【実施例】
【0030】
図1は、10GHz乃至30THzの周波数のTHz又はサブミリ波の波若しくは放射(前述の語は以下では任意に使用している)の偏光状態を測定する測定デバイスを示し、前述の波は以下ではTHzと呼ぶ。
【0031】
測定デバイス1は、ソース端子21、ドレイン端子22、及びゲート端子23を備える少なくとも1つの電界効果トランジスタ2(FETと呼ぶ)を備える。前述の端子21、22、及び23は、1つ又は複数の外部電気回路に対するFET2の電気的接続を可能にする。
【0032】
10GHz超30THz未満の周波数の入射THz波を受信する双方向アンテナ3をデバイス1内に設ける。アンテナは、入射波の2つの偏光成分を分離し、一成分をソース側のトランジスタ・チャネルと結合し、別の成分をドレイン側のチャネルと結合することを意図している。アンテナ3は、ソース端子21、ドレイン端子22、及びゲート端子23に接続される。アンテナ3は、ソース端子21に接続された第1のアンテナ部分31と、ドレイン端子22に接続された第2のアンテナ部分32と、ゲート端子23に接続された第3の双方向アンテナ部分33とを備える。アンテナ3はトランジスタFET2外に設ける。アンテナ3はトランジスタ2の端子21、22、23とは別個のものである。
【0033】
第1のアンテナ部分31及び第3の双方向アンテナ部分33は、波の第1の偏光成分を検出するよう構成され、第1の所定の方向Xに対して同一線上にある。入射波の前述の第1の偏光成分は、第1の方向Xにおける第1の成分の検出のために、第1のAC検出電圧Uをトランジスタ2においてソース端子21とゲート端子23との間で生じさせる。
【0034】
第2のアンテナ部分32及び第3の双方向アンテナ部分33は、波の第2の偏光成分を検出するよう構成され、第2の所定の方向Xに対して同一線上にある。波の前述の第2の偏光成分は、第2の方向Yにおける第2の成分の検出のために、第2のAC検出電圧Udをトランジスタ2においてドレイン端子22とゲート端子23との間で生じさせる。
【0035】
第1の方向Xは、第2の方向Yと平行でなく、上記第2の方向Yと同一でなく、例えば、前述の第2の方向Yと交差する。
【0036】
ソース端子21及びドレイン端子22は、ソース端子21とドレイン端子22との間に存在している電気検出信号ΔUを測定する回路5に接続される。
【0037】
トランジスタ2は、トランジスタ2内の第1のAC検出電圧Usと第2のAC検出電圧Udとの間の干渉による、波の楕円偏光状態の検出のために、DC検出電圧ΔUをソース端子21とドレイン端子22との間の電気検出信号ΔUとして生成するよう構成される。回路5は、ソース端子21とドレイン端子22との間で測定される電圧ΔUを記録する記録回路である。
【0038】
回路5は、ソース端子21とドレイン端子22との間の検出信号ΔUを測定するために設ける。DC電圧ΔUは波の楕円偏光状態に関する情報を含む。このため、ソース端子21とドレイン端子22との間の検出電気信号ΔUは、DC検出電圧(ΔU)であり、この一部は、トランジスタ2内の第1のAC検出電圧Usと第2のAC検出電圧Udとの間の干渉による、波の楕円偏光状態によって定められる。
【0039】
楕円偏光は、別々の偏光軸を有する2つの直線成分の重ね合わせとして説明される。
【0040】
本発明によれば、電界効果トランジスタ2は、THz放射の円偏光又は楕円偏光の度合いを測定するために使用することが可能である。
【0041】
FETの感度は特に高く(5kV/W)であり、その雑音等価電力は10
−10W/Hz
0.5程度である。
【0042】
アンテナ3の実施例を以下に説明する。
【0043】
第1のアンテナ部分31は第1のアンテナ・アーム41aを備える。
【0044】
第3の双方向アンテナ部分33は第3のアンテナ・アーム41bを備える。
【0045】
第1のアンテナ・アーム41a及び第3のアンテナ・アーム41bは第1の所定の方向Xに向けられ、第1のアンテナ・アーム41aは、第1の方向Xに対して同一線上の、反射波の第1の偏光成分の受信のために、第3のアンテナ・アーム41bに対向している。
