(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058631
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20161226BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
H01M2/10 N
H01M2/10 E
H01M2/10 F
H01M2/10 A
B29C33/42
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-506099(P2014-506099)
(86)(22)【出願日】2013年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2013054732
(87)【国際公開番号】WO2013140951
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-64595(P2012-64595)
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】米田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】山上 定男
(72)【発明者】
【氏名】拝野 真己
(72)【発明者】
【氏名】神足 昌人
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−305408(JP,A)
【文献】
特開平05−278081(JP,A)
【文献】
特開2010−277795(JP,A)
【文献】
特開2010−277796(JP,A)
【文献】
特開2011−171125(JP,A)
【文献】
特開2011−216366(JP,A)
【文献】
特開2011−253641(JP,A)
【文献】
特開平06−223794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、
を備える電池パックであって、
前記外装ケースは、該外装ケースの内面の第一位置から突出させたケース側リブを設けており、
前記電池ホルダーは、該電池ホルダーの外面の第二位置から突出させたホルダー側突起を設けており、
前記電池ホルダーが、異なる種類の電池ホルダーとは前記ホルダー側突起を設けた第二位置が異なるように構成されており、
前記第一位置と第二位置とは、
前記外装ケースに電池ホルダーを挿入した状態で前記ケース側リブが前記ホルダー側突起と干渉しない位置であって、かつ、
前記外装ケースに該異なる種類の電池ホルダーを挿入しようとすると、前記ケース側リブがホルダー側突起と干渉する位置となるように配置されており、
前記第一位置と第二位置とが、所定の対称軸を中心とする対称な位置にあることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記外装ケースが、第一ケースと第二ケースとで構成されており、
前記外装ケースと電池ホルダーとの対応関係が正しくない場合に、前記ケース側リブと
ホルダー側突起とが干渉して、前記第一ケースと第二ケースとが閉塞できないように構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、さらに、
前記電池ホルダーを被覆する防水性のカバーを備えており、
前記ケース側リブが、複数枚のリブを互いに離間させて形成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載の電池パックであって、
前記複数枚のリブが、中央のリブを他のリブよりも高く突出させてなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を設けてなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックであって、
前記ケース側リブの周囲に、メイン側刻印が形成されており、
前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
外装ケースと、
複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、
を備える電池パックの製造装置であって、
前記外装ケースを成型するためのメイン金型と
前記メイン金型に挿入可能な入れ子金型を備え、
前記入れ子金型は、前記外装ケースの内面から突出させたケース側リブを第一位置に形成するためのリブ用プロファイルを有しており、
前記第一位置は、電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を設けた第二位置と干渉しない位置に調整されると共に、
異なる種類の電池ホルダーは、前記第二位置をそれぞれ異なる位置に変化させてなると共に、
前記入れ子金型を変更することで、前記第一位置を変更でき、該入れ子金型で成型する外装ケースと対応する電池ホルダーの第二位置とは干渉しない位置とする一方で、
対応しない電池ホルダーの第二位置とは干渉する位置に調整可能に構成してなることを特徴とする電池パックの製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電池パックの製造装置であって、
前記入れ子金型がさらに、外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を刻印するための入れ子側刻印用プロファイルを形成してなることを特徴とする電池パックの製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電池パックの製造装置であって、
前記メイン金型は、前記入れ子金型の周囲に、メイン側刻印を刻印するためのメイン側刻印用プロファイルを形成しており、
前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなることを特徴とする電池パックの製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電池パックの製造装置であって、
前記メイン側刻印が複数、異なる内容で異なる位置にそれぞれ形成されており、
