(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058745
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】発泡スチロールブロック用耐震緊結金具および発泡スチロールブロックの耐震緊結構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20161226BHJP
E04B 2/02 20060101ALI20161226BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20161226BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E04C1/10 K
E02D27/34 Z
E02D29/02 308
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-121183(P2015-121183)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-2692(P2017-2692A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】510187406
【氏名又は名称】株式会社CPC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 光
(72)【発明者】
【氏名】窪田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英樹
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−020531(JP,U)
【文献】
特開2012−017572(JP,A)
【文献】
特開2002−302953(JP,A)
【文献】
特開2000−120150(JP,A)
【文献】
特開平08−041883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20,27/00−27/52
E04B 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つの発泡スチロールブロックを緊結する発泡スチロールブロック用耐震緊結金具であって、
プレート部と、
前記プレート部の周縁に設けられ、前記プレート部に対して垂直に折り曲げられることで形成された複数の爪部と、を有し、
前記プレート部と複数の前記爪部との間に形成された複数の折り線は、1つの正方形の各辺に沿うように配置されており、
前記プレート部は、正方形状の外形を有しており、
複数の前記爪部は、前記正方形の前記各辺に沿って連続して並ぶように配置されており、
複数の前記爪部は、前記プレート部から一方側に延びる複数の第1爪部と、前記プレート部から前記一方側とは反対側である他方側に延びる複数の第2爪部と、を含み、
前記正方形の前記各辺に設けられた複数の前記第1爪部および複数の前記第2爪部は、前記各辺の中心部を通り且つ前記プレート部に対して垂直な直線を対称の中心軸として線対称の形状をなすように設けられており、
前記正方形の対向する第1辺および第2辺に設けられた複数の前記第1爪部および複数の前記第2爪部は、前記第1辺に設けられた前記第1爪部と前記第2辺に設けられた前記第1爪部とが対向しないように、かつ、前記第1辺に設けられた前記第2爪部と前記第2辺に設けられた前記第2爪部とが対向しないように設けられており、
前記正方形の対向する第3辺および第4辺に設けられた複数の前記第1爪部および複数の前記第2爪部は、前記第3辺に設けられた前記第1爪部と前記第4辺に設けられた前記第1爪部とが対向しないように、かつ、前記第3辺に設けられた前記第2爪部と前記第4辺に設けられた前記第2爪部とが対向しないように設けられており、
前記正方形の隣り合う前記第1辺および前記第4辺には、
一端側で連続して並ぶ第1所定複数の前記第1爪部と、
他端側で連続して並ぶ第2所定複数の前記第1爪部と、
中央側で連続して並ぶ第3所定複数の前記第2爪部と、が設けられており、
前記正方形の隣り合う前記第2辺および前記第3辺には、
一端側で連続して並ぶ前記第1所定複数の前記第2爪部と、
他端側で連続して並ぶ前記第2所定複数の前記第2爪部と、
中央側で連続して並ぶ前記第3所定複数の前記第1爪部と、が設けられており、
前記第1所定複数および前記第2所定複数は、互いに同じ数であり、かつ、各々は前記第3所定複数よりも少なく、
前記第1所定複数と前記第2所定複数との合計数は、前記第3所定複数よりも多い、
発泡スチロールブロック用耐震緊結金具。
【請求項2】
第1発泡スチロールブロックと、
前記第1発泡スチロールブロックと水平方向に隣り合う第2発泡スチロールブロックと、
