【文献】
Mol Microbiol,2010年,Vol. 75, No. 4,pp. 827-842
【文献】
Mol Microbiol,2009年,Vol. 73, No. 4,pp. 622-638
【文献】
岡山医誌,1990年,Vol. 102,pp. 1267-1273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0050】
I.定義
用語「a」または「an」で修飾された実体は、その実体の1つまたは複数を指し、例えば、「シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子」は、「シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する1つまたは複数の結合分子を表すと理解されることに留意すべきである。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0051】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、単数形「ポリペプチド」および複数形「ポリペプチド」を包含するものとし、アミド結合(ペプチド結合としても公知)により直鎖状に結合しているモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の1つまたは複数の鎖を指し、規定の長さの生成物を指さない。したがって、2つ以上のアミノ酸の1つまたは複数の鎖を指すために使用されるペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、それらの用語のいずれにも代えて、またはそれらの用語と互換的に使用することができる。用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドの発現後修飾、例として、限定されるものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解開裂、または非天然に生じたアミノ酸による修飾の生成物も指すものとする。ポリペプチドは、天然生物学的資源に由来し得、または組換え技術により産生することができるが、指定される核酸配列から必ずしも翻訳されない。これは、任意の様式、例として化学合成により生成することができる。
【0052】
本明細書に開示のポリペプチドは、約3アミノ酸以上、5アミノ酸以上、10アミノ酸以上、20アミノ酸以上、25アミノ酸以上、50アミノ酸以上、75アミノ酸以上、100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、500アミノ酸以上、1000アミノ酸以上、または2000アミノ酸以上のサイズであり得る。ポリペプチドは、定義された3次元構造を有し得るが、それらは、そのような構造を必ずしも有さない。定義された3次元構造を有するポリペプチドは、フォールドと称され、定義された3次元構造を有さないが、多数の異なる立体構造を採り得るポリペプチドは、アンフォールドと称される。本明細書において使用される糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基、例えば、セリン残基またはアスパラギン残基の酸素含有または窒素含有側鎖を介してタンパク質に付着している少なくとも1つの炭水化物部分に結合しているタンパク質を指す。
【0053】
「単離」ポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、その天然環境中に存在しないポリペプチドを意図する。特定のレベルの精製は要求されない。例えば、単離ポリペプチドは、そのネイティブまたは天然環境から取り出すことができる。宿主細胞中で発現された組換え産生ポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書に開示の単離とみなされ、任意の好適な技術により分離、分別、または部分的もしくは実質的に精製されたネイティブまたは組換えポリペプチドと同様である。
【0054】
本明細書に開示の他のポリペプチドは、上記ポリペプチドの断片、誘導体、アナログ、またはバリアント、およびそれらの任意の組合せである。用語「断片」、「バリアント」、「誘導体」および「アナログ」には、例えば、本明細書に開示のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、抗体を指す場合、対応するネイティブ抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持する任意のポリペプチドが含まれる。ポリペプチドの断片には、本明細書の他箇所で考察される特異的抗体断片に加え、例えば、タンパク質分解断片、および欠失断片が含まれる。本明細書に開示のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば抗体のバリアントには、上記の断片、およびアミノ酸置換、欠失、または挿入に起因して変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然に生じ得、または非天然に生じ得る。非天然に生じるバリアントは、当分野において公知の突然変異導入技術を使用して産生することができる。バリアントポリペプチドは、保存または非保存アミノ酸置換、欠失または付加を含み得る。本明細書に開示のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体の誘導体は、ネイティブポリペプチド上に見出されない追加の特徴を示すように変化させたポリペプチドである。例には、融合タンパク質が含まれる。バリアントポリペプチドは、本明細書において「ポリペプチドアナログ」と称することもできる。本明細書において使用される、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体の「誘導体」は、側鎖官能基の反応により化学的に誘導体化された1つまたは複数の残基を有する対象のポリペプチドを指す。「誘導体」として、20種の標準的なアミノ酸の1つまたは複数の天然に生じるアミノ酸誘導体を含有するペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンは、プロリンに代えて用いることができ;5−ヒドロキシリジンは、リジンに代えて用いることができ;3−メチルヒスチジンは、ヒスチジンに代えて用いることができ;ホモセリンは、セリンに代えて用いることができ;オルニチンは、リジンに代えて用いることができる。
【0055】
用語「ポリヌクレオチド」は、単数形の核酸および複数形の核酸を包含するものとし、単離核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、慣用のホスホジエステル結合または非慣用結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含み得る。用語「核酸」は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片を指す。「単離」核酸またはポリヌクレオチドは、そのネイティブ環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクター中に含有されるシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本明細書に開示の単離とみなされる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞中で維持される組換えポリヌクレオチドまたは溶液中の精製された(部分的または実質的に)ポリヌクレオチドが含まれる。単離RNA分子には、ポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写物が含まれる。単離ポリヌクレオチドまたは核酸には、さらに合成により産生されたそのような分子が含まれる。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターであり得、またはそれらを含み得る。
【0056】
本明細書において使用される「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、それは、コード領域の一部とみなすことができるが、任意のフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部でない。2つ以上のコード領域が、単一ポリヌクレオチド構築物中、例えば、単一ベクター上に、または別個のポリヌクレオチド構築物中、例えば別個の(異なる)ベクター上に存在し得る。さらに、任意のベクターは、単一コード領域を含有し得、または2つ以上のコード領域を含み得、例えば、単一ベクターは、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別個にコードし得る。さらに、ベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体をコードする核酸に融合されておりまたは融合されていない異種コード領域をコードし得る。異種コード領域には、限定されるものではないが、特殊化エレメントまたはモチーフ、例えば分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインが含まれる。
【0057】
ある実施形態において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、1つまたは複数のコード領域と作動可能に会合しているプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含み得る。作動可能な会合は、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドについてのコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響または制御下に配置するように1つまたは複数の調節配列と会合している場合である。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域およびそれと会合しているプロモーター)は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合および2つのDNA断片間の結合の性質が遺伝子産物の発現を指向する発現調節配列の能力もDNAテンプレートの転写される能力も妨害しない場合、「作動可能に会合している」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写をもたらし得る場合、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合している。プロモーターは、所定の細胞中でのみDNAの実質的な転写を指向する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーターに加え、他の転写制御エレメントは、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルが細胞特異的転写を指向するためにポリヌクレオチドと作動可能に会合していてよい。好適なプロモーターおよび他の転写制御領域は、本明細書に開示される。
【0058】
種々の転写制御領域は、当業者に公知である。これらには、限定されるものではないが、脊椎動物において機能する転写制御領域、例えば、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス(イントロンAと連携する前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)からのプロモーターおよびエンハンサーセグメントが含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物遺伝子に由来するもの、例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ−グロビンならびに真核細胞中で遺伝子発現を制御し得る他の配列が含まれる。追加の好適な転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびにリンホカイン誘導プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導可能なプロモーター)が含まれる。
【0059】
同様に、種々の翻訳制御エレメントは、当業者に公知である。これらには、限定されるものではないが、リボソーム結合部位、翻訳開始および終結コドン、ならびにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム進入部位、またはIRES、CITE配列とも称される)が含まれる。
【0060】
他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態であり得る。
【0061】
ポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本明細書に開示のポリヌクレオチド、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの分泌を指向する分泌またはシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と会合していてよい。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞により分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を越える成長タンパク質鎖の輸送が開始されると成熟タンパク質から開裂されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞により分泌されるポリペプチドが一般に、ポリペプチドの分泌または「成熟」形態を産生するために完全または「全長」ポリペプチドから開裂されるポリペプチドのN末端に融合しているシグナルペプチドを有することに精通している。ある実施形態において、ネイティブシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチド、または作動可能に会合しているポリペプチドの分泌を指向する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド、またはその機能的誘導体を使用することができる。例えば、野生型リーダー配列を、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列により置換することができる。
【0062】
ある結合分子、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体が本明細書に開示される。特に全長サイズ抗体、例えば天然に生じる抗体を指さない場合、用語「結合分子」は、全長サイズ抗体およびそのような抗体の抗原結合断片、バリアント、アナログ、または誘導体、例えば、天然に生じる抗体または免疫グロブリン分子またはエンジニアリングされた抗体分子または抗体分子と同様の様式で抗原に結合する断片を包含する。
【0063】
本明細書において使用される用語「結合分子」は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の非限定的な例は、抗体または抗原特異的結合を保持するその断片である。
【0064】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、本明細書において互換的に使用することができる。抗体(または本明細書に開示のその断片、バリアント、もしくは誘導体は、少なくとも重鎖の可変ドメインならびに少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的十分に理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)参照。
【0065】
以下により詳細に考察されるとおり、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に区別することができる種々の広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらは一部のサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を有することを認識する。抗体の「クラス」をIgG、IgM、IgA IgG、またはIgEとしてそれぞれ決定するのはこの鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1などは、十分に特性決定されており、機能的特殊化を付与することが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは、本開示に照らして当業者に容易に認識可能であり、したがって本開示の範囲内である。
【0066】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかに分類される。それぞれの重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖と結合していてよい。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合しており、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子エンジニアリングされた宿主細胞のいずれかにより生成された場合、2つの重鎖の「テール」部分が共有ジスルフィド結合または非共有結合により互いに結合している。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形状のフォーク型末端におけるN末端からそれぞれの鎖の下方部におけるC末端に及ぶ。
【0067】
軽鎖および重鎖の両方は、構造および機能ホモロジーの領域に分割される。用語「定常」および「可変」は、機能的に使用される。これに関して、軽(VL)鎖および重(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することが認識される。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、重要な生物学的特性、例えば、分泌、経胎盤移動、Fc受容体結合、補体結合などを付与する。慣習により、定常領域ドメインの番号付与は、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くなるにつれて増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり;CH3およびCLドメインは、実際には、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
【0068】
上記のとおり、可変領域は、結合分子が抗原上のエピトープを選択的に認識し、それに特異的に結合することを可能とする。すなわち、結合分子、例えば、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって3次元抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この4元結合分子構造は、Yのそれぞれのアームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖のそれぞれの3つのCDRにより定義される。
【0069】
天然に生じる抗体において、それぞれの抗原結合ドメイン中に存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境中でその3次元形状を取るため、抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置しているアミノ酸の短い不連続配列である。抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残部は、「フレームワーク」領域と称され、より小さい分子内変動性を示す。フレームワーク領域は、概して、β−シート立体構造を採用し、CDRは、このβ−シート構造を接続し、一部の場合、その一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖内非共有相互作用による正確な配向におけるCDRの位置決めを提供する足場を形成するように作用する。位置決めされたCDRにより形成された抗原結合ドメインは、免疫反応抗原上のエピトープに対する表面相補性を定義する。この相補性表面は、抗体のそのコグネートエピトープへの非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ含むアミノ酸は、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について当業者により容易に同定することができる。それというのも、それらは既に定義されているためである(参照により全体として本明細書に組み込まれる“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983);およびChothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987)参照)。
【0070】
当分野の範囲内で使用および/または許容される用語の2つ以上の定義が存在する場合、本明細書において使用される用語の定義は、特に明確に逆の記載がない限り全てのそのような意味を含むものとする。具体例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続抗原結合部位を説明するための用語「相補性決定領域」(CDR)の使用である。この特定の領域は、参照により本明細書に組み込まれるKabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)およびChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)により記載されており、これらの定義は、互いを比較した場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにも関わらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すためのいずれの定義の適用も、本明細書において定義および使用される用語の範囲内であるものとする。上記の参照文献のそれぞれにより定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として表1に以下に記載する。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列およびサイズに応じて変動する。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮してどの残基が特定のCDRを含むかを定型的に決定することができる。
【0072】
Kabat et al.は、あらゆる抗体に適用可能な可変ドメイン配列についての番号付与系も定義した。当業者は、配列自体を越えるいかなる実験データにも依存することなく「Kabat番号付与」のこの系をあらゆる可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書において使用される「Kabat番号付与」は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequence of Proteins of Immunological Interest”(1983)により記載される番号付与系を指す。特に記載のない限り、本明細書に開示のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体中の規定のアミノ酸残基位置の番号付与への言及は、Kabat番号付与系に従う。
【0073】
結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体には、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)
2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片が含まれる。scFv分子は、当分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書に記載されている。本開示により包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子のものであり得る。
【0074】
「特異的に結合する」は、一般に、結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間の一部の相補性を必要とすることを意味する。この定義によれば、結合分子は、それがその抗原結合ドメインを介してランダムの無関連なエピトープに結合するよりも容易にそのエピトープに結合する場合、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、本明細書において、ある結合分子があるエピトープに結合する相対親和性を特定するために使用される。例えば、結合分子「A」は、所与のエピトープについて結合分子「B」よりも高い特異性を有するとみなすことができ、または結合分子「A」は、それが関連エピトープ「D」について有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うことができる。
【0075】
「優先的に結合する」は、抗体がエピトープに、それが関連、類似、同種、または相似エピトープに結合するよりも容易に特異的に結合することを意味する。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連エピトープと交差反応し得るとしても、関連エピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が高い。
【0076】
非限定的な例として、結合分子、例えば、抗体は第1のエピトープに、それが前記第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のK
D未満の解離定数(K
D)で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。別の非限定的な例において、結合分子、例えば、抗体は、第1の抗原に、それが第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のK
Dよりも少なくとも1桁小さい親和性で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。別の非限定的な例において、結合分子は、第1のエピトープに、それが第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のK
Dよりも少なくとも2桁小さい親和性で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。
【0077】
別の非限定的な例において、結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、第1のエピトープに、それが第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(off rate)(k(off))で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。別の限定的な例において、結合分子は、第1のエピトープに、それが第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。別の非限定的な例において、結合分子は、第1のエピトープに、それが第1のエピトープに第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性で結合する場合、優先的に結合するとみなすことができる。
【0078】
本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、5×10
−2秒
−1、10
−2秒
−1、5×l0
−3秒
−1または10
−3秒
−1以下のオフ速度(k(off)で本明細書に開示の標的抗原、例えば、多糖またはその断片もしくはバリアントに結合すると言うことができる。本明細書に開示の結合分子は、5×10
−4秒
−1、10
−4秒
−1、5×10
−5秒
−1、または10
−5秒
−15×10
−6秒
