特許第6058546号(P6058546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6058546抗ウイルス特性を有するコーティングを形成することができる流体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058546
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】抗ウイルス特性を有するコーティングを形成することができる流体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20161226BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 123/06 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20161226BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20161226BHJP
   A01N 37/12 20060101ALI20161226BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20161226BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20161226BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/14
   C09D191/06
   C09D123/06
   C09D133/00
   C09D11/10
   A01P1/00
   A01N37/12
   A01N25/04 103
   B05D5/00 Z
   B05D1/28
   C09D7/12
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-537250(P2013-537250)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公表番号】特表2014-501798(P2014-501798A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】IB2011054927
(87)【国際公開番号】WO2012063176
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】1059195
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510102007
【氏名又は名称】アージョヴィギンス・セキュリティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・ロセ
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−188892(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0030512(US,A1)
【文献】 特開2010−163397(JP,A)
【文献】 特表2009−527357(JP,A)
【文献】 特開平10−259326(JP,A)
【文献】 米国特許第05968538(US,A)
【文献】 特開昭61−181390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−55/08;
57/00−65/48
A01P 1/00−23/00
B05D 1/00−7/26
C09D 1/00−13/00;
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリン酸、モノラウリン、ラクトフェリンおよび抗ウイルス活性を有する精油から選択される少なくとも1種の有効量の天然起源の殺ウイルス剤および/またはその前駆体、並びに樹脂、ワックスおよびガムから成る群から選択される少なくとも1種の結合剤を含有し、室温および周囲圧力で30mPa.s〜40Pa.sの間の粘度を有することを特徴とする、インクまたはワニスから成る群から選択されるコーティングを形成することができる流体組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の静菌性および/もしくは殺菌性殺生物剤または静真菌性および/もしくは殺真菌性殺生物剤も含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記殺ウイルス剤が哺乳動物、より特定すればヒトに関して病原性のあるウイルスに関して活性であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
その総重量に対して0.1乾燥重量%〜3乾燥重量%、例えば、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、例えば、0.5乾燥重量%〜1.5乾燥重量%の前記殺ウイルス剤を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
湿潤剤も含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
湿潤剤がポリオール、より特定すればグリセロールであることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
湿潤剤の質量と殺ウイルス剤の質量の重量比が少なくとも1に等しいことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の顔料と、特にポリエチレンワックス、アクリル樹脂およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の結合剤とを含有するインクであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総重量に対して0重量%〜60重量%の間、特に10重量%〜50重量%の間、特に15重量%〜35重量%の間の量の顔料を含有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
特にポリエチレンワックス、アクリル樹脂およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の結合剤を含有するワニスであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
特に脂環式エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の結合剤を含有するオーバープリントワニスであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の流体組成物。
