(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058911
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】映像表示システム並びに眼鏡装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/26 20060101AFI20161226BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20161226BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20161226BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20161226BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20161226BHJP
H04N 13/04 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
G02B27/26
G02F1/13363
G02F1/1335 510
G02B5/30
!G02F1/13 505
!H04N13/04
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-109151(P2012-109151)
(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公開番号】特開2013-235209(P2013-235209A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】316009762
【氏名又は名称】サターン ライセンシング エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Saturn Licensing LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 涼
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−243420(JP,A)
【文献】
特開2004−101775(JP,A)
【文献】
特開平09−113911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30,27/26
G02F 1/13,1/1335,1/13363
H04N 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、
前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを左眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを左眼に届ける左眼用レンズと、前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを右眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを右眼に届ける右眼用レンズと、前記左眼用レンズ及び前記右眼用レンズをそれぞれ個別に表裏を反転できるように支持する支持部とを備える眼鏡装置と、
を具備し、
前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ左回り円偏光又は右回り円偏光のいずれかに変換するλ/4位相差板を備え、
前記眼鏡装置の前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/4位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/4位相差板を有する偏光板からなる、
映像表示システム。
【請求項2】
第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、
前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを左眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを左眼に届ける左眼用レンズと、前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを右眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを右眼に届ける右眼用レンズと、前記左眼用レンズ及び前記右眼用レンズをそれぞれ個別に表裏を反転できるように支持する支持部とを備える眼鏡装置と、
を具備し、
前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ左回り円偏光又は右回り円偏光のいずれかに変換するλ/4位相差板を備え、
前記眼鏡装置の前記レンズは表側に第1のλ/4位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/4位相差板を有する偏光板からなる、
映像表示システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記第1の映像及び前記第2の映像として左眼用映像と右眼用映像を表示する3次元映像表示モードと、前記第1の映像及び前記第2の映像としてそれぞれ異なる映像を表示する複数映像表示モードを有する、
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が一致している、
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が互いに90度ずれている、
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項6】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させることで、左回り円偏光又は右回り円偏光の光学特性のいずれかに設定する、
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記支持部は、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持する、
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項8】
第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、
前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを眼に届けるレンズと、前記レンズを反転できるように支持する支持部を備える眼鏡装置と、
