特許第6058802号(P6058802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058802
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】免疫調節細胞の作出方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20170106BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170106BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20170106BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C12N5/078
   A61K37/43
   A61P37/02
   A61P29/00
   C12N5/0786
   C12N5/00ZNA
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-531293(P2015-531293)
(86)(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公表番号】特表2015-529086(P2015-529086A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】US2013058788
(87)【国際公開番号】WO2014039985
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】13/607,976
(32)【優先日】2012年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512261517
【氏名又は名称】ナショナル ヘルス リサーチ インスティテュートス
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】イェン、リン−ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、コ−ジウン
(72)【発明者】
【氏名】シトゥ、フェイ−カン
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7696170(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0002932(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0175825(US,A1)
【文献】 Massimo Di Nicola et al.,Human bone marrow stromal cells suppress T-lymphocyte proliferation induced by cellular or nonspecific mitogenic stimuli,Blood,2002年,Vol. 99, No. 10,p. 3838-3843
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節細胞を作出するための方法であって、末梢単核細胞を肝細胞増殖因子(HGF)で処理して前記末梢単核細胞の免疫調節白血球への分化を誘導し、
前記HGFの濃度は、培地1ミリリットル(ml)当たり3〜40ngであり、
前記免疫調節白血球が骨髄由来免疫抑制細胞、単球、またはそれらの組合せを含み、
前記骨髄由来免疫抑制細胞がCD14−CD11b+CD33+を呈し、
前記単球がCD14+CD16−IL10+を呈することを含む、方法。
【請求項2】
前記末梢単核細胞が哺乳動物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肝細胞増殖因子が組換えタンパク質または天然タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記肝細胞増殖因子が間葉系幹細胞(MSC)に由来する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節白血球が活性化された同種異系リンパ球の増殖を抑制する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記骨髄由来免疫抑制細胞がアルギナーゼおよび一酸化窒素合成酵素を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記骨髄由来免疫抑制細胞が制御性T細胞を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記単球がIL−10を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記単球が抗炎症性サイトカインを産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記単球が免疫応答をTh2優位な応答に調節する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の機能を有する細胞を作出するための方法に関する。特に本発明は、免疫調節細胞を作出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、体内に通常存在する物質および組織に対する身体の不適切な免疫応答によって引き起こされる。言い換えれば、免疫系が身体のある部分を病原体と間違えて自己の細胞を攻撃する。望ましくない免疫応答により引き起こされるもう一つの問題が移植拒絶である。移植は、ある部位から別の部位に細胞、組織、または臓器を移行する行為である。移植は慣例の医学的処置になっているとはいえ、免疫系はなお最も手強い障壁である。
【0003】
免疫抑制薬は、免疫応答を低下させる自己免疫疾患および移植拒絶の治療/予防に一般に適用される。免疫抑制薬は、免疫系全体を抑制する、および患者を容易に感染させるなどの様々な副作用を伴う。また、前記処置には生物学的薬剤も適用され、抗サイトカイン療法、T細胞除去療法、B細胞除去療法および免疫寛容誘導療法などが含まれる。近年、養子T細胞または幹細胞の提供を含む細胞療法が自己免疫疾患および移植拒絶の治療/予防の新規な選択肢となっているが、なお開発中である。
【0004】
ヒト間葉系幹細胞(MSC)は、複数の間葉系統への分化能を有する多系統前駆細胞の集団である。MSCは、骨髄(BM)および他のいくつかの臓器、例えば、脂肪組織、胎盤、羊水、および胎児組織、例えば、胎児の肺および血液から単離されている。この単離の容易さは、中胚葉外細胞種への分化の報告とあいまって、これらの出生後前駆細胞を様々な疾患に対する細胞療法の一般的な選択肢とした。
【0005】
多系統分化能に加え、BMおよび胎児MSCは、免疫調節作用を保有することが示された。MSCは、T細胞、B細胞、単球由来樹状細胞(DC)およびナチュラルキラーリンパ球(NK)の増殖能およびエフェクター機能の調節に関連付けられている。免疫細胞に対するヒトMSCの作用は主として細胞接触性のプロセスを介したものであるが、厳密な機構はまだ分かっていない。
【0006】
免疫調節免疫細胞の重要性を示す研究が増えてきている。現在、制御性Tリンパ球、II型マクロファージ、および未熟DCを含む数種の白血球亜集団が免疫抑制作用を示すことが知られている。一方、免疫調節単球に関するデータは少ない。
