(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたブラシ装置では、板状素材を打ち抜いたものを屈曲する等して接続部材を形成するため、接続部材の製造が煩雑となってしまうとともに、接続部材の歩留まりが低くなってしまう。そのため、特許文献1に記載されたブラシ装置は、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されたブラシ装置では、2個の接続部材及び一対の案内板を軸方向に重ね合わせるとともに、軸方向に対向する案内板の間に6個のブラシを配置するため、ブラシ装置が軸方向に大型化されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、軸方向の大型化を抑制しつつ安価に製造することができるブラシ装置及び該ブラシ装置を備えたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、整流子の外周面に摺接する少なくとも
2つの第1ブラシと、前記整流子の外周面に摺接するとともに前記第1ブラシとは異なる極性の前記第1ブラシと同数の第2ブラシと、導電性を有する1本の基礎線材から形成され前記第1ブラシが第1ピッグテールを介して電気的に接続されるとともに、第1電源端子と前記第1ブラシとを電気的に接続する1本の第1接続部材と、導電性を有する1本の基礎線材から形成され前記第2ブラシが第2ピッグテールを介して電気的に接続されるとともに、前記第1電源端子と異なる極性の第2電源端子と前記第2ブラシとを電気的に接続する1本の第2接続部材と、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを保持するブラシホルダと、を備え、前記ブラシホルダには、前記第1ブラシと前記第2ブラシとの間に支持部が立設されており、前記支持部を挟む位置に配置される前記第1ブラシと前記第2ブラシにおいて、該第1ブラシに接続される前記第1ピッグテールは該支持部に対して該第1ブラシ側に配置されているとともに、該第2ブラシに接続される前記第2ピッグテールは該支持部に対して該第2ブラシ側に配置されていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、第1接続部材及び第2接続部材をそれぞれ1本の基礎線材から形成しているため、第1接続部材及び第2接続部材の軸方向の大型化を抑制することが可能である。また、基礎線材は、板状素材に比べて加工を容易に行うことができる。更に、従来のように板状素材を所定の形状に打ち抜いてブラシと電源端子とを接続する接続部材を形成する場合に比べて、歩留まりを向上させることができる。従って、第1接続部材及び第2接続部材を安価に製造することができる。これらのことから、ブラシ装置の軸方向の大型化を抑制しつつ同ブラシ装置を安価に製造することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシ装置において、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、環状の前記ブラシホルダの周方向に沿って配置されているとともに、前記支持部の軸方向の先端面上を前記ブラシホルダの周方向に横切っていることをその要旨としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のブラシ装置において、前記支持部の軸方向の先端面には、前記第1接続部材の径方向の移動を規制する規制突起が形成されていることをその要旨としている。
請求項
4に記載の発明は、請求項
2又は請求項3に記載のブラシ装置において
、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記ブラシホルダの周方向に沿って円弧状に湾曲
していることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、第1接続部材及び第2接続部材は、ブラシホルダの周方向に沿って円弧状に湾曲されているため、第1接続部材及び第2接続部材が径方向に大型化されることを抑制可能である。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載のブラシ装置において、前記第1接続部材と前記第2接続部材とは、軸方向に重なり合うことなく径方向に離間して配置されていることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、第1接続部材と第2接続部材とは、軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置の軸方向の大型化をより抑制することができる。
請求項
6に記載の発明は、請求項
4又は請求項
5に記載のブラシ装置において、前記第1接続部材は、該第1接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第1チョークコイルを有し、前記第2接続部材は、該第2接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第2チョークコイルを有することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、第1接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイルを形成することができる。同様に、第2接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイルを形成することができる。そして、第1接続部材及び第2接続部材に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置を製造することができる。
【0015】
請求項
7に記載の発明は、請求項
4乃至請求項
6の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記ブラシホルダは、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを内側に保持する複数のブラシ保持部を有し、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記ブラシ保持部と軸方向に重なる位置に配置されていることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、第1接続部材及び第2接続部材はブラシ保持部と軸方向に重なる位置に配置されているため、第1接続部材及び第2接続部材によってブラシ装置が径方向に大型化されることを抑制することができる。
【0017】
請求項
8に記載の発明は、請求項
7に記載のブラシ装置において、前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記ブラシ保持部における内側に保持した前記第1ブラシ若しくは前記第2ブラシと軸方向に対向する天井部の外側面に当接していることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接しているため、第1接続部材及び第2接続部材が天井部の外側面と軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダに対してより安定して固定される。
【0019】
請求項
9に記載の発明は、請求項
4乃至請求項
8の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記ブラシホルダは、径方向から当接した前記第1接続部材の径方向の移動を規制する第1規制部及び径方向から当接した前記第2接続部材の径方向の移動を規制する第2規制部の少なくとも一方を有することをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、第1接続部材及び第2接続部材の少なくとも一方の接続部材のブラシホルダに対する径方向の移動を規制することができる
。
【0022】
請求項1
2に記載の発明は、請求項4乃至請求項
11の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを3個ずつ備え、前記ブラシホルダは、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを内側に保持する6個のブラシ保持部を有するとともに、各前記ブラシ保持部は、内側に保持した前記第1ブラシ若しくは前記第2ブラシと軸方向に対向する天井部を有し、前記第1接続部材は、該第1接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第1チョークコイルを有し、前記第2接続部材は、該第2接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第2チョークコイルを有し、前記第1接続部材と前記第2接続部材とは、互いに軸方向に重なり合うことなく、前記天井部の外側面に当接していることをその要旨としている。
【0023】
同構成によれば、第1ブラシ及び第2ブラシを3個ずつ備えたブラシ装置において、第1接続部材と第2接続部材とは、軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置の軸方向の大型化をより抑制することができる。また、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接しているため、第1接続部材及び第2接続部材が天井部の外側面と軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダに対してより安定して固定される。更に、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接するため、ブラシ保持部と軸方向に重なる位置に配置されている。従って、第1接続部材及び第2接続部材によってブラシ装置が径方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイルを形成することができる。同様に、第2接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイルを形成することができる。そして、第1接続部材及び第2接続部材に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置を製造することができる。
【0024】
請求項1
3に記載の発明は、請求項4乃至請求項
11の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを2個ずつ備え、前記ブラシホルダは、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを内側に保持する4個のブラシ保持部を有するとともに、各前記ブラシ保持部は、内側に保持した前記第1ブラシ若しくは前記第2ブラシと軸方向に対向する天井部を有し、前記第1接続部材は、該第1接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第1チョークコイルを有し、前記第2接続部材は、該第2接続部材を構成する前記基礎線材を螺旋状に湾曲して形成された第2チョークコイルを有し、前記第1接続部材と前記第2接続部材とは、互いに軸方向に重なり合うことなく、前記天井部の外側面に当接していることをその要旨としている。
【0025】
同構成によれば、第1ブラシ及び第2ブラシを2個ずつ備えたブラシ装置において、第1接続部材と第2接続部材とは、軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置の軸方向の大型化をより抑制することができる。また、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接しているため、第1接続部材及び第2接続部材が天井部の外側面と軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダに対してより安定して固定される。更に、第1接続部材及び第2接続部材は、天井部の外側面に当接するため、ブラシ保持部と軸方向に重なる位置に配置されている。従って、第1接続部材及び第2接続部材によってブラシ装置が径方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイルを形成することができる。同様に、第2接続部材は、1本の基礎線材から形成されているため、同基礎線材を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイルを形成することができる。そして、第1接続部材及び第2接続部材に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置を製造することができる。