【0046】
第2のアンテナ部分32は第2のアンテナ・アーム42aを備える。
【0047】
第3の双方向アンテナ部分33は第4のアンテナ・アーム42bを備える。
【0048】
第2のアンテナ・アーム42a及び第4のアンテナ・アーム42bは第2の所定の方向Yに向けられ、第2のアンテナ・アーム42aは、反射波の第2の偏光成分の受信のために、第4のアンテナ・アーム42bに対向し、第2の方向Yに対して同一線上にある。
【0049】
第1のアンテナ部分31及び第3の双方向アンテナ部分33は、アンテナのアーム41a及び41bを通って進む方向に対応する好適な第1の放射偏光軸を画定するよう構成される。アンテナ・アーム41a、41bは例えば、同じ第1の所定の方向Xに向けられる。好適な第1の放射偏光軸は例えば、第1の方向Xである。
【0050】
第2のアンテナ部分32及び第3の双方向アンテナ部分33は、アンテナのアーム42a及び42bを通って進む方向に対応する好適な第2の放射偏光軸を画定するよう構成される。2つのアンテナ・アーム42a、42bは例えば、同じ第2の所定の方向Yに向けられる。好適な第2の放射偏光軸は例えば、第2の方向Yである。
【0051】
アーム41a、41b、42a、42bは例えば、金属化される。
【0052】
例えば、第1の方向X及び第2の方向Yは垂直である。
【0053】
実施例では、第1のアーム41aは第1の方向Xに対して対称である。
【0054】
実施例では、第2のアーム41bは第1の方向Xに対して対称である。
【0055】
実施例では、第3のアーム42aは第2の方向Yに対して対称である。
【0056】
実施例では、第4のアーム42bは第2の方向Yに対して対称である。
【0057】
実施例では、第1のアーム41a及び/又は第2のアーム41b及び/又は第3のアーム42a及び/又は第4のアーム42bは三角形状であり、例えば、41a及び41bの場合、方向Xに対する対称性により、42a及び42bの場合、方向Yに対する対称性により、二等辺三角形である。
【0058】
実施例では、第1のアーム41a及び/又は第2のアーム41b及び/又は第3のアーム42a及び/又は第4のアーム42bはそれぞれ、平面状である。
【0059】
図1に示す実施例では、アーム41a及び41bは第1の方向Xに対して対称であり、アーム42a、42bは第2の方向Yに対して対称であり、アーム41a、41b、42a、42bはそれぞれ、三角形状及び平面状であり、例えば、同一平面内で二等辺三角形である。
【0060】
アンテナ・アーム41a、41b、42a、42bは例えば、方向X又はYを中心とした扇形部分を占める。
【0061】
アンテナ・アーム41a、41bはそれぞれ、例えば0°乃至180°、特に20°乃至40°の総開口を有する扇形部分を占める。
【0062】
アンテナのサイズは、入射波の波長に適合させており、部分31、32、33毎に300μm乃至3mm程度のものである。
【0063】
例えば、
図1では、三角形状アーム41a、41bは、方向Xに500μmの長さを有する垂直二等分線を有し、三角形状アーム42a、42bは、方向Yに500μmの長さを有する垂直二等分線を有し、アーム41a、41bはそれぞれ、30°に等しいアンテナ総開口を有する扇形部分を占め、アンテナ・アーム42a、42bはそれぞれ、30°に等しい総開口を有する扇形部分を占める。
【0064】
第3のアンテナ部分33の双方向性により、入射波の第1の偏光成分を第1のアンテナ部分及び第2のアンテナ部分が受信することが可能になり、第1の偏光成分と別の、入射波の他方の第2の偏光部分を第2のアンテナ部分及び第3のアンテナ部分が受信することが可能になる。このために、アンテナの第3の部分は、一アーム、又は、ストランド若しくは別のやり方で互いに接続された、いくつかのアームを備え得る。
【0065】