を具備し、
前記支持部は、前記レンズを保持する眼鏡フレームに対し左右のテンプル部の前後の向きを切り換える、
映像表示システム。
【請求項9】
第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、
前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを左眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを左眼に届ける左眼用レンズと、前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを右眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを右眼に届ける右眼用レンズと、前記左眼用レンズ及び前記右眼用レンズをそれぞれ個別に表裏を反転できるように支持する支持部とを備える眼鏡装置と、
を具備し、
前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ鉛直直線偏光又は水平直線偏光のいずれかに変換するλ/2位相差板を備え、
前記眼鏡装置の前記左右のレンズの一方は表裏ともに第1のλ/2位相差板を有する偏光板からなり、前記左右のレンズの他方は表裏ともに第2のλ/2位相差板を有する偏光板からなる、
映像表示システム。
【請求項10】
第2の偏光光を遮光して第1の偏光光のみを左眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを左眼に届ける左眼用レンズと、
前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを右眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを右眼に届ける右眼用レンズと、
前記左眼用レンズ及び前記右眼用レンズをそれぞれ個別に表裏を反転できるように支持する支持部と、
具備し、
前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/4位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/4位相差板を有する偏光板からなる、
眼鏡装置。
【請求項11】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が一致している、
請求項10に記載の眼鏡装置。
【請求項12】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が互いに90度ずれている、
請求項10に記載の眼鏡装置。
【請求項13】
前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させることで、左回り円偏光又は右回り円偏光の光学特性のいずれかに設定する、
請求項10に記載の眼鏡装置。
【請求項14】
第2の偏光光を遮光して第1の偏光光のみを左眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを左眼に届ける左眼用レンズと、
前記第1の偏光光を遮光して前記第2の偏光光のみを右眼に届けるとともに表裏を反転させて前記第2の偏光光を遮光して前記第1の偏光光のみを右眼に届ける右眼用レンズと、
前記左眼用レンズ及び前記右眼用レンズをそれぞれ個別に表裏を反転できるように支持する支持部と、
具備し、
前記左右のレンズの一方は表裏ともに第1のλ/2位相差板を有する偏光板からなり、前記左右のレンズの他方は表裏ともに第2のλ/2位相差板を有する偏光板からなり、
前記支持部は、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させることで、鉛直直線偏光又は水平直線偏光の光学特性のいずれかに設定する、
眼鏡装置。
【請求項15】
前記支持部は、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持する、
請求項10に記載の眼鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、複数の映像を多重して表示する表示装置と多重された複数の映像を観察する眼鏡装置からなる映像表示システム並びに眼鏡装置に係り、特に、表示装置が表示する3次元映像並びに全く異なる映像を1つの眼鏡装置を用いて視聴する映像表示システム並びに眼鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
左右の眼に視差のある映像を表示することで、観察者に3次元的に見える3次元映像を提示することができる。例えば、眼鏡を利用した3次元映像表示システムは、表示装置側では時分割又は空間分割で左眼用映像及び右眼用映像を多重して表示し、眼鏡側では多重された左眼用映像と右眼用映像を分離し、左眼には左眼用映像の光のみを入射させるとともに右眼には右眼用映像の光のみを入射させる。そして、観察するユーザーの脳内では左眼用映像と右眼用映像が融像され3次元映像として認識される。
【0003】
時分割3次元映像表示方式では、表示装置が視差のある左眼用映像及び右眼用映像を非常に短い周期で交互に表示し、一方の眼鏡側では、左眼用映像がディスプレイされる間は眼鏡の左眼部が光を透過するとともに右眼部が遮光し、右眼用映像がディスプレイされる間は眼鏡の右眼部が光を透過するとともに、左眼部が遮光する。例えば、シャッター眼鏡は、左眼部及び右眼部それぞれに液晶シャッターを配設し、表示装置側での左眼用映像と右眼用映像の切り換わりに同期して左右の液晶シャッターを交互に開閉操作して、左右の眼への映像の入射及び遮光を制御することができる(例えば、特許文献1を参照のこと)。シャッター眼鏡は、液晶シャッターを駆動制御するアクティブ眼鏡であり、眼鏡が高価になる。また、表示装置からシャッター眼鏡へ、液晶シャッターの開閉タイミングを制御するための信号を送信する必要もある。
【0004】
また、時分割3次元映像表示方式の他の例として、アクティブ・リターダー方式を挙げることができる。すなわち、表示装置の画面の前方に、位相差を電気的に制御する位相板すなわちアクティブ・リターダーを配設し、左眼用映像及び右眼用映像の表示期間に同期してアクティブ・リターダーの位相差を時分割で変化させて、左眼用映像をなす光を左回り円偏光に変換するとともに、右眼用映像をなす光を右回り円偏光させる。一方、観察者が掛ける偏光眼鏡は、左眼側に左回り円偏光に対応した偏光レンズ(リターダー)を取り付けるとともに、右眼側に右回り円偏光に対応した偏光レンズを取り付けている。したがって、時分割多重された左眼用映像と右眼用映像は、偏光眼鏡を通過することで分離され、それぞれ左右の眼で観察することができる(例えば、特許文献2を参照のこと)。偏光眼鏡は、シャッター眼鏡とは相違し、駆動部を持たないパッシブ眼鏡であり、安価で提供することができる。
