特許第6058791号(P6058791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6058791センタリングスリーブ付きカーボンブラシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058791
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】センタリングスリーブ付きカーボンブラシ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20161226BHJP
   H01R 39/26 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H02K13/00 P
   H01R39/26
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-514528(P2015-514528)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-524243(P2015-524243A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2013061269
(87)【国際公開番号】WO2013178790
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】102012209222.6
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594141406
【氏名又は名称】シュンク・コーレンストッフテヒニーク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラウス−ゲオルグ トンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー プファイファー
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−017268(JP,U)
【文献】 特開昭61−173477(JP,A)
【文献】 米国特許第02935632(US,A)
【文献】 実開昭50−037801(JP,U)
【文献】 実開昭49−016703(JP,U)
【文献】 米国特許第03304452(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00723318(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H01R 39/26
H01R 39/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗限界表示機能を持ち、ブラシ本体(4)中に配置された通電用の撚線を有し、かつ撚線端部(12)にて案内開口(22)を持つスリーブ(8)により囲まれかつ固定された表示撚線(10)を有し、前記スリーブ(8)は一定の外径(24)を持ち、かつ前記ブラシ本体(4)に形成された凹所(6)に前記スリーブ(8)が配置されたカーボンブラシ(2)において、
前記スリーブ(8)はセンタリングスリーブ(8)として形成され、その内径(26a,26b)は、前記案内開口(22)にて外径(24)に一致し、かつ案内方向にて円錐形のテーパ(30)を有し、
前記内径(26a,26b)の前記円錐形のテーパ(30)は、前記案内開口(22)に隣接する部分に限定され、かつ、前記センタリングスリーブ(8)は、それに接して、一定の内径(26b)を持つ部分(32)を有することを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項2】
請求項記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)の円錐角(α)は、センタリングドリルの先端角に対応することを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項3】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)は、一側が閉じられたスリーブ(8)として構成されたことを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)は、両側が開かれたスリーブ(8)として構成されたことを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記表示撚線(10)と前記センタリングスリーブ(8)とは圧着結合を形成し、あるいは、前記表示撚線(10)前記センタリングスリーブ(8)とは接着結合を形成していることを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)は、前記ブラシ本体(4)の前記凹所の中に接着結合を形成していることを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)は、非導電性の製工材料からなることを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項8】
