(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058523
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】半田付け方法及び半田付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/08 20060101AFI20161226BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20161226BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20161226BHJP
B23K 31/02 20060101ALI20161226BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20161226BHJP
B23K 101/42 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
B23K3/08
H05K3/34 507J
H05K3/34 507H
H01L21/52 C
B23K31/02 310B
B23K1/008 Z
B23K101:42
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-245843(P2013-245843)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-100841(P2015-100841A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年3月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】松田 純
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀雄
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−361472(JP,A)
【文献】
特開平05−050218(JP,A)
【文献】
特開2002−210555(JP,A)
【文献】
特開2001−244618(JP,A)
【文献】
特開平06−087069(JP,A)
【文献】
特開2007−125578(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0261458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/08
B23K 1/008
B23K 31/02
H01L 21/52
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸ガスを用いた半田付け方法において、
半田付けされた接合部材を冷却する冷却工程で、真空チャンバーの壁面に沿わせて不活性ガスを流し込むと共に、前記接合部材の方向に流れる不活性ガスの気流を形成させ、真空チャンバー内のカルボン酸ガスをこれら不活性ガスの気流に乗せて排気することを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
真空チャンバー内の加熱ステージを、カルボン酸の熱分解温度(T℃)以上かつ半田の融点未満の温度に保持した状態で、不活性ガスを流し込む請求項1記載の半田付け方法。
【請求項3】
真空チャンバー内を減圧状態にして、不活性ガスを流し込む請求項1記載の半田付け方法。
【請求項4】
真空チャンバーの両側にガス排出手段を設け、これらのガス排出手段から不活性ガスを排気する請求項1記載の半田付け方法。
【請求項5】
半田付けする被接合部材を載置及び加熱するための加熱ステージを有する真空チャンバーと、真空チャンバーへカルボン酸ガスを供給するカルボン酸ガス導入手段と、真空チャンバーへ不活性ガスを供給する不活性ガス導入手段と、真空チャンバー内のガスを排気するガス排出手段とを有する半田付け装置であって、真空チャンバーの入口部に、導入される不活性ガスの気流を、真空チャンバーの壁面に沿って流れる気流と、半田付けされた接合部材の方向に流れる気流と、に調整可能な気流方向調整手段を設けたことを特徴とする半田付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸ガスを用いた半田付け方法において、真空チャンバー内に残留するカルボン酸ガスを効果的に除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板上に実装する際には、半田をリフロー炉と呼ばれる真空チャンバー内で加熱することにより半田付けを行う、リフロー法が多く採用されている。
【0003】