−1、10
−6秒
−1、5×10
−7秒
−1または10
−7秒
−1以下のオフ速度(k(off))で標的抗原、例えば、多糖に結合すると言うことができる。
【0079】
本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体または抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、10
3M
−1秒
−1、5×10
3M
−1秒
−1、10
4M
−1秒
−1または5×10
4M
−1秒
−1以上のオン速度(k(on))で標的抗原、例えば、多糖に結合すると言うことができる。本明細書に開示の結合分子は、10
5M
−1秒
−1、5×10
5M
−1秒
−1、10
6M
−1秒
−1、または5×10
6M
−1秒
−1または10
7M
−1秒
−1以上のオン速度(on rate)(k(on))で標的抗原、例えば、多糖に結合すると言うことができる。
【0080】
結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、それがある程度、エピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を遮断する程度にそれがそのエピトープに優先的に結合する場合、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を競合阻害すると言われる。競合阻害は、当分野において公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより測定することができる。結合分子は、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%だけ競合阻害すると言うことができる。
【0081】
本明細書において使用される用語「親和性」は、個々のエピトープと免疫グロブリン分子のCDRとの結合の強さの尺度を指す。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)の27−28ページ参照。本明細書において使用される用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集団と抗原との複合体の総合安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的組合せ強度を指す。例えば、Harlowの29−34ページ参照。アビディティーは、集団における個々の免疫グロブリン分子と規定のエピトープとの親和性、ならびにさらには免疫グロブリンおよび抗原の価数の両方に関する。例えば、2価モノクローナル抗体と高度に反復するエピトープ構造を有する抗原、例えば、ポリマーとの相互作用は、高いアビディティーの1つである。
【0082】
本明細書に開示の結合分子またはその抗原結合断片、バリアントもしくは誘導体は、それらの交差反応性に関して記載または規定することもできる。本明細書において使用される用語「交差反応性」は、1つの抗原に特異的な結合分子、例えば抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体の、第2の抗原と反応する能力を指し;2つの異なる抗原物質間の関連性の尺度である。したがって、結合分子は、それがその形成を誘導したもの以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応性エピトープは、一般に、誘導エピトープと同一の相補性構造特徴の多くを含有し、一部の場合、実際に元のものよりも良好に適合し得る。
【0083】
結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、抗原に対するそれらの結合親和性に関して記載または規定することもできる。例えば、結合分子は、5×10
−2M、10
−2M、5×10
−3M、10
−3M、5×10
−4M、10
−4M、5×10
−5M、10
−5M、5×10
−6M、10
−6M、5×10
−7M、10
−7M、5×10
−8M、10
−8M、5×10
−9M、10
−9M、5×10
−10M、10
−10M、5×10
−11M、10
−11M、5×10
−12M、10
−12M、5×10
−13M、10
−13M、5×10
−14M、10
−14M、5×10
−15M、または10
−15M以下の解離定数またはK
Dで抗原に結合し得る。
【0084】
単鎖抗体を含む抗体断片は、可変領域を単独でまたは以下のものの全部または一部との組合せで含み得る:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインとの任意の組合せも含む抗原結合断片も含まれる。本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片は、任意の動物起源、例として鳥類および哺乳動物からのものであり得る。抗体は、ヒト、ネズミ、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体であり得る。別の実施形態において、可変領域は、コンドリクトイド(condricthoid)起源(例えば、サメから)であり得る。本明細書において使用される「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、下記のおよび例えばKucherlapati et al.による米国特許第5,939,598号明細書に記載のヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つまたは複数のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体が含まれる。
【0085】
本明細書において使用される用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含む結合分子、例えば、抗体は、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片の少なくとも1つを含む。例えば、結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態において、結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示において使用される結合分子は、CH2ドメインの少なくとも一部分を欠損し得る(例えば、CH2ドメインの全部または一部)。上記のとおり、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、それらのアミノ酸配列が天然に生じる免疫グロブリン分子から変動するように改変することができることが当業者により理解される。
【0086】
本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体の重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子から由来してよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメインおよびIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にはIgG1分子に由来し、部分的にはIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にはIgG1分子に由来し、部分的にはIgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0087】
本明細書において使用される用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。軽鎖部分は、VLまたはCLドメインの少なくとも1つを含む。
【0088】
本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、それらが認識または特異的に結合する抗原、例えば、標的多糖のエピトープまたは部分に関して記載または規定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的多糖の部分は、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的抗原、例えば、多糖は、単一エピトープを含み得るが、典型的には、少なくとも2つのエピトープを含み、抗原のサイズ、立体構造、およびタイプに応じて任意数のエピトープを含み得る。
【0089】
上記のとおり、種々の免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および3次元形状は周知である。本明細書において使用される用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1(ほとんどはアミノ末端)の定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインは、VHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対してアミノ末端である。
【0090】
本明細書において使用される用語「CH2ドメイン」には、例えば、慣用の番号付与スキームを使用して抗体の約残基244から残基360に及ぶ重鎖分子の部分が含まれる(残基244から360、Kabat番号付与系;および残基231〜340、EU番号付与系;前掲のKabat EA et al.参照。CH2ドメインは、それが別のドメインと密接に対合しないという点でユニークである。むしろ、2つのN結合分枝炭水化物鎖が、インタクトなネイティブIgG分子の2つのCH2ドメイン間に介入される。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端に及び、約108残基を含むことも十分に立証されている。
【0091】
本明細書において使用される用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインに連結させる重鎖分子の部分が含まれる。このヒンジ領域は、約25残基を含み、フレキシブルであり、したがって2つのN末端抗原結合領域が独立して移動することを可能とする。ヒンジ領域は、3つの区別されるドメイン:上部、中央部、および下部ヒンジドメイン(Roux et al.,J.Immunol.161:4083(1998))に下位分類することができる。
【0092】
本明細書において使用される用語「ジスルフィド結合」には、2つの硫黄原子間に形成される共有結合が含まれる。アミノ酸システインは、第2のチオール基とのジスルフィド結合または架橋を形成し得るチオール基を含む。ほとんどの天然に生じるIgG分子において、CH1およびCL領域はジスルフィド結合により結合しており、2つの重鎖は、Kabat番号付与系を使用して239および242(226または229位、EU番号付与系)に対応する位置において2つのジスルフィド結合により結合している。
【0093】
本明細書において使用される用語「キメラ抗体」は、免疫反応領域または部位が第1の種から得られまたはそれに由来し、定常領域(インタクト、部分的または改変されていてよい)が第2の種から得られる任意の抗体を意味するものとする。一部の実施形態において、標的結合領域または部位は非ヒト資源(例えば、マウスまたは霊長類)を形成し、定常領域はヒトである。
【0094】
本明細書において使用される用語「エンジニアリングされた抗体」は、重鎖および軽鎖のいずれかまたは両方の可変ドメインが、既知の特異性の抗体からの1つまたは複数のCDRの少なくとも部分的な置換により、ならびに必要により、部分的なフレームワーク領域置換および配列変化により変化した抗体を指す。CDRはフレームワーク領域が由来する抗体と同一のクラスまたはさらにはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRは異なるクラスの抗体、好ましくは、異なる種からの抗体に由来することが想定される。既知の特異性の非ヒト抗体からの1つまたは複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域中にグラフトされたエンジニアリングされた抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と称される。CDRの全てをドナー可変領域からの完全なCDRにより置き換えてある可変ドメインの抗原結合能を別のものに移すことは必要でないことがある。むしろ、標的結合部位の活性を維持するために必要な残基を移すことのみが必要であることがある。例えば、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、および米国特許第6,180,370号明細書に記載の説明を考慮すると、それは定型実験の実施により、または機能的エンジニアリングもしくはヒト化抗体を得るための試行錯誤試験により、当業者の能力の十分範囲内である。
【0095】
本明細書において使用される用語「適切にフォールドされたポリペプチド」には、ポリペプチドを含む機能ドメインの全てが明確に活性であるポリペプチド(例えば、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体)が含まれる。本明細書において使用される用語「不適切にフォールドされたポリペプチド」には、ポリペプチドの機能ドメインの少なくとも1つが活性でないポリペプチドが含まれる。一実施形態において、適切にフォールドされたポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合により結合しているポリペプチド鎖を含み、逆に、不適切にフォールドされたポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合により結合していないポリペプチド鎖を含む。
【0096】
本明細書において使用される用語「エンジニアリングされた」には、合成手段による(例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素もしくは化学カップリングまたはそれらの技術のいくつかの組合せによる核酸またはポリペプチド分子の操作が含まれる。
【0097】
本明細書において使用される用語「結合している」、「融合している」または「融合」は、互換的に使用される。これらの用語は、あらゆる手段、例として化学コンジュゲーションまたは組換え手段によるさらに2つのエレメントまたは構成成分の連結を指す。「インフレーム融合」は、元のORFの正確な翻訳リーディングフレームを維持する様式で連続するより長いORFを形成するための2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)の連結を指す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORF(セグメントが通常、天然では連結されていない)によりコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である。リーディングフレームはこうして融合セグメント全体にわたり連続的とされるが、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列により物理的または空間的に分離することができる。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドはインフレームで融合することができるが、「融合」CDRが連続ポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域または追加のCDR領域をコードするポリヌクレオチドにより分離することができる。
【0098】
ポリペプチドに関して、「直鎖配列」または「配列」は、配列中で互いに隣接する残基がポリペプチドの1次構造中で連続する、アミノからカルボキシ末端方向におけるポリペプチド中のアミノ酸の順序である。
【0099】
本明細書において使用される用語「発現」は、遺伝子が生化学物質、例えば、ポリペプチドを産生するプロセスを指す。このプロセスには、細胞内の遺伝子の機能的存在の任意の顕在化、例として、限定されるものではないが、遺伝子ノックダウンならびに一過的発現および安定的発現の両方が含まれる。それには、限定されるものではないが、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、およびそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。最終所望産物が生化学物質である場合、発現には、その生化学物質および任意の前駆体の作出が含まれる。遺伝子の発現は、「遺伝子産物」を産生する。本明細書において使用される遺伝子産物は、遺伝子の転写により産生される核酸、例えば、メッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれでもよい。本明細書に記載の遺伝子産物には、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化を有する核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解開裂などを有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0100】
本明細書において使用される用語「治療する」または「治療」は、目的が含む所望な生理学的変化、感染、または障害を予防または遅滞(縮減)させることである療法的治療および防止的または予防的措置の両方を指す。利益または所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能か検出不能かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、対象における感染原因物質、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)のクリアランスまたは低減、疾患進行の遅延または遅滞、疾患状態の改善または緩和、および寛解(一部または完全を問わない)が含まれる。「治療」は、治療を受けない場合に予期される生存率と比較した生存率の延長も意味し得る。治療を必要とする者には、既に感染、病態、または障害を有する者ならびに病態または障害を有しやすい者または病態もしくは障害を予防すべき者、例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)感染を受けやすい火傷患者または免疫抑制患者が含まれる。
【0101】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後診断、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園、競技、または愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシ、クマなどが含まれる。
【0102】
本明細書において使用される「抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体の投与から利益を受ける対象」および「治療を必要とする動物」のような語句には、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslの検出(例えば、診断手順のため)に使用される抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体の投与から、および/または抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体による治療、すなわち、疾患の緩和または予防から利益を受ける対象、例えば、哺乳動物が含まれる。本明細書により詳細に記載されるとおり、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体は、未コンジュゲート形態で使用することができ、または例えば、薬物、プロドラッグ、もしくは同位体にコンジュゲートすることができる。
【0103】
II.結合分子
一実施形態は、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片であって、(a)上皮細胞への緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の付着を阻害し得、(b)緑膿菌(P.aeruginosa)のオプソニン食菌殺傷(OPK)を促進、媒介、もしくは向上し得、または(c)上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)の付着を阻害し得、緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進、媒介、もしくは向上し得る単離結合分子またはその抗原結合断片を対象とする。ある実施形態において、上記結合分子またはその断片は、抗体またはその抗原結合断片、例えばCam−003またはWapR−004であり得る。
【0104】
本明細書において使用される用語「抗原結合ドメイン」には、抗原上のエピトープ(例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslのエピトープ)に特異的に結合する部位が含まれる。抗体の抗原結合ドメインは、典型的には、免疫グロブリン重鎖可変領域の少なくとも一部および免疫グロブリン軽鎖可変領域の少なくとも一部を含む。これらの可変領域により形成される結合部位が、抗体の特異性を決定する。
【0105】
本開示は、より具体的には、WapR−004、Cam−003、Cam−004、またはCam−005の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)領域を含む抗体またはその抗原結合断片と同一のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslエピトープに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を対象とする。
【0106】
さらに、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合し、WapR−004、Cam−003、Cam−004、またはCam−005のVHおよびVLを含む抗体またはその抗原結合断片によるシュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合を競合阻害する単離結合分子、例えば、抗体またはその断片が含まれる。
【0107】
一実施形態は、WapR−001、WapR−002、またはWapR−003のVHおよびVL領域を含む抗体またはその抗原結合断片と同一のシュードモナス属(Pseudomonas)Pslエピトープに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を対象とする。
【0108】
シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合し、WapR−001、WapR−002、またはWapR−003のVHおよびVLを含む抗体またはその抗原結合断片によるシュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合を競合阻害する単離結合分子、例えば、抗体またはその断片も含まれる。
【0109】
シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合し、WapR−016のVHおよびVLを含む抗体またはその抗原結合断片によるシュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合を競合阻害する単離結合分子、例えば、抗体またはその断片がさらに含まれる。
【0110】
シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合し、WapR16のVHおよびVLを含む抗体またはその抗原結合断片によるシュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合を競合阻害する単離結合分子、例えば、抗体またはその断片も含まれる。
【0111】
抗体を作製する方法は、当分野において周知であり、本明細書に記載される。シグナル配列を有さないシュードモナス属(Pseudomonas)Pslの種々の断片または全長シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに対する抗体を産生したら、本明細書に記載のエピトープマッピングプロトコルおよび当分野において公知の方法(例えば、 “Chapter 11−Immunology,”Current Protocols in Molecular Biology,Ed.Ausubel et al.,v.2,John Wiley & Sons,Inc.(1996)に記載の二重抗体サンドイッチELISA)により抗体または抗原結合断片が結合するシュードモナス属(Pseudomonas)Pslのアミノ酸、またはエピトープを決定することが決定できる。追加のエピトープマッピングプロトコルは、Morris,G.Epitope Mapping Protocols,New Jersey:Humana Press(1996)に見出すことができ、それらは両方とも参照により全体として本明細書に組み込まれる。エピトープマッピングは、市販の手段(すなわち、ProtoPROBE,Inc.(Milwaukee,Wisconsin))により実施することもできる。
【0112】
ある態様において、本開示は、前記参照モノクローナル抗体についてのK
D未満の解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体を対象とする。
【0113】
ある実施形態において、本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアントもしくは誘導体は、Pslの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合し、すなわち、そのようなエピトープに、それが無関連またはランダムエピトープに結合するよりも容易に結合し;Pslの少なくとも1つのエピトープに優先的に結合し、すなわち、そのようなエピトープに、それが関連、類似、同種、または相似エピトープに結合するよりも容易に結合し;Pslのあるエピトープに特異的または優先的にそれ自体結合する参照抗体の結合を競合阻害し;または約5×10
−2M、約10
−2M、約5×10
−3M、約10
−3M、約5×10
−4M、約10
−4M、約5×10
−5M、約10
−5M、約5×10
−6M、約10
−6M、約5×10
−7M、約10
−7M、約5×10
−8M、約10
−8M,約5×10
−9M,約10
−9M、約5×10
−10M、約10
−10M、約5×10
−11M、約10
−11M、約5×10
−12M、約10
−12M、約5×10
−13M、約10
−13M、約5×10
−14M、約10
−14M、約5×10
−15M、または約10
−15M未満の解離定数K
Dを特徴とする親和性でPslの少なくとも1つのエピトープに結合する。
【0114】
結合解離定数に関して使用される用語「約」は、抗体親和性を計測するために利用される方法における固有のバリエーションの程度を許容する。例えば、使用される装置類の精度のレベル、計測される試料の数に基づく標準誤差、および丸め誤差に応じて、用語「約10
−2M」は、例えば、0.05Mから0.005Mを含み得る。
【0115】
具体的な実施形態において、結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、5×10
−2秒
−1、10
−2秒
−1、5×l0
−3秒
−1または10
−3秒
−1以下のオフ速度(k(off))でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに結合する。あるいは、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、5×10
−4秒
−1、10
−4秒
−1、5×10
−5秒
−1、または10
−5秒
−1 5×10
−6秒
−1、10
−6秒、
−15×10
−7秒
−1または10
−7秒
−1以下のオフ速度(k(off))でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに結合する。
【0116】
他の実施形態において、本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、10
3M
−1秒
−1、5×10
