特許第6058679号(P6058679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6058679ペーストに含まれている可溶性固体装填物抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058679
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】ペーストに含まれている可溶性固体装填物抽出方法
(51)【国際特許分類】
   C06B 21/00 20060101AFI20161226BHJP
   C06B 29/02 20060101ALI20161226BHJP
   C06B 31/02 20060101ALI20161226BHJP
   C06B 25/00 20060101ALI20161226BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C06B21/00
   C06B29/02
   C06B31/02
   C06B25/00
   B01D11/04 A
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-532448(P2014-532448)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-528896(P2014-528896A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】FR2012052133
(87)【国際公開番号】WO2013045804
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】1158531
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512162432
【氏名又は名称】エラクレス
【氏名又は名称原語表記】HERAKLES
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】トージア,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジロー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ゴドゥレ,マリー
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0112329(US,A1)
【文献】 特開平05−287403(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0070690(US,A1)
【文献】 米国特許第05346512(US,A)
【文献】 特開2007−169147(JP,A)
【文献】 特開昭62−140601(JP,A)
【文献】 特開2009−214000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B 21/00− 49/00
C06C 5/00− 15/00
C06D 3/00− 7/00
C06F 1/00− 5/04
B01D 11/00− 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体装填物(C)を含むエネルギー性ペースト(5)を処理して該固体装填物(C)の少なくとも一部を抽出する方法であって、連続する以下の工程、
該固体装填物(C)の少なくとも一部を該固体装填物(C)の少なくとも一部のための液体溶媒(3)に少なくとも部分的に溶解させるよう混合機(8)内で該ペースト(5)を該溶媒(3)と混合する工程、
該混合後、一方で該固体装填物(C)の少なくとも一部の少なくとも一画分を該溶媒(3)に溶解した溶液(3’)及び他方で該ペースト(5)の固体残留物(5’)を含む二相系(15)を回収する工程、及び
該溶液(3’)を該ペースト(5)の該固体残留物(5’)から分離する工程、
を含むことを特徴とする抽出方法。
【請求項2】
固体装填物(C)を含む該エネルギー性ペースト(5)が該混合を行う為の条件下で50〜2000Pa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該混合が静的混合機(8)内で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該エネルギー性ペースト(5)及び該溶媒(3)を圧力下で該静的混合機(8)に導入することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該エネルギー性ペースト(5)及び該溶媒(3)を別々に又は一緒に、接触させてから、該混合機(8)へ導入することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