【0026】
請求項1
4に記載の発明は、請求項1
3に記載のブラシ装置において、前記ブラシホルダは、中央に挿通孔を有する環状をなし軸方向の一端面に周方向に離間した4個の前記ブラシ保持部が一体に形成された基部を有し、前記第1ブラシと前記第2ブラシとは周方向に交互に前記ブラシ保持部内に配置され、前記第1電源端子及び前記第2電源端子は、4個の前記ブラシ保持部のうち周方向に隣り合う2個の前記ブラシ保持部間に設けられ、前記第1チョークコイルは、前記第1電源端子と周方向に隣り合い前記第1ブラシを収容した1つの前記ブラシ保持部と、当該ブラシ保持部に対し前記第1電源端子と反対側で周方向に隣り合い前記第2ブラシを収容した1つの前記ブラシ保持部との間で、その中心線が径方向に延びるように配置され、前記第2チョークコイルは、前記第2電源端子と周方向に隣り合い前記第2ブラシを収容した1つの前記ブラシ保持部と、当該ブラシ保持部に対し前記第2電源端子と反対側で周方向に隣り合い前記第1ブラシを収容した1つの前記ブラシ保持部との間で、その中心線が径方向に延びるように配置され、前記第1電源端子と前記第1チョークコイルとの間に配置された前記第1ブラシから延びる導電性を有する第1ピッグテールは、前記第1チョークコイルの径方向外側で前記第1接続部材に電気的に接続され、前記第2電源端子と前記第2チョークコイルとの間に配置された前記第2ブラシから延びる導電性を有する第2ピッグテールは、前記第2チョークコイルの径方向外側で前記第2接続部材に電気的に接続されていることをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、第1チョークコイルは、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部の間に配置されるため、第1チョークコイルのブラシホルダからの軸方向の突出量を抑えることができる。同様に、第2チョークコイルは、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部の間に配置されるため、第2チョークコイルのブラシホルダからの軸方向の突出量を抑えることができる。従って、第1チョークコイル及び第2チョークコイルによってブラシ装置が軸方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1チョークコイルは、その中心線が径方向に延びるように配置されているため、同第1チョークコイルと周方向に隣り合うブラシ保持部に収容された第1ブラシから延びる第1ピッグテールを、第1チョークコイルの径方向外側で第1接続部材に接続することで、第1ピッグテールを容易に第1接続部材に接続することができる。同様に、第2チョークコイルは、その中心線が径方向に延びるように配置されているため、同第2チョークコイルと周方向に隣り合うブラシ保持部に収容された第2ブラシから延びる第2ピッグテールを、第2チョークコイルの径方向外側で第2接続部材に接続することで、第2ピッグテールを容易に第2接続部材に接続することができる。
【0030】
請求項1
0に記載の発明は、請求項4乃至請求項
9の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記ブラシホルダは、絶縁性の樹脂材料から形成され、前記基礎線材は、断面円形状の導線の外周を絶縁性の絶縁被膜にて被覆してなる被覆導線であることをその要旨としている。
【0031】
同構成によれば、第1接続部材を構成する基礎線材及び第2接続部材を構成する基礎線材は、被覆導線であるため、容易に整形することができる。
請求項1
1に記載の発明は、請求項1乃至請求項1
0の何れか1項に記載のブラシ装置において、前記第1ブラシは、前記第1ブラシから延びる導電性を有する第1ピッグテールが前記第1接続部材に直接接続されることにより前記第1ピッグテールを介して前記第1接続部材に電気的に接続され、前記第2ブラシは、前記第2ブラシから延びる導電性を有する第2ピッグテールが前記第2接続部材に直接接続されることにより前記第2ピッグテールを介して前記第2接続部材に電気的に接続されていることをその要旨としている。
同構成によれば、第1ピッグテールは第1接続部材に直接電気的に接続されるため、第1ピッグテールを第1接続部材に接続するための部品を使用しなくてもよい。同様に、第2ピッグテールは第2接続部材に直接電気的に接続されるため、第2ピッグテールを第2接続部材に接続するための部品を使用しなくてもよい。従って、更に安価にブラシ装置を製造することができる。
請求項1
5に記載の発明は、円筒状をなす円筒部を有するヨークハウジングと、前記円筒部の内周面に設けられた複数の磁極と、前記円筒部の内側に回転可能に配置され、回転軸、該回転軸に一体回転可能に固定され回転方向に並ぶ複数のティースを有する電機子コア、前記ティースに巻回された複数の巻線、及び前記回転軸に一体回転可能に固定され回転方向に並ぶ複数の整流子片を備えた整流子を有する電機子と、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを複数の前記整流子片に押圧接触させる請求項1乃至請求項1
4の何れか1項に記載のブラシ装置と、を備えたモータとしたことをその要旨としている。
【0032】
同構成によれば、軸方向の大型化が抑制されるとともに安価に製造されるブラシ装置を備えたことにより、モータの軸方向の大型化を抑制しつつ同モータを安価に製造することができる。
【0033】
請求項1
6に記載の発明は、
円筒状をなす円筒部を有するヨークハウジングと、前記円筒部の内周面に設けられた複数の磁極と、前記円筒部の内側に回転可能に配置され、回転軸、該回転軸に一体回転可能に固定され回転方向に並ぶ複数のティースを有する電機子コア、前記ティースに巻回された複数の巻線、及び前記回転軸に一体回転可能に固定され回転方向に並ぶ複数の整流子片を備えた整流子を有する電機子と、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを複数の前記整流子片に押圧接触させる請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載のブラシ装置と、を備えたモータであって、前記円筒部の内周面には、周方向に並ぶ6個の前記磁極が設けられ、前記電機子コアは、9個の前記ティースを有し、複数の前記巻線は、前記各ティースに対して順方向に巻回された第1巻線と、前記各ティースに対して前記第1巻線とは逆方向に巻回された第2巻線とから構成され、前記整流子は、18個の前記整流子片を有し、前記ブラシ装置は、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシを3個ずつ備え、同一の前記ティースに設けられる前記第1巻線及び前記第2巻線は、互いに異なる前記第1ブラシと前記第2ブラシとの間における同位相の前記整流子片に導通されることをその要旨としている。
同構成によれば、軸方向の大型化が抑制されるとともに安価に製造されるブラシ装置を備えたことにより、モータの軸方向の大型化を抑制しつつ同モータを安価に製造することができる。
【0034】
同構成によれば、第1ブラシ及び第2ブラシを3個ずつ備えているため、第1ブラシ及び第2ブラシをそれぞれ2個以下とする場合に比べて、1つのブラシ当たりの負荷電流が低減される。更に、第1ブラシ及び第2ブラシの摩耗も抑制されるため、第1ブラシ及び第2ブラシの寿命が確保される。また、同電位となるべき整流子片間を接続する均圧線も存在しない。このため、均圧線を配置するためのスペースを確保しなくてもよい。従って、モータの高出力化に対応することが可能である。
【0035】
ここで、第1ブラシ及び第2ブラシを3個ずつ設ける場合には、次のような問題が懸念される。即ち、回転方向に分散して配置された同極の3個のブラシを各整流子片に対して同期接触させるのが理想であるところ、各ブラシの組付け誤差などに起因して、各ブラシの整流子片に接触するタイミングがずれる虞がある。すると、第1巻線及び第2巻線に対する給電タイミング、ひいては第1巻線及び第2巻線の励磁及び非励磁のタイミングについても同期しなくなる。
【0036】
そして例えば、各ティースに設けられる第1巻線及び第2巻線がそれぞれ同じ陽極のブラシと陰極のブラシとの間の整流子片に導通されるようにした場合、換言すれば、同じ陽極側のブラシからの給電により励磁されるようにした場合には、次のような状況が発生する。即ち、互いに120°だけ位相がずれた3組の第1巻線及第2巻線は、本来同じタイミングで励磁状態若しくは非励磁状態となるところ、当該3組のうち1組又は2組が励磁され、残りの2組又は1組が励磁されないといった状況が発生する。このため、各ティースと各磁極との間におけるトルクの発生タイミングがずれてトルクが偏在化する。従って、モータの円滑な回転が阻害されて、回転むらなどが発生する虞がある。
【0037】
この点、本発明によれば、各ティースに設けられる第1巻線及び第2巻線は、互いに異なる組み合わせの第1ブラシ及び第2ブラシ間における同位相の整流子片に導通される。即ち、各ティースに設けられる第1巻線及び第2巻線は、それぞれ異なる組合せの陽極の第1ブラシ及び陰極の第2ブラシによる給電により励磁される。このため、回転方向に分散して配置された同極の3個のブラシ(3個の第1ブラシ若しくは3個の第2ブラシ)の各整流子片に対する接触タイミングが同期しない場合であれ、各組の第1巻線及び第2巻線の少なくとも一方は、同時に励磁又は非励磁の状態になる蓋然性が高められる。従って、電機子の回転方向における磁界の不均衡、ひいてはモータトルクの偏在が抑制されて、モータの円滑な回転が可能となる。
【0038】
請求項1
7に記載の発明は、請求項1
6に記載のブラシ装置において、前記第1の巻線の両端は、それぞれ前記整流子の回転方向に少なくとも180°だけ位相がずれた2個の前記整流子片に接続されていることをその要旨としている。
【0039】
同構成によれば、第1巻線の両端は、それぞれ整流子の回転方向に少なくとも180°だけ位相がずれた2個の整流子片に接続されている。一般的に、回転軸の先端部は、ヨークハウジングの外部に突出し、回転軸におけるこの突出した部分を介してモータの回転を外部機器等に伝達する。そして、モータの用途によっては、回転軸に曲げ方向の外力が加えられることもある。この場合、整流子と各巻線とをつなぐ巻線リード部分に、圧縮応力若しくは引っ張り応力が発生する虞がある。この点、本発明によれば、第1巻線の両端は、それぞれ整流子の回転方向における少なくとも180°だけ位相がずれた2個の整流子片に接続されている。このため、各第1巻線と各巻線リード部分が接続される各整流子片とは、回転軸を挟んで互いに反対側に位置する。従って、回転軸に曲げ方向の外力が加えられた場合、巻線リード部分の第1端部側には圧縮応力若しくは引っ張り応力が作用し、第2端部側には引っ張り応力若しくは圧縮応力が発生する。即ち、巻線リード部分において、圧縮応力と引っ張り応力とが相殺される。このため、第1巻線の巻線リード部分の疲労等による損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、軸方向の大型化を抑制しつつ安価に製造することができるブラシ装置及び該ブラシ装置を備えたモータを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータ1は、ポンプ装置の駆動源として用いられるものである。モータ1は、略有底円筒状をなすヨークハウジング2(以下単にヨーク2とする)と、ヨーク2の内部に収容された電機子3と、ヨーク2の開口部に配置されたブラシ装置4とを備えている。
【0043】