【0005】
また、パッシブ眼鏡を利用した空間分割3次元映像表示方式として、パターン・リターダー方式を挙げることができる。表示装置の画面前方に、位相差の異なる位相差板(パターン・リターダー)を1水平走査ライン毎に交互に配設するとともに、表示装置は1水平走査ライン毎に左眼用映像と右眼用映像を交互に画面表示する。ここで、パターン・リターダーは、左眼用映像をなす光を左回り円偏光に変換するとともに、右眼用映像をなす光を右回り円偏光に変換する。そして、観察者は、左眼側に左回り円偏光に対応した偏光レンズ(リターダー)を有し、右眼側に右回り円偏光に対応した偏光レンズを有する偏光眼鏡を掛けて、3次元映像を観察することができる(例えば、特許文献3を参照のこと)。
【0006】
前者の時分割3次元映像表示方式は、解像度の劣化なく3次元映像を表示することができるが、文字通り50Hz又は60Hzのフレーム周期で左右の映像を切り替えるので、画面のちらつきが発生することが懸念される。また、後者の空間分割3次元視表示方式は、解像度が劣化するものの、画面のちらつきがなく、快適な3次元映像の視聴を実現することができる。付言すれば、パッシブ眼鏡を利用するので、安価である。
【0007】
いずれの方式にせよ3次元映像表示方式は、異なる視点の映像を表示する技術と捉えることができる。3次元視の応用例として、左右の眼の映像ではなく、複数の異なる映像P1、P2を時分割又は空間分割で表示するなど、1台の表示装置で全く異なる映像を同時に視聴する映像表示システムが挙げられる。この場合、ある観察者は左右両方の眼で映像P1を観察し、他の観察者は、左右両方の眼で映像P2を観察することになる。
【0008】
シャッター眼鏡方式は、シャッター眼鏡は電気的に光変調している。したがって、一方の映像P1を視聴したい観察者に対し、映像P1の表示期間に同期して眼鏡の左右の液晶シャッターをともに開成し、他方の映像P2を視聴したい観察者に対し、映像P2の表示期間に同期して眼鏡の左右の液晶シャッターをともに閉成するなど、一方の映像を遮光するようにシャッター眼鏡の開閉動作をタイミング制御すればよい。すなわち、3次元映像表示の場合と同一のシャッター眼鏡を用いて、全く異なる映像を1台の表示装置で同時に楽しむことができる。
【0009】
一方、パッシブ眼鏡方式の場合には、あらかじめ決められた位相差により光変調しているため、左右いずれかのリターダーが映像の光を遮光することになり、観察者は左右の眼で同時に同じ映像を視聴することはできない。表示装置100側で、時分割又は空間分割により複数の映像P1、P2を表示すると、一方の眼には映像P1が入射し、他方の眼に映像P2が入射し、いずれの映像P1、P2も正常に観察することはできない、すなわち、3次元映像表示の場合と同一のパッシブ眼鏡を用いて異なる映像を1台の表示装置で同時に楽しむことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−39194号公報
【特許文献2】特開2011−242773号公報
【特許文献3】特開2009−301039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書で開示する技術の目的は、表示装置が表示する3次元映像並びに全く異なる映像を1つの眼鏡装置を用いて視聴することができる、優れた映像表示システム並びに眼鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、
それぞれ前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対応した光学特性に設定可能な左右のレンズを有し、前記第1の偏光に変換された前記第1の映像又は前記第2の偏光に変換された前記第2の映像のいずれかを選択的に遮光する眼鏡装置と、
を具備する映像表示システムである。
【0013】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0014】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記表示装置は、前記第1の映像及び前記第2の映像として左眼用映像と右眼用映像を表示する3次元映像表示モードと、前記第1の映像及び前記第2の映像としてそれぞれ異なる映像を表示する複数映像表示モードを有している。
【0015】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記眼鏡装置は、前記左右のレンズの取り付け位置に応じて前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定するように構成されている。
【0016】
本願の請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記眼鏡装置は、前記左右のレンズを互いに独立して前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定可能となるように構成されている。
【0017】
本願の請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記眼鏡装置は、前記左右のレンズを一体として前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定可能となるように構成されている。
【0018】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ左回り円偏光又は右回り円偏光のいずれかに変換するλ/4位相差板を備えている。そして、前記眼鏡装置は前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/4位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/4位相差板を有する偏光板で構成されている。
【0019】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が一致するように構成されている。
【0020】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が互いに90度ずれて構成されている。
【0021】
本願の請求項9に記載の技術によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、前記眼鏡装置は、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させる反転機構を備えている。そして、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させることで、左回り円偏光又は右回り円偏光の光学特性のいずれかに設定するように構成されている。
