(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被膜を形成する段階で前記移送ガスまたは前記基材は0℃乃至1000℃の温度に維持されることを特徴とする請求項1に記載の複合被膜粒子粒径を有する被膜の形成方法。
前記基材はプラズマ環境に露出する部品、人体への挿入機構物、LED(Light Emitting Diode)用基板またはヒートシンク、車両のECU(Electronic Control Unit)用基板またはヒートシンク、車両の点火モジュール用基板またはヒートシンク、電力半導体モジュールの基板またはヒートシンク、電力コンバータの基板またはヒートシンク、または燃料電池用放熱基板であることを特徴とする請求項10に記載の複合被膜粒子粒径を有する被膜。
前記部品は静電チャック(electro static chuck)、ヒーター(heater)、チャンバーライナ(chamber liner)、シャワーヘッド(shower head)、CVD(Chemical Vapor Depositionition)用ボート(boat)、フォーカス環(focus ring)、ウォールライナ(wall liner)、シールド(shield)、コールドパッド(cold pad)、ソースヘッド(source head)、アウタライナ(outer liner)、デポジションシールド(deposition shiled)、アッパーライナー(upper liner)、排出プレート(exhaust plate)、エッジ環(edge ring)およびマスクフレーム(mask frame)のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項18に記載の複合被膜粒子粒径を有する被膜。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。
本発明の実施例は該当技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、下記実施例は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。むしろ、これら実施例は本開示をより充実かつ完全になるようにし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0021】
また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施例を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。本明細書に用いられたように、単数型は文脈上異なる場合を明白と指称するものでない限り、複数型を含むことができる。また、本明細書で用いられる‘含む(comprise)’および/または‘含んでいる(comprising)’は言及された形状、段階、数字、動作、部材、要素および/またはこれらの組み合わせが存在することを特定するものであり、一つ以上の他の形状、段階、数字、動作、部材、要素および/またはこれらの組み合わせの存在または付加を排除するものではない。なお、本明細書で用いられたように、‘および/または’という用語は該当記載された項目のうちいずれか一つおよび一つ以上のすべての組み合わせを含む。
【0022】
本明細書で第1、第2などの用語が多様な粒子、層、部材、部品、領域および/または部分を説明するために用いられるが、これら粒子、層、部材、部品、領域および/または部分は、前記用語によって限定されてはならないということは明らかであろう。前記用語は一つの粒子、層、部材、部品、領域または部分を他の粒子、層、部材、部品、領域または部分から区別する目的にのみ用いられる。したがって、以下に説明する第1粒子、層、部品、領域または部分は、本発明の思想を外れなくても第2粒子、層、部品、領域または部分を指称することができる。
【0023】
図1は本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有する被膜形成のための装置を示した概略図であり、
図2は本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有する被膜形成方法を示したフローチャートである。
【0024】
図1に示されているように、本発明に係る被膜形成装置200は、移送ガス供給部210と、粉末(powder)を保管および供給する粉末供給部220と、粉末供給部220から粉末を移送ガスを利用して高速で移送する移送管222と、移送管222からの粉末を基材231にコーティング/積層またはスプレーするノズル232と、ノズル232からの粉末が基材231の表面に衝突、破砕および/または粉砕されるようにすることによって、一定の厚さの被膜(coating layer)が形成されるようにする
プロセスチャンバー230とを含む。
【0025】
図1および
図2を参照して、本発明に係る被膜形成方法について説明する。
移送ガス供給部210に貯蔵された移送ガスは酸素、ヘリウム、窒素、アルゴン、二酸化炭素、水素およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明は移送ガスの種類に限定されるものではない。移送ガスは移送ガス供給部210からパイプ211を通じて粉末供給部220に直接供給され、流量調節器250によってその流量および圧力が調節されることができる。
【0026】
粉末供給部220は多量の粉末を保管および供給し、このような粉末は粒径範囲がほぼ0.1μm乃至50μmであることができる。一例として、粉末は第1粒径範囲および第1の最頻数(mode)を有し正規分布と類似の特性を有することができる。
【0027】
粉末の粒径範囲がほぼ0.1μmより小さい場合、粉末の保管および供給が難しいだけでなく、粉末の保管および供給中に凝集現象により、粉末の噴射、衝突、破砕および/または粉砕時に0.1μmより小さい粒子が固まっている形態である圧粉体が形成されやすくなるだけでなく大面積の被膜形成が難しいという短所もある。
【0028】
また、粉末の粒径範囲がほぼ50μmより大きい場合、粉末の噴射、衝突破砕および/または粉砕時に基板を削るサンドブラスチング(sand blasting)現象が発生しやすくなるだけでなく、一部形成された被膜も被膜内の粒子粒径が相対的に大きく形成されて、被膜構造が不安定になり、また、被膜内部または表面の気孔率が大きくなって素材本来の特性が発揮できなくなることもある。
【0029】
粉末の粒径範囲がほぼ0.1μm乃至50μmである場合、気孔率(空隙率)が相対的に小さく、表面マイクロクラック現象がなく、粉末制御が容易な複合被膜粒子粒径を有する被膜が得られる。また、粉末の粒径範囲がほぼ0.1μm乃至50μmである場合、被膜の積層速度が相対的に高く、半透明で、素材特性の実現が容易な複合被膜粒子粒径を有する被膜が得られる。このような粉末は脆性材料または/および軟性材料であることができる。脆性材料は壊れやすく伸びない材料であって、セラミックおよびガラスなどを含む。また、軟性材料は脆性材料とは反対に、よく伸びる材料であって、銅および鉛などを意味する。
【0030】
具体的に、脆性材料粉末はイットリア(Y
2O
3)、YAG(Y
3Al
5O
