特許第6058400号(P6058400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058400
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20161226BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20161226BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20161226BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01M10/0587
   H01M10/0566
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-555805(P2012-555805)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2012051397
(87)【国際公開番号】WO2012105362
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-22152(P2011-22152)
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 弘光
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−170365(JP,A)
【文献】 米国特許第04975095(US,A)
【文献】 特開2007−250414(JP,A)
【文献】 特開2006−139918(JP,A)
【文献】 特開2006−310283(JP,A)
【文献】 特開2006−134758(JP,A)
【文献】 藤田直也,溶射皮膜の硬さ試験,TRI OSAKA Technical Sheet,2000年,No.00008
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01M 10/0587
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体の両面に正極合剤層が形成された正極極板と負極芯体の両面に負極合剤層が形成された負極極板とがセパレータを挟んで巻回され、巻回軸の中心に空隙部が形成された巻回電極体を備え、
前記正極極板及び負極極板の一方の極板の巻き始め側には芯体露出部が形成され、前記巻き始め側の芯体露出部に第1の集電タブが接合され、
前記巻回電極体は非水電解液と共に電池外装缶内に封入され、前記電池外装缶は封口板によって封止され、
前記第1の集電タブが前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で電池外装缶の内側底部に電気的に接続され、
前記正極極板及び負極極板の他方の極板に形成された芯体露出部に接合された第2の集電タブが前記封口板に固定された端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記巻回電極体は平面視で前記空隙部が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成され、
前記第1の集電タブは、平面視で前記巻き始め側の芯体露出部の前記弦部分に沿った直線状とされ、前記弦部分で前記芯体露出部に接合されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記第1の集電タブは、前記芯体露出部への接合部分と前記電池外装缶への電気的な接続部分との間に長さ方向に沿って弓なり形状、円弧形状、及び波形形状のいずれか一つの弾性を有する形状部分を備えていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記第1の集電タブは、少なくとも硬度がHV100以上の金属によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記一方の極板の巻き終わり側にも芯体露出部が形成され、前記一方の極板の巻き終わり側の芯体露出部に第3の集電タブが接合され、前記第3の集電タブは前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で前記電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、
前記第1の集電タブ及び前記電池外装缶の内側底部と共に一体に接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特に一方の極板の集電タブの構造を見直すことにより、センターピンを備えていないながらも、高容量で、安全性及び信頼性に優れた特性を有する円筒形のものを含む非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯用機器の普及に伴い、これらの携帯機器の電源として小型、軽量かつ高エネルギー密度の密閉型電池が求められている。密閉型電池の中でも、経済性の観点から、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン二次電池等の充放電が可能な二次電池が多く使用されるようになっている。特にリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、他の二次電池よりも軽量かつ高エネルギー密度であるということから、多く使用されるようになっている。