【0007】
肝細胞増殖因子(HGF)は、周知の分裂促進因子であり、発生上重要な分子である。また、分散因子としても知られ、HGFは強力な増殖シグナルを与えるだけでなく、細胞に遊走を促すことから、HGFは癌の増殖および転移に関してよく研究されている。その非分裂促進作用についてはほとんど知られていない。HGFは間葉細胞により分泌され、主として上皮細胞および内皮細胞を標的とし、これらの細胞に作用するが、造血系前駆細胞にも作用する。HGFは、胚の臓器発達、生体の臓器再生および創傷治癒に主要な役割を持つことが示されている。混合リンパ球反応におけるT細胞増殖の抑制のメディエーターとしてのHGFおよびTGF−βの役割は、TGF−βおよびHGFに対する中和抗体を提供し、その後にT細胞の増殖応答が回復されることによって証明されるとの報告がある(非特許文献1)。しかしながら、これらの因子は分裂促進因子によって刺激されたT細胞に対するMSCによる抑制作用とは無関係であるという異なる結論も報告されており、これらの刺激に依存する異なる機構が示唆されている(非特許文献2;非特許文献3)。従って、HGFと免疫系との間の機能および相互作用はまだ明らかでない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Di Nicolaら, Blood 2002;99:3838−3843
【非特許文献2】Le Blancら, Scand J Immunol 2004;60:307−315
【非特許文献3】Rasmusson Iら, Exp Cell Res 2005;305:33−41
【発明の概要】
【0009】
本出願は、免疫調節細胞を作出するための方法であって、末梢単核細胞を肝細胞増殖因子で処理して前記末梢単核細胞の免疫調節白血球への分化を誘導することを含む方法を記載する。
【0010】
本出願はまた、それによって作出された免疫調節細胞を記載する。
【0011】
本出願はさらに、異常な免疫応答により引き起こされる疾患を治療するための方法であって、前記疾患に罹患している患者に肝細胞増殖因子(HGF)を投与すること、前記患者の末梢単核細胞を免疫調節白血球に分化させること、および異常な免疫応答を調節することを含む方法を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、骨髄間葉系幹細胞(BM−MSC)および胎盤由来MSC(P−MSC)の特性評価を示す。図1A:表面マーカープロファイル、および図1B:BM−MSCおよびP−MSCの3系統分化表現型。Osteo、骨形成系統;chondro、軟骨形成系統;adipo、脂肪生成系統;スケールバー、200mm。
図2図2は、MSCが、同種異系末梢血白血球(PBL)において機能的CD14−CD11b+CD33+骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の数を増すことを示す。図2A:MSCによるPBL由来CD14−CD11b+CD33+細胞の増幅。同種異系PBL(ドナー30人)の単独培養(上のパネル)またはMSCとの共培養(下のパネル;ドナー3人のBM−MSC、およびドナー3人のP−MSC);図2B:MSCとの共培養後のPBL CD11b+(上のグラフ)またはCD14−CD11b+CD33+細胞(下のグラフ)のパーセンテージの定量;、p<0.05(PBL単独と比較);図2C:MSCにより誘導されたMDSCの抑制機能。同種異系PBL(T、標的細胞)を細胞分裂の評価のためにカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色し、無添加またはMSCにより増幅されたMDSC(E、エフェクター細胞)の種々のE:T比での添加を伴って、抗CD3/28(a−CD3/28)で刺激した。PBLの細胞分裂を評価するためにフローサイトメトリー解析を行った。チャート(右)は実験結果の定量的概要である。、p<0.05(傾向分析)。図2D:誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現、および図2E:MSCにより増幅されたMDSCによるアルギナーゼ1(ARG1)。負の選択を受けたPBL由来CD14−細胞を単独で(上のパネル)またはMSCとともに(下のパネル)培養し、さらにCD11b、CD33、およびiNOS(図2D)またはARG1(図2E)で染色した。図2F:MSCにより増幅されたMDSCによるCD4+CD25high型の制御性T細胞(Treg)の増幅。CD14−CD11b+CD33+MSCにより増幅されたMDSCを選別し(FACS)、抗CD3/28により刺激された同種異系PBLと種々の比率で共培養し、CD4+CD25high型のT細胞の誘導を評価した。チャート(右)は実験結果の定量的概要である。、p<0.05(PBL/a−CD3/28との比較)。
図3図3は、MSCによるMDSCの増幅は分泌される肝細胞増殖因子(HGF)により媒介されることを示す。図3A:MSCによるMDSCの増幅は、分泌される因子により媒介される。同種異系PBLを、MSCとともに、直接接触させて(MSC)またはトランスウェルで分離して(TW)共培養し、CD14−CD11b+CD33+MDSCの増幅を評価した;、p<0.05(PBL単独との比較);n.s.、有意でない。図3B:定量的サイトカインアレイにより評価されるMSCの高分泌因子;IL、インターロイキン;LAP、潜在型関連ペプチド;SDF、間質細胞由来因子。図3C:組換えHGFをPBLに外から添加すると、MDSCの数が増える(、p<0.05(傾向分析))。図3D:HGFにより増幅されたMDSCにおけるiNOS発現(上のパネル)およびARG1発現(下のパネル)の評価。図3E:細胞分裂に関するCFSE染色のフローサイトメトリー解析により評価される、HGFにより増幅されたMDSCによる、抗CD3/28刺激性PBL増殖の抑制。図3F:HGF特異的低分子干渉RNA(siRNA)を用いたMSCにおけるHGF分泌のノックダウンは、MDSCの増幅を排除する。同種異系PBLを非標的低分子干渉RNA(siRNA Ctrl)またはHGF特異的siRNA(siHGF)のいずれかをトランスフェクトしたMSC(ドナー3人)と共培養し、CD14−CD11b+CD33+細胞を評価した;、p<0.05(MSC(左のグラフ)またはPBL単独(右のグラフ)との比較)。
図4図4は、癌細胞により分泌されるHGFおよびマウスにおけるHGFのin vivo投与がMDSCの数を増し得ることを示す。図4A:MSC、MG63(骨肉腫細胞株)、胚性幹細胞由来間葉前駆細胞(EMP)、およびJEG−3(絨毛癌細胞株)によるHGF分泌のレベル、および図4B:4つの細胞種のPBLとの共培養後のMDSCの増幅倍率;、p<0.05(傾向分析)。図4C:C57BL/6マウスに対する組換えHGF(100ng)の尾静脈注射、ならびに注射1日および3日後の末梢血、脾臓、および骨髄におけるCD11b+Gr1+細胞の評価、、p<0.05(PBSとの比較)。
