(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058893
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】ブレース材取付金具及びこれを用いたブレース材取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
E04B5/58 S
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-5687(P2012-5687)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-144891(P2013-144891A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】593123683
【氏名又は名称】株式会社オクジュー
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】熊本 辰視
(72)【発明者】
【氏名】川良 剛
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−190678(JP,A)
【文献】
特開2009−035960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18 − 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブから垂下し天井下地材を支持する吊りボルトに対しブレース材を取り付けるブレース材取付金具であって、
一側に前記吊りボルトに接触する接触面及び他側に開口部を有する第一受部材と、
一側に前記ブレース材の一端に設けた接続部材を取り付ける取付部及び他側に開口部を有する第二受部材と、
各開口部を重ね合わせた状態で前記第一受部材及び前記第二受部材の各貫通孔に貫通しこれらを回転可能に連結する軸部材とを備え、
前記接続部材は、一端が前記取付部とその中央部で螺合する接続ボルトと、前記接続ボルトの他端を前記ブレース材の一端に固定する固定部を有し、
前記固定部は略コの字状を呈し、中央に前記接続ボルトを貫通させる貫通孔を有するボルト取付部と、このボルト取付部の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、
前記一対の突出部間に前記ブレース材の一端を嵌入させて前記突出部に固定し前記接続ボルトを前記取付部に螺合させると共に、
前記接続ボルトの先端を前記軸部材の下方で前記取付部から前記吊りボルトに突出させて前記吊りボルトに当接させて、
前記接触面を前記吊りボルトに密着させるブレース材取付金具。
【請求項2】
前記第一受部材は、前記接触面の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、前記第二受部材は、前記取付部の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、前記第一受部材及び前記第二受部材は、各開口部を重ね合わせた状態で前記接触面と前記取付部と各一対の突出部とにより取り囲まれる閉じた空間を形成する請求項1記載のブレース材取付金具。
【請求項3】
前記吊りボルトに接触する接触面を有し、前記第一受部材及び前記第二受部材の内側で前記軸部材に係止して設けられる押付部材をさらに備え、前記接続ボルトの先端を前記押付部材を介して前記吊りボルトに当接させて前記押付部材の接触面及び前記第一受部材の接触面を前記吊りボルトに密着させる請求項1又は2記載のブレース材取付金具。
【請求項4】
前記第一受部材の接触面には、前記吊りボルトのねじ山と嵌合する凹凸が形成されている請求項1又は2記載のブレース材取付金具。
【請求項5】
前記第一受部材の接触面には、前記吊りボルトのねじ山と嵌合する凹凸が形成されている請求項3記載のブレース材取付金具。
【請求項6】
前記押付部材の接触面には、前記吊りボルトのねじ山と嵌合する凹凸が形成されている請求項3又は5記載のブレース材取付金具。
【請求項7】
前記押付部材は、略円弧状に湾曲した湾曲部と、この湾曲部の一端から延設され前記接触面を形成する接触部とを備え、前記湾曲部を前記軸部材に係止させると共に前記接触面の裏面に前記接続部材の先端を当接させる請求項3,5,6のいずれかに記載のブレース材取付金具。
【請求項8】
