【文献】
Huawei,Uplink Multi-Antenna Power Control, 3GPP TSG-RAN WG1#60b R1-101949,2010年10月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
各図面内の同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0013】
無線通信受信器は、受信信号パワーを測定することができる。パワー測定は、様々な理由で実施することができる。例えばゲイン制御、チャネル推定、送信パラメータ調整、などである。パワー推定は通常、信号を受信する個々の物理通信チャネルに対応する個別のパワー推定メカニズムを用いて実施される。多くの無線通信システムにおいて、複数の物理通信チャネルがアップリンク方向とダウンリンク方向の双方で用いられる。本文書は、様々な物理チャネルが共有する計算および推定結果を識別する複数の技術を提供する。この情報を用いて、受信パワー推定の複雑さを抑えることができ、また受信パワー推定をより正確に実施することができる。
【0014】
本文書は、無線通信信号の受信器において実装して無線通信システムの動作を改善することができるパワー推定技術を開示する。開示するパワー推定技術は、受信信号の共通性を利用して受信パワー推定を改善する。改善した受信パワー推定を用いて、通信チャネルをより正確に推定することができる。以下に詳細に説明するように、多くの通信信号の受信パワーは、既知項および未知項からの寄与分を有する。未知項は、経時変化し得る。未知項は、瞬間的チャネル特性に関連する場合がある。受信器は、異なるタイムスロットまたは周波数リソース(例えば、直交周波数領域多重(OFDM)システムにおける複数のサブキャリア)を用いる単一の送信器から、2以上の異なる信号伝送タイプを受信することができる。受信器は、異なるタイプの信号伝送から推定した未知項を個別にまたは組み合わせて用いることにより、受信信号パワー推定を改善することができる。これらおよびその他技術と利点について、本文書においてさらに説明する。
【0015】
無線通信リンクにおいては、送信器と受信器が存在する。信号伝送において、送信器はある送信パワーにおいて信号を送信する。この送信パワーは、送信器の最大送信パワーによって制限される。送信器は、送信する特定の信号タイプまたは種類に応じて、複数の送信パワーレベルを用いて信号を送信することができる。例えば2つの異なる種類の信号は、未知のデータとパイロット信号(既知の信号)を含む信号である場合がある。異なる信号種類の送信パワーレベルは、様々な要因に応じて経時変化し得る。信号は、送信器の1以上の送信アンテナを介して送信される。
【0016】
受信器にとって、異なる種類の受信信号の受信パワーを時間的にトラッキングすると便宜である。受信器は送信された信号種類を知っていると仮定し、また受信器はそれら信号を識別できると仮定する。受信器は、1つの受信アンテナが受信した信号パワーをトラッキングすることができ、あるいは複数の受信アンテナを組み合わせた信号パワーをトラッキングすることができる。トラッキングした受信パワーは、様々な目的で用いることができる。例えばデータ受信をアシストし、パワー制御コマンドを送信器に対して発行し、受信パワーレベルを予測し、移動体通信システムにおける複数の送信器をスケジューリングすることができる。
【0017】
無線ネットワークのなかには、異なる物理送信チャネルを用いて様々な信号が送信されるものがある。例えば、モバイルデバイスなどのユーザ機器(UE)からネットワークに対するアップリンク方向の送信、およびネットワークからUEに対するダウンリンク方向の送信は、異なる物理送信チャネルにおいて生じる。動作中において、アップリンクおよびダウンリンク物理送信チャネルが同一または類似する周波数応答を有するという観点から、チャネルは“対称”である場合がある。物理送信チャネルの他例として、直交周波数領域多重などのようなマルチキャリア通信を用いる場合、物理チャネルは送信器が割り当てた時間−周波数リソースの組み合わせに対応する。例えばLong Term Evolution(LTE)システムは、様々な物理通信チャネルを規定する。例えば、アップリンク方向におけるphysical hybrid automatic repeat request indication channel(PHICH)およびphysical uplink shared data channel(PUSCH)、physical downlink shared channel(PDSCH)、physical downlink control channel(PDCCH)、などである。