図面では、GはFFT2のゲートを表し、SはFET2のソースを表し、DはFET2のドレインを表し、前述の電界トランジスタ2は、知られているように、ソースSとドレインDとの間のチャネルをゲートG下に備える。
【0066】
例証された実施例では、限定でない実施例として、第3の双方向アンテナ部分3は、ゲートに対するアーム41bの接続用の第3のストランド331、及びゲート端子23に対するアーム42bの接続用の第4のストランド332を備える。第3のストランド331は例えば、第1の方向Xに向けられる。第4のストランド332は例えば、第2の方向Yに向けられる。ストランド331及び332は例えば、互いに接続され、更に、接続分岐34により、ゲート端子23にも接続される。
【0067】
限定でない図示した実施例では、ストランド331はアーム41bに沿った方向に向けられる。図示した実施例では、第2のストランドはアーム42bに沿った方向に向けられる。
【0068】
第1のアンテナ・アーム41aからソース端子21への接続用の第1の接続ストランド311を設ける。
【0069】
第2のアンテナ・アーム42aからドレイン端子22への接続用の第2の接続ストランド321を設ける。
【0070】
限定でない図示した実施例では、第3のストランド331は第4のストランド332に対して垂直である。
【0071】
アンテナ3は2つの部分(すなわち、ソース部分及びドレイン部分)に分けることが可能である。偏光軸X及びYは例えば、互いに垂直であり、したがって、楕円偏光又は円偏光した放射の潜在的な検出を可能にする。この場合、入射放射の偏光の成分は、ソース側の電子プラズマ、及びドレイン側の他方の成分を励起する。ゲートが十分短い場合、ドレイン側及びソース側のプラズマの励起のゾーンがチャネル内で重なる。この結果は、一定のドレイン・ソース電圧ΔUとなり、その一部は、2つの励起間の干渉によるものである。前述の干渉の振幅は、波の偏光が円形になるにつれて増大する。直線偏光の場合、干渉による電圧の振幅はゼロに等しい。
【0072】
ゲートが十分短くない場合、プラズマ励起は、干渉することなく平滑化され、一定のドレイン・ソース電圧ΔUは光の楕円率に関する情報を含んでいない。
【0073】
実施例では、トランジスタFET2は、例えば、ゲートの長さLgがチャネルの長さ(ソースからドレインまでの長さ)に等しいMOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)型のもの、又はゲートの長さLgがチャネルの長さ(ソースからドレインまでの長さ)未満であるHEMT型(高電子移動度トランジスタ)のものであり得る。
【0074】
本発明の実施例によれば、トランジスタ2は、トランジスタ2のチャネル内の第2のAC電圧Ud及び第1のAC電圧Usの特徴的な減衰距離Lの2倍以下の、ソースSからドレインDへ向かう方向で採寸したゲートGの長さLgを有するよう構成される。
【0075】
Lg ≦2Lである。
【0076】
この実施例は
図2Bに示す。
【0077】
本発明の実施例によれば、トランジスタ2は、
【0078】
【数2】
に等しい特徴的な減衰距離Lの2倍以下の、ソースSからドレインDへ向かう方向で採寸したゲートGの長さLgを有するよう構成される。
【0079】
ここで、ωは波のパルセーション(周波数)であり、μはトランジスタ2のチャネル内の電子の移動度であり、Uは閾値における電圧差であり、U
gs>U
tの場合、U=U
t−U
gsであり、U
gs≦U
tの場合、U
t=ηkT/eであり、ここで、U
tはトランジスタ2の閾値電圧であり、U
gsはゲート端子とソース端子との間に印加されるDCバイアス電圧であり、ηは理想係数であり、Tは温度であり、kはボルツマン定数である。1THzの入射周波数、300 cm2/V.sの移動度μ、及び閾値100mVにおける電圧差Uの場合、特徴的な減衰距離Lは21.8nmである。ゲート長Lgはしたがって、43.6nm以下でなければならない。
【0080】