前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなることを特徴とする電池パックの製造装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一に記載の電池パックの製造装置であって、
前記入れ子側刻印が、前記ケース側リブと同じ面に形成されてなることを特徴とする電池パックの製造装置。
【請求項12】
外装ケースと、
複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、
を備える電池パックの製造方法であって、
前記外装ケースを成型するためのメイン金型に対して、前記メイン金型に挿入可能な入れ子金型を選択し、これを挿入する工程と、
前記入れ子金型をセットしたメイン金型で、外装ケースを成型する際に、前記外装ケースの内面に、該内面から突出させたケース側リブを第一位置に形成する一方、
前記外装ケースに挿入するための電池ホルダーを成型する際に、該電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を第二位置に形成する工程と、
前記外装ケースに電池ホルダーを挿入する工程と、
を含み、
前記第一位置は、電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を設けた第二位置と干渉しない位置に調整されると共に、
異なる種類の電池ホルダーは、前記第二位置をそれぞれ異なる位置に変化させてなると共に、
前記入れ子金型を変更することで、前記第一位置を変更でき、該入れ子金型で成型する外装ケースと対応する電池ホルダーの第二位置とは干渉しない位置とする一方で、
対応しない電池ホルダーの第二位置とは干渉する位置に調整可能に構成してなることを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電池パックの製造方法であって、
前記入れ子金型がさらに、外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を刻印するための入れ子側刻印用プロファイルを形成してなることを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電池パックの製造方法であって、
前記メイン金型は、前記入れ子金型の周囲に、メイン側刻印を刻印するためのメイン側刻印用プロファイルを形成しており、
前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなることを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電池パックの製造方法であって、
前記メイン側刻印が複数、異なる内容で異なる位置にそれぞれ形成されており、
前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなることを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一に記載の電池パックの製造方法であって、
前記入れ子側刻印が、前記ケース側リブと同じ面に形成されてなることを特徴とする電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを収納した電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルを複数用いた電池パックが、アシスト自転車や電動工具等の電源として利用されている。電池パックは、複数本の電池セルを、電池ホルダーに固定した状態で、外装ケースに挿入される。電池ホルダーは、電池セルを収納するための収納空間を設けている。円筒状の電池セルを用いる場合は、電池ホルダーは電池セルを個別に収納する筒状の保持筒を互いに平行姿勢となるよう固定している。
【0003】
電池パックは、並列接続する電池セルの数によって出力電流を変化でき、また直列接続する電池セルの数によって出力電圧を変化できる(例えば特許文献1、2)。このような電池パックは、用いられる用途や駆動対象の電気機器の仕様等に応じて、出力電流や電圧等が決定され、これに応じて電池セルの使用本数や直列、並列の接続形態等を適切に設定している。いいかえると、用いられる用途に応じて、電池パックの出力電圧や使用する電池セルの数等は異なる。
【0004】
一方で、製造コストの削減や管理のし易さなどの観点から、電池パックの外装ケースを共通化したり、外形を同じとすることも行われている。特にコストダウンの観点から、使用する電池セルの本数が近い場合は、電池ホルダーを個別に設計しつつも、これを収納する外装ケースを共通化し、この外装ケースを成型する金型を使い回すことでコストダウンを図っている。例えば、
図25の断面図に示す電池パック2500では、7本の電池セル10を直列にした組を6組並列に接続しており、計42本の電池セルを使用している。一方、
図26の断面図に示す電池パック2600では、10本の電池セル10を直列に接続した組を4組並列に接続し、計40本の電池セルを使用している。また、図示しないが電池ホルダーに例えば42個の保持筒を備えつつ、この内2本を空として、40本の電池セルをリード板で10直列×4並列に接続することもできる。このように、使用する電池本数が多少異なる電池ホルダーでも、外形を近似あるいは一致させて、外装ケースを共通化することが行われている。
【0005】
しかしながら、電池パックの外装ケースが同じであると、電池パックの組み立て作業時において、内部に収納する電池ホルダーの取り違える事態も考えられる。外装ケースに本来の電池ホルダーとは異なる電池ホルダーが収納されると、電圧仕様などが異なるため、電気機器に接続した際、動作しなかったり、正しく駆動されなくことがあった。
【0006】
このような取り違えを防止するため、例えば外装ケースの内面にリブなどを突出させて、正しい組み合わせでない電池ホルダーを収納しようとするとリブを干渉させて外装ケースの組み立てを阻害することも考えられる。しかしながら、この場合は外装ケースを個別に設計する必要が生じ、各外装ケースを成型するための専用の金型がそれぞれ必要となって製造コストが増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−177156号公報
【特許文献2】特開2002−208388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。本発明の主な目的は、外装ケースに収納する電池ホルダーの取り違えを回避して組み立てを正しく行えるようにした電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法を提供することにある。