【0018】
図1は、無線通信システムの例を示す。無線通信システムは、1以上のベースステーション(BS)105aと105bを含む。これらはアクセスネットワーク125を形成するように連結され、1以上の無線デバイス110に対して無線サービスを提供する。ベースステーション105aと105bは、無線サービスエリアの異なる場所に配置され、サービスエリアをセルに分割し、無線デバイス110に対して無線サービスを提供することができる。実施例において、ベースステーション(例えば105aまたは105b)は指向性アンテナを備え、2以上の指向性ビームを生成し、セル内の複数のセクタにおいて無線カバー範囲を提供する。
【0019】
1以上のベースステーション105aと105bを有するアクセスネットワーク125は、実施例において、他の無線通信システムおよび有線通信システムとの接続を提供するコアネットワーク(
図1には示していない)と接続している。コアネットワークは、1以上のサービスサブスクリプションデータベースを備え、サービス提供を受ける無線デバイス110に関する情報を格納することができる。システムによっては、異なるベースステーションは異なる無線アクセス技術に基づき動作する。例えば
図1において、第1ベースステーション105aは第1無線アクセス技術に基づき無線サービスを提供するように構成し、第1ベースステーション105bは第1無線アクセス技術とは異なる第2無線アクセス技術に基づき無線サービスを提供するように構成することができる。ベースステーション105aは、配置シナリオにしたがって、フィールド内に同一場所に配置することもできるし、別個に設置することもできる。その構成においては、アクセスネットワーク125は複数の無線アクセス技術をサポートする。
【0020】
本技術およびシステムを実装することができる無線通信システムおよびアクセスネットワークの様々な例としては、CDMA2000 1xなどのCode Division Multiple Access(CDMA)、High Rate Packet Data(HRPD)、evolved HRPD(eHRPD)、Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)、Universal Terrestrial Radio Access Network(UTRAN)、Evolved UTRAN(E−UTRAN)、Long−Term Evolution(LTE)などに基づく無線通信システムがある。実施例において無線通信システムは、異なる無線技術を用いる複数のネットワークを含むことができる。デュアルモードまたはマルチモード無線デバイスは、異なる無線ネットワークに接続するため用いることができる2以上の無線技術を含む。実施例において無線デバイスは、Simultaneous Voice−Data Operation(SV−DO)をサポートすることができる。CDMA2000システムにおいて、コアネットワーク125は、モバイルスイッチングセンタ(MSC)、Packet Data Serving Node(PDSN)などを含むことができる。
【0021】
図2は、無線ステーション205の一部のブロック図である。無線ステーション205は、例えばベースステーションまたは無線デバイスである。無線ステーション205は、マイクロプロセッサなどのプロセッサ電子部品210を備える。プロセッサ210は、本文書が提供する1以上の無線通信技術を実装する。無線ステーション205はさらにトランシーバ電子部品215を備え、例えばアンテナ220などの1以上の通信インターフェース上で無線信号を送信および/または受信する。無線ステーション205は、データを送受信するその他通信インターフェースを備えることができる。無線ステーション205は、データおよび/または命令などの情報を格納するように構成された1以上のメモリを備えることができる。実施例においてプロセッサ電子部品210は、トランシーバ電子部品215の少なくとも一部を含むことができる。記載の簡単のため、
図2においてアンテナ220は単一部品として示している。しかし構成によっては、以下に説明するように無線ステーション205は複数アンテナを備えることができる。
【0022】