ヨーク2は、円筒状をなす円筒部2aと、該円筒部2aの軸方向の一端を閉塞する略円板状の底部2bとを有する。円筒部2aの内周面には、6個の磁石6が固定されている。6個の磁石6は、N極とS極とが周方向に交互となるように周方向に配置されている。即ち、円筒部2aの内周面には、6個の磁極が設けられている。尚、円筒部2a及び磁石6によって固定子が構成されている。
【0044】
ヨーク2の内部において、6個の磁石6の内側に前記電機子3が配置されている。電機子3は、回転軸11と、該回転軸11に一体回転可能に固定された電機子コア12と、該電機子コア12に巻装された巻線13と、回転軸11に一体回転可能に固定された整流子14とから構成されている。
【0045】
回転軸11は、円柱状をなすとともに、ヨーク2の内部において同ヨーク2の径方向の中央部に配置されている。この回転軸11の基端部(
図1において右側の端部)は、ヨーク2の底部2bの中央部に設けられた軸受15によって軸支されている。電機子3は、この回転軸11を回転中心として周方向に回転可能である。
【0046】
回転軸11において該回転軸11の軸方向の中央部よりも基端寄りの部分には、前記電機子コア12が一体回転可能に外嵌されている。
図1及び
図2に示すように、電機子コア12は、回転軸11を中心として径方向外側に放射状に延びる複数(本実施形態では9個)のティース12aを有する。9個のティース12aは、周方向に等角度間隔(本実施形態では40°間隔)に形成されている。尚、
図1には、9個のティース12aのうち2個のみを図示している。また、周方向に隣り合うティース12a間の空間はスロット12bとなっている。電機子コア12は、9個のティース12aを備えることにより、9個のスロット12bを備えている。そして、この電機子コア12の外周面(即ちティース12aの先端面)は、前記磁石6と径方向に対向している。
【0047】
図2に示すように、各ティース12aには巻線13が巻装されている。巻線13は、後述する巻線手順でエナメル被覆が施された導線をティース12aに巻き付けて形成されている。この巻線13は、ティース12aに導線が順方向に巻回された第1巻線13aと、ティース12aに導線が逆方向(即ち順方向と反対方向)に巻回された第2巻線13bとから構成されている。
【0048】
図1に示すように、回転軸11において該回転軸11の軸方向の中央部よりもやや先端寄りの部分には、前記整流子14が一体回転可能に外嵌されている。整流子14は、前記電機子コア12と軸方向に隣り合っている。この整流子14の外周面には、複数の整流子片14aが設けられている。整流子14が備える整流子片14aの数は、電機子3が備えるティース12aの数の2倍の数に設定されている。従って、本実施形態では、電機子3は9個のティース12aを備えるため、整流子片14aの数は18個となっている。また、各整流子片14aにおける電機子コア12側の軸方向の端部には、外径側に折り返されたライザ14bが一体に形成されている。ライザ14bには、巻線13における巻始めの端部及び巻終わりの端部が掛け回されている。巻線13は、その巻始めの端部及び巻終わりの端部がヒュージングによりライザ14bに固定されることで、当該ライザ14bを有する整流子片14aに電気的に接続されている。
【0049】
図3に示すように、ブラシ装置4を構成するブラシホルダ21は、絶縁性の樹脂材料から形成され、環状の基部22と、同基部22に一体に形成された複数(本実施形態では6個)のブラシ保持部23と、同基部22に一体に形成された端子保持部24とを備えている。
【0050】
基部22は、円環状の板状をなしており、
図1に示すように、その外径は、前記円筒部2aの内径と略等しく形成されている。また、基部22の径方向の中央部に形成された挿通孔25は、同基部22を軸方向に貫通するとともに、その内径が前記回転軸11の外径よりも若干大きく形成されている。尚、基部22において、ヨーク2の内部側を向く軸方向の端面を内側面22a、ヨーク2の外側を向く軸方向の端面を外側面22bとする。
【0051】
図3及び
図4に示すように、6個の前記ブラシ保持部23は、基部22の内側面22aに形成されている。6個のブラシ保持部23は、挿通孔25よりも外周側で周方向に等角度間隔(本実施形態では60°間隔)となる6箇所に形成されている。尚、6個のブラシ保持部23の内側には、前記整流子14を配置可能な空間が設けられている。
【0052】
各ブラシ保持部23は、径方向に延びる略四角筒状をなしている。各ブラシ保持部23は、内側面22aから軸方向に立設された一対の側壁23a,23bと、一対の側壁23a,23bにおける内側面22aと反対側の軸方向の端部を連結する天井部23cとを備えている。各ブラシ保持部23において、一対の側壁23a,23bは、それぞれ略四角形の板状をなし、周方向に離間するとともに互いに平行をなしている。また、一対の側壁23a,23bは、側壁23aと側壁23bとの間を通るブラシ保持部23の中心線L1が基部22の径方向に延びるように形成されている。また、各ブラシ保持部23において、側壁23a及び側壁23bの何れか一方の側壁には、当該側壁の径方向外側の端部から径方向内側に延びる挿通溝23dが形成されている。挿通溝23dは、径方向外側に開口するとともに、該挿通溝23dが形成された側壁23a若しくは側壁23bを厚さ方向(基部22における周方向)に貫通している。また、
図1及び
図3に示すように、各ブラシ保持部23において、一対の側壁23a,23bの径方向外側の端部には、ブラシ保持部23の径方向外側の開口部を閉塞するキャップ30を装着するための係止突起23eが形成されている。係止突起23eは、側壁23a,23bの外側面からブラシ保持部23の外部に向かって周方向に突出している。
【0053】
図3及び
図4に示すように、各ブラシ保持部23において、天井部23cは、略四角形の板状をなすとともに、内側面22aと軸方向に離間し軸方向と直交するように形成されている。また、各天井部23cにおいてブラシ保持部23の外側となる外側面23fは、軸方向と直交する平面状をなしている。そして、6個のブラシ保持部23の天井部23cの外側面23fは、基部22の内側面22aからの軸方向の高さが等しく、同一平面内に形成されている。
【0054】
また、6個のブラシ保持部23のうち、2個のブラシ保持部23(
図4において、上側の2個のブラシ保持部23のうち左側のブラシ保持部23とブラシホルダ21の右側中央のブラシ保持部23)の天井部23cの外側面23fには、第1規制部26が形成されている。第1規制部26は、外側面23fにおける径方向外側の端部に形成されている。第1規制部26は、外側面23fから軸方向に突出する径方向当接部26aと、該径方向当接部26aの先端部から庇状に径方向外側に延びる軸方向当接部26bとから構成されている。径方向当接部26aは、外側面23f上でブラシ保持部23の中心線L1と直交する方向に沿って延びる突条をなしている。また、軸方向当接部26bは、外側面23fとの間に軸方向に間隔を空けて同外側面23fと軸方向に対向している。この第1規制部26の周方向の幅は、外側面23fの周方向の幅と等しく形成されている。更に、2個の第1規制部26は、基部22上でその径方向の位置が等しくなっている。
【0055】
また、6個のブラシ保持部23のうち、2個のブラシ保持部23(
図4において、上側の2個のブラシ保持部23のうち右側のブラシ保持部23とブラシホルダ21の左側中央のブラシ保持部23)の天井部23cの外側面23fには、第2規制部27が形成されている。第2規制部27は、外側面23fにおいて、同外側面23fの径方向の中央部よりも径方向内側寄りの位置に形成されている。第2規制部27は、外側面23fから軸方向に突出する径方向当接部27aと、該径方向当接部27aの先端部から庇状に径方向外側に延びる軸方向当接部27bとから構成されている。径方向当接部27aは、外側面23f上でブラシ保持部23の中心線L1と直交する方向に沿って延びている。また、軸方向当接部27bは、外側面23fとの間に軸方向に間隔を空けて同外側面23fと軸方向に対向している。2個の第2規制部27のうち、
図4において上側の2個のブラシ保持部23のうちの右側のブラシ保持部23に形成された第2規制部27は、前記第1規制部26と形状が等しく、その周方向の幅が外側面23fの周方向の幅と等しく形成されている。また、2個の第2規制部27のうち、
図4においてブラシホルダ21の左側中央のブラシ保持部23に形成された第2規制部27は、その周方向の幅が外側面23fの周方向の幅よりも狭く形成されている。そして、
図4においてブラシホルダ21の左側中央のブラシ保持部23に形成された第2規制部27は、外側面23fの周方向の両端部のうち後述の第2チョークコイル52cから遠い方の端部に寄せて形成されている。また、2個の第2規制部27は、前記第1規制部26よりも径方向内側に形成されるとともに、基部22上でその径方向の位置が等しくなっている。
【0056】
また、6個のブラシ保持部23のうち、2個のブラシ保持部23(
図4において、下側の2個のブラシ保持部23)の天井部23cの外側面23fには、第3規制部28が形成されている。各第3規制部28は、外側面23fにおける径方向内側の端部から軸方向に突出している。また、
図4において下側の2個のブラシ保持部23のうち左側のブラシ保持部23に形成された第3規制部28は、外側面23fの周方向の両端部のうち後述の第2チョークコイル52cに近い方の端部に寄せて形成されている。更に、
図4において下側の2個のブラシ保持部23のうち右側のブラシ保持部23に形成された第3規制部28は、外側面23fの周方向の両端部のうち後述の第1チョークコイル51cに近い方の端部に寄せて形成されている。
【0057】
上記のような6個のブラシ保持部23は、ブラシ装置4を構成する第1ブラシ31及び第2ブラシ32を内側に保持している。本実施形態のブラシ装置4は、第1ブラシ31を3個備えるとともに、第2ブラシ32を第1ブラシ31と同数の3個備えている。
【0058】
各第1ブラシ31及び各第2ブラシ32は直方体状をなしている。そして、3個の第1ブラシ31は、周方向に並んだ6個のブラシ保持部23のうち1つ置きの3個のブラシ保持部23に収容されるとともに、第2ブラシ32は、残りの3個のブラシ保持部23に収容されている。詳しくは、
図4において下側の2個のブラシ保持部23のうち右側のブラシ保持部23と、該ブラシ保持部23から反時計方向に1つ置きとなる2個のブラシ保持部23とに、第1ブラシ31が収容されている。そして、
図4において下側の2個のブラシ保持部23のうち左側のブラシ保持部23と、該ブラシ保持部23から時計方向に1つ置きとなる2個のブラシ保持部23とに、第2ブラシ32が収容されている。従って、第1ブラシ31と第2ブラシ32とは、周方向に交互に且つ周方向に等角度間隔(本実施形態では60°間隔)に並んでいる。
【0059】
図1に示すように、第1ブラシ31及び第2ブラシ32は、ブラシホルダ21の径方向の中央部に整流子14が配置された後に、ブラシ保持部23の径方向外側の開口部から同ブラシ保持部23に挿入される。第1ブラシ31若しくは第2ブラシ32が挿入された各ブラシ保持部23には、その径方向外側の開口部から圧縮コイルばね33が挿入され、その後、その径方向外側の端部にキャップ30が装着される。そして、第1ブラシ31及び第2ブラシ32は、それぞれが挿入されたブラシ保持部23内の圧縮コイルばね33によって径方向内側に付勢されている。また、第1ブラシ31及び第2ブラシ32は、それぞれが挿入されたブラシ保持部23の一対の側壁23a,23bに案内されながら径方向に移動可能である。更に、各ブラシ保持部23において、天井部23cは、ブラシ保持部23の内部に収容された第1ブラシ31若しくは第2ブラシ32と軸方向に対向している。尚、
図3では、圧縮コイルばね33を省略してブラシ装置4を図示している。
【0060】
図3及び
図4に示すように、各第1ブラシ31には、第1ピッグテール34の一端が電気的に接続されている。第1ピッグテール34は、例えば導電性細線を撚り合わせて形成されており、紐状をなしている。第1ピッグテール34は、挿通溝23dを通ってブラシ保持部23の外部に引き出されている。
【0061】
また、各第2ブラシ32には、第2ピッグテール35の一端が電気的に接続されている。第2ピッグテール35は、第1ピッグテール34と同様に、例えば導電性細線を撚り合わせて形成されており、紐状をなしている。第2ピッグテール35は、挿通溝23dを通ってブラシ保持部23の外部に引き出されている。