しかし、フラックスを用いた半田付けでは、フラックスの分解によって、小さな空隙(ボイド)が半田バンプ中に形成されることがある。これらの空隙は、形成された半田接合の電気的及び機械的性質を低下させるだけでなく、半田バンプ付き半導体の平坦性を破壊し、かつ以降の半導体接合工程に影響を及ぼすこともある。分解したフラックスの揮発性物質がリフロー炉内を汚染する場合もあり、それによってメンテナンスコストが増大することもある。加えて、フラックス残留物がしばしば半導体基板上に残り、金属の腐食を引き起こし、アセンブリの性能を低下させることがある。さらに、リフロー後にフラックス残留物を洗浄除去する方法では、後洗浄という新たな処理工程が加わることで、半田付けに要する時間が増加する。
【0004】
このため、フラックスを用いない半田付け方法として、半田及び被接合部材である基板や電極等を、水素やギ酸を用いて還元する方法が知られている(特許文献1〜3等参照)。
【0005】
ギ酸を用いる還元方法では、半田部材が搭載された基板が所定温度に達したとき、半田部材をギ酸ガスに晒して表面の酸化膜を除去し、その後に溶融処理する。ギ酸は水素に比べて還元開始温度が低く、低融点の鉛フリー半田にも利用できる。
【0006】
しかしながら、ギ酸は刺激性、腐食性の強い物質であり、ギ酸が付着した部分の真空チャンバー内の部材が腐食し、腐食により生じた生成物が、半田付けの際に電子部品の上に落下した場合には、金属性異物となり、製品の品質低下を招く。また、真空チャンバーに対しても、補修頻度の増大、耐用年数の低下といった問題を惹き起こす。
【0007】
そのため、半田付けが終了した後は、ギ酸を真空チャンバー内から除去する必要があり、ギ酸ガスを効果的に除去できる方法や、そのための装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−060856号公報
【特許文献2】特開2007−125578号公報
【特許文献3】特開2001−244618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カルボン酸ガスを用いた半田付け方法において、半田付け終了後に真空チャンバー内に残留するカルボン酸ガスを効果的かつ効率的に除去する方法、及びそのための半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ね、半田付け終了後、真空チャンバー内に残留するカルボン酸ガスを排気する際に、真空チャンバー内に導入する不活性ガスの気流方向を調整することで、壁面から気化するカルボン酸を効果的かつ効率的に除去できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0012】
(
1)カルボン酸ガスを用いた半田付け方法において、半田付けされた接合部材を冷却する冷却工程で、真空チャンバーの壁面に沿わせて不活性ガスを流し込むと共に、前記接合部材の方向に流れる不活性ガスの気流を形成させ、真空チャンバー内のカルボン酸ガスをこれら不活性ガスの気流に乗せて排気することを特徴とする半田付け方法。
(
2)真空チャンバー内の加熱ステージを、カルボン酸の熱分解温度(T℃)以上かつ半田の融点未満の温度に保持した状態で、不活性ガスを流し込む、前記
(1)記載の半田付け方法。
(
3)真空チャンバー内を減圧状態にして、不活性ガスを流し込む、前記
(1)記載の半田付け方法。
(
4)真空チャンバーの両側にガス排出手段を設け、これらのガス排出手段から不活性ガスを排気する、前記
(1)記載の半田付け方法。
【0013】
(
5)半田付けする被接合部材を載置及び加熱するための加熱ステージを有する真空チャンバーと、真空チャンバーへカルボン酸ガスを供給するカルボン酸ガス導入手段と、真空チャンバーへ不活性ガスを供給する不活性ガス導入手段と、真空チャンバー内のガスを排気するガス排出手段とを有する半田付け装置であって、真空チャンバーの入口部に、導入される不活性ガスの気流を、真空チャンバーの壁面に沿って流れる気流と、半田付けされた接合部材の方向に流れる気流と、に調整可能な気流方向調整手段を設けたことを特徴とする半田付け装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、壁面に沿わせて流し込んだ不活性ガスが、真空チャンバー壁面でのギ酸の凝縮や壁面への再付着、さらには加熱ステージ等ワークや半田付けされた接合部材へのギ酸の再付着を抑えることができるため、真空チャンバーの腐蝕抑制、腐食生成物による接合部材の品質異常を防ぐことができる。
【0015】
また、真空チャンバーの温度や圧力調整により、加熱ステージの温度を常にギ酸の熱分解温度以上に保持でき、ギ酸が気化し易くなるため、ギ酸の凝縮とギ酸の再付着をより効果的に抑えることができる。さらに、導入する不活性ガスや排気するガスの経路を最適化することで、壁面から気化するギ酸を治具の隙間を利用して効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1の半田付け方法を説明する工程図((a)還元工程、(b)接合工程、(c)冷却工程)と半田付け装置の側断面図である。
【
図2】実施形態4の半田付け方法の説明図と半田付け装置の側断面図である。
【
図3】実施形態5の半田付け方法の説明図と半田付け装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る半田付け方法及び半田付け装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態の半田付け装置の概略構成図を