前記軸部材は中ボルトであり、前記中ボルトの前記第一受部材及び前記第二受部材の最大幅に対応する部分及び前記各貫通孔には、ねじ山が形成されていない請求項1〜7のいずれかに記載のブレース材取付金具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のブレース材取付金具を用いたブレース材の取付方法であって、
前記ブレース材の一端を前記一対の突出部間に嵌入させて前記突出部に固定すると共に前記接続ボルトを介して前記第二受部材を前記ブレース材に接続し、
前記吊りボルトの前記天井下地材側で前記吊りボルトに前記第一受部材を取り付け、
前記第一受部材及び前記第二受部材の各開口部を重ね合わせた状態で前記軸部材を前記各貫通孔に貫通させて前記第一受部材及び前記第二受部材を回転可能に連結し、
連結した第一受部材及び第二受部材を前記吊りボルトに沿って前記天井スラブ側へ移動させ、
前記接続ボルトを前記取付部に螺合させながら前記接続ボルトの先端を前記軸部材の下方で前記取付部から前記吊りボルトに突出させて前記吊りボルトに当接させて、
前記接触面を前記吊りボルトに密着させ、
前記ブレース材の他端を前記天井下地材に固定するブレース材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレース材取付金具及びこれを用いたブレース材取付方法に関する。さらに詳しくは、天井スラブから垂下し天井下地材を支持する吊りボルトに対しブレース材を取り付けるブレース材取付金具及びこれを用いたブレース材取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如きブレース材取付金具として、例えば、特許文献1〜3の如きものが知られている。これらの取付金具では、吊りボルトに対する取付角度が固定されているため、角度調整ができず、施工の自由度が低かった。また、特許文献1の取付金具は、一方が開放された板状の湾曲部分と締付ねじとの接触で吊りボルトに取り付けられるため、より大きい負荷への耐久性が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録意匠1047357号公報
【特許文献2】特開2003−138688号公報
【特許文献3】特開2009−35960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、施工の自由度が高く且つより強固にブレース材を取り付け可能なブレース材取付金具及びこれを用いたブレース材取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るブレース取付金具の特徴は、天井スラブから垂下し天井下地材を支持する吊りボルトに対しブレース材を取り付ける構成において、一側に前記吊りボルトに接触する接触面及び他側に開口部を有する第一受部材と、一側に前記ブレース材の一端に設けた接続部材を取り付ける取付部及び他側に開口部を有する第二受部材と、各開口部を重ね合わせた状態で前記第一受部材及び前記第二受部材の各貫通孔に貫通しこれらを回転可能に連結する軸部材とを備え、前記接続部材は、一端が前記取付部とその中央部で螺合する接続ボルトと、前記接続ボルトの他端を前記ブレース材の一端に固定する固定部を有し、前記固定部は略コの字状を呈し、中央に前記接続ボルトを貫通させる貫通孔を有するボルト取付部と、このボルト取付部の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、前記一対の突出部間に前記ブレース材の一端を嵌入させて前記突出部に固定し前記接続ボルトを前記取付部に螺合させると共に、前記接続ボルトの先端を前記軸部材の下方で前記取付部から前記吊りボルトに突出させて前記吊りボルトに当接させて、前記接触面を前記吊りボルトに密着させることにある。
【0006】
上記構成によれば、第一受部材及び第二受部材の各開口部を重ね合わせた状態で軸部材により連結するので、連結した第一受部材及び第二受部材の内部に閉じられた空間が形成される。これにより、吊りボルトはこの空間に位置することとなり、金具からの脱落が防止される。しかも、第一受部材及び第二受部材は軸部材により回転可能に連結されるので、ブレース材の取付角度を取付時に調整することが可能となり、施工の自由度も向上する。例えば、ダクト等の天井裏に配置される他の部材を設置スペースを確保してブレース材を設けることも可能となる。
【0007】