【0062】
図1及び
図3に示すように、前記端子保持部24は、基部22の外側面22bから軸方向に沿って延びる柱状をなしている。端子保持部24は、
図4に示す基部22において下側の2個のブラシ保持部23の間となる部分の裏側に設けられている。この端子保持部24には、前記第1ブラシ31及び第2ブラシ32に電源を供給するための第1電源端子41及び第2電源端子42が埋設されている。
【0063】
第1電源端子41及び第2電源端子42は、導電性の金属材料から形成されている。
図5及び
図6に示すように、第1電源端子41及び第2電源端子42は、帯状をなしている。そして、
図1、
図3及び
図4に示すように、第1電源端子41及び第2電源端子42は、基部22の周方向に離間するとともに、端子保持部24の内部で軸方向に沿って延びている。本実施形態では、
図4において下側の2個のブラシ保持部23の間で、第1ブラシ31を保持したブラシ保持部23と隣り合うように第1電源端子41が設けられるとともに、第2ブラシ32を保持したブラシ保持部23と隣り合うように第2電源端子42が設けられている。そして、第1電源端子41及び第2電源端子42は、端子保持部24の先端からその長手方向の一端部が突出している。更に、第1電源端子41及び第2電源端子42の長手方向の他端部は、基部22を軸方向に貫通して内側面22aから軸方向に突出している。尚、本実施形態では、第1電源端子41は陽極の電源端子であり、第2電源端子は陰極の電源端子である。
【0064】
また、ブラシ装置4は、第1電源端子41と第1ブラシ31とを電気的に接続する第1接続部材51と、第2電源端子42と第2ブラシ32とを電気的に接続する第2接続部材52とを備えている。
【0065】
図4、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第1接続部材51は、1本の基礎線材61から形成されている。本実施形態では、基礎線材61は、断面円形状の導線61aの外周を絶縁性の絶縁被膜61bにて被覆してなる被覆導線(絶縁電線)である。第1接続部材51は、1本の基礎線材61を湾曲及び屈曲して形成されており、第1円弧部51aと、第1直線部51bと、第1チョークコイル51cと、第1接続部51dとを備えている。
【0066】
第1円弧部51aは、基部22の周方向に沿った円弧状をなし、略半円形状に形成されている。そして、この第1円弧部51aの長手方向の一端部(
図4及び
図7(b)において右側の端部)から直線状の第1直線部51bが連続して形成されている。第1直線部51bは、第1円弧部51aに対して軸方向の高さが変化することなく形成されている。更に、この第1直線部51bの長手方向の一端部(即ち第1円弧部51aと反対側の端部)から連続して第1チョークコイル51cが形成されている。第1チョークコイル51cは、基礎線材61を第1直線部51bの長手方向の一端部から径方向内側に略U字状に折り返した後に、同基礎線材61を複数回螺旋状に湾曲して形成されている。この第1チョークコイル51cは、螺旋状に湾曲された部分の直径方向(第1円弧部51aの軸方向と平行な方向の直径方向)の一端部の軸方向の位置が第1円弧部51a及び第1直線部51bの軸方向の位置と等しくなるように形成されている。従って、第1チョークコイル51cは、第1円弧部51a及び第1直線部51bに対して軸方向の一方側(
図7(a)において左側)にのみ突出している。また、この第1チョークコイル51cの一端部(即ち第1直線部51bと反対側の端部)から連続して第1接続部51dが形成されている。第1接続部51dは、第1チョークコイル51cの中心線L2に対して傾斜するように直線的に延びた後に軸方向(第1円弧部51aの軸方向)に略直角に屈曲され、更に再度略直角に屈曲されることにより、その先端部が略L字状をなしている。
【0067】
図4、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、前記第2接続部材52は、第1接続部材51を構成する基礎線材61と同様の1本の基礎線材62から形成されている。即ち、基礎線材62は、本実施形態では、断面円形状の導線62aの外周を絶縁性の絶縁被膜62bにて被覆してなる被覆導線(絶縁電線)である。第2接続部材52は、1本の基礎線材62を湾曲及び屈曲して形成されており、第2円弧部52aと、第2直線部52bと、第2チョークコイル52cと、第2接続部52dとを備えている。
【0068】
第2円弧部52aは、基部22の周方向に沿った円弧状をなしている。第2円弧部52aは、第1円弧部51aよりも曲率半径が小さい略半円状に形成されている。そして、この第2円弧部52aの長手方向の一端部(
図4及び
図8(a)において左側の端部)から直線状の第2直線部52bが連続して形成されている。第2直線部52bは、第2円弧部52aの長手方向の一端部からやや径方向外側に向かって直線状に延びるとともに、第2円弧部52aに対して軸方向の高さが変化することなく形成されている。更に、この第2直線部52bの長手方向の一端部(即ち第2円弧部52aと反対側の端部)から連続して第2チョークコイル52cが形成されている。第2チョークコイル52cは、基礎線材62を第2直線部52bの長手方向の一端部から径方向内側に略U字状に折り返した後に、同基礎線材62を複数回螺旋状に湾曲して形成されている。この第2チョークコイル52cは、螺旋状に湾曲された部分の直径方向(第2円弧部52aの軸方向と平行な方向の直径方向)の一端部の軸方向の位置が第2円弧部52a及び第2直線部52bの軸方向の位置と等しくなるように形成されている。従って、第2チョークコイル52cは、第2円弧部52a及び第2直線部52bに対して軸方向の一方側(
図8(b)において右側)にのみ突出している。また、この第2チョークコイル52cの一端部(即ち第2直線部52bと反対側の端部)から連続して第2接続部52dが形成されている。第2接続部52dは、第2チョークコイル52cの中心線L3に対して傾斜するように直線的に延びた後に軸方向(第2円弧部52aの軸方向)に略直角に屈曲され、更に再度略直角に屈曲されることにより、その先端部が略L字状をなしている。
【0069】
そして、
図3及び
図4に示すように、第1接続部材51は、複数のブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されている。詳しくは、第1接続部材51は、基部22の外周縁よりも径方向内側で、第1電源端子41から反時計方向に4つのブラシ保持部23に跨り、当該4つのブラシ保持部23の天井部23cの外側面23fに当接している。また、第1接続部材51の第1円弧部51a及び第1直線部51bは、天井部23cの外側面23f上で2個の第1規制部26に径方向外側から係合している。即ち、第1円弧部51a及び第1直線部51bは、第1規制部26の径方向当接部26aに径方向外側から当接するとともに、軸方向当接部26bと外側面23fとの間に介在されている。そして、第1円弧部51aは、基部22の周方向に沿って配置され、挿通孔25と同心状となっている。また、第1チョークコイル51cは、第1電源端子41の反時計方向側で周方向に並ぶ2個のブラシ保持部23の間に配置されている。第1チョークコイル51cは、第1円弧部51a及び第1直線部51bよりも基部22と反対側に(基部22から遠ざかる方向に沿って軸方向に)突出せず、第1円弧部51a及び第1直線部51bに対し基部22側に突出するように配置されている。従って、第1チョークコイル51cは、軸方向には、第1円弧部51a及び第1直線部51bと基部22との間に位置している。また、第1接続部51dにおける第1チョークコイル51c側の直線状の部分は、第1電源端子41と周方向に隣り合うブラシ保持部23の天井部23cの外側面23f上で、第3規制部28の径方向外側に配置されて同第3規制部28と径方向に対向し、更に同第3規制部28と近接している。また、第1接続部51dにおける第1チョークコイル51cと反対側の端部は、第1電源端子41まで延び同第1電源端子41に電気的に接続されている。尚、第1接続部51dにおいて、第1電源端子41に接続される部分(即ち第1接続部51dの先端部)は、絶縁被膜61bが除去されて導線61aが露出している。そして、第1接続部51dは、例えば溶接により第1電源端子41に接続されている。
【0070】
また、前記第2接続部材52も第1接続部材51と同様に、複数のブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されている。詳しくは、第2接続部材52は、基部22の外周縁よりも径方向内側で、第2電源端子42から時計方向に4つのブラシ保持部23に跨り、当該4つのブラシ保持部23の天井部23cの外側面23fに当接している。また、第2接続部材52は、第2円弧部52aが第1円弧部51aよりも径方向内側に配置されるとともに、第1接続部材51と軸方向に重なることなく配置されている。即ち、第1接続部材51と第2接続部材52とは、互いに交差することなく径方向に離間して配置されている。また、第2接続部材52の第2円弧部52a及び第2直線部52bは、天井部23cの外側面23f上で2個の第2規制部27に径方向外側から係合している。即ち、第2円弧部52a及び第2直線部52bは、第2規制部27の径方向当接部27aに径方向外側から当接するとともに、軸方向当接部27bと外側面23fとの間に介在されている。そして、第2円弧部52aは、基部22の周方向に沿って配置され、挿通孔25及び第1円弧部51aと同心状となっている。また、第2チョークコイル52cは、第2電源端子42の時計方向側で周方向に並ぶ2個のブラシ保持部23の間に配置されている。第2チョークコイル52cは、第2円弧部52a及び第2直線部52bよりも基部22と反対側に(基部22から遠ざかる方向に沿って軸方向に)突出せず、第2円弧部52a及び第2直線部52bに対し基部22側に突出するように配置されている。従って、第2チョークコイル52cは、軸方向には、第2円弧部52a及び第2直線部52bと基部22との間に位置している。また、第2接続部52dにおける第2チョークコイル52c側の直線状の部分は、第2電源端子42と周方向に隣り合うブラシ保持部23の天井部23cの外側面23f上で、第3規制部28の径方向外側に配置されて同第3規制部28と径方向に対向し、更に同第3規制部28と近接している。また、第2接続部52dにおける第2チョークコイル52cと反対側の端部は、第2電源端子42まで延び同第2電源端子42に電気的に接続されている。尚、第2接続部52dにおいて、第2電源端子42に接続される部分(即ち第2接続部52dの先端部)は、絶縁被膜62bが除去されて導線62aが露出している。そして、第2接続部52dは、例えば溶接により第2電源端子42に接続されている。
【0071】
また、基部22の内側面22aにおいて、挿通孔25を挟んで第1電源端子41及び第2電源端子42と反対側となる位置には、固定部71が形成されている。固定部71は、基部22の内側面22aから軸方向に立設された板状の固定壁72と、該固定壁72の先端面72aに固定される固定プレート73とを備えている。固定壁72の先端面72aは、軸方向と直交する平面状(即ち内側面22aと平行な平面状)をなしている。そして、固定壁72の先端面72aにおける内側面22aからの軸方向の高さは、各ブラシ保持部23の天井部23cの外側面23fにおける内側面22aからの軸方向の高さと等しくなっている。また、固定壁72の先端面72aの径方向の長さは、径方向に隣り合う第1円弧部51aと第2円弧部52aとの間の距離よりも長くなっている。そして、この固定壁72の先端面72a上を第1円弧部51a及び第2円弧部52aが周方向に横切るとともに、第1円弧部51a及び第2円弧部52aは、固定壁72の先端面72aに当接している。また、固定壁72は、その先端面72a上に配置された第1円弧部51a及び第2円弧部52aを基部22の内側面22a側から軸方向に支持している。
【0072】
前記固定プレート73は、基部22の径方向に長い略帯状をなしており、固定壁72の先端面72aとの間に第1円弧部51a及び第2円弧部52aを挟んだ状態で同先端面72a上に配置されている。そして、固定プレート73は、その長手方向の両端部が一対のピン74によって固定壁72に固定されている。このように、ブラシホルダ21の外周縁よりも内側に配置された第1接続部材51及び第2接続部材52は、この固定部71によってブラシホルダ21に固定されている。
