(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<1.第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す側断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0016】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0017】
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
【0018】
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
【0019】
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
【0020】
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
【0021】
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N
2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O
2)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
【0022】
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。
図2に示すように、ガス導入バッファ83は、
図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
【0023】
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。
図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
【0024】
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
【0025】
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が
図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と
図5に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
【0026】
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
【0027】
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
【0028】
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
【0029】
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
【0030】
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
【0031】
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。
図4に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
【0032】
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
【0033】
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
【0034】
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
【0035】
次に、ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
【0036】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。第1実施形態においては、複数のフラッシュランプFLのそれぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0037】
図6は、キセノンフラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサー93に接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサー93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧に応じた電荷が蓄積されている。また、コンデンサー93とガラス管92の電極とを接続する回路にはコイル94が設けられている。
【0038】
キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサー93に電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガースイッチSWをON状態にしてトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサー93に蓄えられた電気がガラス管92内に瞬時に流れ、そのときのジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。つまり、キセノンフラッシュランプFLの発光開始タイミングはトリガースイッチSWをOFF状態からON状態に切り換えるタイミングで定まる。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサー93に蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。なお、トリガースイッチSWとしては例えばサイリスター等の電気的なスイッチ素子を用いる。
【0039】
ところで、第1実施形態においては、30本のフラッシュランプFLが設けられており、それぞれのフラッシュランプFLについて