12)、希土類系(YおよびScを含んで原子番号57から71までの元素)酸化物、アルミナ(Al
2O
3)、バイオガラス、ケイ素(SiO
2)、水酸化燐灰石(hydroxyapatite)、二酸化チタン(TiO
2)およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0031】
より具体的に、脆性材料または軟性材料粉末は水酸化燐灰石、燐酸カルシウム、バイオガラス、Pb(Zr、Ti)O
3(PZT)、アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア(ZrO
2)、イットリア(Y
2O
3)、イットリア−ジルコニア(YSZ、Yttria stabilized Zirconia)、酸化ジスプロシウム(Dy
2O
3)、ガドリニア(Gd
2O
3)、セリア(CeO
2)、ガドリニア−セリア(GDC、Gadolinia doped Ceria)、マグネシア(MgO)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、マンガン酸ニッケル(NiMn
2O
4)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNaNbO
3)、チタン酸ビスマスカリウム(BiKTiO
3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BiNaTiO
3)、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、BaFe
2O
4、NiZnFe
2O
4、ZnFe
2O
4、MnxCo
3−xO
4(ここで、xは3以下の正の実数)、ビスマスフェライト(BiFeO
3)、ニオブ酸ビスマス亜鉛(Bi
1.5Zn
1Nb
1.507)、燐酸リチウムアルミニウムチタンガラスセラミックス、Li−La−Zr−O系ガーネット型酸化物、Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物、La−Ni−O系酸化物、燐酸リチウム鉄、リチウム−コバルト酸化物、Li−Mn−O系スピネル酸化物(リチウムマンガン酸化物)、燐酸リチウムアルミニウムガリウム酸化物、酸化タングステン、酸化錫、ニッケル酸ランタン、ランタン−ストロンチウム−マンガン酸化物、ランタン−ストロンチウム−鉄−コバルト酸化物、シリケート系蛍光体、SiAlON系蛍光体、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、AlON、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化マグネシウム、ホウ化チタン、金属酸化物と金属窒化物との混合体、金属酸化物と金属炭化物との混合体、セラミックスと高分子との混合体、セラミックスと金属との混合体、ニッケル、銅、ケイ素およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0032】
ここで、水酸化燐灰石(hydroxyapatite、 Ca
10(PO
4)
6(OH)
2))はDCPD(Dicalcium Phosphate Dihydrate、CaHPO
4.2H
2O)、DCPA(Dicalcium Phosphate Anhydrate、CaHPO
4)、OCP(Octacalcium Phosphate、Ca
4H(PO
4)
3.5/2H
2O)、β−TCP(β−Tcalcium Phosphate、β−Ca
3(PO
4)
2)、α−TCP(α−Tcalcium Phosphate、α−Ca
3(PO
4)
2)、Te−CP(Tetracalcium Phosphate、Ca
4O(PO)
2)およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0033】
図3は本発明の一実施例に係る粉末の粒径分布を示したグラフであり、これを利用して粉末の粒径特性をより詳しく説明する。
図3において、X軸は粉末粒径(μm)を意味し、またログスケール(log scale)で示されており、Y軸は粉末粒径(nm)の個数(ea)または粉末粒径(nm)の比率(%)を意味する。
【0034】
粉末(powder)の粒径(粒度)分析はレーザ回折技術を利用して行われるが、このように粉末の大きさを測定する装備の一例としてベックマン・コールター(Beckman Coulter)社のLS13320のような分析装備がある。
【0035】
より具体的に、粉末の粒径(粒度)分析方法を説明すれば、水のような溶媒に粉末を入れてほぼ10%の濃度を有する懸濁液で希釈してスラリー(slurry)を作る。その後、このようなスラリーを超音波や回転子を利用して粉末が均一に分散するようにする。その後、このように分散したスラリー状態の粉末を循環させレーザビームを前記分散したスラリー状態の粉末に入射させ、この時、粉末を通過して散乱されるレーザビームの強さを測定して粉末の粒径を測定する。
【0036】
このような分析装備による粉末の分析範囲はモデルごとに若干相異しているが、ほぼ0.017μm乃至2,000μmである。
図3に示されているように、粉末は第1粒径範囲および第1の最頻数を有することができる。より具体的に、粉末の第1粒径範囲はほぼ0.1μm乃至25μmであり、粉末の第1の最頻数はほぼ1μm乃至10μmである。
【0037】
さらに、粉末は第2粒径範囲および第2の最頻数をさらに含むことができる。この場合、粉末の第2粒径範囲はほぼ15μm乃至50μm、望ましくは25μm乃至50μmであり、粉末の第2の最頻数はほぼ20μm乃至40μm、望ましくは30μm乃至35μmである。
ここで、一例として、粉末の第1の最頻数が占める最大個数はほぼ5つ(または5%)より小さく、粉末の第2の最頻数が占める最大個数はほぼ0.5個(または0.5%)より小さいこともある。
【0038】
実質的に、粉末の第1、第2粒径範囲、第1、第2最頻数、およびその個数(比率)が上述した範囲を外れる場合、以下に説明する気孔率0.01%乃至1.0%を有する被膜を得にくい問題がある。
【0039】
一例として、ほぼ0.1μmより小さい粒径範囲の粉末だけを利用して被膜を形成する場合、粉末自らの粒径範囲が小さいことによって、全般的に被膜の透光性が優れて気孔率は小さいが、被膜形成速度が相対的に遅く粉末が凝集して粉末の制御が難しいという問題がある。
【0040】
他の例として、ほぼ50μmより大きい粒径範囲の粉末を利用して被膜を形成する場合、粉末自らの粒径範囲が大きいことによって、全般的に被膜の積層速度は速いが、被膜の気孔率が高く、したがって表面マイクロクラック現象で被膜構造が不安定になるという問題がある。
【0041】
実質的に、ほぼ50μmより大きい粒径範囲の粉末を利用して半導体工程に適用されるプラズマ抵抗性イットリウムオキシドの被膜を形成する場合、イットリウムオキシドの優れた耐プラズマ特性にもかかわらず、被膜形成工程中に発生した不安定な微細構造によって微細構造内部の粗大な粒子の間の気孔が大きく、このような気孔で表面積が増加し、したがって、気孔の間に腐食性ガスが流入してプラズマ腐食速度が加速化され、これによって腐食されたイットリウムオキシド粒子が被膜から分離されて汚染粒子として作用するという問題がある。
