【文献】
Products of EMALEX By HLB order,インターネット<URL:https://www.nihon-emulsion.co.jp/english_2014/products/hlblist.html>, 2015年12月25日検索
【文献】
東レ・ダウコーニング株式会社,ビューティーケア用シリコーン 乳化・分散剤セレクションガイド,2015年 5月,第8頁,インターネット<URL:https://www.dowcorning.co.jp/ja_JP/content/publishedlit/27-1447-42_Beauty-care-emulsifying-and-dispersing-agents.pdf>, 2015年12月25日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水中油型化粧料は、みずみずしくさっぱりした使用感触を与えるものとして広く用いられている。しかしながら、その内相(油相)に粉末、特に疎水化処理された粉末を配合すると乳化系が不安定になる傾向があった。そこで、粉末を配合した水中油型乳化基剤の外相(水相)を増粘することにより安定化する試みが行われていたが、疎水化処理粉体からのイオン溶出による系の減粘や増粘剤によるべたつきといった問題が生じていた。
【0003】
特許文献1には、疎水化処理粉末を含む水中油型乳化化粧料において、外水相に配合する増粘剤としてサクシノグリカンを用い、さらにナイロン樹脂粉末等の疎水性粉末を外水相に配合することにより、べたつき等を解消できたことが記載されている。
【0004】
一方、水中油型乳化物に用いられる界面活性剤によっても、べたつきを生じ使用感を損なうことが問題となることもある。
特許文献2には、炭素数8〜30のアルキル基により変性された水溶性セルロースと炭素数12〜28の室温で固形状の高級アルコールとを含有する乳化組成物が記載され、実質的に界面活性剤を含まなくても良好な使用性と乳化安定性が達成されるとしている。しかしながら、固形状の高級アルコールを含有しているため製造に加熱工程が必須となるため、そのプロセスが煩雑であった。また、粉末を配合した場合の特性については検討されていない。
【0005】
特許文献3には、アルキル変性ヒドロキシエチルセルロースを含む非架橋の両親媒性ポリマーを含み、油性相の配合量を35重量%未満とした、15から500ミクロンの平均粒径を有する水中油型エマルジョン組成物が記載されており、半透明の外観で皮膚に油っぽくなく、広範な粘度範囲で安定な組成物であるとされている。しかし、粉末を配合した場合の特性については何ら検討されていない。
【0006】
また、特許文献4及び5には、セルロース等の多糖類にグリセリルエーテル基及びカルボキシメチル基、あるいはグリシジルエーテル基及びスルホン酸基を導入した誘導体が記載され、乳化安定性を向上させる増粘剤として使用できることが記載されている。しかしながら、スルホン酸基を導入したセルロース誘導体は皮膚に対する刺激性を示す場合があり、塗布時の伸びの軽さやみずみずしさという使用感触においても、十分満足の得られる結果となっていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の乳化化粧料は、(A)炭素数14〜22のアルキル基により疎水変性されたアルキルセルロース(以下「疎水変性アルキルセルロース」とする)を含有している。
本発明における疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に疎水性基である長鎖アルキル基を導入した化合物であり、下記式(I)で表される。
【化1】
[式中、Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、炭素原子数が1〜4のアルキル基、基−[CH
2CH(CH
3)O]
m−H(式中、mは、1〜5、好適には1〜3の整数である)、基−CH
2CH
2OH、及び、基−CH
2CH(OH)CH
2OR’(式中、R’は、炭素原子数が14〜22のアルキル基である)から選ばれる1種以上の基であるが、基−CH
2CH(OH)CH
2OR’を必ず含むものとする。また、Aは、基−(CH
2)
q−(qは、1〜3の整数であり、好適には1である)であり、nは、100〜10000、好適には500〜5000の整数である。]
【0013】
前記式(I)の疎水変性アルキルセルロースの製造方法は、概ね、基となる水溶性セルロースエーテル誘導体、具体的には、メチルセルロース (Rが水素原子又はメチル基)、エチルセルロース(Rが水素原子又はエチル基)、プロピルセルロース(Rが水素原子又はプロピル基)、ブチルセルロース(Rが水素原子又はブチル基)、ヒドロキシプロピルセルロース[Rが水素原子又はヒドロキシプロピル基(基−[CH
2CH(CH
3)O]
m−H(式中、mは、1〜5、好適には1〜3の整数である))]、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Rが水素原子、メチル基又はヒドロキシプロピル基(同上))等に対して、炭素数14〜22の長鎖アルキル基導入用化合物、具体的には、下記式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルを、アルカリ触媒の存在下で接触させて得ることができる。
【化2】
[式中、R’は、炭素原子数が14〜22のアルキル基である。]