図5図5は、HGFによるMDSCの増幅が、その受容体であるc−met、およびSTAT3のリン酸化の増大により媒介されることを示す。図5A:フローサイトメトリー解析により評価されるMDSCにおけるc−metの発現(ドナー12人);左のチャート、平均蛍光強度 intensity(MFI)の定量;、p<0.05(アイソタイプ対照(Ctrl)との比較)。図5B:HGFにより媒介されるMDSCの増幅におけるc−metの関与。PBLをアイソタイプ対照抗体(IsoAb)またはc−met遮断抗体(抗c−Met)で遮断し、組換えHGF(20ng/ml)で処理し、CD14−CD11b+CD33+細胞の増幅を評価した。図5C:HGFにより媒介されるMDSCの増幅におけるSTAT3の関与。組換えHGF(20ng/ml)をCD14−白血球に添加し、フローサイトメトリーにより評価されるようにCD11b、CD33、およびリン酸化STAT3(pSTAT3)に関して染色した(右上の値、MFI)。チャート(右)は、MFIの定量的概要である。、p<0.05(傾向分析)。図5D:組換えHGF(20ng/ml)を、無添加およびcpd188(STAT3阻害剤)の種々の用量での添加を伴って、PBLに加え、フローサイトメトリーにより評価されるようにCD11b、CD33、およびpSTAT3に関して染色した。チャート(右)は、CD14−CD11b+CD33+pSTAT3+細胞のパーセンテージの定量的概要である。a、p<0.05(PBL単独との比較);b、p<0.05(傾向分析)。
図6図6は、HGFにより媒介されるMDSCの増幅の機構を示す。
図7図7は、胎盤由来MSCにより分泌された肝細胞増殖因子(HGF)が抗CD3/28により活性化された同種異系末梢血リンパ球(PBL)増殖の抑制に関与することを示す。図7A:PBLの単独培養(非刺激;黒いバー)、MSC細胞馴化培地(CM)の存在下および不在下でのフィトヘマグルチニン(PHA;白いバー)もしくは抗CD3/28活性化ビーズ(灰色のバー)、または図7D:組換えヒトHGF(rhHGF)による刺激を行った;n=15。刺激したPBLの増殖を100%とし、これは、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)染色に関するフローサイトメトリー解析により分析した場合、>90%のPBLが細胞分裂下にあると定義される。a、p<0.01;b、p<0.05(対照との比較)。c、p<0.05、(図7AのMSC−CMを伴うPHA活性化PBLとの比較)。a、p<0.05;b、p<0.05(図7DのHGFを伴うPHA活性化PBLとの比較)。図7B:培養3日後に定量的サイトカインアレイにより検出された、MSC(黒いバー)、PBL(白いバー)、MSCと共培養されたPBL(灰色のバー)、抗CD3/28活性化PBL(斜線のバー)、およびMSCと共培養された抗CD3/28活性化PBL(ドットのバー)によるサイトカイン産生;n=1。図7C:定量的サイトカインアレイにより測定されたMSCによるサイトカインおよび間質細胞関連因子の分泌。図7E:酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定された、MSC、HGFのRNAサイレンシング(HGF−siRNA)後のMSC、および非標的siRNA後のMSCの、CMにおけるHGF産生;n=10。図7F:72時間後にCFSEに関するフローサイトメトリー解析により評価された、単独培養またはsiRNAトランスフェクトMSCとの共培養を行った抗CD3/28活性化PBLの増殖;n=9。a、p<0.05(MSCと共培養した抗CD3/28活性化PBLとの比較)。特に断りのない限り、データは3回の独立した実験に典型的なものであり、平均値±SEMとして示す。†、p<0.01;、p<0.001(バーによりそうではないことが示されていない限り対照との比較)。
図8図8は、Tリンパ球機能に対するHGFの免疫調節作用にはCD14+単球が必要とされることを示す。図8Aおよび8B:Tリンパ球細胞株(Jurkat)、単球細胞株(U937)、およびPBLから精製された初代CD14+細胞(B;n=7)におけるc−Met発現;MFI、蛍光強度中央値。図8C:PBL(白いバー)またはCD14+細胞除去PBL(黒いバー)の単独培養または抗CD3/28ビーズによる刺激をrhHGFの存在下または不在下で行った;n=15。rhHGF処理PBLにおける増殖の程度を抗CD3/28活性化PBLまたはCD14+除去PBLに対するパーセンテージとして表す。a、p<0.01;b、p<0.05(HGFの存在下の抗CD3/28活性化PBLとの比較)。図8D:rhHGF処理CD14+細胞の存在下または不在下で単独培養または抗CD3/28による刺激を行ったCD4+T細胞の、共培養72時間後の増殖(CD14+とCD4+T細胞の比は、1/10、1/5、1/2および1/1)。刺激したCD4+T細胞の増殖を100%とし、これは、CFSE染色に関するフローサイトメトリー解析により分析した場合、>90%のCD4+T細胞が細胞分裂下にあると定義される。a、p<0.05(傾向分析)。図8E:rhHGF処理CD14+細胞と共培養した場合または共培養しなかった場合の抗CD3/28活性化CD4+T細胞におけるIFN−γ、IL−4およびIL−13の細胞内産生。T細胞総数を100%とする。特に断りのない限り、データは3回の独立した実験に典型的なものであり、平均値±SEMとして示す。#、p<0.05;、p<0.001(バーによりそうではないことが示されていない限り対照との比較)。
図9図9Aは、72時間後にフローサイトメトリー解析により検出された、rhHGFで処理した(灰色および斜線のバー)または無処理の(黒いバー)CD14+細胞における樹状細胞(DC)関連およびマクロファージ関連表面マーカー発現を示す。アイソタイプ対照の発現(MFI、蛍光強度中央値)(白いバー)を1とする。データは3回の独立した実験に典型的なものであり、平均値±SEMとして示す。図9Bは、フローサイトメトリー解析により検出された、rhHGFで処理した、または無処理のPBLにおけるCD14およびCD16発現を示す;n=8。
図10図10は、HGFが単球におけるIL−10産生を高めることを示す。図10A:培養3日後に定量的サイトカインアレイにより検出された、CD14+細胞単独(白いバー)またはMSCとの共培養(黒いバー)によるTh1/2サイトカインプロファイル(n=1)。図10B:ELISAにより測定された、rhHGF、MSC−またはsiHGF−MSC−CMで処理したまたは無処理のCD14+細胞によるIL−10産生。図10C:rmHGFを注射したまたはしなかったマウス由来のBMおよび脾細胞におけるIL−10産生単球(IL10+CD11b+細胞)集団。細胞総数を100%とする。データは3回の独立した実験に典型的なものであり、平均値±SEMとして示す。#、p<0.05(バーによりそうではないことが示されていない限り対照との比較)。
図11図11は、CD14+単球による、HGFにより誘導されるIL−10の産生はERK1/2経路により媒介されることを示す。図11A:RT−PCRにより検出された、示された時間rhHGFで処理したまたは無処理のU937細胞におけるIL−10発現;内部対照β−アクチン。図11B:ウエスタンブロット法により検出された、rhHGFで処理したまたは無処理のU937細胞におけるリン酸化(p−)ERK1/2、p−STAT3、p−p38、およびp−AKTの発現;ERK1/2、STAT3、p38、AKT、およびα−チューブリンを内部対照として用いた。図11C:RT−PCRにより検出された、rhHGF処理有りまたは無しの場合の、ERK1/2阻害剤U0126、p38 MAPK阻害剤SB203580、またはSTAT3阻害剤cpd188で前処理したU937細胞によるIL−10の遺伝子発現。図11D:rhHGF無し(白いバー)または有り(黒いバー)の場合の、阻害剤U0126またはSB203580で前処理したU937細胞によるIL−10のタンパク質発現;n=3;データは平均値±SEMとして示す。†、p<0.01;、p<0.001(対照との比較)。