【請求項12】
請求項1から11に記載の組成物を適用することからなる工程を少なくとも含む、柔軟性担体または固体担体の表面の全部または一部に殺ウイルス特性を与えるのに有用な方法。
【請求項13】
請求項1から11規定される殺ウイルス剤の少なくとも1種の前駆体を含有する組成物を適用する工程と、前記組成物の前記適用中に柔軟性担体または固体担体の表面上でその場で前記殺ウイルス剤を生成する工程とを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記殺ウイルス剤が触媒の存在下でラウリン酸およびグリセロールの反応によりその場で合成されるモノラウリンであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
a)ラウリン酸とグリセロールとの間の相互作用を刺激することができる少なくとも1種の触媒および/または反応物を含む、処理すべき表面を有する柔軟性担体または固体担体を使用することと;
b)前記表面を、少なくともラウリン酸およびグリセロールを含有する請求項1に記載の組成物と接触させることと;
c)ステップb)で処理した前記表面を、モノラウリンの合成を促す熱処理に供することと
からなる工程を少なくとも含み、前記ステップb)およびステップc)を連続的にまたは同時に行うことが可能である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒がゼオライトタイプ触媒またはリパーゼである、請求項14および15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から11に記載の組成物を、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、フレキソ印刷オーバープリント、凹版印刷、活版印刷または石版印刷により担体の表面上に付着させる方法。
【請求項18】
請求項1から11に記載の組成物でその表面をコーティングされていることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体の表面上コーティングを形成することができる流体組成物、特に、有利には抗ウイルス特性を有するワニス、インク、ラッカーまたは塗料に関する。
【0002】
本発明の分野は、より特定すれば、上に保護層および/または造形層および/または審美層および/または模様を浮き出させるために、柔軟性担体または固体担体の表面上に適用することを意図した組成物の分野である。
【背景技術】
【0003】
現代社会では、ますます大量の本発明の適用の分野に入る材料または物品が、多くの人々により毎日および頻繁に扱われるようになっている。
【0004】
これらの物品の非限定的例として、プラスチック基板、特に、紙幣またはチップカードなどのカード、あるいは例えば、玩具、コンピューターキーボードおよびマウス、タッチスクリーンおよび電話キーパッド、スクリーンおよびハンドセット、ケア、医療または健康機器、爪、楽器、制服、道具、室内装飾布などの物品を特にあげることができる。
【0005】
自明の理由のために、これらの物品の使用者は、多少深刻な流行病および世界的流行病を発生させやすいウイルスを保有している可能性があり、こうして、接触する任意の物品を汚染しやすい。しかしながら、この物品が一人または複数の他の使用者により連続的に扱われる場合、今度はこの物品が、他の人々に関して、最初の使用者により運ばれたウイルスを撒き散らす重要な媒体になる。
【0006】
結果として、短期間内に、多数回使用される物品または基板と接触する任意のウイルスを中和することができることが有利であるだろう。
【0007】
自明の理由のために、この中和法は、一方では有効でなければならず、他方では経時的に長期の持続期間を有さなければならない。さらに、この方法は実施するのが容易でなければならず、可能な限り、当の物品の使用に悪影響を及ぼしてはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Enzymatic synthesis of monolaurin」(Applied Biochemistry and Biotechnology、2004、第113〜116巻、433〜445頁)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、本発明者等は、上記目的が、コーティングを形成することができる抗ウイルス性流体組成物の使用を介して達成されることを認めた。
【0010】
したがって、本発明は、その態様によると、有効量の少なくとも1種の殺ウイルス剤および/またはその前駆体を含有し、室温および周囲圧力で30mPa.s〜40Pa.sの間の粘度を有することを特徴とする、コーティングを形成することができる流体組成物に関する。
【0011】
本発明は、その態様の別のものによると、モノラウリン、ラウリン酸、ラクトフェリンおよび抗ウイルス活性を有する精油から選択される少なくとも1種の有効量の天然起源の殺ウイルス剤および/またはその前駆体を含有し、室温および周囲圧力で30mPa.s〜40Pa.sの間の粘度を有することを特徴とする、コーティングを形成することができる流体組成物に関する。
【0012】
本発明の意味において、室温とは18〜25℃で変化する温度であると理解される。
【0013】
本発明は特に、物質または基板の表面上にコーティングを形成することができ、より特定すれば、ウイルスを運びやすい物品、特に、子供の玩具、爪(抗ウイルスネイルエナメル)またはケア、医療もしくは健康機器、紙幣もしくはチップカードなどのカードを覆うことを意図した流体組成物に関する。
【0014】
したがって、その態様の別のものによると、本発明は、表面を、モノラウリン、ラウリン酸、ラクトフェリンおよび抗ウイルス活性を有する精油から選択される少なくとも1種の有効量の天然起源の殺ウイルス剤および/またはその前駆体を含有し、室温および周囲圧力で30mPa.s〜40Pa.sの間の粘度を有する、流体組成物でコーティングする少なくとも1つの工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、特に上記の物品に関する。
【0015】
その態様の1つによると、上記のコーティングする工程は、表面上への本発明による組成物の噴霧、印刷、オーバープリント、表面塗布、コーティングまたは付着により行われる。
【0016】
一般的には、本発明により必要とされる殺ウイルス剤は、特に以下に定義する溶媒媒体に製剤化される。
【0017】
以下の例から明らかになるように、本発明により検討される殺ウイルス剤は、その生物活性以上に有利となる。
【0018】
まず、殺ウイルス剤は、担体の表面処理のために従来検討されており、通常水性媒体またはUV架橋樹脂である溶媒媒体への可溶化に適している。
【0019】