【0014】
本発明の疎水変性アルキルセルロースに導入される基−CH
2CH(OH)CH
2OR’含有量は、疎水変性アルキルセルロース全体に対して0.1〜5.0質量%程度であるのが好ましい。このような含有率とするためには、上記水溶性セルロースエステル誘導体と長鎖アルキルグリシジルエーテルの反応の際のモル比や、反応時間、アルカリ触媒の種類等を適宜選択して製造すればよい。上記反応後、反応物の中和・濾過・洗浄・乾燥・篩分等の精製工程を行ってもよい。
【0015】
なお、上記の水溶性セルロースエーテル誘導体のうち、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択することが好適である(これにより、式(I)におけるRは、水素原子、メチル基、基−[CH
2CH(CH
3)O]
mH、及び、基−CH
2CH(OH)CH
2OR’の4種のいずれかの基となり、基Aのqが1となり、当該Aはメチレン基となる)。
さらに、式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルにおけるR’は、炭素数14〜22のアルキル基、好ましくは炭素数14〜20のアルキル基、更に好ましくは炭素数18のステアリル基(−C
18H
37)である。アルキル基R’の炭素数が14未満又は23以上では、得られた疎水変性アルキルセルロースによる乳化安定性が十分でなくなる。
【0016】
また、疎水変性アルキルセルロースの重量平均分子量は100,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは300,000〜800,000、さらに好ましくは550,000〜750,000である。
本発明においては、疎水変性アルキルセルロースとして市販品を使用することもできる。
例えば、サンジェロース90L(大同化成工業(株))、Natrosol Plus 330cs(Ashland社)、Polysurf 67cs(Ashland社)等が挙げられる。
【0017】
本発明の乳化化粧料における疎水変性アルキルセルロース(A)の配合量は、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.15〜1質量%である。0.05質量%未満では十分な乳化安定性が得られず、10%を越えて配合しても乳化作用および乳化安定性向上効果の増大は期待できない。
【0018】
本発明の乳化化粧料は、(B)粉末が安定に配合されている。粉末(B)は、内相(油相)に含有されているのが好ましい。外相(水相)に配合されている場合は皮膚に塗布した後に汗などとともに流れ落ちてしまうことがある。
【0019】
本発明における粉末(B)は、化粧料等に汎用されている粉末成分を意味する。具体例には、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト等の無機粉末;ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末、トリメチルシルセスキオキサン粉末等のシリコーン粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)等の無機赤色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の黒色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号などのジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料;これらの処理粉末などが含まれる。処理剤としては、シリコーン類、フッ化化合物、高級脂肪酸等があるが、これらに限られない。以上に述べた粉末の中でも、疎水性粉末(疎水化処理された粉末、元来親油性の粉末を含む)が特に好ましい。このような疎水性粉末を内油相に配合することで、なめらかな使用感を維持しつつ、隠蔽力やUV防御能をもたせることができる。
【0020】
本発明の乳化化粧料における粉末の配合量は、0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。0.1質量%未満では粉末配合による効果が得られず、40質量%を越えて配合すると使用感が悪くなる場合がある。
【0021】
本発明の乳化化粧料は、前記疎水変性アルキルセルロース(A)が良好な乳化作用を発揮するため、実質的に親水性界面活性剤を含まなくても安定性に優れていることを特徴としている。本明細書における「実質的に含まない」とは、本発明の目的の一つである乳化安定性を確保するために親水性界面活性剤を全く含まなくてもよいことを意味するが、親水性界面活性剤の配合を完全に排除するものではない。即ち、本発明の乳化化粧料は、親水性界面活性剤を少量、例えば0〜0.1質量程度で配合したものも包含する。
【0022】
本明細書における親水性界面活性剤は、一応の目安として、そのHLBが9以上の界面活性剤を指すが、必ずしもHLB値のみによって限定されるものではなく、通常の意味で親水性界面活性剤と呼ばれるものであればよい。例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール等の汎用されているイオン性、非イオン性の親水性界面活性剤、並びにアクリル酸/メタクリル酸アルキルコポリマー等の高分子乳化剤が含まれる。なお、本明細書におけるHLB値の算定方法は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、エステル系の界面活性剤については、下記のアトラス法に従って算出した値である。