3M
−1秒
−1、10
4M
−1秒
−1または5×10
4M
−1秒
−1以上のオン速度(k(on))でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに結合する。あるいは、本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、10
5M
−1秒
−1、5×10
5M
−1秒
−1、10
6M
−1秒
−1、または5×106M
−1秒
−1または10
7M
−1秒
−1以上のオン速度(k(on))でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに結合する。
【0117】
種々の実施形態において、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、シュードモナス属(Pseudomonas)のオプソニン食菌殺傷を促進し、または上皮細胞へのシュードモナス属(Pseudomonas)結合を阻害する。本明細書に記載のある実施形態において、シュードモナス属(Pseudomonas)Psl標的は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)Pslである。他の実施形態において、本明細書に記載のある結合分子は、それらの資源にかかわらず構造的に関連する多糖分子に結合し得る。そのようなPsl様分子は、緑膿菌(aeruginosa)Pslと同一でありまたは十分な構造関連性を有して開示される結合分子の1つまたは複数による特異的認識を可能とすることが予期される。例えば、本明細書に記載のある結合分子は、他の細菌種により産生されるPsl様分子、例えば、他のシュードモナス属(Pseudomonas)種、例えば、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、またはシュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)により産生されるPsl様分子に結合し得る。あるいは、本明細書に記載のある結合分子は、合成により、またはPsl様分子を産生するように遺伝子改変された宿主細胞により産生されるPsl様分子に結合し得る。
【0118】
特に記載のない限り、結合分子、例えば、抗体への言及において本明細書において使用される「その断片」は、抗原結合断片、すなわち、抗原に特異的に結合する抗体の一部分を指す。
【0119】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、1つまたは複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含み得る。例えば、抗体定常領域への補体のC1構成成分の結合は、補体系を活性化し得る。補体の活性化は、病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は、炎症応答も刺激し、自己免疫過敏にも関与し得る。さらに、抗体は、Fc領域を介して種々の細胞上の受容体に結合し、抗体Fc領域上のFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。異なるクラスの抗体、例としてIgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)に特異的な多数のFc受容体が存在する。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、多数の重要および多様な生物学的応答、例として、抗体コートされた粒子の飲込みおよび破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体コートされた標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性、またはADCCと呼ばれる)、炎症メディエーターの放出、胎盤通過および免疫グロブリン産生の制御を誘発する。
【0120】
したがって、本明細書に開示のある実施形態は、定常領域ドメインの1つまたは複数の少なくとも一部分が所望の生化学的特徴、例えば、ほぼ同一の免疫原性の完全な未変化抗体と比較してエフェクター機能の低減、非共有結合ダイマー化能、腫瘍の部位における局在化能の増加、血清半減期の低減、または血清半減期の増加を提供するように欠失され、そうでなければ変化した抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。例えば、本明細書に記載のある結合分子は、免疫グロブリン重鎖と類似のポリペプチド鎖を含むが、1つまたは複数の重鎖ドメインの少なくとも一部分を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある抗体において、改変抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失され、例えば、CH2ドメインの全部または一部が欠失される。
【0121】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体または抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体の改変形態は、当分野において公知の技術を使用して完全前駆体または親抗体から作製することができる。例示的な技術を本明細書の他箇所に考察する。
【0122】
ある実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片の可変領域および定常領域の両方は、完全ヒトである。完全ヒト抗体は、当分野において公知のおよび本明細書に記載の技術を使用して作製することができる。例えば、特異的抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されたが、内在性遺伝子座が損なわれたトランスジェニック動物に抗原を投与することにより調製することができる。そのような抗体を作製するために使用することができる例示的な技術は、米国特許第6,150,584号明細書、米国特許第6,458,592号明細書、米国特許第6,420,140号明細書に記載されている。他の技術は、当分野において公知である。完全ヒト抗体は、同様に、種々のディスプレイ技術、例えば、本明細書の他箇所により詳細に記載されるファージディスプレイ系または他のウイルスディスプレイ系により産生することができる。
【0123】
本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、当分野において公知の技術を使用して作製または製造することができる。ある実施形態において、結合分子またはその断片は、「組換え産生」することができ、すなわち、組換えDNA技術を使用して産生される。抗体分子またはその断片を作製するための例示的な技術は、本明細書の他箇所により詳細に考察される。
【0124】
本明細書に記載のある抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体において、Fc部分は、当分野において公知の技術を使用してエフェクター機能を減少させるように突然変異させることができる。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点突然変異または他の手段を介する)は、循環改変抗体のFc受容体結合を低減させ得、それにより腫瘍局在化を増加させる。他の場合、定常領域改変は補体結合を抑え、したがって血清半減期およびコンジュゲート細胞毒素の非特異的会合を低減させ得る。抗原特異性および抗体フレキシビリティーの増加に起因して局在の向上を可能とする定常領域のさらに他の改変を使用してジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を改変することができる。得られる生理学的プロファイル、バイオアベイラビリティーおよび改変の他の生化学的効果、例えば、局在化、生体分布および血清半減期は、周知の免疫学的技術を使用して過度の実験なしで容易に計測および定量することができる。
【0125】
ある実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、治療すべき動物において、例えば、ヒトにおいて有害な免疫応答を誘発しない。一実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、当分野において認識される技術を使用してそれらの免疫原性を低減させるように改変される。例えば、抗体は、ヒト化、脱免疫化することができ、またはキメラ抗体を作製することができる。これらのタイプの抗体は、親抗体の抗原結合特性を保持し、または実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性がより小さい非ヒト抗体、典型的には、ネズミまたは霊長類抗体に由来する。このことは、種々の方法、例として、(a)非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域上にグラフト化してキメラ抗体を生成すること;(b)非ヒト相補性決定領域(CDR)の1つまたは複数の少なくとも一部を、クリティカルなフレームワーク残基を保持してまたは保持せずにヒトフレームワークおよび定常領域中にグラフト化すること;または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によりヒト様セクションによりそれらを覆うことにより達成することができる。そのような方法は、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−6855(1984);Morrison et al.,Adv.Immunol.44:65−92(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immun.31:169−217(1994)、ならびに米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、および米国特許第6,190,370号明細書に開示されており、それらの全ては参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0126】
脱免疫化を使用して抗体の免疫原性を減少させることもできる。本明細書において使用される用語「脱免疫化」には、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化が含まれる(例えば、国際公開第9852976A1号パンフレット、国際公開第0034317A2号パンフレット参照)。例えば、出発抗体からのVHおよびVL配列を分析し、相補性決定領域(CDR)および配列内の他のキー残基に関してエピトープの局在を示すそれぞれのV領域からヒトT細胞エピトープを「マッピング」する。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープを分析して最終抗体の活性の変化が低リスクな代替アミノ酸置換を同定する。アミノ酸置換の組合せを含む一連の代替VHおよびVL配列を設計し、続いてこれらの配列を本明細書に開示の一連の結合ポリペプチド、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Psl特異的抗体またはその抗原結合断片中に取り込み、次いで機能について試験する。次いで、改変VおよびヒトC領域を含む完全な重鎖および軽鎖遺伝子を発現ベクター中にクローニングし、後続のプラスミドを完全抗体の産生のために細胞系中に導入する。次いで、抗体を適切な生化学および生物学的アッセイにおいて比較し、最適なバリアントを同定する。
【0127】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、当分野において公知の任意の好適な方法により生成することができる。対象の抗原に対するポリクローナル抗体は、当分野において周知の種々の手順により産生することができる。例えば、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl抗体またはその抗原結合断片は、種々の宿主動物、例として、限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、ハムスター、ヤギ、ロバなどに投与して抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘導することができる。種々のアジュバントを使用して宿主種に応じて免疫学的応答を増加させることができ、それには、限定されるものではないが、フロイント(完全および不完全)、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、表面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・バルブム(Corynebacterium parvum)が含まれる。そのようなアジュバントも当分野において周知である。
【0128】
モノクローナル抗体は、当分野において公知の広範な技術、例として、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術の使用、またはそれらの組合せを使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、例として当分野において公知のものおよび例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.(1988)に教示されるものを使用して産生することができる。
【0129】
抗体または抗体断片(例えば、抗原結合部位)をコードするDNAは、抗体ライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーに由来していてもよい。特に、そのようなファージは、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはネズミ)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用することができる。対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原により、例えば、標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を使用して選択または同定することができる。これらの方法において使用されるファージは、典型的には、scFv、Fab、Fv OE DAB(軽鎖または重鎖からの個々のFv領域)またはファージ遺伝子IIIもしくは遺伝子VIIIタンパク質に組換え融合されたジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されるfdおよびM13結合ドメインを含む糸状ファージである。例示的な方法は、例えば、欧州特許第368684B1号明細書;米国特許第5,969,108号明細書、Hoogenboom,H.R.and Chames,Immunol.Today 21:371(2000);Nagy et al.Nat.Med.8:801(2002);Huie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:2682(2001);Lui et al.,J.Mol.Biol.315:1063(2002)に記載されており、それらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの刊行物(例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992))は、鎖シャフリングによる高親和性ヒト抗体の産生、ならびに大ファージライブラリーの構築のための方針としてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換えを記載している。別の実施形態において、リボソームディスプレイを使用してバクテリオファージをディスプレイプラットフォームとして置き換えることができる(例えば、Hanes et al.,Nat.Biotechnol.18:1287(2000);Wilson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:3750(2001);またはIrving et al.,J.Immunol.Methods 248:31(2001)参照)。さらに別の実施形態において、細胞表面ライブラリーを抗体についてスクリーニングすることができる(Boder et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10701(2000);Daugherty et al.,J.Immunol.Methods 243:211(2000))。そのような手順は、モノクローナル抗体の単離および後続のクローニングのための慣習的なハイブリドーマ技術の代替手段を提供する。
【0130】
ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上でディスプレイされる。例えば、VHおよびVL領域をコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、リンパ組織のヒトまたはネズミcDNAライブラリー)または合成cDNAライブラリーから増幅される。ある実施形態において、VHおよびVL領域をコードするDNAは、PCRによりscFvリンカーにより一緒に連結させ、ファージミドベクター(例えば、pCANTAB6またはpComb3HSS)中にクローニングする。ベクターを大腸菌(E.coli)中にエレクトロポレートし、大腸菌(E.coli)をヘルパーファージにより感染させる。これらの方法において使用されるファージは、典型的には、糸状ファージ、例として、fdおよびM13であり、VHまたはVL領域を通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに組換え融合させる。対象の抗原(すなわち、シュードモナス属(Pseudomonas)Psl)に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原により、例えば、標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を使用して選択または同定することができる。
【0131】
抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の追加の例には、Brinkman et al.,J.Immunol.Methods 182:41−50(1995);Ames et al.,J.Immunol.Methods 184:177−186(1995);Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.24:952−958(1994);Persic et al.,Gene 187:9−18(1997);Burton et al.,Advances in Immunology 57:191−280(1994);PCT出願PCT/GB91/01134号明細書;PCT公開国際公開第90/02809号パンフレット;国際公開第91/10737号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第92/18619号パンフレット;国際公開第93/11236号パンフレット;国際公開第95/15982号パンフレット;国際公開第95/20401号パンフレット;および米国特許第5,698,426号明細書;米国特許第5,223,409号明細書;米国特許第5,403,484号明細書;米国特許第5,580,717号明細書;米国特許第5,427,908号明細書;米国特許第5,750,753号明細書;米国特許第5,821,047号明細書;米国特許第5,571,698号明細書;米国特許第5,427,908号明細書;米国特許第5,516,637号明細書;米国特許第5,780,225号明細書;米国特許第5,658,727号明細書;米国特許第5,733,743号明細書および米国特許第5,969,108号明細書に開示のものが含まれ、それらのそれぞれは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0132】
上記参照文献および下記実施例において記載されるとおり、ファージ選択後、ファージからの領域をコードする抗体を単離し、使用して完全抗体、例として、ヒト抗体、または任意の他の所望の抗原結合断片を生成し、任意の所望の宿主、例として哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌中で発現させることができる。例えば、当分野において公知の方法、例えば、PCT公開国際公開第92/22324号パンフレット;Mullinax et al.,BioTechniques 12(6):864−869(1992);およびSawai et al.,AJRI 34:26−34(1995);およびBetter et al.,Science 240:1041−1043(1988)(前記参照文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる)に開示のものを使用してFab、Fab’およびF(ab’)
2断片を組換え産生する技術も用いることができる。
【0133】
単鎖Fvおよび抗体を産生するために使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号明細書および米国特許第5,258,498号明細書;Huston et al.,Methods in Enzymology 203:46−88(1991);Shu et al.,PNAS 90:7995−7999(1993);およびSkerra et al.,Science 240:1038−1040(1988)に記載のものが含まれる。ある実施形態、例えば、治療投与において、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を使用することができる。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えば、ネズミモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体である。キメラ抗体を産生する方法は、当分野において公知である。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれるMorrison,Science 229:1202(1985);Oi et al.,BioTechniques 4:214(1986);Gillies et al.,J.Immunol.Methods 125:191−202(1989);米国特許第5,807,715号明細書;米国特許第4,816,567号明細書;および米国特許第4,816397号明細書参照。ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する所望抗原に結合する非ヒト種抗体からの抗体分子である。ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変化、好ましくは、改善させるためにCDRドナー抗体からの対応する残基により置換されることが多い。これらのフレームワーク置換は、当分野において周知の方法により、例えば、CDRおよびフレームワーク残基の相互作用をモデリングして抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定し、配列比較して特定の位置において特殊なフレームワーク残基を同定することにより同定される。(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれるQueen et al.,米国特許第5,585,089号明細書;Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)参照)。抗体は、当分野において公知の種々の技術、例として、例えばCDRグラフト化(欧州特許第239,400号明細書;PCT公開国際公開第91/09967号パンフレット;米国特許第5,225,539号明細書;米国特許第5,530,101号明細書;および米国特許第5,585,089号明細書)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号明細書;欧州特許第519,596号明細書;Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991);Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguska.et al.,PNAS 91:969−973(1994))および鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号明細書)を使用してヒト化することができる。
【0134】
完全ヒト抗体は、ヒト患者の療法的治療に特に望ましい。ヒト抗体は、当分野において公知の種々の方法、例として、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用する上記ファージディスプレイ法により作製することができる。それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第4,444,887号明細書および米国特許第4,716,111号明細書;ならびにPCT公開国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、および国際公開第91/10741号パンフレットも参照。
【0135】
ヒト抗体は、機能的内因性免疫グロブリンを発現し得ないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し得るトランスジェニックマウスを使用して産生することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をランダムにまたは相同組換えによりマウス胚性幹細胞中に導入することができる。さらに、種々の会社は、上記と同様の技術を使用して選択抗原に対して指向されたトランスジェニックマウスにおいて産生されたヒト抗体の提供に参画し得る。
【0136】
選択エピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド選択(guided selection)」と称される技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使用して同一エピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespers et al.,Bio/Technology 12:899−903(1988)。米国特許第5,565,332号明細書も参照)。
【0137】
別の実施形態において、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手順を使用して容易に単離および配列決定することができる(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブの使用による)。単離およびサブクローニングされたハイブリドーマ細胞または単離ファージは、例えば、そのようなDNAの資源として機能し得る。DNAを単離したら、発現ベクター中に配置し、次いで他では免疫グロブリンを産生しない原核または真核宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中に形質移入することができる。より特定すると、単離DNA(本明細書に記載のとおり合成であり得る)を使用して、参照により本明細書に組み込まれるNewman et al.,米国特許第5,658,570号明細書、1995年1月25日出願に記載のとおり抗体を製造するために定常および可変領域配列をクローニングすることができる。所望の抗体を発現する形質転換細胞は、比較的大量に成長させて免疫グロブリンの臨床および市販供給品を提供することができる。
【0138】
一実施形態において、単離結合分子、例えば、抗体は、抗体分子の少なくとも1つの重鎖または軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、単離結合分子は、1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、単離結合分子は、1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、単離結合分子は、1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、単離結合分子は、1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本明細書の単離結合分子は、1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。
