【実施例1】
【0027】
<本発明の基本概念>・・・最初に、
図1及び
図2を参照して本発明の概念を説明する。上述した課題を解決すべく鋭意努力した結果、発明者らは少ないキャリアガス消費量で十分速い流速を実現でき、且つ最適な堆積速度曲線を同時に実現し得るリアクタ構造を見出した。その方法は、対向面上に凹凸を設けることにより、反応炉中心から放射状に広がる、互いに分離されたフローチャネルを形成し、成膜に寄与するエリアをこのフローチャネルに限定せしめるというものである。従来技術では対向面形状をすり鉢型にしたり、あるいはフローチャネルの途中に段差をつけるといった方法でフローチャネル高さに変化を付ける方法は存在していた(例えば特開2005−5693号公報など)。しかしながら、いずれも周方向で見たときのフローチャネル高さは一定であった。従って、特開2005−5693号公報の技術では、基板よりも上流の領域における不要な堆積を削減する効果はあるものの、基板領域におけるフローチャネル高さは周方向において一定であることから、基板領域での堆積速度曲線は通常のフローチャネル形状のものと本質的に変わらない。従ってこの構造においても、先に述べた成膜圧力、流速、堆積速度曲線の三要素が複合した問題を逃れられるものではない。本発明は周方向においてフローチャネル高さに変化を付けるというものであり、その意味で従来のものとは全く形態が異なり、そしてそれには以下に述べるような効能があるのである。
【0028】
図1及び
図2に本発明の概念を示した。
図1は、本発明の成膜装置を構成する対向面形成部材の平面図、
図2は、前記
図1のA−A断面図である。成膜装置のリアクタ構造は、
図5及び
図6に示す通りであるが、ここでは、本発明の基本概念の説明のため、対向面形成部材30についてのみ説明する。なお、リアクタ構造10自体は、上述した背景技術のリアクタ構造100と基本的に同様であるが、本発明では、サセプタ20と対向する対向面形成部材30の形状に特徴を有する。前記対向面形成部材30は、中央に開口部32を有しており、放射状に凹部34と凸部36が交互に形成されている。サセプタ20との対向面がこのような形状であれば、凸部36には原料ガスはほぼ流れず、ガスの大部分は凹部34を流れるため、成膜は基本的に凹部34でのみ行われる。
【0029】
さらに例を用いて本発明の概念を詳述する。いま従来構造(
図10参照)において、フローチャネル高さL0にて成膜圧力、流速、堆積速度曲線の観点から最適な成膜条件が得られているとする。本発明構造を、凸部36と凹部34の面積比率を1:1に設定し、そして凹部34におけるフローチャネル高さL(
図2参照)は従来構造における最適値L0と同じとする。理解を容易にするため、凸部36には全くガスは流れず凹部34にのみに流れるものと仮定する。なお、実際の構造においては成膜エリアを完全に凹部34に限定することは出来ないが、それに近い状況は容易に実現可能であるので、この仮定の下で考察を進めて差し支えない。成膜圧力は任意に制御が可能であるのでこれを従来装置の条件と同じに設定する。
【0030】
以上のリアクタ構造のもとで、従来と同様の好適な堆積速度曲線を得るためには、凹部フローチャネルにおける流速を従来のものと一致させればよい。本発明構造においてはガスの流れる断面積は従来に比べ半分となっているため、同じ流速を得るには半分のキャリアガス流量でよい。逆にその条件であれば、凹部34においてはフローチャネル高さLも流速も従来の最適条件と全く等しくなっているので、必然的に最適な堆積速度曲線が得られる。
【0031】
次に堆積速度の絶対値に関し考察する。本発明構造では従来構造に比べ成膜に寄与する領域は半分になるので、これは堆積速度の絶対値を半分にする作用がある。一方、キャリアガスが半分になることからガス中の原料濃度は倍となり、これは堆積速度を倍にする効果を有する。結果としてこれらの効果がキャンセルし合い、堆積速度の絶対値は従来と同等となる。つまり同じ原料分子の投入量で従来と同等の堆積速度が得られるというわけであり、原料の利用効率を損なうことはない。
【0032】