図12図12は、CD14+単球におけるHGFにより誘導されるIL−10産生の機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、免疫調節細胞を作出するための方法であって、末梢単核細胞を肝細胞増殖因子で処理して前記末梢単核細胞の免疫調節白血球への分化を誘導することを含む方法を提供する。
【0014】
肝細胞増殖因子(HGF)としては、組換えタンパク質または天然タンパク質、例えば、間葉系幹細胞(MSC)またはその他の細胞株により産生されるタンパク質であり得る。一実施形態では、HGFはMSCに由来する。HGFは、MSCにより産生される分泌タンパク質である。一実施形態では、MSCは、哺乳動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、サル、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコなどから得られる。
【0015】
本出願の方法において、HGF処理は、HGFを提供して、ならびにMSCを提供して、末梢単核細胞と接触させることによって達成することができる。一実施形態では、末梢単核細胞を、HGFを産生してそれを環境に分泌するMSCと共培養することができる。
【0016】
誘導のためのHGFの濃度は、例えば、限定されるものではないが、培地1ミリリットル(ml)当たり3〜40ngの間であり得る。一実施形態では、HGF濃度は、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、40ng/mlまたは上記のいずれか2つの値の間であり得る。一実施形態では、5〜30ng/mlが好ましく、10〜30ng/mlがより好ましい。
【0017】
本出願では、末梢単核細胞は、いずれの血液細胞も1個の球形の核を有することを意味する。末梢単核細胞は、リンパ球、単球、マクロファージ、好塩基球および樹状細胞を含む。リンパ球は、T細胞、B細胞およびNK細胞からなる。一実施形態では、末梢単核細胞は哺乳動物に由来する。
【0018】
HGFは、末梢単核細胞を、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、単球などの免疫調節白血球に分化させる。一実施形態では、免疫調節白血球は、活性化された同種異系リンパ球の増殖を抑制することができる。
【0019】
骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は、アルギナーゼの産生、一酸化窒素合成酵素の産生、制御性T細胞の誘導などを含む数種の免疫調節機能を有する。一実施形態では、MDSCはCD11bおよびCD33を呈し、CD14陰性であり、すなわち、MDSCはCD14CD11bCD33を示す。一実施形態では、本出願の方法を使用することにより、MDSCの量を1.5〜5倍増幅することができる。一実施形態では、MDSCは、非処理の末梢単核細胞では、約1%といった微量を占めるに過ぎないが、HGF処理後には約3%を超えるまでに増幅される。一実施形態では、MDSCは、末梢単核細胞の約3〜10%を占めるまでに増幅することができるが、約3〜5%がより好ましい。
【0020】
単球は、IL−10の産生、抗炎症性サイトカインの産生、免疫応答のTh2優位な応答への調節などを含む数種の免疫調節機能を有する。特に、本出願の方法を使用することにより、単球はIL−10を産生し得るように(すなわち、IL10)誘導される。一実施形態では、誘導された単球はまたCD14も呈し、かつ、CD16陰性であり、すなわち、誘導された単球はCD14CD16IL10を示す。一実施形態では、作出されたCD14CD16IL10単球は、本出願の方法を使用することにより末梢単核細胞の約3%を超え得るのに対して、非処理の末梢単核細胞はCD14CD16IL10単球を全く含まず、CD14CD16IL10単球のみである。好ましい一実施形態では、CD14CD16IL10単球は、末梢単核細胞の量に対して約5%である。
【0021】
本出願はまた、上記の方法に従って作出された免疫調節細胞を提供する。免疫調節細胞は、MSCと共培養され、かつ/またはMSCにより分泌されるHGFによって処理される、従って、細胞分化が誘導される末梢単核細胞に由来する。一実施形態では、免疫調節細胞は、CD14CD11bCD33MDSCである。別の実施形態では、免疫調節細胞は、CD14CD16IL10単球である。
【0022】
本出願は、末梢単核細胞から免疫調節細胞を作出するための簡単、直接的、かつ、迅速な方法を開発する。この方法論は、自己免疫疾患および臓器移植後の移植片拒絶における臨床適用のための免疫調節細胞を作出するためにさらに使用することができる。
【0023】
本出願はさらに、異常な免疫応答により引き起こされる疾患を治療するための方法を提供する。異常な免疫応答により引き起こされる疾患は、例えば、臓器移植の移植片拒絶、または全身性紅斑性狼瘡(system lupus erythematosus)、多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病、小児脂肪便症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病などを含む自己免疫疾患である。
【0024】
本治療方法では、前記疾患を罹患している患者にHGFが投与される。患者は哺乳動物であり得る。一実施形態では、投与されるHGFはタンパク質形態であり、MSCにより分泌されるHGFが好ましく、ヒト起源のMSCにより分泌されるHGFがより好ましい。別の実施形態では、HGFを生成する間葉系幹細胞を患者に投与することが実行可能である。HGFを提供した後、患者の末梢単核細胞をMDSC、単球などの免疫調節白血球へ分化させることができる。この細胞分化から誘導された免疫調節白血球は、患者の免疫系を調節するための様々な免疫機能を示し、従って、異常な免疫応答が調節され得る。
【実施例】
【0025】
実施例1:免疫調節骨髄由来免疫抑制細胞の作出
材料および方法
細胞培養
従前に記載されているように(Yen BL et al., Stem Cells. 2005; 23(1): 3−9; Chang CJ et al., Stem Cells. 2006; 24(11): 2466−77; Liu KJ et al., Cell Transplant. 2011; 20: 1721−30)、ヒト胎盤由来MSC、すなわち、満期胎盤由来のMSC集団を単離し、増幅した。健康なドナー母胎からの満期(妊娠38〜40週)胎盤は、治験審査委員会により承認されたインフォームド・コンセントを伴って入手した。簡単に述べれば、MSCを、10%ウシ胎仔血清(FBS;HyClone)を含む低グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco−Invitrogen)で培養した。集密度70%のMSC培養からの細胞馴化培地(CM)を採取し、試験まで−80℃で保存した。無作為に選択したバフィーコートサンプルからのヒト末梢血リンパ球(PBL)を、治験審査委員会により承認されたインフォームド・コンセント後に健康なボランティアから得た。従前に記載されているようにフィコール−パーク(1.077g/ml;Gibco−Invitrogen)密度勾配遠心分離によって、PBLを分離した。CD14およびCD4T細胞を、それぞれMACS(磁気細胞選別)CD14およびCD4単離キット(Miltenyi Biotec)を製造者の説明書に従って使用することにより、PBLから精製した。簡単に述べれば、PBLを適当な磁気ビーズとともに4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、PBLおよび磁気ビーズ複合体を、1%FBSを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、AutoMACS(Miltenyi Biotec)により陽性画分および陰性画分に単離した。陽性画分を回収し、CD14およびCD4T細胞の純度が98%を超えることをFACS分析により実証し、RPMI−1640培地で培養した。