周辺温度又は少なくとも部分的に周辺温度より高い温度で実施することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該溶液(3’)及び該固体残留物(5’)を沈降により分離することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該溶液(3’)を該固体残留物(5’)からオーバーフローによって回収する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該固体残留物(5’)の少なくとも一部を、該エネルギー性ペースト(5)の処理から独立して、あるいは、該固体残留物(5’)の少なくとも一部を再循環させた後、該エネルギー性ペースト(5)の処理と同時に、同様に処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該固体残留物(5’)及び該エネルギー性装填物(C)の一部の少なくとも一画分を含む溶液(3’)を得る為に第1溶媒(3)で実施され、得られた該固体残留物(5’)を該装填物(C)の別の一部の少なくとも一画分を抽出する第2溶媒で同様に処理する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該エネルギー性ペースト(5)が、
過塩素酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩又は硝酸塩、及びその混合物の装填物、及び/又は
爆発性装填物
を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該爆発性装填物が、CL20、オクトーゲン、ヘキソーゲン、トーリット、ペントライト及びその混合物、から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該溶媒(3)が、水又は有機溶媒であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該有機溶媒が、酢酸エチル及びアセトン、から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該固体装填物(C)が、過塩素酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩又は硝酸塩、及びその混合物の装填物、から選択され、該溶媒(3)が水である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該固体装填物(C)が、過塩素酸アンモニウムからなり、該溶媒(3)が水である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
装填物を含むエネルギー性物質の製造方法であって、固体装填物を含む中間体エネルギー性ペーストを生成する工程、及び、該中間体エネルギー性ペーストを該物質に転換する工程を含み、転換されなかった該中間体エネルギー性ペーストの少なくとも一部(5)が請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法により処理されることを特徴とする製造方法。
【請求項18】
該中間体エネルギー性ペーストが該固体装填物に加えて液体プレポリマー及び少なくとも1種の架橋剤を含み、かつ該転換には該液体プレポリマーの架橋が含まれることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題はペーストに含まれている固体装填物を抽出する方法である。また、本発明は装填物を含む物質(固体装填物を含む)の製造方法に関するものであり、これには中間体ペーストを生成する工程及び前記中間体ペーストを前記物質に転換する工程が含まれる。前記抽出方法は、転換されなかった中間体ペーストの少なくとも一部を処理する前記製造方法の過程で適時に実施される。
【背景技術】
【0002】
本発明の方法は特に工業規模での実施に適している。また、エネルギー物質のペースト処理に好適である。ペースト処理については以下に詳しく説明するが、当業者が以下を読めば、その適用分野が前記エネルギー物質のペーストに限定されるものでは決してないことが容易に分かる。
【0003】
本発明に関連するエネルギー物質は、特に宇宙及び軍事用推進剤の用途に特化したものであり、車両安全用ガス発生器(エアーバッグ等)及び爆発性軍需品や民生用爆薬に含まれている。
【0004】