【0139】
具体的な実施形態において、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を調査して相補性決定領域(CDR)の配列を、当分野において周知の方法により、例えば、他の重鎖および軽鎖可変領域の既知アミノ酸配列を比較して配列超可変性の領域を決定することにより同定することができる。定型的なDNA技術を使用して、CDRの1つまたは複数をフレームワーク領域内、例えば、ヒトフレームワーク領域中に挿入して非ヒト抗体をヒト化することができる。フレームワーク領域は、天然に生じるものまたはコンセンサスフレームワーク領域、好ましくは、ヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、ヒトフレームワーク領域の列記についてChothia et al.,J.Mol.Biol.278:457−479(1998)参照)。フレームワーク領域およびCDRの組合せにより生成されたポリヌクレオチドは、所望の抗原、例えば、Pslの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。1つまたは複数のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内に作製することができ、アミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、そのような方法を使用して鎖内ジスルフィド結合に関与する1つまたは複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製して1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成することができる。ポリヌクレオチドに対する他の変化は、本開示により包含され、当業者の能力の範囲内である。
【0140】
結合分子またはその断片がシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する本明細書に記載の抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)のバリアント(誘導体を含む)を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる結合分子も提供される。当業者に公知の標準的な技術、例として、限定されるものではないが、アミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異導入およびPCR媒介突然変異導入を使用してシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子またはその断片をコードするヌクレオチド配列中に突然変異を導入することができる。バリアント(誘導体を含む)は、参照VH領域、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VL領域、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換を含むポリペプチドをコードする。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられたものである。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。あるいは、突然変異は、コード配列の全部または一部に沿って、例えば飽和突然変異導入によりランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして活性(例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合能)を保持する突然変異体を同定することができる。
【0141】
例えば、抗体分子のフレームワーク領域中にのみ、またはCDR領域中にのみ突然変異を導入することが可能である。導入される突然変異は、サイレントまたは中立ミスセンス突然変異であり得、すなわち、抗体の抗原結合能に対して影響を有さずまたはほとんど有さない。これらのタイプの突然変異は、コドン使用頻度を最適化するためまたはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。あるいは、非中立ミスセンス突然変異は、抗体の抗原結合能を変化させ得る。ほとんどのサイレントおよび中立ミスセンス突然変異の局在は、フレームワーク領域中である可能性が高い一方、ほとんどの非中立ミスセンス突然変異の局在は、CDR中である可能性が高いが、これらは絶対要件ではない。当業者は、所望の特性、例えば、不変の抗原結合活性または変化した結合活性(例えば、抗原結合活性の改善または抗体特異性の変化)を有する突然変異体分子を設計および試験することができる。突然変異導入後、コードされるタンパク質は定型的に発現させることができ、コードされるタンパク質の機能的および/または生物学的活性(例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslの少なくとも1つのエピトープに結合する能力)は、本明細書に記載の技術を使用してまたは当分野において公知の定型的改変技術により測定することができる。
【0142】
III.抗体ポリペプチド
本開示はさらに、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を構成する単離ポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。本明細書に開示の結合分子、例えば、抗体またはその断片は、ポリペプチド、例えば、例えば免疫グロブリン分子に由来するPsl特異的抗原結合領域をコードするアミノ酸配列を含む。指定のタンパク質「に由来する」ポリペプチドまたはアミノ酸配列は、ポリペプチドの起源を指す。ある場合、特定の出発ポリペプチドまたはアミノ酸配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、出発配列、または少なくとも10〜20アミノ酸、少なくとも20〜30アミノ酸、少なくとも30〜50アミノ酸からなりもしくは他では起源を出発配列中に有すると当業者に同定可能であるその一部分と本質的に同一のアミノ酸配列を有する。
【0143】
表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片も開示される。
【0144】
さらに、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のVHアミノ酸配列を含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片が開示される。
【0145】
一部の実施形態は、VHを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片であって、VHのVHCDR1、VHCDR2またはVHCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VHCDR1、VHCDR2またはVHCDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0146】
さらに、VHを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片であって、VHのVHCDR1、VHCDR2またはVHCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VHCDR1、VHCDR2および/またはVHCDR3アミノ酸配列と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片が開示される。したがって、この実施形態によれば、VHは、表3に示すVHCDR1、VHCDR2、またはVHCDR3アミノ酸配列の1つまたは複数と同一または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一のVHCDR1、VHCDR2、またはVHCDR3の1つまたは複数を含む。
【0147】
表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片も開示される。
【0148】
一部の実施形態は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のVLアミノ酸配列を含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片を開示する。
【0149】
VLを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片であって、VLのVLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数の1つまたは複数の参照軽鎖VLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一である単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片も提供される。
【0150】
さらに、VLを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片であって、VLのVLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VLCDR1、VLCDR2および/またはVLCDR3アミノ酸配列と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一である単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片が提供される。したがって、この実施形態によれば、VLは、表3に示すVLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3アミノ酸配列の1つまたは複数と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一のVLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3の1つまたは複数を含む。
【0151】
他の実施形態において、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合断片は、(a)それぞれ、配列番号1および配列番号2、(b)それぞれ、配列番号3および配列番号2、(c)それぞれ、配列番号4および配列番号2、(d)それぞれ、配列番号5および配列番号6、(e)それぞれ、配列番号7および配列番号8、(f)それぞれ、配列番号9および配列番号10、(g)それぞれ、配列番号11および配列番号12、(h)それぞれ、配列番号13および配列番号14;(i)それぞれ、配列番号15および配列番号16または(j)それぞれ、配列番号74および配列番号12と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一のVHおよびVLアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる。ある実施形態において、上記抗体またはその抗原結合断片は、アミノ酸配列配列番号11を有するVHおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するVLを含む。一部の実施形態において、上記抗体またはその抗原結合断片は、アミノ酸配列配列番号1を有するVHおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVLを含む。他の実施形態において、上記抗体またはその抗原結合断片は、アミノ酸配列配列番号11を有するVHおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するVLを含む。
【0152】
ある実施形態において、本明細書に記載の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、5×10
−2M、10
−2M、5×10
−3M、10
−3M、5×10
−4M、10
−4M、5×10
−5M、10
−5M、5×10
−6M、10
−6M、5×10
−7M、10
−7M、5×10
−8M、10
−8M、5×10
−9M、10
−9M、5×10
−10M、10
−10M、5×10
−11M、10
−11M、5×10
−12M、10
−12M、5×10
−13M、10
−13M、5×10
−14M、10
−14M、5×10
−15M、または10
−15M以下の解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。
【0153】
具体的な実施形態において、本明細書に記載の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約1×10
−10から約1×10
−6Mの範囲の解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。一実施形態において、本明細書に記載の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載のOCTET(登録商標)結合アッセイにより測定される約1.18×10
−7MのK
Dを特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。別の実施形態において、本明細書に記載の単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載のOCTET(登録商標)結合アッセイにより測定される約1.44×10
−7MのK
Dを特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。
【0154】
一部の実施形態は、(a)上皮細胞への緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の付着を阻害し得、(b)緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進し得、または(c)上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)の付着を阻害し得、緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進し得る上記単離結合分子、例えば、抗体またはその断片を含む。
【0155】
一部の実施形態において、上記単離結合分子、例えば、抗体またはその断片において、上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)付着の最大阻害は、約50μg/ml以下、5.0μg/ml以下、もしくは約0.5μg/ml以下の抗体濃度、または約30μg/mlから約0.3μg/mlの範囲の抗体濃度、または約1μg/mlの抗体濃度、または約0.3μg/mlの抗体濃度において達成される単離結合分子、例えば、抗体またはその断片。
【0156】
ある実施形態は、上記単離結合分子、例えば、抗体またはその断片において、OPK EC50は、約0.5μg/ml未満、約0.05μg/ml未満、もしくは約0.005μg/ml未満であり、またOPK EC50は、約0.001μg/mlから約0.5μg/mlの範囲であり、またはOPK EC50は、約0.02μg/mlから約0.08μg/mlの範囲であり、またはOPK EC50は、約0.002μg/mlから約0.01μg/mlの範囲であり、またはOPK EC50は、約0.2μg/ml未満であり、またはOPK EC50は、約0.02μg/ml未満である単離結合分子、例えば、抗体またはその断片を含む。ある実施形態において、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomona)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−004、WapR−004RAD、Cam−003、Cam−004、もしくはCam−005と同一のPslエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。WapR−004RADは、配列番号11のVHアミノ酸配列のアミノ酸置換G98Aを除いてWapR−004と同一である。
【0157】
一部の実施形態は、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145;または配列番号146の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のscFv−Fc分子アミノ酸配列を含むWapR−004(W4)突然変異体を含む。
【0158】
他の実施形態は、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145;または配列番号146の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一のscFv−Fc分子アミノ酸配列を含むWapR−004(W4)突然変異体を含む。
【0159】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−001、WapR−002、もしくはWapR−003と同一のエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。
【0160】
ある実施形態において、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−016と同一のエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。
【0163】
本明細書に記載の任意の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、追加のポリペプチド、例えば、コードされるポリペプチドの分泌を指向させるためのシグナルペプチド、本明細書に記載の抗体定常領域、または本明細書に記載の他の異種ポリペプチドをさらに含み得る。さらに、本明細書の結合分子またはその断片は、他箇所に記載のポリペプチド断片を含む。さらに、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、本明細書に記載の融合ポリペプチド、Fab断片、scFv、または他の誘導体であり得る。
【0164】
また、本明細書の他箇所により詳細に記載されるとおり、本開示は、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体を含む組成物を含む。
【0165】
本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、それらが由来した天然に生じる結合ポリペプチドからのそれらのアミノ酸配列において変動するように改変することができることも当業者により理解される。例えば、設計されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、類似であり得、例えば、出発配列とある同一性パーセントを有し、例えば、それは出発配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であり得る。
【0166】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の用語「配列同一性パーセント」は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入しなければならない付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮して比較ウインドウにわたり配列により共有される同一合致位置の数を指す。合致位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的および参照配列の両方に提供される任意の位置である。標的配列中に提供されるギャップは、ヌクレオチドでもアミノ酸でもないためカウントされない。同様に、参照配列中に提供されるギャップは、参照配列からのヌクレオチドでもアミノ酸でもなく標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸がカウントされるためカウントされない。
【0167】
配列同一性の割合は、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が両方の配列中に生じる位置の数を決定して合致位置の数をもたらし、合致位置の数を比較のウインドウ中の位置の総数により割り、結果に100を掛けて配列同一性の割合をもたらすことにより計算される。2つの配列間の配列の比較および配列同一性パーセントの決定は、オンライン使用およびダウンロードの両方について容易に入手可能なソフトウエアを使用して達成することができる。好適なソフトウエアプログラムは、種々の供給源から入手可能であり、タンパク質およびヌクレオチド配列の両方のアラインメントについて入手可能である。配列同一性パーセントを決定するための1つの好適なプログラムは、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)BLASTウエブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTパッケージソフトの一部bl2seqである。bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用される一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSパッケージソフトの一部Needle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、さらに欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EBI)、www.ebi.ac.uk/Tools/psaから入手可能である。
【0168】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列とアラインする単一ポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それら自体の配列同一性パーセントをそれぞれ有し得る。配列同一性パーセント値は、最近傍の小数第1位に丸められることに留意される。例えば、80.11、80.12、80.13、および80.14は、80.1に丸められる一方、80.15、80.16、80.17、80.18、および80.19は、80.2に丸められる。長さ値は常に整数であることも留意される。
【0169】
当業者は、配列同一性パーセントの計算のための配列アラインメントの生成は、専ら1次配列データにより実行される2元配列−配列比較に限定されないことを認識する。配列アラインメントは、複数の配列アラインメントに由来し得る。複数の配列アラインメントを生成するための1つの好適なプログラムはClustalW2であり、www.clustal.orgから入手可能である。別の好適なプログラムはMUSCLEであり、www.drive5.com/muscle/から入手可能である。ClustalW2およびMUSCLEは、例えば、EBIからも代替的に入手可能である。
【0170】
配列アラインメントは、配列データを異種源からのデータ、例えば、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、突然変異の局在)、または系統発生学的データと統合することにより生成することができることも認識される。異種データを統合して複数の配列アラインメントを生成する好適なプログラムはT−Coffeeであり、www.tcoffee.orgから入手可能であり、代替的に例えば、EBIからも入手可能である。配列同一性パーセントを計算するために使用される最終アラインメントは、自動または手動のいずれかでキュレートすることができることも認識される。
【0171】
任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかは、当分野において公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウエア、例えば、限定されるものではないが、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を使用して決定することもできる。BESTFITは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所相同性アルゴリズムを使用して2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見出す。特定の配列が、例えば参照配列と95%同一かどうかを決定するためにBESTFITまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合、パラメーターは、無論、同一性の割合が参照ポリペプチド配列の全長にわたり計算され、参照配列中のアミノ酸の総数の5%までの相同性のギャップが許容されるように設定される。
【0172】
さらに、「非必須」アミノ酸領域における保存置換または変化に導くヌクレオチドまたはアミノ酸置換、欠失、または挿入を作製することができる。例えば、設計されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、1つまたは複数の個々のアミノ酸置換、挿入、または欠失、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20以上の個々のアミノ酸置換、挿入、または欠失を除いて出発配列と同一であり得る。ある実施形態において、設計されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、出発配列に対して1から5、1から10、1から15、または1から20の個々のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有する。
【0173】
本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、融合タンパク質を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなり得る。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位、および少なくとも1つの異種部分、すなわち、天然で自然に結合しない部分を有する免疫グロブリン抗原結合ドメインを含むキメラ分子である。アミノ酸配列は、通常、融合ポリペプチドに一緒になる別個のタンパク質中に存在し得、またはそれらは通常、同一タンパク質中に存在し得るが、融合ポリペプチド中の新たな配置で配置される。融合タンパク質は、例えば、化学合成により、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出および翻訳することにより作出することができる。
【0174】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の部分に適用される用語「異種」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の部分が比較されている実体の残部から区別される実体に由来することを意味する。非限定的な例において、結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体に融合すべき「異種ポリペプチド」は、同一種の非免疫グロブリンポリペプチド、または異なる種の免疫グロブリンもしくは非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
【0175】
IV.融合タンパク質および抗体コンジュゲート
一部の実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、コンジュゲート形態で複数回投与することができる。さらに別の実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、未コンジュゲート形態で投与し、次いでコンジュゲート形態で投与することができ、またはその逆で投与することができる。