実施例において無線ステーション205は、CDMAインターフェースに基づき互いに通信することができる。実施例において無線ステーション205は、直交周波数分割多重(OFDM)インターフェースに基づき互いに通信することができる。これはOrthogonal Frequency−Division Multiple Access(OFDMA)インターフェースを含む。実施例において無線ステーション205は、1以上の無線技術を用いて通信することができる。例えばCDMA2000 1xなどのCDMA、HRPD、WiMAX、LTE、Universal Mobile Telecommunication System(UMTS)、3G、4G、その他現行もしくは今後登場する無線技術である。
【0023】
一般に送信ポイントから受信ポイントへの信号パワー減衰は、異なる物理属性の組み合わせに起因する。例えば信号は、伝搬媒体(空気など)を介して減衰し得る。信号のスペクトル特性は、通信チャネルに起因して変化し得る。これにより所与の周波数バンドにおけるパワー量が変化する。信号は、受信チェーン(例えば無線フロントエンド)における部品を介しても減衰し得る。さらに、信号のスペクトル占有と送信チャネルの時間変化特性に基づき、異なる信号は異なる減衰を受ける場合がある。このセットにおける全種類の受信信号は、トラッキングに対する入力として用いることができる。このように観察量を増やすことにより、セットの全信号のトラッキング精度を改善することができる。例えばLTEにおいて実施されるOFDM送信において、所与のタイムスロットにおける2つの異なる信号送信は、異なるサブキャリアを占有し、よって異なる物理チャネル特性を有する。ただし、信号減衰または受信信号パワーは、これら異なる物理送信の共通減衰特性を識別することにより、モデル化することができる。
【0024】
本文書が開示する技術は、1側面において、受信パワートラッキング精度を改善するのに役立つ。
【0025】
実施形態において、全ての受信信号は、複数の論理セットへ分割することができる。所与のセット内に含まれる信号は、受信器にとって未知の同一項を有することができる。この項においてトラッキングを実施する。異なるセットにおける信号は、異なる既知のパワーオフセットを有する。
【0026】
受信パワー推定は、既知のパワーオフセットを除去することにより、共通正規化パワー変数へ正規化される。この共通変数をトラッキングする。既知のパワーオフセットをトラッキングの出力に対して加算することにより、推定と予測を改善することができる。
【0027】
以下の説明において、説明目的のみのため、Long Term Evolution(LTE)無線通信規格を用いる。説明する技術は、その他無線通信技術に対して適用することもできる。
【0028】
LTEの実施形態において、LTEのPUSCHおよび/またはSRS受信パワーのトラッキングを実施することができる。これら2種類の信号は、共通パワー項を共有する。この項は、UEが推定した推定ダウンリンク経路ロスに基づく。これら2種類の信号は、異なる既知のパワーオフセットを有する。これらオフセットは、例えばパワー制御コマンドや送信帯域幅に起因して経時変化し得る。
【0029】
送信器が送信するM個の異なる信号送信タイプの送信パワーは、下記数式で表すことができる:
【数1】
説明する例における無線信号パワーは、特に言及しない限りdBスケールである。先に述べたように、未知のパワー項はM個の信号全てにおいて等しい。特定の時刻t1において、M種類の信号のうち一部またはすべてが送信され、あるいは全く送信されない。送信器は、同一種類の複数信号を同時に送信することもできる。この場合は例えば、OFDMのようなマルチキャリア送信方式における異なるサブキャリアを用いる。
【0030】
1つの例はLTEネットワークであり、送信器(UE)は以下の信号を送信する:
同時Physical Uplink のないPUSCH (Physical Uplink Shared Channel)
制御チャネル (PUCCH) 送信およびSRS (Sounding Reference Signal)。
【0031】
同様にLTEダウンリンクの場合において、eNodeBは以下の信号を送信する:
PDCCH (Physical downlink control channel) およびCRS (common reference signal)。
【0032】
アップリンク送信の例において、式(1)のM=2、m=1はPUSCHに対応し、m=2はSRSに対応する。
【0033】
同時PUCCH送信がない場合、セルcのサブフレームtにおけるPUCSCHについてのUEの送信パワー(すなわちUEが送信するパワーレベル)は、下記式で与えられる(dBm):