第1の群に属するエネルギー物質には、結合剤含有推進剤及び結合剤含有爆薬が含まれる。結合剤は装填物を被覆する高分子マトリックスを構成する。
結合剤は液体プレポリマー(必要に応じてエネルギー物質とすることができる)から調製される。このプレポリマーは反応性化学末端基(例えばヒドロキシル基)を有し、この末端基は、同様に液体である少なくとも一種の架橋剤と反応する。一般的には以下に示す手順が行われる。液体プレポリマーとエネルギー物質の種々の成分(固体装填物、添加剤)を混合機で混合してペーストを生成する。架橋剤は、本態様の方法(バッチ、連続又は半連続プロセス(以下を参照のこと))に応じて、エネルギー物質の他の成分と同時に導入するか、エネルギー物質の他の成分の混練中または混練後に導入する。混練して得たペーストは、実施される方法のプロセスに応じて、流延成形又は押出成形される。次に、装填物含有のペーストを火工材料がそのまま残る温度で硬化(架橋)させる。これにより、架橋プレポリマーで全ての成分、特に装填物を被覆し、エネルギー物質を所望の形状に形成できる。
【0005】
a)第1の態様による方法は「バッチ」(非連続)プロセスである。一定量のペーストを生成し、鋳造成形して一定数の製品を得る(第1工程では、様々な成分を計量してから、適切な順に導入し、混合してペーストを形成する)。
【0006】
b)欧州特許第1216977号及び欧州特許第1741690号に記載された、第2の態様による方法は、二軸スクリュー混合押出機でエネルギー物質の成分を(連続)混練する工程を本質的に含む連続プロセスである。形成されたペーストが混合機から出るところで、棒状体に押出成形(小型の製品の場合)、又は流延成形される。
【0007】
c)欧州特許第1333016号に記載された、第3の態様による方法は半連続「二成分」プロセスである。2種の混合物を流延する。第1の混合物はペースト状で、最終製品の約80重量%〜約99重量%を占め、実質的にプレポリマー、固体装填物の全て、及び添加剤の一部を含む。第2の混合物は、液状で、最終製品の約20重量%〜約1重量%を占め、架橋剤の全てと残りの添加剤を含む。この2種の混合物を静的混合機で混合し、混合機から出てくるペーストを1つ(又はそれ以上)の型に流延する。欧州特許第1790626号に記載の好ましい変形例によれば、少量の液体架橋剤は第1の混合物に含まれる。
【0008】
この種のエネルギー物質の製造方法の態様がどのようなものでも、その成分は、中間体(架橋前の液体プレポリマー、結合剤の前駆体)では常にペースト状である。
第2の群に属する本発明に関連するエネルギー物質には、ペースト状民生用爆薬の物質が含まれ、これらはスラリー又はゲル状である。これらは通常、硝酸アンモニウム、アルミニウム、及びトーリットやペントライトなどの爆薬を基にした組成物(ペースト)であり、ゲル化剤や粘性ゴムを含む。
【0009】
エネルギー物質、特に上記二つの群の一方からなるエネルギー物質については、製造中、形成ペーストの一部(中間体ペースト(所望の最終物に転換する為のもの)、又は所望の最終物に相当するペースト)は使用せずに廃棄物として回収せざるを得ず、具体的には:
混合機を空にし、洗浄する間、及び
連続又は半連続プロセスを開始又は停止する過渡段階で回収される。
【0010】
また、製造したペーストが適合せず廃棄となり、廃棄物として回収されることもある。
従って、例えば、推進剤ペーストが残りの工程で使用されない(転換されない)量は、推進剤の工業生産面ではかなりの量となる。数百キロものペーストがそれぞれの工業生産サイクルで廃棄物として回収されることもあり得る。
【0011】
この種の廃棄物として回収されるペーストに含まれる(固体)装填物の抽出が求められる理由は:
前記装填物には毒性があり、その処理をする為;
又は、装填物が爆発性の場合には、火工技術で不活性にする為、のいずれかである。
【0012】
(固体)装填物の全部又は一部を抽出すると、これら装填物が必要な成分の場合には、一定の質量含有率で、ペーストの火工品としての性質上、残留ペーストを不活性にすることもできる。
【0013】
最も一般的なエネルギー物質は、酸化性装填物(固体装填物)として、過塩素酸カリウムや過塩素酸アンモニウムなどの過塩素酸塩類、及び/又は硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの硝酸塩類、及び/又は、装薬として、ヘキソーゲンやオクトーゲンなどのニトラミンを含む。
【発明の概要】
【0014】
現在までに、本出願人の知る限り、このようなペーストに含まれる固体装填物を抽出する方法は工業規模では開発されていない。確かに、ソックスレー抽出器で行われる溶媒抽出法があり、多少なりとも改善されてきたが、この方法は少量のペーストしか処理できず、また溶媒の加熱や、更には煮沸が必要となり、これは自明であるが、反応しやすい装填物を含むエネルギー物質の処理に適応させるのは難しい。加えて、これらの方法では連続してペーストを処理することができない。