【0176】
具体的な実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、1つまたは複数の抗菌剤、例えば、ポリミキシンB(PMB)にコンジュゲートすることができる。PMBは、多剤耐性グラム陰性感染の治療について承認された小分子リポペプチド抗生物質である。PMBは、その殺菌活性に加え、リポ多糖(LPS)に結合し、その炎症促進効果を中和する。(Dixon,R.A.& Chopra,I.J Antimicrob Chemother 18,557−563(1986))。LPSは、炎症およびグラム陰性敗血症の発症に顕著に寄与すると考えられている。(Guidet,B.,et al.,Chest 106,1194−1201(1994))。循環からLPSを中和および/またはクリアランスする治療は、敗血症の発症を予防または遅延させ、臨床アウトカムを改善する潜在性を有する。ポリミキシンB(PMB)は、多剤耐性グラム陰性感染の治療について承認されたリポペプチド抗生物質である。PMBは、その殺菌活性に加え、LPSに結合し、その炎症促進効果を中和する。担体分子へのPMBのコンジュゲートは、内毒素血症および感染の動物モデルにおいてLPSを中和し、保護を媒介することが示されている。(Drabick,J.J.,et al.Antimicrob Agents Chemother 42,583−588(1998))。1つまたは複数のPMB分子を、本開示のモノクローナル抗体(mAb)のFc領域中に導入されたシステイン残基に付着する方法も開示される。例えば、Cam−003−PMBコンジュゲートは、緑膿菌(P.aeruginosa)への特異的なmAb媒介結合を保持し、OPK活性も保持した。さらに、mAb−PMBコンジュゲートは、インビトロでLPSに結合し、それを中和した。
【0177】
ある実施形態において、本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、抗体と通常会合していない異種アミノ酸配列または1つまたは複数の他の部分(例えば、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物学的応答改質剤、医薬剤、リンホカイン、異種抗体またはその断片、検出可能な標識、ポリエチレングリコール(PEG)、および任意の前記薬剤の2つ以上の組合せ)を含み得る。さらなる実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性標識、または任意の前記検出可能な標識の2つ以上の組合せからなる群から選択される検出可能な標識を含み得る。
【0178】
V.結合分子をコードするポリヌクレオチド
本明細書に記載の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードする核酸分子も、本明細書において提供される。
【0179】
一実施形態は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0180】
別の実施形態は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のVHアミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0181】
さらなる実施形態は、VHをコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、VHのVHCDR1、VHCDR2またはVHCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VHCDR1、VHCDR2および/またはVHCDR3アミノ酸配列と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一の単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0182】
別の実施形態は、VHを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、VHのVHCDR1、VHCDR2またはVHCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号74の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VHCDR1、VHCDR2および/またはVHCDR3アミノ酸配列と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一の単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0183】
さらなる実施形態は、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的または優先的に結合するポリヌクレオチドによりコードされるVHを含む単離結合分子、例えば、抗体または抗原結合断片を提供する。
【0184】
別の実施形態は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0185】
さらなる実施形態は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のVLアミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0186】
別の実施形態は、VLをコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、VLのVLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数の1つまたは複数の参照軽鎖VLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一である単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0187】
さらなる実施形態は、VLを含むシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、VLのVLCDR1、VLCDR2またはVLCDR3領域の1つまたは複数は、表2に示す配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、または配列番号16の1つまたは複数の1つまたは複数の参照重鎖VLCDR1、VLCDR2および/またはVLCDR3アミノ酸配列と同一、または4、3、2、もしくは1つのアミノ酸置換を除いて同一である単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0188】
別の実施形態において、ポリヌクレオチドによりコードされるVLを含む単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的または優先的に結合する。
【0189】
一実施形態は、VHおよびVLを含むscFv分子をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、scFvは、表4に示す配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、または配列番号70の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一である単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0191】
一部の実施形態において、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる単離抗体またはその抗原結合断片は、(a)それぞれ、配列番号1および配列番号2、(b)それぞれ、配列番号3および配列番号2、(c)それぞれ、配列番号4および配列番号2、(d)それぞれ、配列番号5および配列番号6、(e)それぞれ、配列番号7および配列番号8、(f)それぞれ、配列番号9および配列番号10、(g)それぞれ、配列番号11および配列番号12、(h)それぞれ、配列番号13および配列番号14;(i)それぞれ、配列番号15および配列番号16;または(j)それぞれ、配列番号74および配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一のVHおよびVLアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる。
【0192】
ある実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、5×10
−2M、10
−2M、5×10
−3M、10
−3M、5×10
−4M、10
−4M、5×10
−5M、10
−5M、5×10
−6M、10
−6M、5×10
−7M、10
−7M、5×10
−8M、10
−8M、5×10
−9M、10
−9M、5×10
−10M、10
−10M、5×10
−11M、10
−11M、5×10
−12M、10
−12M、5×10
−13M、10
−13M、5×10
−14M、10
−14M、5×10
−15M、または10
−15M以下の解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。
【0193】
具体的な実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約1×10
−10Mから約1×10
−6Mの範囲の解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。一実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載のOCTET(登録商標)結合アッセイにより測定される約1.18×10
−7Mの解離定数(K
D)を特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる単離結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載のOCTET(登録商標)結合アッセイにより測定される約1.44×10
−7MのK
Dを特徴とする親和性でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する。
【0194】
ある実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−004、WapR−004RAD、Cam−003、Cam−004、もしくはCam−005と同一のPslエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。WapR−004RADは、配列番号11のVHアミノ酸配列をコードするVH核酸配列の核酸置換G293C(配列番号71の317位におけるVHコード部分中のヌクレオチドの置換)を除いてWapR−004と同一である。WapR−004RAD VHをコードする核酸配列は配列番号76として提示する。
【0195】
一部の実施形態は、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145;または配列番号146の1つまたは複数と同一、または1、2、3、4、5つ以上のアミノ酸置換を除いて同一のW4突然変異体scFv−Fc分子アミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0196】
他の実施形態は、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145;または配列番号146の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一のW4突然変異体scFv−Fc分子アミノ酸配列をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0197】
一実施形態は、W4突然変異体scFv−Fc分子をコードする核酸を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる単離ポリヌクレオチドであって、核酸は、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、または配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、配列番号172、配列番号173、配列番号174、配列番号175、配列番号176、配列番号177、配列番号178、配列番号179、配列番号180、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205、配列番号206、配列番号207、配列番号208、配列番号209、配列番号210、配列番号211、配列番号212、配列番号213、配列番号214;または配列番号215の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%同一である単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0198】
他の実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−001、WapR−002、もしくはWapR−003と同一のエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。
【0199】
ある実施形態において、上記ポリヌクレオチドの1つまたは複数によりコードされる抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、モノクローナル抗体WapR−016と同一のエピトープに特異的に結合し、またはそのようなモノクローナル抗体をシュードモナス属(Pseudomonas)Pslへの結合から競合阻害する。
【0200】
本開示は、本明細書の他箇所に記載のポリヌクレオチドの断片も含む。さらに、上記の融合ポリヌクレオチド、Fab断片、および他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0201】
ポリヌクレオチドは、当分野において公知の任意の方法により産生または製造することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が既知である場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学合成オリゴヌクレオチドからアセンブルすることができ(例えば、Kutmeier et al.,BioTechniques 17:242(1994)に記載のとおり)、手短に述べると、抗体をコードする配列の部分を含有する重複オリゴヌクレオチドを合成し、それらのオリゴヌクレオチドをアニールおよびライゲートし、次いでライゲートされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を含む。
【0202】
あるいは、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、好適な資源からの核酸から生成することができる。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンは入手可能でないが、抗体分子の配列が既知の場合、抗体をコードする核酸は、化学合成することができ、または好適な資源(例えば、抗体cDNAライブラリー、または抗体を発現する任意の組織もしくは細胞もしくは例えば抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸、好ましくは、ポリA+RNA)から、配列の3’および5’末端にハイブリダイズする合成プライマーを使用するPCR増幅により、または特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングにより、例えば抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定することにより得ることができる。次いで、PCRにより生成された増幅核酸を、当分野において周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクター中にクローニングすることができる。
【0203】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列を決定したら、そのヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作の分野において周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的突然変異導入、PCRなどを使用して操作して(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)およびAusubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1998)に記載の技術参照、これらは両方とも参照により全体として本明細書に組み込まれる)、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を作出するために異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成することができる。
【0204】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、未改変RNAもしくはDNAまたは改変RNAもしくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成することができる。例えば、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、1本鎖および2本鎖DNA、1本鎖および2本鎖領域の混合物であるDNA、1本鎖および2本鎖RNA、ならびに1本鎖および2本鎖領域の混合物であるRNA、1本鎖またはより典型的には2本鎖または1本鎖および2本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成することができる。さらに、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む3本鎖領域から構成することができる。抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数の改変塩基または安定性もしくは他の理由のために改変されたDNAもしくはRNA骨格も含有し得る。「改変」塩基には、例えば、トリチル化塩基および特殊塩基、例えば、イノシンが含まれる。種々の改変をDNAおよびRNAに作製することができ;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的、または代謝的改変形態を包含する。
【0205】
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリン重鎖部分または軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然バリアントをコードする単離ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失がコードされるタンパク質中に導入されるように、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列中に導入することにより作出することができる。突然変異は、標準的な技術、例えば、部位特異的突然変異導入およびPCR媒介突然変異導入により導入することができる。保存アミノ酸置換は、1つまたは複数の非必須アミノ酸残基において作製することができる。
【0206】
VI.抗体ポリペプチドの発現
周知のとおり、RNAは、元のハイブリドーマ細胞または他の形質転換細胞から標準的な技術、例えば、グアニジニウムイソチオシアネート抽出および沈殿に続く遠心分離またはクロマトグラフィーにより単離することができる。所望により、mRNAは、総RNAから標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロース上でのクロマトグラフィーにより単離することができる。好適な技術は、当分野において知られている。
【0207】
一実施形態において、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、周知の方法に従って逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを使用して同時または別個に作製することができる。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによりまたは公開されている重鎖および軽鎖DNAおよびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーにより開始することができる。上記のとおり、PCRを使用して抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離することもできる。この場合、ライブラリーはコンセンサスプライマーまたはより大きい相同プローブ、例えば、マウス定常領域プローブによりスクリーニングすることができる。
【0208】
DNA、典型的には、プラスミドDNAは、当分野において公知の技術を使用して細胞から単離し、例えば、組換えDNA技術に関する上記の参照文献に詳細に記載される標準的な周知技術に従って制限マッピングおよび配列決定することができる。無論、DNAは、単離プロセスまたは後続の分析の間の任意の時点において本開示による合成物であり得る。
【0209】
本開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体を提供するための単離遺伝子材料の操作後、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子をコードするポリヌクレオチドは、典型的には、所望量の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子を産生するために使用することができる宿主細胞中への導入のために発現ベクター中に挿入する。
【0210】
抗体、またはその断片、誘導体もしくはアナログ、例えば、上記標的分子、例えば、Pslに結合する抗体の重鎖または軽鎖の組換え発現は、抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を要求する。本開示の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはその部分(重鎖または軽鎖可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドを得たら、抗体分子産生のためのベクターを当分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術により産生することができる。したがって、本明細書に記載のヌクレオチド配列をコードする抗体を含有するポリヌクレオチドを発現させることによりタンパク質を調製する方法が本明細書に記載される。当業者に周知の方法を使用して抗体コード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本開示は、プロモーターに作動可能に結合している本開示の抗体分子、またはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、PCT公開国際公開第86/05807号パンフレット;PCT公開国際公開第89/01036号パンフレット;および米国特許第5,122,464号明細書参照)、抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖全体の発現のためにそのようなベクター中にクローニングすることができる。
【0211】
用語「ベクター」または「発現ベクター」は、所望遺伝子を宿主細胞中に導入し、および発現させるためのビヒクルとして本開示により使用されるベクターを意味するために本明細書において使用される。当業者に公知のとおり、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。一般に、本開示と同等なベクターは、選択マーカー、所望遺伝子のクローニングならびに原核または真核細胞中への進入および/またはその細胞中での複製能を易化するための適切な制限部位を含む。
【0212】
本開示の目的のため、多数の発現ベクター系を用いることができる。例えば、ベクターの1つのクラスは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。他には、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用が含まれる。さらに、DNAを染色体中に統合させた細胞を、形質移入された宿主細胞の選択を可能とする1つまたは複数のマーカーを導入することにより選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)または重金属、例えば、銅耐性を提供し得る。選択可能マーカー遺伝子は、発現させるべきDNA配列に直接結合させ、または同一の細胞中に同時形質転換により導入することができる。追加のエレメントがmRNAの最適な合成に必要とされることもある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルが含まれ得る。
【0213】
一部の実施形態において、クローニングされた可変領域遺伝子を上記の合成重鎖および軽鎖定常領域遺伝子(例えば、ヒト)とともに発現ベクター中に挿入する。無論、真核細胞中で発現を誘発し得る任意の発現ベクターを本開示において使用することができる。好適なベクターの例には、限定されるものではないが、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1、およびpZeoSV2(Invitrogen,San Diego,CAから入手可能)、およびプラスミドpCI(Promega,Madison,WIから入手可能)が含まれる。一般に、高レベルの免疫グロブリン重鎖および軽鎖を好適に発現するものについての大量の形質転換細胞のスクリーニングは、例えば、ロボットシステムにより実施することができる定型実験である。
【0214】
より一般には、本開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体のモノマーサブユニットをコードするベクターまたはDNA配列を調製したら、発現ベクターを適切な宿主細胞中に導入することができる。宿主細胞中へのプラスミドの導入は、当業者に周知の種々の技術により達成することができる。これらには、限定されるものではないが、形質移入(電気泳動およびエレクトロポレーションを含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、およびインタクトウイルスによる感染が含まれる。Ridgway,A.A.G.“Mammalian Expression Vectors”Vectors,Rodriguez and Denhardt,Eds.,Butterworths,Boston,Mass.,Chapter 24.2,pp.470−472(1988)参照。典型的には、宿主中へのプラスミド導入は、エレクトロポレーションを介する。発現構築物を保有する宿主細胞は、軽鎖および重鎖の産生に適切な条件下で成長させ、重鎖および/または軽鎖タンパク質合成についてアッセイする。例示的アッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞ソーター分析(FACS)、免疫組織化学などが含まれる。
【0215】
発現ベクターを慣用の技術により宿主細胞に移し、次いで形質移入細胞を慣用の技術により培養して本明細書に記載の方法において使用される抗体を産生する。したがって、本開示は、異種プロモーターに作動可能に結合している抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体、またはその重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含む。2本鎖抗体の発現についての一部の実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、下記に詳述するとおり免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中で同時発現させることができる。