そして、接続部材は、一端が取付部とその中央部で螺合する接続ボルトと、接続ボルトの他端をブレース材の一端に固定する固定部を有し、固定部は略コの字状を呈し、中央に前記接続ボルトを貫通させる貫通孔を有するボルト取付部と、このボルト取付部の両端から略平行に突出する一対の突出部を有する。この接続ボルトを取付部に螺合させると共に接続ボルトの先端を軸部材の下方で取付部から吊りボルトに突出させて吊りボルトに当接させるので、取付時において、ブレース材の一端に設けた接続ボルトの先端を吊りボルトに押し付けることができる。よって、その接続部材の押圧力により第一受部材の接触面が吊りボルトに密着し、ブレース材を強固に吊りボルトに取り付けることができる。さらに、軸部材により第一、第二受部材は回転可能に連結されるので、ブレース材を固定する際に天井下地材に引き寄せることが可能である。これにより、吊りボルトに対しより大きい押圧力を作用させることができ、より強固な取付となる。
また、前記第一受部材は、前記接触面の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、前記第二受部材は、前記取付部の両端から略平行に突出する一対の突出部を有し、前記第一受部材及び前記第二受部材は、各開口部を重ね合わせた状態で前記接触面と前記取付部と各一対の突出部とにより取り囲まれる閉じた空間を形成するとよい。
【0008】
前記吊りボルトに接触する接触面を有し、前記第一受部材及び前記第二受部材の内側で前記軸部材に係止して設けられる押付部材をさらに備え、前記接続ボルトの先端を前記押付部材を介して前記吊りボルトに当接させて前記押付部材の接触面及び前記第一受部材の接触面を前記吊りボルトに密着させてもよい。押付部材を設けることで、第一受部材の接触面に加え、押付部材の接触面をも吊りボルトに密着させることができる。よって、2つの接触面が吊りボルトと接触するので、ブレース材との接触部分が増大し、さらに強固にブレース材を取り付けることができる。しかも、接続部材の押圧力が押付部材によって接触面に分散するので、接続部材の当接による吊りボルトのねじ山の破損が防止され、ブレース材が吊りボルトから脱落することもない。
【0009】
前記第一受部材の接触面には、前記吊りボルトのねじ山と嵌合する凹凸が形成されているとよい。これにより、第一受部材の凹凸が吊りボルトのねじ山と嵌合するので、さらに強固にブレース材を取り付けることができる。また、前記押付部材の接触面には、前記吊りボルトのねじ山と嵌合する凹凸が形成されているとよい。これにより、押付部材の凹凸が吊りボルトのねじ山と嵌合するので、さらに強固にブレース材を取り付けることができる。
【0010】
上記いずれかの構成において 前記押付部材は、略円弧状に湾曲した湾曲部と、この湾曲部の一端から延設され前記接触面を形成する接触部とを備え、前記湾曲部を前記軸部材に係止させると共に前記接触面の裏面に前記接続部材の先端を当接させるとよい。これにより、接続部材の押圧力を効率よく押付部材の接触面に伝えることができ、各接触面をより吊りボルトに密着させることができる。しかも、湾曲部により押付部材を軸部材に容易に係止でき、施工性が向上する。
【0011】
前記軸部材は中ボルトであり、前記中ボルトの前記第一受部材及び前記第二受部材の最大幅に対応する部分及び前記各貫通孔には、ねじ山が形成されていないことが望ましい。これにより、ブレース材の取付時において、中ボルトを軸に第一、第二受部材を容易に相対回転させることができ、ブレース材の取付角度の調整がより容易となり、施工性も向上する。
【0012】
前記接続部材は、一端が前記取付部と螺合する接続ボルトと、前記接続ボルトの軸と前記ブレース材の軸とを一致させて前記ブレース材の一端に固定する固定部とを有するようにしても構わない。接続ボルトの軸とブレース材の軸とを一致させることで、不測の負荷がブレース材に掛かったとしても、軸の不一致による接続部材での座屈を抑制でき、接続部材の破損が防止される。その結果、ブレース材の連結強度を向上させることができる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るブレース取付方法の特徴は、上記いずれかに記載のブレース材取付金具を用いた方法において、前記ブレース材の一端を前記一対の突出部間に嵌入させて前記突出部に固定すると共に前記接続ボルトを介して前記第二受部材を前記ブレース材に接続し、前記吊りボルトの前記天井下地材側で前記吊りボルトに前記第一受部材を取り付け、前記第一受部材及び前記第二受部材の各開口部を重ね合わせた状態で前記軸部材を前記各貫通孔に貫通させて前記第一受部材及び前記第二受部材を回転可能に連結し、連結した第一受部材及び第二受部材を前記吊りボルトに沿って前記天井スラブ側へ移動させ、前記接続ボルトを前記取付部に螺合させながら前記接続ボルトの先端を前記軸部材の下方で前記取付部から前記吊りボルトに突出させて前記吊りボルトに当接させて、前記接触面を前記吊りボルトに密着させ、前記ブレース材の他端を前記天井下地材に固定することにある。