前記第1発泡スチロールブロックと垂直方向に隣り合う第3発泡スチロールブロックと、
請求項1に記載の発泡スチロールブロック用耐震緊結金具と、を備え、
前記発泡スチロールブロック用耐震緊結金具は、前記第1発泡スチロールブロックと前記第2発泡スチロールブロックとの間の目地部分を跨がないように配置されて、前記第1発泡スチロールブロックと前記第3発泡スチロールブロックとを緊結している、
発泡スチロールブロックの耐震緊結構造。
【請求項3】
前記第1発泡スチロールブロックおよび前記第2発泡スチロールブロックは、各々の長手方向が平行になるように配置され、
前記第3発泡スチロールブロックは、自身の長手方向が前記第1発泡スチロールブロックの長手方向に対して直交するように配置される、
請求項2に記載の発泡スチロールブロックの耐震緊結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2つの発泡スチロールブロックを緊結する発泡スチロールブロック用耐震緊結金具および発泡スチロールブロックの耐震緊結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012−017572号公報(特許文献1)および特開平11−006226号公報(特許文献2)に開示されているように、EPS(Expanded Poly-Styrol)工法が知られている。EPS工法においては、複数の発泡スチロールブロックが、土木材料として用いられる。具体的には、施工現場において、複数の発泡スチロールブロックが左右方向(水平方向)および/または上下方向(鉛直方向)に並べられる。隣接する2つの発泡スチロールブロックは、緊結金具(発泡スチロールブロック用緊結金具)によって緊結される。
【0003】
図11は、一般的な緊結金具10Zを示す斜視図である。緊結金具10Zは、プレート部1と、複数の爪部2a,2bとを有する。プレート部1は、平板状の形状を有し、短手方向の両端には凸部1m,1nが設けられる。複数の爪部2a,2bは、プレート部1の周縁に設けられ、プレート部1に対して垂直に折り曲げられることで形成される。
【0004】
爪部2aは、プレート部1から一方側に向かって延びており、爪部2bは、プレート部1から他方側(爪部2aの反対側)に向かって延びている。プレート部1と爪部2a,2bとの間には、折り線3a,3bがそれぞれ形成される。複数の折り線3a,3bは、全体として1つの長方形を描くように、1つの長方形の各辺に沿うように配置されている。
【0005】
図12を参照して、緊結金具10Z(
図11)は、素板5Zに折り曲げ加工を施すことで作製される。素板5Zには、点線4aに沿って谷折り加工が施され、点線4bに沿って山折り加工が施される。これにより、緊結金具10Z(
図11)が得られる。なお、点線4a,4bは、折り曲げられることでそれぞれ折り線3a,3bを構成する部分であり、全体として長方形の形状を有している。
【0006】
図13を参照して、水平方向に隣り合う2つの発泡スチロールブロック6(6a,6b)の間には、目地CL(接合箇所)が形成される。緊結金具10Zは、目地CLを跨ぐようにして(2つの発泡スチロールブロック6に跨るようにして)配置される。複数の爪部2bが発泡スチロールブロック6(6a,6b)に差し込まれることで、2つの発泡スチロールブロック6(6a,6b)同士が緊結金具10Zによって緊結される。
【0007】
発泡スチロールブロック6(6a,6b)の上方(鉛直方向における上方)には、発泡スチロールブロック7が配置される。複数の爪部2aが発泡スチロールブロック7に差し込まれることで、発泡スチロールブロック7と、緊結金具10Zの下方に配置された2つの発泡スチロールブロック6(6a,6b)とが緊結される。
【0008】
図14に示す緊結金具10Zは、爪部2aのみを備えるものもある(爪部2bは、
図14に示す緊結金具10Zには設けられていない)。
図15に示すように、このような緊結金具10Zは、最上層に位置する2つの発泡スチロールブロック6(6a,6b)を緊結する際に用いられる。
【0009】
図16を参照して、
図11に示すような緊結金具10Zを用いる場合も、
図14に示すような緊結金具10Zを用いる場合も、緊結金具10Zが発泡スチロールブロック6,6間に形成された目地CLを跨ぐように配置および固定されることで、発泡スチロールブロック6(6a,6b)同士や、発泡スチロールブロック6,7同士が緊結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−017572号公報
【特許文献2】特開平11−006226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図11および
図14に示すような緊結金具10Zにおいては、プレート部1と複数の爪部2a,2bとの間に形成される複数の折り線3a,3bが、1つの長方形の各辺に沿うように配置されている。すなわち、複数の爪部2a,2bが、1つの長方形の各辺に沿うように設けられている。