図1に示す。真空チャンバー10は、加熱ステージ30を内蔵し、該加熱ステージ30は、その上に基板31、半導体チップ32等の被接合部材を載置し加熱するためのものである。基板31と半導体チップ32との間に半田35(鉛半田、鉛フリー半田)が挟持される。
【0019】
半田付け装置は、真空チャンバー10、真空チャンバー10へカルボン酸ガスを供給するカルボン酸ガス導入手段25、真空チャンバー10内のガスを排気するガス排出手段26の他、真空チャンバー10へ不活性ガスを供給する不活性ガス導入手段27を有しており、前記ガス排出手段26は、図示しない真空ポンプに接続されている。
【0020】
各導入手段は、流量調整用の開閉バルブ20、28を有している。37は、加熱ステージや被接合部材、半田の温度を測定するための温度計である。
図1では非接触式の放射温度計を示しているが、熱電対等の接触式温度計を用いることもできる。37wは、BaF
2、CaF
2、ZnSe等の赤外線を吸収しない素材で形成した透過窓である。
【0021】
本発明の半田付け装置は、カルボン酸ガス導入手段25の他に、不活性ガス導入手段27を有し、該不活性ガス導入手段27から真空ャンバー10内に導入される不活性ガスの気流を所定の方向に調整する気流方向調整手段29を有することが特徴である。この不活性ガス導入手段27は、半田付け終了後に真空チャンバー10内に残存する雰囲気ガス(カルボン酸含有ガス)を排出するためのものである。
【0022】
本実施形態の半田付け方法は、冷却工程(
図1(c))に特徴を有している。即ち、還元工程(
図1(a))及び接合工程(同(b))では、公知の方法或いはそれに準ずる方法が採用され、それぞれ所定の加熱条件下で処理が行われる。一般的には、(a)還元工程は180〜260℃、(b)接合工程は220〜350℃で行われるが、用いる半田の種類によって加熱条件が異なるため前記温度範囲外で行われることもある。
【0023】
(a)還元工程では、バルブ21及びバルブ28を閉じ、バルブ20を開いて、カルボン酸ガス導入手段25よりカルボン酸ガスが導入され、該カルボン酸ガスによって、被接合部材及び半田の表面に形成された酸化膜が除去される。真空チャンバー10内に導入されるカルボン酸ガスは、カルボン酸濃度が1.5vol%以上の、カルボン酸ガスもしくはカルボン酸ガスと不活性ガスの混合ガスが、好ましく用いられる。カルボン酸としてはギ酸が好ましい。不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるが、入手し易い窒素ガスが好ましい。
【0024】
例えば、半田35を挟んで半導体チップ32を載せた基板31を、加熱ステージ30の上に載置し、理論量よりも多いカルボン酸34を真空チャンバー10内に導入し、所定の温度条件下で還元する。スズ基板に形成されたスズ酸化膜のギ酸による還元反応は、下記式に示す通りであり、還元工程では水と二酸化炭素が副生する。このとき、真空チャンバー10内に存在するガス組成は、カルボン酸(ギ酸)、水、二酸化炭素及び不活性ガスなどである。
SnO + HCOOH → Sn + H
2O + CO
2
【0025】
次の(b)接合工程では、真空チャンバー10内のガスを真空引きにより排気した後、加熱ステージ30を加熱し、真空チャンバー10内の温度を半田の融点以上に上昇させて半田を溶融させ、常法に従い半田接合を行う。接合工程後、加熱を停止し、(c)冷却工程で半田を凝結させ、半田付けを終了する。
【0026】
(c)冷却工程では、真空ポンプを作動させて真空ポンプに接続するガス排出手段26のバルブ21を開き、さらにバルブ28を開けて真空チャンバー10内に不活性ガスを導入する。真空チャンバー10の内部圧力は、導入する不活性ガスと排気するガスの流量を変動させることで、調整する。本実施形態に係る半田付け装置では、真空チャンバー10内に導入される不活性ガスが、真空チャンバーの壁面に沿って流れる気流を形成するよう、該真空チャンバーへの入口部に気流方向調整手段29を設置する。真空チャンバーの壁面に沿わせて不活性ガスを流し込むことで、真空チャンバー内のガスを、不活性ガスの気流に乗せて、チャンバー中央部に設けたガス排出手段26から排気する。
図1(c)の矢印は、真空チャンバー内における不活性ガスの流れを示している。なお、ガス排出手段26は、
図3に示すように、真空チャンバー10の両側に設けられていても良い。
【0027】
気流方向調整手段29は、不活性ガス導入手段27から導入されるガスの方向を調整するので、気流方向調整手段29の設置場所は、真空チャンバー10への入口部とし、望ましくは該真空チャンバーの壁面よりも室内側にする。気流方向調整手段29が設置されることによって、真空チャンバー10内に導入される不活性ガスが、チャンバーの壁面と気流方向調整手段29上面の隙間から、チャンバーの壁面に沿って流入する気流が形成される。これにより、チャンバーの壁面から気化するカルボン酸を、不活性ガスの気流に乗せて治具の隙間を経由して、ガス排出手段26から、効率よく排気、除去することができる。その結果、冷却工程でカルボン酸ガスが凝縮して真空チャンバー10の壁面に付着残留することを、効果的に防止できる。