300GHzの周波数、及び同じ他の電圧差U及び移動度μの値の場合、特徴的な減衰距離Lは39.8nmである。ゲート長Lgはしたがって、79.6nm以下でなければならない。
【0081】
300GHzの周波数、2000 cm2/V.sの電子移動度、及び100 mVの電圧差Uの場合、減衰距離Lは102.8 nmである。ゲート長はしたがって、205.6 nm以下でなければならない。
【0082】
例えば、MOSFETのトランジスタ2の場合、チャネルの長さは、ドレインからソースまでの長さと同様に100nmである。
【0083】
図1によるデバイスは放射の円偏光又は楕円偏光の検出を可能にする。トランジスタ2のチャネルの長さは、減衰されられる前に、ドレイン側の電子ガスの擾乱がソース側の擾乱と混合するほど十分短い。X及びYは、ソース側の励起及びドレイン側の励起それぞれを可能にするアンテナの2つの部分の偏光軸である。
【0084】
図2A及び
図2Bでは、ゲートG、及びゲートG下に配置されたチャネルの長さを、ドレインDとソースSとの間の長軸x’に沿って示す。
図2Aでは、ゲート長(L
g)は長く(L
g>2L)、Lはプラズマ波の減衰距離である。
図2Bでは、ゲート長は短い(2L>L
g)。
【0085】
図2Aは、チャネルが、減衰距離の2倍よりも長い場合を表す。電子ガスの2つの擾乱は、チャネルの中央において重なり合っておらず、よって、2つの信号の混合は存在せず、トランジスタはよって、楕円偏光を検出することが可能でない。直線偏光のみを検出することが可能である。例えば、(説明を単純にするために)偏光軸が方向Xと一致した場合、AC電圧Usがソース端子とゲート端子との間で生成されるに過ぎず、ドレイン端子とゲート端子との間のAC電圧Udはゼロに等しい。DU
linearXと呼ばれる検出信号DUはソース端子とゲート端子との間のDC電圧によって定められる。偏光軸が方向Yと一致した場合、AC電圧Udがドレイン端子とゲート端子との間で生成されるに過ぎず、ソース端子とゲート端子との間のAC電圧Usはゼロに等しい。検出信号ΔU(すなわち、DU
linearY)はDU
linearXと符号が逆であり、それにより、アンテナ及びトランジスタも直線偏光状態に対する応答性を有するデバイスとなる。
【0086】
図2Bは、チャネルが減衰距離の2倍以下である場合に対応する。すなわち、ドレイン側及びソース側の2つの擾乱はチャネルの中央に到着した際に完全に減衰しておらず、混合し、よって、楕円偏光の検出が可能になる。ΔU
circularと呼ばれる検出信号ΔUは、励起の重なり合いゾーンのサイズによって影響を受ける。前述のゾーンにおいて生成されるDC電圧の一部の(負又は正の)符号は放射の円偏光状態(右円形又は左円形)によって定められる。
【0087】
本発明による測定デバイスを使用する可能性の1つは、
図3による実験デバイスである。
図3は、光の偏光状態を測定するためのデバイスの実験的かつ任意的な実施例を示し、本発明による測定デバイスの用途に限定されるものでない。
【0088】
前述の任意的な実施例によれば、
少なくとも1つのブレードLAMであって、ブレードは、入射波の周波数に対して4分の1の波長のブレードであり、ブレードは、回転のアジマス軸AXを中心として回転デバイスROTによって回転させられ、ブレードは、アンテナ3に送信するために前述の入射波によって横断させられるブレード、
時間の関数として回転の軸AXを中心としてブレードLAMの回転の角度ANGを求めるためのデバイス、及び
電気検出信号ΔUの関数として、かつ、回転の角度ANGの関数としての楕円偏光状態の差分測定のための、データ処理デバイスCOMPに接続される回路
も提供される。
【0089】
当然、本発明による測定デバイスは前述の特徴を有しないことがあり得、前述の特徴はそれぞれ、任意的である。
【0090】
したがって、他の実施例では、入射波THzはアンテナ3に直接到達することが可能である。
【0091】
