(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058453
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】成形品の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20161226BHJP
B29C 51/26 20060101ALI20161226BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20161226BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20161226BHJP
B29C 51/32 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C51/26
B29C51/10
B29C45/26
B29C51/32
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-78351(P2013-78351)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-200993(P2014-200993A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】榎本 繁
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−228814(JP,A)
【文献】
特開2007−203499(JP,A)
【文献】
特開平08−229981(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3095087(JP,U)
【文献】
特開2000−280282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 51/00 − 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートからなる親部品に子部品を組み付ける製造装置であって、
樹脂シートを吸着して親部品を成形する真空成形型と、
樹脂シートを挟んで真空成形型に対向して設けられる射出成形型と、
吸着状態の親部品に貫通孔を開ける穿孔手段と、
子部品を該子部品の開口部が前記貫通孔と重なるように吸着状態の親部品にあてがう子部品供給手段と、
を備え、
前記開口部および前記貫通孔を介して互いに連通する真空成形型側に形成される第1キャビティと射出成形型側に形成される第2キャビティとに樹脂を射出することにより、吸着状態の親部品に子部品を組み付けることを特徴とする成形品の製造装置。
【請求項2】
前記子部品供給手段が射出成形型に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の製造装置として、樹脂シートを真空引きにより成形型に密着させて成形する真空成形装置がある。この真空成形装置では、成形型が複雑な凹凸等の形状を呈している場合、平板の樹脂シートが成形型の形状に追従しきれず、部分的に薄肉となったりシワが発生しやすいという問題がある。
【0003】
この問題に対して特許文献1には、クランプ部材により樹脂シートをその一部にたるみが生じるように挟持する技術が記載されており、樹脂シートの一部にたるみを持たせた状態で真空成形することで、このたるみの部分において深く絞り成形したり、複雑な形状に成形して樹脂シートの薄肉化やシワ発生を防止する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−39862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、ある程度の成形型の凹凸形状に対しては有効と思われるが、高さのあるリブ等を形成する場合には対応できないおそれがある。また、真空成形装置は平板状の樹脂シートを部分的に表裏どちらか一方に突出させて成形するものであるから、その部分の他方側は凹んだ形状になるという制約を受け、たとえば樹脂シートのある部分において表裏どちらにも凸形状を設ける等の複雑な形状には対応できない。この場合、複雑な形状部を子部品として別途に構成し、真空成形装置で樹脂シートを成形して成形型から取り出した後、子部品を組み付ける方法が考えられる。しかし、この方法では真空成形工程の他に子部品の組み付け工程が必要となり、成形品の製造工程が増えるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、複雑な形状の成形品も成形でき、かつ成形品の製造サイクルタイムの短縮化が可能な成形品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂シートからなる親部品に子部品を組み付ける製造装置であって、樹脂シートを吸着して親部品を成形する真空成形型と、樹脂シートを挟んで真空成形型に対向して設けられる射出成形型と、吸着状態の親部品に貫通孔を開ける穿孔手段と、子部品を該子部品の開口部が前記貫通孔と重なるように吸着状態の親部品にあてがう子部品供給手段と、を備え、前記開口部および前記貫通孔を介して互いに連通する真空成形型側に形成される第1キャビティと射出成形型側に形成される第2キャビティとに樹脂を射出することにより、吸着状態の親部品に子部品を組み付けることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複雑な形状の成形については親部品とは別部材からなる子部品により対応できる。そして、親部品の成形工程と射出成形による親部品と子部品との組み付け工程とを略並行にできるため、成形品の製造サイクルタイムの短縮化が可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記子部品供給手段が射出成形型に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、子部品供給手段を簡単でコンパクトな構造にでき、製造装置の組立コストの低減および省スペース化が図れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複雑な形状の成形品も成形でき、かつ成形品の製造サイクルタイムの短縮化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る成形品の製造装置の側断面図である。
【
図2】本発明に係る成形品の製造装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、本発明に係る成形品の製造装置(以降単に製造装置という)1は、樹脂シートSを成形してなる親部品J1に子部品J2を組み付ける製造装置である。製造装置1は、樹脂シートSを吸着して親部品J1を成形する真空成形型2と、樹脂シートSを挟んで真空成形型2に対向して設けられる射出成形型3と、吸着状態の親部品J1に貫通孔6(
図2)を開ける穿孔手段4と、子部品J2をこの子部品J2の開口部7が前記貫通孔6(
図2)と重なるように吸着状態の親部品J1にあてがう子部品供給手段5と、を備える。