【0028】
気流方向調整手段29の大きさや形状に特に限定はなく、断面が円形や四角形等の任意の形状で良いが、真空チャンバー10の壁面に沿って流入する気流が形成され易いように、不活性ガス導入手段27のガス導入ラインの断面積以上の大きさに設計することが望ましい。
図1では、板状の気流方向調整手段29を配置している。
【0029】
また、不活性ガス導入手段27は、
図1に示すように、真空チャンバー10の上部中央部、すなわち加熱ステージ30や半田付けされた接合部材の対面に設置することが望ましい。カルボン酸ガスが最も付着し易いチャンバーの天井壁面や側壁面に、カルボン酸ガスが最初に流入するので、より多くのカルボン酸をより確実に、不活性ガスの気流に乗せて排気、除去することができる。
【0030】
また、本発明に係るカルボン酸ガスを用いた半田付け方法は、半田付けされた接合部材を冷却する冷却工程で、不活性ガス導入手段27より導入した不活性ガスを、真空チャンバー10の壁面に沿わせて流し込み、真空チャンバー内のガスを不活性ガスの気流に乗せて排気するが、この冷却工程で真空チャンバー10内に存在するガス組成は、多くの場合微量のカルボン酸(ギ酸)を含有する不活性ガスである。
【0031】
ここで、気体1モルの質量は、ギ酸が46、窒素が28であるため、大気圧下では、質量の大きいギ酸ガスの方が、窒素ガスよりも真空チャンバー10の下方に移行し易い。しかも、冷却工程における真空チャンバー10内の温度は、接合工程よりも低い。そこで、ガス導入手段27から真空チャンバー10の壁面に沿わせて不活性ガスを流し込みながら、真空チャンバー10内のガスを排気すると、比較的重いギ酸ガスと真空チャンバー壁面との間に、比較的軽い窒素ガスが入り込み、窒素ガスがギ酸ガスを押し出す格好となり、真空チャンバー10内に残存するギ酸が効果的に排気される。排気されたギ酸は、ギ酸分解機構に供給され分解処理される。
【0032】
本実施形態の気流方向調整手段を設置した半田付け装置は、気流方向調整手段を設置していない半田付け装置と比べて、チャンバー内の残留ギ酸濃度を、例えば、半分以下にするなど、大幅に減少させることができる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態では、冷却工程において、真空チャンバー内の加熱ステージを、カルボン酸の熱分解温度以上かつ半田の融点未満の温度に保持した状態で、不活性ガスを流し込む半田付け方法の実施例を説明する。なお、本実施例で用いるカルボン酸はギ酸である。また、半田付け装置の構成(
図1)ならびに(a)還元工程及び(b)接合工程は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。半田付け装置の構成は、実施形態1と同じ構成には同じ符号を用いる。
【0034】
冷却工程では、基本的に加熱は行われないため、真空チャンバー10内の温度は、接合工程における温度(220〜350℃)よりも低温である。そのため、ギ酸ガスがより凝縮し易い雰囲気になる。
【0035】
本実施形態では、真空チャンバー10内の加熱ステージ30の温度を、温度制御装置を用いて、ギ酸の熱分解温度(150℃)以上かつ半田の融点未満の温度に保持しながら、真空チャンバー10内に不活性ガスを流し込む。こうすることで、常にギ酸が気化している状態が保持されるため、ギ酸が半田付けされた接合部材や真空チャンバー壁面等に再付着し難くなる。
【0036】
加熱温度は、150℃より高くしても良いが、加熱時間や投入エネルギーを少なくするためには、150℃で保持するのが最も効率的である。
【0037】
本実施形態では、真空チャンバー内の加熱温度を常時ギ酸の分解開始温度以上に保持することにより、温度保持を行わない場合に比べて、プロセス時間の短縮につながる。
【0038】
(実施形態3)
本実施形態では、真空チャンバー内を減圧状態にして、不活性ガスを流し込む半田付け方法の実施例を説明する。半田付け装置の構成(
図1)ならびに(a)還元工程及び(b)接合工程は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。半田付け装置の構成は、実施形態1と同じ構成には同じ符号を用いる。
【0039】
接合工程終了後の真空チャンバー10内に不活性ガスが充填されることで、該チャンバー内の圧力は大気圧とほぼ等しくなる。そのため、ガス排出手段26に接続されている真空ポンプを作動させ、真空チャンバー10内のガスの一部をガス排出手段26から排気し、該チャンバー内を減圧状態にした後、減圧を保持した状態で、不活性ガスを流し込みながら、該チャンバー内のガスを排気する。こうすることで、ギ酸の沸点が低下し、ギ酸がより気化し易くなるため、真空チャンバー10内に残留するカルボン酸をより減少させることができる。
【0040】
(実施形態4)
本実施形態では、実施形態1とは構成が異なる気流方向調整手段を設置した半田付け装置を用いた実施例を説明する。尚、気流方向調整手段以外の装置構成、ならびに(a)還元工程及び(b)接合工程は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。また、