【0022】
本願の請求項10に記載の技術によれば、請求項9に記載の映像表示システムにおいて、前記反転機構は、左右のレンズを独立して前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させるように構成されている。
【0023】
本願の請求項11に記載の技術によれば、請求項10に記載の映像表示システムにおいて、前記反転機構は、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持するように構成されている。
【0024】
本願の請求項12に記載の技術によれば、請求項9に記載の映像表示システムにおいて、前記反転機構は、左右のレンズを一体として前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させるように構成されている。
【0025】
本願の請求項13に記載の技術によれば、請求項12に記載の映像表示システムにおいて、前記反転機構は、左右のレンズを保持する眼鏡フレームに対し左右のテンプル部の前後の向きを切り換えるように構成されている。
【0026】
本願の請求項14に記載の技術によれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ鉛直直線偏光又は
水平直線偏光のいずれかに変換するλ/2位相差板を備えている。そして、前記眼鏡装置は前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/2位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/2位相差板を有する偏光板で構成される。
【0027】
本願の請求項15に記載の技術によれば、請求項14に記載の映像表示システムにおいて、前記眼鏡装置は、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させる反転機構を備えている。そして、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させることで、鉛直直線偏光又は水平直線偏光の光学特性のいずれかに設定するように構成されている。
【0028】
また、本願の請求項16に記載の技術は、
それぞれ前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対応した光学特性に設定可能な左右のレンズを有し、前記第1の偏光に変換された前記第1の映像又は前記第2の偏光に変換された前記第2の映像のいずれかを選択的に遮光する眼鏡装置である。
【0029】
本願の請求項17に記載の技術によれば、請求項16に記載の眼鏡装置は、前記左右のレンズがそれぞれ、表側に第1のλ/2位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/2位相差板を有する偏光板で構成される。
【0030】
本願の請求項18に記載の技術によれば、請求項16に記載の眼鏡装置は、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させる反転機構をさらに備えている。そして、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させることで、鉛直直線偏光又は水平直線偏光の光学特性のいずれかに設定するように構成されている。
【0031】
本願の請求項19に記載の技術によれば、請求項18に記載の眼鏡装置は、前記反転機構が、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持するように構成されている。
【0032】
本願の請求項20に記載の技術によれば、請求項18に記載の眼鏡装置は、前記反転機構が、左右のレンズを保持する眼鏡フレームに対し左右のテンプル部の前後の向きを切り換えるように構成されている。
【発明の効果】
【0033】
本明細書で開示する技術によれば、表示装置が表示する3次元映像並びに全く異なる映像を1つの眼鏡装置を用いて視聴することができる、優れた映像表示システム並びに眼鏡装置を提供することができる。
【0034】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本明細書で開示する技術を適用可能な表示装置100の機能的構成を模式的に示した図である。
【
図2】
図2は、本明細書で提案するパッシブ眼鏡200を含んだ映像表示システムの構成を示した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した映像表示システムにおいて、表示装置100側で異なる映像P1、P2を多重して表示するとともに、パッシブ眼鏡200越しで片方の映像P2を視聴する様子を示した図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した映像表示システムにおいて、表示装置100側で異なる映像P1、P2を多重して表示するとともに、パッシブ眼鏡200越しで片方の映像P1を視聴する様子を示した図である。
【
図5】
図5は、本明細書で提案するパッシブ眼鏡200を含んだ映像表示システムの他の構成を示した図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した映像表示システムにおいて、表示装置100側で異なる映像P1、P2を多重して表示するとともに、パッシブ眼鏡200越しで片方の映像P2を視聴する様子を示した図である。
【
図7】
図7は、
図5に示した映像表示システムにおいて、表示装置100側で異なる映像P1、P2を多重して表示するとともに、パッシブ眼鏡200越しで片方の映像P1を視聴する様子を示した図である。
【
図8】
図8は、本明細書で提案するパッシブ眼鏡200の他の構成例を示した図である。
【
図9】
図9は、本明細書で提案するパッシブ眼鏡200の他の構成例を示した図である。
【
図10】
図10は、パターン・リターダー方式の映像表示システムの動作原理を説明するための図である。
【
図11】
図11は、パターン・リターダー方式の映像表示システムの動作原理を説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図10に示した映像表示システムにおいて異なる映像P1、P2を視聴する様子を示した図である。
【
図13】
図13は、左右の偏光レンズともに左回り円偏光に対応した光学特性を有するパッシブ眼鏡を示した図である。
【
図14】
図14は、左右の偏光レンズともに右回り円偏光に対応した光学特性を有するパッシブ眼鏡を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0037】