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の側面に係る電池パックは、外装ケースと、複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、を備える電池パックであって、前記外装ケースは、該外装ケースの内面の第一位置から突出させたケース側リブを設けており、前記電池ホルダーは、該電池ホルダーの外面の第二位置から突出させたホルダー側突起を設けており、前記電池ホルダーが、異なる種類の電池ホルダーとは前記ホルダー側突起を設けた第二位置が異なるように構成されており、前記第一位置と第二位置とは、前記外装ケースに電池ホルダーを挿入した状態で前記ケース側リブが前記ホルダー側突起と干渉しない位置であって、かつ、前記外装ケースに該異なる種類の電池ホルダーを挿入しようとすると、前記ケース側リブがホルダー側突起と干渉する位置となるように配置されており、前記第一位置と第二位置とを、所定の対称軸を中心とする対称な位置に配置することができる。
上記構成により、外装ケースと電池ホルダーとの対応関係が正しくない場合にはケース側リブとホルダー側突起とが干渉することで、組立時に誤った組み合わせのまま組まれてしまう事態を回避できる。特に、例えば金型で外装ケースを成形する際に、金型を入れ子状に構成して、入れ子金型を反転させることでケース側リブを設ける位置を簡単に第一位置と第二位置とで入れ替え可能とできる。この構成であれば、ケース側リブを設けるための金型を、共通化でき、また入れ子金型が比較的大きくなるため、紛失の心配も少ない。
【0010】
また、第2の側面に係る電池パックは、前記外装ケースが、第一ケースと第二ケースとで構成されており、前記外装ケースと電池ホルダーとの対応関係が正しくない場合に、前記ケース側リブとホルダー側突起とが干渉して、前記第一ケースと第二ケースとが閉塞できないように構成できる。
上記構成により、外装ケースと電池ホルダーとの対応関係が正しくない場合には第一ケースと第二ケースを閉塞できず、外装ケースを物理的に組み立てできなくすることで、誤った組み合わせによる組み立てを確実に回避できる。
【0011】
さらに、第3の側面に係る電池パックは、さらに前記電池ホルダーを被覆する防水性のカバーを備えており、前記ケース側リブを、複数枚のリブを互いに離間させるようにして形成できる。
上記構成により、ケース側リブの端縁がカバーに当接する際の圧力を軽減できるので、カバーが破損される事態を抑止できる。
【0012】
さらにまた、第4の側面に係る電池パックは、前記複数枚のリブが、中央のリブを他のリブよりも高く突出するような構成とできる。
上記構成により、リブの突出量を左右から徐々に変化させて、リブの端縁によるカバーへの押圧力を軽減し、リブの端縁でカバーを破損する事態を回避できる。
【0013】
さらにまた、第5の側面に係る電池パックは、前記外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を設けることができる。
上記構成によって、入れ子側刻印でもって第一位置がどの位置に設定されているか、あるいは外装ケースの種別を、目視により確認できる。
【0014】
さらにまた、第6の側面に係る電池パックは、前記ケース側リブの周囲に、メイン側刻印が形成されており、前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるような構成とできる。
上記構成によって、入れ子金型の位置によって入れ子側刻印とメイン側刻印で外装ケースの種別を示す情報を構築でき、これにより目視で外装ケースの種別を判別できるようになる。
【0015】
さらにまた、第7の側面に係る電池パックは、前記外装ケースが、金型によって成形されており、金型がメイン金型と、前記メイン金型に挿入可能な入れ子金型で構成され、前記入れ子金型は、前記ケース側リブを成型するための金型であって、該入れ子金型を変更することで、前記第一位置を変更可能な構成とできる。
上記構成によって、外装ケースを成型する金型のメインを共通化しつつも、入れ子金型の変更によってケース側リブの位置を変更できるようにして、金型のコストを大幅に削減できる。
【0016】
さらにまた、第8の側面に係る電池パックは、前記入れ子金型が、所定の軸を中心に対称な形状に形成されており、前記入れ子金型を反転させて前記メイン金型に挿入させることで、前記第一位置を、前記第二位置と対応する位置に変更可能な構成とすることができる。
上記構成によって、入れ子金型の反転によって容易に第一位置を変更できる。
【0017】
さらにまた、第9の側面に係る電池パックは、前記入れ子金型によって、前記外装ケースに、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を形成しており、前記メイン金型によって、前記入れ子金型の周囲であって、前記入れ子側刻印の形成位置と並ぶ位置に、メイン側刻印が形成されており、前記メイン側刻印が前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるような構成とすることができる。
上記構成によって、入れ子金型の位置によって入れ子側刻印とメイン側刻印で外装ケースの種別を示す情報を構築でき、これにより目視で外装ケースの種別を判別できるようになる。
【0018】
さらにまた、第10の側面に係る電池パックは、前記メイン側刻印が複数、異なる内容で異なる位置にそれぞれ形成されており、前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、該変更後の位置にて、前記メイン側刻印の一と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるような構成とすることができる。
上記構成によって、入れ子金型の位置によって入れ子側刻印とメイン側刻印で外装ケースの種別を示す情報を構築でき、これにより目視で外装ケースの種別を判別できるようになる。
【0019】
さらにまた、第11の側面に係る電池パックは、前記入れ子側刻印が、前記ケース側リブと同じ面に形成されるような構成とすることができる。