【0073】
また、基部22の内側面22aには、2個の支持部76が形成されている。2個の支持部76は、固定部71の周方向の両側で、同固定部71との間に1つのブラシ保持部23を挟む位置に形成されている。各支持部76は、基部22の内側面22aから軸方向に立設された平板状をなしている。各支持部76の先端面76aは、軸方向と直交する平面状(即ち内側面22aと平行な平面状)をなしている。そして、各支持部76の先端面76aにおける内側面22aからの軸方向の高さは、各ブラシ保持部23の天井部23cの外側面23fにおける内側面22aからの軸方向の高さと等しくなっている。また、各支持部76の先端面76aの径方向の長さは、径方向に隣り合う第1円弧部51aと第2円弧部52aとの間の距離よりも長くなっている。そして、各支持部76の先端面76a上を第1円弧部51a及び第2円弧部52aが周方向に横切るとともに、第1円弧部51a及び第2円弧部52aは、各支持部76の先端面76aに当接している。また、各支持部76は、その先端面76a上に配置された第1円弧部51a及び第2円弧部52aを基部22の内側面22a側から軸方向に支持している。
【0074】
また、各支持部76の先端面76aには、それぞれ一対の規制突起77が形成されている。各規制突起77は、先端面76aから基部22の軸方向に突出している。そして、
図3及び
図4において固定部71の反時計方向側に形成された支持部76の一対の規制突起77のうち一方の規制突起77は、第1円弧部51aよりも径方向外側に形成されて同第1円弧部51aの径方向外側への移動を規制する。更に、固定部71の反時計方向側に形成された支持部76の一対の規制突起77のうち他方の規制突起77は、第1円弧部51aと第2円弧部52aとの間に形成されて第1円弧部51aの径方向内側への移動を規制する。また、
図3及び
図4において固定部71の時計方向側に形成された支持部76の一対の規制突起77のうち一方の規制突起77は、第1円弧部51aよりも径方向外側に形成されて同第1円弧部51aの径方向外側への移動を規制する。固定部71の時計方向側に形成された支持部76の一対の規制突起77のうち他方の規制突起77は、第2円弧部52aよりも径方向内側に形成されて同第2円弧部52aの径方向内側への移動を規制する。
【0075】
また、第1接続部材51には、各第1ブラシ31に接続された第1ピッグテール34が電気的に接続されている。
図7(b)に示すように、第1接続部材51は、第1円弧部51aにおける第1直線部51bと反対側の端部、第1円弧部51aにおける第1直線部51b側の端部寄りの部分、及び第1直線部51bにおける第1チョークコイル51c側の端部の3箇所に、絶縁被膜61bが除去されて導線61aが露出した第1ブラシ接続部51eを有する。尚、
図7(b)においては、第1ブラシ接続部51e(即ち導線61aが露出した部分)にハッチングを施している。そして、
図3、
図4及び
図5に示すように、各第1ブラシ接続部51eには、各第1ブラシ接続部51eと周方向に隣り合うブラシ保持部23に収容された第1ブラシ31に一端が接続された第1ピッグテール34の他端部が電気的に接続されている。第1ピッグテール34の他端部は、接続される第1ブラシ接続部51eに対して基部22側から直角をなすよう軸方向に重ね合わされている。そして、第1ピッグテール34の他端部は、溶接により第1ブラシ接続部51eに接続されている。このように、同極となる3個の第1ブラシ31が第1ピッグテール34介して1本の第1接続部材51に電気的に接続されるとともに、第1電源端子41と3個の第1ブラシ31とが1本の第1接続部材51によって電気的に接続されている。そして、本実施形態では、第1電源端子41は陽極の電源端子であるため、当該第1電源端子41と第1接続部材51を介して電気的に接続された3個の第1ブラシ31は、陽極のブラシとなる。尚、第1ピッグテール34の他端部を第1接続部材51に接続する作業は、第1接続部材51をブラシホルダ21に固定する前に行ってもよいし、第1接続部材51をブラシホルダ21に固定した後に行ってもよい。
【0076】
また、第2接続部材52には、各第2ブラシ32に接続された第2ピッグテール35が電気的に接続されている。
図8(a)に示すように、第2接続部材52は、第2円弧部52aにおける第2直線部52bと反対側の端部、第2円弧部52aにおける第2直線部52b側の端部寄りの部分、及び第2直線部52bにおける第2チョークコイル52c側の端部の3箇所に、絶縁被膜62bが除去されて導線62aが露出した第2ブラシ接続部52eを有する。尚、
図8(a)においては、第2ブラシ接続部52e(即ち導線62aが露出した部分)にハッチングを施している。そして、
図3、
図4及び
図6に示すように、各第2ブラシ接続部52eには、各第2ブラシ接続部52eと周方向に隣り合うブラシ保持部23に収容された第2ブラシ32に一端が接続された第2ピッグテール35の他端部が電気的に接続されている。第2ピッグテール35の他端部は、接続される第2ブラシ接続部52eに対して基部22側から直角をなすよう軸方向に重ね合わされている。そして、第2ピッグテール35の他端部は、溶接により第2ブラシ接続部52eに接続されている。このように、同極となる3個の第2ブラシ32が第2ピッグテール35介して1本の第2接続部材52に電気的に接続されるとともに、第2電源端子42と3個の第2ブラシ32とが1本の第2接続部材52によって電気的に接続されている。そして、本実施形態では、第2電源端子42は陰極の電源端子であるため、当該第2電源端子42と第2接続部材52を介して電気的に接続された3個の第2ブラシ32は、前記第1ブラシ31とは異なる極性の陰極のブラシとなる。尚、第2ピッグテール35の他端部を第2接続部材52に接続する作業は、第2接続部材52をブラシホルダ21に固定する前に行ってもよいし、第2接続部材52をブラシホルダ21に固定した後に行ってもよい。
【0077】
図1に示すように、上記のように構成されたブラシ装置4は、内側面22aがヨーク2の内部側を向くようにヨーク2の開口部に嵌入されている。そして、基部22は、ヨーク2の開口部を閉塞している。また、ヨーク2の内部において6個のブラシ保持部23の内側に整流子14が配置されるとともに、回転軸11の先端部が、基部22の径方向の中央部に設けられた挿通孔25を貫通してヨーク2の外部に突出している。更に、各第1ブラシ31及び各第2ブラシ32が、圧縮コイルばね33によって径方向内側に付勢され、整流子14の外周面、即ち整流子片14aに摺接可能に押圧接触されている。
【0078】
ここで、
図2を参照して前記巻線13の巻線手順を説明する。
図2は、電機子3及び整流子14の展開図である。
図2では、各整流子片14aに1番〜18番、各ティース12aに1番〜9番の番号を付して区別する。また、
図2は、1,2番の整流子片14a間、7,8番の整流子片14a間及び13,14番の整流子片14a間に陽極となる第1ブラシ31が、4,5番の整流子片14a間、10,11番の整流子片14a間及び16,17番の整流子片14a間に陰極となる第2ブラシ32がそれぞれ接触した状態を示す。
【0079】
巻線13が、例えば2番の整流子片14aから巻き始められた場合、まず2番の整流子片14aのライザ14b(
図2では図示略。以下同じ)に導線を掛け回した後、当該導線を3番のティース12aと4番のティース12aとの間のスロット12bに引き込む。そして、3番のティース12aに導線を特定回数だけ逆方向に巻回して第2巻線13bを形成する。続いて、2番のティース12aと3番のティース12aとの間のスロット12bから導線を引き出して、9番の整流子片14aのライザ14bに掛け回した後、7番のティース12aと8番のティース12aとの間のスロット12bに引き込む。そして、8番のティース12aに導線を特定回数だけ順方向(即ち逆方向と反対方向)に巻回して第1巻線13aを形成する。続いて、8番のティース12aと9番のティース12aとの間のスロット12bから導線を引き出して、4番の整流子片14aのライザ14bに掛け回す。ここまでを1パターンとして、以後、同様のパターンで巻線作業を連続して繰り返す。本例では、合計9回だけ同じ巻装パターンを繰り返せば、巻線作業は完了となる。
【0080】
この巻線手順を経ることにより、各ティース12aの第1巻線13a及び第2巻線13bは、互いに異極となる第1ブラシ31と第2ブラシ32との間における同位相の整流子片14aに導通される。例えば、
図2の状態において、3番のティース12aにおける第2巻線13bの第1端は1,2番の整流子片14a間の陽極の第1ブラシ31に、同じく第2端は4,5番の整流子片14a間の陰極の第2ブラシ32にそれぞれ導通する。また、3番のティース12aにおける第1巻線13aの第1端は16,17番の整流子片14a間の陰極の第2ブラシ32に、同じく第2端は1,2番の整流子片14a間の陽極の第1ブラシ31にそれぞれ導通する。
【0081】
また、この巻線手順で各ティース12aに巻回された第1巻線13aの両端(即ち巻始めの端部と巻終わりの端部)は、周方向に260°離間した位置にある2個の整流子片14a、即ち整流子14の回転方向に240°だけ位相がずれた2個の整流子片14aに接続されている。そして、各ティース12aに巻回された第2巻線13bの両端(即ち巻始めの端部と巻終わりの端部)は、周方向に140°離間した位置にある2個の整流子片14a、即ち整流子14の回転方向に140°だけ位相がずれた2個の整流子片14aに接続されている。
【0082】
上記のように構成されたモータ1では、第1電源端子41及び第2電源端子42に供給された電流は、第1及び第2接続部材51,52及び第1及び第2ピッグテール34,35を介して第1ブラシ31及び第2ブラシ32に供給され、当該第1ブラシ31及び第2ブラシ32から電機子3に供給される。このように、ブラシ装置4を介して電機子3に電流が供給されると、同電機子3が回転される。
【0083】
次に、ブラシ装置4の作用を中心に、モータ1の作用を説明する。
第1接続部材51を1本の基礎線材61から形成するとともに、第2接続部材52を1本の基礎線材62から形成しているため、第1接続部材51及び第2接続部材52の軸方向の大型化を抑制することができる。また、各基礎線材61,62は、板状素材に比べて加工を容易に行うことができる。更に、従来のように板状素材を所定の形状に打ち抜いてブラシと電源端子とを接続する接続部材を形成する場合に比べて、歩留まりを向上させることができる。
【0084】
また、第1接続部材51の第1円弧部51a及び第1直線部51bは、天井部23cの外側面23f上で2個の第1規制部26に径方向外側から係合している。そのため、第1円弧部51a及び第1直線部51bは、第1規制部26の径方向当接部26aによって径方向内側への移動が規制されるとともに、軸方向当接部26bと外側面23fとによって軸方向の移動が規制される。また、第1接続部51dにおける第1チョークコイル51c側の直線状の部分は、第3規制部28によって径方向内側への移動が規制される。
【0085】
同様に、第2接続部材52の第2円弧部52a及び第2直線部52bは、天井部23cの外側面23f上で2個の第2規制部27に径方向外側から係合している。そのため、第2円弧部52a及び第2直線部52bは、第2規制部27の径方向当接部27aによって径方向内側への移動が規制されるとともに、軸方向当接部27bと外側面23fとによって軸方向の移動が規制される。また、第2接続部52dにおける第2チョークコイル52c側の直線状の部分は、第3規制部28によって径方向内側への移動が規制される。
【0086】
また、本実施形態のように3個の第1ブラシ31及び該第1ブラシ31と同数の3個の第2ブラシ32をブラシ装置4に設ける場合には、次のような問題が懸念される。即ち、周方向(回転方向)に分散して配置された同極の3個のブラシ(3個の第1ブラシ31若しくは3個の第2ブラシ32)を整流子片14aに対して同期接触させるのが理想であるところ、各第1ブラシ31及び各第2ブラシ32の組付け誤差などに起因して、各第1ブラシ31及び各第2ブラシ32の整流子片14aに対する接触タイミングがずれる虞がある。すると、各第1巻線13a及び各第2巻線13bに対する給電タイミング、ひいては各第1巻線13a及び各第2巻線13bの励磁及び非励磁のタイミングも同期しなくなってしまう。
【0087】