ここまでの説明で本発明構造を採用することにより、従来の半分量のキャリアガスで、従来の最適条件と全く同様の状態を実現できることが分かる。これだけでもキャリアガスの使用量を削減でき、ひいては製品のコストダウンに資するという大きな利点を有するが、実は本発明にはそれとは別のさらに重要な利点が存在する。キャリアガス流量を減らす際に、揮発成分の材料ガス流量を従来と同じに維持すれば、キャリアガス中の揮発成分材料ガスの割合が自動的に増加する。従って、従来に比べ揮発成分の材料ガス分圧を大幅に高めることが出来るのである。ここでもIIIV族半導体を例にとって説明する。本発明の成膜条件において、成膜における最も重要なパラメータの一つである、V/III比を従来条件と同じに設定するとする。III族の供給量は従来と同じでよいので、V族材料ガスの供給量も同じのままでよい。一方、キャリアガス流量は従来の半分量であるので、供給する全ガス流量中のV族材料ガスの割合は2倍に上昇する。このためV族材料ガスの分圧も2倍となる。この高い分圧はV族原子の膜からの離脱を抑制するのに効果的であり、従って従来よりも質の高い膜が得られるのである。
【0033】
以上のように本発明の方法によれば、少ないキャリアガス流量で従来装置の最適条件と同等の成膜が実現できるのみならず、揮発成分の材料ガス分圧を従来よりも格段に高めることが出来、そのため従来よりも高品質の成膜が実現可能となる。
【0034】
前にも述べたように、実際の構造においては成膜エリアを完全に凹部34に限定することは出来ないが、凸部36と凹部34の高さ比、面積比を適当に選べば、本発明の効果は十分に得られる。また凸部の側面であるフローチャネルの側壁35が流れのパターンに幾らか影響を与えるが、この効果は限定的である。もし側壁35の影響を補正したければ、これは流速に関係するものなので、ガス条件の微調整により矯正可能である。
【0035】
最後に堆積速度の時間推移について考察する。本発明では基板が公転する間に、凹部34である成膜領域と、凸部36の成膜がなされない領域とを交互に通過することになる。従って堆積速度の時間推移を考えると、それは矩形あるいはパルス的になると考えられる。これが問題となるか否かは当然関心の対象である。これについては、近年ではパルスMOCVD法など原料供給をパルス状に行う成膜方式も報告されており(C.Bayram et.al. Proc. of SPIE Vol. 7222 722212-1など)、通常の成膜方法を上回る結果も出ている。このことを鑑みれば、堆積速度が矩形あるいはパルス的に推移することには基本的に問題はないと言える。またパルス的な堆積速度が膜質均一性に与える影響については、基板の全ての場所において同様にパルス的な堆積速度となるため、このことが均一性には影響することはない。つまり従来方法と同様に、均一性に関してはあくまで堆積速度曲線のみが支配すると考えてよい。以上のような考察から、パルス的な堆積速度の時間推移は、あらゆる観点から欠点にはなりえないと結論できる。
【0036】
このように本発明は、従来と比べ如何なる欠点もない一方で、高い材料ガス分圧による膜質の向上とガス消費の大幅削減という、絶大な利点を有するのである。
【0037】
<本発明の詳細な構造>・・・次に、
図3〜
図7も参照して本発明の成膜装置の構造について詳細に説明する。
図3は、対向面形成部材の他の例を示す平面図である。
図4は、対向面形成部材の他の例を示す断面図である。
図5は、本発明のリアクタ構造を示す分解斜視図である。
図6は、本発明のリアクタ構造を示す断面図である。
図7は、本発明のインジェクタ構造を示す分解斜視図である。
図5及び
図6に示すように、対向面形成部材30とインジェクタ部40以外は従来構造と全く同じとしてよい。本発明の根幹をなす対向面形状に関しては、設計パラメータとして対向面の平面形状及び断面形状、凹部凸部の面積比率及び高さ比率、そしてフローチャネルの分割数が挙げられる。
【0038】
図1には平面図における凹部34の形状として扇形の例を示したが、長方形、あるいはこれらの組合せでも類似の効果は得られる。それぞれの成膜条件等を勘案し、適宜形状を選択すれば良い。