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係るブレース材取付金具及びこれを用いたブレース材取付方法の特徴によれば、施工の自由度が高く且つより強固にブレース材を取り付けることが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明に係るブレース材取付金具の取付状態を示す正面図である。
【
図4】第一受部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図5】第二受部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図6】押付部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図7】接続部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【
図8】(a)は各部材の吊りボルトに対する嵌合状態を示す図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【
図10】本発明に係る他の実施形態の一例を示す図である。
【
図11】本発明に係るさらに他の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、
図1〜
図9を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
[天井下地構造]
図1は天井の下地構造2を示し、天井スラブ3から垂下させた吊りボルト4に対し、ハンガー5を介して天井下地材としての野縁受6を吊り下げ支持してある。野縁受6の水平方向に対する振れ止めを行うために、ブレース材7を吊りボルト4の天井スラブ3側付近と野縁受6との間に傾斜状に架け渡してある。図示省略するが、吊りボルト4は野縁受6の長手方向適宜箇所に複数個設けることで、野縁受6を水平に支持している。また、野縁受6の下面側には、天井仕上材を取り付け固定する野縁が設けられる。
【0018】
ここで、本発明に係るブレース材取付金具1は、ブレース材7の上端(一端)7aを吊りボルト4に取り付けて連結するものである。ブレース材7の下端(他端)7bは、ビス等の固定部材8により野縁受6に固定される。なお、ブレース材7には、例えばチャンネル材が用いられる。
【0019】
[取付金具構成]
本実施形態において、ブレース取付金具1は、
図2,3に示すように、大略、吊りボルト4を受け入れる第一受部材10と、ブレース材7の上端7aに設けた接続部材50が取り付けられる第二受部材20と、第一、第二受部材10,20の各貫通孔15,25を貫通しこれらを回転可能に連結する軸部材30と、第一受部材10及び第二受部材20の内側で軸部材30に係止して設けられる押付部材40とを備える。
【0020】
[第一受部材]
図4に示すように、第一受部材10は平面視略Uの字状を呈し、大略、吊りボルト4の周面に沿う湾曲部11と、この湾曲部11の両端から略平行に突出する一対の突出部12,12と、湾曲部11に対向する他側において開口する開口部13とを有する。
【0021】
図2,3に示すように、湾曲部11の内面14が、吊りボルト4と接触する接触面となる。接触面14は、吊りボルト4の周面4a及び長手方向に沿うように略半円筒状に形成されている。これにより、接触面14は吊りボルト4の長手方向に沿ってその周面(ねじ山)4aに対し面接触する。
【0022】
しかも、略円弧状に形成された接触面14には、
図4(c)に示すように、吊りボルト4のねじ山4aと噛み合う凹凸が形成されている。これにより、接触面14が吊りボルト4に対して面接触する際に、吊りボルト4のねじ山4aと接触面14の凹凸とが嵌合するので、吊りボルト4に第一受部材10をより強固に取り付けることができる。
【0023】
突出部12には、
図4に示すように、軸部材30を貫通させる貫通孔15が設けられている。この貫通孔15の内面は平坦に形成されており、ねじ山は形成されていない。
【0024】
[第二受部材]