上記構成により、入れ子側刻印を外装ケースの内面側に表示させることで、組み立て時においては、入れ子側刻印を手掛かりとして外装ケースと電池ホルダーとの組み合わせを確認できる上、組み立て後においては入れ子側刻印が外装ケースの表面側に表出しないので、完成品の見栄えを悪くすることもない。
【0020】
さらにまた、第12の側面に係る電池パックの製造装置によれば、外装ケースと、複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、を備える電池パックの製造装置であって、前記外装ケースを成型するためのメイン金型と前記メイン金型に挿入可能な入れ子金型を備え、前記入れ子金型は、前記外装ケースの内面から突出させたケース側リブを第一位置に形成するためのリブ用プロファイルを有しており、前記第一位置は、電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を設けた第二位置と干渉しない位置に調整されると共に、異なる種類の電池ホルダーは、前記第二位置をそれぞれ異なる位置に変化させてなると共に、前記入れ子金型を変更することで、前記第一位置を変更でき、該入れ子金型で成型する外装ケースと対応する電池ホルダーの第二位置とは干渉しない位置とする一方で、対応しない電池ホルダーの第二位置とは干渉する位置に調整可能に構成することができる。
上記構成によって、外装ケースを成型する金型のメインを共通化しつつも、入れ子金型の変更によってケース側リブの位置を変更できるようにして、金型のコストを大幅に削減できる。
【0021】
さらにまた、第13の側面に係る電池パックの製造装置によれば、前記入れ子金型がさらに、外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を刻印するための入れ子側刻印用プロファイルを形成することができる。
上記構成によって、入れ子側刻印でもって第一位置がどの位置に設定されているか、あるいは外装ケースの種別を、目視により確認できる。
【0022】
さらにまた、第14の側面に係る電池パックの製造装置によれば、前記メイン金型は、前記入れ子金型の周囲に、メイン側刻印を刻印するためのメイン側刻印用プロファイルを形成しており、前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成することができる。
上記構成によって、入れ子金型の位置によって入れ子側刻印とメイン側刻印で外装ケースの種別を示す情報を構築でき、これにより目視で外装ケースの種別を判別できるようになる。
【0023】
さらにまた、第15の側面に係る電池パックの製造装置によれば、前記メイン側刻印が複数、異なる内容で異なる位置にそれぞれ形成されており、前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成することができる。
上記構成によって、入れ子金型の位置によって入れ子側刻印とメイン側刻印で外装ケースの種別を示す情報を構築でき、これにより目視で外装ケースの種別を判別できるようになる。
【0024】
さらにまた、第16の側面に係る電池パックの製造装置によれば、前記入れ子側刻印を、前記ケース側リブと同じ面に形成することができる。
上記構成により、入れ子側刻印を外装ケースの内面側に表示させることで、組み立て時においては、入れ子側刻印を手掛かりとして外装ケースと電池ホルダーとの組み合わせを確認できる上、組み立て後においては入れ子側刻印が外装ケースの表面側に表出しないので、完成品の見栄えを悪くすることもない。
【0025】
さらにまた、第17の側面に係る電池パックの製造方法によれば、外装ケースと、複数の電池セルを保持する電池ホルダーと、を備える電池パックの製造方法であって、前記外装ケースを成型するためのメイン金型に対して、前記メイン金型に挿入可能な入れ子金型を選択し、これを挿入する工程と、前記入れ子金型をセットしたメイン金型で、外装ケースを成型する際に、前記外装ケースの内面に、該内面から突出させたケース側リブを第一位置に形成する一方、前記外装ケースに挿入するための電池ホルダーを成型する際に、該電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を第二位置に形成する工程と、前記外装ケースに電池ホルダーを挿入する工程と、を含み、前記第一位置は、電池ホルダーの外面から突出させたホルダー側突起を設けた第二位置と干渉しない位置に調整されると共に、異なる種類の電池ホルダーは、前記第二位置をそれぞれ異なる位置に変化させてなると共に、前記入れ子金型を変更することで、前記第一位置を変更でき、該入れ子金型で成型する外装ケースと対応する電池ホルダーの第二位置とは干渉しない位置とする一方で、対応しない電池ホルダーの第二位置とは干渉する位置に調整可能に構成できる。
【0026】
さらにまた、第18の側面に係る電池パックの製造方法によれば、前記入れ子金型がさらに、外装ケースの内面の、前記ケース側リブの周囲に、前記第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印を刻印するための入れ子側刻印用プロファイルを形成できる。
【0027】
さらにまた、第19の側面に係る電池パックの製造方法によれば、前記メイン金型は、前記入れ子金型の周囲に、メイン側刻印を刻印するためのメイン側刻印用プロファイルを形成しており、前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印は、前記入れ子側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成されてなる。
【0028】
さらにまた、第20の側面に係る電池パックの製造方法によれば、前記メイン側刻印が複数、異なる内容で異なる位置にそれぞれ形成されており、前記入れ子金型を反転させると、前記入れ子側刻印の位置が変更されてなると共に、前記メイン側刻印と結合して、外装ケースの種別を示す情報が表示されるよう構成できる。
【0029】
さらにまた、第21の側面に係る電池パックの製造方法によれば、前記入れ子側刻印が、前記ケース側リブと同じ面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例1に係る電池パックを示す外観斜視図である。
【
図2】
図1の電池パックを背面側の斜め下方から見た外観斜視図である。
【
図4】