さらに、対応する溶液、特に、水溶液またはUV架橋溶液は、本来の色の外観を保持する。換言すれば、溶媒媒体がもともと無色の場合、殺ウイルス剤と共に製剤化したこの同じ媒体はこの透明度を保持する。
【0020】
そのため、ワニスの場合、担体の表面上に形成するコーティングは、使用する溶媒媒体の性質を条件として、効果的で完全に透明となり得る。
【0021】
コーティングのこの疑似的不可視性(pseudo-invisibility)は、自明の理由のために、特に有利である。特に、本発明によるワニスは、紙幣などの情報担体用のオーバープリントワニスを形成するのに特に有利になる。これらのワニスは、これらの紙幣に組み込まれたセキュリティ要素の可視性を阻害しない。
【0022】
同様に、インク、塗料またはラッカーの場合、本発明による殺ウイルス剤の存在は、関連する顔料により同時に求められる色の効果を害さない。
【0023】
さらに、本発明者等は、担体の表面上に本発明により形成されるコーティングの殺ウイルス活性が光またはUV光への長期暴露により損なわれないことを認めた。
【0024】
最後に、以下に詳細に説明するように、殺ウイルス効果は、殺ウイルス剤の濃度が減少しても得られる。驚くべきことに、殺ウイルス剤を含有するコーティング、特に、ワニスの乾燥重量により表される3重量%またはさらには2重量%未満の量の殺ウイルス剤が特に有効となる。
【0025】
1つの特定の変形例によると、本発明による組成物はまた、少なくとも1種の湿潤剤をさらに含有する。
【0026】
本発明により検討される組成物は、より特定すれば、ワニス、インク、ラッカーまたは塗料である。
【0027】
一実施態によると、本発明により検討される組成物は、ワニス、より特定すれば、オーバープリントワニスである。
【0028】
結果として、本発明による組成物は、殺ウイルス剤またはその前駆体以外に、このタイプの製剤に従来検討されている成分の少なくとも1種を含有することができる。
【0029】
したがって、結合剤は、ワニスおよび/またはインクタイプの組成物に従来使用されている化合物である。これらは一般的に、存在する場合に顔料などの粒子を組成物中に分散させ、担体の表面上に適用された組成物の乾燥および/または架橋後に、これに耐久性を与えるのに十分な硬度のフィルムの形成に貢献する役割を有する。
【0030】
意外にも、実際、本発明者等は、1種のおよび同一の組成物中に、それぞれの効果に有害になることなく、まったく異なる結合剤と殺ウイルス剤という2種の化合物の存在を調和させることが可能であることを認めた。
【0031】
そのため、本発明による組成物は、有利には、少なくとも1種の結合剤および必要に応じて少なくとも1種の顔料をさらに含有することができる。
【0032】
本発明はまた、その態様の別のものによると、柔軟性担体または固体担体の表面に上に定義する組成物を適用することからなる工程を少なくとも含む、前記表面の全部または一部に殺ウイルス特性を与えるのに有用な方法に関する。
【0033】
一般的には、所期のコーティングは、適用される組成物の乾燥操作の最後に得られる。
【0034】
一実施形態変形例によると、適用される組成物の乾燥操作はUV乾燥操作である。この実施形態によると、得られるインクまたはワニスは、「UV」ワニスまたは「UV」インクと記載される。
【0035】
1つの好ましい実施形態変形例によると、殺ウイルス剤は、特に以下に定義する天然起源の殺ウイルス剤である。
【0036】
一実施形態変形例によると、殺ウイルス剤は、活性剤としてこの殺ウイルス剤の前駆体形態を含有する本発明による組成物からその場で生成することができる。
【0037】
したがって、本発明はまた、特に上に定義する天然起源の殺ウイルス剤の少なくとも1種の前駆体を含有する組成物を適用する工程と、柔軟性担体または固体担体の表面上でその場で前記殺ウイルス剤を生成する工程とを含むことを特徴とする方法に関する。
【0038】
本発明はまた、前記殺ウイルス剤が触媒の存在下でラウリン酸およびグリセロールの反応によりその場で合成されるモノラウリンであることを特徴とする、上に定義する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
流体組成物
上記から明らかになるように、本発明による流体組成物は、室温および周囲圧力で測定される30mPa.s〜40Pa.sの間、特に、50mPa.s〜25Pa.sの間の粘度を有する。
【0040】
組成物の粘度は、従来法により測定することができる。特に、当の組成物の粘度スケールに関して適当な測定法およびさらに適当な測定装置の選択は、明らかに当業者の能力に入る。
【0041】
例えば、明白に2Pa.s未満の粘度を有する組成物のためには、好都合な測定装置は、100rpmでスピンドル番号2のBrookfield粘度計である(ISO2555)。
【0042】
この粘度は、すなわち形成される組成物、例えば、ワニス、インク、ラッカーまたは塗料に付属の特定の機能に関して、また前記組成物で担体の表面を処理するために検討される適用法に関しても調整することができる。
【0043】
例えば、本発明による流体組成物は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、フレキソ印刷オーバープリント、凹版印刷、活版印刷または石版印刷により担体の表面上に付着させることができる。
【0044】
したがって、室温および周囲圧力で、使用する本発明による流体組成物は、
- グラビア印刷では、有利には30〜50mPa.sの間の粘度を有し、
- フレキソ印刷では、有利には30〜90mPa.sの間の粘度を有し、
- フレキソ印刷オーバープリントでは、有利には30〜50mPa.sの間の粘度を有し、
- 凹版印刷では、有利には9〜25mPa.sの間の粘度を有し、
- オフセット印刷では、有利には2〜40Pa.sの粘度を有し、
- 石版印刷では、有利には10〜20Pa.sの粘度を有し得る。
【0045】
本発明による流体組成物の粘度は、本発明により必要とされる殺ウイルス剤に関連する溶媒媒体の性質および/または量を介して、あるいは存在する場合、本発明によりおよび本発明により必要とされる殺ウイルス剤または殺ウイルス剤前駆体を製剤化する結合剤の添加および量の調整を介して調整することができる。
【0046】
殺ウイルス剤
本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物は、少なくとも1種の殺ウイルス剤および/またはその前駆体を含有する。
【0047】
本発明の意味において、用語「殺ウイルス剤」とは、ウイルスを死滅させるまたは抑制する能力を有する任意の化合物を示す。
【0048】
本発明による殺ウイルス剤は、より特定すれば哺乳動物、より特定すればヒトに関して病原性のあるウイルスを死滅させるおよび/または抑制するためのものである。このようなウイルスは、裸のウイルスまたはエンベロープウイルスであり得る。
【0049】
