(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058908
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】フロアマット
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20161226BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
B60N3/04 A
A47G27/02 101A
A47G27/02 102
B60N3/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-90410(P2012-90410)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-216270(P2013-216270A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149664
【氏名又は名称】株式会社大和
(73)【特許権者】
【識別番号】506229970
【氏名又は名称】AS R&D合同会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】堀 光雄
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−177043(JP,A)
【文献】
特表平09−500692(JP,A)
【文献】
特表昭61−500500(JP,A)
【文献】
特開2003−321928(JP,A)
【文献】
特開昭49−069794(JP,A)
【文献】
特表平10−513489(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0117312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材裏面側にバッキング層を形成したフロアマットであって、
前記バッキング層が発泡倍率が1〜4倍であり、硬度が10〜40度である架橋構造を有する発泡樹脂からなり、
前記バッキング層中には有機減衰性フィラーとヨウ素複合体から選択される1種もしくは2種以上が含まれており、
前記有機減衰性フィラーが、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、および4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)から選択される1種もしくは2種以上の化合物からなることを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
ヨウ素複合体が、ヨウ素を担体に担持、吸蔵させて複合化したヨードホール、あるいは前記ヨードホールをゲスト分子として、これをホスト分子に包接させたヨウ素包接体であることを特徴とする請求項1に記載のフロアマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両床面や住宅床面に適用されるフロアマットであって、ズレが生じ難く改良されたフロアマットに関する。特に車両用フロアマットとして用いた場合、該フロアマットがアクセルペダルやブレーキペダルに干渉し、そのペダル操作に影響を及ぼすおそれが少ないフロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の床面にはタフテッドカーペットやニットカーペットなどのファーストカーペットが敷設されている。このファーストカーペットは、一般に車内の床面全面に接着剤などを介して敷設されるため、埃やゴミなどで汚れた場合でも、簡単に取り外して清掃することができない。このため、車両床面には、埃やゴミが直接ファーストカーペットに付かないようにするため、その上面に取り外し可能なフロアマットが載置されている。
【0003】
ところが、この車両床面のファーストカーペット上に載置されるフロアマットは、運転時や乗り降りの際にズレを生じ易くやすく、そのズレが交通事故に繋がる可能性があるため、そのズレ防止対策がなされていた。
【0004】
そのズレ防止対策の一手段として、ファーストカーペット内に入り込んで該フロアマットのズレを防止する該フロアマット裏面に設けたズレ防止用突起がある(例えば特許文献1及び2参照)。また、車両床面にフックを突設し、このフックをフロアマットの縁部に設けた貫通孔に引っかけることで、該フロアマットのズレを防止する手段もある(例えば特許文献3〜5参照)。
【0005】
ところが、フロアマット裏面に設けた多数のズレ防止用突起だけでは、そのズレ防止効果は確実なものではなかった。そこで、フロアマット縁部に設けた貫通孔に車両床面に突設したフックを引っ掛けるズレ防止手段を併用する対応がなされることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−309849号公報
【特許文献2】特開2007−307418号公報
【特許文献3】特開平6−320995号公報
【特許文献4】特開2000−153731号公報
【特許文献5】特開2007−22299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フックの貫通孔への引っ掛けが不十分であった場合には、フロアマットに加わる力の大きさや方向によっては、該フロアマットが斜めにズレたりすることがあり、その際、フロアマット縁部の貫通孔からフックが外れることもあった。
【0008】
このようにして、車両床面のフロアマットの位置を固定する固定フックからフロアマットが外れ、フロアマットの位置が前方にズレてしまった時、そのズレたフロアマットがアクセルペダルに引っ掛かり、アクセルペダルが戻りにくくなったり、意図せずにアクセルペダルが押し込まれることがあった。
【0009】
一方、車両用フロアマットについては、近年のハイブリット車やEV車の普及に伴い、より軽量化が求められる状況下で、車両用フロアマットについてもさらなる軽量化が求められている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ズレが生じ難く、しかも軽量なフロアマットであって、特に車両用フロアマットとして用いた場合、該フロアマットがアクセルペダルやブレーキペダルに干渉し、そのペダル操作に影響を及ぼすおそれがないフロアマットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、繊維基材裏面側にバッキング層を形成したフロアマットであって、
前記バッキング層が発泡倍率が1〜4倍であり、硬度が10〜40度である
架橋構造を有する発泡樹脂からなり、
前記バッキング層中には
有機減衰性フィラーとヨウ素複合体から選択される1種もしくは2種以上が含まれており、
前記有機減衰性フィラーが、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、および4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)から選択される1種もしくは2種以上の化合物からなることを特徴とするフロアマットをその要旨とした。
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【0014】
請求項
2に記載の発明は、ヨウ素複合体が、ヨウ素を担体に担持、吸蔵させて複合化したヨードホール、あるいは前記ヨードホールをゲスト分子として、これをホスト分子に包接させたヨウ素包接体であることを特徴とする請求項