【数2】
M
1,c(t)は、セルcのサブフレームtにおけるリソースブロックのPUSCH帯域幅である。P
1,co(j)は、ネットワークが提供するPUSCHのパワーオフセットである。semi−persistent grantに対応するPUSCH(再)送信については、j=0である。dynamic scheduled grantに対応するPUSCH(再)送信については、j=1である。random access response grantに対応するPUSCH(再)送信については、j=2である。α
c(j)は、ネットワークが提供するパラメータであり、α
c(0)=α
c(1)である。パラメータはあらかじめ提供することもできるし、上位層メッセージによって提供することもできる。PL
cは、セルcについての推定ダウンリンク経路ロスである。パラメータΔ
TF,c(t)は、ネットワークが提供するPUSCHについてのパワーオフセットである。パラメータf
c(t)は、ネットワークが提供するパワーオフセットである。パラメータθ(x)は、逆ステップ関数である(x>0であれば=0であり、それ以外であれば=1である)。パラメータPH
1,c(t)は、セルcのサブフレームtにおけるPUSCHパワーヘッドルームであり、UEからネットワークに対するレポート値に基づいている。
【0034】
セルインデックスcを用いて、例えばキャリアアグリゲーションにおけるキャリアを識別することができる。セルインデックスcは、複数キャリアに対応させることもできる。推定ダウンリンク経路ロスPL
cは通常、ゆっくり経時変化する。すなわち、サブフレーム間ではほとんど変化しない。
【0035】
実施例において、式(2)のうち以下の項はネットワークにとって既知である:10log
10M
1,c(t)、P
1,co(j)、Δ
TF,c(t)、f
c(t)、θ(PH
1,c(t))。α
c(j)PL
cは、ネットワーク(すなわち受信器)にとって未知である。このことは、PUSCH(m=1)について以下が成り立つことを意味する:
【数3】
【数4】
【0036】
PUSCH送信パワーと同様に、セルcのサブフレームtにおけるSRS送信パワーは下記式で与えられる(dBm):
【数5】
M
2,c(t)は、セルcのサブフレームtにおけるリソースブロックのSRS帯域幅である。
P
2,coは、ネットワークが提供するSRSのパワーオフセットである。
α
c=α
c(0)=α
c(1)は、ネットワークが提供するパラメータである。
PL
cは、セルcについての推定ダウンリンク経路ロスである。
f
c(t)は、ネットワークが提供するパワーオフセットである。
PH
2,c(t)は、セルcのサブフレームtにおけるSRSパワーヘッドルームであり、UEからネットワークに対するレポート値に基づいている。
【0037】
上記パラメータのうちいくつかは、式(2)で説明したものと同一である。
【0038】
上記説明と同様に、以下の項はネットワーク(すなわち受信器)にとって既知である:10log
10M
2,c(t)、P
2,co(j)、f
c(t)、θ(PH
2,c(t))。
【0039】
以下の項は、ネットワーク(すなわち受信器)にとって未知である:α
cPL
c。このことは、SRS(m=2)において以下が成り立つことを意味する:
【数6】
【数7】
【0040】
式(7)と式(4)を比較すると、P
unknown(t)はPUSCH(同時PUCCH送信なし、j=0または1)とSRSの双方において等しいことが分かる。このことは、これら2つの信号が式(1)の一般モデルにしたがうことを意味する。
【0042】
広帯域信号について、これらパワーと減衰は、広帯域全体の平均を示し、または広帯域の範囲内における狭帯域についてのパワーと減衰を示す。
【0043】
パワーと減衰は、高速送信パワー変化および高速無線チャネル減衰に起因する高速時間変化を示す場合がある。パワーと減衰は、低速送信パワー変化および低速無線チャネル減衰(大規模減衰)に起因する低速時間変化を示す場合もある。後者の場合(低速変化)において、これらは低速変化する高速時間変化の時間平均にしたがう。
【0044】
無線チャネル減衰項は、その他の時間変化要因を含む場合がある。例えば不均一アンテナゲインや、時間変化する送信器特性および受信器特性である。通常の無線ネットワークにおいて、受信器は時刻tにおいて送信された信号の種類を知っているかまたは検出することができる。
【0045】