【0042】
一方、粉末は高速移送に有利なほぼ球形であることができるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、粉末は層状構造、針状構造または多角構造も可能である。
さらに、前記においては1つの粒径範囲および1つの最頻数、または2つの粒径範囲および2つの最頻数を有する粉末を例として挙げたが、必要に応じて、3つ以上の粒径範囲および3つ以上の最頻数を有する粉末を本発明に用いることもできる。
【0043】
もちろん、このような第2、第3粒径範囲および第2、第3最頻数に本発明に用いられた粉末を限定するものではなく、本発明に係る被膜は前述のように一つの最頻数を有し、粒径範囲がほぼ0.1μm乃至50μmの粉末によって形成されることもある。この時、最頻数はほぼ1μm乃至10μmの範囲であり、さらに望ましくはほぼ4μm乃至10μmの範囲である。
【0044】
ここで、本発明に係る粉末は本出願人による大韓民国登録特許10−1075993号(2011年10月17日)に開示された方法で形成することができるが、本発明はこのような方法に限定されるものではない。
また、
図1および
図2を参照して本発明に係る被膜形成方法について引き続き説明する。
【0045】
プロセスチャンバー230は被膜形成中に真空状態を維持し、このために真空ユニット240が連結される。より具体的に、
プロセスチャンバー230の圧力はほぼ1パスカル乃至800パスカルであり、高速移送管222によって移送される粉末の圧力はほぼ500パスカル乃至2000パスカルであることができる。ただし、いかなる場合でも、
プロセスチャンバー230の圧力に比べて高速移送管222の圧力が高くなければならない。
【0046】
さらに、
プロセスチャンバー230の内部温度範囲はほぼ0℃乃至30℃であり、したがって別途に
プロセスチャンバー230の内部温度を増加させたり減少させたりするための部材を必要としない。つまり、移送ガスまたは/および基材を別途に加熱せずに、0℃乃至30℃の温度に維持できる。
【0047】
しかし、場合により被膜の蒸着効率および緻密度向上のために、移送ガスまたは/および基材はほぼ300℃乃至1000℃の温度で加熱できる。つまり、別途の示されていないヒーターによって移送ガス供給部210内の移送ガスを加熱したり、または別途の示されていないヒーターによって
プロセスチャンバー230内の基材231を加熱したりすることができる。このような移送ガスまたは/および基材の加熱によって被膜形成時に粉末に加わるストレスが減少することによって、気孔率が小さく緻密な被膜が得られる。ここで、移送ガスまたは/および基材がほぼ1000℃の温度より高い場合、粉末が溶融しながら急激な相転移が起こり、よって、被膜の気孔率が高くなり被膜内部構造が不安定になることができる。また、移送ガスまたは/および基材がほぼ300℃の温度より小さい場合、粉末に加わるストレスが減少しないことがある。
【0048】
しかし、本発明はこのような温度範囲に限定されるものではなく、被膜が形成される基材の特性により移送ガス、基材および/または
プロセスチャンバーの内部温度範囲は0℃乃至1000℃に調整することができる。
【0049】
一方、前述のように、
プロセスチャンバー230と高速移送管222(または移送ガス供給部210または粉末供給部220)の間の圧力差はほぼ1.5倍乃至2000倍であることができる。圧力差がほぼ1.5倍より小さい場合、粉末の高速移送が難しくなり、圧力差がほぼ2000倍より大きい場合、粉末によってむしろ基材の表面が過度にエッチングされることができる。
【0050】
このような
プロセスチャンバー230と移送管222の圧力差により、粉末供給部220からの粉末は移送管222を通じて噴射すると同時に、高速で
プロセスチャンバー230に伝達される。
【0051】
また、
プロセスチャンバー230内には移送管222に連結されたノズル232が備えられ、ほぼ100乃至500m/sの速度で粉末を基材231に衝突させる。つまり、ノズル232を通した粉末は移送中に得られた運動エネルギーと高速衝突時に発生する衝突エネルギーによって破砕および/または粉砕されながら基材231の表面に一定の厚さの被膜を形成することになる。
【0052】
ここで、粉末は以下でさらに詳細に説明するが、第1粒径範囲および第1の最頻数を有する第1粒子(grain)と、第2粒径範囲および第2の最頻数を有する第2粒子(grain)に分解され、このような第1、第2粒子が不規則的に相互間混合されたまま基材の表面に形成されることによって、気孔率が相対的に小さい緻密な内部構造を有する被膜を形成することになる。
【0053】
言い換えれば、粉末の第1粒径範囲および粉末の第1の最頻数を有し正規分布特性を有する粉末をほぼ100乃至500m/sの速度で基材に衝突させて破砕および粉砕させれば、被膜の第1粒径範囲および被膜の第1の最頻数を有する第1粒子と、被膜の第2粒径範囲および被膜の第2の最頻数を有する第2粒子とからなる、つまり、粒子個数において少なくとも2つのピークを有する、複合被膜粒子粒径を有する被膜が得られる。この時、第1粒子の第1粒径範囲は第2粒子の第2粒径範囲より小さく、第1粒子の第1の最頻数は第2粒子の第2の最頻数より小さいことによって、あたかも粒径が大きい砂利の間に粒径が小さい砂が位置しているような被膜構造を提供することによって、気孔率が非常に小さく、かつ積層/コーティング速度は速い被膜を提供することになる。このような被膜の構造については以下で説明する。
【0054】
図4は本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有する被膜の断面を示した概略図であり、
図5は本発明の一実施例に係る被膜をなす第1粒子および第2粒子の粒径分布を示したグラフである。
図5において、X軸は被膜の粒子粒径(nm)を意味し、Y軸は被膜の粒子粒径(nm)の個数(ea)または比率(%)を意味する。
図5において、X軸はほぼ10,000nmまであるが、説明の便宜上、省略する。
【0055】
ここで、被膜をなす第1、第2粒子の粒径(粒度)分析は走査電子顕微鏡[Scanning Electron Microscope、例えば、SNE−4500M分析装備]で行った。より具体的に、粒子の粒径分析方法を説明すれば、まず被膜(コーティング層または成膜)を有する分析試片を切断して断面を得て、このような断面を研磨した。次に、被膜を走査電子顕微鏡で撮影し、撮影された映像を映像処理ソフトウェアに処理することによって、第1、第2粒子の粒径を分析した。また、本発明でほぼ110μm
2の被膜断面積を撮影して、第1、第2粒子の粒径を分析した。さらに、本発明で第1、第2粒子の粒径はほぼ50nm乃至2200nmの範囲を有する第1、第2粒子の最長軸の長さを測定して個数を算出したが、実質的に10μm以内の第2粒子が観察されたりする。
【0056】
図4および
図5に示されているように、本発明に係る複合粒子粒径を有する被膜120は基材110の表面に第1粒径を有する多数の第1粒子(grain)121と、第1粒径と異なる第2粒径を有し第1粒子121の間に介在した複数の第2粒子(grain)122とを含む。つまり、本発明に係る被膜120は相対的に粒径が大きい第2粒子122が有する隙間、空間またはギャップ(gap)に相対的に粒径が小さい第1粒子121がびっしりと満たされた形態をする。