図2は本実施形態における半田付け装置の構成図であり、実施形態1と同じ構成には同じ符号を付している。
【0041】
本実施形態に係るカルボン酸ガスを用いた半田付け方法では、半田付けされた接合部材を冷却する冷却工程で、真空チャンバーの壁面に沿わせて不活性ガスを流し込むと共に、前記接合部材の方向に不活性ガスの気流を形成し、真空チャンバー内のカルボン酸ガスをこれら不活性ガスの気流に乗せて排気する。このような排気は、半田付け装置の真空チャンバーへの入口部に、該真空チャンバー内に導入する不活性ガスが、真空チャンバーの壁面に沿って流れる気流と、前記接合部材の方向に流れる気流を形成する気流方向調整手段を設けることで可能となる。
【0042】
図2に示す半田付け装置に設置された気流方向調整手段29´は、中心部に孔が形成されており、該孔によって、真空チャンバー10内に導入された不活性ガスが、半田付けされた接合部材の方向に流れる気流が形成される。真空チャンバー10の壁面に沿って両側に流れる不活性ガス量は、気流方向調整手段29´と真空チャンバーの天井面との隙間の長さに比例し、一方、接合部材の方向に流れる量は、孔の大きさに比例する。真空チャンバー10の壁面に沿って気流は、真空チャンバーの壁面に付着したカルボン酸を、自身の気流に乗せてガス排出手段26から排気する。その際、ガス排出手段26に向かう気流の一部が、加熱ステージ30の上方に流れる現象が生じることを、接合部材の方向に流れる気流によって阻止することで、不活性ガスを円滑にガス排出手段26の方向に導くことができる。
【0043】
本実施形態の気流方向調整手段を設置した半田付け装置は、気流方向調整手段を設定していない半田付け装置と対比して、チャンバー内の残留ギ酸濃度を、例えば、半分以下にするなど、大幅に減少させることができる。
【0044】
気流方向調整手段と真空チャンバー天井面との隙間の長さ及び気流方向調整手段の孔の大きさは、接合部材の方向に流れるガス量が、壁面に沿って両側に流れるガス量の1/2以下程度となるよう調整することが好ましい。接合部材の方向に流れるガス量を多くし過ぎると、真空チャンバー内で乱気流が生じ、壁面に付着したカルボン酸を取り込んだ不活性ガスを排気する過程でカルボン酸の再付着が生じる虞がある。このように、ガスの経路を最適化することで、壁面から気化するカルボン酸を効率よく除去することができる。
【0045】
(実施形態5)
本実施形態では、実施形態4とは同じ構成の気流方向調整手段を設置し、ガス排出手段を2箇所に設けた半田付け装置を用いた実施例を説明する。尚、ガス排出手段以外の装置構成、ならびに(a)還元工程及び(b)接合工程は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。また、
図3は本実施形態における半田付け装置の構成図であり、実施形態1と同じ構成には同じ符号を付している。
【0046】
図3に示す半田付け装置には、2つのガス排出手段26a、26bが、真空チャンバー10の両側に設けられており、これらのガス排出手段から真空チャンバー内のガスを排気する。各ガス排出手段の構造は、実施形態1と同様である。ガス排出手段が真空チャンバーの両側に形成されることによって、カルボン酸を取り込んだ不活性ガスの、真空チャンバー中心方向(ガス排出手段方向)に向う気流が形成されないため、カルボン酸が治具や接合体に再付着する虞がない。また、気流方向調整手段29´により、接合部材の方向に流れる気流が形成されるので、ガス排出手段26に向かう気流の一部が、加熱ステージ30の上方に流れる現象を、接合部材の方向に流れる気流によって阻止することで、不活性ガスを確実にガス排出手段26の方向に導くことができる。
【0047】
気流方向調整手段と真空チャンバー天井面との隙間の長さや気流方向調整手段の孔の大きさは、実施形態4と同様、接合部材の方向に流れるガス量が、壁面に沿って両側に流れるガス量の1/2以下程度となるように調整することが望ましい。
【0048】
また、本実施形態においては、実施形態2で採用した、真空チャンバー内の加熱ステージをカルボン酸の熱分解温度以上かつ半田の融点未満の温度に保持した状態で不活性ガスを流し込む方法、及び、実施形態3で採用した、真空チャンバー内を減圧状態にして不活性ガスを流し込む方法を、それぞれ単独で又は併用して実施することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形及び変更が可能である。また、半導体レーザや、CCD、C−MOSなどの受光素子、スイッチング素子などの半田付けにも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による半田付け方法及び半田付け装置は、半導体装置の半田付け工程で好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 真空チャンバー
20 バルブ
21 バルブ
25 カルボン酸ガス導入手段
26 ガス排出手段
27 不活性ガス導入手段
28 バルブ
29,29´ 気流方向調整手段
30 加熱ステージ
31 基板被接合体(被接合部材)
32 半導体チップ(被接合部材)
34 カルボン酸
35 半田
37 放射温度計
37w 透過窓