LTE実施例において、セルcのサブフレームtにおけるPUSCH(同時送信なし、j=0または1)とSRSについての平均受信パワーは、下記式で与えられる:
【数9】
m=1はPUSCHに対応し、m=2はSRSに対応する。この例においてM=2である。アップリンク経路ロスPL
cUL(t)(低速無線チャネル減衰)は、セルcについて用いられる周波数バンドおよび高速時間減衰にまたがった平均であり、したがってゆっくり変化する。
【0047】
【数11】
C(t)=P
unknown(t)−A(t)は、M種類の信号間で共通な項を示す。実施形態において、P
unknown(t)はM種類の信号間で等しいと仮定することができる。
【0048】
M種類の受信信号に基づき、変数C(t)を時間的にトラッキングすることができる。トラッキングは、本文書において記載の簡易のため記載していない様々な適応フィルタリングまたはデータ融合アルゴリズム(例えばカルマンフィルタリング)を含むことができる。推定ノイズn
m(t)は、mとtが異なれば異なる特性(例えば分散などの統計的特性)を有する場合がある。受信器はこれら特性を推定し、C(t)のトラッキングを改善するために用いることができる。実施形態において、C(t)をトラッキングする性能は、P
mRx(t)をトラッキングする性能よりも優れている傾向がある。M種類の信号全てについてP
mRx(t)を観察することは、C(t)のトラッキングと組み合わせることができるからである。
【0051】
C(t)のトラッキングは、予測を含むこともできる。例えばC(t+Δt)の予測である。したがって種類mの信号についての受信パワーは、下記式により予測することができる:
【数14】
時刻t+Δtにおけるパワーオフセットは既知であるものとする。
【0052】
図3は、受信器におけるパワートラッキングデバイス300の例を示す。デバイス300は、パワー推定機能302と304を備える。これらを用いて計算を実施し、以下に説明するようにパワートラッキング機能306に対する入力を提供する。図面における文字は、以下の変数に対応する:
【数15】
【0053】
M個の異なる信号タイプを処理しているとき、対応するM個のパワー推定器302と304が存在し得る。Mは正整数である。
【0054】
動作中において、受信器は送信器が送信した異なる種類の信号を異なる時刻において受信する。これら信号は一般に、異なる物理通信チャネル上で送信され、受信器にとって未知のパワーレベルで受信される。ただし受信パワーレベルは、未知の成分と既知の成分を有する場合がある(ともに送信チャネル上においていくらか減衰している)。
【0055】
図3は、受信信号がM種類のうちいずれかである構成を反映している(例えば
図3におけるaまたはf)。この場合、信号パワー(
図3におけるbまたはg)を推定するとともに、推定ノイズの特性(
図3におけるcまたはh)を推定する。既知のパワー成分(
図3におけるdまたはi)は推定パワーから減算され、正規化パワー推定結果(
図3におけるeまたはj)が得られる。これら正規化パワー推定結果を用いて、共通変数C(t)をトラッキングすることができる。この変数の推定結果は、トラッキングの出力(
図3における変数k)となる。対応するトラッキングした受信パワー値(
図3におけるnとq)を取得するため、既知のパワーオフセット(
図3におけるlとp)を加算することにより正規化を反転する。
【0056】
送信器は、異なる時刻または周波数において異なる種類の信号を送信する場合がある。例えばLTEにおいて、UEは、ベースステーションが明示的または暗黙的に通知したスケジュールにしたがって、異なる時刻においてデータ(例えばPUSCH)または基準信号(例えばSRS)を送信する場合がある。送信器が信号を全く送信しない時刻もある。したがって、トラッキングユニット(例えば
図3におけるc、e、h、j)に対する入力は、受信パワー推定とこれに対応する推定エラー特性が入手可能な特定の時刻においてのみ提供される場合がある。トラッキングユニットは、これら異なる入力をタイムウインドウ(例えば10個や100個などの複数のサブフレーム)にまたがって収集することができる。これらは、異なる時刻において出力推定に対する異なるエラー特性をともなって提供される。この推定結果を用いて、当該信号タイプの既知のパワーオフセット(
図3におけるp)を加算することにより、次の送信の受信パワー(例えば
図3におけるq)を予測することができる。
【0057】
先に説明したLTEの例に戻る。説明目的のみのため、特定の例について述べる。2つの異なる種類の信号を考慮する(M=2)。m=1はPUSCHに対応し、m=2はSRSに対応する。