図3から電池ブロックを更に分解した状態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4の電池パックを背面側の斜め下方から見た外観斜視図及び拡大図である。
【
図8】電池ブロックを下ケースに挿入する状態を示す拡大断面図である。
【
図10】電池ブロックを下ケースに挿入しようとする様子を、電池ブロックの底面が見えるように傾けた姿勢で示す拡大断面図である。
【
図11】実施例2に係る電池パックを示す断面図及び一部拡大図である。
【
図12】
図11の下ケースを電池ブロックから離した状態を示す分解断面図である。
【
図13】実施例1の外装ケースに、実施例2の電池ブロックを挿入しようとする状態を示す断面図である。
【
図14】
図13の状態から、ケース側リブがホルダー側突起と干渉する状態を示す断面図及び一部拡大図である。
【
図16】実施例2の外装ケースに、実施例1の電池ブロックを挿入しようとする状態を示す分解断面図及び一部拡大図である。
【
図17】
図16の状態から、ケース側リブがホルダー側突起と干渉する状態を示す断面図及び一部拡大図である。
【
図18】メイン金型に複数の入れ子金型を挿入する例を示す模式分解断面図である。
【
図19】実施例1の下ケースを成型する金型を示す模式断面図である。
【
図20】
図19のメイン金型に入れ子金型を挿入する状態を示す模式分解断面図である。
【
図21】
図20から、実施例2の下ケースを成型するために入れ子金型を反転させた状態を示す模式分解断面図である。
【
図24】実施例2の電池パックの下ケースのケース側リブを示す平面図である。
【
図25】電池セルを7直列×6並列使用する電池ホルダーを収納した従来の電池パックを示す断面図である。
【
図26】電池セルを10直列×4並列使用する電池ホルダーを収納した従来の電池パックを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法を例示するものであって、本発明は電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0032】
図1〜
図5に、本発明の実施例1に係る電池パック100として、アシスト自転車用のバッテリパックに適用した例を示す。これらの図において、
図1は実施例1に係る電池パック100を示す外観斜視図、
図2は
図1の電池パック100を背面側の斜め下方から見た外観斜視図、
図3は
図1の電池パック100の分解斜視図、
図4は
図3から電池ブロック1を更に分解した状態を示す分解斜視図、
図5は
図4の電池パック100を背面側の斜め下方から見た外観斜視図及び拡大図、
図6は
図1のVI−VI線における断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック100は、外装ケース40と、内部に収納された電池ブロック1とで構成される。外装ケース40は、
図1〜
図4に示すように、上ケース41と下ケース42に2分割されている。この外装ケース40は、絶縁性に優れたプラスチックなどで構成される。また一方の端部には持ち運びに便利な取っ手43を、他方の端部には駆動機器であるアシスト自転車と接続するためのコネクタ3を、それぞれ設けている。これら上ケース41及び下ケース42は、各側面に係止用の突起及び係止孔を2箇所に形成しており、一方のケースに設けられた突起を他方のケースに設けられた係止孔に係止して連結される。さらにねじで4箇所を螺合して外装ケース40が固定される。
(カバー2)
【0033】
外装ケース40の内部に、電池ブロック1を収納できるよう、上ケース41及び下ケース42はそれぞれ有底箱状に形成され、電池ブロック1を収納する収納空間を形成する。電池ブロック1は、好ましくは
図3及び
図4に示すように、カバー2で外部を被覆した状態で、上ケース41及び下ケース42の間に配置されて収納される。カバー2は、防水性及び絶縁性を有するポリエチレンなどで袋状に形成し、その内部に電池ブロック1を挿入した状態で封止する。
【0034】
また電池ブロック1は、コネクタ3とリード線を介して電気的に接続される。コネクタ3は、下ケース42の底面にコ字状に開口された枠内に嵌め込むようにして、上ケース41で上面を閉塞して外装ケース40に固定される。またコネクタ3は、アシスト自転車の接続端子と接続するための接続ソケットを複数開口している。
(電池ブロック1)
【0035】
電池ブロック1は、
図4〜
図5の分解斜視図に示すように、複数の電池セル10と、電池セル10を定位置に配置する電池ホルダー20と、電池ホルダー20の外側に配置されて、電池セル10に溶接して接続されるリード板30と、このリード板30を接続している回路基板46と、この回路基板46を収納する基板ホルダー44と、リード板30の表面を被覆する絶縁シート36とを備える。
(電池セル10)
【0036】
電池セル10は、充電可能な二次電池で、リチウムイオン二次電池が好適に利用できる。ただ、電池セル10としてニッケル水電池セルやニッケルカドミウム電池を利用しても
よい。この電池セル10は円筒型電池であり、平行に複数本を並べて、さらにその上に複数本の電池セル10を積層する姿勢で、電池ホルダー20に保持される。ここで電池セル10は、上下方向に積層された隣接する電池セル10同士が、中心軸をずらしたオフセット状又は千鳥状に配置されている。これにより、円筒形電池の積層によって生じるデッドスペースを低減できる。
図4〜
図6の例では、電池セル10を横に並べた層状を8本×1、9本×3、7本×1の5段積層し、計42本の電池セル10を使用している。また縦方向に並ぶ6本の電池セル10を並列に接続し、これを7列直列に接続している。もちろん、積層数や各段の電池セル数を要求される電池ブロック1の容量や電圧に応じて変更で
きることはいうまでもない。
【0037】
さらに電池セル10は、それぞれ端面を略同一平面上に並べている。このように電池セル10を長さ方向に並べない配置とすることで、電池セル10同士の接続はリード板30との溶接で処理できる。特に電池セル10の両側、すなわち後述するように外装ケース40の両側でリード板30を溶接することで、電池セル10同士の接続を行える。また電池セル10を長さ方向に1本分のみとして積層する構成は、各電池セル10の両側端面が外装ケース40に面するため、外装ケース40を通じて放熱しやすいという利点も得られる。
(電池ホルダー20)
【0038】