HLB値=20×(1−SV/AV)
SV=対象物質の鹸化価
AV=対象物質で構成する酸の酸価
【0023】
一方、本発明の乳化化粧料は、(C)HLBが3〜8の親油性界面活性剤を更に含有するのが好ましい。親油性界面活性剤(C)を配合することにより安定性及び使用性が更に向上する。
本発明で用いられる親油性界面活性剤は、そのHLBが3〜8のものから選択される1種又は2種以上であり、例えば、脂肪酸グリセリルエステル、セチルジメチコンコポリオール(HLB=5.0)、ステアリン酸プロピレングリコール(HLB=6.0)等が挙げられる。中でも、脂肪酸グリセリルエステル、特にイソステアリン酸グリセリルエステル、例えば、モノイソステアリン酸グリセリル(HLB=4.0)、ジイソステアリン酸ジグリセリル(HLB=3.7)が好ましい。
【0024】
本発明の乳化化粧料における親油性界面活性剤の配合量は0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。
0.05質量%未満では添加による特性の向上が見られず、10質量%を越えて配合しても特性の更なる改善は見られない。
【0025】
本発明の乳化化粧料の油相を形成する油分は、化粧料等に従来から使用されている油分から選択することができ、特に限定されるものではない。
例えば、シリコーン油、油脂類、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、さらには油溶性薬剤等から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0026】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メチルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等から選択される1種又は2種以上が挙げられ、揮発性でも不揮発性でもよい。中でも、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルポリシロキサン等の揮発性シリコーン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを配合するのが好ましい。
【0027】
シリコーン油以外の油分の具体例を挙げれば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリイソオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、イソパルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ミリスチル、オクタン酸イソセチル、イソオクタン酸セチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オレイル、エルカ酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジオクチル、12−ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、アジピン酸ジオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、メトキシケイ皮酸オクチル、乳酸オクチルドデシル、乳酸イソステアリル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、コレステロール、フィトステロール、マイクロクリスタリンワックス、ベヘニン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸等である。
【0028】
本発明の乳化化粧料における油分の配合量は、1〜60質量%、好ましくは5〜55質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
この油分全体の配合量に対するシリコーン油の配合量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であれば、特にさっぱりした使用感が得られる。
【0029】
また、本発明においては、化粧料に通常用いられる各種成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合してもよい。具体例を挙げれば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、トレハロース等の糖類;;クロロフィル、β−カロチン等の天然色素;アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム等のアクリル系高子;アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、ビタミンB6塩酸塩、パントテニルエチルエーテル等のビタミン類;紫外線吸収剤、キレート剤、殺菌剤、消炎剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸、清涼剤等の薬剤;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;フェノキシエタノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が含まれる。