【0026】
免疫表現型検査
細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析は、BD FACSCaliburフローサイトメトリーシステム(BD Biosciences、ミシソーガ、カナダ)で行った。BioLegend(サンディエゴ、CA、USA)からのCD14、CD33、およびCD11b;R&D Systems(ミネアポリス、MN、USA)からのARG1;Abcam(ケンブリッジ、UK)からのiNOS;およびeBiosciences(サンディエゴ、CA、USA)からのc−met以外の抗体は全て、BD Biosciencesから購入した。
【0027】
MDSCの増幅
PBLを3日間MSCまたは癌細胞株と共培養し(10:1比)、その後、CD14−CD11b+CD33−に関して評価した(なお、これはBD Ariaセルソーター(BD Biosciences)を用いたMDSCのFACS細胞選別にも使用した細胞表面マーカーであった)。一部の実験は、PBLの代わりに、製造者の説明書に従い(Miltenyi Biotec、ベルギッシュ・グラートバッハ、ドイツ)、磁気ビーズにより負の選択を行ったCD14−細胞を用いて行った。組換えヒトHGF(R&D Systems)を示された用量でPBLに加えた。PBL細胞分裂のMDSC抑制分析評価を次のように行った。簡単に述べれば、同種異系PBLを2.5μmol/Lの蛍光色素カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Molecular Probes/Gibco−Invitrogen、グランドアイランド、NY、USA)で10分間標識した後、抗CD3/CD28ビーズ(Gibco−Invitrogen)で刺激した。MSCにより増幅されたMDSCをFACS細胞選別により選別して均質化を図った後、刺激された同種異系PBLと種々のエフェクター:標的(E:T)比で3日間共培養した。フローサイトメトリー解析を行い、CFSE色素強度に関してPBL細胞分裂を評価した。
【0028】
HGF分泌の定量
細胞培養物から上清を回収して、市販のELISAキット(R&D Systems)を製造者の説明書に従って使用することによりHGFの検出を行った。
【0029】
RNA干渉実験
IL−6およびHGFに特異的な低分子干渉RNA(siRNA)をGibco−Invitrogenから購入し、ノックダウン実験を製造者の説明書に従って行った。MSCにより分泌される因子のsiRNAノックダウンの効率をELISAにより確認した。
【0030】
in vivo実験
全ての動物研究は、所内動物実験委員会により承認されたプロトコールに従って行った。C57BL/6マウス(4〜8週齢)を台湾国家実験動物センター(National Laboratory Animal Center of Taiwan)(台北、台湾)から入手した。組換えマウスHGF(100ng、R&D Systems)を尾静脈から注射し、注射3日後にマウスを屠殺した。Gr1+CD11b+細胞のフローサイトメトリー解析のために、末梢血、骨髄、および脾臓を採取した。
【0031】
統計分析
上記の実験において、統計分析はSPSS 18.0ソフトウエア(SPSS Inc.、シカゴ、IL、USA)を用いて行い、統計的有意性をp<0.05と定義した。2群間の比較にはスチューデントのt検定を用い、多群の比較にはANOVAを用いた。
【0032】
実施例1−(1)
MSCは、PBLから多数の機能的CD14−CD11b+CD33−MDSCを増幅することができる。
多様な供給源のMSCの強い免疫抑制特性は、MDSCの増幅を伴うに至ったという報告はこれまでにない。骨髄MSCおよび胎盤MSCは両方とも、CD73、CD105、およびCD90の表面発現が陽性であるが、共刺激分子CD80および86を含む造血系マーカーは陰性である(図1A)。両MSC集団は、多能性MSCの判定基準を満たす骨芽細胞系統、軟骨形成系統、および脂肪生成系統に分化し得る(図1B)。
【0033】
MSCを同種異系ヒトPBLと共培養し、ヒト系においてCD33とCD11bを発現するが、CD14を発現しないと特徴付けられるMDSCに関してアッセイした。図2Aおよび2Bに示されるように、骨髄MSCおよび胎盤MSCは両方とも、PBLから、CD14−CD11b+CD33−細胞の数を増すことができる。MSCにより増幅されたCD14−CD11b+CD33−細胞(「MSCにより誘導されたMDSC」)の特性および生物学的機能を試験し、それらの結果を図2C〜2Fに示す。MSCにより誘導されたMDSCは、共培養によるリンパ球増殖を用量依存的に抑制する機能を持つ(図2C)。MSCにより誘導されたMDSCは、AGR1およびiNOSを発現することができ(図2Dおよび2E)、刺激されたPBLから多数のCD4+CD25high Tregを誘導することができる(図2F)。従って、MSCにより誘導されたMDSCは、複数の免疫調節機能を有する。
【0034】
実施例1−(2)
MSCによるMDSCの増幅は分泌されたHGFにより媒介される
図3Aに示されるように、MSCによるMDSCの増幅は細胞のトランスウェル分離によって影響を受けず、このことは細胞間接触が必要とされなかったことを示し、このプロセスにおける分泌性因子を暗示する。MSCの上清の分析から、図3Bに示されるように、MSCは数種の間質細胞関連因子、例えば、RANTES/CCL5、HGF、およびIL−6を分泌する。IL−6はMDSCの増幅に関連付けられているが、遮断抗体およびsiRNAノックダウン研究の両方を用いたところ、IL−6はMSCによるMDSCの増幅には寄与しなかった(データは示されていない)。
【0035】
HGFはMSCにより高度に分泌されるので、この分子がMSCによるMDSCの増幅に関与するかどうかを評価しなければならない。図3Cに示されるように、組換えHGFを添加するとMDSCの増幅が得られ、この作用はHGF濃度が30ng/mlまでは用量依存的であり、この濃度はMSCの細胞馴化培地で見られたほぼ上限である(図3B)。HGFにより増幅されたMDSCはまたiNOSおよびARG1も発現するとともに、抑制エフェクター機能も有する(それぞれ図3Dおよび3E)。MSCによるMDSCの増幅におけるHGFの関与を評価するために、HGFの分泌を、siRNAによるRNA干渉を有するMSCによって抑制した。MSCによるHGFの分泌が効果的に抑制されるとともに、MSCによるMDSCの増幅が排除された(図3F)。従って、このデータは、MSCにより分泌されたHGFがMDSCの増幅に関与することを裏付ける。
【0036】
他の細胞株由来のHGFも試験した。図4Aおよび4Bに示されるように、数種の細胞株により分泌されたHGFのレベルは、増幅されたMDSCの数と相関する。
【0037】