図3に示す対向面形成部材70は、凹部74が長方形部分74Aと扇状部分74Bを組み合わせた形状となっている。また、凹部の断面形状に関しては、
図2には矩形の例を示したが、もちろん台形、三角形、あるいはサインカーブのような曲面でも同様な効果が得られるのは明らかである。よりスムーズな流れという観点では曲面を含む形状が適しているかもしれない。
図4は、凹凸形状の断面形状を台形とし、エッジにフィレット75を施した例を示した。
【0039】
次に凹部34と凸部36の面積比率に関してであるが、凹部34の面積比率が小さいほどキャリアガスの節減効果、そして揮発成分材料ガス分圧の上昇効果は高い。ただし凹部34の面積を小さくしすぎると、成長に寄与しない凸部36の通過時間が長くなり、これは場合によっては非常に薄い膜層を形成する際に不利となる可能性がある。自公転の回転速度にもよるが、凹部34の面積比率としては20〜80%程度が許容範囲であろう。
【0040】
凹部34と凸部36の高さ比に関しては、サセプタは自公転する一方、対向面は静止しているので、凸部36とサセプタ20の間には隙間が必要である。凹部34と凸部36のフローチャネル高さ(サセプタと対向面間の距離)の比は、もちろんこれが大きいほど発明の効果は大きい。しかしながら、少しでも高低差あれば理論的には幾らかの効果は得られる。現実的に満足できる効果を得ようと思えば、この高さ比率は凸部:凹部で1:2程度は設けたい。高さ比を大きくするためには、凸部36とサセプタ20間の距離は小さいほど有利であるが、これを小さくしすぎるとサセプタ20の熱変形等により、サセプタ20と対向面凸部36が接触してしまうリスクが高くなる。このことから凸部36とサセプタ20との隙間の下限は、1mm程度は必要であろう。凹部34のフローチャネルの高さは、従来タイプの最適条件に一致させる必要がある。現実に使用されている自公転式炉のフローチャネル高さは5〜40mmと幅がある。もし凹部34の高さとして40mmを選ぶならば凸部36の高さは20mmぐらいでも効果は現れる。また凹部の高さを5mmとするならば、凸部36の高さは2.5mm以下、望ましくは1mm程度に抑えたい。以上のことから、凸部36の高さは1〜20mm、凹部34の高さは5〜40mm程度の範囲内で、条件に応じ適宜選択するのが良い。
【0041】
対向面形状の最後の設計パラメータはフローチャネルの分割数である。分割が多いほど周方向の偏りが小さくなるため、この意味では分割数は多いほど良い。ところが分割数を多くして、凹部フローチャネルの幅が小さくなりすぎると、フローチャネル側壁35の影響が強く出る。これが直ちに問題となるわけではないが、従来の方式で得られてきたデータからの乖離が大きくなることは避けられない。これらのことを勘案すると、分割数は厳密ではないが3〜30程度が適当な範囲であろう。リアクタのサイズにもよるが、量産に使用される大型装置では、この範囲内であれば従来方式で得られたデータをそのまま活用することが可能である。分割数が3より小さくなると凸部1個あたりの面積が大きくなり、ここを通過する時間が長くなりすぎる。また30より大きくなるとフローチャネルの幅が小さくなりすぎ、流体力学的観点からガス流れに対するフローチャネル側壁面の影響が顕著に現れる。
【0042】
対向面形状のほかインジェクタについても、対向面の凹凸形状に合わせてその形状を変えるのが良い。ここでもIIIV族化合物半導体を例に引くが、この分野でしばしば使用されるインジェクタは、V族とIII族が混合するポイントをなるべく基板近くに持ってくること、そしてインジェクタを低温に保つことにより原料分子の前駆反応を抑制するなどの機能を有する。従来装置では、
図10に示すように、インジェクタ部120は、基本的に単純な円板形状の第1のインジェクタ構成部材122及び第2のインジェクタ構成部材124により構成されている。それに対し本発明の下では、乱流を防ぐために
図5あるいは
図7に見られるように、対向面フローチャネルと連続(対応)になるようにインジェクタ内の流れも分割するのが好ましい。