請求項記載のカーボンブラシにおいて、
前記センタリングスリーブ(8)は金属からなり、前記ブラシ本体(4)の前記凹所(6)の中への前記センタリングスリーブ(8)接着結合のために非導電性の接着剤が絶縁シースとして使用され、かつ、前記センタリングスリーブ(8)は、両側が開かれたスリーブ(8)として構成されたことを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記表示撚線(10)と前記センタリングスリーブ(8)とは、詰粉(15)により前記凹所(6)の中に固定されていることを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
前記撚線端部(12)は、前記凹所(6)の中で、前記表示撚線(10)と前記センタリングスリーブ(8)とを固定するように絶縁性の詰粉(15)によって囲まれた、露出した単線(14)を有することを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載のカーボンブラシにおいて、
導電性の製工材料からなるセンタリングスリーブとして構成されたスリーブが、前記通電用の撚線を前記ブラシ本体(4)に結合するため利用されることを特徴とするカーボンブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗限界表示機能を持ち、ブラシ本体中に配置された通電用の撚線を有し、かつ撚線端部にて案内開口を持つスリーブにより囲まれかつ固定された表示撚線を有し、ブラシ本体に形成された凹所にスリーブが配置されたカーボンブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
営業上で使用されているドリル機のような電気的に駆動される手工具では、可能な限り効率良く労働時間を使用するために、手工具のメンテナンス限度を十分正確にスケジュールできることが、特にカーボンブラシの交換に関する限度の文脈で重要である。これにより、予想されるメンテナンス日に十分な余裕をもって必要な摩耗部品が利用可能であること、また予期しないメンテナンス作業のために失われる労働時間が可能な限り回避され得ることが保証される。
【0003】
したがって、十分な余裕をもってカーボンブラシの状態を知らせるために、またカーボンブラシの摩耗限界が近々到来するという警告を提供するために、いわゆる表示撚線をカーボンブラシに設けることが標準慣行となっている。表示撚線とは、摩耗限界が近々到来することを知らせるために、表示撚線と、手工具の駆動モータのスリップリング又は整流子との間の電気的な導電性接触が達成されるように、カーボンブラシのブラシ本体中に形成され又は配置されるものである。
【0004】
摩耗限界が到来した後でも手工具の動作が継続される結果としての手工具への損傷を回避するために、表示撚線により達成される表示機能は、更に、(動作)電流を伝える撚線を介して動作電流源に強制停止をもたらす分離機能により補足され得る。当該分離機能は、機械的な分離メカニズムとして構成され得る。この分離メカニズムは、いくつかの部品で構成された部品アセンブリとしてブラシ本体中に形成されたメカニズムであって、例えば欧州特許第0512234号明細書(EP0512234B1)から公知である。分離メカニズムは、電気的に絶縁性を有するように形成され、かつ、ばね予圧されて受容孔に受容される分離ニップルを有することを特徴とする。ばね予圧を生成するために、受容孔に充填され、かつ通例は金属粉からなる圧縮充填剤にて、分離ニップルに結合された圧力ばねが支持される。電気モータの整流子又はスリップリングから離れるようにカーボンブラシを機械的に持ち上げることにより、電流源における遮断が保証される。
【0005】
分離メカニズムのこのような複雑な設計により、その製造は、それに対応して困難かつ時間のかかるものであることも判る。つまり、その製造は、順次実行されるべき複数の製造工程を有し、受容孔を設けることから始め、次に分離ニップル/圧力ばねの組み合わせを取り付け、最後に受容孔に金属粉を部分的に充填することにより圧力ばねの支承を生成するものである。
【0006】
