【実施例1】
【0010】
図1は実施例1に係るスクロール式流体機械の縦断面図である。
図1において、1はスクロール式空気圧縮機のケーシングで、該ケーシング1は、筒状に形成されたハウジング1Aによって保持される軸受27および軸受28を介して、その内部に後述の駆動軸15を回転可能に支持している。
【0011】
2はケーシング1の開口側に設けられた固定スクロールで、該固定スクロール2は、
図1に示すように、軸線O−Oを中心として略円板状に形成された鏡板3と、該鏡板3の表面となる歯底面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部4と、該ラップ部4を取囲んで鏡板3の外径側に設けられた筒状の外周壁部5と、鏡板3の背面に突設された複数の冷却フィン6とによって大略構成されている。
【0012】
ここで、ラップ部4は、例えば最内径端を巻始め端として、最外径端を巻終り端としたときに、内径側から外径側に向けて例えば3巻前後の渦巻状に巻回されている。そして、ラップ部4の歯先面は、相手方となる旋回スクロール8の鏡板9の歯底面から一定の軸方向寸法だけ離間している。
【0013】
また、ラップ部4の歯先面には、ラップ部4の巻回方向に沿ってシール溝4Aが設けられ、該シール溝4A内には、旋回スクロール8の鏡板9に摺接するシール部材としてのチップシール7が設けられている。
【0014】
8はケーシング1内に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール8は、固定スクロール2の鏡板3と対向して配置された略円板状の鏡板9と、該鏡板9の表面となる歯底面に立設された渦巻状のラップ部10と、鏡板9の背面に突設された複数の冷却フィン11と、該冷却フィン11の先端側に位置して固定された背面プレート12とによって大略構成されている。
【0015】
ここで、ラップ部10は、固定スクロール2のラップ部4とほぼ同様に、例えば3巻前後の渦巻状をなしている。そして、ラップ部10の歯先面は、相手方となる固定スクロール2の鏡板3の歯底面から一定の軸方向寸法だけ離間している。また、ラップ部10の歯先面には、ラップ部10の巻回方向に沿ってシール溝10Aが設けられ、該シール溝10A内には、固定スクロール2の鏡板3に摺接するシール部材としてのチップシール13が設けられている。
【0016】
また、背面プレート12の中央側には、旋回軸受29等を介して駆動軸15のクランク部15Aと回転可能に連結される筒状のボス14が形成されている。このとき、駆動軸15の一端側には、ケーシング1の外部に位置してプーリ15Bが設けられ、このプーリ15Bは、例えば駆動源としての電動モータの出力側にベルト(いずれも図示せず)等を介して連結されている。これにより、駆動軸15は、電動モータ等によって回転駆動し、固定スクロール2に対して旋回スクロール8を旋回運動させるものである。
【0017】
なお、モータの回転軸を駆動軸15と一体とした、モータ一体型のスクロール式空気圧縮機とし、プーリ15Bや、ベルトを不要にした構成でも良い。
【0018】
背面プレート12の外径側とケーシング1との間には、旋回スクロール8の自転を防止する例えば3個の補助クランク18(1個のみ図示)が設けられている。補助クランク18は補助クランク軸受30によって、背面プレート12とケーシング1に回転可能に支持されている。
【0019】
19は固定スクロール2と旋回スクロール8との間に設けられた複数の圧縮室で、これらの圧縮室19は、ラップ部4、10の間に位置して外径側から内径側にわたって順次形成され、チップシール7、13によって気密に保持されている。そして、各圧縮室19は、旋回スクロール8が順方向に旋回運動するときに、ラップ部4、10の外径側から内径側に向けて移動しつつ、これらの間で連続的に縮小される。
【0020】
これにより、各圧縮室19のうち最外径側の圧縮室19には、後述する吸込口20から外部の空気が吸込まれ、この空気は最内径側の圧縮室19に達するまでに圧縮されて圧縮空気となる。そして、この圧縮空気は吐出口22から吐出され、外部の貯留タンク(図示せず)に貯えられる。
【0021】
20は固定スクロール2の外径側に設けられた吸込口で、該吸込口20は、鏡板3の外径側から外周壁部5にかけて開口し、外径側の圧縮室19に連通している。また、吸込口20は、固定スクロール2の鏡板3のうち旋回スクロール8のラップ部10の外径側に位置して、チップシール13が摺接しない範囲(非摺動領域)に開口している。そして、吸込口20は、例えば大気圧の空気を吸込フィルタ21を通じて外径側の圧縮室19内に吸込むものである。
【0022】
なお、吸込口20は、加圧された空気を吸込む構成としてもよい。この場合、吸込フィルタ21を取外して、加圧空気が供給される配管に吸込口20を接続する構成としてもよい。
【0023】
22は固定スクロール2の鏡板3の内径側(中心側)に設けられた吐出口で、該吐出口22は、最内径側の圧縮室19に連通し、この圧縮室19内の圧縮空気を外部に吐出させるものである。
【0024】