図3に示すデバイスの任意的な実施例は、位相遅延ブレードLAM(λ/4ブレード)の回転の角度の関数としての、トランジスタのチャネルの端子におけるDC電圧の測定に基づく。ソースとドレインとの間の前述の測定電圧は、ソース側及びドレイン側に発生している電子ガスの2つの擾乱間の混合によって生じる入射波の楕円率に関する情報を含む(
図4参照)。前述の図では、未知の偏光のTHz放射が、アジムス回転している4分の1波長ブレードを通って進み、上述した楕円偏光テラヘルツの検出器1を照射する。アジマス角度の関数としての、THz波の楕円率における変化によって生じるソース・ドレイン信号の強度の変動が、コンピュータCOMPによって記録され、処理される。λ/4(ここで、λはTHz入射波の波長である)ブレードの回転のアジマス角度の関数として記録された信号は、THz入射波の偏光軸の再構成及び楕円率の差分測定を可能にする。
【0092】
時間の関数として、回転の軸を中心としたブレードの回転の角度(ANG)を求めるデバイスは例えば、回転ドライブ・デバイスROTであり得る。データ処理デバイスは、例えば、第1の方向Xにおける第1の偏光成分E
x及び第2の方向Yにおける第2の偏光成分E
yの数値E
x及びE
yを求めることを可能にする。
【0093】
検出器が測定を行うことが可能な速度により、潜在的に、偏光時間測定デバイスに使用することが可能になる。数ピコ秒程度の超高速変動は、実際には、上述した楕円偏光検出器によって監視することが可能である。前述の構成では、測定速度を制限する要因はしたがって、4分の1波長ブレードの回転の速度である。
【0094】
直線偏光又は円偏光のTHz検出の機構は以下に
図2A及び
図2Bを参照して説明する。単純化されたやり方では、対向端に近付くにつれて指数関数的に減少する、チャネルの一方端における電子ガスの励起は、チャネルの端子におけるDC電圧ΔUにつがなる。電圧が減少する特性距離は、パラメータLによって定められる。チャネルが長い(L
g>2Lである)場合、一方端におけるプラズマの励起は他方端に到達せず、DC電圧ΔUはゲート下でゼロに降下する。チャネルが短い(2L>L
gである)場合、プラズマは、一方端と他方端との間で減衰されられることにより、ゲート下で領域全体において励起される。直線偏光放射の検出の場合、電子の密度の波の励起はチャネルの一方端のみで生じ、検出信号ΔU
linearは、ゲートの両端のDC電圧の差によって定められる(
図2A)。十分長いゲートの場合、前述の差(及び、よって、検出量)は最大である。これは1/x’でゲートの長さによって減少する(
図2B)。円偏光又は楕円偏光を有する放射の検出の場合、電子ガスの励起はチャネルの両側で生じ、検出信号ΔU
circularは、励起の重なり合いゾーンのサイズ、及びチャネルの端子において生じるDC電圧の値によって定められる(
図2B)。
【0095】
THz放射の偏光のタイプを解析するために、短ゲートのトランジスタ(2L>L
g)を使用することが好ましい。実際に、ゲートが長い(L
g>>2L、
図2A、
図2C)場合、直線偏光の検出のみが可能である(2A)。短ゲートの場合(
図2B)、信号の変動は、楕円及び/又は直線のものに対する円形構成の偏光の変動のみにより得る。更に、励起の重なり合いゾーンにおいて形成される信号の符号の変化は、偏光ベクトルの回転の方向の変化に対応する。
【0096】
トランジスタの非線形特性は、入射放射によって生じる交流電流のDC電圧への整流をもたらす。光応答は、入射放射電力に比例する、ソースとドレインとの間に生じるDC電圧(又は電流)を含む。対象のトランジスタのチャネルの長さは、入射波の波長よりもずっと短い。チャネルは更に、金属ゲートによって完全に覆われている。
【0097】