1に記載のフロアマットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフロアマットにあっては、バッキング層が1〜4倍の発泡倍率で発泡された発泡構造を有し、その表面には無数の孔が開口していると共に、硬度が10〜40度であることから生じる粘性により、床面との間における摩擦係数が飛躍的に増大し、ズレが生じ難く、しかも軽量という効果を導き出している。
また、このバッキング層は、架橋構造を有する発泡樹脂からなることから、該バッキング層は、フロアマットに加わる外力によっても容易に破損しない強度を備えている。
【0016】
またこのフロアマットにあっては、バッキング層の硬度が10〜40度であることから柔らかく、該フロアマットの位置が仮に前方にズレて、アクセルペダルやブレーキペダルに引っ掛かったとしても、フロアマットの先端が簡単に折れ曲がり、アクセルペダルやブレーキペダルから速やかに外れるにようになっており、アクセルペダルやブレーキペダルに干渉し、そのペダル操作に影響を及ぼすおそれがないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のフロアマットをさらに詳しく説明する。本発明のフロアマットは、繊維基材裏面側にバッキング層を形成したものである。繊維基材としては、例えば不織布、織物、編物などからなる基布にパイル糸を打ち込んだものなど、特に限定されない。
【0018】
バッキング層は、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム系高分子、またはこれらを複数種混合したものなどの樹脂を用い、これに発泡剤などを加えて発泡成形した発泡構造体からなるものである。
【0019】
その発泡倍率は1〜4倍の範囲であり、発泡倍率が1倍を下回る場合、床面との間における摩擦係数を飛躍的に増大させると共に軽量化する十分な効果を得ることができず、5倍を超える場合には、脆くなり、フロアマットに加わる外力に十分に対抗できなくなる恐れがあるからである。
【0020】
また、バッキング層の硬度は10〜40度である。バッキング層の硬度がこの範囲外の場合、フロアマットに加わる外力に十分に対抗できる強度と、該マットがずれてもペダルに干渉しない程度の柔らかさを得ることができなくなる。
【0021】
またバッキング層中には、例えばジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、トリアクリルホルマール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸1, 3−ブチルグリコール、トリアリルイソシアネート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどの
架橋剤が含まれており、該バッキング層の発泡樹脂構造の強化が図られている。
【0022】
架橋剤の含有量は限定されないが、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部が好ましく、0.1〜1.5質量部がより好ましい。
【0023】
またバッキング層中に有機減衰性フィラーとヨウ素複合体から選択される1種もしくは2種以上を含ませる形態を採ることもできる。この場合バッキング層は、電磁波、振動、音、衝撃などのエネルギーを効果的に減衰することができ、かつ優れた抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性、消臭性を有するものとなる。
【0024】
有機減衰性フィラーは、電磁波、振動、音、衝撃などのエネルギーを効果的に減衰することができるものであり、具体的にはp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、および4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)から選択される1種もしくは2種以上の化合物からなるものを挙げることができる。
【0025】
この有機減衰性フィラーは、バッキング層を構成する樹脂のマトリックス相中にミクロ相分離した分散相として、あるいは完全相溶した分散相として上記化合物が存在しているのである。またこの分散相は、上記マトリックス相中に平均粒子径1μm以下、より好ましくは平均粒子径0.1μm以下の大きさで存在していることが、エネルギーの減衰効果をより効果的に発揮させる上で望ましい。
【0026】
この分散相を構成する化合物は、マトリックス相を構成する樹脂100重量部に対して1〜60重量部、好ましくは15〜50重量部の割合で含まれていることが望ましい。化合物の含有量が1重量部を下回る場合、十分なエネルギー減衰性を得ることができず、また60重量部を上回る場合には、範囲を超える分だけの減衰性が得られず不経済となるからである。
【0027】
一方、ヨウ素複合体は、例えばヨウ素、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムなどの三ヨウ化物(ヨージド)を、ポリエーテルグリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアミド類、ポリオキシアルキレン類、澱粉類、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどのヨウ素担体に担持、吸蔵させて複合化したヨードホール、あるいは上記ヨードホールをゲスト分子として、これをα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはサイクロシクロデキストリンなどのシクロデキストリン、ゼラチン、乳糖、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴムなどの1種若しくは2種以上の混合物からなるホスト分子に包接させたヨウ素包接体から構成されるものである。
【0028】
このヨウ素包接体は、ホスト分子とゲスト分子とが99:1〜50:50の重量比で存在するように包接させたものが、十分な抗菌効果および熱的安定性を有する点で好ましい。また、上記ヨウ素包接体の中でも、シクロデキストリンをホスト分子としてヨードホールを包接したヨウ素包接体は、ヨウ素保持性に優れ、かつ熱的安定性および分散性に優れる点から好ましい。
【0029】
上記ヨウ素複合体の有効ヨウ素量としては、十分な抗菌性を発揮できるという観点から、少なくとも5%、好ましくは5〜20%の範囲が望ましい。
【0030】
尚、いずれの種類のヨウ素複合体を用いるかは、要求される性能の強弱および持続時間(例えば有効ヨウ素量、ヨウ素の単位時間あたりの放出量など)、製造時の温度や圧力、使用環境などを考慮して適宜決定するとよい。
【0031】
このヨウ素複合体は、上記ベース樹脂100重量部に対し0.1〜30重量部の割合で含まれているのが望ましく、より好ましくは1〜25重量部、最適には5〜25重量部である。ヨウ素複合体の含有量が0.1重量部を下回るとき、十分な性能が得られない恐れがあり、含有量が30重量部を越える場合には、効果が強すぎたり、樹脂に均一に分散しなかったり、該ヨウ素複合体を含むバッキング層の機械的強度の低下を招いたりするなどの弊害を生じる恐れがある。
【0032】
尚、本発明の範囲は、「請求の範囲」に定義されており、その範囲に含まれる全ての変更、形態を採ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のフロアマットは、軽量でズレ難いマットとして車両床面や住宅床面に好適に用いることができる。