本発明により検討されそうなヒトに病原性のあるウイルスの代表として、より特定すればレトロウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、パラミクソウイルス、ポリオウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、脳心筋炎ウイルス、ライノウイルスを含むピコルナウイルス、DNAまたはRNAウイルス、特にフラビウイルス科、AIDSウイルス、インフルエンザウイルス、天然痘ウイルス、黄熱病ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルスまたはシミアンウイルス40もしくはSV40をあげることができる。
【0050】
本発明に適した殺ウイルス剤は合成でも天然起源のものでもよい。
【0051】
合成殺ウイルス剤の例として、塩素化誘導体およびアルデヒドを特にあげることができる。これらは、より特定すればグルタルアルデヒド、ペルオキソ一硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウムおよび過炭酸ナトリウムであり得る。
【0052】
好ましくは、殺ウイルス剤は天然起源のものである。
【0053】
表現「天然起源の殺ウイルス剤」とは、自然状態で既存のまたは自然状態で存在する天然化合物から合成することができる任意の殺ウイルス剤を意味すると理解される。
【0054】
したがって、本発明の関連において使用することができる天然起源の殺ウイルス剤は、それらを含有する天然媒体から始まる抽出および精製により、あるいは天然化合物からの合成により得ることができる。
【0055】
このような殺ウイルス剤の例として、ラウリン酸、あるいはグリセロールおよびラウリン酸からの合成により得ることができるモノラウリンを特にあげることができる。
【0056】
この第2の代替物の場合、グリセロールおよびラウリン酸は、本発明の意味において、これらが本発明による方法の最後に抗ウイルス特性を有する柔軟性担体または固体担体を生成することを可能にする限りにおいて、殺ウイルス剤前駆体を構成する。
【0057】
より特定すれば、用語「前駆体」とは、本発明によれば、本発明による適用法の工程中に、転換により、またはそれに関連する、したがって前駆体としても記載される別の化合物との反応により、所期の殺ウイルス剤を生成することができる化合物を示す。
【0058】
一実施形態によると、殺ウイルス剤は特に、ラウリン酸、モノラウリン、ラクトフェリンおよび例えば、月桂樹精油などの抗ウイルス活性を有する精油から選択され得る。
【0059】
本発明の意味において、用語「モノラウリン」とは、自然に既存のモノラウリンとグリセロールおよびラウリン酸からの合成により得られるものの両方を示すと理解される。
【0060】
これらの3つのタイプの天然起源の殺ウイルス剤は、実際、本発明の関連において検討されるようにコーティングを形成することができる流体組成物の調製のための特に有利な特性を示すことが確認された。
【0061】
好ましくは、本発明の文脈中、ラウリン酸からのモノラウリンの合成は、約100℃、好ましくは100℃以上の温度で行われ、特にオーブンでワニスの調製中にまたはインクの架橋もしくは乾燥中に製造することができる。
【0062】
本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物は、有効量の少なくとも1種の殺ウイルス剤および/または少なくとも1種のその前駆体、すなわち、それを組み込んでいる組成物に抗ウイルス活性を与えるのに十分な量の少なくとも1種の殺ウイルス剤および/または少なくとも1種のその前駆体を含有する。
【0063】
一実施形態によると、これは、特に殺ウイルス剤を組み込んでいる前記組成物に、実施例に記載する測定プロトコルによる1logより大きい抗ウイルス活性を与えるのに十分な量の殺ウイルス剤であり得る。
【0064】
自明の理由のために、本発明により使用すべき殺ウイルス剤の量は、特に前記殺ウイルス剤の性質および/または前記組成物の性質に依存するので、大いに変化し得る。
【0065】
当業者は、一般知識に基づいて、適当な量を容易に決定することができる。殺ウイルス剤の量の調整は、当業者の能力に入る。
【0066】
本発明者等は、特に、2重量%未満の量の殺ウイルス剤が、満足な抗ウイルス活性を得ることを可能にすることを決定した。
【0067】
例として、本発明による流体組成物は、その総重量に対して0.1乾燥重量%〜3乾燥重量%、例えば、0.1乾燥重量%〜2乾燥重量%、例えば、0.5乾燥重量%〜1.5乾燥重量%の殺ウイルス剤を含有することができる。
【0068】
一実施形態によると、本発明による流体組成物はまた、抗ウイルス活性を有しても有さなくてもよい他の追加の活性化合物を含有することができる。
【0069】
流体組成物は特に、殺生物剤、例えば、静菌性および/もしくは殺菌性ならびに/または静真菌性および/もしくは殺真菌性タイプの殺生物剤を含有することができる。
【0070】
したがって、一実施形態によると、本発明による組成物は、必要とされる殺ウイルス剤以外に、少なくとも1種の殺菌剤および/または1種の殺真菌剤を含有する。
【0071】
殺菌剤の例として、難分解性銀塩、第四級アンモニウム塩、例えば、ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドまたはアルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカライド、ピリチオンおよびこれらの誘導体を特にあげることができる。
【0072】
好ましくは、組成物は、有毒な殺菌剤を含まない。特に、組成物は、ピリチオンおよびその誘導体を含まない。
【0073】
殺真菌剤の例として、ジヨードメチル-p-トリルスルホンまたは3-ヨードプロパルギル-N-ブチルカルバメートを特にあげることができる。
【0074】
好ましくは、組成物は、有毒な殺真菌剤を含まない。特に、組成物は、ジヨードメチル-p-トリルスルホンを含まない。
【0075】
別の実施形態によると、本発明により必要とされる殺ウイルス剤は、それ自体、抗ウイルス活性以外に、少なくとも1種の他の生物活性を示すことができる。
【0076】
したがって、本発明により必要とされる殺ウイルス剤はまた、例えば、静菌、殺菌、静真菌または殺真菌活性、より特定すれば静菌または殺菌活性を示すことができる。
【0077】
上に明示するように、殺ウイルス剤は、湿潤剤と組み合わせた形で使用することができる。
【0078】
湿潤剤
本発明の意味において、湿潤剤は水和効果または吸湿効果をもたらすことができる化合物である。
【0079】
意外にも、本発明者等は、このような化合物の存在が、殺ウイルス剤、特に天然起源の関連する殺ウイルス剤の抗ウイルス活性を刺激するので、これら2種の化合物を組み込んでいる本発明による流体組成物により示される抗ウイルス活性を増加させることを可能にし得ることを認めた。
【0080】