【0216】
ある実施形態は、上記VHおよびVLをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチドであって、ポリヌクレオチドにより発現される結合分子またはその抗原結合断片は、シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する単離ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、表4に示す配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、または配列番号70の1つまたは複数と少なくとも80%、85%、90% 95%または100%同一のVHおよびVLを含むscFv分子をコードする。
【0217】
一部の実施形態は、上記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む。さらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に会合している。追加の実施形態において、本開示は、そのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。さらなる実施形態において、本開示は、ポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に会合しており、好適な宿主細胞中でシュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子を発現し得るベクターを提供する。
【0218】
シュードモナス属(Pseudomonas)Pslに特異的に結合する結合分子またはその断片を産生する方法であって、上記ポリヌクレオチドを含むベクターを含有する宿主細胞を培養すること、および前記抗体、またはその断片を回収することを含む方法も提供される。さらなる実施形態において、本開示は、上記方法により産生される単離結合分子またはその断片を提供する。
【0219】
本明細書において使用される「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを保有する細胞を指す。組換え宿主からの抗体の単離方法の記載において、用語「細胞」および「細胞培養物」は、特に明確に記載のない限り、抗体の資源を示すために互換的に使用される。換言すると、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠沈させた全細胞、または培地および懸濁細胞を両方含有する細胞培養物からのいずれかを意味し得る。
【0220】
種々の宿主発現ベクター系を利用して本明細書に記載の方法において使用される抗体分子を発現させることができる。そのような宿主発現系は、対象のコード配列を産生することができ、続いて精製することができるビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換または形質移入された場合、インサイチューで本開示の抗体分子を発現し得る細胞も表す。これらには、限定されるものではないが、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピチア属(Pichia));抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)により感染された昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)により感染され、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)に由来するプロモーターを含有する組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BLK、293、3T3細胞)が含まれる。細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、または真核細胞は、特に完全組換え抗体分子の発現のため、組換え抗体分子の発現に使用される。例えば、ベクター、例えばヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントと連携する哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)は、抗体のための有効な発現系である(Foecking et al.,Gene 45:101(1986);Cockett et al.,Bio/Technology 8:2(1990)。
【0221】
タンパク質発現に使用される宿主細胞系は、哺乳動物起源であることが多く;当業者には、発現させるべき所望の遺伝子産物に最良に適合する特定の宿主細胞系を決定することができる能力があると考えられている。例示的な宿主細胞系には、限定されるものではないが、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣系、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓系)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、293、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が含まれる。宿主細胞系は、典型的には、市販サービス、米国培養細胞系統保存機関(American Tissue Culture Collection)、または公開文献から入手可能である。
【0222】
さらに、挿入配列の発現をモジュレートし、または望まれる規定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、開裂)は、タンパク質の機能に重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセッシングおよび修飾についての特徴および規定の機序を有する。適切な細胞系または宿主系を、発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確保するように選択することができる。この目的のため、1次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。
【0223】
組換えタンパク質の長期高収量産生のため、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞系をエンジニアリングすることができる。ウイルス複製起源を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択可能なマーカーにより制御されたDNAにより形質転換することができる。外来DNAの導入後、エンジニアリングされた細胞を強化培地中で1〜2日間成長させることができ、次いで選択培地にスイッチする。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをそれらの染色体中に安定的に統合させ、成長してフォーカスを形成することを可能とし、次いで細胞系中にクローニングおよび拡張することができる。この方法は、有利には、抗体分子を安定的に発現する細胞系をエンジニアリングするために使用することができる。
【0224】
多数の選択系、例として、限定されるものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))を使用することができ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell 22:817 1980)遺伝子を、tk、hgprtまたはaprt細胞中でそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質耐性を以下の遺伝子についての選択をベースとして使用することができる:メトトレキセート耐性を付与するdhfr(Wigler et al.,Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hare et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG418耐性を付与するneo Clinical Pharmacy 12:488−505;Wu and Wu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);およびMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);TIB TECH 11(5):155−215(May,1993)ならびにハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Santerre et al.,Gene 30:147(1984)。使用することができる組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法は、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);およびChapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colberre−Garapin et al.,J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載されており、それらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0225】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅により増加させることができる(概説については、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Academic Press,New York,Vol.3.(1987)参照)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅領域が抗体遺伝子と会合するため、抗体の産生も増加する(Crouse et al.,Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
【0226】
インビトロ産生は、大量の所望のポリペプチドを与えるためのスケールアップを可能とする。組織培養条件下での哺乳動物培養のための技術は、当分野において公知であり、それには、例えば、エアリフト反応器もしくは連続撹拌反応器中での均一懸濁液培養、または例えば、中空繊維、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズもしくはセラミックカートリッジ上での固定化もしくは捕捉細胞培養が含まれる。必要および/または所望により、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的生合成の後または本明細書に記載のHICクロマトグラフィー工程の前またはその後、ポリペプチドの溶液を慣用のクロマトグラフィー法、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロース上でのクロマトグラフィーまたは(免疫)親和性クロマトグラフィーにより精製することができる。
【0227】
本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体をコードする構築物は、非哺乳動物細胞、例えば、細菌または酵母または植物細胞中で発現させることもできる。容易に核酸を取り込む細菌には、腸内細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)またはサルモネラ属(Salmonella);バシラス科(Bacillaceae)、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、肺炎球菌属(Pneumococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の株のメンバーが含まれる。異種ポリペプチドは、細菌中で発現される場合、典型的には、封入体の一部になることがさらに認識される。異種ポリペプチドは、単離、精製し、次いで機能分子にアセンブルしなければならない。抗体の4価形態が望ましい場合、次いでサブユニットは4価抗体に自己組織化する(国際公開第02/096948A2号パンフレット)。
【0228】
細菌系において、発現される抗体分子に意図される使用に応じて多数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、大量のそのようなタンパク質を産生すべき場合、抗体分子の医薬組成物の生成のため、容易に精製することができる高レベルの融合タンパク質産物の発現を指向するベクターが望ましいことがある。そのようなベクターには、限定されるものではないが、融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列をベクター中にインフレームでlacZコード領域と個々にライゲートすることができる大腸菌(E.coli)発現ベクターpUR278(Ruther et al.,EMBO J.2:1791(1983));pINベクター(Inouye & Inouye,Nucleic Acids Res.13:3101−3109(1985);Van Heeke & Schuster,J.Biol.Chem.24:5503−5509(1989))などが含まれる。pGEXベクターを使用して外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、溶解細胞からマトリックスグルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合に続く遊離グルタチオンの存在下での溶出により容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされる標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ開裂部位を含むように設計される。
【0229】
原核生物に加え、真核微生物を使用することもできる。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、または一般的なパン酵母が、真核微生物のうちで最も一般に使用されるが、多数の他の株、例えば、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)が一般に利用可能である。
【0230】
サッカロミセス属(Saccharomyces)における発現のため、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb et al.,Nature 282:39(1979);Kingsman et al.,Gene 7:141(1979);Tschemper et al.,Gene 10:157(1980))が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中での成長能を欠く酵母の突然変異株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1(Jones,Genetics 85:12(1977))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。次いで、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl傷害の存在は、トリプトファンの不存在下での成長による形質転換の検出に有効な環境を提供する。
【0231】
昆虫系において、キンウワバ科(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を典型的には、ベクターとして使用して外来遺伝子を発現させる。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で成長する。抗体コード配列をウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中に個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。
【0232】
本開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体を組換え発現させたら、それを免疫グロブリン分子の精製についての分野において公知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特異的抗原についての親和性によるもの、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差により、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術により精製することができる。本開示の抗体の親和性を増加させる別の方法は、米国特許出願公開第20020123057A1号明細書に開示されている。
【0233】
VII.血清型無差別結合分子の同定
本開示は、優れたまたは所望の治療活性を有する血清型非依存性治療結合分子、例えば、抗体またはその断片を同定するための標的無差別全細胞アプローチを包含する。本方法を利用して感染作用物質、例えば、細菌病原体の不所望な活性をアンタゴナイズ、中和、クリアランス、または遮断し得る結合分子を同定することができる。当分野において公知のとおり、多くの感染作用物質は、それらのドミナント表面抗原の顕著なバリエーションを示し、それらが免疫学的監視を回避することを可能とする。本明細書に記載の同定法は、多くの異なるシュードモナス属(Pseudomonas)種または他のグラム陰性病原体に共有される抗原を標的化する結合分子を同定し得、したがって複数種からの複数の病原体を標的化し得る治療剤を提供する。例えば、本方法を利用して血清型非依存様式で緑膿菌(P.aeruginosa)の表面に結合し、細菌病原体に結合した場合、細菌細胞、例えば、細菌病原体、例えば、日和見シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、およびシュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes))に対するオプソニン食菌(OPK)活性を媒介、促進、または向上させ、および/または上皮細胞へのそのような細菌細胞の付着を阻害する一連の結合分子を同定することができる。
【0234】
ある実施形態は、血清型無差別結合分子を同定する方法であって、(a)ナイーブおよび/または回復期抗体ライブラリーをファージ中で調製すること、(b)血清型特異的抗体をライブラリーから枯渇パニングにより除去すること、(c)血清型非依存性の全細胞に特異的に結合する抗体についてライブラリーをスクリーニングすること、および(d)得られた抗体を所望の機能特性についてスクリーニングすることを含む方法を開示する。
【0235】
ある実施形態は、ナイーブまたは緑膿菌(P.aeruginosa)感染回復期患者に由来する抗体ファージライブラリーを用いる本明細書に開示の全細胞表現型スクリーニングアプローチを提供する。血清型特異的反応性に対して最初に選択したパニング方針を使用して、緑膿菌(P.aeruginosa)全細胞に結合する異なるクローンを単離した。選択されたクローンをヒトIgG1抗体に変換し、血清型分類または組織単離の部位にかかわらず緑膿菌(P.aeruginosa)臨床単離物と反応することを確認した(実施例参照)。本明細書に記載の機能活性スクリーンは、抗体が哺乳動物細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)付着の予防に有効であり、オプソニン食菌(OPK)殺傷を濃度依存および血清型非依存様式で媒介することを示した。
【0236】
さらなる実施形態において、上記結合分子もしくはその断片、抗体もしくはその断片、または組成物は、2つ以上、3つ以上、4つ以上、もしくは5つ以上の異なる緑膿菌(P.aeruginosa)血清型、または感染患者から単離された緑膿菌(P.aeruginosa)血清型の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%に結合する。さらなる実施形態において、緑膿菌(P.aeruginosa)株は、肺、唾液、眼、膿汁、糞便、尿、洞、創傷、皮膚、血液、骨、または膝液の1つまたは複数から単離される。
【0237】
VIII.抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子を含む医薬組成物
本開示において使用される医薬組成物は、当業者に周知の薬学的に許容可能な担体を含む。非経口投与のための調製物には、無菌水性または非水性液剤、懸濁液、または乳濁液が含まれる。本明細書に開示のある医薬組成物は、許容可能な剤形、例として、例えば、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または液剤で経口投与することができる。ある医薬組成物は、鼻腔エアゾールまたは吸入により投与することもできる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、および不活性ガスなども存在し得る。本明細書に開示の治療方法において使用される好適な配合物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,16th ed.(1980)に記載されている。
【0238】
単一剤形を産生するために担体材料と組み合わせることができる抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体の量は、治療される宿主および特定の投与方式に応じて変動する。投与量レジメンは、最適な所望応答(例えば、治療または防止応答)を提供するように調整することもできる。組成物は、化合物に好適な送達または担持系として機能する生体適合性担体材料中に分散した抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体も含み得る。
【0239】
IX.治療結合分子を使用する治療方法
本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体を調製およびそれが必要とされる対象に投与する方法は周知であり、または当業者により容易に決定することができる。抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入によるものまたは局所であり得る。本明細書において使用される非経口という用語には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下投与が含まれる。投与に好適な形態は、注射、特に静脈内もしくは動脈内注射または点滴用液剤である。しかしながら、本明細書に教示と同等な他の方法において、本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、有害細胞集団、例えば、感染の部位に直接送達することができ、それにより治療剤への疾患組織の曝露を増加させる。例えば、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子は、眼組織、火傷損傷、または肺組織に直接投与することができる。
【0240】
本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、シュードモナス属(Pseudomonas)感染のインビボ治療について薬学的有効量で投与することができる。これに関して、開示結合分子は、活性剤の投与を易化し、安定性を促進するように配合されることが認識される。本出願の目的のため、薬学的有効量は、標的への有効な結合を達成するためおよび利益、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)感染の治療、改善、縮減、クリアランス、または予防を達成するために十分な量を意味するものとする。
【0241】
一部の実施形態は、シュードモナス属(Pseudomonas)感染の予防または治療が必要とされる対象においてシュードモナス属(Pseudomonas)感染を予防または治療する方法であって、対象に有効量の本明細書に記載の結合分子もしくはその断片、抗体もしくはその断片、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞を投与することを含む方法を対象とする。さらなる実施形態において、シュードモナス属(Pseudomonas)感染は、緑膿菌(P.aeruginosa)感染である。一部の実施形態において、対象はヒトである。ある実施形態において、感染は眼感染、肺感染、火傷感染、創傷感染、皮膚感染、血液感染、骨感染、または前記感染の2つ以上の組合せである。さらなる実施形態において、対象は、急性肺炎、火傷損傷、角膜感染、嚢胞性線維症、またはそれらの組合せを罹患する。
【0242】
ある実施形態は、上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)の付着を遮断または予防する方法であって、上皮細胞および緑膿菌(P.aeruginosa)の混合物を、本明細書に記載の結合分子もしくはその断片、抗体もしくはその断片、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞と接触させることを含む方法を対象とする。
【0243】
緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを向上させる方法であって、食細胞および緑膿菌(P.aeruginosa)の混合物を、本明細書に記載の結合分子もしくはその断片、抗体もしくはその断片、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞と接触させることを含む方法も開示される。さらなる実施形態において、食細胞は、分化HL−60細胞またはヒト多形核白血球(PMN)である。
【0244】
本開示の範囲に従うと、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体もしくは誘導体は、上記の治療方法に従って治療効果を産生するために十分な量でヒトまたは他の哺乳動物に投与することができる。本明細書に開示の抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、そのようなヒトまたは他の動物に、本開示の抗体を公知の技術に従って慣用の薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせることにより調製された慣用の剤形で投与することができる。
【0245】
シュードモナス属(Pseudomonas)感染の治療のための本開示の組成物の有効用量は、多くの異なる要因、例として、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物か、投与される他の医薬品、および治療が防止的か療法的かに応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例として、トランスジェニック哺乳動物を治療することもできる。治療投与量を当業者に公知の定型方法を使用して力価測定して安全性および効力を最適化することができる。
【0246】
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、当業者に公知の種々の要因に応じて種々の頻度において複数の場合に投与することができる。あるいは、抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は徐放配合物として投与することができ、この場合、低頻度の投与が要求される。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変動する。
【0247】
本開示の組成物は、任意の好適な方法により、例えば、非経口、脳室内、経口、吸入スプレーにより、局所、直腸、鼻腔、バッカル、経膣または植込リザーバーを介して投与することができる。本明細書において使用される用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術が含まれる。
【0248】
X.免疫アッセイ