困難かつ時間のかかる機械的な分離機能の構造を回避する1つの可能性は、表示機能だけでなく電気的態様で分離機能をも達成するように表示撚線を形成することにある。ここで、表示撚線は、電気的分離装置を起動する、分離機能のための接触導体として形成される。また、表示撚線のための凹所と、動作電流を伝える撚線のための凹所との双方は、可能な限り同一の寸法を有する受容部として構成される。
【0007】
カーボンブラシ本体に撚線を差し込むことは、製造の点でかなり困難かつ時間のかかることであることが判る。なぜなら、通例は、複数の細い単線からなる撚線端部がU形又はループ形になるように手で曲げられ、かつカーボンブラシ本体に差し込まれなければならないからである。この製造工程を簡略化し、かつブラシ本体を弱体化させないように凹所の必要な孔径を可能な限り小さく維持するために、独国特許出願公開第4111206号明細書(DE4111206A1)は、その位置に関して凹所に固定されるスリーブによって、表示撚線を保持し又は案内することを提案している。
【0008】
しかしながら、この固定方法でも、撚線の束をスリーブの中へ差し込むことは、特に時間がかかり、かつ注意深く実行されるべき製造工程であることが判る。したがって、この製造工程もまた、手作業による実行が、多くの場合に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、カーボンブラシの高効率製造の一部として、本発明が基礎とする課題は、いくつかの簡素な製造工程だけでカーボンブラシ本体に撚線が確実に固定され得るように、カーボンブラシへの撚線の結合、特に表示撚線の結合を設計することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の前提部と併せて、この課題は、スリーブがセンタリングスリーブとして形成され、その内径が、案内開口にて外径に一致し、かつ案内方向にて円錐形のテーパを有することによって解決される。
【0011】
スリーブの基本的な円筒形から、また内径の約半分の壁厚から始めて、本発明によれば、スリーブの先端表面がゼロに近づくように、かつスリーブへ差し込まれる際に差し込まれる撚線の束への障害としての停止面がないように、撚線案内開口における内径は、外径の寸法まで拡張される。凹所の底に向かって円錐形である内径のテーパと併せて、ある撚線はその撚線端部にて絶縁されているが、特に他のある撚線は撚線端部にて絶縁が剥ぎ取られて、センタリングスリーブの中へ何の抵抗もなしに滑り込む。絶縁が剥ぎ取られた撚線の場合には、1組の撚線が外に出ることが妨げられるので、案内開口にて平坦な先端表面を持つスリーブの場合とは対照的に、信頼性の低い結合のリスクが低減される。したがって、まずカーボンブラシの外で撚線がセンタリングスリーブに結合され、次に撚線端部とセンタリングスリーブとからなるユニットがカーボンブラシ本体に差し込まれる場合と、カーボンブラシ本体に予め固定されたセンタリングスリーブの中に撚線が差し込まれる場合との双方の場合に、撚線の固定が単純化される。
【0012】
しかも、内径の円錐形のテーパは、案内開口に隣接する部分に限定され、かつ、センタリングスリーブは、それに接して、一定の内径を持つ部分を有することを特徴とする。円錐形のテーパは、基本的に、スリーブの全長に渡って伸び得る。これは、スリーブがその全体に渡って内部円錐を構成し、その内径は、外径が一定である場合には、対向端部まで任意の小さい壁厚を持つ案内エッジから、徐々に減少することを意味する。しかしながら、好ましくは、センタリングスリーブの長手方向にて、円錐形の経路は、案内開口に隣接する部分に限定され、一定の内径を持つ領域が当該部分に接する。この着想は、製造の点で実現が簡単であり、かつスリーブに十分な安定性を与える。
【0013】
案内開口の領域に長さが制限された円錐形の部分は、有利な態様で、センタリングスリーブの円錐角がセンタリングドリルの先端角に対応するように形成される。この着想は、センタリングドリルでドリルすることにより、製造の点で簡単な態様でスリーブ内部を成形することを可能にする。30°の好ましい円錐角は、障害のない態様で撚線の束が差し込まれ得ることを保証する。
【0014】
更に有利な着想によれば、センタリングスリーブは、一側が閉じられたスリーブとして構成される。このようなカップ形に設計されたセンタリングスリーブは、カーボンブラシ本体における電気的に絶縁性のソケットとして撚線端部を囲み、もし必要ならば撚線の外壁に付けられた絶縁性の接着層と併せて、通常動作で、カーボンブラシとの電気的接触を防止する。カーボンブラシ本体又は整流子への電気的に導電性の結合は、カーボンブラシの摩耗の結果として(カップの)底の摩耗が生じる前には生じない。
【0015】
代替の構成によれば、センタリングスリーブは、両側が開かれたスリーブとして構成され得る。この場合の撚線端部は、スリーブ下端を超えて伸び、かつ絶縁性の接着層により取り囲まれ得る。