【0057】
より具体的に、第1粒子121は第1粒径範囲および第1の最頻数を有し、第2粒子122は第1粒径範囲より大きい第2粒径範囲および第1の最頻数より大きい第2の最頻数を有する。さらに、このような第1粒子121と第2粒子122とが混合されたまま基材に積層/コーティングされて気孔率が小さく緻密な被膜120を形成する。
【0058】
さらに具体的に、第1粒子121の第1粒径範囲はほぼ1nm乃至900nmであり、第1粒子121の第1の最頻数はほぼ250nm乃至800nmの間、望ましくは、ほぼ250nm乃至350nmの間にあることができる。しかし、本発明はこのような範囲に限定されるものではなく、一例として第1粒子121の第1の最頻数は上述した数値より若干小さかったりまたは若干大きかったりすることもある。
【0059】
ここで、第1粒子121の第1の最頻数(250nm乃至800nmの間)を中心に第1粒子121はほぼ200nm乃至900nmで正規分布と類似の特徴を有するが、実質的に200nmより小さい第1粒子121が多い。つまり、第1粒子121は粒径範囲が小さいほどその個数(比率)が順次に多くなる。しかし、計測装備の限界によって200nmより小さい領域の第1粒子121が有する個数(比率)または最頻数は本発明においては無視することにする。
【0060】
ただし、第1粒子121の第1粒径がほぼ1nm乃至200nmより小さいということは、第1粒子121のための粉末の粒径も小さいということであるので、この場合、粉末の制御が難しいことを意味し、第1粒子121の第1粒径がほぼ900nmより大きいということは被膜110の透光性が低下し始めることを意味する。
【0061】
また、第2粒子122の第2粒径範囲はほぼ900nm乃至10μm、望ましくは、900nm乃至3μmであり、第2粒子の第2の最頻数はほぼ1.0μm乃至5.0μmの間、望ましくは、ほぼ1.0μm乃至1.2μmの間にあることができる。しかし、本発明はこのような範囲に限定されるものではなく、一例として第2粒子の第2の最頻数は上述した数値より若干小さいかまたは若干大きいこともある。ただし、第2粒子122の第2粒径がほぼ900nmより小さいということは被膜の積層速度が遅くなることを意味し、第2粒径122がほぼ10μmより大きいということは被膜の透光性が低下し、また、気孔率が増加し内部構造が不安定になることを意味する。
【0062】
前記で第2粒子122の第2粒径範囲を3μmに限定した理由は分析装備の限界のためであり、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに、第1粒子は第1グレーンと、第2粒子は第2グレーンと指称され、粉末はパウダーと指称することができるが、本発明はこのような用語に限定されるものではない。
【0063】
一方、第1の最頻数が有する最大個数は第2の最頻数が有する最大個数に比べてほぼ2倍乃至10倍、望ましくは2倍乃至5倍さらに多いこともある。
さらに具体的に、
図5に示されているように、第1粒子中、第1の最頻数の最大個数はほぼ300nmでほぼ40個であり、第2粒子中、第2の最頻数の最大個数はほぼ1100nmでほぼ10個であって、第1の最頻数の最大個数は第2の最頻数の最大個数に比べてほぼ4倍が多かった。しかし、本発明はこのような数値に限定されるものではない。また、第1粒子と第2粒子を区分する大きさはほぼ900nmであり、この時の個数はほぼ2つ乃至3つであった。言い換えれば、第1粒子と第2粒子を区分する粒径(大きさ)での個数(比率)は第2の最頻数の最大個数対比ほぼ20乃至30%程度である。
【0064】
さらに、このような比率(第1の最頻数の最大個数が第2の最頻数の最大個数に比べてほぼ2倍乃至10倍、望ましくは2倍乃至5倍さらに多い)を外れる場合、例えば第1の最頻数の最大個数が上述した比率より多くなる場合、被膜の透光性が向上して素材特性の実現に有利であるが、被膜積層速度が相対的に遅くなる。他の例として、第1の最頻数の最大個数が上述した比率より小さくなる場合被膜の積層速度は速くなるが、気孔率が増加し、これによって表面マイクロクラックが大きくなって被膜が不安定になるという問題がある。
【0065】
上述した形成方法およびこれによって形成された被膜120の気孔率はほぼ0.01%乃至1.0%、望ましくは、ほぼ0.01%乃至0.2%であることができる。つまり、気孔率は前述のような第1粒子121の第1粒径範囲および第1の最頻数、第2粒子122の第2粒径範囲および第2の最頻数、そして第1、第2粒子121、122が有する第1、第2の最頻数の個数(比率)等によって決定されるが、上述した数値範囲を外れる場合、被膜の積層速度が遅すぎるかまたは気孔率が大きすぎることになる。つまり、上述した形成方法およびこれによって形成された被膜120がほぼ0.01%乃至1.0%の気孔率を有する場合、この際の表面マイクロクラックが小さく、よって被膜の微細構造が安定化される。
【0066】
ここで、被膜120の気孔率は上述した映像処理ソフトウェアによって測定され、これは当業者に周知の内容であるので、これに対する詳細な説明は省略する。
また、被膜120の厚さはほぼ1μm乃至100μmであることができる。被膜120の厚さがほぼ1μmより小さければ基材110が産業的に活用されにくく、被膜120の厚さがほぼ100μmより大きければ光透過率が顕著に小さくなることができる。
【0067】
また、被膜120の光透過率はほぼ1%乃至99%に調整することができ、このような被膜120の光透過率は被膜120の全体厚さと、前述のような第1、第2粒子121、122の第1、第2粒径範囲、第1、第2の最頻数に制御することができる。一例として、被膜120の厚さが同じで、第2の最頻数の最大個数が固定されたと仮定する場合、光透過率は第1、第2粒子121、122のうち、第1粒子中の第1の最頻数の最大個数が大きくなるほど大きくなり、第1粒子中の第1の最頻数の最大個数が小さくなるほど小さくなる。また、気孔率は被膜120の厚さと関係なしに、第2の最頻数の最大個数が固定されたと仮定する場合、第1、第2粒子121、122のうち、第1粒子中の第1の最頻数の最大個数が大きくなるほど小さくなり、第1粒子中の第1の最頻数の最大個数が小さくなるほど大きくなる。
【0068】
一方、第1粒子121と前記第2粒子122の断面積比率はほぼ9:1乃至5:5、望ましくは7.7:2.3であることができる。ここで、前述のように、分析断面積は110μm
2であることができる。第1粒子121と前記第2粒子122の断面積比率が上述した範囲以内の場合、気孔率(空隙率)が相対的に小さく、表面マイクロクラック現象がないし、被膜が半透明で素材特性の実現が容易である。一例として、上述した範囲外で第1粒子121の比率が相対的に大きい場合、被膜の形成/積層時間が長くかかる問題があり、上述した範囲外で第1粒子121の比率が相対的に小さい場合、気孔率が大きくなる問題がある。逆に、上述した範囲外で第2粒子122の比率が相対的に大きい場合、被膜の形成/積層時間は速いが、気孔率が高まる問題があり、上述した範囲外で第2粒子122の比率が相対的に小さい場合、被膜の形成/積層時間が長くかかる。
【0069】
第1粒子121および第2粒子122は前述と同様に脆性材料または/および軟性材料であることができる。
具体的に、脆性材料である第1、第2粒子121、122はイットリア(Y