【0030】
本発明の乳化化粧料は、前記(A)疎水変性アルキルセルロース及び好ましくは(C)親油性界面活性剤を配合することにより、(B)粉末を含有していても安定であり、従来技術のような内油相を増粘させる目的で親油性の増粘剤を配合する必要はない。
従って、本発明の水中油型乳化化粧料の一態様では、室温で固形状の高級アルコールやデキストリン脂肪酸エステル等の親油性増粘剤を実質的に含まない。
【0031】
本発明の乳化化粧料は、肌に対するなめらかで柔らかな感触を有し、色材等の粉末を安定に配合することができるため、メーキャップ化粧料とするのに特に適している。
本発明の乳化化粧料は、加熱工程を必要とせず、水中油型乳化化粧料に通常用いられる方法に従って簡便に製造することができる。例えば、(C)親油性界面活性剤を配合して得られる本発明の乳化化粧料は、通常、約15μm以下の平均粒径の油相(内相)を有している。
【実施例】
【0032】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。
【0033】
下記の表1〜表4に示す処方で水中油型乳化化粧料を通常の製法に従って調製し、それらの特性を下記の評価方法、評価基準に従って評価した。それらの結果を表に併せて示す。
1.粘度安定性
2本のスクリュー管(50ml)に試料を充填し、37℃又は50℃の恒温槽に2週間静置した。静置の前後に回転式粘度計(ビスメトロン回転粘度計)を用いて、ローターNo.3,ローター回転数12rpmで測定し、粘度変化を確認した。
「評価基準」
A:37℃及び50℃のいずれにおいても粘度低下がみられなかった。
B:50℃においては若干の粘度低下がみられたが、37℃では粘度低下はみられなかった。
C:37℃及び50℃のいずれにおいても粘度低下がみられた。
【0034】
2.安定性(ローリング試験)
円筒型の容器に試料を半量充填し、ローリングテスター(濁川理化工業(株)社製)により室温にて試料に45rpmで4時間回転運動を与え、試料の状態変化について観察した。
「評価基準」
A:外観において分離がみられなかった。
B:外観において分離がみられたが、攪拌により均一な状態に戻った。
C:外観において分離がみられ、攪拌しても均一にならなかった。
【0035】
3.使用性の評価方法
実施例及び比較例の各サンプルを、10名の専門パネルに実際に使用してもらい、使用性(べたつきのなさ、なめらかさ)について評価した。下記評価点基準に従って各パネルに5段階官能評価してもらい、その合計点により下記評価基準に基づいて判定した。
「評価点基準」
5:非常に優れている
4:優れている
3:普通
2:劣る
1:非常に劣る
「評価基準」
A:合計点が40点以上
B:合計点が30〜39点
C:合計点が20〜29点
D:合計点が19点以下
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示した結果から、油相に粉末を含む水中油型乳化化粧料において、疎水変性アルキルセルロースを乳化剤として配合した本発明の化粧料(実施例1−1〜1−3)は安定及び使用性に極めて優れていることが示された。特に、親油性界面活性剤(1〜10質量%)を配合するとなめらかさが更に向上した(実施例1−2〜1−3)。しかしながら、親油性界面活性剤に代えて親水性界面活性剤(10質量%)を配合した比較例1−1では、べたつきを生じ、なめらかさも低下した。
これに対して、疎水変性アルキルセルロースを他の汎用増粘剤に置換した比較例1−2では安定でなめらかな乳化物が得られず、安定化のために親水性界面活性剤(1.2質量%)を添加するとべたつきを生じ使用性が低下した(比較例1−3)。
【0038】
【表2】
【0039】
油相を構成する油分の種類を様々に変更しても、測定した特性は全て満足できるものであった(表2)。
【0040】
【表3】
【0041】
表3の結果から、親油性界面活性剤の配合によるなめらかさの向上は、親油性界面活性剤の種類によらないことが示された(実施例3−1〜3−3)。
一方、疎水変性アルキルセルロースに導入するアルキル基をステアリル基(C18)からセチル基(C14)に変えた場合にも本発明の効果が得られることが確認された(実施例3−4及び3−5)。しかしながら、疎水変性していない水溶性セルロースエーテル誘導体及び導入するアルキル基の炭素数を14未満又は23以上とした場合には安定な乳化物が得られなかった。
【0042】
(実施例4)
以下の処方で水中油型乳化化粧料を調製した。得られた化粧料は、前記と同様に測定した特性が全て「A」であった。
配合成分 配合量(質量%)
イオン交換水 61.25
ステアリルヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35
ジプロピレングリコール 8
フェノキシエタノール 0.25
エチルパラベン 0.15
モノイソステアリルグリセリル 1
オクチルメトキシシンナメート 5
スクワラン 3
ジメチルポリシロキサン 16.55
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
シリコーン処理酸化亜鉛 2.4
疎水化処理酸化鉄 0.05
合計 100