【0012】
地震や地盤変状が起きた際、発泡スチロールブロックを緊結している複数の爪部2a,2bには、応力(たとえばせん断応力)が作用する。長方形状に配置された複数の爪部2a,2bは、特定の方向から受ける作用力(たとえば地震動)に対しては強い緊結状態を維持できるものの、他の特定の方向から作用力(たとえば地震動)を受けた場合には、強い緊結状態を維持できなくなる場合がある。
【0013】
本発明は、上述のような実情に鑑みて為されたものであって、長方形の場合に比べて、任意の方向から受ける作用力(たとえば地震動)に対して強い緊結状態を維持することが可能な発泡スチロールブロック用耐震緊結金具および発泡スチロールブロックの耐震緊結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく耐震緊結金具は、隣接する2つの発泡スチロールブロックを緊結する発泡スチロールブロック用耐震緊結金具であって、プレート部と、上記プレート部の周縁に設けられ、上記プレート部に対して垂直に折り曲げられることで形成された複数の爪部と、を有し、上記プレート部と複数の上記爪部との間に形成された複数の折り線は、1つの正方形の各辺に沿うように配置されて
おり、上記プレート部は、正方形状の外形を有しており、複数の上記爪部は、上記正方形の上記各辺に沿って連続して並ぶように配置されており、複数の上記爪部は、上記プレート部から一方側に延びる複数の第1爪部と、上記プレート部から上記一方側とは反対側である他方側に延びる複数の第2爪部と、を含み、上記正方形の上記各辺に設けられた複数の上記第1爪部および複数の上記第2爪部は、上記各辺の中心部を通り且つ上記プレート部に対して垂直な直線を対称の中心軸として線対称の形状をなすように設けられており、上記正方形の対向する第1辺および第2辺に設けられた複数の上記第1爪部および複数の上記第2爪部は、上記第1辺に設けられた上記第1爪部と上記第2辺に設けられた上記第1爪部とが対向しないように、かつ、上記第1辺に設けられた上記第2爪部と上記第2辺に設けられた上記第2爪部とが対向しないように設けられており、上記正方形の対向する第3辺および第4辺に設けられた複数の上記第1爪部および複数の上記第2爪部は、上記第3辺に設けられた上記第1爪部と上記第4辺に設けられた上記第1爪部とが対向しないように、かつ、上記第3辺に設けられた上記第2爪部と上記第4辺に設けられた上記第2爪部とが対向しないように設けられており、上記正方形の隣り合う上記第1辺および上記第4辺には、一端側で連続して並ぶ第1所定複数の上記第1爪部と、他端側で連続して並ぶ第2所定複数の上記第1爪部と、中央側で連続して並ぶ第3所定複数の上記第2爪部と、が設けられており、上記正方形の隣り合う上記第2辺および上記第3辺には、一端側で連続して並ぶ上記第1所定複数の上記第2爪部と、他端側で連続して並ぶ上記第2所定複数の上記第2爪部と、中央側で連続して並ぶ上記第3所定複数の上記第1爪部と、が設けられており、上記第1所定複数および上記第2所定複数は、互いに同じ数であり、かつ、各々は上記第3所定複数よりも少なく、上記第1所定複数と上記第2所定複数との合計数は、上記第3所定複数よりも多い。
【0016】
本発明に基づく発泡スチロールブロックの耐震緊結構造は、第1発泡スチロールブロックと、上記第1発泡スチロールブロックと水平方向に隣り合う第2発泡スチロールブロックと、上記第1発泡スチロールブロックと垂直方向に隣り合う第3発泡スチロールブロックと、上記の発泡スチロールブロック用耐震緊結金具と、を備え、上記発泡スチロールブロック用耐震緊結金具は、上記第1発泡スチロールブロックと上記第2発泡スチロールブロックとの間の目地部分を跨がないように配置されて、上記第1発泡スチロールブロックと上記第3発泡スチロールブロックとを緊結している。
好ましくは、上記第1発泡スチロールブロックおよび上記第2発泡スチロールブロックは、各々の長手方向が平行になるように配置され、上記第3発泡スチロールブロックは、自身の長手方向が上記第1発泡スチロールブロックの長手方向に対して直交するように配置される。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、複数の爪部が、1つの正方形の各辺に沿うように配置される。このように配置された複数の爪部は、任意の方向から受ける作用力(たとえば地震動)に対して、一定程度の緊結状態を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1における耐震緊結金具を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1における耐震緊結金具を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1における耐震緊結金具を作製するために準備される素板(折り曲げ加工前の状態)を示す平面図である。