これらの湿潤剤の代表として、例えば、グリセロールとしても知られているグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレグリコール、三酢酸グリセリンまたはソルビトールなどのポリオールタイプの化合物を本発明の関連において特に検討することができる。
【0081】
1つの好ましい実施形態変形例によると、検討される湿潤剤はグリセロールである。
【0082】
別の実施形態変形例によると、検討される湿潤剤は、以下の化合物から選択される:
- ピドロ酸(PCA)およびその誘導体(アルギニンPCA、銅PCA、エチルヘキシルPCA、ラウリルPCA、マグネシウムPCA、ナトリウムPCA、亜鉛PCA等)、
- グルコン酸カルシウム、
- フルクトース、グルコース、イソマルト、ラクトース、マルチトール、マンニトール、ポリデキストロース、ソルビトール、サッカロースまたはキシリトール、
- グリチルリチン酸およびその誘導体、
- ヒスチジン、
- ヒアルロン酸およびその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、
- 絹、ケラチンまたはダイズ加水分解物、
- フィタントリオール、
- 絹、あるいは
- 尿素。
【0083】
本発明による流体組成物は、その総重量に対して0.5乾燥重量%〜4乾燥重量%、例えば、1乾燥重量%〜3乾燥重量%の湿潤剤、特にグリセロールを含有することができる。
【0084】
1つの好ましい実施形態によると、湿潤剤は、少なくとも1に等しい、湿潤剤の質量と殺ウイルス剤の質量の重量比で、本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物中に存在する。
【0085】
1つの特定の実施形態によると、本発明による流体組成物は、少なくとも1種の本発明による殺ウイルス剤と、少なくとも1種の湿潤剤、特にグリセロールと、さらに、少なくとも1種の静菌性および/もしくは殺菌性殺生物剤または1種の静真菌性および/もしくは殺真菌性殺生物剤とを含有することができる。
【0086】
別の特定の実施形態によると、本発明による流体組成物は、少なくとも1種の本発明による殺ウイルス剤の前駆体と、少なくとも1種の湿潤剤、特にグリセロールと、さらに、少なくとも1種の静菌性および/または殺菌性殺生物剤と、少なくとも1種の静真菌性および/または殺真菌性殺生物剤とを含有することができる。
【0087】
殺ウイルス剤および/またはその前駆体ならびに存在する場合には湿潤剤は、有利には溶媒媒体に製剤化される。
【0088】
溶媒媒体
この溶媒媒体の性質は、標的化される組成物のタイプに直接関連する。
【0089】
溶媒媒体は、単相または二相媒体であり得る。
【0090】
例えば、本発明による溶媒媒体は、水中油型または油中水型乳濁液の形態であり得る。
【0091】
上に明示するように、本発明による組成物は、より特定すればインク、ワニス、ラッカーまたは塗料である。
【0092】
より好ましくは、本発明による組成物はインクまたはワニスである。
【0093】
一般的には、これらの組成物の全てが、溶媒媒体として、水、有機溶媒、油またはこれらの混合物を使用する。
【0094】
例えば、インクの中には、溶媒が水である水性インク、およびさらに溶媒が有機性である「油性インク」、および脂肪性インクが存在する。表現「脂肪性インク」とは、活版印刷、石版印刷または凹版印刷に使用される種々のインクを意味するものと理解される。
【0095】
したがって、本発明による流体組成物は、少なくとも1種の室温で揮発性の有機溶媒から構成される少なくとも1種の有機溶媒媒体を含むことができる。
【0096】
室温で揮発性または非揮発性の有機溶媒として、
- 室温で液体のケトン、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトン;
- 室温で液体のアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、2-ブトキシエタノール、シクロヘキサノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール;
- 室温で液体のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール;
- 室温で液体のプロピレングリコールエステル、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;
- 短鎖エステル(合計で3〜8個の炭素原子を有する)、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アリール酢酸、酢酸イソペンチル;
- 室温で液体のアルカン、例えば、デカン、へプタン、オクタン、ドデカン、シクロヘキサン、イソドデカン;および
- これらの混合物
をあげることができる。
【0097】
油に関しては、これらは
- 植物油;
- 精製亜麻仁油;
- 特に速乾性インキ用のキリ油;
- 特に印刷分野のダイズ油。この油は、顔料濡れにおいて提供する改善のために評価される;
- 特にアルキド樹脂を調製するためのヒマワリ油;
- 菜種油;
- トール油;および
- 石油蒸留物
から選択され得る。
【0098】
本発明による流体組成物はまた、溶媒媒体としてUV架橋樹脂を使用することもできる。
【0099】
例えば、溶媒媒体としてこのタイプの樹脂を使用するUVフレキソインキが存在する。
【0100】
本発明による組成物は、殺ウイルス剤または殺ウイルス剤前駆体以外に、このタイプの組成物に従来使用されている成分を含有する。
【0101】
したがって、インク、ワニス、ラッカーまたは塗料は、一般的に1種または複数の顔料および結合剤から構成される。
【0102】
結合剤
上に明示するように、本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物は、一般的に、少なくとも1種の結合剤も含有する。
【0103】
より特定すれば、本発明による結合剤は、樹脂、ワックスおよびガムから選択される。
【0104】
樹脂は特に、脂環式エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂およびアルデヒド樹脂から選択され得る。
【0105】
樹脂は、組成物の総重量に対して15〜16重量%の間、好ましくは20〜40重量%の間の含量で本発明による組成物中に存在し得る。
【0106】
本発明により使用することができるワックスとして、
- 植物ワックス、例えば、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、オウリキュリー(ouricury)蝋、和蝋、カカオ脂またはコルク繊維蝋またはサトウキビ蝋;
- 鉱物蝋、例えば、パラフィン蝋、ワセリン蝋、亜炭蝋または微結晶蝋またはオゾケライト;
- ポリオレフィンワックスを含む合成蝋、特にポリオレフィンワックスおよびフィッシャー-トロプシュ合成により得られる蝋;