25は旋回スクロール8の鏡板9と対面する固定スクロール2の端面に設けられたフェイスシール溝で、該フェイスシール溝25は、外周壁部5の外径側に位置し、外周壁部5を取囲む円環状に形成されている。また、フェイスシール溝25内には円環状のフェイスシール26が取付けられている。そして、フェイスシール26は、固定スクロール2の端面と旋回スクロール8の鏡板9との間を気密にシールし、これらの間から外周壁部5内に吸込んだ空気が漏れるのを防止している。
【0025】
31は背面プレート12上に筒状に設けられ、旋回軸受29と連通しているグリース溜りであり、後述のように圧縮運転時に旋回軸受29にグリースを供給する。また、グリース溜り31は、図示のように、旋回スクロール8の冷却フィン11側に突出して設けられている。
【0026】
図2に冷却フィン11の具体例を示す。冷却フィン11はグリース溜り31を避けて設ける必要があるので、
図2に示すように、グリース溜り31の周囲のみ冷却フィン11の高さを低くする。これにより、冷却フィン11の冷却能力の低下を抑えることができる。
【0027】
次に、本実施例に係るスクロール式流体機械の冷却風の流れについて、
図3を用いて説明する。
図3は、実施例1に係るスクロール式流体機械の横断面図であり、
図1を上から見た場合の断面図である。
【0028】
図3において、プーリ15Bにはボルト等を用いて冷却ファン16が取付けられ、該冷却ファン16は、ファンケーシング17内で冷却風を発生させる。これにより、
図3に矢印で示すように、冷却ファン16は、冷却風をファンケーシング17内のダクト等に沿ってケーシング1の内部や各スクロール2、8の背面側に送風し、ケーシング1、固定スクロール2、旋回スクロール8等を冷却する。また、グリース溜り31は、冷却風の流路上に突出して設けられているため、グリース溜り31の内部のグリースは冷却される。
【0029】
本実施例に係るスクロール式空気圧縮機は上述したような構成を有するもので、次に、このスクロール式空気圧縮機の動作について説明する。
【0030】
まず、電動モータ等の駆動源(図示せず)により駆動軸15を回転駆動すると、旋回スクロール8は、自転防止機構によって自転が防止された状態で、駆動軸15の軸線O−Oを中心として旋回運動を行ない、固定スクロール2のラップ部4と旋回スクロール8のラップ部10間に画成される圧縮室19は連続的に縮小する。これにより、固定スクロール2の吸込口20から吸込んだ空気は各圧縮室19で順次圧縮しつつ、固定スクロール2の吐出口22から圧縮空気として外部のタンク等に吐出することができる。
【0031】
ここで、本実施例では、背面プレート12上にグリース溜り31を設け、このグリース溜り31内に旋回軸受29を潤滑するためのグリースを充填する構造としたから、上述した圧縮運転時にはグリース溜り31は旋回スクロール8とともに旋回運動を行い、内部に充填されたグリースは遠心力によりグリース溜り31の円周上より旋回軸受29に供給される。
【0032】
従って本実施例のように旋回軸受29には圧縮運転時にグリース溜り31よりグリースが供給されることで、旋回軸受29の潤滑状態をより長く維持することができ、該旋回軸受29の耐久性、寿命等を向上でき装置の信頼性を高めることができる。
【0033】
また、本実施例においては、グリース溜り31は、冷却風の流路上に突出して設けられているため、グリース溜り31から供給されるグリースは、冷却ファン16の冷却風によって冷却されて、温度上昇による劣化が抑制され、潤滑性を維持したまま供給されるという効果がある。
【0034】
さらに、グリース溜り31を背面プレート12上であって、冷却風の流路上に突出して設けたので、旋回軸受29自体から発生する熱源から離して配置でき、さらに、グリース溜り31に充填されたグリースの温度上昇による劣化が抑制されるという効果がある。
【実施例5】
【0045】
図9は実施例5に係るスクロール式流体機械の横断面図を示す。
【0046】
本実施例の特徴は、
図9に示すように、グリース溜り31にグリース供給機構としてグリースニップル36を設ける点である。グリース溜り31は冷却風流路に突出して設けられており、グリースニップル36は圧縮機の冷却風出口、すなわち開口部に面して設けることができる。
これによりグリース溜り31内のグリースが枯渇した場合でも、圧縮機を分解することなく開口部よりグリースニップル36を通じて容易にグリースを供給することができる。
【0047】
なお、グリース供給機構の変形例として図示はしないが、グリース溜り31の開口部側にネジ穴を設け、たとえばブラインドネジ等で封止しておき、メンテナンス時にブラインドネジをはすし、グリースニップル等を前記ネジ穴に取り付けグリースを供給することも可能である。
【0048】
また、他の変形例として、グリース溜り31の旋回スクロール8の鏡板9との対向面にグリースニップル36を設けてもよい。この場合、L字型のグリースニップル36を採用しその給油口を圧縮機冷却風出口方向に向ければ同様にグリースを供給することが可能となる。なお、グリースニップル36の給油口が冷却風出口方向に向いていない場合でも、グリースガンなどのノズル形状をL字等の屈曲したものを使うことで冷却風出口からグリースを供給することが可能となる。
【0049】
さらに、グリースニップル36の給油口を冷却風出口と逆の方向(冷却風入口)に向ける場合では、ファンケーシング17のダクトを取り外すことで、冷却風入口からグリースを供給することが可能となる。