【0043】
具体的には、
図5及び
図7に示すように、本実施例では、分離供給型のインジェクタ部40を構成する第1のインジェクタ構成部材42と第2のインジェクタ構成部材50は、
図3に示す対向面形成部材と同様の表面形状を有している。第1のインジェクタ構成部材42は、放射状に扇型の凹部44と凸部46が交互に形成されており、中央に、貫通孔48Aが形成されたガス導入口48を有している。第2のインジェクタ構成部材50は、放射状に扇型の凹部52と凸部54が交互に形成されており、中央に、貫通孔56Aが形成されたガス導入口56を有している。
【0044】
このような構造とすることでインジェクタ部材が下面に接触する面積を大きく取ることができ、そしてこの接触部をヒートシンクとすることで、インジェクタを従来よりもより低温に保つことが可能となる。インジェクタを下面に接触させ冷却する技術としては、特開2011−155046号公報に記載された技術があるが、この発明では接触部形状を円柱状とすることで流れを乱さない工夫がなされているが、その効果は十分とはいえない。本発明の構造であれば接触面積を十分大きく取ることが出来る上に乱流の発生も防げるので、その利点は絶大である。
【0045】
ここまでインジェクタ部40を有する構造に関して説明してきたが、本発明はインジェクタを使用する場合に限定されるものではない。砒素系やリン系などの化合物半導体の成膜においてはインジェクタを使用しない場合も多い。この場合においても対向面に凹凸を付け、複数のフローチャネルに分割するという本発明の概念は適用でき、またその効果が得られることは明らかである。
【0046】
また上記説明に用いた図においては、基板表面が鉛直下向きとなるいわゆるフェイスダウンタイプの装置に関し示したが、通常の成膜条件においては重力の影響は軽微であるので、基板表面が上向きとなるいわゆるフェイスアップの装置においても、本発明による効果が等しく得られることは自明である。従って本発明はフェイスダウンタイプに限定されるものではない。
【0047】
本発明の対向面形成部材30及びインジェクタ部40を形成する部材の材料に関しては、純度及び使用される環境に耐える耐熱、耐腐食性が満たされれば基本的にはどの材料でも良い。具体的には半導体あるいは酸化物の成膜に一般的によく使用されるステンレス、モリブデン等の金属材料、カーボン、炭化ケイ素や炭化タンタル等の炭化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、石英、アルミナ等の酸化物系材料などが挙げられ、この中から適宜選択すればよい。
【0048】
<実験例1>・・・窒化ガリウム膜の堆積速度曲線
次に、本発明を窒化ガリウム膜の成膜に適用し、従来方法と比較した例を紹介する。まず比較のために行った従来方法の例に関して説明する。従来例では
図10に示された断面構造を有するリアクタを用いた。この装置において膜質、原料利用効率、キャリアガス消費量、及び流速の観点から条件出しを行ったところ、最適な成膜圧力は25kPa、フローチャネル高さは14mm、キャリアガス流量は120SLMであった。一方本発明の構造としては、対向面形成部材として、
図1及び
図2に示すような矩形の断面形状を持ち、12分割のフローチャネルとなる対向面を採用した。凹部34、凸部36のいずれも開き角は15度で、これらは30度の周期性を有し、従って12回対称の形状である。凹部34とサセプタ20との距離は従来構造での最適値である14mmに一致させ、凸部36とのそれは4mmとした。対向面形成部材の材質にはカーボンを用いた。
【0049】
さらに従来構造に合わせ、3層の流れとなるインジェクタを使用した。3層のフローチャネルの高さは各4mmで、それぞれを仕切る板の板厚が1mmである。合わせると対向面部フローチャネル高さに等しい14mmとなる。3層のうち下二つのフローチャネル形状は対向面のフローチャネルと連続(対応)となるよう12分割とし、上の一層は分割はなく360度均等に流れる形態とした。なおインジェクタに用いた材質はモリブデンである。これらの構造を
図5、
図6に示した。