図6の如き駆動回路が1つ設けられている。キセノンフラッシュランプFLの発光時間はコンデンサー93のキャパシタンス(容量)およびコイル94のインダクタンスによって定まる。フラッシュランプFLから出射されるフラッシュ光のパルスの周期、すなわち閃光照射1回あたりのフラッシュランプFLの発光時間は、コンデンサー93の容量とコイル94のインダクタンスとの積の1/2乗に比例することが知られており、コンデンサー93の容量が大きくなるほど、またコイル94のインダクタンスが大きくなるほど、フラッシュランプFLの発光時間は長くなる。
【0040】
第1実施形態においては、コイル94のインダクタンスが異なる2種類のランプ駆動回路を使用しており、30本のフラッシュランプFLのそれぞれは2種のうちのいずれかの駆動回路に接続されている。
図7は、第1実施形態における複数のフラッシュランプFLの配置構成を示す図である。
図7に示すように、30本のフラッシュランプFLのそれぞれはショートパルス回路SPまたはロングパルス回路LPのいずれかに接続されている。ショートパルス回路SPは、
図6の構成において容量750μFのコンデンサー93およびインダクタンス260μHのコイル94を使用した駆動回路である。また、ロングパルス回路LPは、
図6の構成において容量750μFのコンデンサー93およびインダクタンス2200μHのコイル94を使用した駆動回路である。ショートパルス回路SPに接続されたフラッシュランプFL1の発光時間は約1.0ミリセカンドであり、ロングパルス回路LPに接続されたフラッシュランプFL2(理解の容易のために
図7にはハッチングを付している)の発光時間は約3.0ミリセカンドである。すなわち、ロングパルス回路LPは、ショートパルス回路SPよりも大きなインダクタンスのコイル94を備えており、ショートパルス回路SPに接続されたフラッシュランプFL1の発光時間よりもロングパルス回路LPに接続されたフラッシュランプFL2の発光時間の方が長い。
【0041】
ここで、第1実施形態においては
図7に示すように、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とが交互に一列に配列されている。すなわち、30本のフラッシュランプFL(フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とを特に分けて指定する必要のないときは単に「フラッシュランプFL」と総称する)を15本ずつの2つのランプ群に区分し、そのうちの一方のランプ群(第1ランプ群)をショートパルス回路SPに接続するとともに、他方のランプ群(第2ランプ群)をロングパルス回路LPに接続し、第1ランプ群を構成するフラッシュランプFL1と第2ランプ群を構成するフラッシュランプFL2とを交互に配置しているのである。なお、
図7では図示の便宜上、15本のフラッシュランプFL1が1つのショートパルス回路SPに接続され、15本のフラッシュランプFL2が1つのロングパルス回路LPに接続されているが、上述のように1つのフラッシュランプFLには1つの駆動回路が設けられており、
図7のショートパルス回路SPおよびロングパルス回路LPはそれぞれ15個の駆動回路を包括して記載したものである。
【0042】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
【0043】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。
図8は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
【0044】
また、バスライン39には、チャンバー6内にて保持部7を昇降させる保持部昇降機構4のモータ40やトリガー制御回路38が電気的に接続されている。トリガー制御回路38は、複数のフラッシュランプFLのそれぞれのトリガースイッチSWと接続されており、各トリガースイッチSWのON/OFFを制御する。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用ソフトウェアを実行することにより、モータ40を制御して保持部7の高さ位置を調整するとともに、複数のフラッシュランプFLのそれぞれが所定のタイミングにて発光するように、つまり所定のタイミングにてトリガースイッチSWがON状態となるようにトリガー制御回路38を制御する。
【0045】
さらに、バスライン39には、表示部21および入力部22が電気的に接続されている。表示部21は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部22は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部21に表示された内容を確認しつつ入力部22からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部21と入力部22とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0046】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(
図1参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
【0047】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について簡単に説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板であり、添加された不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ加熱処理により実行される。
【0048】
まず、保持部7が
図5に示す処理位置から
図1に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに閃光照射が行われるときの保持部7の位置であり、
図5に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、
図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。
図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
【0049】
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される。
【0050】
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から
図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、