2O
3)、YAG(Y
3Al
5O
12)、希土類系(YおよびScを含んで原子番号57から71までの元素)酸化物、アルミナ(Al
2O
3)、バイオガラス、ケイ素(SiO
2)、水酸化燐灰石(hydroxyapatite)、二酸化チタン(TiO
2)およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0070】
より具体的に、脆性材料または軟性材料である第1粒子121および第2粒子122は水酸化燐灰石、燐酸カルシウム、バイオガラス、Pb(Zr、Ti)O
3(PZT)、アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア(ZrO
2)、イットリア(Y
2O
3)、イットリア−ジルコニア(YSZ、Yttria stabilized Zirconia)、酸化ジスプロシウム(Dy
2O
3)、ガドリニア(Gd
2O
3)、セリア(CeO
2)、ガドリニア−セリア(GDC、Gadolinia doped Ceria)、マグネシア(MgO)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、マンガン酸ニッケル(NiMn
2O
4)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNaNbO
3)、チタン酸ビスマスカリウム(BiKTiO
3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BiNaTiO
3)、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、BaFe
2O
4、NiZnFe
2O
4、ZnFe
2O
4、MnxCo
3−xO
4(ここで、xは3以下の正の実数)、ビスマスフェライト(BiFeO
3)、ニオブ酸ビスマス亜鉛(Bi
1.5Zn
1Nb
1.507)、燐酸リチウムアルミニウムチタンガラスセラミックス、Li−La−Zr−O系ガーネット型酸化物、Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物、La−Ni−O系酸化物、燐酸リチウム鉄、リチウム−コバルト酸化物、Li−Mn−O系スピネル酸化物(リチウムマンガン酸化物)、燐酸リチウムアルミニウムガリウム酸化物、酸化タングステン、酸化錫、ニッケル酸ランタン、ランタン−ストロンチウム−マンガン酸化物、ランタン−ストロンチウム−鉄−コバルト酸化物、シリケート系蛍光体、SiAlON系蛍光体、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、AlON、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化マグネシウム、ホウ化チタン、金属酸化物と金属窒化物との混合体、金属酸化物と金属炭化物との混合体、セラミックスと高分子との混合体、セラミックスと金属との混合体、ニッケル、銅、ケイ素およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0071】
ここで、水酸化燐灰石(hydroxyapatite、Ca
10(PO
4)
6(OH)
2))はDCPD(Dicalcium Phosphate Dihydrate、CaHPO
4.2H
2O)、DCPA(Dicalcium Phosphate Anhydrate、CaHPO
4)、OCP(Octacalcium Phosphate、Ca
4H(PO
4)
3.5/2H
2O)、β−TCP(β−Tcalcium Phosphate、β−Ca
3(PO
4)
2)、α−TCP(α−Tcalcium Phosphate、α−Ca
3(PO
4)
2)、Te−CP(Tetracalcium Phosphate、Ca
4O(PO)
2)およびその等価物からなる群から選択される1種または2種の混合物であることができるが、本発明はこのような材質に限定されるものではない。
【0072】
ここで、基材110はガラス、金属、プラスチック、高分子樹脂、セラミックおよびその等価物の中から選択されたいずれか一つであることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0073】
図6a乃至
図6cは本発明の一実施例に係るY
2O
3からなる複合被膜粒子粒径を有する被膜の電子顕微鏡写真を示した図である。
図7a乃至
図7cは本発明の一実施例に係るAl
2O
3からなる複合被膜粒子粒径を有する被膜の電子顕微鏡写真を示した図である。
図8a乃至
図8cは本発明の一実施例に係る水酸化燐灰石[Ca
10(PO
4)
6(OH)
2]からなる複合被膜粒子粒径を有する被膜の電子顕微鏡写真を示した図である。
【0074】
写真において、“ナノグレイン(nano grain)”と表示された部分は前述した第1粒子を意味し、“マイクログレイン(micro grain)”と表示された部分は前述した第2粒子を意味する。
【0075】
多数の写真に見られるように、本発明に係る被膜をなす第1粒子および第2粒子はガラス基板上に円形または球形でないほぼ水平方向または左、右方向に長さが長い層状構造または横方向に伸びた針状構造である。このような水平方向または横方向に伸びた層状構造または針状構造によって、本発明に係る被膜の気孔率は従来に比べて顕著に減少し、また表面マイククラック現象が減少し、これによって安定した微細構造が提供される。
【0076】
したがって、一例として、本発明が適用された製品の半導体工程で耐プラズマ特性が向上して、腐食速度が低下し、これによって半導体
プロセスチャンバー内で粒子飛散率が低下する。
【0077】
さらに、分析装備の限界によって第2粒子の第2粒径がほぼ3μmに説明された部分があるが、実質的に第2粒子の第2粒径は10μm以内に存在することができることを当業者は理解すべきである。
【0078】
このようにして、本発明では第1粒径範囲および第1の最頻数を有する第1粒子と、第1粒径より相対的に大きい第2粒径範囲および第1の最頻数より大きい第2の最頻数を有する第2粒子が混合および共存して被膜を形成することによって、被膜の形成の際、積層速度が比較的に速いだけでなく光透過率(または半透明)の高い基材(または素材)を実現することになる。
【0079】
さらに、第1粒径範囲および第1の最頻数を有する第1粒子と第2粒径範囲および第2の最頻数を有する第2粒子が適切に混合されて被膜を形成することによって、気孔率が1.0%より小さい安定した被膜構造(緻密性の高い被膜構造)を提供し、また、表面マイクロクラック現象は発生しなくなる。
【0080】
さらに、本発明では粉末の粒径範囲および圧力差を調節することによって、基材の表面に形成された被膜の応力を所望の値に容易に調節することができる。
図9aは従来技術に係るY
2O
3からなる被膜の表面電子顕微鏡写真を示した図であり、
図9bは本発明に係るY
2O
3からなる複合被膜粒子粒径を有する被膜の電子顕微鏡写真を示した図である。
【0081】
もう少し具体的に、
