【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解液二次電池は、
正極芯体の両面に正極合剤層が形成された正極極板と負極芯体の両面に負極合剤層が形成された負極極板とがセパレータを挟んで巻回され、巻回軸の中心に空隙部が形成された巻回電極体を備え、
前記正極極板及び負極極板の一方の極板の巻き始め側には芯体露出部が形成され、前記巻き始め側の芯体露出部に第1の集電タブが接合され、
前記巻回電極体は非水電解液と共に電池外装缶内に封入され、前記電池外装缶は封口板によって封止され、
前記第1の集電タブが前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で電池外装缶の内側底部に
電気的に接続され、
前記正極極板及び負極極板の他方の極板に形成された芯体露出部に接合された第2の集電タブが前記封口板に固定された端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記巻回電極体は平面視で前記空隙部が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成され、
前記第1の集電タブは、平面視で前記巻き始め側の芯体露出部の前記弦部分に沿った直線状とされ、前記弦部分で前記芯体露出部に接合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の非水電解液二次電池においては、正極極板又は負極極板の一方の巻き始め側の芯体露出部に接合された第1の集電タブは、平面視で空隙部側における弦部分に沿った直線状とされて、この弦部分で接合されているので、たとえ電池内部におけるガスの発生によって巻回電極体に径方向に変形が生じる状態となっても、空隙部に配置されている第1の集電タブの立体的な支えのため、空隙部が塞がれることを抑制することができるようになる。そのため、本発明の非水電解液二次電池によれば、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となっても、空隙部が塞がれ難いので、非水電解液二次電池に設けられている安全弁手段へのガス流路が確保できるため、安全性及び信頼性の高い非水電解液二次電池が得られるようになる。しかも、本発明の非水電解液二次電池によれば、空隙部にセンターピンを備えていないので、その分だけ電池容量を増大化させることができるようになる。
【0015】
なお、本発明における「平面視」とは、巻回電極体の巻回軸の延在方向から巻回電極体を視認した状態を示すものであり、実質的に巻回電極体を巻回軸に垂直な平面で切断した横断面図と等価である。また、本発明の非水電解液二次電池においては、安全弁を設ける場合には、封口板に直接形成、封口板に固定された端子内に形成及び電池外装缶に直接形成の何れをも採用することができる。更に、本発明の非水電解質二次電池は、円筒型のもの及び楕円筒状型のものの何れにも採用することができる。
【0016】
また、巻回電極体として、平面視で空隙部が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成するには、巻回電極体を形成する際に用いる芯棒として、円柱状のものではなく、横断面に弦が形成されている形状の柱状体を用いれば容易に形成できる。また、本発明における「接合」とは、「溶接」だけではなく「圧接」も含み、更に、「溶接」には抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接を含む。
【0017】
なお、非水電解液二次電池の正極芯体としてはアルミニウム箔が、負極芯体としては銅箔が汎用的に使用され、また、電池外装缶や端子としてはステンレススチール等の鉄系の合金が汎用的に使用される。そのため、本発明の非水電解液二次電池においては、接合のし易さ、接合強度、集電タブの強度等を勘案すると、負極極板の巻き始め側に芯体露出部を形成し、この負極芯体露出部に接合する負極タブ(第1の集電タブ)としてニッケル又はニッケル合金、銅−ニッケルの2層クラッド材ないしニッケル−銅−ニッケルの3層クラッド材からなるものを用いることが好ましく、正極集電タブ(第2の集電タブ)としてはアルミニウムからなるものを用いることが好ましい。
【0018】
なお、本発明の非水電解液二次電池における負極活物質としては、黒鉛、非晶質炭素などの炭素質材料を用いることができる。また、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLi
xMO
2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
yCo
1−yO
2(y=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)、又はLiFePO
4などが一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。なお、遷移金属の一部をZr、Mg、Al等で置換してもよい。
【0019】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用し得る負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO
2、スピネル型のLi
4Ti
5O
12、TiO
2などのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、又はSn−Co合金等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の非水電解液二次電池において使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン(BL)、γ−バレロラクトン(VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。これらの中では、特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きい環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルが好ましい。なお、本発明の非水電解液二次電池においては、非水電解質は液状のものだけでなく、ゲル化されているものであってもよい。
【0021】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用するセパレータとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン材料から形成された微多孔膜からなるセパレータが選択できる。セパレータのシャットダウン応答性を確保するために、融点の低い樹脂を混合してもよく、更には、耐熱性を得るために高融点樹脂との積層体や無機粒子を担持させた樹脂としてもよい。
【0022】
なお、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水電解質中には、電極の安定化用化合物として、更に、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)などを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることもできる。
【0023】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解液二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF
6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0024】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記第1の集電タブは、
前記芯体露出部への接合部分と前記電池外装缶への
電気的な接続部分との間に弾性を有する形状部分を備えていることが好ましい。
【0025】
第1の集電タブが
前記芯体露出部への接合部分と電池外装缶への
電気的な接続部分との間に弾性を有する形状部分を備えていると、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となっても、空隙部が塞がれ難くなるだけでなく、落下、振動等による衝撃が加わった際の衝撃を吸収することができるようになる。そのため、本発明の非水電解液二次電池によれば、巻回電極体の中心軸方向に加えられた衝撃にも耐えられるようになるため、例え落下衝撃を受けた場合においても、第1の集電タブと電池外装缶との間の接合部分が剥離する可能性が大きく減少すると共に電池の内部抵抗が増加し難くなり、しかも、より安全性及び信頼性の高い非水電解液二次電池が得られるようになる。なお、本発明の非水電解液二次電池における第1の集電タブの弾性を有する形状部分としては、弓なり形状、円弧形状、波形形状等の形状を採用することができる。
【0026】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記第1の集電タブは、少なくとも硬度がHV100以上の金属によって形成されていることが好ましい。
【0027】
本発明の非水電解液二次電池によれば、第1の集電タブとして硬度がHV100以上の金属によって形成されているものを使用したので、第1の集電タブの物理的強度が非常に強くなり、より巻回電極体の径方向の変化及び中心軸方向に加えられた衝撃にも耐えられるようになるため、より安全性及び信頼性に優れた非水電解液二次電池が得られるようになる。なお、HVが100未満であると、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となった際の空隙部の形状保持能力が低下するので、好ましくない。
【0028】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記一方の極板の巻き終わり側にも芯体露出部が形成され、前記一方の極板の巻き終わり側の芯体露出部に第3の集電タブが接合され、前記第3の集電タブは前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で前記電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、前記第1の集電タブ及び前記電池外装缶の内側底部と共に一体に接合されていることが好ましい。
【0029】
本発明の非水電解液二次電池によれば、集電タブの幅を従来例のものと同等としても、第1の集電タブによって巻き始め部の芯体露出部と電池外装缶の間で、第3の集電タブによって巻き終わり部の芯体露出部と電池外装缶の間で、計2通りの導電路が確保されるので、より内部抵抗が小さい非水電解液二次電池が得られる。