直線偏光放射の検出の場合、ソースとドレインとの間の非対称性が、ドレイン・ソース光起電力を誘起するために必要である。円偏光放射又は楕円偏光放射の検出の場合、入射放射の偏光状態を表すドレイン・ソース光起電力を発生させるために、検出される偏光成分毎にソースとドレインとの間の非対称性を有することが必要である。このため、アンテナ全体がソースとドレインとの間で対称であり得る。本発明によれば、前述の非対称性は、ゲート・ドレイン・アンテナ42b、32及びソース・ゲート・アンテナ31、41bに起因する(
図1参照)。
【0098】
THz検出器としてのFETの動作速度は放射の周波数ω及びゲート長Lgに依存する。重要なパラメータはωτであり、ここで、τは電子のモーメントの緩和時間である。前述のパラメータの値は、プラズマ波が、入射放射により、チャネル内で励起される(ωτ>1)か、又は励起されない(ωτ<1)かを定める。最も頻度の高いケースは、プラズマ発振が強く減衰させられるか、又は電荷密度の擾乱に変換され、トランジスタFETが広帯域検出器として機能するような、ωτ<1の場合と考えられる。
【0099】
更に、一実施例によれば、ゲート長Lgは、特性減衰距離Lの2倍以下でなければならない。ソースにおいて誘起される交流電流は次いで、L程度の距離で、ゲート下のチャネルに伝播し得る。ゲート長Lgが減衰距離Lよりもずっと大きい場合、光起電力が、ソース接触に非常に近い領域内で発生し、したがって、長さLgに依存しない。しかし、Lg<Lの場合、光起電力はL/Lgとして減少する。
【0100】
ソース(x=0)における境界条件は以下の通りである。すなわち、
(U+z
sI)
x=0=U
scos(ωt) (2)
であり、ここで、U及びIはそれぞれ、ソース・ゲートAC電圧及びチャネル交流電流であり、z
sは、ソース・ゲート接触に対する実効アンテナ31、41bのインピーダンスであり、U
sは、開回路状態におけるアンテナによって供給されるAC電圧である。
【0101】
数量Usは、
U
s2=βα
sJ (3)
の関係により、着信放射の強度J、及びアンテナの感度βに関連付けられる。
【0102】
感度βα
sは周波数に依存する。
【0103】
同様な限度に関する条件を、係数sをdで置換することにより、ドレイン側(x=L
g)で課さなければならない。関連するパラメータは、アンテナのインピーダンスz
sとトランジスタのインピーダンスZとの間の比である。トランジスタのインピーダンスZはチャネルの長さ、ゲートのバイアス電圧、及び放射の周波数に依存する。z
s<<Zという限定の場合、境界条件は(U)
x=0=U
scos(ωt)に縮減され、逆限定方向z
s>>Zでは、(z
sI)
x=0=U
scos(wt)と表し得る。第1の限定の場合は、ソース接触とゲート接触との間でのみ放射が印加されるという仮定で、[8,19,20]として上述しており、U
0=U
g−U
th>0の場合、光応答は、式(4)
【0104】
【数3】
で表す。
【0105】
U
0≦0である場合については、非特許文献15で検討されている。トランジスタの光応答が閾値付近で最大値を有しているということが明らかとなっている。閾値f(U
g)を下回る領域内のゲート・バイアスの関数としての光応答の依存性は、トランジスタのインピーダンス及びゲート漏れDC電流に依存する。よって、式(3)を使用して、DC光起電力は、
【0106】
【数4】
として書き直し得る。
【0107】
ここで、関数f(U
g)は非特許文献15に開示されている。正のU
0の場合、f=1/4U
0である。
【0108】
標準的な手法に対して、本発明では、放射はトランジスタの両側から供給される。すなわち、トランジスタのチャネルとの放射結合は、2つの実効アンテナによってモデル化され、その一方は、ソースとゲートとの間の第1のAC電圧U
sを発生させ、その他方は、ドレインとゲートとの間の第2のAC電圧U
dを発生させる(
図1参照)。光応答δU
s及びδU
dに対する前述の入力の寄与分は、逆の符号を有し、よって、それぞれの振幅及び位相が等しい場合、結果として生じる光応答はゼロである。
【0109】
一般的なケースでは、光起電力応答は、
【0110】
【数5】
で表される。ここで、
【0111】
【数6】