抗シュードモナス属(Pseudomonas)Psl結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアントもしくは誘導体は、当分野において公知の任意の方法により免疫特異的結合についてアッセイすることができる。使用することができる免疫アッセイには、限定されるものではないが、いくつか例を挙げると、ウエスタンブロットのような技術を使用する競合および非競合アッセイ系、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイが含まれる。そのようなアッセイは定型的であり、当分野において周知である(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれるAusubel et al.,eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York,Vol.1(1994)参照)。例示的な免疫アッセイを以下に手短に記載する(しかし、限定を意図するものではない)。
【0249】
抗体−抗原相互作用の親和性の計測に利用可能な種々の方法が存在するが、速度定数の測定については比較的少ない。ほとんどの方法は、抗体または抗原のいずれかの標識に依存し、定型的な計測の煩雑化が不可避であり、計測量が不確実になる。抗体親和性は、多数の方法、例として、OCTET(登録商標)、BIACORE(登録商標)、ELISA、およびFACSにより計測することができる。
OCTET(登録商標)システムは、96ウェルプレートフォーマット中のバイオセンサーを使用して速度論的分析を報告する。タンパク質結合および解離イベントは、溶液中のあるタンパク質の、ForteBioバイオセンサー上に固定化された第2のタンパク質への結合を計測することによりモニタリングすることができる。Pslへの抗Psl抗体の結合を計測する場合、PslをOCTET(登録商標)チップ上に固定化し、次いで溶液中の抗体の結合を分析する。次いで、固定化Pslに対する抗体の会合および解離を装置センサーにより検出する。次いで、データを収集し、親和性曲線フィッティングのためにGraphPad Prismにエクスポートする。
【0250】
BIACORE(登録商標)上で実施される表面プラズモン共鳴(SPR)は、抗体−抗原相互作用の親和性を計測する慣用の方法と比べて多数の利点を提供する:(i)抗体にも抗原にも標識する必要がない;(ii)抗体を予め精製する必要がなく、細胞培養物上澄みを直接使用することができる;(iii)異なるモノクローナル抗体相互作用の迅速な半定量比較を可能とするリアルタイム計測が可能であり、多くの評価目的に十分である;(iv)生物特異的表面を、一連の異なるモノクローナル抗体を同一条件下で容易に比較することができるように再生することができる;(v)分析手順を完全自動化し、広範な計測系列を使用者の介在なしで実施することができる。BIAapplications Handbook,version AB(1998年再版)、BIACORE(登録商標)コード番号BR−1001−86;BIAtechnology Handbook,version AB(1998年再版)、BIACORE(登録商標)コード番号BR−1001−84。
【0251】
SPRベース結合試験は、結合ペアの一方のメンバーをセンサー表面上に固定化することを要求する。固定化された結合パートナーは、リガンドと称される。溶液中の結合パートナーは、分析物と称される。一部の場合、リガンドは、捕捉分子と称される別の固定化分子への結合を介して表面に間接的に付着される。SPR応答は、分析物が結合または解離したときの検出器表面における質量濃度の変化を反映する。
【0252】
SPRに基づき、リアルタイムBIACORE(登録商標)計測は、相互作用をそれらが生じたときに直接モニタリングする。この技術は速度論的パラメーターの決定に十分適合する。競合親和性ランキングは極端に実施しやすく、速度論および親和性定数の両方をセンサーグラムデータから導くことができる。
【0253】
分析物をリガンド表面にわたり別々のパルスでインジェクトする場合、得られたセンサーグラムを3つの必須相に分割することができる:(i)試料インジェクションの間の分析物とリガンドとの会合;(ii)分析物結合の速度が複合体からの解離により平衡される試料インジェクションの間の平衡または定常状態;(iii)緩衝液流動間の表面からの分析物の解離。
【0254】
会合および解離相は、分析物−リガンド相互作用(k
aおよびk
d、複合体形成および解離の速度、k
d/k
a=K
D)のキネティクスに関する情報を提供する。平衡相は、分析物−リガンド相互作用(K
D)の親和性に関する情報を提供する。
【0255】
BIAevaluationソフトウエアは、数値積分およびグローバルフィッティングアルゴリズムの両方を使用して曲線フィッティングのための包括的ファシリティーを提供する。データの好適な分析により、相互作用についての分離速度および親和性定数を簡単なBIACORE(登録商標)調査から得ることができる。この技術により計測可能な親和性の範囲は極めて広く、mMからpMに及ぶ。
【0256】
エピトープ特異性は、モノクローナル抗体の重要な特徴である。BIACORE(登録商標)によるエピトープマッピングは、放射免疫アッセイ、ELISAまたは他の表面吸着法を使用する慣用の技術とは対照的に、抗体の標識も精製も要求せず、いくつかのモノクローナル抗体の配列を使用して多部位特異性試験を可能とする。さらに、大量の分析物を自動的に処理することができる。
【0257】
ペアワイズ結合実験は、2つのMAbの同一抗原に同時に結合する能力を試験する。別個のエピトープに対して指向されたMAbは、独立して結合する一方、同一または密接に関連するエピトープに対して指向されたMAbは、互いの結合を干渉する。BIACORE(登録商標)によるこれらの結合実験は、実施が容易である。
【0258】
例えば、第1のMabに結合させるための捕捉分子を使用し、次いで抗原および第2のMAbを連続的に添加することができる。センサーグラムは、1.どれほどの数の抗原が第1のMabに結合するか、2.どの程度、第2のMAbが表面付着抗原に結合するか、3.第2のMAbが結合しない場合、ペアワイズ試験の順序の逆転は結果を変えるかどうかを明らかにする。
【0259】
ペプチド阻害は、エピトープマッピングに使用される別の技術である。この方法は、ペアワイズ抗体結合試験を補完し得、抗原の1次配列が既知の場合、機能的エピトープを構造的特徴と関連づけ得る。ペプチドまたは抗原断片を、固定化抗原への異なるMAbの結合の阻害について試験する。所与のMAbの結合を干渉するペプチドは、そのMAbにより定義されるエピトープと構造的に関連すると想定される。
【0260】
本開示の実施は、特に記載のない限り、当分野の技能の範囲内の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の慣用の技術を用いる。そのような技術は、文献に十分説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,ed.,Cold Springs Harbor Laboratory, New York(1992),DNA Cloning,D.N.Glover ed.,Volumes I and II(1985);Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait ed.,(1984);Mullis et al.米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Transcription And Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);論文、Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.;Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(1987);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,(1986);Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)参照。
【0261】
免疫学の一般原理を記載する標準的な参照文献には、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons, New York;Klein,J.,Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination,John Wiley & Sons,New York(1982);Roitt,I.,Brostoff,J.and Male D.,Immunology,6
th ed.London:Mosby(2001);Abbas A.,Abul,A.and Lichtman,A.,Cellular and Molecular Immunology,Ed.5,Elsevier Health Sciences Division (2005);およびHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)が含まれる。
【0262】
本開示を目下詳細に記載したが、同一のことは、以下の実施例を参照することによってより明確に理解され、それらの実施例は説明の目的のためにのみ本明細書に含まれ、本開示を限定するものではない。本明細書において参照される全ての特許および刊行物は、参照により全体として明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0263】
実施例1
ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーの構築およびスクリーニング
本実施例は、シュードモナス属(Pseudomonas)感染に対する新規保護抗原を同定するためのナイーブおよび緑膿菌(P.aeruginosa)感染回復期患者の両方に由来するヒト抗体ファージライブラリーを用いる標的無差別全細胞パニングアプローチを記載する(
図1A)。インビトロ機能スクリーンに含まれるアッセイは、オプソニン食菌(OPK)殺傷アッセイおよび上皮細胞系A549を使用する細胞付着アッセイを含んだ。リード候補物は、優れたインビトロ活性に基づき、緑膿菌(P.aeruginosa)急性肺炎、角膜炎、および火傷感染モデルにおいて試験した。
【0264】
図1Bは、患者抗体ファージディスプレイライブラリーの構築を示す。全血を6人の回復期患者から診断7〜10日後にプールし、次いでRNA抽出し、上記のとおりファージライブラリーを構築した(Vaughan,T.J.,et al.,Nat Biotechnol 14,309−314(1996);Wrammert,J.,et al.,Nature 453,667−671(2008))。
図1Cは、最終クローニングscFvライブラリーが5.4×10
8個の形質転換体を含有したことを示し、配列決定は、scFv遺伝子の79%が全長でありインフレームであることを明らかにした。VH CDR3ループは、エピトープ特異性の決定に重要なことが多く、ライブラリー選択前にアミノ酸レベルにおいて84%の多様性であった。
【0265】
患者ライブラリーに加え、最大1×10
11個の結合メンバーを含有するナイーブヒトscFvファージディスプレイライブラリー(Lloyd,C.,et al.,Protein Eng Des Sel 22,159−168(2009))を、抗体単離に使用した(Vaughan,T.J.,et al.,Nat Biotechnol 14,309−314(1996))。加熱殺傷した緑膿菌(P.aeruginosa)(1×10
9)をIMMUNO(商標)チューブ(Nunc;MAXISORP(商標))中に固定化し、次いで上記のとおりファージディスプレイ選択を行い(Vaughan,T.J.,et al.,Nat Biotechnol 14,309−314(1996))、但しトリエタノールアミン(100nM)を溶出緩衝液として使用した。懸濁液中の緑膿菌(P.aeruginosa)に基づく選択のため、加熱殺傷細菌をブロッキングし、次いでブロッキングされたファージを細胞に添加した。洗浄後、溶出させたファージを使用して上記のとおり大腸菌(E.coli)に感染させた(Vaughan,1996)。大腸菌(E.coli)からのファージのレスキューおよびELISAによる加熱殺傷緑膿菌(P.aeruginosa)への結合は、上記のとおり実施した(Vaughan,1996)。
【0266】
全細胞親和性選択方法の開発および評価後、新たな回復期患者ライブラリーおよび既に構築されたナイーブライブラリーの両方(Vaughan,T.J.,et al.,Nat Biotechnol 14,309−314(1996))を、完全O抗原を有する緑膿菌(P.aeruginosa)株3064およびO抗原の表面発現を欠くアイソジェニックwapR突然変異株の懸濁液に対する親和性選択に供した。
図1Dは、連続患者ライブラリー選択からのアウトプット力価が、ナイーブライブラリーよりも患者ライブラリーについてより大きい速度において増加することが見出されたことを示す(ラウンド3においてそれぞれ1×10
7対3×10
5)。さらに、ライブラリーにおけるVH CDR3ループ配列の重複(選択の間のクローン濃縮の尺度)も、ラウンド3において患者ライブラリーにおいて88〜92%に達し、ナイーブライブラリーにおける15〜25%と比較して高いことが見出された(
図1D)。次に、親和性選択からの個々のscFvファージを緑膿菌(P.aeruginosa)異種血清型株に対する反応性についてELISAによりスクリーニングした(
図1E)。ELISAプレート(Nunc;MAXISORP(商標))を、上記のとおり一晩培養物からの緑膿菌(P.aeruginosa)株によりコートした(DiGiandomenico,A.,et al.,Infect Immun 72,7012−7021(2004))。希釈抗体をブロッキングしたプレートに1時間添加し、洗浄し、HRPコンジュゲート抗ヒト2次抗体により1時間処理し、次いで上記のとおり発色および分析した(Ulbrandt,N.D.,et al.,J Virol 80,7799−7806(2006))。両方のライブラリーを用いる全細胞選択から得られたファージのドミナント種は、血清型特異的反応性をもたらした(データ示さず)。大腸菌(E.coli)またはウシ血清アルブミンへの非特異的結合の不存在下で血清型非依存性結合を示すクローンをさらなる評価のために選択した。
【0267】
IgG発現のため、選択抗体のVHおよびVL鎖をヒトIgG1発現ベクター中にクローニングし、HEK293細胞中で同時発現させ、上記のとおりプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した(Persic,L.,et al.,Gene 187,9−18(1997))。これらの選択血清型非依存的ファージからの可変領域から作製されたヒトIgG1抗体を、緑膿菌(P.aeruginosa)特異性について確認し、FACS分析によりドミナント臨床関連血清型への全細胞結合により後続の分析のために優先順位を付けた(
図1F)。それというのも、この方法は、ELISAよりもストリンジェントであるためである。フローサイトメトリーをベースとする結合アッセイのため、対数増殖中期の緑膿菌(P.aeruginosa)株をPBS中に2.0のOD
650まで濃縮した。抗体(10μg/mL)および細菌(約1×10
7個の細胞)を振とうしながら4℃において1時間インキュベートした後、洗浄した細胞をALEXA FLUOR647(登録商標)ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen,Carlsbad,CA)と4℃において0.5時間インキュベートした。洗浄した細胞を、推奨されるとおりBACLIGHT(商標)緑色細菌染色により染色した(Invitrogen,Carlsbad,CA)。試料をLSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)上でランさせ、BD FacsDiva(v.6.1.3)およびFlowJo(v.9.2;TreeStar)を使用して分析した。FACSにより結合を示す抗体を、オプソニン食菌殺傷(OPK)アッセイにおける機能的活性試験のためにさらに優先順位を付けた。
【0268】
実施例2
緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進するmAbの評価
本実施例は、緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進する優先順位を付けたヒトIgG1抗体の評価を記載する。
図2Aは、WapR−007および陰性対照抗体R347を除き、全ての抗体が発光緑膿菌(P.aeruginosa)血清型O5株(PAO1.lux)の濃度依存的殺傷を媒介したことを示す。WapR−004およびCam−003は、優れたOPK活性を示した。OPKアッセイは、修正した(DiGiandomenico,A.,et al.,Infect Immun 72,7012−7021(2004))に記載のとおり実施した。手短に述べると、アッセイを、96ウェルプレート中で0.025mlのそれぞれのOPK構成成分を使用して実施した;緑膿菌(P.aeruginosa)株;希釈子ウサギ血清;分化HL−60細胞;およびモノクローナル抗体。一部のOPKアッセイにおいて、記載(Choi,K.H.,et al.,Nat Methods 2,443−448(2005))のとおり構築した発光緑膿菌(P.aeruginosa)株を使用した。発光OPKアッセイは、上記のとおり実施したが、Perkin Elmer ENVISION Multilabelプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を測定した。
【0269】
WapR−004およびCam−003抗体が別の臨床関連O抗原血清型株9882−80.luxに対するOPK活性を媒介する能力を評価した。
図2Bは、WapR−004およびCam−003OPK活性の向上が株9882−80(O11)に及ぶことを示す。
【0270】
Cam−003が臨床関連O抗原血清型からの代表的な非ムコイド株に対しておよび嚢胞性線維症患者に由来したムコイド緑膿菌(P.aeruginosa)株に対してOPK活性を媒介する能力を評価した。Cam−003は、試験された全ての非ムコイド臨床単離物の強力なOPKを媒介した(
図2C)。さらに、Cam−003は、試験された全てのムコイド緑膿菌(P.aeruginosa)単離物の強力な殺傷を媒介した(
図2D)。
【0271】
さらに、本実施例は、緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進するscFv−FcフォーマットにおけるWapR−004(W4)突然変異体の評価を記載する。ある突然変異体Wap−004RAD(W4−RAD)は、部位特異的突然変異導入を介して特異的に作出してVH中のRGDモチーフを除去した。他のW4突然変異体は以下のとおり調製した。ネステッドPCRを記載(Roux,K.H.,PCR Methods Appl 4,S185−194(1995))のとおり実施して回復期緑膿菌(P.aeruginosa)感染患者に由来するscFvライブラリーから分析のためにW4バリアント(体細胞超突然変異に由来)を増幅させた。これは、WapR−004が由来したライブラリーである。W4バリアント断片を、当分野において公知の標準的手順を使用してサブクローニングおよび配列決定した。W4突然変異体軽鎖(LC)をWapR−004重鎖(HC)により組み換えてscFv−FcフォーマットのW4突然変異体を産生した。さらに、WapR−004RAD重鎖(HC)突然変異体をscFv−FcフォーマットのM7およびM8の親LCにより組み換えた。構築物は、当分野において公知の標準的な手順を使用して調製した。
図11(A〜M)は、陰性対照抗体R347を除き、全てのWapR−004(W4)突然変異体が発光緑膿菌(P.aeruginosa)血清型O5株(PAO1.lux)の濃度依存的殺傷を媒介したことを示す。
【0272】
実施例3
血清型非依存性抗緑膿菌(P.aeruginosa)抗体は、Pslエキソ多糖を標的化する
本実施例は、表現型スクリーニングに由来する抗緑膿菌(P.aeruginosa)抗体の標的の同定を記載する。標的分析は、血清型非依存性抗体がタンパク質または炭水化物抗原を標的化したかどうかを試験するように実施した。ELISAにおいて、プロテイナーゼKにより完全に消化されたPAO1全細胞抽出物への結合の損失は観察されず、このことは反応性が表面接近可能な炭水化物残基を標的化したことを示唆する(データ示さず)。アイソジェニック突然変異体は、O抗原、アルギネート、およびLPSコア生合成を担う遺伝子において構築した;wbpL(O抗原欠損);wbpL/algD(O抗原およびアルギネート欠損);rmlC(O抗原欠損およびトランケート外部コア);およびgalU(O抗原欠損およびトランケート内部コア)。緑膿菌(P.aeruginosa)突然変異体は、Schweizer(Schweizer,H.P.,Mol Microbiol 6,1195−1204(1992);Schweizer,H.D.,Biotechniques 15,831−834(1993))により記載されるアレル置換方針に基づき構築した。ベクターは、大腸菌(E.coli)株S17.1から緑膿菌(P.aeruginosa)株PAO1中に動員させ;組換え体を記載(Hoang,T.T.,et al.,Gene 212,77−86(1998))のとおり単離した。遺伝子欠失は、PCRにより確認した。緑膿菌(P.aeruginosa)突然変異体は、野生型遺伝子を保有するpUCP30Tベース構築物により補完した。抗体の反応性は、間接ELISAにより上記緑膿菌(P.aeruginosa)株によりコートしたプレート上で測定した:
図3Aおよび3Jは、wbpLまたはwbpL/algD二重突然変異体へのCam−003結合が影響を受けなかったが、rmlCおよびgalU突然変異体への結合が消失したことを示す。これらの結果はLPSコアへの結合と一致した一方、PAO1から精製されたLPSに対する反応性は観察されなかった。rmlCおよびgalU遺伝子は、近年、Pslエキソ多糖、D−マンノース、L−ラムノース、およびD−グルコースからなる繰り返し五糖ポリマーの生合成に要求されることが示された。pslAがPsl生合成に要求されるため、アイソジェニックpslAノックアウトPAO1ΔpslAへのCam−003結合を試験した(Byrd,M.S.,et al.,Mol Microbiol 73,622−638(2009))。PAO1ΔpslAへのCam−003の結合は、ELISA(
図3B)およびFACS(
図3C)により試験した場合に消失した一方、この突然変異体中のLPS分子は影響を受けなかった(
図3D)。Cam−003の結合は、pslAにより補完されたPAO1ΔwbpL/algD/pslA三重突然変異体においてにおいて回復し(
図3E)、これはCam−003がこの突然変異体とは対照的に補完PAO1ΔpslAに対するオプソニン殺傷を媒介する能力と同様であった(
図3Fおよび3G)。Pelエキソ多糖突然変異体へのCam−003抗体の結合も、影響を受けず、このことはさらに、Pslを本発明者らの抗体標的として確認する(
図3E)。結合アッセイは、残留抗体もPslに結合することを確認した(
図3Hおよび3I)。
【0273】
全ての抗体が同一抗原に結合したことを確認するため、上記のとおりFORTEBIO(登録商標)OCTET(登録商標)384装置を使用してPsl捕捉結合アッセイを実施した。抗原は、PAO1ΔwbpL/algD/pelA(O抗原、アルギネートおよびPelエキソ多糖欠損)から精製されたプロテイナーゼK処理濃縮炭水化物であった。個々の抗体をアミノプロピルシランバイオセンサーに結合させ、次いでブロッキングし、濃縮炭水化物抗原を添加した。洗浄して未結合抗原を除去した後、捕捉抗原への未標識mAbの結合を評価した。全ての結合抗体(Cam−003、Cam−004、Cam−005、WapR−001、WapR−002、WapR−003、WapR−007およびWapR−016)は、対照mAbR347を除き、Cam−003、WapR−001、WapR−002、WapR−003、およびWapR−016のそれぞれと反応した抗原を捕捉し得た(
図3K)。Cam−004、Cam−005およびWapR−007の3つ全ての抗体は、Cam−003、WapR−001、WapR−002、WapR−003、およびWapR−016と強力に反応するために十分なPslを捕捉したにもかかわらず、捕捉されたPslに対する最小の反応性がCam−004、Cam−005およびWapR−007について観察された(
図3K)。これらの結果は、血清型非依存的に緑膿菌(P.aeruginosa)に結合した表現型スクリーニングにより得られた全てのmAbが、Pslエキソ多糖と会合しているエピトープを標的化したことを示唆する。
【0274】
実施例4
抗PslmAbは、培養上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)の付着を遮断する。
本実施例は、抗Psl抗体が上皮細胞との緑膿菌(P.aeruginosa)会合を遮断したことを示す。抗Psl抗体を、不透明96ウェルプレート(Nunc Nunclon Delta)中で成長させたA549細胞(腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞系)のコンフルエント単層に添加した。対数増殖期の発光緑膿菌(P.aeruginosa)PAO1株(PAO1.lux)を10のMOIにおいて添加した。PAO1.luxをA549細胞と37℃において1時間インキュベートした後、A549細胞を洗浄し、次いでLB+0.5%グルコースを添加した。実施例2に記載のOPKアッセイにおいて実施したとおり、37℃における短時間のインキュベーション後に細菌を定量した。A549細胞を有さないウェルからの計測値を使用して非特異的結合について補正した。
図4は、Cam−005およびWapR−007を除き、全ての抗体がA549細胞へのPAO1.luxの会合を用量依存様式で低減させたことを示す。OPKアッセイにおいて最良に機能したmAbのWapR−004およびCam−003(
図2A〜B、および実施例2参照)も、A549肺上皮細胞への緑膿菌(P.aeruginosa)細胞付着の阻害において最も活性であり、陰性対照と比較して最大約80%の低減を提供した。WapR−016は、3番目に活性の抗体であり、WapR−004およびCam−003と同様の阻害活性を示したが、10倍高い抗体濃度において示した。
【0275】
実施例5
インビボ継代緑膿菌(P.aeruginosa)株は、Pslの発現を維持/増加させる
インビボでのPsl発現が維持されるかどうかを試験するため、マウスに緑膿菌(P.aeruginosa)単離物を腹腔内注射し、次いで注射4時間後に腹腔洗浄により細菌を回収した。Pslの存在は、対照抗体およびCam−003を用いてフローサイトメトリーにより分析した。それというのも、抗体結合についての条件がよりストリンジェントであり、Psl発現に陽性または陰性である細胞の定量を可能とするためである。エクスビボ結合のため、細菌接種材料(0.1ml)を、一晩TSAプレートから調製し、BALB/cマウスに腹腔内送達した。チャレンジ4時間後において、細菌を回収し、RBCを溶解させ、超音波処理し、0.1%Tween−20および1%BSAを補給したPBS中で再懸濁させた。実施例1に既に記載したとおり試料を染色し、分析した。
図5は、野生型緑膿菌(P.aeruginosa)株を有する腹腔洗浄後に回収された細菌が、対数増殖期の培養細菌と同等の濃いCam−003染色を示したことを示す(
図5Aおよび5Cを比較)。インビボ継代野生型細菌は、接種材料と比較して染色の向上を示した(
図5Bおよび5Cを比較)。接種材料内で、Pslは株6077について検出されず、株PAO1(O5)および6206(O11−細胞毒性)について最少で検出された。細菌へのCam−003の結合は接種材料に関して増加し、このことは、Psl発現がインビボで維持または増加されることを示す。野生型株6077、PAO1、および6206は、インビボ継代後にPslを発現するが、pslAを欠失する株PAO1(PAO1ΔpslA)は、Cam−003と反応し得ない。これらの結果は、Pslをモノクローナル抗体の標的としてさらに強調する。
【0276】
急性肺炎モデルにおける緑膿菌(P.aeruginosa)株PAO1および6206の表面上でのPsl発現/接近可能性のレベルも評価した。上記のとおり一晩インキュベートされたコンフルエントプレートから調製された細菌をBALB/cマウスに鼻腔内投与した。感染4および24時間後において、細菌を肺から気管支洗浄により回収した。実施例1に既に記載のとおり試料を染色および分析した。濃いCam−003染色が、感染4時間後においてPAO1について観察されたが、この時点において6206については最小であった(