【0003】
しかしながら、二次電池は、充電時に通常よりも長く電流が供給される過充電状態になったり、高温に曝された場合や、誤使用や使用する機器の故障などにより大電流が流れて短絡状態になったりすると、電解液が分解してガスが発生し、このガスの発生によって電池内圧が上昇してしまう。このような過充電、高温暴露あるいは短絡状態が継続されると、電池内圧が更に上昇して危険な状態となることがある。そのため、特に非水電解液二次電池の場合には、従来から防爆用の安全弁を備えたものが多く使用されている。
【0004】
この安全弁は、機器の破損防止、火災事故防止等の観点から確実に作動させる必要がある。そのため、円筒形非水電解液二次電池の場合には、例えば下記特許文献1に示されているように、電池外装缶内にセパレータを挟んで対向配置された正極板及び負極板が中心に中空部を有する形状に渦巻状に巻回して形成された巻回電極体を配置すると共に、この巻回電極体の中空部に円筒状のセンターピンを配置し、過充電などの異常状態によって発生したガスを巻回電極体の中空部に配置されたセンターピンを介して安全弁に導くようにしている。このセンターピンは、円筒形非水電解液二次電池の内部で発生したガスによる圧力が正極板、負極板及びセパレータの重ね合せ方向に加わるため、中空部がつぶれてガスの通路を塞いでしまわないようにするために設けられているものである。
【0005】
このように、円筒形非水電解液二次電池においては、巻回電極体の中空部にセンターピンを設けることにより過充電等の異常時の安全性及び信頼性を確保できるが、センターピンを設けると、部品数が多くなり、生産性及びコスト面でのデメリットが生じる。加えて、近年、更なる電池容量の増大化が要望されているが、センターピンを設けると、そのセンターピン用のスペースはデッドスペースととなり、電池容量の増大化をはかることが困難となる。
【0006】
一方、従来の非水電解液二次電池における電池内部の電力損失を防止して発熱を低下させるため、集電タブの幅を広くして極板の芯体への取付け面積を大きくすることにより、極板の芯体からの集電効率を上げるようになされている。しかしながら、円筒形非水電解液二次電池においては、単純に集電タブの幅を広くするという構成は、集電タブの取付面が曲面状となっているため、円筒状の電池外装缶内への組み込みが困難となるので、そのまま採用することはできない。そのため、下記特許文献2に開示された円筒形非水電解液二次電池の発明では、最内周側の電極の集電タブとして巻回電極体の作製時に使用される芯棒と同じ曲率半径に成形加工したものを使用している。
【0007】
また、下記特許文献3には、特に集電タブを幅広としなくても負極集電タブと電池外装缶との間の接触抵抗を低減化できるようにするため、負極集電タブを負極芯体の巻き始め側と巻き終わり側の2本とした円筒形非水電解液二次電池が開示されている。そして、下記特許文献3に開示されている円筒形非水電解液二次電池では、巻回電極体の作製後に巻き終わり側に設けた集電タブを巻き取り中心に向けて折り曲げ、電池外装缶の内側底部において巻き始め側の集電タブ、巻き終わり側の集電タブ及び電池外装缶の3層を溶接して電気的に接続すると共に、衝撃及び振動に耐えるようにするため、巻き始め側の集電タブの電池外装缶との接合部分に弾性を有する形状部分を形成した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平 6−196138号公報
【特許文献2】特開2006−310283号公報
【特許文献3】特開2009−170365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2に開示されている円筒形非水電解液二次電池によれば、一応最内周側の電極と集電タブとの間の接触面積を大きくすることができるが、集電タブを巻回電極体の作製時に使用される芯棒と同じ曲率半径に成形加工する工程が別途必要となる。加えて、上記特許文献2には集電タブを電池外装缶の内側底部と接合することによって電気的に接続することについては何も示唆されていない。
【0010】
また、上記特許文献3に開示されている円筒形非水電解液二次電池では、集電タブは巻回電極体の巻き始め側及び巻き終わり側の両方で芯体と接続されている。そのため、集電タブの幅を従来例のものと同等としても、芯体の巻き始め側と電池外装缶の間及び芯体の巻き終わり側と電池外装缶の間の2通りの導電路が確保されるので、内部抵抗が小さい円筒形非水電解液二次電池が得られる。しかも、巻き始め側の集電タブの電池外装缶との接合部分に弾性を有する形状部分が形成されているので、電気自動車(EV)用、ハイブリッド電気自動車(HEV)用ないし電動工具用として使用された場合のように、衝撃や振動に曝された場合においても、溶接部分に金属疲労が生じ難く、溶接部分から集電タブが外れたり、内部抵抗が大きくなったりすることが抑制されるという優れた効果を奏する。