図1には、本明細書で開示する技術を適用可能な表示装置100の機能的構成を模式的に示している。また、
図1には、表示装置100が表示する映像を視聴者が観察する際に用いるパッシブ眼鏡200も併せて示している。
【0038】
表示装置100は、映像表示部110と、映像信号処理部120と、タイミング制御部140と、映像メモリー150を備えている。
【0039】
映像信号処理部120は、映像信号処理部120の外部からの映像信号の伝送を受けると、映像表示部110における映像表示に適したものとなるように各種信号処理を実行して出力する。例えば、映像信号処理部120は、3次元映像又は2つの異なる映像を入力すると、1水平走査ライン毎に、左眼用映像と右眼用映像、又は異なる2つの映像P1、P2を交互に描画して、1フレーム分の映像を生成する。生成した画像は映像メモリー150に供給される。また、映像信号処理部120は、映像信号の切り替えのタイミングに同期して、データ・ドライバー113及びゲート・ドライバー114が動作するように、所定の制御信号をタイミング制御部140へ供給する。なお、ここで言う、映像信号の伝送元となる「外部」には、ディジタル放送の受信機や、ブルーレイ・ディスク・プレイヤーなどのコンテンツ再生装置を挙げることができる。
【0040】
映像表示部110は、外部から印加された信号に応じた映像の表示を行なう。映像表示部110は、表示パネル112と、ゲート・ドライバー113と、データ・ドライバー114と、光源162を備えている。
【0041】
ゲート・ドライバー113は、順次駆動するための信号を生成する駆動回路であり、タイミング制御部140から伝送された信号に応じて、表示パネル112内の各画素に接続されたゲート・バス・ラインへ、駆動電圧を出力する。また、データ・ドライバー114は、映像信号に基づく駆動電圧を出力する駆動回路であり、タイミング制御部140から伝送された信号並びに映像メモリー150から読み出された映像信号に基づいてデータ線へ印加する信号を生成して出力する。
【0042】
表示パネル112は、例えば格子状に配列された複数の画素を有する。液晶表示パネルの場合、ガラスなどの透明板の間に所定の配向状態を有する液晶分子が封入されており、外部からの信号の印加に応じて画像を表示する。上述したように、表示パネル112への信号の印加はゲート・ドライバー113及びデータ・ドライバー114によって実行される。
【0043】
光源162は、視聴者側から見て画像表示部110の一番奥に設けられるバックライトである。画像表示部110に画像を表示する際、光源162からは無偏光の白色光が視聴者側に位置する表示パネル112に出射される。
【0044】
なお、本明細書では、映像表示部110として液晶ディスプレイを用いた実施形態について記載するが、本明細書で開示する技術の要旨はこれに限定されるものではない。例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)やLED(Light Emitting Diode)など、複数の色成分のセルによって1つの画素を形成し、複数の画素を水平方向及び垂直方向に順次配置して構成される、他のディスプレイにも同様に本発明を適用することができる。
【0045】
表示装置100は、左眼用映像と右眼用映像、又は異なる2つの映像を空間変調して表示するが、パッシブ眼鏡200との組み合わせにより、パターン・リターダー方式の映像表示システムを構成する。
【0046】
ここで、パターン・リターダー方式の映像表示システムの動作原理について、
図10を参照しながら説明する。同図では、表示装置100を側面から眺めている。図示の通り、表示パネル112の後面及び前面には、偏光方向が互いに直交する偏光板132a、132bが貼設されている。また、表示パネル112の前方には、1水平走査ライン毎に−λ/4の位相差を有する偏光領域131a及び+λ/4の位相差を有する偏光領域131bが交互に切り替わる位相差板すなわちパターン・リターダー131が配設されている(但し、λは使用波長とする)。
【0047】
表示装置100が3次元映像を表示する際、表示パネル112は、映像信号の印加により、1水平走査ライン毎に、右眼用映像Rと左眼用映像Lを交互に表示する。光源162(図
10中では省略)からの光を、偏光板132a、132b及び液晶素子からなる表示パネル112で偏光する。さらに、偏光板132bを通過した光を、偏光板132bの前方に配設されたパターン・リターダー131で円偏光させる。すなわち、パターン・リターダー131は、1水平走査ライン毎に、左眼用映像Lを−λ/4の位相差を有する偏光領域131aで左回り円偏光に変換するとともに、右眼用映像Rを+λ/4の位相差を有する偏光領域131bで右回り
円偏光に変換する。
【0048】
一方、パッシブ眼鏡200の左眼用レンズ211側には、偏光板211bの表側に−λ/4の位相差を持つリターダー211aを配設して、左眼用映像Lの左回り円偏光に対応した光学特性を有している。また、パッシブ眼鏡200の右眼用レンズ212側は、偏光板212bの表側に+λ/4の位相差を持つリターダー212aを配設して、右眼用映像Rの右回り円偏光に対応した光学特性を有している。したがって、このパッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼には右眼用映像Rが遮光されて左眼用映像Lのみが届き、右眼には左眼用映像Lが遮光されて右眼用映像Rのみが届く。
【0049】
このように観察者は、表示装置100が表示する3次元映像をパッシブ眼鏡200越しに見ることで、左眼用映像Lと右眼用画像Rを分離してそれぞれを左眼及び右眼で視認して、立体視することができる。
【0050】
なお、パターン・リターダー131は、偏光領域131aと偏光領域131bそれぞれの光学軸が互いに直交していることが必須であるが、位相差が必ずしも±λ/4である場合に限定されない。例えば、
図11に示すように、パターン・リターダー131は、一方の偏光領域131aで−λ/2の位相差を有するとともに、他方の偏光領域131bで+λ/2の位相差を有し、左眼用映像L及び右眼用映像Rをそれぞれ鉛直直線偏光、水平直線偏光のいずれかに変換する。また、パッシブ眼鏡200は、左眼側のリターダー211a、右眼側のリターダー212aがそれぞれ±λ/2の位相差を有して、鉛直直線偏光、水平直線偏光に対応した光学特性を有している。したがって、
図10に示したシステム構成例の場合と同様に、観察者は、表示装置100が表示する3次元映像をパッシブ眼鏡200越しに見ることで、左眼用映像Lと右眼用画像Rを分離してそれぞれを左眼及び右眼で視認して、立体視することができる。
【0051】
3次元映像表示方式は異なる視点の映像を表示する技術と捉えることができる。3次元視の応用例として、左右の映像ではなく、1台の表示装置で全く異なる映像を同時に視聴する映像表示システムが挙げられる。例えば、第1のプレイヤーの映像P1と第2のプレイヤーの映像P2を多重化して表示すれば、1台の表示装置でロール・プレイング・ゲームを同時に楽しむことができる。