これらのin vivoにおける所見をバリデートするために、組換えHGFを野生型C57BL/6マウスに静注した。3日後、これらのマウスの骨髄におけるCD11b+Gr1+MDSCの増加が見られ(図4C)、このことは、HGFがin vivo状況下でMDSCを増幅し得ることを示す。
【0038】
実施例1−(3)
HGFによるMDSCの増幅は、その受容体であるc−met、およびSTAT3のリン酸化の増大により媒介される。
さらに、HGFにより媒介されるMDSCの増幅の機構を検討した。MDSC上でのc−met、すなわち、HGFのコグネイト受容体の発現を調べ、CD14−白血球が低レベルのc−metを構成的に発現すること(図5A)、およびCD14−細胞上のc−metが中和抗体で遮断された場合に、HGFによるMDSCの増幅が排除されたこと(図5B)が判明した。次に、MDSCにおけるHGFにより誘導されたSTAT3のリン酸化を調べ、HGF/c−met軸のこれらの作用がSTAT3により媒介されることを確認した。図5Cに示されるように、HGFの外からの添加は、リン酸化STAT3(pSTAT3)のベースラインレベルを超える増加を誘導し、このことはこの経路の活性化を示す。STAT3阻害剤cpd188を外因性HGFの存在下で添加すると、MDSCにおいて上昇したpSTAT3のレベルが用量依存的に排除される(図5D)。従って、HGFは、その受容体c−metと結合することによりMDSCの増幅を媒介し、STAT3のリン酸化の増大をもたらす。
【0039】
HGFにより媒介されるMDSCの増幅の機構を図6に示し、HGF(特にMSCにより分泌される)がMDSCの増幅をもたらし得る。機構的に、MSCにより誘導されるMDSCの増幅は、HGF/c−met軸を介するものであり、この下流でSTAT3が関与する。MSCまたはHGFとの共培養により増幅されるMDSCは、機能的であり、iNOSおよびARG1を発現するだけでなく、抑制機能を保持し、Tregを誘導する。従って、HGFにより誘導されるMDSCは、免疫調節機能を達成する。前記免疫調節機能は、自己免疫疾患、および移植片対宿主病などの他の免疫関連疾患に治療的であり得る。
【0040】
実施例2:免疫調節単球の作出
本出願では、MSCが肝細胞増殖因子(HGF)の分泌を介して免疫調節性IL−10産生CD14+単球の集団を誘導し得ることが分かる。これらの免疫調節単球の存在は、T細胞の増殖を抑制するとともに、T細胞のエフェクター機能をTh1からTh2プロファイルへ変更する。HGFとCD14+単球の間の相互作用もまた検討したところ、このシグナル伝達経路はこれらの免疫調節単球によるIL−10産生に関与していた。
【0041】
材料および方法
細胞培養
実施例1に記載のように、ヒト胎盤由来MSCを単離し、増幅した。
【0042】
ヒト組織球性リンパ腫細胞株U937、およびヒト急性T細胞白血病細胞株Jurkatを、American Type Culture Collection (ATCC)から入手し、公開されているプロトコールに従って培養した。いくつかの実験では、U937を、組換えヒトHGF(rhHGF;Peprotech)処理の前に、ERK1/2阻害剤U0126(Cell signaling)、p38 MAPK阻害剤SB203580(Merck)、およびSTAT3阻害剤cpd188(Merck)で30分間処理でした。
【0043】
細胞増殖アッセイ
細胞を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)中、25℃で10分間、2.5μMのカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE;Gibco−Invitrogen)で染色した。0.1%BSA中で2回洗浄した後、細胞をRPMI−1640培地に再懸濁した後、25℃でさらに10分間インキュベートした。PBLまたはCD14−除去PBLを、MSC培養培地およびrhHGFの存在下または不在下でヒトT−アクチベーター抗CD3/CD28 Dynabeads(Gibco−Invitrogen)または分裂促進因子であるフィトヘマグルチニン(PHA、100μg/ml;Sigma−Aldrich)で刺激した。さらに、抗CD3/CD28ビーズで刺激したCD4+ T細胞を、rhHGFで処理したHLAミスマッチCD14+細胞と種々の比率で共培養した。72時間後、CFSE標識細胞(5×10細胞/ウェル)を採取し、PBSの中で0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)で2回洗浄した。細胞分裂の分析は、従前に報告されているように、FACSによって実施した。
【0044】
サイトカインアレイ
CD14+細胞と共培養したまたはしなかったMSCからのCMを分析した。サイトカインプロファイルはヒト定量的抗体アレイ(RayBiotech)を用いて行い、製造者の推奨に従って処理した。簡単に述べれば、これらの膜を室温で30分間ブロッキングバッファーとともにインキュベートすることによりブロッキングし、サンプルとともに室温で90分間インキュベートした。膜をウォッシュバッファーIで3回、ウォッシュバッファーIIで2回、室温にて各5分洗浄し、ビオチン結合抗体とともに室温で90分間インキュベートした。最後に、これらの膜を洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンとともに室温で2時間、また、検出バッファーとともに2分間、インキュベートした。発光検出器(GenePix 4000Bマイクロアレイスキャナー、Axon Instruments,Inc.)を検出に用い、データをデジタル化し、画像解析を行った(GenePix Proソフトウエア、Axon Instruments,Inc.)。相対的タンパク質濃度は、バックグラウンド染色を差し引いて、同じ膜上の陽性対照に対して正規化することによって得た。
【0045】
RNAサイレンシング
MSCにおけるHGF分泌のRNAサイレンシングは、製造者の推奨に従い、2つの異なるHGFサイレンシングRNA(HGF siRNA)(Stealth Select RNAi(商標)siRNA、Gibco−Invitrogen)を製造者が推奨している陰性対照siRNA(Stealth(商標)陰性対照)とともに使用することにより行った。siRNAは、製造者が推奨している手順に従い、リポフェクタミン(商標)RNAiMAX(Gibco−Invitrogen)を使用することによりMSCにトランスフェクトした。簡単に述べれば、無血漿培地に4〜6時間置き、完全培地に置き換えてから24時間後の細胞にトランスフェクションミックスを加えた。培養3日後に、MSCにおけるHGFのノックダウンを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)をCMのHGFに対して特異的に実施することにより確認した。MSCによるHGF産生および単球/細胞株によるIL−10産生を、従前に報告されているように、また、製造者の説明書(R&D systems)に従ってELISAにより測定した。
【0046】
免疫表現型検査
細胞(PBL、CD14+細胞、白血病細胞株)を種々の表面発現に関して染色し、従前に報告されているようにBD FACSCalibur(BD Biosciences)で分析した(Yen BL et al., Stem Cells. 2005; 23(1): 3−9; Chang CJ et al., Stem Cells. 2006; 24(11): 2466−77; Liu KJ et al., Cell Transplant. 2011; 20: 1721−30)。c−Met(eBiosciences)以外のフローサイトメトリー解析用の全ての抗体はBD Biosciencesから購入した。各解析には適当なFITC結合アイソタイプ対およびPE結合アイソタイプ対照を含めた。