図9aはAPS(Atmosphere Plasma Spray)方式によって基材表面に形成された被膜の表面電子顕微鏡写真である。ここで、APS方式は大気中で高電圧を印加して発生する直流放電の高いエネルギーに不活性ガス環境を作ってプラズマを生成するが、このようなプラズマの温度はほぼ10,000℃乃至20,000℃の超高温の熱エネルギーを有することになる。また、このような超高温のプラズマにほぼ30μm乃至50μmの粒径範囲を有する粉末を露出させて基材に溶融および噴射してほぼ5μm乃至10μmの粒径範囲を有する被膜を形成する。しかし、このようなAPS方式で製造された被膜は超高温領域に露出した粉末が非常に急速に相転移され、溶融時間が不均一であるため、
図9aでのように高い気孔率(例えば、2乃至5%)を有することになり、したがって被膜の高い熱衝撃により多数のマイクロクラックが発生する。このようにAPS方式による被膜は高い比表面積を有し多数のマイクロクラックを有することによって、半導体/ディスプレイ製造工程の適用の際、被膜の粒子がエッチングされて工程部品を汚染させ、最終的に半導体/ディスプレイ製造生産物に損傷を与えることになる。
【0082】
一方、
図9bに示されているように、本発明に係る被膜は緻密で、かつ比表面積は小さいことが見られる。前述のように、本発明に係る被膜は気孔率がほぼ0.01%乃至1.0%であって、従来の気孔率より非常に小さい。したがって、本発明に係る被膜はプラズマ抵抗性が非常に高いことが分かる。
【0083】
以下の表1は従来のAPS方式で形成された被膜と、本発明に係る方式で形成された複合被膜粒子粒径を有する被膜の様々な物性を比較した表である。
【0084】
【表1】
表1に記載されたとおりに、従来技術では被膜の硬度が1〜2GPaであったが、本発明では9〜13Gpaである。また、従来技術では被膜の接合強度が5〜6MPaであったが、本発明では70〜90MPaである。また、従来技術では被膜の気孔率が2〜4%であったが、本発明では0.01〜1.0%である。最後に、従来技術では被膜の耐電圧が10〜20V/μmであったが、本発明では80〜120V/μmである。
【0085】
このように本発明は従来技術に比べて、複合被膜粒子粒径を有する被膜の硬度、接合強度、気孔率および耐電圧いずれも優れており、したがって、プラズマ環境で被膜の抵抗性が向上する。
【0086】
ここで、硬度はダイヤモンド四角錐で被膜を押込んでできた圧痕を測定し、接合強度は基材に形成された被膜をロードセルで引っ張って測定し、耐電圧は被膜上に二つの電極を設置して測定する。また、気孔率は被膜を切断して電子顕微鏡で撮影してイメージを得て、このようなイメージを映像処理ソフトウェアが設けられたコンピュータで分析して測定する。このような様々な測定方法は当業者にすでに周知の内容であるため、これに対する詳細な説明は省略する。
【0087】
一方、本発明に係る被膜が形成される基材は当然プラズマ環境に露出する部品であることができる。つまり、部品は半導体またはディスプレイ製造用の
プロセスチャンバーの内部部品であることができる。さらに具体的に、部品は静電チャック(electro static chuck)、ヒーター(heater)、チャンバーライナ(chamber liner)、シャワーヘッド(shower head)、CVD(Chemical Vapor Depositionition)用ボート(boat)、フォーカス環(focus ring)、ウォールライナ(wall liner)、シールド(shield)、コールドパッド(cold pad)、ソースヘッド(source head)、アウタライナ(outer liner)、デポジションシールド(deposition shiled)、アッパーライナー(upper liner)、排出プレート(exhaust plate)、エッジ環(edge ring)、マスクフレーム(mask frame)およびその等価物のうちいずれか一つであることができる。しかし、本発明はこのような被膜が形成される基材または部品に限定されるものではない。
【0088】
図10aは本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有するバイオセラミック被膜の断面を撮影した電子顕微鏡写真であり、
図10bはインプラント用フィクスチャーに形成されたバイオセラミックの表面を撮影した電子顕微鏡写真であり、
図10cは多様なバイオセラミックの表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0089】
図10aの写真において、“nano grain”と表示された部分は第1バイオセラミック粒子を意味し、“micro grain”と表示された部分は第2バイオセラミック粒子を意味する。
【0090】
図10aの写真に見られるように、本発明に係るバイオセラミック被膜をなす第1バイオセラミック粒子および第2バイオセラミック粒子は円形または球形でないほぼ水平方向または左、右方向に長さが長い層状構造または横方向に伸びた針状構造である。このような水平方向または横方向に伸びた層状構造または針状構造によって、本発明に係るバイオセラミック被膜の気孔率は従来に比べて顕著に減少し、また表面マイククラック現象が減少し、これによって安定した微細構造が提供される。
【0091】
図10bおよび
図10cに示されているように、本発明に係るバイオセラミック被膜は歯科用インプラントフィクスチャーの表面に形成されることができ、このようなバイオセラミック被膜は一定の表面粗さを有する。一例として、
図10cに示されているように、バイオセラミック被膜の算術平均粗さ(Ra)はほぼ1μmまたは2μm乃至3μmに調整することができる。このようにして本発明に係るバイオセラミック被膜は表面積が増加することによって、生体活性化度を高めることができるようになる。
【0092】
バイオセラミック粉末を噴射するノズルおよび被膜がコーティングされる基材間の角度および基材を回転させる回転機構の回転速度などを調節することによって、上述した表面粗さまたは算術平均粗さ(Ra)の調整が可能である。ここで、前述のように3次元の歯科用インプラントフィクスチャーに被膜を形成しなければならないため、歯科用インプラントフィクスチャーを回転させるための回転機構が
プロセスチャンバー内部に設けられる。
【0093】
以下の表2に本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有するバイオセラミック被膜および従来技術に係るバイオセラミック被膜のナノインデンテーション硬度(nano indentation hardness)および弾性係数が記載されている。
【0094】
【表2】
ノインデンテーション硬度の測定方法についてはすでに当業者に公知の内容であるので、これに対する説明は省略する。また、弾性係数の測定方法についてもすでに当業者に公知の内容であるので、これに対する説明も省略する。
【0095】
表2に記載されたとおりに、本発明に係るバイオセラミック被膜のナノインデンテーション硬度はほぼ5GPaであり、従来技術(例えば、パルスレーザ蒸着方式)に係るバイオセラミック被膜のナノインデンテーション硬度はほぼ1.5GPaである。したがって、本発明に係るバイオセラミック被膜の機械的強度が従来技術に比べて優れていることが分かる。
【0096】