である。
【0112】
第1のAC電圧Usは、ドレインに向けてチャネル内に伝播する、チャネルのソース側の電荷の密度の第1の擾乱を発生させる。
【0113】
第2のAC電圧Udは、ソースに向けてチャネル内に伝播する、チャネルのドレイン側の電荷の密度の第2の擾乱を発生させる。
【0114】
トランジスタは、ソース端子21とドレイン端子22との間のAC電圧Us及びUdそれぞれによって発生する第1の擾乱及び第2の擾乱の間の、波の楕円偏光状態に対する応答性を有する干渉を発生させるよう構成される。前述の干渉は、波の楕円偏光状態に対する応答性を有する、ソースとドレインとの間の直流電気信号の一部に起因する。
【0115】
前述の式では、β
s及びβ
dはソース・ゲート・アンテナ部分31、41b及びドレイン・ゲート・アンテナ部分32、42bの感度であり、関数fs(U
g)及びfd(U
g)は、チャネルのソース側及びドレイン側から発生するゲートのバイアス電圧の関数としての光応答を表す。
【0116】
以下の実験結果が示すように、
(i)アンテナの効率は、入射放射の周波数に大きく依存し、
(ii)2つの実効アンテナは、放射の偏光に対する応答性を有し、その一方は特に、Xによる偏光E
xに対する応答性を有し、他方はYによる偏光E
yに対する応答性を有する。楕円偏光の場合、ソース及びドレインに対する交流信号は、非ゼロ角度θ(円偏光放射θ=±π/2)の場合の、例えば
図4で例示の目的で示すような、第1の方向Xにおける第1の偏光成分Exと、第2の方向Yにおける第2の偏光成分Eyとの間の角度θ)だけ、移相させられる。結果として生じる光起電力δU
sdには、
【0117】
【数7】
に比例する更なる干渉項が付与される。前述の項は、(θの符号である)入射放射の楕円率に対する応答性を有し、βsがほぼβdに等しい場合、影響力が強い。
【0118】
概括的には、
【0119】
【数8】
である。
【0120】
干渉による波の楕円偏光状態の検出のためのDC検出電圧ΔUは、
【0121】
【数9】
である。
【0122】
概括的には、U
sは100mV未満である。概括的には、U
dは100mV未満である。
【0123】
数値例では、例えば、tanθ=4及びsinθ=0.97であるθ≒76°の場合、
y軸上の入射電力:
【0124】
【数10】
であり、
U
aは、ソースとゲートとの間でアンテナ上で誘起される電圧の振幅であり、
Z
sは、ソース・ゲート接触の実効アンテナのインピーダンスであり、
【0125】
【数11】
であり、かつ、
【0126】
【数12】
であり、
ηは理想係数であり、k
Bはボルツマン定数であり、Tは温度であり、eは電荷である。
【0127】
【数13】
Z=10kΩはチャネルのインピーダンスであり、S
antはアンテナの表面であり、S
beamは
アンテナの表面であり、アンテナの平面内のビームの表面である。
【0128】
この場合、
【0129】
【数14】
であり、U
a2=10
−1V
2であり、
U
a=316mVである。
【0130】
したがって、
【0131】
【数15】
である。
【0132】
よって、X軸上の入射電力は、
【0133】
【数16】
である。ここで、U
bは、ソースとゲートとの間でアンテナ上で誘起される電圧の振幅であり、よって、
【0134】
【数17】
であり、
【0135】
【数18】
となる。
【0136】
前述の例における、干渉による波の楕円偏光状態の検出のためのDC検出電圧ΔUは、
【0137】
【数19】
である。
【0138】
これまで、THz偏光分析法は、単に円偏光検出器及び楕円偏光検出器が欠如しているによって開発されていなかった。前述の欠如は、本発明によって解消することが可能である。
【0139】