【0052】
パッシブ眼鏡方式の場合、上述したように、左右のリターダーのあらかじめ決められた位相差により光変調している。ここで、
図10に示した映像表示システムにおいて、表示装置100が、3次元映像ではなく、2つの異なる映像P1、P2を空間分割多重して表示した画像をパッシブ眼鏡200越しに観察する場合について、
図12を参照しながら考察してみる。
【0053】
表示パネル112は、映像信号の印加により、1水平走査ライン毎に、映像P1、P2を交互に表示する。そして、パターン・リターダー131は、一方の映像P1を−λ/4の位相差を有する偏光領域131aで左回り円偏光に変換するとともに、他方の映像P2を+λ/4の位相差を有する偏光領域131bで右回り
円偏光に変換する。一方、パッシブ眼鏡200の左眼側は、偏光板211bの表側に−λ/4の位相差を持つリターダー211aを配設して左回り円偏光に対応した光学特性を有し、右眼側は、偏光板212bの表側に+λ/4の位相差を持つリターダー212aを配設して右回り円偏光に対応した光学特性を有している。したがって、このパッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼には映像P2が遮光されて映像P1のみが届き、右眼には映像P1が遮光されて映像P2のみが届く。いずれの映像P1、P2も正常に観察することはできない。
【0054】
表示装置100で空間分割して表示される異なる映像P1、P2をそれぞれ正常に観察できるようにするために、映像P1を視聴するときには、
図13に示すように、左右に−λ/4の位相差を持つリターダー211a、212aを配設して、左右の偏光レンズともに映像P1の左回り円偏光に対応した光学特性を有するパッシブ眼鏡を使用する。同様に、映像P2を視聴するときには、
図14に示すように、左右に+λ/4の位相差を持つリターダー211a、212aを配設して、左右の偏光レンズともに映像P2の右回り円偏光に対応した光学特性を有するパッシブ眼鏡を使用する。3次元映像観察用のパッシブ眼鏡200(
図10を参照のこと)を含めて、3種類のパッシブ眼鏡を使い分けなければならない。映像の表示モードに応じて複数の眼鏡を使い分けるのは、ユーザーに混乱と手間を与えてしまう。また、複数のパッシブ眼鏡を用意することはコスト増にもなる。
【0055】
そこで、本明細書では、表示装置100の3次元映像表示時、及び、異なる映像P1、P2表示時のいずれにも対応することができるパッシブ眼鏡について提案する。
【0056】
図2には、本提案に係るパッシブ眼鏡200を含んだ映像表示システムの構成を示している。表示装置100は、偏光領域131aと偏光領域131bにそれぞれ±λ/4の位相差を持つパターン・リターダー131を備えている。これに対し、パッシブ眼鏡200は、左眼側の偏光板211bの表側にλ/4位相差を持つ第1のリターダー211aが配設されるとともに、偏光板211bの裏側にλ/4位相差を持つ第2のリターダー211cが配設されている。第1のリターダー211aと第2のリターダー211cの遅延軸が一致しているか、又は、互いの遅延軸が90度ずれていることが必須である。図示の例では、第1のリターダー211aと第2のリターダー211cともに−λ/4の位相差を持ち、左回り円偏光に対応した光学特性を有している。また、右眼側の偏光板212bの表側にλ/4位相差を持つ第1のリターダー212aが配設されるとともに、偏光板212bの裏側にλ/4位相差を持つ第2のリターダー212cが配設されている。第1のリターダー212aと第2のリターダー212cの遅延軸が一致しているか、又は、互いの遅延軸が90度ずれていることが必須である。図示の例では、第1のリターダー212aと第2のリターダー212cともに+λ/4の位相差を持ち、右回り円偏光に対応した光学特性を有している。
【0057】
表示装置100側では、3次元映像表示時に、表示パネル112の1水平走査ライン毎に左眼用映像Lと右眼用映像Rを交互に表示する。左眼用映像Lはパターン・リターダー131の偏光領域131aにより左回り円偏光に変換され、右眼用映像Rは偏光領域131bにより右回り円偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼には右眼用映像Rが遮光されて左眼用映像Lのみが届き、右眼には左眼用映像Lが遮光されて右眼用映像Rのみが届く。したがって、観察者は映像を立体視することができる。
【0058】
また、
図2に示すパッシブ眼鏡200は、左右のレンズの光学特性を切り替える機構を有する点で新規である。図示のように、それぞれλ/4の位相差を持つ第1のリターダー211a及び第2のリターダー211cが偏光板211bの表側と裏側に配設されている場合、
図3に示すように、左眼側で第1のリターダー211aと第2のリターダー211cの表裏を反転させることにより、左眼側のレンズを
左回り円偏光から
右回り円偏光に対応した光学特性に切り換えることができる。
【0059】
表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、一方の映像P1は左回り円偏光に変換され、他方の映像P2は右回り円偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、左回り円偏光に変換された映像P1が遮光され、右回り円偏光に変換された映像P2のみが届くので、観察者は映像P2を正常に視聴することができる。
【0060】
同様に、右眼側についても、
図4に示すように、右眼側で第1のリターダー212aと第2のリターダー212cの表裏を反転させることにより、右眼側のレンズを右回り円偏光から左回り円偏光に対応した光学特性に切り換えることができる。
【0061】
表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、右回り円偏光に変換された映像P2が遮光され、左回り円偏光に変換された映像P1のみが届くので、観察者は映像P1を正常に視聴することができる。
【0062】
図2〜
図4に示したように、±λ/4の位相差を有するリターダーと偏光板の組み合わせることで、左回り円偏光特性又は右回り円偏光特性を有するレンズを有するパッシブ眼鏡200を構成することができる。そして、左右の各レンズの表裏を逆にすることにより、レンズを左回り円偏光から右回り円偏光へ、右回り円偏光から左回り円偏光へ切り換えることができる。例えば、左右のレンズを眼鏡のブリッジ部で(ピッチ軸回りに)回転可能に支持する構造を採用することにより、表裏を反転させて光学特性を切り替えることができる。あるいは、左右の各レンズを眼鏡フレームに対して取り外し自在で且つ、表裏いずれの方向でも取り付け可能な構造を採用することで、表裏を反転させて光学特性を切り替えることができる。