図5に示すように、第二受部材20は平面視略コの字状を呈し、大略、ブレース材7の上端7aに設けた接続部材50を取り付ける取付部21と、この取付部21の両端から略平行に突出する一対の突出部22,22と、取付部21に対向する他側において開口する開口部23とを有する。
【0025】
取付部21には、接続部材50の接続ボルト51が取り付けられる取付孔24が設けられている。この取付孔24には、接続ボルト51と螺合するようにねじ山(めねじ)26が設けられている。突出部22には、軸部材30を貫通させる貫通孔24が設けられている。この貫通孔25の内面は、先の第一受部材10の貫通孔15と同様にねじ山は形成されていない。
【0026】
また、第二受部材20の開口幅W2は、
図3〜5に示すように、第一受部材10の開口幅W1よりも大きく、連結状態において第二受部材20が第一受部材10の外側に位置する。本実施形態において、第一受部材10及び第二受部材20の最大幅Wは、第二受部材20の開口幅W2となる。
【0027】
[軸部材]
図3に示すように、本実施形態において、軸部材30として中ボルト(半ねじ)を用いている。中ボルト30は、ねじ山が形成されていない円筒部31とねじ部(おねじ)32とを有する。ここで、第一受部材10及び第二受部材20の最大幅W(W2)に対応する部分となる円筒部31の長さLは、第一、第二受部材10,20を各開口部13,23を重ね合わせて連結した状態での最大幅Wとほぼ等しくしている。また、上述したように、第一、第二受部材10,20の各貫通孔15,25の内面にはねじ山が形成されていない。よって、中ボルト30が第一、第二受部材10,20と螺合することはなく、ねじ部32にナット33を取り付け、第一、第二受部材10,20を締め付けて連結した状態においても、中ボルト30を軸に第一、第二受部材10,20を相対回転させることが可能となる。
【0028】
[押付部材]
図6に示すように、押付部材40は、大略、先の軸部材30の円筒部31の周面に沿うように略円弧状に湾曲した湾曲部41と、この湾曲部41の一端から延設され接触面43を形成する接触部42とを有する。
【0029】
接触部42は吊りボルト4の長手方向に沿うように面状に形成され、一側の面が吊りボルト4に接触する接触面43となる。これにより、接触面43を吊りボルト4に対しその長手方向に沿って接触させることができ、接触部分は点状ではなく線状となる。しかも、この接触面43には、吊りボルト4のねじ山と噛み合う凹凸が形成されている。他方、接触面43の裏面は、接続ボルト51の先端が当接する当接面44となる。このように、面状に形成した接触部42を介して接続ボルト51を吊りボルト4に当接させることで、接続ボルト51の当接による吊りボルト4のねじ山4aの破損も防止でき、長期に渡り取付状態を維持することができる。
【0030】
[接続部材]
本実施形態において、接続部材50は、
図7に示すように、大略、一端51aが第二受部材20と螺合する接続ボルト51と、この接続ボルト51をブレース材7の上端7aにビス等の固定部材59により固定する固定部52とを有する。
【0031】
固定部52は略コの字状を呈し、大略、接続ボルト51を取り付ける取付部55と、取付部55の両端から略平行に突出する一対の突出部56,56とを有する。取付部55の中央には貫通孔55aが形成されており、その裏面側にはナット57が溶接により固定されている。この貫通孔55aに接続ボルト51を螺合させると共に座金53及びナット54により締め付け固定する。また、突出部56には、ビス等の固定部材59を貫通させる孔58が設けられている。
【0032】
上述の如き取付部55により、接続ボルト51は固定部52のほぼ中央を直交方向に貫通することとなる。よって、
図2,3に示す如く、固定部52によりブレース材7の軸A1と接続ボルト51の軸A2とを一致させることができる。これにより、不測の負荷がブレース材7に掛かったとしても、接続部材50における座屈の発生を抑制でき、接続部材50の強度を向上させることができる。
【0033】
[各部材の接触状態]
ここで、
図8を参照しながら、取付状態における各部材の接触状態について説明する。
接続ボルト51を取付孔24に螺合させることで、接続ボルト51の先端51aを中ボルト30の下方で取付部21から吊りボルト4に向けて突出させて、先端51aを押付部材40の当接面43に当接させる。ここで、ブレース材7は、その下端7bの固定時において、中ボルト30の軸A3を中心にブレース材7を回転させて野縁受6に引き寄せて固定される。よって、当接点Pには、モーメントにより力Nが作用し、吊りボルト4に直交する方向に分力として押圧力Fが作用する。この接続ボルト51の当接による押圧力Fは、当接面44の裏面側の接触面43に作用する。そして、接触面44が吊りボルト4に対しその長手方向に沿って線状に接触し、吊りボルト4のねじ山4aと接触面43の凹凸とが嵌合する。また、第一受部材10の接触面14は、吊りボルト4に対しその長手方向に沿って面状に接触し、吊りボルト4のねじ山4aと接触面14の凹凸とが嵌合する。