【0047】
細胞内サイトカイン染色
HGFにより処理したCD14+細胞と共培養した、またはしなかった抗CD3/CD28刺激CD4+ T細胞のIFN−γ、IL−4およびIL13産生を、72時間のインキュベーション後に測定した。細胞を50μg/mlのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA;Sigma−Aldrich)、0.745μg/mlのイオノマイシン(Sigma−Aldrich)および4μMのモネンシン(BioLegend)の存在下で4〜6時間再懸濁させた。次に、これらの細胞は抗ヒトIFN−γ FITC(BioLegend)、抗ヒトIL−4 PE(BioLegend)または抗ヒトIL13 PE(BD Biosciences)とともに4℃で45分間インキュベートした。FITC結合アイソタイプ対照およびPE結合アイソタイプ対照を並行使用した。これらの細胞を2回洗浄し、FACS分析のためにPBS−BSAに懸濁させた。
【0048】
in vivo組換えマウスHGFチャレンジ
マウス(C57BL/6)に150μlのPBSに希釈した200ngの組換えマウスHGF(rmHGF;Peprotech)を静注した、またはしなかった。8日後、BM細胞をマウス大腿からPBSで潅流することにより抽出し、脾臓を摘出し、4℃にて3mlシリンジの先端で摩砕し、ナイロンメッシュで濾過した。その後、細胞懸濁液を遠心分離し、赤血球を溶解させ、得られた単細胞懸濁液を洗浄した。Bリンパ球およびTリンパ球を、それぞれCD45R/B220 PE(Biolegend、クローン:RA3−6B2)、CD90.2 PE(eBioscience、クローン:53−2.1)、および抗PE磁気ビーズを用いた脾細胞の磁気選別(auto−MACS)によって除去した。この細胞懸濁液を抗マウスCD11b PE(BioLegend)および抗マウスIL10 PerCPCy5.5(BD Biosciences)とともにインキュベートした後、FACSにより検出した。
【0049】
RNA単離および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
Trizol試薬(Gibco−Invitrogen)を用いて全RNAを抽出し、RT−PCRを従前に報告されているように行った(Chang CJ et al., Stem Cells. 2006; 24(11): 2466−77)。下記のPCRプライマーセットを用いた:IL−10、フォワードプライマー5’−CTGTGAAAACAAGAGCAAGGC−3’、リバースプライマー5’−GAAGCTTCTGTTGGCTCCC−3’およびβ−アクチン陽性対照、フォワードプライマー5’−TGGCACCACCTTCTACAATGAGC−3’、リバースプライマー5’−GCACAGCTTCTCCTTAATGTCACGC−3’。実験は3反復で行った。相対的mRNAレベルを、ImageJソフトウエア(NIH)を用いた濃度測定分析により定量し、β−アクチンに対して正規化した。
【0050】
ウエスタンブロット解析
タンパク質は、従前に報告されているように、細胞から取得した(Yen BL et al., Stem Cell Reports. 20132; 25;1(2):139−51)。ERK1/2、STAT3、およびα−チューブリンに対する一次抗体はSanta Cruz BioTechnologyから入手し、ホスホ−ERK1/2、ホスホ−STAT3、p38 MAPK、ホスホ−p38 MAPK、Akt、およびホスホ−Aktに対する一次抗体はCell Signaling Technologiesから入手した。
【0051】
統計分析
統計分析は、SPSSソフトウエア(SPSS Inc.、バージョン19.0)を用い、一対比較にはスチューデントのt検定を、多重比較にはANOVAを使用することによって行った。データは全て平均±SEMとして表し、p<0.05を統計学的に有意とみなした。実験は全て少なくとも3反復で行った。
【0052】
実施例2−(1)
HGFは抗CD3/28により活性化されたPBLの増殖の抑制に関与する
実施例1に示されるように、MSCは、分泌因子により媒介される作用で、免疫調節をTリンパ球に強く傾ける。図7Aに示されるように、MSCの細胞馴化培地(CM)(MSC−CM)は、単球を優先的に刺激するPHA、またはTリンパ球を特異的に刺激する抗CD3/28のいずれかで活性化されたPBLの増殖を抑制することができる。MSC−CMは、抗CD3/28刺激PBLに対して、PHA刺激PBLよりもやや強い抑制作用を示した。さらに、抗CD3/28刺激PBLをMSCと共培養した場合には、サイトカインプロファイルは、IFN−γおよびTNF−αにより表される炎症誘発性Th1環境から、IL−10により表されるより免疫調節的な環境に変化する(図7B)。
【0053】
アッセイした種々のサイトカイン、ケモカイン、および間質細胞関連分子のうち(図7C)、HGFはMSC−CM中に最も多く分泌される分子である。次に、rhHGFを活性化されたPBLに添加した。驚くことに、rhHGFは抗CD3/28により活性化されたPBLの増殖を抑制することができるが、PHAにより活性化されたPBLの増殖を抑制することはできず(図7D)、このことは、HGFの免疫抑制作用がTリンパ球に向けられることを示唆する。興味深いことに、PBL増殖の抑制に対してHGFの用量依存作用は無い。さらに、siRNAによるMSCにおけるHGFのノックダウン実験を行い、ELISA結果を図7Eに示す。抗CD3/28活性化されたPBLをsiHGF−MSCと共培養した場合、免疫抑制は有意な程度まで復帰した(図7F)。さらに、HGF−siRNA MSCの培養培地もまた、PBLの増殖抑制を部分的に回復させた(データは示されていない)。これらの結果を考え合わせると、MSCにより分泌されるHGFが、抗CD3/28により活性化されたPBL増殖の抑制に関与することが示される。
【0054】
実施例2−(2)
CD14+単球は活性化されたCD4+細胞に対するHGFを介した免疫調節作用に必要とされる
HGFは、チロシンキナーゼ受容体であるc−Metのリガンドである。PHAにより活性化されたPBLとは対照的な抗CD3/28により活性化されたPBLに対するHGFの抑制結果に基づけば、HGFの免疫調節作用はT細胞を標的とすると思われる。しかしながら、c−Metは、初代T細胞(データは示されていない)またはT細胞白血病細胞株であるJurkat細胞(図8A)上では発現しなかった。T細胞はc−Metを発現しないが、単球は低レベルのこの受容体を発現するということは従前に報告されている。単球、すなわちCD14+細胞は、約10%のヒトPBLを含み、ヒト単球白血病細胞株U937、ならびにドナーPBL由来の初代CD14+単球はc−Metを発現することが判明した(図8Aおよび8B)。
【0055】
これらの結果は、T細胞に対するHGFのこれらの作用が、媒介因子として働くための単球を必要とし得ることを示唆する。この仮説を検証するために、CD14+細胞をPBLから除去し、次いで、rhHGFを抗CD3/28により活性化されたPBLに添加した。図8Cに示されるように、抗CD3/28に刺激されたPBLの増殖に対するHGFの抑制作用は、CD14+細胞が除去されると完全に排除された。