電池ホルダー20は、左右に2分割されて第一ホルダー21と第二ホルダー22で構成され、電池セル10を両側から挟み込むように保持している。第一ホルダー21と第二ホルダー22は、ほぼ鏡面対称に形成されている。第一ホルダー21及び第二ホルダー22は、それぞれ、電池セル10を挿入する円筒状の保持筒23を複数形成している。保持筒23を有する第一ホルダー21及び第二ホルダー22は、ホルダー枠体26に一体的に成型される。この電池ホルダー20は、絶縁性に優れたプラスチックなどの樹脂製とする。
【0039】
保持筒23は、電池セル10の端面電極11にリード板30を溶接するための電極窓24を貫通して設けている。各電極窓24は、リード板30を溶接できる大きさに形成される。電池ホルダー20は、保持筒23に電池セル10を挿通して、複数の電池セル10を所定の位置に保持している。図の電池ホルダー20は、35本の円筒型電池セル10を連結して保持するので、35個の電極窓24を設けている。35個の電極窓24は、各段に7個設けて5段に並べている。さらに
図4〜
図5に示す保持筒23は、隣接して配設している電池セル10の谷間に他の電池セル10を配設しており、複数段に配置する電池セル10を俵積みの状態で配設している。また図に示す保持筒23は、軸方向の中間で2分割して、各々の電池ホルダー20に連結している。各々の電池ホルダー20は、分割された保持筒23の端部を連結してなる形状にプラスチックで一体成形している。この保持筒23は、分割端である開口部から電池セル10を挿入し、一対の保持筒23を互いに連結して、複数の電池セル10を電池ホルダー20の定位置に保持する。
【0040】
中間で分割される保持筒23は、分割端側からホルダー側板側に向かって次第に内径が小さくなるテーパ状に内面を成形している。この保持筒23は、電池ホルダー20側の端部の内面に突出する部分を電池セル10の表面に面接触させて電池セル10を定位置に保持できる。このように、保持筒23を分割する構造は、プラスチックを成形する金型の設計を簡単にして、プラスチック成形を容易にできる特長がある。
(ガイド部25)
【0041】
電池ホルダー20は、電池セル10を収納する保持筒23の一端に連結され、その外側面に設けているガイド部25にリード板30を入れて定位置に配置している。電池ホルダー20は、電極窓24から表出する端面電極11にリード板30を溶着して連結している。
図4〜
図6の電池ホルダー20は、リード板30を配置するガイド部25を外側面に設けており、このガイド部25にリード板30を入れて定位置に配置している。
【0042】
各電池セル10は、両端の端面電極11にリード板30を溶着して、互いに直列と並列とに接続している。また各リード板30は、回路基板46と接続される。回路基板46は、
図4〜
図6において電池ホルダー20の上面に配置された基板ホルダー44に収納されている。基板ホルダー44は回路基板46を収納できる大きさの開口を形成した枠状に構成される。
(回路基板46)
【0043】
回路基板46は、電池セル10の放電あるいは充放電を制御する制御回路等の電子回路を実装している。回路基板46は平板状で、
図3〜
図6に示すように電池ホルダー20の長さ方向に沿って延長されている。また電池ホルダー20は、その上面に回路基板46を収納する基板ホルダー44を載置している。電池ホルダー20の上面に回路基板46を固定し、必要な配線を行った後、外装ケース40内に収納する。さらに、電池ホルダー20の上面には、各リード板30の接続部33が突出されて、リード線などによって回路基板46と接続される。この構成は、リード板30と回路基板46との配線を最短距離とでき、組み立て工程を簡素化できることに加え、別部材のリード線も最低限とできる。
(リード板30)
【0044】
リード板30は、
図4及び
図5の斜視図に示すように、電池セル10をオフセット状に積層した状態で、縦方向の電池セル10を2列にわたって接続するよう、全体をジグザグ状又は波状に形成している。このリード板30は導電性及び可撓性に優れた金属板で形成される。またリード板30には、電池セル10の端面電極11にスポット溶接する位置に、無効電流減少スリッ
トを設けている。さらにリード板30の上端には、回路基板46に接続する接続部33が突出するように設けている。接続部33は、リード
線を介して回路基板46に接続される。
【0045】
リード板30は、
図4及び
図5に示すように電池セル10の積層体の端面電極11を完全に被覆する形状でなく、これよりも若干小さく形成される。これによって、リード板30のガイド部25の枠内にリード板30を挿入した状態で、リード板30とガイド部25との間に隙間が形成される。
(ホルダー側突起28)
【0046】
また
電池ホルダー20は、その底面に、
図5の拡大図及び
図6〜
図8の断面図に示すように、その底面からホルダー側突起28を突出させている。ホルダー側突起28は、ホルダー枠体26から保持筒23と平行な方向に延長するように設けられる。また好ましくは、保持筒23同士の間の谷間に面する位置に設けられる。このようにホルダー突起を電池ホルダー20の下面に面しつつも、下面から下方に突出させないことで、電池ホルダーやひいては外装ケースの大型化を回避でき、電池パックの小型化に貢献できる。
(ケース側リブ48)
【0047】
さらに下ケース42は、
図6〜
図8の断面図、
図9の斜視図及び
図10の分解斜視図に示すように、ケース側リブ48を備えている。ケース側リブ48は、3枚のリブを平行な姿勢で互いに離間させている。このようにすることでケース側リブ48の端縁がカバー2に当接する際の圧力を軽減できるので、カバー2が破損される事態を抑止できる。また、各リブは先端を湾曲させることで、尖鋭な部分をなくしてカバー2を傷付けないようにできる。加えて、3枚のリブの内、中央のリブを左右のリブよりも高く突出させている。この構成によっても、リブの突出量を左右から徐々に変化させて、リブの端縁によるカバー2への押圧力を軽減し、リブの端縁でカバー2を破損する事態を回避できる。
【0048】
ここで、下ケース42にケース側リブ48を設けた第一位置と、電池ホルダー20にホルダー側突起28を設けた第二位置とは、電池ブロック1を下ケース42に挿入した状態で互いに干渉しない位置とする。このようにすることで、
図9などに示すように、電池ブロック1を下ケース42の正しい位置にセットできる。
(誤挿入防止構造)
【0049】