また、表2に記載されたとおりに、本発明に係るバイオセラミック被膜の弾性係数はほぼ82GPaであり、従来技術(例えば、パルスレーザ蒸着方式)に係るバイオセラミック被膜の弾性係数はほぼ50GPaである。したがって、本発明に係るバイオセラミック被膜の耐衝撃性が従来技術に比べて優れていることが分かる。つまり、本発明に係るバイオセラミック被膜は外部衝撃によってあんまり壊れない。
【0097】
一方、本発明に係る被膜とプラズマスプレー方式による被膜のビッカース硬さを比較する場合、本発明に係る被膜はほぼ480HVの硬度を有し、プラズマスプレー方式による被膜はほぼ450乃至500HVの硬度を有する。
【0098】
さらに、バイオセラミックバルク(ほぼ1300℃で焼結)の弾性係数が80GPaであり、プラズマスプレー方式による被膜の弾性係数はほぼ40GPaである。したがって、本発明に係るバイオセラミック被膜はあたかも焼結された状態のバルクよりもさらに高い弾性係数を有することが分かる。
【0099】
このようにして、従来は緻密なバイオセラミック被膜の製造が難しかったが、本発明では前述のように複合粒子粒径を有するように被膜を形成することによって、広い表面積、優秀な機械的強度および耐衝撃特性を有することになる。
【0100】
図11aおよび
図11bは本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有するバイオセラミック被膜および従来技術に係るバイオセラミック被膜のX線結晶分析結果を示したグラフである。
図11aおよび
図11bにおいて、X軸は角度であり、Y軸は強さ(個数またはCPS)である。
【0101】
図11aに示されているように、本発明に係るバイオセラミック粉末およびこれを利用して形成した被膜ではX線結晶分析結果がほとんど同じピーク値を持つことが分かる。さらに、図示していないが、本発明に係る被膜はほぼ700℃で熱処理した場合でも、バイオセラミック粉末および/または熱処理前の被膜とほとんど同じピーク値を有する。
【0102】
しかし、
図11bに示されているように、従来技術(例えば、プラズマスプレーコーティング方式)ではバイオセラミック被膜の形成/積層後の相転移現象が大きく発生したことが分かる。つまり、バイオセラミック被膜の形成後、水酸化燐灰石が相転移されて水酸化燐灰石の含有量が小さくなる代わりに、酸化カルシウム(CaO)およびTTCP(Tetracalcium Phosphate)の含有量が増加することが分かる。
【0103】
したがって、従来は水酸化燐灰石の含有量を高めるために必ず熱処理工程を行わなければならないし、これによって製造工程時間が長くなるだけでなく製造コストも増加することになる。つまり、
図11bに示されているように、熱処理後には酸化カルシウムの量が少なくなり、水酸化燐灰石の含有量は再び増加することが分かる。
【0104】
図12aおよび
図12bは本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有するバイオセラミック被膜が形成されたインプラントフィクスチャーを示した写真である。
図12aに示されているように、複合粒子粒径を有するバイオセラミック被膜をインプラントフィクスチャーに形成する場合、一般にその色は黒い色に表れる。しかし、このような黒い色は患者および医師が忌避する色であり、そのために本発明では
図12bに示されているように、白色のバイオセラミック被膜がインプラントフィクスチャーに形成されるようにした。
【0105】
このため本発明では、水酸化燐灰石に酸化チタンを均一に混合した粉末、上述した装置および方法を利用して
図11bでのような白色のバイオセラミック被膜を形成した。これによって患者と医師の心理的安定効果を高めることができるようになる。
【0106】
図13aは本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有するバイオセラミック被膜が形成されたフィクスチャーの断面を撮影した電子顕微鏡写真であり、
図13b乃至
図13eはバイオセラミック被膜の成分分析結果を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0107】
図13aに示されているように基材としてインプラント用フィクスチャーが利用され、その表面に一定の厚さのバイオセラミック(ここでは、水酸化燐灰石と酸化チタンとの混合物)被膜が形成されている。
【0108】
図13bに示されているように、被膜のうち、リン(P)の成分が均一に分布しており、
図13cに示されているように、被膜のうち、カルシウム(Ca)の成分が均一に分布しており、
図13dに示されているようにチタン(Ti)の成分が均一に分布しており、
図13eに示されているように酸素(O)の成分が均一に分布していることが分かる。
【0109】
つまり、本発明では水酸化燐灰石および酸化チタンが均一に分布しているバイオセラミック被膜が得られる。
ここで、本発明に係るバイオセラミック被膜は基材としてインプラント用フィクスチャーを例に挙げたが、前記基材としては大部分の人体への挿入機構物が可能である。一例として、インプラント用フィクスチャーだけでなく、人工関節またはその等価物も可能である。
【0110】
以下の表3は本発明および従来技術に係るバイオセラミック被膜の接合強度(表面結合力または引張強度)を記載したものである。表3に記載されたとおりに、本発明に係る被膜の接合強度は従来技術に比べて向上することが分かる。したがって、本発明に係るバイオセラミック被膜は従来技術に比べてインプラント用フィクスチャー、人工関節のような人体への挿入機構物からよく分離されない。
【0111】
【表3】
ここで、接合強度測定方法は、まず一例として、チタン基板上にバイオセラミック被膜(HA)を蒸着させた後、被膜上部層にエポキシ接着剤を塗布して接合強度測定用ジグを接合させる。その後、分析装備としてUTM(Universal Testing Machine、RB−302ML、(株)R&B)を利用して最大荷重450Kgf/cm
2、1mm/minで測定した。ここで従来技術はプラズマスプレーコーティング方式で形成されたバイオセラミック被膜を意味する。
【0112】
このようにして、本発明では高温蒸着工程でない常温蒸着工程が可能でバイオセラミック、例えば、水酸化燐灰石からカルシウム(Ca)とリン(P)が分離される現象が発生せず、また従来必須であった熱処理工程を省略することもできるようになる。つまり、本発明ではバイオセラミックの純度および結晶性が素材本来の特性を維持することになる。
【0113】
また、本発明ではバイオセラミック粉末を噴射するノズルおよび被膜がコーティングされる基材間の角度および基材を回転させる回転機構の回転速度などを調節することによって、表面粗さまたは算術平均粗さ(Ra)の調整が可能になる。したがって、本発明では表面粗さおよび表面積が増加した被膜により、生体活性化度を高めることができるようになる。
【0114】
図14は本発明の一実施例に係る複合被膜粒子粒径を有する絶縁被膜が銅基材上に形成された写真を示した図である。
ここで、銅基材は、例えば、LED(Light Emitting Diode)用基板またはヒートシンク、車両のECU(Electronic Control Unit)用基板またはヒートシンク、車両の点火モジュール用基板またはヒートシンク、電力半導体モジュールの基板またはヒートシンク、電力コンバータの基板またはヒートシンク、または燃料電池用放熱基板であることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0115】