【
図4】実施の形態1における耐震緊結金具を用いた発泡スチロールブロックの耐震緊結構造を説明するための平面図である。
【
図5】実施の形態1における耐震緊結金具の他の形態を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1における耐震緊結金具の他の形態を示す平面図である。
【
図7】実施の形態1における耐震緊結金具および耐震緊結構造が有する受動抵抗を概念的に説明するための図である。
【
図8】一般的な緊結金具および緊結構造が有する受動抵抗を概念的に説明するための図である。
【
図9】実施の形態2における耐震緊結金具を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態3における耐震緊結金具を示す斜視図である。
【
図12】一般的な緊結金具を作製するために準備される素板(折り曲げ加工前の状態)を示す平面図である。
【
図13】一般的な緊結金具を用いて、隣接する発泡スチロールブロックを緊結している様子を示す側面図である。
【
図14】他の一般的な緊結金具を示す斜視図である。
【
図15】他の一般的な緊結金具を用いて、隣接する発泡スチロールブロックを緊結している様子を示す側面図である。
【
図16】一般的な緊結金具(または他の一般的な緊結金具)を用いて、隣接する発泡スチロールブロックを緊結している様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0020】
[実施の形態1]
(耐震緊結金具10)
図1および
図2は、それぞれ、実施の形態1における耐震緊結金具10を示す斜視図および平面図である。耐震緊結金具10は、プレート部1と、複数の爪部2a,2bとを有する。プレート部1は、平板状の形状を有する。本実施の形態におけるプレート部1は、正方形状の外形を有している。プレート部1の1つの辺の長さは、たとえば150mmである。複数の爪部2a,2bは、プレート部1の周縁に設けられ、プレート部1に対して垂直に折り曲げられることで形成される。
【0021】
爪部2aは、プレート部1から一方側に向かって延びており、爪部2bは、プレート部1から他方側(爪部2aの反対側)に向かって延びている。本実施の形態では、爪部2a,2bは、3本ずつ、あるいは4本ずつが上下に折り曲げることで形成されているが、爪部2a,2bは、1本おきに交互に上下に折り曲げることで形成されていても構わない。
【0022】
プレート部1と爪部2a,2bとの間には、折り線3a,3bがそれぞれ形成される。複数の折り線3a,3bは、1つの正方形の各辺に沿うように配置されている(
図2参照)。本実施の形態においては、複数の爪部2a,2bは、全体として1つの正方形を描くように、1つの正方形(プレート部1)の各辺に沿って、間隔をほとんど空けずに連続して並ぶように配置されている。
【0023】
図3を参照して、耐震緊結金具10(
図1,
図2)は、素板5に折り曲げ加工を施すことで作製される。素板5には、点線4aに沿って谷折り加工が施され、点線4bに沿って山折り加工が施される。これにより、耐震緊結金具10(
図1,
図2)が得られる。なお、点線4a,4bは、折り曲げられることでそれぞれ折り線3a,3bを構成する部分であり、全体として正方形の形状を有している。
【0024】
素板5の材質は、たとえば、JIS G 3321に規定される溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(登録商標))である。海水の影響が懸念される箇所などには、アルミニウム製のものを用いることも可能である。
【0025】
(耐震緊結構造)
図4は、耐震緊結金具10を用いた発泡スチロールブロック6,7の耐震緊結構造を説明するための平面図である。
【0026】
複数の発泡スチロールブロック6(6a,6b,6c,6d)は、水平方向において、互いに隣り合うように配置される。複数の発泡スチロールブロック7(7a,7b)も、水平方向において、互いに隣り合うように配置される。ただし、複数の発泡スチロールブロック7(7a,7b)と、複数の発泡スチロールブロック6(6a,6b,6c,6d)とは、配置されている高さが異なっており、発泡スチロールブロック7,7は、発泡スチロールブロック6,6の一層上方(鉛直方向における上方)に配置される(矢印AR1,AR2参照)。
【0027】
図4に示すように、発泡スチロールブロック6(6a,6b)および発泡スチロールブロック7(7a)を平面視した場合、発泡スチロールブロック6(6a,6b)の長手方向と、発泡スチロールブロック7(7a)の長手方向とは、互いに直交する関係にある。発泡スチロールブロック6(6a,6b)は、長手方向が
図4紙面内の左右方向に対して平行になるように配置される。一方、発泡スチロールブロック7(7a)は、長手方向が
図4紙面内の上下方向に対して平行になるように配置される。
【0028】