加えて、形状の似た電池ブロックで、外装ケースの外形を共通化し、コスト削減を図る場合は、異なる電池ブロックと外装ケースとの間で、このようなホルダー側突起とケース側リブとの位置を工夫することで、取り違えを阻止することができる。具体的には、電池ホルダーに設けるホルダー側突起の第二位置を、電池ブロックの種類毎に異なる位置とすることで、異なる電池ブロックを下ケースに挿入しようとすると、異なる電池ブロックのホルダー側突起が、ケース側リブと干渉して、このような誤った組み合わせを阻害するように構成する。この様子を、
図13〜
図17に基づいて説明する。
(実施例2)
【0050】
まず実施例2に係る電池パック200を、
図11〜
図12に示す。これらの図において、
図11は実施例2に係る電池パック200の断面図及び一部拡大図、
図12は
図11の下ケース42Bを電池ブロック1Bから離した状態を示す分解断面図を、それぞれ示している。この電池パック200は、外ケースの外観を、実施例1と同じとする一方、内部の電池ブロックは異ならせている。具体的には、実施例2における電池ブロック1Bは、10直列×4並列の、計40本の電池セル10を用いている。この実施例2においても、電池ホルダー20Bのホルダー側突起28Bと、下ケース42Bのケース側リブ48Bとは、電池ブロック1Bを下ケース42Bに挿入した状態で互いに干渉しない位置となるように、オフセット配置されている。これにより、
図11、
図12に示すように外装ケース40Bに電池ブロック1Bを挿入して、上ケース41Bと下ケース42Bとを閉塞して固定できる。
【0051】
ここで、電池ホルダー20Bのホルダー側突起28Bは、実施例1の電池ホルダー20とは異なる位置に設けられている。具体的には、実施例1の下ケース42にケース側リブ48を設けた第一位置と対応する位置に設けられている。この結果、仮に
図13及び
図14に示すように、実施例1の下ケース42に、実施例2の電池ブロック1Bを挿入しようとしても、
図15に示すように、実施例2のホルダー側突起28Bが実施例1のケース側リブ48と干渉するため、電池ブロック1Bを下ケース42内に押し込むことができず、この結果電池ブロック1Bが浮いた状態となり、上ケース41と下ケース42との間に隙間が生じ、これらを閉塞できず、外装ケース40を固定できない状態となる。すなわち、組立工程においてこのような取り違えが生じても、組み立てが物理的にできない状態となるため、作業者は取り違えに気付くと思われ、また電池ブロックと外装ケースとの組み合わせが誤った電池パックの組み立てが阻害される結果、このような製品が出回ることを阻止できる。
【0052】
同様に、実施例2の下ケース42Bのケース側リブ48Bも、実施例1のケース側リブ48を設けた第一位置とは異なる位置に設けられている。具体的には、実施例1の電池ホルダー20のホルダー側突起28を設けた第二位置と対応する位置に設けられている。いいかえると、実施例2の下ケース42Bは、外形は実施例1と同じであるものの、内部に突出させたケース側リブ48Bの位置のみを異ならせている。この結果、仮に
図16及び
図17に示すように、実施例2の下ケース42Bに、実施例1の電池ブロック1を挿入しようとしても、実施例1のホルダー側突起28が実施例2のケース側リブ48Bと干渉するため、やはり電池ブロック1が浮いた状態となって、上ケース41Bと下ケース42Bとの間に隙間が生じ、外装ケース40Bを固定できない状態となる。このため、物理的な組み立てが阻害されて、このような取り違いが回避される。
【0053】
なお、上記の例ではケース側リブを下ケースの底面側に設けているが、この構成に限られず、例えば上ケースにケース側リブを設けても同様の効果を得ることができる。また、外装ケースの底面側に限らず、側面側の内面にケース側リブを設けることもできる。さらに、この例ではケース側リブを一箇所にのみ設けているが、複数箇所に設けてもよいことはいうまでもない。
【0054】
このように、形状の似た電池ブロック同士で、ホルダー側突起の位置を異ならせると共に、互いにホルダー側突起の位置を入れ替えることで、容易に誤挿入防止機構を実現できる。また、外装ケース側においても同様に、ケース側リブの位置を、互いに入れ替えるように構成することで、誤挿入防止構造を簡易に実現でき、コストを削減できる。
(成形用金型)
【0055】
特に、外装ケースを成型する金型を、部分的に変形させるには、成形用金型の、ケース側リブを成型する部位に、入れ子状の金型を利用すればよい。すなわち、ケース側リブを成型する入れ子金型を別途用意し、これを差し替え式とすることで、大部分のメイン金型を共通化して、金型のコストを大幅に削減できる。
【0056】
具体的には、下ケース42の成形用金型を、
図18に示すように、メイン金型51Bと入れ子金型52Bで構成する。メイン金型51Bには、異なる下ケースでケース側リブを設ける位置をそれぞれくり抜いて、形成したい下ケースの、ケース側リブ48を設ける第一位置に、ケース側リブ48を形成するためのリブ用プロファイル54を設けた入れ子金型52Bを挿入すると共に、ケース側リブを形成しない位置には、リブ用プロファイルを有しないダミーの入れ子金型53Bを挿入することができる。
(入れ子金型52)
【0057】
ただ、
図18の構成では各入れ子金型52Bのサイズが小さくなる上、複数の入れ子金型52Bを用意する必要があるため、金型の製造や管理、金型の取り違え等に留意する必要がある上、金型の非使用時等に小さい金型を紛失し易くなることが考えられる。そこで、
図19〜
図21に示すように、入れ子金型52を大きくして、予定される
ケース側リブの位置全体を包含すると共に、入れ子金型52の外形を左右対称形状としつつ、ケース側リブの成型部分を偏心させて形成されることにより、これを反転させてケース側リブの成
型位置を変更できるように構成している。この形状によれば、実施例1の下ケース42を成型する際には、
図20に示すように左側にケース側リブが位置する姿勢としつつ、実施例2の下ケース42Bを成型する際には、入れ子金型52を一旦メイン金型51から外し、反転させた姿勢でメイン金型51に挿入し直すことで、実施例2用の成型金型に構築することができる。このようにすれば、入れ子金型52が一個で済む上、その外形を大きくできるので紛失の虞も低減できる。
【0058】
図21の例では、入れ子金型52を直方体状とし、反転させる際の軸を中心に対称な形状に形成している。これにより入れ子金型52を反転させてメイン金型51に挿入させることで、ケース側リブを設ける位置を入れ替え可能とできる。具体的には、実施例1のケース側リブ48を形成する際は、