【0058】
UEは、セルcのサブフレームtの間に、PUSCHとSRSをともに送信するものと仮定する。
【数16】
【0060】
受信パワーは、以下の式にしたがって再正規化することにより推定することができる:
【数18】
【0063】
図4は、無線通信システムにおいて実装できるプロセス400のフローチャートの例を示す。プロセス400は、ベースステーションやユーザ機器またはその双方などの受信器側において様々な構成で実装することができる。
【0064】
ステップ402において、受信器は通信チャネル上で複数の信号送信を受信する。実施例において、複数の信号送信は複数の送信パワーを用いて送信される。各送信パワーは、受信器にとって未知な共通送信パワー項(値)と、受信器にとって既知な複数の信号固有パワーオフセットとの組み合わせである。
【0065】
例えば上記様々な基準信号などのような様々な構成において、複数の信号送信は異なる周波数リソースを用いることができる(例えばOFDMシステムの複数のサブキャリア)。構成例として、複数の信号送信は、異なる時間リソースを用いることができる。例えば、時間領域多重(TDD)無線通信システムにおける異なるタイムスロットである。
【0066】
先の例において説明したように、複数の信号送信は基準信号を含むことができる。複数の信号送信は、データ送信を含むこともできる。
【0067】
ステップ404において、受信器は受信パワーを測定する。実施形態において、受信パワーは様々な利用可能技術のうちいずれか1つを用いて測定される(例えばバンドパスフィルタリング、時間平均、積分、など)。
【0068】
ステップ406において、対応する既知のパワーオフセットを、測定した受信信号パワーから減算し、未知の共通パワー項についての対応する推定結果が得られる。これにより共通送信パワー項についての複数の推定結果が得られる。先に説明したように、多くの無線信号(例えばLTEアップリンクにおけるPUSCHやSRS、LTEダウンリンクにおける物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)や共通基準信号(CRS))は、既知のパワーレベルを有する。
【0069】
ステップ408において、共通送信パワー項の複数の推定結果から、高精度な共通送信パワー項を推定する。1構成例として、共通送信パワー項の高精度推定は、
図3で説明したように実施することができる。高精度推定結果は、複数推定結果のカルマンフィルタリングなどの信号処理技術を用いて得ることができる。実施例において、高精度推定結果は複数推定結果を適応フィルタリングすることにより得られる。
【0070】
ステップ410において、複数の信号固有パワーオフセットを高精度共通パワー項に対して加算することにより、複数の高精度測定受信信号パワーを取得する。1構成例として高精度測定受信信号パワーは、
図3で説明したようにして取得することができる。
【0071】
ステップ412において、高精度共通送信パワー項に基づき、無線通信システムの機能を調整する。実施例において、上記機能は送信器側の動作パラメータに関する。例えば送信器からの送信スケジュールである。実施例において、上記機能は受信器側の動作パラメータに関する。例えばゲイン制御の調整、チャネル推定の改善、送信器から送信する所望の信号コンステレーションや送信器から送信する所望のチャネル符号化レートの計算、などである。実施例において上記無線通信システムの機能は、受信器に対して信号を送信する送信器に対応し、受信器から送信器に対する後続の送信パワーを調整することができる。
【0072】
実施例において、送信器はベースステーションやアクセスポイントなどのようなネットワーク側ノードであってもよく、受信器はユーザ機器(スマートフォン、タブレット、ハンドヘルドコンピュータなど)であってもよい。ユーザ機器は、チャネル品質フィードバックなどと呼ばれるフィードバックをベースステーションに対して提供し、これによりベースステーションは、移動体システムにおける以後の送信スケジュールを調整するとともに、ユーザ機器が使用する送信パラメータを調整することができる。チャネル品質フィードバックに基づくこれら機能の調整は、当該分野において用いられている技術のいずれかを用いて実施することができる。
【0073】