【0015】
架橋プラスチック製の結合剤を含む固体推進剤で、前述のような種類の固体酸化性装填物を含有する火工品の廃棄物処理は既に広く記載され、実施されている。
前記処理は:
固体推進剤を粉砕作業で1立方cm大の破片にまで細かくし、
固体装填物(過塩素酸アンモニウム及び/又は硝酸塩類)を水中の浸軟操作で抽出し、最後に、
固相と液相を分離した後、過塩素酸塩溶液及び/又は硝酸塩溶液で生物系処理を行うものである。
【0016】
ペーストに含まれている固体装填物を抽出するのに、前記ペーストが架橋性結合剤を含む場合は、当然、予め前記ペーストを架橋して固体生成物を得て、次いでその固体生成物に上記処理を施すことになる。これは明らかに、中間体貯蔵のインフラに関しては特に、あまり経済的ではないように思える。
【0017】
当然のごとく、本出願人は上記処理を直接ペースト、特に架橋可能で未架橋のペーストに応用することも思いついた。それでも、前記ペーストでの浸軟工程を、固体推進剤の場合のように想起できないのは、ペーストと水が単純な浸漬及び浸軟では混合できないからである。
【0018】
よって、本出願人が考案したのが固体装填物を含むエネルギー物質のペーストを処理する方法で、これは効果的で、迅速かつ比較的安価に行うことができ、またそのペーストから(可溶性)固体装填物を(その固体装填物用の溶媒で)抽出することができる。この方法は、抽出される装填物を含むものならばどのようなペーストにも応用可能であることは明らかである。
【0019】
従って、本発明はペースト、特にエネルギー物質のペーストに含まれている固体装填物抽出方法に関するものである。本発明の方法は、特に、(固体)装填物として、過塩素酸塩類及び/又は硝酸塩類及び/又は装薬を含有するエネルギー物質のペーストに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の方法を実施するのに好適な装置の態様の一変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、特に固体装填物を含むペーストを処理してその固体装填物の少なくとも一部を抽出する方法に関するものである。対象の装填物は一種類であってもよく、又は種々の固体装填物の混合物でもよい。本発明の処理は、数種類の固体装填物がある場合、その固体装填物を全て(一緒に)抽出、(少なくとも一種類の固体装填物を)選択して抽出、又は連続で数回選択抽出するために用いることができる。抽出する固体装填物の種類(複数可)に関係なく、さらに想定されるのは、状況によるが、必ずしも全抽出が目的ではなく、逆に、目的とする抽出を行うには1種の抽出を複数回連続して行う必要があるということである。しかし、本課題は全般的に最大量の固体装填物を単一の抽出工程によって抽出することである。
【0022】
本発明の処理方法は、固体装填物を含むペーストを処理して該固体装填物の少なくとも一部を抽出する方法であって、連続する以下の工程を含む、
該固体装填物の少なくとも一部を該固体装填物の少なくとも一部のための液体溶媒に少なくとも部分的に溶解させるよう該ペーストを該溶媒と混合する工程;
該混合後、一方で該固体装填物の少なくとも一部の少なくとも一画分を該溶媒に溶解した溶液及び他方で該ペーストの固体残留物を含む二相系を回収する工程;及び
該溶液を該ペーストの該残留物から分離する工程。
【0023】
本発明の処理方法は連続式であり、工業規模での実施に特に好適であるため、液体溶媒を用いる溶媒抽出法からなる。液体溶媒は、ペーストに含まれる(当該)固体装填物を溶解するのに好適である。溶媒(抽出する装填物用の溶媒)は単一溶媒又は混合物(複数溶媒の混合物、単一溶媒と少なくとも一つの他の化合物の混合物、等)である。当然ながら、抽出する固体装填物(溶媒に溶解させる固体装填物)の性質に合わせて選択する。
【0024】
抽出する固体装填物と液体溶媒の組合せが数多くあることは、当業者には分かっている。
処理するペーストが単一種の装填物(例えば、過塩素酸アンモニウム)を含む場合、この単一種の装填物用の溶媒(例えば、水)を用いて、混合中に、この単一種の装填物を少なくとも部分的に溶解させる。この単一種の装填物を(必要に応じて)完全に抽出するには、得られた固体残留物の少なくとも一部にこのプロセスを(少なくとも1回)繰り返すことができる。第1の変形例によれば、得られた固体残留物にはこのように同一のプロセス(ペーストと溶媒を供給した第1の混合機に直列に取り付けた第2の混合機内で前記残留物と前記溶媒を混合するプロセス)を(少なくとも部分的に)施すことができ、これにより本発明で処理可能な別の固体残留物が生成される。このように、本発明のn回連続抽出が行われる。別の変形例によれば、固体残留物の少なくとも一部は、(ペーストと溶剤を供給した混合機へ)再循環させることができる。