【0063】
図5には、本提案に係るパッシブ眼鏡200を含んだ映像表示システムの他の構成を示している。表示装置100は、偏光領域131aと偏光領域131bにそれぞれ±λ/2の位相差を持つパターン・リターダー131を備えている。これに対し、パッシブ眼鏡200側では、左眼側の第1のリターダー211aと第2のリターダー211cともに−λ/2の位相差を持ち、水平直線偏光に対応した光学特性を有している。また、右眼側の第1のリターダー212aと第2のリターダー212cともに+λ/2の位相差を持ち、鉛直直線偏光に対応した光学特性を有している。
【0064】
表示装置100側では、3次元映像表示時に、表示パネル112の1水平走査ライン毎に左眼用映像Lと右眼用映像Rを交互に表示する。左眼用映像Lはパターン・リターダー131の偏光領域131aにより
水平直線偏光に変換され、右眼用映像Rは偏光領域131bにより垂直直線偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼には右眼用映像Rが遮光されて左眼用映像Lのみが届き、右眼には左眼用映像Lが遮光されて右眼用映像Rのみが届く。したがって、観察者は映像を立体視することができる。
【0065】
また、
図5に示すパッシブ眼鏡200は、左右のレンズの光学特性を切り替える機構を有する。図示のように、それぞれλ/2位相差を持つ第1のリターダー211a及び第2のリターダー211cが偏光板211bの表側と裏側に配設されている場合、
図6に示すように、左眼側で第1のリターダー211aと第2のリターダー211cの表裏を反転させることにより、左眼側のレンズを水平直線偏光から垂直直線偏光に対応した光学特性に切り換えることができる。
【0066】
表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、一方の映像P1は水平直線偏光に変換され、他方の映像P2は垂直直線偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、水平直線偏光に変換された映像P1が遮光され、垂直直線偏光に変換された映像P2のみが届くので、観察者は映像P2を正常に視聴することができる。
【0067】
同様に、右眼側についても、
図7に示すように、右眼側で第1のリターダー212aと第2のリターダー212cの表裏を反転させることにより、右眼側のレンズを垂直直線偏光から水平直線偏光に対応した光学特性に切り換えることができる。
【0068】
表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、垂直直線偏光に変換された映像P2が遮光され、水平直線偏光に変換された映像P1のみが届くので、観察者は映像P1を正常に視聴することができる。
【0069】
上述したように、パッシブ眼鏡に左右のレンズを眼鏡のブリッジ部に対して(ピッチ軸回りに)回転可能に支持する構造や、左右のレンズを着脱自在な構造を採用することにより、左右のレンズに対し、(左回り円偏光,右回り円偏光)、(左回り円偏光,左回り円偏光)、(右回り円偏光,右回り円偏光)という3通りの光学特性の組み合わせ、若しくは、(鉛直直線偏光,水平直線偏光)、(直線偏光,鉛直直線偏光)、(水平直線偏光,水平直線偏光)という3通りの光学特性の組み合わせを実現して、1つのパッシブ眼鏡で表示装置100の3次元映像表示時、及び、異なる映像P1、P2表示時のいずれにも対応することができる。
【0070】
しかしながら、左右のレンズを眼鏡のブリッジ部に対して回転可能に支持する構造や、左右のレンズを着脱自在な構造を採用すると、眼鏡フレームの構造が複雑になり、デザイン的な制約が大きくなるとともに、コスト増を招来することが懸念される。
【0071】
そこで、ブリッジ部が回転し又は左右のレンズを着脱自在にした構造に代えて、光学特性を同一にした左右のレンズを保持する眼鏡フレームに対し、左右のテンプル部の前後の向きを変更できるような構造にしてもよい。
【0072】
図8に示すパッシブ眼鏡200では、第1のリターダー211aと第2のリターダー211cともに−λ/4の位相差を持ち、且つ、第1のリターダー212aと第2のリターダー212cともに−λ/4の位相差を持ち、眼鏡フレーム(図示しない)が左右のレンズが同じ光学特性となる図示の向きで固定している。但し、この場合のパッシブ眼鏡200は、偏光領域131aと偏光領域131bにそれぞれ±λ/4の位相差を持つパターン・リターダー131を備えた表示装置100に対応している。
【0073】
ここで、
図8に示すように、第1のリターダー211a、212aが各偏光板211b、212bの表側となり、第2のリターダー211c、212cが各偏光板211b、212bの裏側となるように、左右のテンプル部の向きにすると、左右のレンズともに左回り円偏光に対応した光学特性が与えられる。表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、一方の映像P1は左回り円偏光に変換され、他方の映像P2は右回り円偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、左回り円偏光に変換された映像P1が遮光され、右回り円偏光に変換された映像P2のみが届くので、観察者は映像P2を正常に視聴することができる。
【0074】
また、
図9に示すように、第1のリターダー211a、212aが各偏光板211b、212bの裏側となり、第2のリターダー211c、212cが各偏光板211b、212bの表側となるように、左右のテンプル部の前後方向の向きを切り換えると、左右のレンズともに右回り円偏光に対応した光学特性が与えられる。表示装置100側で、表示パネル112の1水平走査ライン毎に、異なる映像P1とP2を交互に表示すると、一方の映像P1は左回り円偏光に変換され、他方の映像P2は右回り円偏光に変換される。したがって、パッシブ眼鏡200を掛けた観察者の左眼及び右眼の双方には、左回り円偏光に変換された映像P1が遮光され、右回り円偏光に変換された映像P2のみが届くので、観察者は映像P2を正常に視聴することができる。
【0075】
このように光学特性が同一となるように左右のレンズを眼鏡フレームに固定したパッシブ眼鏡200は、左眼用映像と右眼用映像とで異なる偏光を発する3次元映像を観察することはできない。このため、3次元映像観察用のパッシブ眼鏡(
図10を参照のこと)を別途所持する必要があるが、異なる映像P1、P2観察用には1種類のパッシブ眼鏡で済む。また、眼鏡フレームのデザイン的な制約が小さく、簡素な構造で安価に提供することが可能であるというメリットがある。
