特許第6058469号(P6058469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058469
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】廃棄物成形物燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20161226BHJP
   C10L 5/46 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B09B3/00 301U
   C10L5/46ZAB
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-112687(P2013-112687)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231037(P2014-231037A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】井田 民男
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−515080(JP,A)
【文献】 特開昭62−007793(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/078023(WO,A1)
【文献】 特開2012−041542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C10L 5/46
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解、燃焼し、炉下部の石炭コークス床にて熱分解残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉に供給され石炭コークスとともに燃焼して熱分解残渣の溶融熱源とする廃棄物成形物燃料を製造する方法において
バイオマスとプラスチックを含む廃棄物原料を乾燥し、破砕サイズを20mm以下に破砕した後、破砕後の廃棄物原料を加熱圧縮成形機に投入し加熱温度を180〜300℃で加圧力を10MPa以上で加成形して廃棄物成形物燃料を成形し、
加熱圧縮成形時にプラスチックが加熱されて軟化溶融した軟化溶融プラスチックを、圧縮を受けて狭くなったバイオマス原料間の隙間に行きわたらせ空隙を埋め、廃棄物ガス化溶融炉に供給された際に廃棄物成形物燃料が崩壊する起点となるバイオマス原料間の空隙を生じにくくするとともに、
バイオマスの脱水反応や熱分解による変性を進め表面性状を親水性から疎水性に近づけさせ、プラスチックの熱分解や加水分解を進め表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合を形成させ、バイオマスとプラスチックの表面の間で結合を生じさせ廃棄物成形物燃料の圧縮強度を40MPa以上に増大させ、
製造された廃棄物成形物燃料が炉内へ投入され崩壊することなく炉下部の石炭コークス床まで到達し、炉下部にて廃棄物成形物燃料の揮発分と固定炭素分が燃焼されるように、崩壊により比表面積が大きくなり廃棄物原料の揮発分が気散することを抑制することを特徴とする廃棄物成形物燃料の製造方法。
【請求項2】
廃棄物原料の乾燥が水分を3〜25wt%とすることとする請求項1に記載の廃棄物成形物燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物溶融炉での廃棄物の熱分解燃焼残渣の溶融のための燃料としての廃棄物成形物燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、燃焼して、熱分解後の残渣(灰分)を溶融しスラグにして排出する廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化し可燃性ガスを燃焼することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、熱分解、燃焼後の灰分を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部に石炭コークスを堆積させたコークス床が高温火格子を形成し、この高温火格子を形成する石炭コークスが燃焼して熱分解後の灰分の溶融熱源となっているが、近年、化石燃料に由来する石炭コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することが要望されている。二酸化炭素排出量を削減するという社会的要望に応じて、化石燃料である石炭コークスの代替としてバイオマスを原料とするバイオマス固形燃料を利用することが検討されている。このような用途に使用可能なバイオマス固形燃料としては、例えば、バイオマスとして籾殻を原料として加圧圧縮し製造される、特許文献1に開示のバイオマス固形燃料が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−210897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオマス原料を加圧圧縮したバイオマス固形燃料を種々の燃焼炉、溶融炉での灰分の溶融のために用いようとした際には、種々の特性を要求される。