図5D)。しかしながら、感染24時間後においては、株PAO1および6206の両方について、濃いCam−003染色が観察された(
図5E)。
【0277】
ユニークな緑膿菌(P.aeruginosa)血清型(PAO1(O5)(
図5F)、2135(O1)(
図5G)、2531(O1)(
図5H)、2410(O6)(
図5I)、2764(O11)(
図5J)、2757(O11)(
図5K)、33356(O9)(
図5L)、33348(O1)(
図5M)、3039(NT)(
図5N)、3061(NT)(
図5O)、3064(NT)(
図5P)、19660(NT)(
図5Q)、9882−80(O11)(
図5R)、6073(O11)(
図5S)、6077(O11)(
図5T)および6206(O11)(
図5U)への代表株への緑膿菌(P.aeruginosa)特異的抗体(Cam−003、Cam−004およびCam−005)の結合を、概ね上記のとおりフローサイトメトリーにより評価した。
【0278】
実施例6
緑膿菌(P.aeruginosa)急性肺炎モデルにおける抗Pslモノクローナル抗体Cam−003およびWapR−004により処理した動物についての生存率
抗体またはPBSをそれぞれのモデルに感染24時間前に投与した。緑膿菌(P.aeruginosa)急性肺炎、角膜炎、および熱傷感染モデルを上記のとおり修正して実施した(DiGiandomenico,A.,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 104,4624−4629(2007))。急性肺炎モデルにおいて、BALB/cマウス(The Jackson Laboratory)を0.05mlの接種材料中で懸濁させた緑膿菌(P.aeruginosa)株により感染させた。熱傷モデルにおいて、CF−1マウス(Charles River)は、92℃への10秒間の金属焼印加熱により10%の総体表面積火傷を受けた。動物を緑膿菌(P. aeruginosa)株6077により示した用量において皮下感染させた。臓器負荷実験のため、急性肺炎をマウスにおいて誘導し、次いでCFUの決定のために肺、脾臓、および腎臓を感染24時間後に回収した。
【0279】
モノクローナル抗体Cam−003およびWapR−004を、臨床疾患と関連する最も高頻度の血清型を表す緑膿菌(P.aeruginosa)株に対して急性致死肺炎モデルにおいて評価した。
図6Aおよび6Cは、対照と比較して株PAO1および6294により感染させたCam−003処理マウスの有意な濃度依存性生存率を示す。
図6Bおよび6Dは、33356および細胞毒性株6077によるチャレンジからの完全な保護が、Cam−003により45および15mg/kgにおいて行われた一方、80および90%の生存率が5mg/kgにおいて33356および6077についてそれぞれ観察されたことを示す。
図6Eおよび6Fは、株6077(O11)(8×10
5CFU)(
図6E)、または6077(011)(6×10
5CFU)(
図6F)を有する急性肺炎モデルにおけるWapR−004処理マウスにおける有意な濃度依存性生存率を示す。
図6Gは、120時間においてCam−003が株PAO1による感染後100%の生存率を提供したことを示す。生存率の増加は、PAO1急性肺炎試験における陰性対照として使用されたPsl突然変異株PAO1ΔpslAに対して確認されず(
図6G)、このことは、Psl発現欠損株に対するCam−003活性の欠落を確認する。
【0280】
次に、Cam−003およびWapR−004をそれらの肺における緑膿菌(P.aeruginosa)臓器負荷を低減させ、遠位の臓器に拡散する能力について試験し、その後、動物を種々の濃度のWapR−004、Cam−003、または対照抗体によりいくつかの異なる濃度において処理した。Cam−003は、試験された4つ全ての株に対する緑膿菌(P.aeruginosa)肺負荷の低減において有効であった。Cam−003は、高病原性細胞毒性株6077に対して最も有効であり、低用量が高用量と同様に有効であった(
図7D)。Cam−003は、PAO1(
図7A)、6294(
図7C)、および6077(
図7D)により感染させたマウスの脾臓および腎臓への播種の低減における顕著な効果も有した一方、これらの臓器への播種は、33356感染マウスにおいては観察されなかった(
図7B)。
図7Eおよび7Fは、同様に、WapR−004が6294(O6)および6206(O11)による急性肺炎の導入後に臓器負荷を低減させたことを示す。具体的には、WapR−004は、感染マウスにおける脾臓および腎臓への緑膿菌(P.aeruginosa)播種の低減において有効であった。
【0281】
実施例7
緑膿菌(P.aeruginosa)角膜感染モデルにおける抗Pslモノクローナル抗体Cam−003およびWapR−004により処理した動物についての生存率
次に、Cam−003およびWapR−004の効力を、病原体の付着および損傷組織のコロニー化能を強調する緑膿菌(P.aeruginosa)角膜感染モデルにおいて評価した。
図8A〜Dおよび8F〜Gは、Cam−003およびWapR−004を受けたマウスが、陰性対照処理動物に観察されたものよりも眼の総ホモジネートにおいて顕著に少ない病原性および細菌カウント数の低減を有したことを示す。
図8Eは、Cam−003は熱傷モデルにおいて試験した場合でも有効であったことを示し、抗体処理対照と比較して15および5mg/kgにおいて顕著な保護を提供する。
【0282】
実施例8
Cam−003Fc突然変異抗体Cam−003−TMは、縮小したOPKおよびインビボ効力を有するが、抗細胞付着活性を維持する。
二重の作用機序についての潜在性を考慮して、Fcγ受容体との相互作用を低減させるFcドメイン中の突然変異を保有するCam−003Fc突然変異抗体Cam−003−TM(Oganesyan,V.,et al.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 64,700−704(2008))を作出して、保護が抗細胞付着またはOPK活性とより相関性を示すかどうかを同定した。緑膿菌(P.aeruginosa)突然変異体を、Schweizer(Schweizer,H.P.,Mol Microbiol 6,1195−1204(1992);Schweizer,H.D.,Biotechniques 15,831−834(1993))により記載されるアレル置換方針に基づき構築した。ベクターを大腸菌(E.coli)株S17.1から緑膿菌(P.aeruginosa)株PAO1中に動員させ;組換え体を記載(Hoang,T.T.,et al.,Gene 212,77−86(1998))のとおり単離した。遺伝子欠損はPCRにより確認した。緑膿菌(P.aeruginosa)突然変異体は、野生型遺伝子を保有するpUCP30Tベース構築物により補完した。
図9Aは、Cam−003−TMが、Cam−003と比較してOPK活性の4倍の降下を示したが(それぞれ、0.24および0.06のEC
50)、細胞付着アッセイにおいて有効であったことを示す(
図9B)。
図9Cは、Cam−003−TMが肺炎に対してもあまり有効でなかったことを示し、このことは、最適なOPK活性が最適な保護に必要であることを示唆する。OPKおよび細胞付着アッセイは、それぞれ実施例2および4に既に記載のとおり実施した。マウス急性肺炎モデルにおいて試験した場合、Cam−003−TMは、6077の低感染接種材料(2.4×10
5CFU)においてCam−003と効力が類似であった(
図9D)。しかしながら、抗体用量のさらなる力価測定に続くより大きい感染接種材料(1.07×10
6)によるチャレンジは、Cam−003活性がCam−003−TMよりも優れていることを明らかにし、このことは、OPK活性が最適なインビボ保護に顕著に寄与することを示唆する(
図9E)。
【0283】
実施例9
抗Psl抗体についてのエピトープマッピングおよび相対親和性
エピトープマッピングを競合ELISAにより実施し、緑膿菌(P.aeruginosa)株PAO1の一晩培養物の上澄みに由来するPslを用いるOCTET(登録商標)フローシステムを使用して確認した。競合ELISAのため、EZ−Linkスルホ−NHS−ビオチンおよびビオチン化キット(Thermo Scientific)を使用して抗体をビオチン化した。抗原コートプレートを、未標識抗体と同時インキュベートしたEC
50のビオチン化抗体により処理した。HRP−コンジュゲートストレプトアビジン(Thermo Scientific)とインキュベートした後、プレートを上記のとおり発色させた。抗PslmAb間の競合実験は、抗体が少なくとも3つのユニークエピトープを標的化することを決定し、クラス1、2、および3抗体と称した(
図10A)。クラス1および2抗体は、結合について競合しないが、クラス3抗体WapR−016は、クラス1および2抗体の結合を部分的に阻害する。
【0284】
抗体親和性は、一晩PAO1培養物の上澄みに由来するPslを使用してOCTET(登録商標)結合アッセイにより測定した。抗体K
Dは、それぞれの抗体について7つの濃度の結合キネティクスを平均化することにより測定した。親和性計測値は、384傾斜底ウェルプレートを使用するFORTEBIO(登録商標)OCTET(登録商標)384装置により取った。一晩PAO1培養物±pslA遺伝子からの上澄みをPsl資源として使用した。試料をOCTET(登録商標)アミノプロピルシラン(PBS中で水和)センサー上にロードし、ブロッキングし、次いでいくつかの濃度において抗PslmAb結合、およびPBS+1%BSA中への解離を計測した。全ての手順は、記載(Wang,X.,et al.,J Immunol Methods 362,151−160)のとおり実施した。会合および解離生ΔnMデータをGraphPad Prismにより曲線フィッティングした。
図10Aは、上記で特性決定された抗Psl抗体の相対結合親和性を示す。クラス2抗体は、全ての抗Psl抗体のうちで最大の親和性を有した。
図10Aは、細胞付着およびOPKデータ実験のまとめも示す。
図10Bは、Wap−004RAD(W4RAD)突然変異体および実施例1に記載のとおり調製された他のW4突然変異体の相対結合親和性およびOPK EC50値を示す。
【0285】
実施例10
緑膿菌(P.aeruginosa)PAO1細胞へのポリミキシンB(PMB)−mAbコンジュゲートの結合をFACSにより評価した
本実施例において、細菌クリアランスを媒介し得るオプソニンモノクローナル抗体(mAb)にコンジュゲートされたPMBを評価してコンジュゲートがmAbの機能性を改善および/または拡張する一方、さらにPMBの毒性を低減させるかどうかを決定した。インビボで強力なオプソニン食菌殺傷(OPK)活性および保護を媒介する、緑膿菌(P.aeruginosa)Psl表面エキソ多糖を標的化するmAbのCAM−003を、コンジュゲート評価のために選択した。
【0286】
本実施例は、緑膿菌(P.aeruginosa)PAO1細胞への種々のポリミキシンB(PMB)−mAbコンジュゲートの結合を評価する。2段階部位特異的コンジュゲート法(
図12)を使用して、ポリミキシンB(PMB)をFc領域中にエンジニアリングされた単一または二重システインを有するCam−003およびA7(hIgG1対照)mAbバリアントにコンジュゲートした。Cam−003およびA7mAbFcバリアントは、(Dimasi,N.et al.,J Mol Biol.393(3):672−92(2009))に記載のとおり標準的なプロトコルを使用して調製した。ヘテロ二官能性SM(PEG)
12リンカー(Pierce)を最初に、単一リンカーのコンジュゲーションを支持するように決定された条件下で、リンカー中のNHS基を介してPMB中の第1級アミンの1つにコンジュゲートした。ポリミキシンB硫酸塩(Sigma)をPBS pH7.2中で2mg/mlにおいて溶解させ、SM(PEG)
12リンカーと4:1のPMBリンカー比において反応させた。反応は、室温において30分間実施し、50mMのグリシンにより停止させた。PMBへのSM(PEG)
12リンカーコンジュゲーションの効率は、約25%であった。次いで、PMB−PEG
12の粗製調製物を脱保護FcシステインmAbバリアントと反応させ、PEG
12リンカー中のマレアミドを介してコンジュゲートした(例えば、国際公開第2011/005481号パンフレットおよび国際公開第2009/092011号パンフレット参照)。PMB−mAbコンジュゲートは、大規模透析により精製した。コンジュゲートを最初に0.7%CHAPSを有する3.3×PBS pH7.2中で4回緩衝液交換して透析し、次いで1×PBS pH7.2中でさらに4回緩衝液交換して透析した。コンジュゲーション効率および試料中のレベル遊離PMBリンカーは、UPLCおよび質量分析により測定した。
【0287】
CAM−003は、緑膿菌(P.aeruginosa)Psl表面エキソ多糖に特異的であり、複数のインビボモデルにおいて強力なOPK活性および保護を媒介する。
図13Aは、Cam−003およびA7Fc領域突然変異残基を示す。SM(A339C)、DM1(T289C/A339C)、DM2(A339C/S442C)。PMB−mAbバリアントのコンジュゲーション効率は、精製コンジュゲート中の重鎖の質量分析により測定した(例えば、国際公開第2011/005481号パンフレットおよび国際公開第2009/092011号パンフレット参照)。全コンジュゲーション効率は75〜85%であった。構築物の純度は、遊離PMBリンカーに対するコンジュゲートに関して>95%であった。
図13Bは、PMB−Cam−003およびPMB−A7コンジュゲート中のPMBの平均数を示す(二重突然変異体2(DM2)>二重突然変異体1(DM1)>単一突然変異体(SM))。A7コンジュゲートは、Cam−003コンジュゲートと比較してより大きいコンジュゲーション効率を示した。精製調製物中の遊離PMBにより汚染は、無視可能であることが測定された。緑膿菌(P.aeruginosa)PAO1細胞へのPMB−Cam−003およびPMB−A7コンジュゲートの結合は、FACSにより評価した。R347を全ての実験において陰性対照として使用した。試料を実施例1に既に記載のとおり染色および分析した。未コンジュゲートまたはモックコンジュゲートCam−003と比較したCam−003コンジュゲートの結合の有意差は、観察されなかった(
図14A)。A7対照コンジュゲートの結合は、コンジュゲート当たりのPMB分子の数に比例した(
図14B)。この分析は、Cam−003へのPMBのコンジュゲーションが全細胞結合に顕著には影響しないことおよびコンジュゲートPMBがおそらくLPSに結合することにより細胞への直接結合を媒介し得ることを示す。
【0288】
実施例11
緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進するPMB−mAbコンジュゲートの評価
本実施例は、PMB−mAbコンジュゲートの緑膿菌(P.aeruginosa)のOPKを促進する能力を評価する2つの実験系列を記載する。第1の実験(
図15A〜B)において、ウサギ補体の存在下でのヒトHL−60好中球細胞系によるコンジュゲート媒介OPK活性を、実施例2に記載のとおり細菌ルシフェラーゼを発現する緑膿菌(P.aeruginosa)株を使用して評価した。R347をこれらの実験において陰性対照として使用した。CAM−003コンジュゲートは強力なOPK活性を保持したが、それはコンジュゲート当たりのPMBの数に増加に伴い縮小した(SM>DM1>DM2)(
図15A)。CAM−003コンジュゲートは、Psl標的を発現しないΔpslA緑膿菌(P.aeruginosa)株に対するOPK活性を示さず、このことは、mAb媒介結合が殺傷に要求されたことを示す(
図15B)。第2の実験系列において、mAbを欠く対照と比べて2時間のインキュベーション後の発光の低減を使用して殺傷%を測定した。
図18Aは、CAM−003コンジュゲートがOPK活性を保持したが、それは特にDMおよびTM構築物においてコンジュゲート当たりのPMBの数の増加に伴い縮小したことを示す(WT>SM>DM>TM)。CAM−003コンジュゲートは、Psl標的を発現しないPAO!ΔpslA株に対するOPK活性を示さなかった(図示せず)。
図18Bは、A7−PMBコンジュゲートがOPKを媒介しなかったことを示し、このことは、mAb媒介結合が殺傷に要求されたことを示す。
【0289】
実施例12
PMB−mAbコンジュゲートによる緑膿菌(P.aeruginosa)LPSの中和
緑膿菌(P.aeruginosa)O10LPS活性の中和を、PMB−mAbコンジュゲートまたはPMB単独をLPSと1時間プレインキュベートし、次いでネズミRAW264.7マクロファージを刺激し、TNF分泌を定量することにより評価した。LPSの最終濃度は2ng/mlであった。TNFは、FACSベースBD(商標)サイトメトリックビーズアレイ(Cytometric Bead Array)(CBA)法(BD Biosciences)により刺激6時間後に定量した。LPS中和は、LPS最大応答に対するTNF産生の減少により計測した。モックコンジュゲート野生型Cam−003ではなく、PMB−Cam−003コンジュゲートがLPS中和を示した。中和の効率は、コンジュゲート中のPMBの平均数に正比例した(DM2>DM1>SM)(
図16A)。モックコンジュゲート野生型A7ではなく、PMB−A7コンジュゲートがLPS中和を示した(
図16B)。A7コンジュゲートは、CAM−003コンジュゲートよりも良好な中和を示した。A7コンジュゲートは、おそらくそれらの分子により達成されるコンジュゲーション効率がより大きいことに起因してCAM−003コンジュゲートよりも良好な中和を示した。約2つのコンジュゲートPMB分子/mAbが、遊離PMB分子により中和されるLPSの量を中和するために要求される。
【0290】
実施例13
ネズミモデルにおけるCam−003−PMB部位特異的コンジュゲートの評価
Cam−003−PMBコンジュゲートの効力を、2つのネズミモデルのタイプにおいて評価した:1)内毒素血症(LPS)チャレンジモデル、コンジュゲートのLPSをインビボで中和および/または解毒する能力を決定するため;および2)緑膿菌(P.aeruginosa)敗血症モデル、Cam−003−PMBコンジュゲートが、抗体媒介細菌クリアランスに加え、PMB媒介LPS中和および/またはクリアランスを介して抗体単独と比べて細菌チャレンジに対する改善された保護をもたらすかどうかを評価するため。他の緑膿菌(P.aeruginosa)チャレンジモデルを使用してCam−003−PMBコンジュゲートの効力を試験することもできる(以下参照)。
【0291】
A.内毒素血症モデル
PMBは、インビボでLPSに結合し、それを中和し、LPSチャレンジに対する保護を媒介し得ることが十分確立されている(Morrison,DC.et al.J.Immunochemistry 13(10):813−818(1976),Drabick,JJ.et al.,Antimicrob Agents Chemother.42(3):583−588(1998))。内毒素血症モデルにおいて、Cam−003−PMBコンジュゲートは、それらのLPSチャレンジから動物を保護する能力について評価する。グラム陰性細菌、例として、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)から精製されたLPSを使用して確立された最小致死量(LD100)においてマウスをチャレンジする。マウスが比較的LPSに耐性を示す場合、D−ガラクトサミンを同時投与することもできる。それというのも、それはLPSに対するマウスの感受性をほぼヒトの感受性まで大幅に増加させるためである(Galanos,C.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.76(11):5939−5943(1979))。そのようなモデルは、LPS中和分子、例として、抗体およびポリミキシン−タンパク質コンジュゲートの前臨床効力評価に広く使用されている(Bailat,S.et al.,Infect Immun.65(2):811−814 (1997),Birkenmeier,G.et al.,J Pharmacol Exp Ther.318(2):762−771(2006),Drabick,JJ.et al.,Antimicrob Agents Chemother.42(3):583−588(1998))。Cam−003−PMBコンジュゲート、対照コンジュゲートおよび未コンジュゲートCam−003は、治療または防止的に投与することができ、それらのLPSチャレンジから動物を保護する能力を評価することができる。PMBコンジュゲートにより媒介される保護の程度は、血清または血漿中で計測される炎症促進サイトカインおよびケモカイン、例として、TNF、KCおよびIL−6のレベルと相関させることができる。
【0292】
B.緑膿菌(P.aeruginosa)チャレンジモデル
緑膿菌(P.aeruginosa)感染のいくつかのネズミモデルを使用してCam−003−PMBコンジュゲートの保護を媒介する能力を評価することができる。緑膿菌(P.aeruginosa)は、マウスに決定されたLD100用量において腹腔内投与(敗血症モデル)、静脈内投与(菌血症モデル)または鼻腔内投与(肺炎モデル)することができる。これらのモデルは、受動または活性ワクチンの前臨床効力試験に既に使用されている(Frank,DW.et al.,J Infect Dis.186(1):64−73.(2002),Secher,T.et al.,J Antimicrob Chemother.66(5):1100−1109(2011),Miyazaki,S.et al.,J Med Microbiol.43(3):169−175(1995),Dunn,DL.et al.,Surgery 96(2):440−446(1984))。
【0293】
内毒素血症モデルと同様に、マウスの固有のLPS毒性耐性を取り除き、PMBコンジュゲートのインビボ効力に対するLPS中和および/またはクリアランスの寄与を評価することができるようにするため、細菌チャレンジ前にマウスをD−ガラクトサミンにより感作することが必要なこともある。D−ガラクトサミンは、おそらく感染の間に減少したLPSに対する感受性を増加させることによりグラム陰性細菌のLD100を低減させることが実証されている(Bucklin,SE.et al.,J Infect Dis.172(6):1519−27(1995))。
【0294】
Cam−003−PMBコンジュゲート、対照コンジュゲートおよび未コンジュゲートCam−003は、治療または防止的に投与することができる。コンジュゲートPMB部分を介して細菌LPSを中和および/またはクリアランスすることによりCAM−003コンジュゲートのCam−003単独と比べて増加した保護をもたらす能力を、生存率試験において決定することができる。媒介される細菌クリアランスにおけるCam−003−PMBコンジュゲートの効力は、感染後に血清および臓器、例として、脾臓、腎臓および肺中の緑膿菌(P.aeruginosa)細菌を定量することにより評価することもできる。血清または血漿LPSレベルを定量してCam−003−PMBコンジュゲートによる細菌クリアランスおよびLPSクリアランスおよび/または中和の程度を評価し、それを未コンジュゲートCam−003および対照抗体−PMBコンジュゲートと比較することもできる。
【0295】
C.内毒素血症モデルデータ
特に、C57Bl/6マウス(1群当たり10匹)にmAbまたはPMB−mAbコンジュゲートを腹腔内投与して6時間後に緑膿菌(P.aeruginosa)PAO10LPS(Sigma)およびD−ガラクトサミンによりチャレンジした。PMB対照は、腹腔内投与して2時間後に0.2mg/kgにおいてチャレンジし、典型的には80〜100%の保護を提供する。対照マウスに未コンジュゲートCAM−003を投与し、全て18時間以内に死亡した。
図19AおよびBは、45mg/kgにおいてCAM−003およびA7のDMおよびTMコンジュゲートが90〜100%の保護を提供した一方、SMコンジュゲートは保護的でなかったことを示す。
【0296】
TMコンジュゲートは、45、15および5mg/kgにおいて投与した。
図20AおよびBに示されるとおり、保護活性の損失は、5mg/kgにおいて80%の保護を保持したA7−TM−PMBよりもCAM−003−TM−PMBについて急激であった。これらの差は、インビトロで既に見られたとおり、mAbのユニーク構造特徴がコンジュゲートPMBのLPS中和活性に影響し得ることを示唆する。
【0297】
D.敗血症モデルデータ
C57Bl/6マウス(1群当たり10匹)に、mAbまたはPMB−mAbコンジュゲートを腹腔内投与(10、1および0.1mg/kg)して6時間後にLD
80−100用量の緑膿菌(P.aeruginosa)株6294(4E7CFU)により腹腔内チャレンジした。2つの試験からのデータをこの分析において組み合わせた。生存率を72時間にわたりモニタリングした。2つの試験の組み合わせたデータを
図21A〜Cに示す:A7または緩衝液を投与したほとんどの対照マウスが24時間までに死亡した。未コンジュゲートCAM−003は、50〜90%の保護を示した。保護活性は、用量と逆相関することが明らかになった。CAM−003−PMBコンジュゲートは、10mg/kgの高用量において未コンジュゲートmAbよりも良好な保護を付与し、このことは、感染の間に減少したLPSの中和が生存に寄与したことを示唆する。A7−DM−PMB対照コンジュゲートは、10mg/kgにおいて50%の保護活性を示し、このことは、LPS中和が生存利益を提供し得ることを示唆する。逆に、コンジュゲートは、0.1mg/kgの低用量においてCAM−003よりも保護的でなく、保護活性はコンジュゲートのインビトロOPK活性と相関した(WT>SM>DM>TM)。まとめると、結果は、コンジュゲートPMBがLPSの中和を媒介することによりオプソニン抗体に追加保護活性を付与し、その細菌クリアランス機能を補完し得ることを示す。
【0298】
エンジニアリングFcシステイン残基へのPMBの高いコンジュゲート効率は、SM−PEG12ヘテロ二官能性リンカーを使用して達成された。緑膿菌(P.aeruginosa)Pslエキソ多糖を標的化する強力なオプソニンおよび保護mAbのCAM−003の一連の部位特異的PMBコンジュゲートをインビトロおよびインビボで評価した。CAM−003−PMBコンジュゲートは、インビトロOPK活性を保持した。しかしながら、OPK活性は、mAb当たりのPMBの平均数の増加により影響を受けた。DMおよびTM PMB−mAbコンジュゲートは、マウス緑膿菌(P.aeruginosa)内毒素血症モデルにおける保護を付与し、このことは、PMBのLPS中和機能がmAbに対して付与されたことを実証する。CAM−003−PMBコンジュゲートは、緑膿菌(P.aeruginosa)敗血症モデルにおいて高用量(10mg/kg)において未コンジュゲートCAM−003mAbよりも大きい保護活性、および低用量(0.1mg/kg)において低減された活性を示した。これらのデータは、コンジュゲートPMBがオプソニンCAM−003mAbにより媒介される細菌クリアランスを補完し、LPS中和による保護を改善し得ることを示唆する。敗血症モデルにおけるCAM−003−PMBコンジュゲートによる保護活性の改善は、低用量において損失し、コンジュゲートPMBのレベルが低すぎてLPSを中和することができず、主要な保護方式はmAb媒介細菌クリアランスである可能性が高い。低用量におけるCAM−003−PMBコンジュゲートの保護活性の損失は、PMBコンジュゲーションの結果としてのインビトロOPK活性の低減と一致する。これらの試験は、オプソニンmAb上のコンジュゲートPMBがLPS中和活性を付与し、全身性緑膿菌(P.aeruginosa)感染モデルにおける保護活性の増加をもたらし得ることを示す。OPK活性への悪影響を低減させるためのコンジュゲーション部位の最適化は、未コンジュゲートオプソニンmAbと比べてPMBコンジュゲートの保護活性をさらに改善し得る。
【0299】
本開示は、記載された具体的な実施形態により範囲を限定するものではなく、それは本開示の個々の態様の単一の説明として意図されるものであり、機能的に均等であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内である。実際には、本明細書に示され、記載されたものに加えた本開示の種々の改変形態が、上記詳細な説明および添付の図面から当業者に明らかである。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内であるものとする。
【0300】
本明細書に挙げられた全ての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が個別具体的に参照により取り込まれることを示されるかのごとく同程度に参照により本明細書に組み込まれる。