【0011】
しかしながら、上記引用文献2及び3に示されている円筒形非水電解液二次電池においては、センターピンを備えていないので、過充電、高温暴露あるいは短絡状態等の異常状態が継続した場合における安全性及び信頼性を確保が不充分である。
【0012】
本発明は上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明は、巻回電極体の集電タブの構造を見直すことにより、センターピンを備えていないながらも、高容量で、安全性及び信頼性に優れた特性を有する円筒形のものを含む非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解液二次電池は、
正極芯体の両面に正極合剤層が形成された正極極板と負極芯体の両面に負極合剤層が形成された負極極板とがセパレータを挟んで巻回され、巻回軸の中心に空隙部が形成された巻回電極体を備え、
前記正極極板及び負極極板の一方の極板の巻き始め側には芯体露出部が形成され、前記巻き始め側の芯体露出部に第1の集電タブが接合され、
前記巻回電極体は非水電解液と共に電池外装缶内に封入され、前記電池外装缶は封口板によって封止され、
前記第1の集電タブが前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で電池外装缶の内側底部に電気的に接続され
前記正極極板及び負極極板の他方の極板に形成された芯体露出部に接合された第2の集電タブが前記封口板に固定された端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記巻回電極体は平面視で前記空隙部が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成され、
前記第1の集電タブは、平面視で前記巻き始め側の芯体露出部の前記弦部分に沿った直線状とされ、前記弦部分で前記芯体露出部に接合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の非水電解液二次電池においては、正極極板又は負極極板の一方の巻き始め側の芯体露出部に接合された第1の集電タブは、平面視で空隙部側における弦部分に沿った直線状とされて、この弦部分で接合されているので、たとえ電池内部におけるガスの発生によって巻回電極体に径方向に変形が生じる状態となっても、空隙部に配置されている第1の集電タブの立体的な支えのため、空隙部が塞がれることを抑制することができるようになる。そのため、本発明の非水電解液二次電池によれば、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となっても、空隙部が塞がれ難いので、非水電解液二次電池に設けられている安全弁手段へのガス流路が確保できるため、安全性及び信頼性の高い非水電解液二次電池が得られるようになる。しかも、本発明の非水電解液二次電池によれば、空隙部にセンターピンを備えていないので、その分だけ電池容量を増大化させることができるようになる。
【0015】
なお、本発明における「平面視」とは、巻回電極体の巻回軸の延在方向から巻回電極体を視認した状態を示すものであり、実質的に巻回電極体を巻回軸に垂直な平面で切断した横断面図と等価である。また、本発明の非水電解液二次電池においては、安全弁を設ける場合には、封口板に直接形成、封口板に固定された端子内に形成及び電池外装缶に直接形成の何れをも採用することができる。更に、本発明の非水電解質二次電池は、円筒型のもの及び楕円筒状型のものの何れにも採用することができる。
【0016】
また、巻回電極体として、平面視で空隙部が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成するには、巻回電極体を形成する際に用いる芯棒として、円柱状のものではなく、横断面に弦が形成されている形状の柱状体を用いれば容易に形成できる。また、本発明における「接合」とは、「溶接」だけではなく「圧接」も含み、更に、「溶接」には抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接を含む。
【0017】
なお、非水電解液二次電池の正極芯体としてはアルミニウム箔が、負極芯体としては銅箔が汎用的に使用され、また、電池外装缶や端子としてはステンレススチール等の鉄系の合金が汎用的に使用される。そのため、本発明の非水電解液二次電池においては、接合のし易さ、接合強度、集電タブの強度等を勘案すると、負極極板の巻き始め側に芯体露出部を形成し、この負極芯体露出部に接合する負極タブ(第1の集電タブ)としてニッケル又はニッケル合金、銅−ニッケルの2層クラッド材ないしニッケル−銅−ニッケルの3層クラッド材からなるものを用いることが好ましく、正極集電タブ(第2の集電タブ)としてはアルミニウムからなるものを用いることが好ましい。