【0034】
接触面14,43の各凹凸が吊りボルト4のねじ山4aとそれぞれ嵌合するので、ブレース材7と吊りボルト4とがより強固に取り付けられる。また、接触面43は吊りボルト4に対して線接触となり、押圧力が接触部42で分散されるので、接続ボルト51の先端51aの当接による吊りボルト4のねじ山4aのつぶれも防止される。よって、吊りボルト4のねじ山4aの破損により、接続ボルト51が吊りボルト4から外れることを防止することが可能となる。
【0035】
[施工方法]
次に、ブレース材取付金具1を用いたブレース材7の取付方法について説明する。
まず、
図9(a)に示すように、チャンネル材を所定の長さに切断したブレース材7の一端7aの側面7cに接続部材50を固定すると共に、接続部材50の接続ボルト51を第二受部材20の取付孔24に螺合させて取り付ける。接続部材50のブレース材7への固定は、ビス等の固定部材59により行われる。これにより、ブレース材7の軸A1と接続ボルト51の軸A2とを一致させる。
【0036】
次に、
図9(b)に示すように、野縁受6近傍の吊りボルト4の下端側で第一受部材10を吊りボルト4に覆うように取り付けると共に、中ボルト30により第一、第二受部材10,20を連結させる。連結に際しては、第一、第二受部材10,20の各開口部13,23とを重ね合わせて、第二受部材20の内側に第一受部材10を嵌め込み、中ボルト30を貫通孔15,25及び押付部材40の湾曲部41に貫通させる。これにより、第一受部材10及び第二受部材20の内部に閉じられた空間Sに吊りボルト4が配置される。そして、ナット33をねじ部32に螺合させて第一、第二受部材10,20を連結固定する。ここで、ブレース材7を回転させて、接続ボルト51を第二受部材20の取付孔24に螺合させながらその先端51aを中ボルト30の下方で吊りボルト4に向けて進出させて、押付部材40の当接面44に当接させる。
【0037】
そして、
図9(c)に示すように、連結した第一、第二受部材10,20をブレース材7と共に吊りボルト4に沿って、天井スラブ3近傍の吊りボルト4の上端側に移動させる。上述したように、第一、第二受部材10,20の貫通孔15,25と中ボルト30とは螺合しない。そのため、作業者が天井スラブ1近傍の吊りボルト4の上端側でナット33の締付作業を行う必要がなく、施工性がよい。また、取付角度の調整が可能であるので、ブレース材7の設置の自由度が向上する。例えば、天井裏に設置されるダクト等の他の部材のスペースを確保しつつ設置することも可能となる。
【0038】
ブレース材7の取付角度を調整をした後、ブレース材7の下端7bをビス8で野縁受6に固定する。ここで、中ボルト30を軸に第一、第二受部材10,20を相対回転可能であるので、ブレース材7の他端7bを野縁受6側に引き寄せることで、接続ボルト51の先端が押付部材40の当接面44にさらに押し付けられる。すなわち、ブレース材7と接続された接続ボルト51の当接点Pには、回転軸A3、長さrの腕を介して回転モーメントにより力Nが作用し、その力の分力として当接面44に直交する方向に先端51aの当接による押圧力Fが作用する。これにより押圧力が増大し、各接触面14,43が吊りボルト4に密着嵌合する。そして、ブレース材7を固定することで、ブレース材7の下端7bから吊りボルト4の下端までの距離D1及び吊りボルト4の下端から第一受部材10の取付位置までの距離D2の2辺の長さも確定する。これにより、取付角度も自ずと決定される。よって、第一、第二受部材10,20が相対回転可能であっても、施工後において、不測の負荷によりブレース材7の取付角度が変化することを抑制できる。
【0039】
最後に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
第一受部材10の寸法や形状等は、上記実施形態の例に限られるものではない。例えば、
図10に示す第一受部材10’には、湾曲部11’の内側に吊りボルト4のねじ山4aと嵌合するボルト16が溶接により設けている。本実施形態では、このボルト16の周面(ねじ山)17が吊りボルト4と接触する接触面14’となり、吊りボルト4のねじ山4aと密着嵌合する。このように、第一受部材10は、吊りボルト4に接触する接触面14,14’を有する態様のものであればよい。