そして、例えば各ティース12aに設けられる第1巻線13a及び第2巻線13bがそれぞれ同じ組み合わせの陽極の第1ブラシ31と陰極の第2ブラシ32との間の整流子片14aに導通されるようにした場合、換言すれば同じ第1ブラシ31と第2ブラシ32とによる給電により励磁されるようにした場合には、次のような状況が発生する。即ち、互いに120°だけ位相がずれた3組の第1巻線13a及び第2巻線13bは、本来同じタイミングで励磁状態あるいは非励磁状態となるところ、当該3組のうち1組又は2組が励磁され、残りの2組又は1組が励磁されないといった状況が発生する。このため、各ティース12aと各磁石6との間におけるトルクの発生タイミングがずれて、回転むらなどが発生する虞がある。
【0088】
この点、本実施形態では、各ティース12aに設けられる第1巻線13a及び第2巻線13bは、互いに異なる組み合わせの第1ブラシ31と第2ブラシ32と間における同位相の整流子片14aに導通される。即ち、各ティース12aに設けられる第1巻線13a及び第2巻線13bは、それぞれ異なる組み合わせの陽極の第1ブラシ31及び陰極の第2ブラシ32による給電により励磁される。例えば、
図2において、3番のティース12aの第2巻線13bは、1,2番の整流子片14a間に存在する第1ブラシ31と、4,5番の整流子片14a間に存在する第2ブラシ32とによる給電により励磁される。同じく3番のティース12aの第1巻線13aは、1,2番の整流子片14a間に存在する第1ブラシ31と、16,17番の整流子片14a間に存在する第2ブラシ32とによる給電により励磁される。このため、周方向に分散して配置された同極の3個のブラシ(3個の第1ブラシ31若しくは3個の第2ブラシ32)の各整流子片14aに対する接触タイミングが同期しない場合であれ、各組の第1巻線13a及び第2巻線13bの少なくとも一方は、同時に励磁又は非励磁の状態になる蓋然性が高められる。従って、トルクの発生のタイミングの不均衡、ひいてはトルクの偏在が抑制されて、モータ1の円滑な回転が可能となる。
【0089】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)第1接続部材51を1本の基礎線材61から形成するとともに、第2接続部材52を1本の基礎線材62から形成しているため、第1接続部材51及び第2接続部材52の軸方向の大型化を抑制することができる。また、各基礎線材61,62は、板状素材に比べて加工を容易に行うことができる。更に、従来のように板状素材を所定の形状に打ち抜いてブラシと電源端子とを接続する接続部材を形成する場合に比べて、歩留まりを向上させることができる。従って、第1接続部材51及び第2接続部材52を安価に製造することができる。これらのことから、ブラシ装置4の軸方向の大型化を抑制しつつ同ブラシ装置4を安価に製造することができる。そして、ひいてはブラシ装置4を備えたモータ1の軸方向の大型化を抑制しつつ同モータ1を安価に製造することができる。
【0090】
(2)第1接続部材51及び第2接続部材52は、ブラシホルダ21の周方向に沿って円弧状に湾曲されているため、第1接続部材51及び第2接続部材52が径方向に大型化されることを抑制できる。
【0091】
(3)第1接続部材51と第2接続部材52とは、軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置4の軸方向の大型化をより抑制することができる。
(4)第1接続部材51は、1本の基礎線材61から形成されているため、同基礎線材61を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイル51cを形成することができる。同様に、第2接続部材52は、1本の基礎線材62から形成されているため、同基礎線材62を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイル52cを形成することができる。そして、第1接続部材51及び第2接続部材52に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置4を製造することができる。
【0092】
(5)第1接続部材51及び第2接続部材52はブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されているため、第1接続部材51及び第2接続部材52によってブラシ装置4が径方向に大型化されることを抑制することができる。
【0093】
(6)第1接続部材51及び第2接続部材52は、天井部23cの外側面23fに当接しているため、第1接続部材51及び第2接続部材52が天井部23cの外側面23fと軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置4の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、第1接続部材51及び第2接続部材52は、天井部23cの外側面23fに当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダ21に対してより安定して固定される。
【0094】
(7)ブラシホルダ21は、径方向から当接した第1接続部材51の径方向の移動を規制する第1規制部26及び径方向から当接した第2接続部材52の径方向の移動を規制する第2規制部27を有する。従って、第1規制部26によって第1接続部材51のブラシホルダ21に対する径方向の移動を規制することができるとともに、第2規制部27によって第2接続部材52のブラシホルダ21に対する径方向の移動を規制することができる。
【0095】
(8)第1ピッグテール34は第1接続部材51に直接電気的に接続されるため、第1ピッグテール34を第1接続部材51に接続するための部品を使用しなくてもよい。同様に、第2ピッグテール35は第2接続部材52に直接電気的に接続されるため、第2ピッグテール35を第2接続部材52に接続するための部品を使用しなくてもよい。従って、更に安価にブラシ装置4を製造することができる。
【0096】
(9)第1接続部材51を構成する基礎線材61及び第2接続部材52を構成する基礎線材62は、被覆導線であるため、容易に整形することができる。また、第1接続部材51及び第2接続部材52は、被覆導線であるため、周囲の部品との絶縁を容易に確保することができる。
【0097】
(10)第1ブラシ31及び第2ブラシ32を3個ずつ備えているため、第1ブラシ31及び第2ブラシ32をそれぞれ2個以下とする場合に比べて、1つのブラシ当たりの負荷電流が低減される。更に、第1ブラシ31及び第2ブラシ32の摩耗も抑制されるため、第1ブラシ31及び第2ブラシ32の寿命が確保される。また、同電位となるべき整流子片14a間を接続する均圧線も存在しない。このため、均圧線を配置するためのスペースを確保しなくてもよい。従って、モータの高出力化に対応することが可能である。更に、各ティース12aに設けられる第1巻線13a及び第2巻線13bは、互いに異なる組み合わせの第1ブラシ31及び第2ブラシ32間における同位相の整流子片14aに導通される。このため、周方向に分散して配置された同極の3個のブラシ(3個の第1ブラシ31若しくは3個の第2ブラシ32)の各整流子片14aに対する接触タイミングが同期しない場合であれ、各組の第1巻線13a及び第2巻線13bの少なくとも一方は、同時に励磁又は非励磁の状態になる蓋然性が高められる。従って、電機子3の回転方向における磁界の不均衡、ひいてはモータトルクの偏在が抑制されて、モータ1の円滑な回転が可能となる。
【0098】
(11)一般的に、モータ1の回転は、ヨーク2の外部に突出した回転軸11の先端部を介して外部機器等に伝達される。そして、モータ1の用途によっては、回転軸11に曲げ方向の外力が加えられることもある。この場合、整流子14と各巻線13とをつなぐ巻線リード部分(即ち、スロット12bから出て整流子片14aに至る部分)に、圧縮応力若しくは引っ張り応力が発生する虞がある。この点、本実施形態では、各第1巻線13aの両端は、それぞれ整流子14の回転方向における少なくとも180°だけ位相がずれた2個の整流子片14aに接続されている。このため、各第1巻線13aと各巻線リード部分が接続される各整流子片14aとは、回転軸11を挟んで互いに反対側に位置する。従って、回転軸11に曲げ方向の外力が加えられた場合、巻線リード部分の第1端部側には圧縮応力若しくは引っ張り応力が作用し、第2端部側には引っ張り応力若しくは圧縮応力が発生する。即ち、巻線リード部分において、圧縮応力と引っ張り応力とが相殺される。このため、第1巻線13aの巻線リード部分の疲労等による損傷が抑制される。
【0099】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・巻線13の巻線手順(巻線パターン)は上記実施形態のものに限らない。例えば、
図9、
図10及び
図11に示すような巻線パターンとしてもよい。
図9に示す例は、
図2に示した上記実施形態の巻線パターンにおける第1巻線13aの第2端(第1巻線13aの巻始めの端部及び巻終わりの端部のうち番号の大きい整流子片14aに接続される側の端部)を、6個の整流子片14a分だけ番号が小さくなる方へずらしたものである。また、
図10に示す例は、
図2に示した上記実施形態の巻線パターンにおける第1巻線13aの第2端(第1巻線13aの巻始めの端部及び巻終わりの端部のうち番号の大きい整流子片14aに接続される側の端部)を、12個の整流子片14a分だけ番後が小さくなる方へずらしたものである。また、
図11に示す例は、
図2に示した上記実施形態の巻線パターンにおける第2巻線13bの第1端(第2巻線13bの巻始めの端部及び巻終わりの端部のうち番号の小さい整流子片14aに接続される側の端部)を、6個の整流子片14a分だけ番号が大きくなる方へずらしたものである。このようにしても、上記実施形態の(1)〜(10)と同様の効果を得ることができる。
【0100】
・上記実施形態では、巻線13は、第1巻線13a及び第2巻線13bを備えている。しかしながら、巻線13は、エナメル被覆が施された導線を各ティース12aに一方向のみに巻き付けて形成されたものであってもよい。
【0101】
・上記実施形態では、モータ1は、6個の磁石6(6個の磁極)及び9個のティース12aを備えている。しかしながら、モータ1に備えられる磁石6の数及びティース12aの数はこれに限らず、適宜変更してもよい。この場合、ティース12aの数に応じて整流子片14aの数が変更される。また、ブラシ装置4に備えられる第1ブラシ31及び第2ブラシ32の数も、適宜変更してもよい。但し、第1ブラシ31と第2ブラシ32とは、ブラシ装置4に同数ずつ設けられる。
【0102】
・上記実施形態では、モータ1は、ポンプ装置の駆動源として用いられている。しかしながら、モータ1は、ポンプ装置以外の装置の駆動源として用いられてもよい。
・上記実施形態では、第1接続部材51を構成する基礎線材61は、断面円形状の導線61aの外周を絶縁性の絶縁被膜61bにて被覆してなる被覆導線である。しかしながら、基礎線材61の構成はこれに限らない。例えば、基礎線材61は、その導線61aの断面形状が楕円形、多角形等であってもよい。また、基礎線材61は、その導線61aが導電性細線を撚り合わせたものであってもよい。また、基礎線材61は、必ずしも絶縁被膜61bを備えたものでなくてもよく、例えば、銅の単線であってもよい。このことは、第2接続部材52を構成する基礎線材62においても同様である。
【0103】
・上記実施形態のブラシ装置4に代えて、
図12に示すブラシ装置90をモータ1に備えてもよい。ブラシ装置90のブラシホルダ21は、基部22の内側面22a上に2個のブラシ保持部23を備えている。2個のブラシ保持部23は、基部22の周方向に60°離間して形成されている。そして、一方のブラシ保持部23は第1ブラシ31を内側に保持するとともに、他方のブラシ保持部23は第2ブラシ32を内側に保持している。従って、第1ブラシ31と第2ブラシ32とは、2個のブラシ保持部23によって周方向に60°離間した位置に保持されている。
【0104】