【0018】
なお、本発明の非水電解液二次電池における負極活物質としては、黒鉛、非晶質炭素などの炭素質材料を用いることができる。また、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−y(y=0.01〜0.99)、LiMnO、LiMn、LiCoMnNi(x+y+z=1)、又はLiFePOなどが一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。なお、遷移金属の一部をZr、Mg、Al等で置換してもよい。
【0019】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用し得る負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO、スピネル型のLiTi12、TiOなどのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、又はSn−Co合金等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の非水電解液二次電池において使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン(BL)、γ−バレロラクトン(VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。これらの中では、特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きい環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルが好ましい。なお、本発明の非水電解液二次電池においては、非水電解質は液状のものだけでなく、ゲル化されているものであってもよい。
【0021】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用するセパレータとしては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン材料から形成された微多孔膜からなるセパレータが選択できる。セパレータのシャットダウン応答性を確保するために、融点の低い樹脂を混合してもよく、更には、耐熱性を得るために高融点樹脂との積層体や無機粒子を担持させた樹脂としてもよい。
【0022】
なお、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水電解質中には、電極の安定化用化合物として、更に、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)などを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることもできる。
【0023】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解液二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0024】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記第1の集電タブは、前記芯体露出部への接合部分と前記電池外装缶への電気的な接続部分との間に弾性を有する形状部分を備えていることが好ましい。
【0025】
第1の集電タブが前記芯体露出部への接合部分と電池外装缶への電気的な接続部分との間に弾性を有する形状部分を備えていると、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となっても、空隙部が塞がれ難くなるだけでなく、落下、振動等による衝撃が加わった際の衝撃を吸収することができるようになる。そのため、本発明の非水電解液二次電池によれば、巻回電極体の中心軸方向に加えられた衝撃にも耐えられるようになるため、例え落下衝撃を受けた場合においても、第1の集電タブと電池外装缶との間の接合部分が剥離する可能性が大きく減少すると共に電池の内部抵抗が増加し難くなり、しかも、より安全性及び信頼性の高い非水電解液二次電池が得られるようになる。なお、本発明の非水電解液二次電池における第1の集電タブの弾性を有する形状部分としては、弓なり形状、円弧形状、波形形状等の形状を採用することができる。
【0026】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記第1の集電タブは、少なくとも硬度がHV100以上の金属によって形成されていることが好ましい。
【0027】
本発明の非水電解液二次電池によれば、第1の集電タブとして硬度がHV100以上の金属によって形成されているものを使用したので、第1の集電タブの物理的強度が非常に強くなり、より巻回電極体の径方向の変化及び中心軸方向に加えられた衝撃にも耐えられるようになるため、より安全性及び信頼性に優れた非水電解液二次電池が得られるようになる。なお、HVが100未満であると、過充電や高温に曝された場合等、電池内部でのガス発生によって巻回電極体に径方向の変化が生じるような状態となった際の空隙部の形状保持能力が低下するので、好ましくない。