【0025】
処理するペーストが数種類の装填物を含み、数種類の装填物に共通の溶媒があり、装填物の全てを(一緒に)抽出するのが好ましい場合は、この溶媒を用いて、混合中に(数種類の)存在する装填物を少なくとも部分的に溶解させる。また、この場合(数種類の装填物とその装填物すべてに共通の溶媒がある場合)、抽出を最適化する為、数回の連続抽出(1回目に生成される(固体)残留物から更に抽出、等)を行うことが好ましい。同様に、別の変形例によれば、得られた固体残留物の少なくとも一部は、(ペーストと溶剤を供給した混合機へ)再循環させることができる。
【0026】
処理するペーストが数種類の装填物を含み、選択抽出が望ましく、かつ、そのような選択抽出用の溶媒がある場合には、その選択溶媒を用いて、混合中に、装填物の少なくとも一部を少なくとも部分的に溶解させる。想定できるのは、選択抽出を連続して(直列に取り付けた複数の混合機で)選択溶媒を用いて行い(各回の選択抽出は、必要であれば、幾つかの工程を含み得る(上記参照))、連続して様々な種類の装填物を溶解させることである。このように、本発明の方法は、第1固体残留物と、装填物の一部の少なくとも一画分を含む溶液を得る為に第1溶媒で実施することができ、また、得られた第1固体残留物を、装填物の別の一部の少なくとも一画分を抽出する第2溶媒で同様に処理する工程を含む。
【0027】
従って、本発明の方法によって処理したペースト(=得られた(固体)残留物)は上記の通り再処理できる。通常、液相から分離・回収されたペースト残留物の少なくとも一部は、出発ペーストの固体装填物の少なくとも一部の少なくとも実質的な一画分がまだ含まれているならば、第1の処理から独立して、又は第1の処理の流れの中で、本発明の方法で再処理できる。
【0028】
従って、本発明の方法は上記のような第1の処理を含み、加えて、第1の処理の最後に得た残留物の少なくとも一部を同様に処理する第2の処理を含んでおり、この第2の処理は、第1の処理から独立して、あるいは残留物の少なくとも一部を再循環させた後に、つまり、第1の処理と同時に行なわれる。このように、本発明の(少なくとも)2回の連続処理で、単一種の装填物を完全に抽出、又は数種の装填物を一緒に抽出することができる。出発ペーストに第1の処理をし、その残留物に独立して第2の処理を行う、あるいは出発ペーストに第1の処理をし、出発ペースト(未処理)又は再循環させた残留物の混合物に第2の処理を行う。
【0029】
同様に、少なくとも2回の連続抽出を異なる溶媒で行うことで、様々な種類の装填物を選択抽出できる。
本発明の方法の第1工程を実施する的確な変形例(主要工程は本明細書で後述する)がいかなるものでも、第1工程の終わりで、一方では固体装填物の少なくとも一部の少なくとも一画分を溶媒中に溶解した溶液を、他方ではペースト(固体)残留物を回収し、この全体が二相(液体/固体)系を構成する。次に、この二相系の構成要素は、通常は(単純な)沈降又は遠心分離、好ましくは(単純な)沈降によって分離される。
【0030】
次いで、(例えばオーバーフローによって固相から分離して)得られた溶液は、それを精製又は利用可能な任意の方法で処理できる。
本発明により(必要ならば、処理を反復して)処理したペースト(固体)残留物もまた回収してから、最も好適な手段で処理できる。残留ペーストが不活性、つまり既に火工特性がない場合は、出発ペーストの装填物の全部または一部を抽出した後、引き続き何ら特段の予防措置なしに従来の方法で操作及び処理することができる。
【0031】
本発明の方法の第1工程の間、特徴的な点として、ペーストと溶媒の混合はこのように、溶媒にペーストの固体装填物を少なくとも部分的に(いかなる溶解の限界も当業者には知られている)溶解するよう行われる。溶媒の性質と混合物の特性を最適化すればするほど、装填物の溶解度は向上する。
【0032】
当然、溶媒の性質は、通常は抽出する固体装填物(の一部)の性質に応じて最適化される。溶媒は特に、水(過塩素酸塩類及び/又は硝酸塩類の抽出の場合)又は酢酸エチルやアセトン等の有機溶媒(ニトラミンの抽出の場合)で(本質的に)構成される。装填物/溶媒の組合せを以下に記載するが、限定を意図する暗示は全くない。
【0033】
混合物の特性は、本質的に処理ペーストの粘度及び行う混合の形態に左右される。
ここで述べるペーストが特に装填物を多く含む推進剤である場合、比較的高い粘度をもつことが当業者には分かっている。しかし、この粘度は加熱により低減できることが容易に想定できる。ペーストは実際、溶媒との混合前及び/又は混合中に加熱することができる。熱い溶媒を使用することもできる。しかし、ここで強調したいのは、このような任意の加熱が従来の溶媒蒸発法で必要とされる加熱には決して相当しないということである。本発明の方法の第1工程における溶媒は液体である。本発明の方法(つまり、混合を行うための条件(特に温度条件)下)で処理した装填物を含むペーストは、通常50〜2000Pa・sの粘度(ブルックフィールド粘度計で測定)を有する。