また、ブラシ装置90は、1本の基礎線材61から形成された第1接続部材91及び1本の基礎線材62から形成された第2接続部材92を備えている。第1接続部材91は、基礎線材61を基部22の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されるとともに、その両端部の間に同基礎線材61を螺旋状に湾曲して形成された第1チョークコイル51cを有する。そして、第1接続部材91は、基部22の外周縁よりも内側で同基部22と軸方向に重なる位置に配置されている。また、第1接続部材91の長手方向の一端部には、第1ブラシ31に一端が接続された第1ピッグテール34の他端が例えば溶接により電気的に接続されるとともに、同第1接続部材91の長手方向の他端部は、第1電源端子41に例えば溶接により電気的に接続されている。即ち、第1接続部材91は、第1電源端子41と第1ブラシ31とを電気的に接続している。また、第2接続部材92は、基礎線材62を基部22の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されるとともに、その両端部の間に同基礎線材62を螺旋状に湾曲して形成された第2チョークコイル52cを有する。そして、第2接続部材92は、基部22の外周縁よりも内側で同基部22と軸方向に重なる位置であって、挿通孔25を挟んで第1接続部材91と反対側となる位置に配置されており、第1接続部材91とは軸方向に重なり合っていない。また、この第2接続部材92の第2チョークコイル52cと、前記第1接続部材91の第1チョークコイル51cとは、基部22と軸方向に対向し、且つ挿通孔25の両側に互いの中心線L2,L3が平行をなすように配置されている。そして、第2接続部材92の長手方向の一端部には、第2ブラシ32に一端が接続された第2ピッグテール35の他端が例えば溶接により電気的に接続されるとともに、同第2接続部材92の長手方向の他端部は、第2電源端子42に例えば溶接により電気的に接続されている。即ち、第2接続部材92は、第2電源端子42と第2ブラシ32とを電気的に接続している。
【0105】
尚、このブラシ装置90をモータ1に備えた場合、電機子3には、周方向に120°間隔となる3個ずつの整流子片14aを短絡する均圧線が設けられる。若しくは(電機子3に均圧線を設けない場合には)、巻線13を波巻きにて電機子コア12に巻回する。
【0106】
このようなブラシ装置90をモータ1に備えると、上記実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。更に、第1ブラシ31及び第2ブラシ32を1個ずつ備えたブラシ装置90において、第1接続部材91と第2接続部材92とが軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置90の軸方向の大型化をより抑制することができる。また、第1接続部材91は、1本の基礎線材61から形成されているため、同基礎線材61を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイル51cを形成することができる。同様に、第2接続部材92は、1本の基礎線材62から形成されているため、同基礎線材62を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイル52cを形成することができる。そして、第1接続部材91及び第2接続部材92に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置90を製造することができる。
【0107】
尚、
図12に示す例において、第1接続部材91及び第2接続部材92を天井部23cの外側面23fに当接させて配置してもよい。このようにすると、第1接続部材91及び第2接続部材92は、天井部23cの外側面23fに当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダ21に対してより安定して固定される。また、第1接続部材91及び第2接続部材92が天井部23cの外側面23fに当接していると、第1接続部材91及び第2接続部材92が天井部23cの外側面23fと軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置90の軸方向の大型化を更に抑制することができる。更に、第1接続部材91及び第2接続部材92は、天井部23cの外側面23fに当接することで、ブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置される。従って、第1接続部材91及び第2接続部材92によってブラシ装置90が径方向に大型化されることを抑制することができる。
【0108】
・上記実施形態のブラシ装置4に代えて、
図13に示すブラシ装置100をモータ1に備えてもよい。ブラシ装置100のブラシホルダ21は、基部22の内側面22a上に4個のブラシ保持部23を備えている。4個のブラシ保持部23は、内側面22a上で基部22の周方向に等角度間隔(90°間隔)となる4箇所に形成されている。また、4個のブラシ保持部23のうち周方向に隣り合う2個のブラシ保持部23(
図13において右下の2個のブラシ保持部23)の間に、第1電源端子41と第2電源端子42とが周方向に離間して設けられている。そして、第1電源端子41と周方向に隣り合うブラシ保持部23と、該ブラシ保持部23から周方向に1つ置きのブラシ保持部23との2個のブラシ保持部23は、第1ブラシ31を内側に保持している。また、第2電源端子42と周方向に隣り合うブラシ保持部23と、該ブラシ保持部23から周方向に1つ置きのブラシ保持部23との2個のブラシ保持部23は、第2ブラシ32を内側に保持している。従って、第1ブラシ31と第2ブラシ32とが周方向に交互に並んでいる。
【0109】
また、ブラシ装置100は、1本の基礎線材61から形成された第1接続部材101及び1本の基礎線材62から形成された第2接続部材102を備えている。第1接続部材101は、基礎線材61を基部22の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されるとともに、その両端部の間に同基礎線材61を螺旋状に湾曲して形成された第1チョークコイル51cを有する。また、第2接続部材102は、基礎線材62を基部22の周方向に沿った円弧状に湾曲して形成されるとともに、その両端部の間に同基礎線材62を螺旋状に湾曲して形成された第2チョークコイル52cを有する。
【0110】
そして、第1接続部材101及び第2接続部材102は、ブラシホルダ21に対して、基部22の外周縁よりも内側で、互いに軸方向に重なり合うことなく、天井部23cの外側面23fに当接して配置されている。また、第1チョークコイル51cは、第1電源端子41と周方向に隣り合い第1ブラシ31を収容した1つのブラシ保持部23と、当該ブラシ保持部23に対し第1電源端子41と反対側で周方向に隣り合い第2ブラシ32を収容した1つのブラシ保持部23との間で、その中心線L2が径方向に延びるように配置されている。更に、第2チョークコイル52cは、第2電源端子42と周方向に隣り合い第2ブラシ32を収容した1つのブラシ保持部23と、当該ブラシ保持部23に対し第2電源端子42と反対側で周方向に隣り合い第1ブラシ31を収容した1つのブラシ保持部23との間で、その中心線L3が径方向に延びるように配置されている。
【0111】
また、第1接続部材101には、第1ブラシ31に一端が接続された第1ピッグテール34の他端が例えば溶接により電気的に接続されるとともに、同第1接続部材101の長手方向の片側端部は、第1電源端子41に例えば溶接により電気的に接続されている。即ち、第1接続部材101は、第1電源端子41と2個の第1ブラシ31とを電気的に接続している。尚、第1電源端子41と第1チョークコイル51cとの間に配置された第1ブラシ31から延びる第1ピッグテール34は、第1チョークコイル51cの径方向外側で第1接続部材101に電気的に接続されている。
【0112】
また、第2接続部材102の長手方向の一端部には、第2ブラシ32に一端が接続された第2ピッグテール35の他端が例えば溶接により電気的に接続されるとともに、同第2接続部材102の長手方向の片側端部は、第2電源端子42に例えば溶接により電気的に接続されている。即ち、第2接続部材102は、第2電源端子42と2個の第2ブラシ32とを電気的に接続している。尚、第2電源端子42と第2チョークコイル52cとの間に配置された第2ブラシ32から延びる第2ピッグテール35は、第2チョークコイル52cの径方向外側で第2接続部材102に電気的に接続されている。
【0113】
このようにすると、上記実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。更に、第1ブラシ31及び第2ブラシ32を2個ずつ備えたブラシ装置100において、第1接続部材101と第2接続部材102とは、軸方向に重なり合わないため、ブラシ装置100の軸方向の大型化をより抑制することができる。また、第1接続部材101及び第2接続部材102は、天井部23cの外側面23fに当接しているため、第1接続部材101及び第2接続部材102が天井部23cの外側面23fと軸方向に離間して配置される場合に比べて、ブラシ装置100の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、第1接続部材101及び第2接続部材102は、天井部23cの外側面23fに当接することで、その軸方向の位置が決まるため、ブラシホルダ21に対してより安定して固定される。更に、第1接続部材101及び第2接続部材102は、天井部23cの外側面23fに当接するため、ブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されている。従って、第1接続部材101及び第2接続部材102によってブラシ装置100が径方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1接続部材101は、1本の基礎線材61から形成されているため、同基礎線材61を螺旋状に湾曲するだけで容易に第1チョークコイル51cを形成することができる。同様に、第2接続部材102は、1本の基礎線材62から形成されているため、同基礎線材62を螺旋状に湾曲するだけで容易に第2チョークコイル52cを形成することができる。そして、第1接続部材101及び第2接続部材102に別途チョークコイルを接続しなくてもよい。これらのことから、より安価にブラシ装置100を製造することができる。
【0114】
また、第1チョークコイル51cは、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部23の間に配置されるため、第1チョークコイル51cのブラシホルダ21からの軸方向の突出量を抑えることができる。同様に、第2チョークコイル52cは、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部23の間に配置されるため、第2チョークコイル52cのブラシホルダ21からの軸方向の突出量を抑えることができる。従って、第1チョークコイル51c及び第2チョークコイル52cによってブラシ装置100が軸方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1チョークコイル51cは、その中心線L2が径方向に延びるように配置されているため、同第1チョークコイル51cと周方向に隣り合うブラシ保持部23に収容された第1ブラシ31から延びる第1ピッグテール34を、第1チョークコイル51cの径方向外側で第1接続部材101に接続することで、第1ピッグテール34を容易に第1接続部材101に接続することができる。同様に、第2チョークコイル52cは、その中心線L3が径方向に延びるように配置されているため、同第2チョークコイル52cと周方向に隣り合うブラシ保持部23に収容された第2ブラシ32から延びる第2ピッグテール35を、第2チョークコイル52cの径方向外側で第2接続部材102に接続することで、第2ピッグテール35を容易に第2接続部材102に接続することができる。
【0115】
・