【0028】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、前記一方の極板の巻き終わり側にも芯体露出部が形成され、前記一方の極板の巻き終わり側の芯体露出部に第3の集電タブが接合され、前記第3の集電タブは前記巻回電極体の前記空隙部に対応する位置で前記電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、前記第1の集電タブ及び前記電池外装缶の内側底部と共に一体に接合されていることが好ましい。
【0029】
本発明の非水電解液二次電池によれば、集電タブの幅を従来例のものと同等としても、第1の集電タブによって巻き始め部の芯体露出部と電池外装缶の間で、第3の集電タブによって巻き終わり部の芯体露出部と電池外装缶の間で、計2通りの導電路が確保されるので、より内部抵抗が小さい非水電解液二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1Aは各実施例及び比較例の非水電解液二次電池で使用した正極極板の展開図であり、図1Bは同じく負極極極板の展開図であり、図1Cは各実施例で用いた芯棒の平面図であり、図1Dは各比較例で用いた芯棒の平面図である。
図2図2Aは実施例1の非水電解液二次電池の縦断面図であり、図2B図2AのIIB−IIB線に沿った断面図である。
図3図3Aは実施例2の非水電解液二次電池の縦断面図であり、図3B図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
図4図4Aは比較例1の非水電解液二次電池の縦断面図であり、図4B図4AのIVB−IVB線に沿った断面図である。
図5図5Aは比較例2の非水電解液二次電池の縦断面図であり、図5B図5AのVB−VB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を各実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水電解液二次電池として円筒形非水電解液二次電池を例示するものであって、本発明をこの円筒形非水電解液二次電池に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に適宜縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0032】
最初に、図1を用いて、実施例1、2及び比較例1、2に共通する正極極板、負極極板及び非水電解液の構成について説明する。なお、図1Aは各実施例及び比較例の非水電解液二次電池で使用した正極極板の展開図であり、図1Bは同じく負極極板の展開図であり、図1Cは各実施例で用いた芯棒の平面図であり、図1Dは各比較例で用いた芯棒の平面図である。
【0033】
[正極極板の作製]
正極極板11は次のようにして作製した。まず、正極活物質としてのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)とスピネル型マンガン酸リチウムを質量比1:1で混合した正極活物質90質量部と、導電剤としての黒鉛5質量部と結着剤としてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)5質量部とをN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、正極合剤スラリーを調製した。次に、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極芯体11aの両面に、正極芯体11aの中央部及び巻き終わり側端部が露出するように、正極合剤スラリーを塗工し、乾燥機内に通して上記有機溶剤を除去した後、ロールプレス機を用いて正極合剤層11dが形成された部分の厚さが100μmとなるように圧延した。次いで、正極芯体11aの中央側正極芯体露出部11bに、幅3mm、厚み0.15mmのアルミニウム金属製の正極集電タブ11eを超音波溶接により取り付け、正極極板11を得た(図1A参照)。
【0034】
[負極極板の作製]
負極極板12は次のようにして作製した。まず、負極活物質としての人造黒鉛粉末98質量%と、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)をそれぞれ1質量%ずつ混合し、水を加えて混練して負極合剤スラリーを調製した。次に、厚さが15μmの銅箔からなる負極芯体12aの両面に、負極芯体12aの巻き始め側端部及び巻き終わり側端部の両面が露出するように、負極合剤スラリーを塗工し、次いで乾燥機内に通して乾燥した後、ロールプレス機を用いて負極合剤層12dの厚さが100μmとなるように圧延した。
【0035】