図1に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
【0051】
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に載置された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
【0052】
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
【0053】
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
【0054】
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。具体的には、制御部3がトリガー制御回路38を制御して全てのフラッシュランプFLに接続されたショートパルス回路SPおよびロングパルス回路LPのトリガースイッチSWを一斉に同時にON状態とする。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからの閃光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
【0055】
ここで、第1実施形態においては、相対的に発光時間の短いフラッシュランプFL1と発光時間の長いフラッシュランプFL2とが交互に一列に配列されている(
図7)。すなわち、パルス幅(フラッシュ光のパルスの周期)の異なるフラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とが相互に隣接するように配置されている。このため、処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面の全領域において、フラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光とが相互に均一に重なり合う。その結果、半導体ウェハーW表面における発光開始(トリガースイッチSWがON状態となった時点)からの光強度は
図9に示すように推移する。同図において、点線はパルス幅の短いフラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光の強度を示し、一点鎖線はパルス幅の長いフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光の強度を示し、それらの双方を重ね合わせた光強度を実線にて示している。
【0056】
パルス幅の短いフラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光は、強いピーク強度を示すものの、短時間で強度が減衰する。逆に、パルス幅の長いフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光は、ピーク強度はフラッシュランプFL1より低いものの、比較的長時間に渡って光強度を維持する。そして、これらフラッシュランプFL1,FL2から照射されたフラッシュ光が重ね合わされた結果、
図9に示すように、発光開始直後においてはフラッシュランプFL1からの閃光照射が支配的となって強いピーク強度が得られ、その後フラッシュランプFL1からのフラッシュ光強度が減衰した後はフラッシュランプFL2からの閃光照射が支配的となって比較的長時間に渡ってある程度の光強度が維持される。
【0057】
図10は、発光開始からの半導体ウェハーWの表面温度の推移を示す図である。発光開始直後においては、主としてパルス幅の短いフラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度を有するフラッシュ光によって半導体ウェハーWの表面が急速にイオンの活性化温度以上の処理温度T2(1000℃ないし1100℃程度)にまで昇温される。その後は、主としてパルス幅の長いフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光による保温効果によって比較的長時間に渡って活性化温度以上の温度を維持した後に次第に降温する。その結果、半導体ウェハーWの表面から比較的深い領域をも活性化温度以上にまで昇温することができ、深い接合の活性化を行うことが可能となる。一方、半導体ウェハーWの表面(浅い領域)の温度が必要以上に上昇することもなく、半導体ウェハーWの反りや割れを防止することができる。
【0058】
このようにして、半導体ウェハーWの浅い接合のみならず、比較的深い接合も活性化されることとなる。なお、フラッシュランプFL2の発光時間は約3.0ミリセカンドと比較的長いものの、添加した不純物の熱拡散に必要な時間と比較すれば極めて短いため、半導体ウェハーWの表面(浅い領域)であっても不純物の拡散が生じることはない。
【0059】
また、フラッシュ加熱の前に保持部7により半導体ウェハーWを予備加熱しておくことにより、フラッシュランプFLからの閃光照射によって半導体ウェハーWの表面温度を処理温度T2まで速やかに上昇させることができる。
【0060】
フラッシュ加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び
図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理が完了する。
【0061】
既述のように、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
【0062】
以上、説明したように、第1実施形態においては、パルス幅の短いフラッシュランプFL1とパルス幅の長いフラッシュランプFL2とを交互に一列に配列している(
図7)。従来のように、30本のフラッシュランプFLのパルス幅を一定とした場合には、半導体ウェハーWの表面から深い領域までをも活性化温度以上に昇温しようとすると、浅い領域の温度が必要以上に高くなり過ぎて熱応力に起因したウェハー反りや割れが生じることは既述した通りである。逆に、半導体ウェハーWの表面の浅い領域を適温に昇温したときには、深い領域は活性化温度に到達せず、深い接合の活性化を行うことはできなかった。
【0063】
本実施形態のようにパルス幅の短いフラッシュランプFL1とパルス幅の長いフラッシュランプFL2とを交互に一列に配列すれば、半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度のフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光とが均一に重なり合い、半導体ウェハーWの表面の浅い領域を必要以上に加熱することなく深い領域をも活性化温度以上に昇温することができ、半導体ウェハーWに反りや割れを生じさせることなく深い接合の活性化を行うことができる。