潜在的には、THz偏光分析法は、種々のTHz放射源や、種々の材料及びそれらの特性の同定についての極めて重要な研究の領域である。THz偏光分析法の潜在的な応用分野と、光学領域の潜在的な応用分野との関係を例にとることが可能である。実際に、偏光光と材料との相互作用により、多くの適用分野における発展が可能になっている。これは、主に、固体の固有の構造の解明の他、(偏光顕微鏡検査法による)生体の解明、量子飛躍、及び遠隔物体の天体物理学測定に基づく。一般に、ツールとしての光の偏光は、材料の弾性拘束、光異方性材料の構造、(機械的、音響的、電気的、光子的)異方性擾乱の分野における気体、液体及び固体の挙動等などの物質の種々の異方性の研究に利用される。
【0140】
THz波の偏光に関する情報は更に、THz領域内の既存の応用分野の発展に更なるはずみをつける。このため、製品品質管理のために、THz偏光分析法は、隙間及び空洞の形態における材料の透明性に影響を及ぼす不具合のみならず、透過光の偏光のみに影響を及ぼす、応力及び内部電圧による不具合をも解明することが可能である。生体物質を含む有機物質の非破壊化学分析に関しては、偏光測定は、単純な分光法研究から抽出することが不可能な追加情報を提供することが可能である。円偏光の使用は電気通信の分野においても効果的である。直線偏光放射の場合、受信器を入射波の偏光に応じて配置するものとする。更に、円偏光の場合、受信器の更なる調整は不要である。
【0141】
よって、THz偏光分析法の進展により、放射の電力及び周波数の規定に基づいたTHz分析の既存の方法を補完することが可能である。その結果、THz領域内で研究された物体に対する情報全てを得ることが可能である。
【0142】
応用分野には、品質管理の分野における画像解析のためのTHz偏光分析法があり得る。考えられる別の応用分野には、実験室の装置の特徴付け(例えば、THzレーザ)、又は材料の特徴付け(例えば、バイオ製品)があり得る。
【0143】
周囲温度で特定のTHz放射の偏光を測定するための新たな装置を提案している。前述の装置は、2Dアンテナ、テラヘルツ放射を整流する電界効果トランジスタ、読み出し回路、及び保護ケースを備える。本発明が新しいことは、THz放射の偏光を求めるためにFETを使用すること、及び円偏光THz放射の検出のために前述のFETを使用することを可能にするアンテナの設計に依存している。本出願では、例えば、直角を成しており、3つのトランジスタ接触(ソース、ドレイン、及びゲート)に接続された3つの部分を備えたアンテナについて提案している。前述の幾何構造により、THz放射の直交偏光成分が検出される。前述の2つの成分は、チャネルのそれぞれの側(ソース及びドレイン)でFETトランジスタを励起する。トランジスタ・チャネルが比較的短い場合、励起は混合し、ソースとドレインとの間のDC電圧を有する信号をもたらす。デバイスは、測定された信号の符号の変化により、ビームの偏光ヘリシティの(右円形から左円形への)変化を求める。
【0144】
図5では、アンテナは、トランジスタのゲート及びソースに接続された2つのローブのみを有する。アンテナは、X軸に沿った直線偏光放射に対する応答性を有する。前述の放射は、トランジスタのチャネル内でゲートとソースとの間で電子密度波を励起する。ゲート下の前述のチャネルの励起により、検出信号であるドレイン・ソースDC電圧ΔUが発生する。X軸に対して垂直な偏光成分があっても、電子ガスの励起には寄与せず、よって、トランジスタによって検出することが可能でない。
【0145】
図5では、電界効果トランジスタのTHzアンテナは、直線偏光放射のみの検出を可能にする。Xはアンテナの偏光の軸であり、Dはドレインであり、Sはソースであり、Gはゲートであり、ΔUは検出信号である。
【0146】
本発明は、THz放射の円偏光又は楕円偏光を直接、測定する。実際には、デバイスの端子において測定された電圧の値は、対象の放射の偏光軸及び角度を直接求めることを可能にする。本発明の特徴は、その高速性、その低内部雑音、その使いやすさ、その非常に低い生産コスト、及びそのアレイへの一体化の可能性(マルチ画素測定)、及びその小寸法にある。デバイスは周囲温度で動作し、その低消費電力によっても特徴付けられる。