- シリコーンワックス、特に置換された直鎖ポリシロキサン;例えば、ポリエーテルシリコーンワックス、アルキルジメチコンまたは16〜45個の炭素原子を有するアルコキシジメチコン、アルキルメチコン、例えば、DOW CORNINGにより商品名「AMS C 30」で販売されているC30〜C45アルキルメチコンをあげることができる、
- 硬化油、
- ならびに/あるいはこれらの混合物
をあげることができる。
【0107】
本発明に適したワックスの例として、炭化水素蝋、例えば、蜜蝋、ラノリン蝋および支那蝋;米ぬか蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、オウリキュリー蝋、エスパルトワックス、ベリーワックス、シェラック蝋、和蝋および木蝋;モンタン蝋、オレンジおよびレモンワックス、微結晶蝋、パラフィン蝋およびオゾケライト;ポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ合成により得られる蝋および蝋様共重合体、ならびにこれらのエステルを特にあげることができる。
【0108】
ワックスは、組成物の総重量に対して0〜20重量%の間、好ましくは0.5〜15重量%の間の含量で本発明による組成物中に存在することができる。
【0109】
ガムは、特にアラビアガム、トラガカントガム、カシアガム、ガンボージガム(gamboges gum)、シェラック、サンダラックガム(gum sandarac)、マスティックガムまたはゴム樹脂から選択され得る。
【0110】
結合剤の性質は、一般的にワニスタイプ、すなわち、セルロースワニス、ポリウレタンワニスまたはアクリルワニスを決定する。
【0111】
好ましくは、本発明による流体組成物はインクであり、少なくとも1種の顔料と、特にポリエチレンワックス、アクリル樹脂およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の結合剤とを含有する。
【0112】
好ましくは、本発明による流体組成物はワニスであり、特にポリエチレンワックス、アクリル樹脂およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の結合剤を含有する。
【0113】
好ましくは、本発明による流体組成物はオーバープリントワニスであり、特に脂環式エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の結合剤を含有する。
【0114】
顔料
本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物は、有利には1種または複数の顔料を含有することができる。
【0115】
顔料は、本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物の総重量に対して0〜60重量%、特に10〜50重量%、特に15〜35重量%の割合で存在することができる。
【0116】
好ましくは、本発明による流体組成物はインクであり、顔料は本発明によるコーティングを形成することができる流体組成物の総重量に対して0〜60重量%、特に10〜50重量%、特に15〜35重量%の割合で存在することができる。
【0117】
用語「顔料」は、水溶液に不溶性であり、得られるフィルムを着色するおよび/または不透明にすることを意図した、白色もしくは有色の鉱物または有機粒子を意味すると理解すべきである。
【0118】
本発明に使用することができる鉱物顔料として、酸化チタン、酸化ジルコニウムもしくは酸化セリウムおよびさらに酸化亜鉛、酸化鉄もしくは酸化クロム、フェリックブルー(ferric blue)、マンガンバイオレット、群青およびクロム水和物をあげることができる。
【0119】
本発明に使用することができる有機顔料として、カーボンブラック、D&Cタイプ顔料ならびにコチニールカーマインまたはバリウム、ストロンチウム、カルシウムもしくはアルミニウムに基づくレーキをあげることができる。
【0120】
一実施形態変形例によると、これらの顔料は、真珠光沢顔料としても知られている真珠箔顔料および/または発光顔料、特に、蛍光または燐光顔料であってもよい。
【0121】
本発明に使用することができる真珠光沢顔料として、酸化鉄でコーティングされたチタン-雲母、オキシ塩化ビスマスでコーティングされたチタン-雲母、酸化クロムでコーティングされたチタン-雲母、有機染料でコーティングされたチタン-雲母およびさらにオキシ塩化ビスマスに基づく真珠光沢顔料をあげることができる。これらはまた、その表面に金属酸化物および/または有機染料の少なくとも2つの連続層が重ねられた雲母粒子であってもよい。
【0122】
真珠光沢顔料の例として、酸化チタン、酸化鉄、天然顔料またはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた天然雲母をあげることもできる。
【0123】
本発明に使用することができる無機蛍光物質として、例えば、酸化亜鉛に基づく無機蛍光物質、固体溶液を得るために最初に担体樹脂に溶解し、次いで、粉砕して蛍光特性を有する樹脂粒子の粉末を得る蛍光染料から一般的に製造される、昼光で蛍光性の顔料をあげることができる。
【0124】
本発明に適した蛍光顔料は、ポリアミドおよび/またはホルムアルデヒド/ベンゾグアナミンおよび/またはメラミン/ホルムアルデヒド/スルホンアミドの有色樹脂、有色アミノトリアジン/ホルムアルデヒド/スルホンアミド共縮合物ならびに/あるいは金属化ポリエステルフレークならびに/あるいはこれらの混合物から選択することができる。これらの蛍光顔料はまた、蛍光顔料の水性分散液の形態であってもよい。
【0125】
有機蛍光物質が白色の場合、これらはまた蛍光増白剤としても知られており、特に、300〜390nmの間のUVAで吸収し、本質的に400〜525nmの間で再発光する。
【0126】
組成物はまた、その適用中および後にコーティングの特性を最適化することを可能にする1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0127】
これらの添加剤の中には、特に、分散剤、消泡剤が見られるが、ポリマー、増粘剤および可塑剤も見られる。
【0128】
適用法
本発明の別の主題は、前に定義するコーティングを形成することができる流体組成物を適用する方法に関する。
【0129】
第1の実施形態によると、この方法は、少なくとも上に定義する組成物を適用することからなる工程を含む、柔軟性担体もしくは固体担体の表面の全部または一部に殺ウイルス特性を与えるのに有用な方法であり得る。
【0130】
特に天然起源の前記殺ウイルス剤を前記組成物に組み込むことに関して、例えば、アンモニア性溶液または好ましくは匂いを放出しない利点を有する2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールに基づく溶液などの特定の乳濁液または溶液を使用するよう導くことが可能である。