【0014】
「真空成形型2」
真空成形型2は、その上面が親部品J1を成形する成形面として構成されており、下部フレーム8に設置されている。真空成形型2の下方には図示しない真空ポンプにより真空引きされる密閉状の吸引室9が形成され、真空成形型2には成形面と吸引室9とを連通する吸引孔10が複数穿孔されている。樹脂シートSは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなり、予め加熱されて成形可能な状態で図示しない搬送装置により搬送され、真空成形型2に供給される。以上により、樹脂シートSは、
図2に示すように、吸引室9および吸引孔10を通して真空引きされて真空成形型2の成形面に吸着され、親部品J1として成形される。以上の真空成形型2の構成は従来公知のものである。
【0015】
真空成形型2の一部には射出受け部材11が嵌め込まれている。射出受け部材11の上面は、射出受け部材11の周囲の成形面よりも低位置にある。この射出受け部材11の上方の凹状空間が第1キャビティ12を構成する。
【0016】
「射出成形型3」
真空成形型2の上方には射出成形型3が配設されている。射出成形型3は、図示しない駆動源により昇降する上部フレーム13に取り付けられていることにより、真空成形型2の成形面に対し昇降自在に構成されている。射出成形型3の下面には、凹状の第2キャビティ14が形成されている。第2キャビティ14は第1キャビティ12に対向する位置に形成されている。
【0017】
射出成形機としてはたとえば公知のプリプランジャ式射出成形機が挙げられる。プリプランジャ射出成形機は、スクリューの回転と加熱とによって混練された成形材を射出室に圧送したうえでプランジャ等の射出部材15から射出するものである。
図1では、プリプランジャ式射出成形機の構成要素の内でプランジャ等の一部の射出部材15のみを図示している。射出部材15の下端周りは射出成形型3に対し上下に貫通するように取り付けられ、射出部材15の先端の射出口は第2キャビティ14に臨む。また、射出成形型3には温度調整手段16が形成されている。
【0018】
「穿孔手段4」
穿孔手段4は、昇降自在な穿孔体17からなる。穿孔体17はその上部が尖端に形成されている。符号18は穿孔体17の駆動源であり、たとえばエアシリンダ等である。穿孔体17はこのエアシリンダのロッドの上端に取り付けられる。穿孔体17は、射出受け部材11に形成されたガイド孔19にガイドされて上昇し、第1キャビティ12を通過したうえで吸着状態の親部品J1に貫通孔6を穿つ。なお、穿孔体17としては、回転可能なドリル部材から構成してもよい。
【0019】
「子部品供給手段5」
子部品J2としては、たとえば成形型2の吸着のみでは成形が困難な形状を呈した部品である。また、材質も親部品J1と同じである必要はなく、金属やゴム等からなる部品であってよい。
図1に示した子部品J2は、水平状に延設された基部20と、基部20の周囲から上方に立設される立上がり部21とを有した形状からなる。基部20には、孔や切欠き等からなる開口部7が形成されている。なお、子部品J2としては、立上がり部21を有さずに基部20のみから構成された部材でもよい。
【0020】
本実施形態では、子部品J2を鋼板としてあり、射出成形型3の下面には磁石22が嵌め込まれている。子部品J2は磁石22により吸磁されて射出成形型3の下面に取り付けられる。そして、射出成形型3が下降することで、子部品J2は、子部品J2の開口部7が親部品J1の貫通孔6(
図2)と重なるように吸着状態の親部品J1にあてがわれる。つまり本実施形態では射出成形型3と磁石22とにより子部品供給手段5が構成される。
【0021】
また、磁石22を用いる構造の他、たとえば射出成形型3にクランプ機構を設けてこのクランプ機構で子部品J2を把持する構造や真空により子部品J2を吸着する構造等にしてもよい。また、射出成形型3に対しての子部品J2の供給形態についても本発明では特に限定されるものではなく、たとえば射出成形型3を子部品J2のストック箇所まで移動させて子部品J2を射出成形型3に取り付けるようにしてもよいし、図示しないロボットアーム等を用いて子部品J2を射出成形型3に取り付けるようにしてもよい。
【0022】
「作用」
図2を参照して製造装置1の動作の一例を説明する。
図2(a)は樹脂シートS(
図1)が吸引室9および吸引孔10を通して真空引きされて成形型2の成形面に吸着され、親部品J1として成形された状態を示している。穿孔体17は下降位置にある。
【0023】
図2(a)の状態から、
図2(b)に示すように、穿孔体17が上昇して親部品J1に貫通孔6を穿ち、これと前後して射出成形型3が下降して子部品J2が親部品J1にあてがわれる。子部品J2の開口部7は親部品J1の貫通孔6と重なるように位置する。次いで
図2(c)に示すように穿孔体17が下降し、真空成形型2側に形成される第1キャビティ12と射出成形型3側に形成される第2キャビティ14とが貫通孔6および開口部7を介して互いに連通する。
【0024】
次いで
図2(d)において射出部材15から射出材23が第1キャビティ12と第2キャビティ14の双方に射出される。これにより、
図3に示すように、親部品J1の貫通孔6および子部品J2の開口部7の上下に形成される射出材23に挟持される態様で、子部品J2が親部品J1に組み付けられてなる成形品Jが成形される。
【0025】
以上のように、真空成形型2と射出成形型3と穿孔手段4と子部品供給手段5とを備え、子部品J2の開口部7および親部品J1の貫通孔6を介して互いに連通する真空成形型2側に形成される第1キャビティ12と射出成形型3側に形成される第2キャビティ14とに射出材23を射出することにより、真空成形型2に吸着状態の親部品J1に子部品J2を組み付ける製造装置1によれば、複雑な形状の成形については親部品J1とは別部材からなる子部品J2により対応できる。そして、真空成形による親部品J1の成形工程と射出成形による親部品J1と子部品J2との組み付け工程とを略並行にできるため、成形品Jの製造サイクルタイムの短縮化が可能となる。
【0026】
また、本実施形態のように、子部品供給手段5を、射出成形型3とこの射出成形型3に取り付けた磁石22から構成すれば、すなわち子部品供給手段5を射出成形型3に設ける構成とすれば、子部品供給手段5を簡単でコンパクトな構造にでき、製造装置1の組立コストの低減および省スペース化が図れる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。穿孔手段4としては、真空成形型2に設ける構成に限定されず、別途に設けたり、射出成形型3側に設けることも可能である。
また、説明した実施形態では、上方に射出成形型3を配し、下方に真空成形型2を配したが、逆に上方に真空成形型2を配し、下方に射出成形型3を配する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 成形品の製造装置
2 真空成形型
3 射出成形型
4 穿孔手段
5 子部品形成手段
6 貫通孔
7 開口部
12 第1キャビティ
14 第2キャビティ
15 射出部材
17 穿孔体
22 磁石
23 射出材
J 成形品
J1 親部品
J2 子部品