【0016】
好ましくは、表示撚線とセンタリングスリーブとは圧着結合を形成し、あるいは、表示撚線センタリングスリーブとは接着結合を形成する。製造の点では、これらの結合技術は、その構成がカーボンブラシ本体に差し込まれる前に簡単に実行され得て、しかも十分な引張強度を持つ結合を保証する。
【0017】
更なる着想によれば、センタリングスリーブは、ブラシ本体の凹所の中に接着結合を形成する。ここで、センタリングスリーブは、絶縁性の接着剤を用いて接着結合され得る。
【0018】
センタリングスリーブは、非導電性の製工材料からなるのが有利である。例えば、その製工材料は、絶縁性のプラスチック材料であり得る。この方法で、摩耗限界が未だ到来していない限り、表示撚線がカーボンブラシ本体又はスリップリングとの電気的接触をもたらさないことが保証される。
【0019】
あるいは、センタリングスリーブは金属からなり得て、ブラシ本体の凹所の中へのセンタリングスリーブ接着結合のために非導電性の接着剤が絶縁シースとして使用され、かつ、センタリングスリーブは、両側が開かれたスリーブとして構成される。その弾性により、金属スリーブは、表示撚線を容易に締め付けることと、カーボンブラシ本体の凹所にスリーブを容易に嵌め込むこととの双方を可能にする。加えて、金属は、高い信頼性をもって接着により配置され得る。金属センタリングスリーブの場合、それは、整流子に損傷を与えないように、下から開かれるように構成される。
【0020】
他の構成によれば、表示撚線とセンタリングスリーブとは、詰粉により凹所の中に固定される。もし凹所のドリル深さがスリーブの長さよりも大きければ、スリーブは、詰粉を用いて固定され得る。つまり、スリーブ案内開口の上で表示撚線の被覆された部分を詰め込むことによって、表示撚線を詰粉の中に固定させるのである。この場合の詰粉は、金属詰粉であり得る。
【0021】
被覆された表示撚線を固定するのに代えて、撚線端部は、凹所の中で、表示撚線とセンタリングスリーブとを固定するように絶縁性の詰粉によって囲まれた、露出した単線を有することを特徴とする。この場合、絶縁性の詰粉により、表示撚線の被覆は不要であって、センタリングスリーブと凹所の孔径とがより小さくされ得て、より安定になる。
【0022】
好ましくは、導電性の製工材料からなるセンタリングスリーブとして構成されたスリーブが、通電用の撚線をブラシ本体に結合するため利用される。センタリングスリーブとして構成されたスリーブを用いることは、表示撚線を固定することに限定されず、通電用の撚線の機械的かつ電気的な結合をもたらすために、金属スリーブの形式でも有利に利用され得る。
【0023】
他の有利な着想の特徴は、実例を参照することにより本発明の好ましい実施形態を説明する、以下の記述から、また図面から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】撚線端部にて絶縁が剥ぎ取られた表示撚線を有し、かつ本発明に係るセンタリングスリーブを有するカーボンブラシの一部を示す図である。
図1B】絶縁が剥ぎ取られていない表示撚線を有し、かつ本発明に係るセンタリングスリーブを有するカーボンブラシの一部を示す図である。
図2】本発明に係るセンタリングスリーブの詳細図である。
図3】詰め込まれた表示撚線を有するカーボンブラシの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aは、凹所6を特徴とする、カーボンブラシ本体4を有するカーボンブラシ2を示している。好ましくは、凹所6は、その中に本発明に係るセンタリングスリーブ8が挿入された孔として形成されている。センタリングスリーブ8は、表示撚線10を受け容れる。ここで、表示撚線10の撚線端部12は、センタリングスリーブ8に結合されている。好ましくは、撚線端部12とセンタリングスリーブ8とが圧着により互いに押圧され、あるいは、撚線端部12がセンタリングスリーブ8に接着されている。また、カーボンブラシ本体4は、通電用の撚線を受け容れるための他の凹所(不図示)を有することをも特徴とし、この通電用の撚線を介して動作電流が供給され、カーボンブラシ2の下端における接触面を介してスリップリングへ電流が伝わるようになっている。
【0026】
センタリングスリーブ8自体は、好ましくは絶縁性の接着剤を用いて、凹所6の中に接着されており、かつ、表示撚線10の撚線端部12のためのカップ形の絶縁性ソケットを形成する。そして、撚線端部12の先端では、絶縁が剥ぎ取られた被覆無しの単線13,14が、束のように、センタリングスリーブ8の内部20(図2)の中へ進入している。カーボンブラシ2の動作中にカーボンブラシ本体4の摩耗が進むにつれて、スリップリングに接触するカーボンブラシ本体4の接触面は、センタリングスリーブ8の絶縁性の底16の先端もまた摩耗の影響を受けるように、かつ、更に摩耗が進むにつれて単線13,14がスリップリングを介してブラシ本体4に接触し、これにより警告信号がトリガされるように、センタリングスリーブ8の下端に向かってシフトしていく。