次いで、負極芯体12aの巻き始め側負極芯体露出部12b及び巻き終わり側負極芯体露出部12cに、幅3mm、厚み0.15mmの銅−ニッケルクラッド材(硬度HVは、銅=80、Ni=140である。)からなる負極集電タブ12e(本発明の「第1の集電タブ」に対応)及び12e(本発明の「第3の集電タブ」に対応)を、銅同士が対向するようにして、超音波溶接により取り付け、負極極板12を得た(図1B参照)。
【0036】
なお、比較例1及び2については、負極集電タブ12eを溶接する前に、予め負極集電タブ12eを芯棒13Bと同じ曲率半径に成形加工し、最内周側の負極極板12と負極集電タブ12eとの間の接触面積が大きくなるようにして、最内周側の負極極板12の負極芯体露出部12bの巻き外側面に超音波溶接した。また、負極合剤の塗布量は、設計基準となる充電電圧(4.2V)において、正極極板11と負極極板12の対向する部分での充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)が1.1となるように調整した。
【0037】
[巻回電極体の作製]
実施例1及び2で用いた芯棒13Aの平面視の形状を図1Cに、比較例1及び2で用いた芯棒13Bの平面視の形状を図1Dに示す。上記のようにして作製された正極極板11と負極極板12と例えばポリエチレン樹脂からなる厚さ22μmの微多孔性セパレータ(図示省略)とを、それぞれ巻き始め側を巻き取り機(図示省略)に取り付けられた芯棒13A又は13Bのスリット13aに差し込んで、芯棒13A又は13Bの回りに巻き付けて巻回し、巻き終わり部に絶縁性の巻き止めテープを取り付けて固定した後、芯棒13A及び13Bを取り除いて、実施例1、2及び比較例1、2の非水電解液二次電池10A〜10Dで使用する円筒状巻回電極体14を完成させた。
【0038】
また、実施例1及び2では、巻き始め側の負極集電タブ12eが芯棒13Aの平坦部13bに当接するようにして巻回した。すなわち、実施例1及び2の円筒状巻回電極体14は、平面視で空隙部18が円弧状部分と弦部分とを有する形状に形成され、巻き始め側の負極集電タブ12eは、平面視で巻き始め側負極芯体露出部12bの弦部分に沿った直線状とされ、かつ弦部分で巻き始め側負極芯体露出部12bに接合された状態となっている。更に、実施例1、2及び比較例1及び2共に、最内周側に位置する巻き始め側負極芯体露出部12bの長さは、空隙部18の外周の1周以上となるようにした。
【0039】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)15体積%、プロピレンカーボネート(PC)10体積%及びジメチルカーボネート(DMC)75体積%となるように非水混合溶媒を調製し、これにLiPFを1.0mol/Lの割合となるように溶解したものを非水電解液とした。
【0040】
[実施例1の電池の作製]
上記のようにして作製された巻回電極体14の上下に中央に穴が開けられた絶縁板15及び16を配置し、負極極板12の巻き終わり側の負極集電タブ12eを先端部が電池外装缶17の底部に平行になるように適切な位置で折り曲げた。また、負極極板12の巻き始め側の負極集電タブ12eは、巻き始め側負極芯体露出部12bの巻き内側面に平面視で直線状になるように取り付けられ、先端部を電池外装缶17の底部に平行になるようにかつ巻き終わり側の集電タブ12eの先端部に重畳するように折り曲げた。このように折り曲げられた負極集電タブ12e及び12eを備えた巻回電極体14を、図2Aに示したように、円筒状の電池外装缶17内に挿入した。次いで、電池外装缶17の底部の内側に負極集電タブ12e及び12eを同時に抵抗溶接することによって固定した。
【0041】
更に、正極集電タブ11eの先端部を絶縁性の封口板19に取り付けられた正極端子20に超音波溶接し、電池外装缶内に上述の非水電解液を注入、真空含浸した後、封口板19の周囲をガスケット21で挟んで、電池外装缶17の開口端部をカシメて固定することにより実施例1の非水電解液二次電池10Aを作製した。この実施例1の非水電解液二次電池10Aは、直径が18mm、長さが65mmであり、設計容量は1250mAhであった。
【0042】
[実施例2の電池の作製]
実施例2の非水電解液二次電池10Bは、図3A及び図3Bに示すように、実施例1で使用した巻き始め側の負極集電タブ12eを、電池の封口時に弓なり形状部分12fが形成されるように折り曲げて、最内周側の負極極板12の負極芯体露出部12bの巻き外側面に超音波溶接したものであり、その他の構成は実施例1の非水電解液二次電池10Aの場合と同様にして作製した。
【0043】
[比較例1の電池の作製]
比較例1の非水電解液二次電池10Cは、図4A及び図4Bに示したように、実施例1で使用した巻き始め側の負極集電タブ12eにおいて、負極集電タブ12eを巻回電極体14の作製時に使用される芯棒13B(図1D参照)と同じ曲率半径に成形加工し、最内周側の負極極板12と負極集電タブ12eとの間の接触面積が大きくなるようにして、最内周側の負極極板12の負極芯体露出部12bの巻き外側面に超音波溶接したものであり、その他の構成は実施例1の非水電解液二次電池10Aの場合と同様にして作製した。
【0044】
[比較例2の電池の作製]