【0064】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は概ね
図1,5に示した第1実施形態の装置構成と同じであり、また第2実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順についても第1実施形態と同一である。第2実施形態の熱処理装置が第1実施形態と相違するのは、フラッシュランプFLの配置態様である。
【0065】
図11は、第2実施形態における複数のフラッシュランプFLの配置構成を示す図である。第2実施形態においては、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とが井桁状に交差して配列されている。すなわち、複数のフラッシュランプFLを同数の2つのランプ群に区分し、そのうちの一方のランプ群(第1ランプ群)をショートパルス回路SPに接続するとともに、他方のランプ群(第2ランプ群)をロングパルス回路LPに接続する。第1ランプ群を構成するフラッシュランプFL1は水平方向に沿って互いに平行となるように平面上に配列されている。また、第2ランプ群を構成するフラッシュランプFL2も水平方向に沿って互いに平行となるように平面上に配列されいる。そして、第1ランプ群の配列面と第2ランプ群の配列面とを、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とが井桁状に交差するように重ねて配置するのである。なお、ショートパルス回路SPおよびロングパルス回路LPは第1実施形態と同様のものであり、フラッシュランプFLの配置以外の残余の構成についても第1実施形態と同じである。また、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2との配列の上下関係はいずれが上であっても良い。
【0066】
第2実施形態の如き交差配列としても、処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光とが相互に均一に重なり合う。その結果、半導体ウェハーW表面における発光開始からの光強度は
図9に示すように推移し、半導体ウェハーWの表面温度は
図10に示すように推移する。すなわち、第2実施形態のように、パルス幅の短いフラッシュランプFL1とパルス幅の長いフラッシュランプFL2とを井桁状に交差して配列すれば、半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度のフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光とが均一に重なり合い、半導体ウェハーWの表面の浅い領域を必要以上に加熱することなく深い領域をも活性化温度以上に昇温することができ、半導体ウェハーWに反りや割れを生じさせることなく深い接合の活性化を行うことができる。
【0067】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の全体構成も概ね
図1,5に示した第1実施形態の装置構成と同じであり、また第3実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順についても第1実施形態と同一である。第3実施形態の熱処理装置が第1実施形態と相違するのは、フラッシュランプFLの形状および配置態様である。
【0068】
図12は、第3実施形態における複数のフラッシュランプFLの配置構成を示す図である。第1および第2実施形態ではフラッシュランプFLを円筒状のガラス管92を備えた棒状ランプとしていたが、第3実施形態においてはフラッシュランプFLを点光源ランプ(例えば球状ランプ)としている。点光源ランプである複数のフラッシュランプFLを同数の2つのランプ群に区分し、そのうちの一方のランプ群(第1ランプ群)をショートパルス回路SPに接続するとともに、他方のランプ群(第2ランプ群)をロングパルス回路LPに接続する点は第1および第2実施形態と同じである。そして、第3実施形態においては、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とを縦方向および横方向の双方について交互に配列している。すなわち、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とを市松模様に配列しているのである。なお、ショートパルス回路SPおよびロングパルス回路LPは第1実施形態と同様のものであり、フラッシュランプFLの形状および配置以外の残余の構成についても第1実施形態と同じである。
【0069】
第3実施形態の如きランプ配列としても、処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光とが相互に均一に重なり合う。その結果、半導体ウェハーW表面における発光開始からの光強度は
図9に示すように推移し、半導体ウェハーWの表面温度は
図10に示すように推移する。すなわち、第3実施形態のように、パルス幅の短いフラッシュランプFL1とパルス幅の長いフラッシュランプFL2とを市松模様状に配列すれば、半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度のフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光とが均一に重なり合い、半導体ウェハーWの表面の浅い領域を必要以上に加熱することなく深い領域をも活性化温度以上に昇温することができ、半導体ウェハーWに反りや割れを生じさせることなく深い接合の活性化を行うことができる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、フラッシュランプFL1の発光開始タイミングとフラッシュランプFL2の発光開始タイミングとを同時としていたが、これをずらすようにしても良い。
図13は、パルス幅の短いフラッシュランプFL1の発光開始タイミングをパルス幅の長いフラッシュランプFL2よりも早くしたときの半導体ウェハーW表面における光強度の推移を示す図である。具体的には、制御部3がトリガー制御回路38を制御してフラッシュランプFL1に接続されたショートパルス回路SPのトリガースイッチSWをON状態とした後にフラッシュランプFL2に接続されたロングパルス回路LPのトリガースイッチSWをON状態とする。