【0131】
一実施形態変形例によると、このような乳濁液中に湿潤剤が存在してよい。
【0132】
特に天然起源の殺ウイルス剤は、前に定義するようなものであってよく、特に、モノラウリン、ラクトフェリンおよび例えば、月桂樹精油などの抗ウイルス活性を有する精油から選択することができる。
【0133】
湿潤剤は前に定義するようなものであってもよく、特にグリセロールであってよい。
【0134】
覆うべき柔軟性担体または固体担体の表面への前記組成物の適用は、種々の方法で行うことができる:
- 表面上に前記組成物を噴霧することによる、
- 表面上に前記組成物を印刷することによる、
- 表面上に前記組成物をオーバープリントすることによる、
- 少なくとも部分的に印刷された表面上に前記組成物を表面塗布することによる、
- 表面上に前記組成物をコーティングすることによる、および
- 表面上に前記組成物を付着することによる。
【0135】
湿潤剤は、有利には本発明による流体組成物中に存在する。
【0136】
特に、本発明による流体組成物の前記適用には、モノラウリン乳濁液の使用が好ましいだろう。
【0137】
一実施形態変形例によると、殺ウイルス剤は、活性剤としてこの殺ウイルス剤の前駆体を含有する本発明による組成物からその場で生成することができる。
【0138】
したがって、その態様の別のものによると、本発明はまた、特に上に定義する天然起源の殺ウイルス剤の少なくとも1種の前駆体を含有する組成物を適用する工程と、前記組成物の前記適用中に柔軟性担体または固体担体の表面上にその場で前記殺ウイルス剤を生成する工程とを含むことを特徴とする方法に関する。
【0139】
一実施形態変形例によると、本方法はまた、特に上に定義する湿潤剤を使用する工程を含むことができる。
【0140】
この実施形態変形例は、殺ウイルス剤が天然起源のものである場合、および後者が、例えば、好ましくはさらに有利なコストで合成により容易に達成可能な場合に特に適している。
【0141】
したがって、例えば、これは、触媒の存在下でラウリン酸およびグリセロールの反応によりその場で合成されるモノラウリンであり得るだろう。
【0142】
モノラウリンは、実際、商業的に入手可能でもあるが、比較的高価である。そのため、この実施形態変形例によるその場での合成は、モノラウリンを低価格でコーティングタイプの流体組成物に使用することを可能にする。
【0143】
前記殺ウイルス剤を前記組成物に組み込むことに関して、特に、アンモニア性溶液または好ましくは匂いを放出しない利点を有する2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールに基づく溶液などのラウリン酸の溶液を使用することが好ましいだろう。
【0144】
この第2の実施形態によると、本方法は、
a)ラウリン酸とグリセロールとの間の相互作用を刺激することができる少なくとも1種の触媒および/または反応物を含む、処理すべき表面を有する柔軟性担体または固体担体を使用することと;
b)前記表面を、少なくともラウリン酸およびグリセロールを含有する上に定義する流体組成物と接触させることと;
c)ステップb)で処理した表面を、モノラウリンの合成を促す熱処理に供することと
からなる工程を少なくとも含むことができ、前記ステップb)およびステップc)を連続的にまたは同時に行うことが可能である。
【0145】
別の実施形態変形例によると、ラウリン酸およびグリセロールを含有する流体組成物中に触媒が存在してよい。
【0146】
一実施形態変形例によると、本方法は、消泡剤の存在下で行うことができる。
【0147】
より特定すれば、これは、Aerotech 3514(登録商標)(KEMIRA CHIMIE SA)の名称で販売されており、鉱物油および非イオン性界面活性剤の混合物から形成される化合物である。
【0148】
このような化合物は、ラウリン酸およびグリセロールの混合物の総重量に対して0.01%〜0.30%の間、好ましくは0.04%〜0.20%の間、より好ましくは0.04%〜0.12%の間の濃度で導入することができる。
【0149】
前に示すように、ラウリン酸およびグリセロールからのモノラウリンの合成は、触媒の存在下で行われる。
【0150】
この反応の触媒に特に適した触媒の例として、ゼオライト、例えば、会社FMC Foretにより販売されているゼオライトA、またはリパーゼを特にあげることができる。
【0151】
触媒がリパーゼである場合、刊行物「Enzymatic synthesis of monolaurin」(Applied Biochemistry and Biotechnology、2004、第113〜116巻、433〜445頁)中にPereira C.C.B、Da Silva M.A.PおよびLangone M.A.Pにより記載されている反応条件を特に参照することができる。
【0152】
本発明の関連において特に適したリパーゼとして、例えば、会社NOVOZYMESにより、Lipozyme RM IM(登録商標)、Lipozyme TL IM(登録商標)およびResinase A2C(登録商標)という名称で販売されているリパーゼをあげることができる。
【0153】
本発明による流体組成物は、その総重量に対して0.5乾燥重量%〜3乾燥重量%、例えば、0.5乾燥重量%〜2乾燥重量%の触媒を含有することができる。
【0154】
触媒、例えば、ゼオライトは、ラウリン酸およびグリセロールの混合物の総重量に対して少なくとも2重量%、例えば、少なくとも5重量%の割合で導入することができる。
【0155】
第1の実施形態変形例によると、ラウリン酸およびグリセロールは、等モル混合物として導入することができる。
【0156】
第2の実施形態変形例によると、グリセロールは、ラウリン酸に対して過剰に導入することができる。
【0157】
そのため、この第2の変形例によると、残留過剰グリセロールは、反応の最後でコーティング中に存在したままである。
【0158】
前に言及するように、この残留グリセロールは、湿潤剤として作用し、抗ウイルス特性を増加させることができる。
【0159】
以下の非限定的実施例は、本発明を実施する方法およびその利点をよりよく理解することを可能にする。
【実施例1】
【0160】
モノラウリン乳濁液の調製
合成モノラウリン50gを、融解するまで50℃の水浴中でRayneriミキサーを使用して撹拌する。
【0161】
Disponil TD(登録商標)0785 5gおよび水7gを添加する。
【0162】
50℃で融解したEumulgin BA(登録商標)10 4gを添加し、次いで、均質化後、これを撹拌しながら室温に冷却する。
【0163】
水6gを撹拌しながら添加し、次いで、15分間撹拌したまま放置する。
【0164】
水47.5gを撹拌しながらゆっくり導入する。
【0165】
42%モノラウリンを含有する乳濁液が得られる。
【0166】
【表1】
【0167】