図14に示すように、第1チョークコイル51cを、該第1チョークコイル51cの中心線L2がブラシホルダ21(基部22)の径方向に延びるように配置してもよい。このようにすると、第1チョークコイル51cの配置スペースを周方向に短くできるため、第1ブラシ31及び第2ブラシ32の数が多い場合に、これらの第1ブラシ31及び第2ブラシ32を収容した多数のブラシ保持部23の間に第1チョークコイル51cを配置しやすくなる。更に、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部23の間に第1チョークコイル51cを配置することで、第1チョークコイル51cによってブラシ装置4が軸方向に大型化されることを抑制することができる。尚、このことは、第2チョークコイル52cについても同様である。
【0116】
・
図15に示すように、第1チョークコイル51cを、該第1チョークコイル51cの中心線L2がブラシホルダ21(基部22)の径方向と直交するように配置してもよい。
図15に示す例では、第1チョークコイル51cの中心線L2は、ブラシホルダ21(基部22)の径方向に延びる直線L4と直交している。このようにすると、第1チョークコイル51cの配置スペースを径方向に短くできるため、ブラシホルダ21を径方向に小型化してブラシ装置4の径方向の小型化を図ることが可能となる。更に、周方向に隣り合う2つのブラシ保持部23の間に第1チョークコイル51cを配置することで、第1チョークコイル51cによってブラシ装置4が軸方向に大型化されることを抑制することができる。また、第1ブラシ31及び第2ブラシ32の数が少ない場合(例えば、それぞれ2個以下となる場合)には、ブラシ装置4を径方向に大型化することなく第1チョークコイル51cの長さ(中心線L2方向の長さ)を長くすることができる。尚、このことは、第2チョークコイル52cについても同様である。
【0117】
・
図16(a)及び
図16(b)に示すように、第1接続部材51の第1ブラシ接続部51eに、第1ピッグテール34を接続するための接合部51fを設けてもよい。接合部51fは、第1ブラシ接続部51eを構成する導線61aを、径方向に開口する略U字状に湾曲及び屈曲して形成されている。U字状に形成された接合部51fの内側の凹部は、その幅が第1ピッグテール34の外径と略等しく、その深さが第1ピッグテール34の外径よりも深く形成されている。そして、第1ピッグテール34における第1接続部材51に接続される端部は、接合部51fの内側に挿入される。その後、接合部51fと同接合部51fの内側に挿入された第1ピッグテール34の端部とに溶接が施されて、第1ピッグテール34の端部が第1ブラシ接続部51eに電気的に接続される。このようにすると、接合部51fと第1ピッグテール34の端部とに溶接を施すときに、第1ブラシ接続部51eに対して第1ピッグテール34が第1接続部材51の長手方向に移動し難くなる。従って、接合部51fと第1ピッグテール34の端部との溶接不良の発生を抑制することができる。
【0118】
また、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、第1接続部材51の第1ブラシ接続部51eに、第1ピッグテール34を接続するための接合部51gを設けてもよい。接合部51gは、第1ブラシ接続部51eを構成する導線61aを、その長手方向に略直角に屈曲した後に、略180°屈曲して折り返し、再度その長手方向に略直角に屈曲して形成されている。このように形成された接合部51gは、径方向に突出した略U字状をなしている。そして、第1ピッグテール34における第1接続部材51に接続される端部は、接合部51gと軸方向(
図17(b)において上下方向)に重ね合わされる。その後、接合部51gと同接合部51gに重ね合わされた第1ピッグテール34の端部とに溶接が施されて、第1ピッグテール34の端部が第1ブラシ接続部51eに電気的に接続される。このようにすると、接合部51gと第1ピッグテール34の端部とに溶接を施すときに、第1ブラシ接続部51eと第1ピッグテール34との接触面積が上記実施形態に比べて大きくなる。従って、接合部51gと第1ピッグテール34の端部とを溶接により接続しやすくなるため、接合部51gと第1ピッグテール34の端部との溶接不良の発生を抑制することができる。
【0119】
また、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、第1接続部材51の第1ブラシ接続部51eに、第1ピッグテール34を接続するための接合部51hを設けてもよい。接合部51hは、第1ブラシ接続部51eを構成する導線61aを、その長手方向に略直角に屈曲した後に、略180°屈曲して折り返し、再度その長手方向に略直角に屈曲して形成されている。更に、接合部51hは、軸方向(
図18(a)において紙面垂直方向)の両側から押し潰されて、接合部51hの両側の導線61aの直径よりも薄い厚さの板状に形成されている。このように形成された接合部51hは、径方向に突出した略U字状をなすとともに、その厚さ方向(
図18(b)において上下方向)の端面は、軸方向と直交する平面状をなす接続面51kとなっている。そして、第1ピッグテール34における第1接続部材51に接続される端部は、接合部51hと軸方向に重ね合わされて接続面51kに当接される。その後、接合部51hと同接合部51hに重ね合わされた第1ピッグテール34の端部とに溶接が施されて、第1ピッグテール34の端部が第1ブラシ接続部51eに電気的に接続される。このようにすると、接合部51hと第1ピッグテール34の端部とに溶接を施すときに、第1ブラシ接続部51eと第1ピッグテール34との接触面積が上記実施形態に比べて大きくなる。また、第1ピッグテール34の端部は、平面状の接続面51kに当接するように接合部51hに重ね合わされるため、接合部51hに対する姿勢が安定しやすくなる。従って、接合部51hと第1ピッグテール34の端部とを溶接により接続しやすくなるため、接合部51hと第1ピッグテール34の端部との溶接不良の発生を抑制することができる。
【0120】
尚、
図16〜
図18に示した接合部51f,51g,51hの何れか1つを、第2接続部材52の第2ブラシ接続部52eに設けてもよい。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【0121】
・上記実施形態では、ブラシホルダ21に備えられた6個のブラシ保持部23のうち、2個のブラシ保持部23に第1規制部26が設けられ、別の2個のブラシ保持部23に第2規制部27が設けられ、残りの2個のブラシ保持部23に第3規制部28が設けられている。しかしながら、第1規制部26、第2規制部27及び第3規制部28は、6個のブラシ保持部23のうちどのブラシ保持部23に設けられてもよい。例えば、各ブラシ保持部23に、それぞれ第1規制部26及び第2規制部27が形成されてもよい。また、ブラシホルダ21は、第1規制部26、第2規制部27及び第3規制部28のうち何れか1つの規制部のみを備えた構成であってもよい。また、ブラシホルダ21は、第1規制部26、第2規制部27及び第3規制部28を必ずしも備えなくてもよい。
【0122】
・上記実施形態では、第1接続部材51及び第2接続部材52は、天井部23cの外側面23fに当接している。しかしながら、第1接続部材51及び第2接続部材52は、必ずしも天井部23cの外側面23fに当接しなくてもよい。例えば、
図19に示すように、第1接続部材51及び第2接続部材52を、基部22の外側面22b上に配置してもよい。
図19に示す例では、第1接続部材51及び第2接続部材52は、外側面22bに当接している。この場合においても、第1接続部材51は1本の基礎線材61から形成されるとともに、第2接続部材52は1本の基礎線材62から形成され、更に、第1接続部材51及び第2接続部材52は外側面22bに当接しているため、ブラシ装置4の軸方向の大型化が抑制されている。更に、第1接続部材51及び第2接続部材52は、ブラシホルダ21において、外側面22bから軸方向に突出した環状の収容凸部29の外周側のデッドスペースとなる部分に配置されている。従って、ブラシ装置4の軸方向の大型化がより抑制されている。また、
図19に示す例では、第1接続部材51及び第2接続部材52は、ブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されているため、上記実施形態の(5)と同様の効果を得ることができる。
【0123】
・ブラシ保持部23の形状は、第1ブラシ31若しくは第2ブラシ32を径方向の移動を許容しつつ内側に保持可能な形状であれば、上記実施形態の形状に限らない。例えば、ブラシ保持部23は、側壁23a,23bから構成され天井部23cを備えない形状であってもよい。
【0124】
・上記実施形態では、第1接続部材51及び第2接続部材52はブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されている。しかしながら、第1接続部材51及び第2接続部材52は、必ずしもブラシ保持部23と軸方向に重なる位置に配置されなくてもよい。例えば、
図20に示す例では、第1接続部材51及び第2接続部材52は、複数のブラシ保持部23の外周側に配置されている。このようにすると、ブラシ装置4の軸方向の大型化を更に抑制することができる。また、
図20に示す例のように第1接続部材51及び第2接続部材52を基部22の外周縁よりも内側に配置すると、ブラシ装置4の径方向の大型化を抑制することができる。
【0125】
・第1接続部材51は、必ずしも第1チョークコイル51cを備えなくてもよい。同様に、第2接続部材52は、必ずしも第2チョークコイル52cを備えなくてもよい。
・上記実施形態では、第1接続部材51と第2接続部材52とは、軸方向に重なり合わない。しかしながら、第1接続部材51と第2接続部材52とは、少なくとも一部が軸方向に重なるように配置されてもよい。第1接続部材51は1本の基礎線材61から形成されるとともに、第2接続部材52は1本の基礎線材62から形成されているため、軸方向に重なる部分があったとしても、ブラシ装置4の軸方向の大型化を抑制できる。
【0126】
・上記実施形態では、第1接続部材51は、ブラシホルダ21の周方向に沿って円弧状に湾曲された第1円弧部51aを有することにより、ブラシホルダ21の周方向に沿って円弧状に湾曲されている。同様に、第2接続部材52は、ブラシホルダ21の周方向に沿って円弧状に湾曲された第2円弧部52aを有することにより、ブラシホルダ21の周方向に沿って円弧状に湾曲されている。しかしながら、第1接続部材51及び第2接続部材52の形状は、上記実施形態の形状に限らない。例えば、第1接続部材51及び第2接続部材52は、ブラシホルダ21の周方向に沿うように、その長手方向の複数箇所が屈曲された形状(略多角形状)に形成されてもよい。また、第1接続部材51及び第2接続部材52は、直線状に形成されてもよい。
【0127】
・上記実施形態では、第1接続部材51及び第2接続部材52は、固定部71によってブラシホルダ21に固定されている。しかしながら、第1接続部材51及び第2接続部材52をブラシホルダ21に固定する構成は、これに限らない。例えば、第1規制部26及び第2規制部27の少なくとも一方を利用して第1接続部材51及び第2接続部材52をブラシホルダ21に固定してもよい。また、第1接続部材51及び第2接続部材52を接着材等を用いてブラシホルダ21に接着固定してもよい。また、第1接続部材51及び第2接続部材52は、必ずしもブラシホルダ21に固定されなくてもよい。例えば、第1接続部材51は、第1電源端子41に接続されることによりブラシホルダ21に対して一体化されてもよい。同様に、第2接続部材52は、第2電源端子42に接続されることによりブラシホルダ21に対して一体化されてもよい。
【0128】
・ブラシホルダ21の形状は、上記実施形態の形状に限らない。ブラシホルダ21は、整流子14の外周に配置可能な環状をなし、第1ブラシ31及び第2ブラシ32を整流子14の外周面に摺接可能に保持する形状であればよい。例えば、ブラシホルダ21は、固定部71及び支持部76を備えない構成であってもよい。
【0129】
・上記実施形態では、第1電源端子41が陽極の電源端子とされ、同第1電源端子41に第1接続部材51を介して接続された第1ブラシ31が陽極のブラシとなっている。そして、第2電源端子42が陰極の電源端子とされ、同第2電源端子42に第2接続部材52を介して接続された第2ブラシ32が陰極のブラシとなっている。しかしながら、第1電源端子41を陰極の電源端子とするとともに、第2電源端子42を陽極の電源端子としてもよい。この場合、第1ブラシ31が陰極のブラシとなり、第2ブラシ32が陽極のブラシとなる。