【0071】
一方、
図14は、パルス幅の短いフラッシュランプFL1の発光開始タイミングをパルス幅の長いフラッシュランプFL2よりも遅くしたときの半導体ウェハーW表面における光強度の推移を示す図である。具体的には、制御部3がトリガー制御回路38を制御してフラッシュランプFL2に接続されたロングパルス回路LPのトリガースイッチSWをON状態とした後にフラッシュランプFL1に接続されたショートパルス回路SPのトリガースイッチSWをON状態とする。なお、
図13および
図14においては、
図9と同様に、点線はパルス幅の短いフラッシュランプFL1から照射されたフラッシュ光の強度を示し、一点鎖線はパルス幅の長いフラッシュランプFL2から照射されたフラッシュ光の強度を示し、それらの双方を重ね合わせた光強度を実線にて示している。また、フラッシュランプFLの配列は上記第1実施形態から第3実施形態のいずれであっても良い。
【0072】
図13または
図14のように、フラッシュランプFL1の発光開始タイミングとフラッシュランプFL2の発光開始タイミングとをずらしても、フラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度のフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光とが重なり合い、半導体ウェハーWの表面の浅い領域を必要以上に加熱することなく深い領域をも活性化温度以上に昇温することができ、半導体ウェハーWに反りや割れを生じさせることなく深い接合の活性化を行うことができる。さらに、発光開始タイミングをずらす時間に応じて活性化温度以上に昇温する領域の深さや半導体ウェハーWの表面温度を適宜調整することが可能となり、熱処理パターンのバリエーションを豊富なものとすることができる。
【0073】
また、フラッシュランプFLの配列態様は
図7,11,12のパターンに限定されるものではなく、種々のパターンを採用することが可能である。但し、パルス幅の短いフラッシュランプFL1またはパルス幅の長いフラッシュランプFL2が偏在する配置(例えば、
図7において紙面右側半分にフラッシュランプFL1のみを配置し、左側半分にフラッシュランプFL2のみを配置)とすると、半導体ウェハーWの表面に強いピーク強度のフラッシュ光のみが照射される領域となだらかなピークを有するフラッシュ光のみが照射される領域とが生じ、活性化処理が不均一となる。このため、半導体ウェハーWの表面全面において、フラッシュランプFL1から照射された強いピーク強度のフラッシュ光とフラッシュランプFL2から照射されたなだらかなピークを有するフラッシュ光とが均一に重なり合う
図7,11,12の如きランプ配置とする方が好ましい。
【0074】
また、上記各実施形態においては、フラッシュランプFL1とフラッシュランプFL2とを同数としていたが、これに限定されるものではなく、いずれかの数が多くても良い。すなわち、複数のフラッシュランプのうちの一部にて構成される第1ランプ群をショートパルス回路SPに接続するとともに、残部にて構成される第2ランプ群をロングパルス回路LPに接続する構成であれば良い。
【0075】
また、上記各実施形態のショートパルス回路SPおよびロングパルス回路LPにおいては、
図6の構成における電源ユニット95を定電圧電源で構成し、所定の定電圧をコンデンサー93に供給するようにしていたが、これに限られるものではなく、ショートパルス回路SP、ロングパルス回路LPのそれぞれの電源ユニット95を可変電源で構成し、所望の電圧をコンデンサー93に印加できるようにしてコンデンサー93に蓄えるチャージ電圧を可変にできるようにしても良い。このように構成すれば、電源ユニット95から印加される電源電圧の値を可変にすることでそれぞれショートパルス回路SPと、ロングパルス回路LPとでコンデンサー93に蓄電するチャージ電圧を自由に設定でき、ショートパルス回路SPとロングパルス回路LPとのチャージ電圧の任意の組み合わせによって、各ショートパルス回路SPとロングパルス回路LPにおける放電量を変えることができる。これにより、ショートパルス回路SPに接続されたフラッシュランプFL1から放電される光の強度と、ロングパルス回路LPに接続されたフラッシュランプFL2から放電される光の強度とを可変にすることができ、上述した発光時間を可変にすることと組み合わせて必要な熱量を必要な時間半導体ウェハーWに与えることをより自由に選択でき、必要なプロセスに応じて半導体ウェハーWの表面の所望の深さの領域を自由に活性化させることができる。
【0076】
また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
【0077】
また、上記各実施形態においては、アシスト加熱手段としてホットプレート71を使用していたが、半導体ウェハーWを保持する保持部7の下方に複数のランプ群(例えば複数のハロゲンランプ)を設け、それらからの光照射によってアシスト加熱を行うようにしても良い。
【0078】
また、上記各実施形態においては、半導体ウェハーに光を照射してイオン活性化処理を行うようにしていたが、これに限られるものではなく、コバルトシリサイド層やニッケルシリサイド層を形成する構成においても本発明にかかる熱処理装置を使用することにより、十分な膜厚のシリサイド層を形成することができる。さらに、本発明にかかる熱処理装置による処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではない。例えば、窒化シリコン膜や多結晶シリコン膜等の種々のシリコン膜が形成されたガラス基板に対して本発明にかかる熱処理装置による処理を行っても良い。一例として、CVD法によりガラス基板上に形成した多結晶シリコン膜にシリコンをイオン注入して非晶質化した非晶質シリコン膜を形成し、さらにその上に反射防止膜となる酸化シリコン膜を形成する。この状態で、本発明にかかる熱処理装置により非晶質のシリコン膜の全面に光照射を行い、非晶質のシリコン膜が多結晶化した多結晶シリコン膜を形成することもできる。
【0079】
また、ガラス基板上に下地酸化シリコン膜、アモルファスシリコンを結晶化したポリシリコン膜を形成し、そのポリシリコン膜にリンやボロン等の不純物をドーピングした構造のTFT基板に対して本発明にかかる熱処理装置により光照射を行い、ドーピング工程で打ち込まれた不純物の活性化を行うこともできる。