図5は部品に分割した斜視図、
図6は組み上げたときの断面図である。断面図における右半分は凹部フローチャネルを表し、左半分は凸部フローチャネルを表している。
【0050】
以下の表1に窒化ガリウム膜成膜時のガス条件を示した。従来例に関しては最適条件であるキャリアガス総流量120SLMの条件、本発明の例では従来例と同じ120SLM、その半分の60SLM、そして結果的に従来例と類似の堆積速度曲線の得られた35SLMの実験条件について掲載している。
【表1】
【0051】
図8に各条件における成膜の結果得られた堆積速度曲線を示す。これは自転なしで5rpmの公転のみによる成膜の結果である。本発明構造で従来と同じ120SLMのキャリアガス流量とした場合、堆積速度曲線は横方向に拡大し縦方向に縮小している。この様態は流速が速すぎることを表しており、冒頭考察した理論とよく合う結果であった。キャリアガス流量を減らしていくと堆積速度曲線は急峻化していき、35SLMのキャリアガス流量において従来例の堆積速度曲線に近い結果が得られた。本発明の構造ではフローチャネルの断面積は従来の約64%となっているため、従来の約29%の流量である35SLMにおいて類似の堆積速度曲線が得られたことは奇妙に思える。しかし拡散係数を考慮すればこれは妥当な結果と言える。本発明例ではキャリアガス中のNH
3比率が上昇しているが、NH
3は水素に比べ分子量が格段に大きいため、グラハムの法則から拡散係数が水素よりも大幅に小さい。堆積速度曲線は移流拡散方程式に支配されるため、流速のみならず拡散係数によっても変化する。本実験例ではキャリアガスの実効的な拡散係数が低下したために、予想以上に少ないキャリアガス流量で従来と類似の堆積速度曲線が得られたと考えられる。
【0052】
このように本発明によれば、従来と同様の堆積速度曲線を得るのに、70%以上のキャリアガスの削減が可能となる上、表1より分かるようにNH
3分圧は従来の5kPaから17.1kPaと3倍以上に上昇している。このため膜表面からの窒素原子の離脱が抑えられ、より高品質の膜が得られることになる。
【0053】
<実験例2>・・・多重量子井戸の発光特性
次に、実施例1にある従来型と本発明型の装置を用い、InGaN/GaNの多重量子井戸を作製し、フォトルミネッセンスのスペクトルにより評価した。それぞれの成膜条件を以下の表2に記した。
【表2】
【0054】
これらの成膜条件の下、4インチサイズの基板を用いて、公転5rpm、自転15rpmの回転速度で基板を自公転させて成膜を行った。
図9は得られた多重量子井戸のフォトルミネッセンスのスペクトルである。この図より、本発明構造で作製された多重量子井戸の方がピーク強度が15%程度高く、また半値幅はより小さくなっていることが分かる。当然のことながら、ピークが急峻且つ強度が強い方がより高品質である。このように多重量子井戸の品質が向上したのは、表2にあるようにNH
3の分圧が約40%高くなっているためと考えられる。これは本発明構造を用いることにより、キャリアガス総流量を減らせたために実現できたことである。また、ガスの使用量の他、III族の使用量も減ずることも出来たため、成膜コストの削減にも大いに寄与することが分かった。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状、寸法は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。
(2)前記実施例で示した対向面形成部材30やインジェクタ部40を構成する材料も一例であり、同様に効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。
(3)前記実施例では、インジェクタ部40を用いることとしたが、これも一例であり、インジェクタは必要に応じて設けるようにすればよい。また、インジェクタ部40の構造も一例であり、必要に応じて適宜設計変更可能である。
(4)前記実施例では、基板表面が下を向くフェイスダウンのタイプとしたが、基板表面が上を向くフェイスアップにおいても適用可能である。