【0034】
装填物を含むペースト及び溶媒の混合は静的混合機で行うのが好都合である。そのような混合機で混合を行うには、装填物を含むペースト及び溶媒は通常、圧力下(双方の導入時の圧力は同一)で混合機へ導入されるが、これはペーストが高い粘度を有する場合に特に有効である。従って、ペースト及び溶媒の混合は、ペーストと溶媒を(同一の)圧力で供給する静的混合機で行うのが非常に好都合である。「試薬」を圧力下で導入すると、混合機へ連続的に、かつ完全均一に供給できる。ペーストの粘度(これはペーストを圧送する際に問題となる)を考慮した上で、ペーストへの過度の機械的応力を避ける為には、特に火工品ペーストの場合、溶媒及び火工品ペーストを静的混合機に導入する際の圧力は、通常15×10Pa(15バール)以下に保たれる。
【0035】
ペースト及び溶媒は予備撹拌後、別々に又は一緒に、混合機、好ましくは静的混合機へ導入することができる。
このように、一変形例によれば、ペースト及び溶媒は混合機へ別々に導入される。この変形例によれば、混合機の注入口で均質な注入分布を得るために、溶媒とペーストを混合機の注入口の様々な動径方向から導入することが好ましい。
【0036】
別の変形例によれば、ペースト及び溶媒は、通常は簡略に、例えば、混合機へ開口する導管内で循環させることで予備撹拌される。次いで、予備撹拌されたペーストと溶媒は混合機へ導入される。
【0037】
本発明の処理方法は、周囲温度(20〜25℃)で、好ましくは、少なくとも部分的に周囲温度(20〜25℃)より高い温度で(つまり、加熱して)行うことができ、ペーストの粘度を低減させることによって、ペーストの循環(上記参照)又は(及び)ペーストと溶媒の混合(上記参照)、又はペーストと溶媒の予備撹拌と混合をも容易にする。このように、溶媒又は(及び)ペーストは、混合される前に又は(及び)その混合中に加熱することができる。
【0038】
プロセスの終了時に、溶液とペースト残留物を分離する。これらは好ましくは沈降により分離する。沈殿槽は沈降に好適な温度パラメータによって加熱又は冷却することができる。沈降後、溶液はペースト残留物の上に浮き上がり、例えばオーバーフローにより回収することができる。
【0039】
本発明の方法は可溶性固体装填物を含むエネルギー物質のペースト処理全般に好適であり、この装填物には過塩素酸アンモニウム及び/又は過塩素酸塩類(例えば、過塩素酸カリウム)及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩類(例えば、硝酸ナトリウム)などがある。この種の可溶性固体装填物を含むエネルギー物質は一般的に宇宙及び軍事用推進剤(プラスチック結合剤/過塩素酸アンモニウム/アルミニウム系推進剤)への応用、又はエアーバッグ用ガス発生器に用いられる。この種の可溶性固体装填物に対して本発明の方法を実施するのに最適な溶媒は水で、これは可溶性固体装填物が水に高い溶解性を有するからである。この種のペーストを本発明により処理した際に生じる塩水(溶液)は、フランス特許第2788055号及び欧州特許第2285745号に記載された方法の硝化/脱窒及び過塩素酸イオン還元によって生物学的に精製できる。
【0040】
例えばCL20、オクトーゲン又はヘキソーゲンなどの爆発性可溶性固体装填物を含有するエネルギー物質のペーストもまた本発明の方法によって処理できる。最も効果的な溶媒、つまり装填物が高い溶解性を有する溶媒を選択するのが好ましい。上記の装填物には、酢酸エチル又はアセトンを用いるのが好ましい。
【0041】
前にも述べたように、通常、本発明の方法は特にエネルギー性のペースト処理に好適であるが、その適用分野はこの種のペースト処理に限定されるものではない。
本発明の方法は特に以下の固体装填物を含むエネルギー性のペースト処理に最適である:
過塩素酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩又は硝酸塩、及びその混合物の装填物;及び/又は
CL20、オクトーゲン、ヘキソーゲン、トーリット、ペントライト及びその混合物などの爆発性装填物。
【0042】
本発明の方法は、通常、溶媒として水又は有機溶媒を用いて行われるが、これらに限定はされない。この有機溶媒で好適なのは酢酸エチル又はアセトンからなるものである。
上記の本発明の方法を実施するのに好適な装置の情報を以下に示す。
【0043】