【0056】
CD14+ビーズにより選択された単球をrhHGFで処理し、抗CD3/28により刺激されたCD4+細胞と共培養した。図8Dに示されるように、T細胞増殖はHGFで処理したCD14+細胞により阻害することができ、これらの抑制作用はエフェクターと標的細胞(CD14+とCD4+細胞応答)の比が増すにつれ増大した。しかしながら、HGFの用量は、図7Dと同様に、単球を介した抑制には作用を示さなかった。抗CD3/28により活性化されたPBLとHGFで処理したCD14+単球の共培養は、サイトカインプロファイルをTh1優位からTh2プロファイルへ変化させた(図8E)。CD4+ T細胞における細胞内Th1(IFN−γ)およびTh2(IL−4およびIL−13)産生のFACS分析は、CD4+ T細胞をHGFで処理したCD14+細胞と共培養すると、IL−4およびIL−13生産が増大することを示した。対照的に、IFN−γ産生は低下した。これらのデータは、HGFはCD14+単球と直接相互作用してT細胞のエフェクター機能を変更することを示す。
【0057】
実施例2−(3)
HGFはIL−10産生を有意に誘導する
単球は、炎症環境への細胞流入の主要な成分であり、環境刺激に応じて炎症誘導特性および抗炎症特性のいずれかを有するDCまたはマクロファージに分化する。HGFがCD14+単球分化を調節するかどうかを調べるために、表面マーカー発現の、DC系統およびマクロファージ系統への変化を分析した。HGF処理後、CD11b、CD11c、およびHLA−DRのDC関連マーカーにも、CD206のマクロファージ関連マーカーにも発現レベルに変化は無かった(図9A)。さらに、DC−徴候、CD68およびCD73の発現も検出されなかった。しかしながら、CD16−細胞画分は若干増え(図9B)、CD14+単球のサブセットは免疫調節性があることが報告されている。
【0058】
図10Aでは、MSCと共培養したCD14+細胞の定量的サイトカインアレイ分析は、 IFN−γおよびTNF−αを含む炎症性サイトカインの産生の有意な減少と、抗炎症性サイトカインIL−10の有意な増加を示す。このデータは、MSCの免疫抑制作用がIFN−γの減少およびIL−10産生の増加によるものであり得ることを示す。HGFと単球のIL−10産生の増加との間の相互作用をさらに決定づけるために、初代CD14+細胞をrhHGFと共培養し、培養培地中のIL−10濃度を測定した。図10Bに示されるように、HGFで処理したCD14+細胞ならびにMSC−CMで処理したCD14+細胞に由来するCMは、ベースラインレベルを超える高レベルのIL−10産生を有してした。
【0059】
mHGFを野生型B6マウスに注射してin vivoにおけるこれらの効果を調べた。図10Cに示されるように、HGFは、脾細胞では、IL−10産生単球集団に若干の増加を誘導するが、BM細胞または末梢血では誘導しない(データは示されていない)。よって、HGFは、CD14+単球からのIL−10の産生に関与する。
【0060】
実施例2−(4)
HGFはERK1/2のリン酸化を介してIL−10の分泌を誘導する
さらに、HGFにより誘導される単球におけるIL−10産生の機構を検討する。単球細胞株U937細胞をHGFで処理し、IL−10の遺伝子発現の変化を評価した。図11Aに示されるように、IL−10転写産物の増加はrhHGF処理の6時間目をピークとし、HGFはIL−10産生を直接的に担っている可能性があることが示唆される。HGFは、多くの細胞内シグナル伝達経路を誘発し、これらの下流経路のうち、PI3K/AKT、Ras/ERK1/2、p38/MAPK、およびSTAT3もIL−10遺伝子発現の媒介に関与している。図11Bに示されるように、U937細胞のHGF処理後に、ERK1/2、STAT3、およびp38/MAPKのリン酸化は増強されるが、AKTのリン酸化は増強されない。これらの3つの経路をさらに評価するために、U937細胞をHGFと特異的阻害剤:U0126(p−ERK1/2阻害剤)、SB203580(p38/MAPK阻害剤)、およびcpd188(pSTAT3阻害剤)で同時に処理した。図11Cおよび11Dに示されるように、IL−10遺伝子発現は、U0126およびSB203580群では用量依存的に排除されたが、ERK1/2阻害だけが、HGF処理後のIL−10タンパク質産生の有意な低下をもたした。これらの結果は、HGFを介するIL−10の単球産生はERK1/2により媒介されることを示す。
【0061】
図12に示されるように、HGF(特に、MSCにより分泌される)は、CD14+単球に対して、同種異系T細胞機能を調節し、ERK1/2を介してIL−10を増強する働きをする。MSCにより分泌されるHGFは、HGFの受容体であるc−Metを発現するCD14+単球に直接作用して、活性化されたCD4+細胞増殖を抑制する。これらのCD14+単球は,活性化されたCD4+細胞に対する、MSCにより分泌されたHGFの抑制作用、例えば、免疫調節CD14+CD16−単球画分の増大、IL−10産生の誘導、ならびにT細胞サイトカインプロファイルのTh1からTh2プロファイルへの調節に必要とされる。機構的には、HGFは、ERK1/2経路を介してCD14+単球によるIL−10産生を誘導する。上記の例は、MSCの強力な免疫調節特性の背後にある機構の1つを浮き彫りにするとともに、T細胞のエフェクター機能の変更における免疫調節単球の重要な役割を強調する。
【0062】
興味深いことに、T細胞増殖に対するHGFの抑制作用は用量依存的ではなく、これは、単球上のその受容体c−Metの発現レベルが低く、これはおそらく比較的低い閾値の受容体飽和をもたらすためであると思われる。
【0063】
HGFは単球においてERK1/2およびp38MAPKのリン酸化を誘導し、HGFにより誘導されたIL−10産生はERK1/2阻害剤によってのみ遮断されるが、このことは、Ras/Rafシグナル伝達経路がHGFにより誘導される、単球によるIL−10分泌に関与していることを示唆する。ERK1/2は、免疫細胞においてIL−10発現を制御する数種の転写因子、例えば、p38の基質でないMAF、JUN、GATA3およびSMAD4、のリン酸化および活性化を担う。従って、これらの転写因子は、単球におけるHGFにより誘導されるIL−10産生に重要な役割を持ち得る。
【0064】
上記の例は、HGFは、CD14+単球に、細胞が非接着性のまま(分化がまだ起こっていないことを示唆する)、免疫調節表現型を直接的かつ極めて迅速(3日以内)に誘導できることを示す。CD14++CD16−である循環末梢血単球のサブセットは、IL−10を含む、高レベルの抗炎症性サイトカインを産生し得る。循環CD14+単球はPBLの多量成分であり、免疫調節単球が迅速に誘導され得るのであれば、これらの白血球は循環免疫調節細胞全体の量に有意な寄与を果たし得る。
【0065】
本発明は上記で好ましい実施形態および詳細な例に関して開示するが、これらの例は限定ではなく例示を意図するものであると理解されるべきである。改変および組合せも当業者には容易に想到され、これらの改変および組合せも本発明の趣旨および下記の特許請求の範囲ならびにその等価な系および方法の範囲内にあると考えられる。
図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
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