一方のハイビームユニットHU1
L(HU1
R)にだけスイブルアクチュエータ14L(14R)を関連付け、これにより、前方車両等へのグレア付与を防止できることになっている。このため、その前方車両等へのグレア付与に際して、スイブルアクチュエータ14L(14R)の作動(駆動)負担を軽減できる。
【0047】
図17〜
図21は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この
図17〜
図21に示す第2実施形態においては、第1、第2配光パターンHP1,HP2の横方向への移動に伴い、ロービーム配光パターンLP
L,LP
R,拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rも追随して移動すると共に、その際に、ロービーム配光パターンLPについては減光、拡散光配光パターンについては増光するようにしたものを示している。
このため、この第2実施形態においては、
図17〜
図19に示すように、前記第1実施形態とは異なり、ロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
Lに対してはスイブルアクチュエータ32Lにより、また、ロービームユニットLU
R及びロービーム拡散光ユニット
LDURに対してはスイブルアクチュエータ32Rによりそれぞれ駆動できることになっており、その駆動により、ロービーム配光パターンLP
L及び拡散光配光パターンLDP
L、ロービーム配光パターンLP
R及び拡散光配光パターンLDP
Lは、横方向(水平方向)に移動できることになっている。
具体的に
図17、
図18により説明すれば、支持部材7として、支持部35と、その支持部35に対して段差をもつ段部(第3段部)11とを有するものが用いられ、段部11に、前記第1実施形態同様、ハイビームユニットHU1
L、HU2
Lが取付けられている一方、支持部35には開口35Aが形成され、ロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
Lは、その各後部をその開口35Aを貫通した状態で配置されている。このロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
Lは、その各後面が連結プレート36により一体化されており、その連結プレート36の後面に放熱フィン12が設けられている一方、その連結プレート36の前面には、ロービームユニットLU
Lとロービーム拡散光ユニットLDU
Lとの間において、
突部37が設けられている。一方、支持部35の下部35b外面にはスイブルアクチュエータ32Lが取付けられ、その回転軸32Laは、支持部35の下部35bを回転可能に貫通している。この回転軸32Laは、さらに前記突部37に対して相対回転不能に貫通された状態をもって上方に延び、その先端部は、支持部35の上部35aに回転可能に支持されている。これにより、ロービームユニットLU
Lとロービーム拡散光ユニットLDU
Lとは一体的に、スイブルアクチュエータ32Lにより回転駆動されることになっている。このような構成は、右前照灯1Rにおいても同様のものとなっている。
また、制御ユニットUにおいては、
図19に示すように、ハイビームユニットHU1
L,HU1
Rのスイブルアクチュエータ14L,14Rに加えて、ロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
Lに対するアクチュエータ32L、ロービームユニットLU
R及びロービーム拡散光ユニットLDU
Rに対する
アクチュエータ32Rが制御されると共に、電源回路29に対しては、点消灯制御の他に、照度(光度)の増減制御(電流制御)も行われることになっている。
【0049】
この第2実施形態においては、前記第1実施形態同様、前方車両等へのグレア付与を防止する観点から、前方車両等が左右方向のいずれかにシフトした場合には、それに追随して第1、第2配光パターンHP1,HP2が移動し、その両者HP1,HP2間に前方車両等31が的確に位置することになっている。そしてそのときには、
図20に示すように、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動に伴い、ロービーム配光パターンLP
L,LP
R,拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rも追随して移動することになると共に、その移動の際、ロービーム配光パターンLP
L,LP
Rについては、通常時の場合よりも減光され、拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rについては、通常時の場合よりも増光される。そのロービーム配光パターンLP
L,LP
R、拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rは、その移動後(停止状態)、通常の光度に復帰される。
【0050】
上記制御例を、
図21に示すフローチャートにより具体的に説明する。
この第2実施形態に係る制御例は、前記第1実施形態に係る
図15,
図16のフローチャートに
図21に示すフローチャートを付加したものとなっており、この
図21に示すフローチャートは、S15とS16との間、また、S34と「リターン」との間に挿入される。
この第2実施形態においては、S6で、S5での検出結果に基づき縦カットオフラインCL1,CL2の移動位置を決定するだけでなく、前方車両等の車幅方向中央部の位置等についても決定することになっており、それを利用して、S15(S34)に続いて付加されるS38において、各スイブルアクチュエータ32L,32Rの駆動量が演算され、その各駆動量が各スイブルアクチュエータ32L,32Rに対して実行される(S39)。そして次のS40において、電源回路29を制御することにより発光素子17に対する電流値が低減されてロービームが通常時よりも減光され、S41において、同じく電源回路29を制御することにより電流値が増大されてロービーム拡散光が通常時よりも増光される。これらS40,S41の処理は、各スイブルアクチュエータ32L,32Rが作動している間に実行され(S40〜S43)、各スイブルアクチュエータ32L,32Rの作動が停止したときには、各電流値は元に戻されて、ロービーム配光パターンLP
L,LP
R、拡散光配光パターンLDP
L,LDP
Rの各光度は通常時の状態に復帰する(S42〜S44)。
【0051】
したがって、この第2実施形態においては、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動に伴ってロービーム配光パターンLP
L,LP
Rが追随するとしても、ロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの減光に基づきそのロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの移動を目立たないようにすることができる。
しかも、この第2実施形態においては、第1配光パターンHP1、第2配光パターンHP2及びロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの横方向への移動に伴い、拡散配光パターンLDP
L,LDP
Rを移動させると共に、拡散配光パターンLDP
L,LDP
Rの光度を拡散配光パターンLDP
L,LDP
Rの移動前に比べて増光するように設定されていることから、ロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの減光と相まって、第1、第2配光パターンHP1,HP2の移動に伴うロービーム配光パターンLP
L,LP
Rの追随に基づく乗員の違和感を、一層防止できる。
【0052】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)第1実施形態において、第1、第2実施形態において、ロービーム配光パターンLP
L,LP
Rだけを形成して、拡散配光パターンLDP
L,LDP
Rを形成しないこと。
(2)ハイビームユニットHU1
L(HU1
R)ではなく、投影レンズ21a(21b)を駆動して第1、第2配光パターンH1,H2を移動させること。
(3)前方車両等へのグレア付与防止制御を行うに際して、左前照灯1LのハイビームユニットHU2
L,HU2
Rを消灯したが、それらを、眩しくない程度まで減光し、完全消灯としないことにより、一部が消灯したように見せないこと。これにより、見栄えの向上を図ることができる。
(4)ハイビーム配光の最適化のために、左右各前照灯1L(1R)に、前記ハイビームユニットHU1
L,HU2
L(HU1
R,HU2
R)に加えて、さらにハイビームユニットを設け、そのハイビームユニットのハイビームを用いることにより、
図10に示す状態において、V−V線付近を照射すること。
(5)第2実施形態においては、ロービームユニットLU
L及びロービーム拡散光ユニットLDU
L(
ロービームユニットLUR及び
ロービーム拡散光ユニットLDUR)をスイブルアクチュエータ32L(32R)により一体的に駆動したが、ロービームユニットLU
L(LU
R)、ロービーム拡散光ユニットLDU
L(LDU
R)を個々にスイブルアクチュエータを用いて駆動すること。
(6)第2実施形態における制御例において(
図15、
図16、
図21)、S38の駆動量演算処理をS14(S32又はS36)の次に行い、S15(S34)において各スイブルアクチュエータ14L,14R,32L,32Rに対する駆動を実行すること(これに伴いS39削除)。