比較例2の非水電解液二次電池10Dは、図5A及び図5Bに示したように、比較例1の非水電解液二次電池10Cの空隙部18内に、長さ60mm、外径3mm、厚さ0.15mmのステンレススチール製の中空パイプからなるセンターピン22を挿入し、その他の構成は比較例1の非水電解液二次電池10Cの場合と同様にして作製した。
【0045】
[加熱試験]
上述のようにして作製された実施例1、2及び比較例1、2の非水電解液二次電池10A〜10Dのそれぞれ20個ずつ、過充電状態を模するために、充電電流1It=1250mAの低電流で電池電圧が4.25Vとなるまで充電し、電池電圧が4.25Vに達した後は4.25Vの定電圧で電流が1/50It=25mAに成るまで充電した。このように過充電状態とされた各電池の側面に対し、図2Bに示したように、負極集電タブに対して、それぞれ10個については平行な方向から、また、それぞれ10個について垂直な方向から、ブンゼンバーナーを用いて10分間加熱した。そして、それぞれの電池について、破裂状態の有無を視認することにより測定した。結果をまとめて表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、実施例1の非水電解液二次電池10Aでは、負極集電タブ12eに平行な方向からの加熱に対しては良好な耐圧効果が発揮されているが、負極集電タブ12eに垂直な方向からの加熱に対しては比較例1に対する改善効果は見られなかった。このことは、巻回電極体14は加熱方向と同方向に膨張、すなわち、空隙部18が小さくなるように作用するが、負極集電タブ12eに平行な方向からの加熱に対しては、負極集電体12eの幅方向への押圧力として作用するので、負極集電体12eが曲がり難いため、良好な耐圧効果を奏することを示し、負極集電タブ12eに垂直な方向からの加熱に対しては、負極集電タブ12eが曲面状に曲がり易いために、耐圧効果の向上が見られなかったことを示している。
【0048】
また、実施例2の非水電解液二次電池10Bでは、負極集電タブ12eに平行な方向からの加熱及び垂直な方向からの加熱のいずれにおいても良好な効果を奏している。このことは、負極集電タブ12eに弓なり形状部分12fが形成されているため、負極集電タブ12eに垂直な方向からの加熱に対しても負極集電タブ12eが曲面状に曲がり難くなるので、上記のような効果を生じたものと思われる。
【0049】
これに対し、比較例1の非水電解液二次電池10Cでは、負極集電タブ12eに平行な方向からの加熱に対しても、負極集電タブ12eに垂直な方向からの加熱に対しても、実施例2の非水電解液二次電池10Bよりも劣る結果しか得られなかった。なお、比較例1の非水電解液二次電池10Cに対してセンターピン28を追加した比較例2の非水電解液二次電池10Dでは、実施例2の非水電解液二次電池10Bの場合と同様の良好な効果を奏している。
【0050】
以上述べた結果から、本発明の非水電解液二次電池によれば、負極集電タブに弓なり形状を形成しなくても、センターピンを備えていない従来例に対応する比較例1の場合よりも、良好な耐熱試験結果が得られることがわかる。なお、本発明の巻回電極体の構成を備えていなくても、比較例2のようにセンターピンを用いると良好な加熱試験結果が得られるが、本発明の非水電解液二次電池によれば、センターピンを用いなくても、特に負極集電タブに弓なり形状を形成した場合にはセンターピンを設けた場合と同様の良好な加熱試験結果が得られるため、センターピンを省略した分、電池容量を増大させることができるようになる。
【0051】
なお、上記実施例2では、集電タブの弾性を有する形状部分を弓なり形状とした例を示したが、円弧形状、波形形状等とすることも可能である。また、上記実施例1及び2では、負極極板が最内周側になるようにして、負極極板の巻き始め側に負極集電タブを形成した例を示したが、負極極板及び正極極板の配置を逆にし、正極極板の巻き始め側が最内周側になるようにして正極極板に正極集電タブを形成するようにしてもよい。しかしながら、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池においては、一般に正極極板と負極極板の対向する部分での充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)を1よりも大きく、例えば1.1程度とすることが行われているので、負極極板が最内周側に位置するようにすると、この負極極板が最外周側にも位置するように巻回できるため、容易に負極極板の充電容量比を正極極板の充電容量比よりも大きくできるようになる。
【符号の説明】
【0052】
10A〜10D:非水電解液二次電池 11:正極極板 11a:正極芯体 11b:中央側正極芯体露出部 11c:巻き終わり側正極芯体露出部 11d:正極合剤層 11e:正極集電タブ 12:負極極板 12a:負極芯体 12b:巻き始め側負極芯体露出部 12c:巻き終わり側負極芯体露出部 12d:負極合剤層 12e1、12e
2:負極集電タブ 12f:弓なり形状部分 13:芯棒 14:巻回電極体 15、16:絶縁板 17:電池外装缶 18:空隙部 19:封口板 20:正極端子 21:ガスケット 22:センターピン
図1
図2
図3
図4
図5