発泡スチロールブロック6(6a)の長手方向における右半分の略中央に、耐震緊結金具10(10a)が設けられる。発泡スチロールブロック7(7a)の長手方向における上半分は、発泡スチロールブロック6(6a)の長手方向における右半分に重なるように配置される(矢印AR1参照)。発泡スチロールブロック6(6a)と発泡スチロールブロック7(7a)とは、鉛直方向(
図4紙面に対して垂直な方向)において互いに隣接する関係にあり、耐震緊結金具10(10a)によって互いに緊結される。
【0029】
発泡スチロールブロック6(6b)の長手方向における左半分の略中央に、耐震緊結金具10(10b)が設けられる。発泡スチロールブロック7(7a)の長手方向における下半分は、発泡スチロールブロック6(6b)の長手方向における左半分に重なるように配置される(矢印AR1参照)。発泡スチロールブロック6(6b)と発泡スチロールブロック7(7a)とは、鉛直方向(
図4紙面に対して垂直な方向)において互いに隣接する関係にあり、耐震緊結金具10(10b)によって互いに緊結される。
【0030】
発泡スチロールブロック6(6a,6b)は、耐震緊結金具10(10a,10b)および発泡スチロールブロック7(7a)を介して、互いに緊結されることになる。ここでは、発泡スチロールブロック6(6b)が「第1発泡スチロールブロック」に相当し、発泡スチロールブロック6(6a)が「第2発泡スチロールブロック」に相当し、発泡スチロールブロック7(7a)が「第3発泡スチロールブロック」に相当する。耐震緊結金具10(10b)は、第1発泡スチロールブロック(6b)と第2発泡スチロールブロック(6a)との間の目地CLの部分を跨がないように配置されて、第1発泡スチロールブロック(6b)と第3発泡スチロールブロック(7a)とを緊結している。
【0031】
これらの関係については、発泡スチロールブロック6(6c,6d)、耐震緊結金具10(10c,10d)および発泡スチロールブロック7(7b)についてもあてはまるものである。この場合には、発泡スチロールブロック6(6d)が「第1発泡スチロールブロック」に相当し、発泡スチロールブロック6(6c)が「第2発泡スチロールブロック」に相当し、発泡スチロールブロック7(7b)が「第3発泡スチロールブロック」に相当する。耐震緊結金具10(10d)は、第1発泡スチロールブロック(6d)と第2発泡スチロールブロック(6c)との間の目地CLの部分を跨がないように配置されて、第1発泡スチロールブロック(6d)と第3発泡スチロールブロック(7b)とを緊結している。
【0032】
図5および
図6を参照して、最上層に位置する2つの発泡スチロールブロックを緊結する際には、耐震緊結金具11が用いられる。(爪部2bは、
図5,
図6に示す耐震緊結金具11には設けられていない)。耐震緊結金具11が隣接する2つの発泡スチロールブロック間に形成された目地を跨ぐように配置されることで、隣接する2つの発泡スチロールブロック同士が緊結される。なお、
図1,
図2に示す耐震緊結金具10が、隣接する2つの発泡スチロールブロック間に形成された目地を跨ぐように配置されても構わない。このように配置された耐震緊結金具10によれば、左右方向(水平方向)に隣接する2つの発泡スチロールブロック同士が、1つの耐震緊結金具10によって直接的に緊結される。
【0033】
(作用および効果)
図11や
図14に示す緊結金具10Zは、長方形状のプレート部1を有している。プレート部1の大きさは、たとえば、100mm×150mmである。これに対して、本実施の形態における耐震緊結金具10は、正方形状のプレート部1を有している。プレート部1の大きさは、たとえば、150mm×150mmである。耐震緊結金具10が発泡スチロールブロックに接触可能な面積は、緊結金具10Zが発泡スチロールブロックに接触可能な面積に比べて1.5倍広い。耐震緊結金具10は、緊結金具10Zに比べて、面としての摩擦抵抗分を多く確保できる。
【0034】
一辺に設けられる爪部2a,2bの本数は、緊結金具10Zは6本であるのに対して、耐震緊結金具10は10本(1.67倍)である。したがって、耐震緊結金具10の爪部の引裂抵抗(せん断応力:τ)は、緊結金具10Zの爪部の引裂抵抗の1.67倍であり、強地震時や大きな地盤変状が生じた場合にも、発泡スチロールブロックの緊結状態(一体化)を確保できる。
【0035】
上述のとおり、本実施の形態の耐震緊結金具10は、ブロック間に形成される目地CLを跨がないように配置される。耐震緊結金具10が目地CLを跨ぐように配置された場合、目地CLを流れる縦排水が、耐震緊結金具10の周囲に回り込みやすくなる。耐震緊結金具10が長期間に亘って水にさらされる可能性が高くなり、腐食や劣化が進みやすくなる。これに対して、耐震緊結金具10が目地CLを跨がないように配置された場合には、ブロック同士が密着することで水の回り込みが少なくなるため、耐震緊結金具10の耐久性を向上させることが可能となる。
【0036】