図20に示すように右側にリブ用プロファイル54を位置させた姿勢でメイン金型51に挿入する。一方、実施例2のケース側リブ48Bを形成する際には、
図21に示すように左側にリブ用プロファイル54を位置させる姿勢でメイン金型51に挿入する。このようにして、成型したい下ケースに応じて、入れ子金型52の姿勢を変更することで、ケース側リブの位置を容易に変更できる。
(入れ子側刻印56)
【0059】
さらに入れ子金型52には、下ケースに対して入れ子側刻印56を設ける機能を付加できる。例えば、外装ケースの種別を示す情報を刻印で表示させることで、組み立て時に目視で外装ケースの種別を判別できるようにする。この刻印によって、正しい電池ブロックの組み合わせが確認できるため、組み立て作業時の確認を容易にして、取り違えを一層軽減できる。この様子を、
図22〜
図24に基づいて説明する。これらの図において、
図22は
図10の下ケース42を示す斜視図、
図23は
図22のケース側リブ48を示す平面図、
図24は実施例2の電池パック200の下ケース42Bのケース側リブ48Bを示す平面図を、それぞれ示している。
【0060】
入れ子金型52は、上述の通り実施例1の下ケース42を成型する際には、リブ用プロファイル54が左側に位置するように、メイン金型51にセットされる。ここで実施例1の電池パック100は、電池セル10を7直列×6並列で使用している。そこで、成型された下ケース42の種類が、実施例1の組み合わせであることを示すよう、
図22の斜視図に示すように下ケース42の内面側に刻印を設ける。内面側に刻印を設けることで、組み立て時には視認できる一方、組み立て後には外部に表出しないため、見栄えを悪くすることもない。
【0061】
具体的には、実施例1の下ケース42については、
図23の拡大図に示すように、「7−6」と表示される。一方、実施例2の下ケース42Bについては、
図24の拡大図に示すように「10−4」と表示され、電池セル10が10直列×4並列であることが視認できる。このように、ケース側リブの位置を変更するために、入れ子金型52を反転させることを利用して、入れ子金型52の姿勢に応じて、刻印の位置も変更されて、この結果、刻印で表示される情報も変更されるように構成することで、下ケースの種別を文字情報で直接表示させて、組み立て時の作業性を向上させると共に取り違えの防止を一層図ることが可能となる。
(メイン側刻印58)
【0062】
刻印は、メイン金型51で刻印されるメイン側刻印58と、入れ子金型52で刻印される入れ子側刻印56で構成される。そしてメイン側刻印58は常に同じ位置に刻印される一方、入れ子側刻印56は入れ子金型52の姿勢に応じて、位置が変化する。よって、メイン側刻印58及び入れ子側刻印56は、それぞれ複数設けると共に、入れ子金型52の姿勢に応じて、適切なメイン側刻印58a、58bと入れ子側刻印56a、56bの組み合わせが表示されるよう、刻印位置が予め決定される。
図23及び
図24の例では、下ケース42、42Bでは、メイン側刻印58が上下に第一メイン側刻印58aとして「7」、第二メイン側刻印58bとして「10」と並べて刻印されており、これに対して入れ子側刻印56は、左右に分かれて第一入れ子側刻印56aとして「6」、第二入れ子側刻印56bとして「4」が反転姿勢で刻印されている。
【0063】
そして、実施例1の下ケース42では、
図23に示すように、第一メイン側刻印58aの「7」と一致する上側の位置に、第一入れ子側刻印56aの「6」が位置されて、これらの組み合わせにより「7−6」と表示される。この状態では、第二メイン側刻印58bの「10」の横には何も表示されず、また第二入れ子側刻印56bの「4」は反転して表示されるため、これらの刻印は情報表示を構成しない。一方、実施例2の下ケース42Bでは、
図24に示すように、第二メイン側刻印58bの「10」と一致する下側の位置に、第二入れ子側刻印56bの「4」が位置されて、これらの組み合わせにより「10−4」と表示される。またこの状態では、第一メイン側刻印58aの「7」の横には何も表示されず、また第一入れ子側刻印56aの「6」は反転して表示されるため、これらの刻印は情報表示を構成しない。このようにすることで、入れ子金型52の位置に応じて、入れ子側刻印56a、56bとメイン側刻印58a、58bで電池パックの○並○直が読めるようになり、組み立て作業者は現在の下ケースが、どの電池パック用であるかを判別できる。
【0064】
このように、入れ子金型52を反転させると、入れ子側刻印56の位置が変更されることを利用して、この入れ子側金型の姿勢に応じた下ケースの情報が正しく表示されるよう、予め各刻印の位置が調整される。またこのような刻印を施すため、入れ子金型52は、外装ケース40の内面の、ケース側リブ48の周囲に、第一位置に関する文字情報を示す入れ子側刻印56を刻印するための入れ子側刻印用プロファイルを形成している。またメイン金型51も同様に、入れ子金型52の周囲に、メイン側刻印58a、58bを刻印するためのメイン側刻印用プロファイルを形成している。さらに、これらの刻印も、ケース側リブ48等と同じ側、すなわち外装ケース40の内面側とすることで、いずれも外部に表出させることなく、組み上がり後の見栄えに影響を与えない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る電池パック及び電池パックの製造装置並びに製造方法は、アシスト自転車用の電源装置の他、電動工具用、電動スクーター用、電動自動車用、蓄電用などの用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
100、200、2500、2600…電池パック
1、1B…電池ブロック
2…カバー
3…コネクタ
10…電池セル
11…端面電極
20、20B…電池ホルダー
21…第一ホルダー
22…第二ホルダー
23…保持筒
24…電極窓
25…ガイド部
26…ホルダー枠体
28、28B…ホルダー側突起
30…リード板
33…接続部
36…絶縁シート
40、40B…外装ケース
41、41B…上ケース
42、42B…下ケース
43…取っ手
44…基板ホルダー
46…回路基板
48、48B…ケース側リブ
51、51B…メイン金型
52、52B…入れ子金型
53B…ダミー入れ子金型
54…リブ用プロファイル
56…入れ子側刻印
56a…第一入れ子側刻印
56b…第二入れ子側刻印
58…メイン側刻印
58a…第一メイン側刻印
58b…第二メイン側刻印