実施例において、上記調整は、受信器から送信器に対して、以後の送信におけるコンステレーション、符号化レート、または送信パワーの変更をリクエストすることを含む。実施例において、受信器は無線通信システムにおけるネットワーク側ノードであり、上記調整動作は、以後の受信器に対する送信におけるパワー調整または受信器に対する信号送信スケジュールの調整を含む。
【0074】
図5は、無線通信装置500のブロック図である。モジュール502は、通信チャネル上で複数の信号送信を受信器において受信するためのものである。この複数の信号送信は、複数の送信パワーを用いて送信される。各送信パワーは、受信器にとって未知の共通送信パワー項、および受信器にとって既知の複数の信号固有パワーオフセットを共有する。モジュール504は、受信器において受信パワーを測定するためのものである。モジュール506は、測定した受信信号パワーから対応する既知のパワーオフセットを減算し、未知の共通パワー項に対応する推定結果を得るためのものである。これにより、共通送信パワー項の複数の推定結果を得る。モジュール508は、共通送信パワー項の複数の推定結果から高精度共通送信パワー項を推定するためのものである。モジュール510は、複数の信号固有パワーオフセットを高精度共通パワー項に対して加算することにより複数の高精度測定受信信号パワーを取得するためのものである。モジュール512は、高精度共通送信パワー項に基づき無線通信システムの機能を調整するためのものである。装置500、およびモジュール502、504、506、508、510、512はさらに、本文書が開示する様々な機能を実装するように構成することができる。
【0075】
本文書が開示する技術は、ベースステーションなどのネットワーク側ノード、またはスマートフォン、タブレット、コンピュータなどのユーザ側デバイスにおいて実装することができる。実施例において、ネットワーク側機器は複数のアンテナと複数の対応する受信器を含む。さらに複数アンテナのサブセットは、同じ場所に設置されていなくともよい。これら実施例において、本文書が説明した受信器側機能は、複数アンテナの第1サブセットを用いて信号を受信することができる。上記推定パワーを用いて、以後の信号送信を受信する複数の受信器アンテナの第2サブセットを選択することができる。実施例においてアンテナの第2サブセットは、アンテナの第1サブセットと同じであってもよい。実施例において、第1セットに対してアンテナを追加しまたはアンテナを取り除いて、アンテナの第2サブセットを生成してもよい。
【0076】
実施例において、上記推定パワーを用いて、以後の送信において用いるアンテナサブセットを選択することができる。
【0077】
説明したパワー測定技術により、受信した信号送信タイプ間で共通な既知の成分および信号固有の未知の成分へ、測定したパワーをパラメータ化できることを、当業者は理解するであろう。既知の共通成分の推定は、受信信号を用いて実施され、受信パワー推定を全体的に改善する。
【0078】
当業者はさらに、様々な信号送信について受信パワー推定結果をトラッキングする技術が開示されていることを理解するであろう。1側面において、第1信号の受信パワーがトラッキングされる。
【0079】
本文書が開示したものその他の実施形態、モジュール、および機能動作(例えばパワー測定器、減算器、推定器、高精度パワー計算器、調整器、受信器など)は、デジタル電子回路内、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア内に実装することができる。これらは本文書が開示する構造およびその等価構造、さらにはこれらの1以上の組み合わせを含む。開示する実施形態およびその他の実施形態は、1以上のコンピュータプログラム製品として実装することができる。すなわち、コンピュータ読取可能媒体に記録され、データ処理装置が実行しまたはその動作を制御する、1以上のコンピュータプログラム命令のモジュールである。コンピュータ読取可能媒体は、機械読取可能記憶装置、機械読取可能記憶基板、メモリデバイス、機械読取可能伝搬信号を生成する合成物、または・BR>アれらの1以上の組み合わせである。データ処理装置という用語は、全ての装置、デバイス、データ処理機械を包含する。これらは例えばプログラム可能プロセッサ、コンピュータ、マルチプロセッサまたはコンピュータを含む。装置は、ハードウェアに加えて、コンピュータプログラムの命令環境を生成するコードを含む。例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはこれらの1以上の組み合わせを構成するコードである。伝搬信号は、人工生成された信号である。例えば、適当な受信装置に対して送信するために情報をコード化するように生成された、機械生成による電気的、光学的、または電磁的信号である。