灰分は炉下部にて溶融されるので、バイオマス固形燃料がその溶融熱源となるためには、このバイオマス固形燃料の固定炭素分のみならず内部に含まれている揮発分も上記炉下部にまで、もち込まれてここで燃焼することが、保有する燃焼成分を有効に利用できることから求められる。その要求に応えるためには、バイオマス固形燃料は、強度が十分で、炉内に投入して直ちに粉化して飛散してしまわずに、固体燃料内部の揮発分が炉下部に至るまでの間に揮発してしまわないことである。そうすることで、揮発分を含めた固形燃料の全熱量を炉下部で得られて灰分のための溶融熱源に足りるものとなる。これらの特性が確保されていないと、固形燃料内の揮発分が途中で揮発そして燃焼してしまって炉下部での燃焼に供しないし、また固形燃料が炉下部に至る前に崩壊して炉外への飛散量が多くなり、他の燃料の燃焼に支障を生じさせるなどして、炉内での燃焼が不完全になるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、上述の特性を備えていて、燃焼炉、溶融炉などに供給した際に、揮発分の揮発そして炉外飛散が抑制でき、安定した燃焼が得られるバイオマスを含む廃棄物原料から製造する固形燃料としての廃棄物成形物燃料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、上述の課題は、廃棄物成形物燃料の製造方法に関して、バイオマスとプラスチックを含む廃棄物原料から廃棄物成形物燃料を製造する方法であって、廃棄物原料を乾燥し、破砕した後、破砕後の原料を加熱し加圧力を10MPa以上で加圧成形することにより解決される。
【0009】
破砕後の廃棄物原料にはプラスチックが含まれており、この廃棄物原料が成形時に加熱されると、廃棄物原料内のプラスチックが軟化溶融し、加圧力を10MPa以上として廃棄物原料を加圧成形することにより、圧縮を受けて狭くなったバイオマス原料間の隙間に行きわたり結合材として機能する。軟化溶融して上記隙間に行きわたるプラスチックは成形物の表面にまで及び、また、軟化溶融プラスチックにより成形物の構成粒子間に空隙が生じにくくなり、空隙を起点として成形物が崩壊することがなく崩壊により比表面積が大きくなり一気に揮発分が気散することを抑制するため、成形物から揮発分が気散しにくい性状となる。廃棄物原料を加圧成形する際の加圧力を10MPa以上とすることにより、軟化溶融プラスチックの結合材としての機能や成形物表面から揮発分が気散しにくい性状とする効果を十分に発揮させることができる。成形物が成形装置から取り出された後、保管中に降温してプラスチックは硬化し、成形物の強度が確保される。
【0010】
本発明において、廃棄物原料の乾燥が水分を3〜25wt%とすることが好ましい。水分は成形後でも蒸発により隙間の発生の原因となるので、原料中の水分は少ないほどよい。ただし、廃棄物原料中に若干の水分が含まれていると、加熱成形時の軟化性が向上し成形物の密度が高くなるので、3wt%以上の水分を含有していることが望ましい。
【0011】
本発明において、廃棄物原料の寸法が大きいと成形物の構成粒子間に空隙が生じ易く、軟化溶融プラスチックによる結合効果や揮発分が気散しにくい性状とする効果が低くなるため、表面から揮発分が気散しにくい性状となる廃棄物成形物を得るようにするには、廃棄物原料の破砕は破砕サイズが20mm以下であることが好ましく、さらには、破砕サイズが5mm以下であることがより好ましい。
【0012】
また、本発明において、成形時の温度に関しては、廃棄物原料の成形温度が120〜300℃であることが好ましく、さらに、温度については、成形温度が180〜300℃であることがより好ましく、また、成形温度が230〜250℃であることが望ましい。このような温度に廃棄物原料を加熱して加圧成形し廃棄物成形物を製造することにより、廃棄物原料のプラスチックが十分に軟化溶融し、軟化溶融プラスチックによる廃棄物粒子間の結合効果や揮発分が気散しにくい性状とする効果を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように、プラスチックとバイオマスを含む廃棄物を加圧力を10MPa以上で加圧成形することとしたので、加熱を受けて軟化溶融するプラスチックが結合材として機能し、かつ廃棄物原料内での隙間を塞ぐ機能を発揮して、表面から揮発分が気散しにくい性状であって、強度の高い廃棄物成形物を得ることができる。廃棄物を投入し熱分解、燃焼、灰分を溶融するコークス床を有する廃棄物溶融炉のための燃料として使用された際に、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、一方、石炭コークスと、バイオマスとプラスチックを含む廃棄物成形物が燃焼して灰分の溶融熱源となり、燃料として好ましい特性を有するバイオマスとプラスチックを含む廃棄物成形物を得ることができる。また、溶融炉の下部のコークス床まで下降する過程で熱分解、崩壊せずに到達できる廃棄物成形物燃料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本実施形態では、廃棄物溶融炉における溶融熱源として用いられることのできる廃棄物成形物、特に、廃棄物を投入して熱分解、燃焼、灰分を溶融するコークス床を有する廃棄物溶融炉において、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとともに溶融熱源となる、バイオマスとプラスチックを含む成形物を燃焼して溶融熱源とするための好ましい特性を有するバイオマスとプラスチックを含む廃棄物を原料として廃棄物成形物が得られる。