【0076】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)第1の映像と第2の映像を多重して表示するとともに、前記第1の映像の光を第1の偏光に変換し、前記第2の映像の光を第2の偏光に変換する表示装置と、それぞれ前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対応した光学特性に設定可能な左右のレンズを有し、前記第1の偏光に変換された前記第1の映像又は前記第2の偏光に変換された前記第2の映像のいずれかを選択的に遮光する眼鏡装置と、を具備する映像表示システム。
(2)前記表示装置は、前記第1の映像及び前記第2の映像として左眼用映像と右眼用映像を表示する3次元映像表示モードと、前記第1の映像及び前記第2の映像としてそれぞれ異なる映像を表示する複数映像表示モードを有する、上記(1)に記載の映像表示システム。
(3)前記眼鏡装置は、前記左右のレンズの取り付け位置に応じて前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定する、上記(1)に記載の映像表示システム。
(4)前記眼鏡装置は、前記左右のレンズを互いに独立して前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定可能である、上記(1)に記載の映像表示システム。
(5)前記眼鏡装置は、前記左右のレンズを一体として前記第1の偏光又は前記第2の偏光のいずれかに対応した光学特性に設定可能である、上記(1)に記載の映像表示システム。
(6)前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ左回り円偏光又は右回り円偏光のいずれかに変換するλ/4位相差板を備え、前記眼鏡装置は前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/4位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/4位相差板を有する偏光板からなる、上記(1)に記載の映像表示システム。
(7)前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が一致している、上記(6)に記載の映像表示システム。
(8)前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の遅延軸が互いに90度ずれている、上記(6)に記載の映像表示システム。
(9)前記眼鏡装置は、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させる反転機構を備え、前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させることで、左回り円偏光又は右回り円偏光の光学特性のいずれかに設定する、上記(6)に記載の映像表示システム。
(10)前記反転機構は、左右のレンズを独立して前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させる、上記(9)に記載の映像表示システム。
(11)前記反転機構は、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持する、上記(10)に記載の映像表示システム。
(12)前記反転機構は、左右のレンズを一体として前記第1のλ/4位相差板と前記第2のλ/4位相差板の表裏を反転させる、上記(9)に記載の映像表示システム。
(13)前記反転機構は、左右のレンズを保持する眼鏡フレームに対し左右のテンプル部の前後の向きを切り換える、上記(12)に記載の映像表示システム。
(14)前記表示装置は、前記第1の映像と前記第2の映像をそれぞれ鉛直直線偏光又は
水平直線偏光のいずれかに変換するλ/2位相差板を備え、前記眼鏡装置は前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/2位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/2位相差板を有する偏光板からなる、上記(1)に記載の映像表示システム。
(15)前記眼鏡装置は、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させる反転機構を備え、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させることで、鉛直直線偏光又は水平直線偏光の光学特性のいずれかに設定する、上記(14)に記載の映像表示システム。
(16)それぞれ前記第1の偏光及び前記第2の偏光に対応した光学特性に設定可能な左右のレンズを有し、前記第1の偏光に変換された前記第1の映像又は前記第2の偏光に変換された前記第2の映像のいずれかを選択的に遮光する眼鏡装置。
(17)前記左右のレンズはそれぞれ、表側に第1のλ/2位相差板を有するとともに裏側に第2のλ/2位相差板を有する偏光板からなる、上記(16)に記載の眼鏡装置。
(18)前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させる反転機構をさらに備え、前記第1のλ/2位相差板と前記第2のλ/2位相差板の表裏を反転させることで、鉛直直線偏光又は水平直線偏光の光学特性のいずれかに設定する、上記(16)に記載の眼鏡装置。
(19)前記反転機構は、左右のレンズ間のブリッジ部で左右のレンズをそれぞれ個別に回転可能に支持する、上記(18)に記載の眼鏡装置。
(20)前記反転機構は、左右のレンズを保持する眼鏡フレームに対し左右のテンプル部の前後の向きを切り換える、上記(18)に記載の眼鏡装置。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0078】
本明細書では、パターン・リターダー方式の映像表示システムに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本明細書で開示する技術の要旨はこれに限定されるものではない 。アクティブ・リターダー方式を始め偏光眼鏡を用いたさまざまなタイプの映像表示システムに対して、同様に本明細書で開示する技術を適用することができる。
【0079】
要するに、例示という形態により本明細書で開示する技術について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本明細書で開示する技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0080】
100…表示装置
110…映像表示部
112…液晶パネル
113…ゲート・ドライバー、114…データ・ドライバー
120…映像信号制御部
131…パターン・リターダー、132a、132b…偏光板
140…タイミング制御部
150…映像メモリー
162…光源
200…パッシブ眼鏡
211…左眼用レンズ
211a、211c…リターダー、211b…偏光板
212…右眼用レンズ
212a、212c…リターダー、212b…偏光板