【0080】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られている)は、任意形態のプログラム言語で記述することができる。これはコンパイル言語またはインタプリタ言語を含み、任意形態で配布することができる。これはスタンドアロンプログラムまたはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、その他のコンピュータ環境において使用するのに適したユニットを含む。コンピュータプログラムは、ファイルシステムに対応している必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータ(例えば、マークアップ言語文書内に格納された1以上のスクリプト)を保持する、当該プログラム専用の単一ファイル内または複数協調ファイル(例えば、1以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)内におけるファイルの一部に格納することができる。コンピュータプログラムを配布して、1サイトに配置されまたは複数サイトをまたがって通信ネットワークによって相互接続配置された1以上のコンピュータによって実行することができる。
【0081】
本文書において開示するプロセスとロジックフローは、1以上のコンピュータプログラムを実行する1以上のプログラム可能プロセッサによって実施して、入力データ上で動作し出力を生成することにより機能を実施することができる。プロセスとロジックフローは例えばFPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)のような特定用途論理回路によって実施することもできる。装置はこれら回路として実装することもできる。
【0082】
コンピュータプログラムを実行するのに適したプロセッサは、例えば汎用および特定用途マイクロプロセッサ、または任意タイプのデジタルコンピュータの1以上のプロセッサを含む。一般にプロセッサは、読取専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたはこれら双方から命令とデータを受信する。コンピュータの必須要素は、命令を実施するプロセッサと、命令およびデータを格納する1以上のメモリデバイスである。一般にコンピュータはさらに、データを格納する1以上の大規模記憶デバイスを備え、またはこれらと動作可能に連結されデータを受信または送信する。例えば光磁気ディスク、または光ディスクである。しかしコンピュータはこれらデバイスを必ずしも備えなくともよい。コンピュータプログラム命令とデータを格納するのに適したコンピュータ読取可能媒体は、不揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスの全ての形態を含む。これは例えば、EPROMやEEPROMのような半導体メモリデバイス、フラッシュメモリデバイス、例えば内部ハードディスクやリムーバブルディスクのような磁気ディスク、光磁気ディスク、CDROMおよびDVD−ROMディスクを含む。プロセッサとメモリは、特定用途論理回路内によって補充され、またはその内部に設けることができる。
【0083】
本文書は詳細記述を含むが、これらは特許請求しまたはする可能性のある本発明の範囲に対する制約として解釈すべきではない。むしろ特定実施形態に固有の構成の記述として解釈すべきである。個々の実施形態の文脈において本文書が開示する特定要素は、単一実施形態の組み合わせにおいて実装することができる。これとは反対に、単一実施形態の文脈において開示する様々な要素は、複数の実施形態またはその任意の組み合わせにおいて個別に実装することができる。さらに、要素は特定の組み合わせにおいて動作することを説明し、そのように特許請求しているが、特許請求する組み合わせからの1以上の要素は場合によっては組み合わせから除去することができる。特許請求する組み合わせは、サブ組み合わせまたはサブ組み合わせの変形物とすることができる。同様に、図面内の動作は特定順序で示したが、所望結果を実現するために、そのような動作を図示する特定順序で実施することが必要であり、また全動作を実施することが必要であると解釈すべきではない。
【0084】
数個の例と実装のみを開示した。開示内容に基づき、説明した例および実装に対する変形、修正、拡張、その他の実装をすることも可能である。