また、銅基材上に形成された絶縁被膜は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)であることができ、このような絶縁被膜の最大厚さは45μmとなるようにした。
図14に示されているように、絶縁被膜は銅基材上に半透明に形成され、また、絶縁被膜は銅基材から剥離されないことを確認した。
【0116】
さらに、このような絶縁被膜とプラズマスプレー方式による絶縁被膜のビッカース硬さを比較する場合、本発明に係る絶縁被膜はほぼ714HVの硬度を有し、プラズマスプレー方式による被膜はほぼ450乃至500HVの硬度を有する。また、本発明に係る絶縁被膜の弾性係数はほぼ152GPaであり、従来技術に係る絶縁被膜の弾性係数はほぼ50GPaである。したがって、本発明に係る絶縁被膜の耐衝撃性が従来技術に比べて優れていることが分かる。つまり、本発明に係る絶縁被膜は外部衝撃によってあんまり壊れない。
【0117】
以下の表4は本発明および従来技術に係る絶縁被膜の接合強度(表面結合力または引張強度)を記載したものである。表4に記載されたとおりに本発明に係る絶縁被膜の接合強度は従来技術に比べて向上したことが分かる。したがって、本発明に係る絶縁被膜は従来技術に比べて基材からよく分離されない。
【0118】
【表4】
ここで、接合強度測定方法はまず一例として、銅基板上に絶縁被膜を蒸着させた後、絶縁被膜の上部層にエポキシ接着剤を塗布して接合強度測定用ジグを接合させる。その後、分析装備としてUTM(Universal Testing Machine、RB−302ML、(株)R&B)を利用して最大荷重450Kgf/cm
2、1mm/minで測定した。ここで従来技術はプラズマスプレーコーティング方式で形成された絶縁被膜を意味する。
【0119】
図15は絶縁粉末の粒径により積層された絶縁被膜の耐電圧を示したグラフである。
図15において、X軸は絶縁粉末の粒径μmを意味し、Y軸は耐電圧V/μmを意味する。また、以下の表5は絶縁粉末粒径、絶縁被膜の厚さ、耐電圧を整理したものである。
【0120】
【表5】
図15および表5でのように、絶縁粉末の粒径が0.5μmである場合、絶縁被膜は3.6μmの厚さに形成され、耐電圧は170V/μmに測定された。また、絶縁粉末の粒径が1.0μmである場合、絶縁被膜は9.8μmの厚さに形成され、耐電圧は183V/μmに測定された。また、絶縁粉末の粒径が4μmである場合、絶縁被膜は22.5μmの厚さに形成され、耐電圧は195V/μmに測定された。また、絶縁粉末の粒径が48.8μmおよび62.5μmである場合、絶縁被膜は形成されず、したがって耐電圧を測定することもできなかった。ここで、各絶縁被膜の形成時間は同じである。
【0121】
このようにして、本発明は絶縁粉末の粒径が4.0μmである場合、一定時間の間に最も厚い厚さ(22.5μm)の絶縁被膜が得られ、また、この際、最も高い耐電圧(195V/μm)が得られた。一方、この時に形成された絶縁被膜は
図6aおよび
図6bに示された写真と同様であり、
図7aおよび
図7bの写真でのように本発明は複合被膜粒子粒径を有するマルチ構造によって、厚膜蒸着が可能で、かつ高い耐電圧特性を有する。
【0122】
実質的に、絶縁粉末の粒径がそれぞれ0.5μm、1.0μm、4.0μm、48.8μmおよび62.5μmであり、前記各絶縁粉末を基材に一定時間の間噴射して積層/形成した絶縁被膜の厚さはそれぞれ0.36μm、9.8μm、22.5μm、0μmおよび0μmに測定された。つまり、絶縁粉末の粒径がほぼ4.0μmであるときに最も厚い22.5μmの絶縁被膜の厚さが得られた。さらに、絶縁粉末の粒径が0.5μmおよび1.0μmの場合、積層/形成された絶縁被膜の厚さは相対的に小さい0.36μmおよび9.8μmであり、絶縁粉末の粒径が48.8μmおよび62.5μmの場合には絶縁被膜は形成されなかった。
【0123】
図16aおよび
図16bは本発明の一実施例に係る絶縁被膜およびパターンが形成された基板およびヒートシンクを示した断面図である。
図16aおよび
図16bに示されているように、基材は銅および/またはアルミニウムのような金属、またはセラミックスからなる基板301またはヒートシンク401であることができ、基材の表面に本発明に係る一定の厚さの絶縁被膜300を形成することができる。つまり、絶縁被膜300は基板301の表面に形成するか、またはヒートシンク401の表面に直接形成することができる。また、絶縁被膜300には多数の導電性パターン302を形成することができる。
【0124】
ここで、本発明に係る絶縁被膜はほぼ1μm乃至50μmの厚さに形成され、気孔率は前述のようにほぼ0.01%乃至1.0%で形成され、この時、耐電圧はほぼ195V/μmに測定された。
【0125】
このように絶縁被膜の厚さがほぼ50μmより小さく、気孔率がほぼ0.01%乃至1.0%の範囲である場合、基板またはヒートシンクの放熱性能が従来に比べて向上する。言い換えれば、絶縁被膜の厚さがほぼ50μmより大きく、また気孔率が1.0%より大きい場合、基板またはヒートシンクの放熱性能が顕著に低下することによって、上述したLED(Light Emitting Diode)、車両のECU(Electronic Control Unit)、車両の点火モジュール、電力半導体モジュール、または燃料電池の放熱性能も低下するが、本発明ではこのような問題が発生しない。
【0126】
また、本発明は絶縁被膜の耐電圧が195V/μmまで増加するので、絶縁被膜上の導電パターンに流せる電流は相対的に増加する。言い換えれば、絶縁被膜の耐電圧が195V/μmより小さくなれば、上述したLED(Light Emitting Diode)、車両のECU(Electronic Control Unit)、車両の点火モジュール、電力半導体モジュール、または燃料電池の電流性能(高電流を流せる能力)も低下するが、本発明ではこのような問題が発生しない。
【0127】
また言い換えれば、従来は耐電圧を向上させるために接着剤を利用して50μmより厚い絶縁被膜を基材に直接付着したり、または異種素材を利用して多層絶縁被膜を基材に形成した。しかし、このような場合、絶縁被膜の耐電圧は向上するが、全体的な絶縁被膜の厚さが厚くなることによって放熱性能が顕著に減少するという問題があった。
【0128】
しかし、本発明では第1粒径範囲および第1の最頻数を有する第1絶縁粒子と、第1粒径より相対的に大きい第2粒径範囲および第1の最頻数より大きい第2の最頻数を有する第2絶縁粒子が混合および共存して絶縁被膜を形成することによって、相対的に薄い厚さにもかかわらず、耐電圧特性が向上して導電パターンに流せる電流量が大きく、また放熱性能が向上する。
【0129】
以上の説明は、本発明に係る複合粒子粒径を有する被膜の形成方法およびこれによる被膜を実施するための一つの実施例に過ぎないものであって、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲において請求するように、本発明の要旨を逸脱することなく当該発明の属する分野で通常の知識を有する者であれば、誰でも多様な変更実施が可能な範囲にまで本発明の技術的精神がいるとみなされる。