【0027】
図1Bは、図1Aの構成とは次の点のみが異なる、他の例示的な実施形態を示している。すなわち、図1Bでは、表示撚線10は撚線端部12にて絶縁が剥ぎ取られず、絶縁性の被覆又は成形された表面部分を有することを特徴とする。
【0028】
図2は、本発明に係るセンタリングスリーブ8の詳細を示している。センタリングスリーブ8は、同じ縮尺で描かれてはいないが、非導電性の製工材料で製造され、かつ中空空間又は内部20を持つ円筒形の基幹本体18の形状を有している。その中空空間又は内部20は、下端ではテーパを持つ底16により制限され、かつ、上端では表示撚線10のための案内開口22を有することを特徴とするものである。このようなカップ形の設計は、カーボンブラシ本体4における表示撚線10の撚線端部12のための絶縁性のソケットを構成する。円筒形の基幹本体18は、一定の外径24を有することを特徴とする。そして、案内開口22における、その内径26aは、外径24にほぼ一致する。つまり、壁厚と、したがって先端表面とは、そこでゼロに近づく。特にこのようなセンタリングスリーブ8がカーボンブラシ本体4に挿入されているので、この方法で表示撚線10の差し込みが著しく簡単化される。単線13,14の束14は、まずカーボンブラシ本体4の孔6に沿ってスライドし、次にセンタリングスリーブ8の内部20へ、その底まで段差の抵抗なく進入する。
【0029】
スリーブの底16に向かって狭くなっている内部円錐30は、円錐が単線14を案内する案内開口22に接し、かつ、更に進んで、一定の内径26bを持つ部分32へと移行する。円錐形のフランジを有することを特徴とする公知のワイヤ端スリーブとは対照的に、本発明に係るセンタリングスリーブ8は、有利な態様で、カーボンブラシ本体4の孔6に完全に挿入され得る。
【0030】
中空空間20は、製造の点で簡素な態様で、センタリングドリルを用いたドリル工程により形成される。そして、その円錐角αの値は、センタリングドリルの先端角に対応するように選択され得る。30°の円錐角αは、単線13,14が外に出るリスクを恐れる必要なく撚線端部12を差し込むことができるために、好ましいことが判っている。もちろん、円錐角αがドリル形状から独立であってもよく、撚線端部12の差し込みが容易になされ、かつ、センタリングドリルによる成形の利点が放棄される限り、他の円錐角αも可能である。
【0031】
単純化された態様では、センタリングスリーブ8は、露出した単線13,14がブラシ本体4に接触しないことが保証されることを条件として、底16を持たない、両側が開かれたスリーブとしても構成され得る。これは、例えば、導電性を有しない接着剤により、しかもセンタリングスリーブ8の固定のために、接着剤が絶縁性の態様で凹所6を完全に覆う前に凹所6へ導入される接着剤により、達成され得る。
【0032】
代替の着想によれば、センタリングスリーブ8は、導電性の製工材料からなってもよい。この場合には、ブラシ本体4の凹所6にセンタリングスリーブ8を接着により配置する際に、非導電性の接着剤が絶縁シースとして使用される。この構成では、絶縁性の(プラスチック)材料で製造されたセンタリングスリーブ8の絶縁効果が、接着層により代替される。
【0033】
また、本発明に係るセンタリングスリーブ8は、通電用の撚線をブラシ本体4に結合するための、導電性の製工材料からなるスリーブとして利用されることも可能である。通電用の撚線を固定するための当該構成でも、案内開口22における円錐形の設計30は、通電用の撚線の単純化された案内をもたらす。この場合には、センタリングスリーブ8は、両側が開かれたスリーブとしても構成され得る。なぜなら、ブラシ本体4におけるシース絶縁が不要であり、対照的に、上記のような絶縁が回避されるべきだからである。
【0034】
図3は、カーボンブラシ本体4を有するカーボンブラシ2を示している。そのカーボンブラシ本体4の凹所6の中には、本発明に係るセンタリングスリーブ8の中に配置された表示撚線10が詰め込まれている。センタリングスリーブ8は、絶縁性の材料からなり、かつ図1Aの場合と同様に一側が閉じられたスリーブとして構成されているが、この実施形態では被覆されていない表示撚線10の撚線端部12を受け容れる。ここで、露出した単線13,14の束14は、センタリングスリーブ8の内部へ進入し、かつ、そこで接着層17で接着される。あるいは、スリーブ8の材料特性に応じて、圧着又は押圧も可能である。表示撚線10及びセンタリングスリーブ8からなる構成は、センタリングスリーブ8の案内開口の上で、絶縁性の詰粉15を用いて固定される。
図1A
図1B
図2
図3