【0040】
また、第二受部材20の寸法や形状等も、上記実施形態の例に限られるものではない。例えば、
図10に示す第二受部材20’には、取付部21’に貫通孔27及びその貫通孔27と連通するナット28よりなる螺合部29を設けている。この螺合部29が上記実施形態における取付孔24に相当し、接続ボルト51と螺合する。このように、第二受部材20は、一側にブレース材7の一端7aに設けた接続部材50を螺合により取り付ける取付部24を有する態様のものであればよい。
【0041】
上記実施形態において、第一、第二受部材10,20の内側で軸部材30に係止して設けられる押付部材40を設けた。しかし、例えば、
図10に示す如く、押付部材40を設けることなく、接続ボルト51の先端51aを直接吊りボルト4に当接させるようにしてもよい。但し、接触部分の増加による取付強度向上の点及び吊りボルト4のねじ山4aの破損防止の点で上記実施形態が優れている。
【0042】
また、押付部材40の寸法や形状等も、上記実施形態の例に限られるものではなく、吊りボルト4に接触する接触面43を有し、第一受部材10及び第二受部材20の内側で軸部材30に係止する係止部41を有する態様のものであれば、特に限定されるものではない。係止させる態様も上記実施形態の如く湾曲部41を軸部材30に貫通させる態様に限られない。
【0043】
上記実施形態において、各接触面14,43の全面に凹凸を設けた。しかし、凹凸は全面に設けることなく、一部に及び/又は一方にのみ設ける態様であっても構わない。但し、より強固に固定される点で上記実施形態が優れている。
【0044】
また、上記実施形態において、接続部材50に平面視コの字状の固定部52を設けた。しかし、接続部材50の形状もこれに限られるものではない。例えば、
図11に示すように、羽子板状の接続部材50’を用いることも可能である。この接続部材50’は、接続ボルト51と、この接続ボルト51の一端から延設された板状の固定部52’とからなる。固定部52’は、ブレース材7の側面7cにビス等の固定部材59により取付固定される。このように、接続部材50は、ブレース材7と第二受部材20とを接続する態様のものであればよい。但し、板状の固定部52’をブレース材7の側面7cに取付固定するため、ブレース材7の軸と接続ボルト51の軸とが一致せず、座屈に対する接続部材の強度の点では上記実施形態が優れている。
【0045】
上記実施形態において、第一、第二受部材10,20の各開口部13,23とを重ね合わせて、第二受部材20の内側に第一受部材10を嵌め込み、中ボルト30により回転可能に連結した。しかし、回転可能であれば、第一受部材10の内側に第二受部材20を嵌め込むようにしてもよい。
【0046】
なお、上記実施形態において、ブレース材7として振れ止めチャンネルを用いたが、ブレース材7の形状等はこれに限られるものではなく、接続部材50を取付可能なものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、軽量鉄骨天井下地等の天井下地構造を構築する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1’:取付金具、2:天井下地構造(吊り天井)、3:天井スラブ、4:吊りボルト、4a:ねじ山(周面)、5:ハンガー、6:天井フレーム(野縁受)、7:ブレース材、7a:一端(上端)、7b:他端(下端)、7c:側面、8:固定部材(ビス)、10,10’:第一受部材、11,11’:湾曲部、12,12’:突出部、13:開口部、14,14’:接触面、15:貫通孔、16:ボルト、17:周面(ねじ山)、20,20’:第二受部材、21,21’:取付部、22,22’:突出部、23:開口部、24:取付孔、25:貫通孔、26:ねじ山(内面)、27:貫通孔、28:ナット、29:螺合部、30:軸部材(中ボルト)、31:円筒部、32:ねじ部、33:ナット、40:押付部材、41:湾曲部(係止部)、42:接触部、43:接触面、44:当接面、50,50’:接続部材、51,51’:接続ボルト、51a:一端、51b:他端、52,52’:固定部、53:座金、54:ナット、55:取付部、55a:貫通孔、56:突出部、57:ナット、58:孔、59:固定部材(ビス)、A1,A2,A3:軸、D1,D2:距離、F:押圧力(分力)、L:円筒部長さ、N:回転モーメントによる力、P:当接点、r:腕の長さ、S:空間、W:最大幅