Rayneriミキサーを使用して調製を行う。
【0168】
上に示すように調製したフレキソインキを、従来の紙担体(模造皮紙NS 2005 5175)の2つの面にコーティングする。
【0169】
各面を100℃で3分間乾燥させる。
【0170】
1面当たりの平均付着は14.4 g/m2湿性、すなわち、約6.8 g/m2乾性(0.27 g/m2のモノラウリン)とする。
【0171】
【表2】
【0172】
Rayneriミキサーを使用して調製を行う。
【0173】
上に示すように調製したオーバープリントワニスをPolyart(登録商標)プラスチック担体(非コーティングPolyart P3)の2つの面にコーティングする。
【0174】
各面を90℃で2分間乾燥させる。
【0175】
1面当たりの平均付着は15.8 g/m2湿性、すなわち、約5.8 g/m2乾性(0.30 g/m2のモノラウリン)とする。
【実施例2】
【0176】
本発明により処理した担体の抗ファージ活性
抗ファージ活性の試験を行う。試験は、MS2ファージについての修正JIS L 1902規格または修正ISO 20743規格に基づき、これらのファージは高耐性であると評判で、18〜24時間の間の作用時間にわたって適用する。
【0177】
原理は以下の通りである:M2ファージを、実施例1の第1部で検討した従来の紙担体(模造皮紙NS 2005 5175)に付着させ、次いで、活性MS2ファージの数を、t=0時間の第1時間およびt=24時間の第2時間に評価する。
【0178】
所与の時間に試験すべき担体上の活性MS2ファージの数を評価するために、これらの担体をMS2ファージ宿主である特性を有する特定の細菌と接触させる:培養後の溶菌斑(またはpfp)の数の測定により、所望の量のMS2ファージを取り戻すことが可能になる。
【0179】
したがって、そこから以下に定義する抗ファージ活性(Aで示す)を推定することが可能である:
A=[av log(C24)-av log(C0)]-[av log(E24)-av log(E0)]
(式E24は24時間での溶菌斑の数に相当し、E0は試験する担体と接触させた直後の溶菌斑の数に相当する)。
【0180】
実験条件は以下の通りとする:
- 使用する希釈剤はペプトン/塩(整理番号DIFCO、1897〜17)とし、使用する細菌株はMS2ファージの宿主株である大腸菌(Escherichia coli)K12とする。
- 対照担体は未処理100%綿織物とする。
- 1×105pfp/mLを含有するファージの懸濁液200μLを付着させる。
【0181】
以下の抗ファージ活性がそこから推定される:
A実施例1によるフレキソインキ=-2.74-(-3.94)=1.20log
【0182】
結果を以下に報告する。
【0183】
【表3】
【実施例3】
【0184】
本発明により処理した担体の抗ウイルス活性
一方はポリオウイルスLsc 1に関するものおよび他方はインフルエンザA(H1N1)に関するものである抗ウイルス活性の2つの試験を行う。
【0185】
試験する担体は実施例1の第2部で検討したPolyart(登録商標)プラスチック担体(非コーティングPolyart P3)とする。
【0186】
a)ポリオウイルスLsc 1
手順は、試験ASTM E 1053-97(Standard Test Method for Efficacy of Virucidal Agents Intended for Inanimate Surfaces)に相当する。
【0187】
担体は綿でできた未処理普通紙とする。
【0188】
原理は以下の通りである:
【0189】
処理および未処理紙を30mm2切片に切断する。
【0190】
これらの処理および未処理切片の5個を250mm滅菌プラスチックペトリ皿に入れる。
【0191】
上に定義するウイルスを含む希釈液100mLを正方形切片の表面に均一に適用する。
【0192】
本発明により処理した担体および対照担体上に最終的に試験した5種の希釈液をtable IV(表4)に明記する。
【0193】
ペトリ皿を覆い、22℃で24時間インキュベートする。
【0194】
次いで、これらを取り出し、各接種切片を滅菌円錐底遠心管(Fisher Scientific、PA)中に移す。各管について、滅菌PBS(リン酸緩衝食塩水)20mLおよび3%牛肉エキス(Becton Dickinson #263010、MD)を添加する。
【0195】
管をオービタルシェーカーに置き、低速で15分間振盪する。
【0196】
振盪後、液体5mlを各管から取り出し、これらをそれぞれ新たな滅菌円錐底遠心管(Fisher Scientific、PA)に入れる。
【0197】
懸濁液をPBSに10倍希釈する。
【0198】
各管の生存能力のあるポリオウイルスの数を数える。
【0199】
集計は、寒天コーティングを使用して新たに調製したBGM細胞単層に試料希釈液を一定分量接種することにより行う。
【0200】
溶菌斑を接種の2〜4日の期間にわたって記録する。
【0201】
細胞を、5%CO2を含有する雰囲気中35℃でインキュベートする。
【0202】
結果を以下に報告する。
【0203】
【表4】
【0204】
b)インフルエンザA(H1N1)
ウイルス培養液の調製
インフルエンザA(H1N1;ATCC VR-1469)ウイルスを、宿主としてMDCK(メイディン-ダービーイヌ腎臓タイプI)細胞の単層(ATCC CCL-34)を使用して、増殖させ、最確数(MPN)として数える。
【0205】
細胞を12ウェル細胞培養プレートで培養する。
【0206】
集計のために、一定分量の試料をMDCK単層の新たに調製した単層に接種する。
【0207】
細胞を35℃で5%CO2を含有する雰囲気中5〜7日間、トリプシンを含有するdMEM(Media Tech、USA)培地でインキュベートする。
【0208】
細胞を、顕微鏡を使用して系統的に監視し、変性の徴候を観察する。
【0209】
感染性の徴候(細胞変性効果;CPE)を示すウェル中の細胞を陽性(+)として記録し、これらの徴候を示さないものを陰性(-)として記録する。
【0210】
次いで、試料中の感染性ウイルスの最確数を、MPNCALCソフトウェア(バージョン0.0.0.23)を使用して計算する。
【0211】
実験のために、凍結したウイルスストック(典型的には1×108iu/ml)を、実験の前日に35℃の水浴中で急速解凍する。
【0212】
次いで、2%BSA(ウシ血清アルブミン)を補充したPBSへのストックの1/10希釈を行う。
【0213】
次いで、ストックを以下の抗ウイルス試験に使用する。
【0214】
希釈したウイルスストックをPBSの連続希釈により滴定し、上記のようにMDCK細胞に接種する。
【0215】
抗ウイルス試験についての手順は上記のものと同じとする。
【0216】
各管のインフルエンザAウイルスの数を数える。
【0217】
集計は、上記MPN手順にしたがって行う。
【0218】
結果を以下に報告する。
【0219】
【表5】