好ましい変形例によると、この装置は(少なくとも)静的混合機を含む。第1の態様によると、静的混合機の注入口へ開口する2つの導管のうち、第1の導管は装填物を含むペーストを、また第2の導管は溶媒を静的混合機へ導入する。このペーストと溶媒は、導入前、別々の容器に貯蔵される。これらは導管へ、次いで静的混合機へポンプ又はピストンを用いて連続注入される。溶媒を混合機の注入口へ運ぶ導管の端部には、例えば散水ノズル型又は星型に分岐したディスペンサーを備えるのが好ましく、ペーストを運ぶ導管の端部は静的混合機の注入口のディスペンサーの周辺にペーストを導入するよう配置する。第2の態様によると、導入前に別々の貯留槽に貯蔵されたペーストと溶媒はポンプ又はピストンにより第1の導管及び第2の導管へそれぞれ注入され、この両方が、静的混合機の注入口に接続された第3の導管へ流れ込む。ペーストと溶媒はこのように第3の導管で接触する。好ましくは、第2の導管(溶媒循環用)の端部は第3の導管との連結箇所に、例えば散水ノズル型又は星型のディスペンサーを備える。次いで、第1の導管の端部を第3の導管の一端に、ペーストがディスペンサーの周辺に注入されるよう配置する。
【0044】
必要であれば、ペーストの粘度を低減させ、混合機での混合を最適化する為に、ペースト及び/又は溶媒は熱いうちに混合機へ導入する。従って、容器及び/又はポンプ及び/又は導管は適切な加熱手段を有する。同様の理由で、静的混合機には伝熱流体を循環させるコイルやジャケットなどの加熱手段を備えることができる。
【0045】
タンクを静的混合機の出口に配置し、混合機から出てくる混合物を回収する。このタンクは混合物の沈降に好適な温度パラメータによる加熱又は冷却手段で温度調整することができる。
【0046】
静的混合機を含む装置の入口において、装填物を含むペースト及び溶媒の流量は、これらを休みなく混合機へ供給できる程度の流量であり、圧力計で制御される。圧力計は上記の流量をつくるポンプやピストンをサーボ制御する任意の手段を備えてもよい。
【0047】
また本発明は、装填物を含む物質(マトリックス状の固体装填物を含む)の製造方法に関するものであって、これには固体装填物を含む中間体ペーストを生成する工程及び該中間体ペーストを該物質に転換する工程が含まれる。該方法によれば、転換されなかった中間体ペーストの少なくとも一部が上記のペースト処理法により処理される。この未転換中間体ペーストは該製造方法で生じた廃棄物(廃棄物そのもの又は廃棄された物質(上記参照))を含む、又は通常その様なもので構成される。
【0048】
一変形例によれば、中間体ペーストは固体装填物に加えて液体プレポリマー及び少なくとも1種の架橋剤を含むので、転換には液体プレポリマーの架橋が含まれる。このような場合として、結合剤含有推進剤及び結合剤含有爆薬の製造がある。しかし、この変形例は他の場合、実際には、結合剤を含むペーストを架橋する如何なる場合でも実施できる。
【0049】
添付の図1は本発明の方法を実施するのに好適な装置の態様の一変形例を示す。
この図を参照すると、装置1は、一方では溶媒3を受ける容器2及びペースト5を受ける容器4が含まれ、このペースト5には固体装填物Cが含まれる。この固体装填物Cの構成要素を×で示す。導管6及び7で容器2及び4をそれぞれ静的混合機8の入口へ連結する。ポンプ9及び10で導管6及び7へ溶媒3及びペースト5をそれぞれ圧力注入する。圧力計11及び12により導管6及び7への注入圧力を制御することができ、必要に応じてポンプ9及び10の流量を調整する。静的混合機8の入口で導管6の端部にディスペンサー13を備える。静的混合機8の入口で導管7の端部をペースト5がディスペンサー13の周辺に分布するよう配置する。回収タンク14を静的混合機8の出口に設置する。このタンクで二相系15を回収する。沈降後、この二相系の二つの相を分離する。ペースト5の固体残留物(装填物(C)の未溶解画分を含む)を5’に示し、固体装填物Cの溶解した(抽出した)画分を含む溶媒を3’に示す。
【0050】
図1に示す装置1の機械構成要素は伝熱流体が循環する加熱コイル又はジャケットによって加熱することができる。
図1に示す装置(但し、ディスペンサーは含まない)で本発明の方法を以下の条件で実施した:
ペーストの組成:68質量%の過塩素酸アンモニウム、14質量%の炭化水素系高分子(ポリブタジエンヒドロキシテレケリック(PBHT))及び添加剤、18%のアルミニウム;
静的混合機の温度:50℃;この温度でのペーストの粘度:1200Pa・s;
ペーストの流量:1kg/h(このうち過塩素酸アンモニウムは680g/h);
水の流量(水=溶媒):10L/h;
静的混合機内の圧力:3×10Pa(3バール)。
【0051】
実施された本発明の方法の第1工程(静的混合機内の混合)終了時に回収された二相系の沈降後、60g/Lより高い濃度に溶解した過塩素酸アンモニウムを含む塩水及び5質量%未満の過塩素酸アンモニウム(ペースト残留物が非火工品となるのに十分な程度の低い含有量)を含むペースト残留物を回収する。
図1