図7を参照して、本実施の形態における耐震緊結金具10は、ブロック間の目地(CL)を跨がないように配置される。地盤変状が生じた場合、発泡スチロールブロックに対して、たとえば右側から左側に向かう変位(応力)が作用する(矢印DRを参照)。この応力は、爪部2bがブロックを剪断するように作用する(矢印DR1,DR2,DR3)。
図7中の斜線部は、受動抵抗を概念的に示している。
【0037】
本実施の形態における耐震緊結金具10の場合には、爪部2bが目地CLから離れた位置に配置されている(
図4参照)。したがって耐震緊結金具10の場合には、受動抵抗力が大きいため、地盤変状が生じた場合であってもブロック全体の変形を制御できるものと推察される。この効果は、耐震緊結金具10のプレート部1(爪部2a,2bの位置)を正方形形状にすることにより、矢印DRに対して直交する方向(
図4紙面内の上下方向)においても発揮される。
【0038】
図8を参照して、冒頭で述べた緊結金具10Zの場合には、目地CLを跨ぐように配置される。したがって、緊結金具10Zの場合には、地盤変状などで発生した応力(矢印DR4,DR5参照)に対する受動抵抗力が小さいことから、爪部2a,2bから発泡スチロールブロックの端部(目地CLを形成している端面部分)に向かって、より大きな剪断応力が作用することになる。すなわち、本実施の形態の耐震緊結金具10は、このような緊結金具10Zに比べて、発泡スチロールブロックの変形をより抑制できるものであり、発泡スチロールブロックの一体化を長期間にわたって維持できると言える。また、緊結金具10Zは、非対称形状を有しているため、地震動が作用した時に回転する挙動になる。耐震緊結金具10を正方形形状にすることにより対称形状となり、この回転挙動を制御することが可能になり、より耐震性能が高まるともいえる。
【0039】
また、EPS工法は、橋台の背面側の軽量盛土として使用されることがある。その際、道路に対して直交する方向(両直型盛土)のみならず、道路の縦断方向における耐震が求められる。耐震緊結金具10のプレート部1(爪部2a,2bの位置)を正方形にすることにより、両方の方向(道路に対して直交する方向および道路の縦断方向)からの耐震性向上を期待できるものである。
【0040】
軟弱な地盤上に、台形形状を有するEPS盛土や道路拡幅EPS盛土を適用する場合には、主として道路の直角方向についてのみ所定の耐震性を有していることが求められる。ただし、小構造物の背面盛土にEPS盛土を適用する場合には、両方向の耐震検討が必要となる。したがって、耐震緊結金具を正方形にすることにより、両方向から耐震性を向上させることが可能となるため、本実施の形態で説明したような耐震緊結金具は、小構造物の背面盛土にEPS盛土にも効果的に適用できるものである。
【0041】
[実施の形態2]
図9を参照して、実施の形態2における耐震緊結金具12について説明する。上述の実施の形態1における耐震緊結金具10,11(
図1,
図5参照)は、複数の爪部2a,2bが、1つの正方形(プレート部1)の各辺に沿って間隔をほとんど空けずに連続して並ぶように配置されている。
【0042】
図9に示すように、耐震緊結金具12においては、複数の爪部2a,2bが、1つの正方形(プレート部1)の各辺に沿って、間隔を空けて並ぶように配置されている。ただし、本実施の形態においても、折り線3a,3bは、全体として1つの正方形を描くように、1つの正方形(プレート部1)の各辺に沿って配置されている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と略同様の作用および効果を得ることが可能である。
【0043】
[実施の形態3]
図10を参照して、実施の形態3における耐震緊結金具13について説明する。上述の実施の形態1における耐震緊結金具10,11(
図1,
図5参照)は、正方形状の外形を有するプレート部1を備えている。プレート部1の形状そのものが正方形状であることは必須の構成ではなく、複数の折り線3a,3b(複数の爪部2a,2b)が、全体として1つの正方形の各辺に沿うように配置されていればよい。
【0044】
図10に示すように、耐震緊結金具13においては、プレート部1そのものは、
正方形状を有しておらず、凸部1m,1nが設けられている。ただし、本実施の形態においても、折り線3a,3bは、全体として1つの正方形を描くように、1つの正方形の各辺に沿って配置されている。当該構成によっても、上述の実施の形態1と略同様の作用および効果を得ることが可能である。
【0045】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 プレート部、1m,1n 凸部、2a,2b 爪部、3a,3b,4a,4b 折り線、5,5Z 素板、6,7 発泡スチロールブロック、10,11,12,13 耐震緊結金具、10Z 緊結金具、AR1,AR2,DR,DR1,DR2,DR3,DR4,DR5 矢印、CL 目地。