【0017】
次に、かかる廃棄物成形物そしてその製造手順について説明する。
【0018】
バイオマスとプラスチックを含む廃棄物を乾燥後、破砕し、破砕後の原料を成形機へ投入し加熱加圧圧縮して成形し、成形物を成形機から取り出す。かくして、廃棄物成形物を得る。
【0019】
廃棄物にはバイオマスとプラスチック廃棄物が含まれており、すなわち、廃棄物はバイオマスとプラスチックを主成分とする廃棄物原料となる。かかる廃棄物原料を、水分が3〜25wt%となるように乾燥し、サイズが20mm以下、より望ましくは5mm以下となるように破砕した後、その破砕した廃棄物原料を加熱圧縮成形機に投入し、成形機内の廃棄物原料が120〜300℃、望ましくは180〜300℃、より望ましくは230〜250℃になるよう加熱しながら、該廃棄物原料に10MPa以上の圧力をかけて成形する。
【0020】
本発明において、廃棄物原料に含まれるプラスチックは、成形物内にて廃棄物原料を結合する結合材(バインダー)として機能する。
【0021】
従来では、親水性のバイオマスと疎水性のプラスチックの界面では強固な結合は得られず、成形物の冷間圧縮強度は20MPa以上にならなかった。これ以上の応力を成形物に加えると、バイオマスとプラスチックの界面を基点とした亀裂が生じ、これが成長・連通して破壊が生じて容易に崩壊してしまうという問題があった。ここで、冷間圧縮強度とは、円筒形のサンプルの上面を軸方向に加圧し、亀裂が生じ圧壊したときの荷重をサンプル断面積で除した値である。
【0022】
しかし、本発明にしたがい、廃棄物原料を上述したような、乾燥状態のもとで破砕し、加熱加圧すると、バイオマスとプラスチックの間に強固な結合を生じさせる。上記破砕に関しては、バイオマスとプラスチックをサイズが20mm以下となるように破砕することにより加圧時に破砕原料(原料粒子)同士が接触する表面積を増大させる。原料におけるフィルム状プラスチックの含有量が少ない場合は、原料は5mm以下のサイズに破砕することが望ましい。乾燥に関しては、原料の水分が3〜25wt%になるように乾燥させることが好ましく、その理由は、原料に25wt%以上の水分が含まれていると原料粒子の密着を阻害し、3wt%以下の水分量だとバイオマスの軟化が阻害されるからである。
【0023】
成形時の原料の加熱温度を120℃以上とすることで、プラスチックを軟化させ、かかる状態で10MPa以上の圧力をかけると個々の原料粒子が変形して密着する。加熱温度が120〜180℃の範囲では、プラスチックの軟化には十分であっても、バイオマスの軟化には十分でないものの、軟化したプラスチックが原料の粒子間に進入して流動し空隙を埋めるため、成形物の密度は上昇する。
【0024】
120〜180℃の加熱温度で成形した後、冷却して得られた成形物は冷間圧縮強度が20MPaに達しないが、密度は1.3g/cm以上となり、プラスチックを含まないバイオマス単独の成形物(密度1.3g/cm未満)よりも高密度となる。また、180〜300℃の成形温度で製造した成形物の圧縮強度は、40MPa以上となる。
【0025】
加熱温度を180℃以上に上昇させると、バイオマスおよびプラスチックの界面が変性し、結合を生じる。すなわち、バイオマスは脱水反応や熱分解による変性が進むため、表面は疎水性に近づいていく。プラスチックは熱分解や加水分解が進むため、表面に親水性の官能基や反応性の高い不飽和結合が形成される。このバイオマスおよびプラスチックの表面の間で、水素結合、疎水結合、化学反応による結合が生じ、成形物の強度は増大する。
【0026】
加熱温度が300℃以上になると、プラスチックの熱分解が顕著となり、ガス化、油化が進むため成形物の強度が低下するので好ましくない。かかる状況のもとで、バイオマスとプラスチックの結合による強度増加を最大化するためには、加熱温度を230〜250℃にすることが望ましい。また、加熱の間10MPa以上の圧力を維持することが必要であり、軟化したプラスチックの原料粒子間への進入とバイオマス粒子の密着とが行われ強固な結合を生じさせる。このように変性させたバイオマスとプラスチックの界面で結合を生じさせた後、冷却と脱圧を行ない、成形物を成形機から取り出す。
【0027】
成形物は大きいものであるほど比表面積が小さく熱分解を受けにくくなり、そのままで溶融炉の下部のコークス床まで到達し易いため、径40mm以上の寸法にすることが望ましい。また、破砕時にサイズが20mm以下になってしまった破砕原料の嵩比重は小さく取り扱いにくいため、一旦、既存の造粒機を用いて径5〜20mmのペレットに成形し、これを径40mm以上の成形物を製造する成形機に投入する方法が考えられる。しかし、一度造粒され、見掛密度が1.2g/cmを越えたペレットは、成形機内でブリッジを形成して圧力むらを生じること、また造粒により平滑となった表面は相互に結合しにくいことから、成形物の強度は大きく低下するので、原料は破砕物のまま成形機に投入することが望ましい。
【0028】
かくして、溶融炉の下部のコークス床まで下降する過程で熱分解、崩壊せずに到達できる廃棄物成形物を得ることができ、廃棄物を投入し熱分解、燃焼し、灰分を溶融するコークス床を有する廃棄物溶融炉へ、かかる廃棄物成形物が投入されると、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成し、石炭コークスとともに、バイオマスとプラスチックを含む本発明の廃棄物成形物が燃焼して溶融熱源となる。