特許第6058968号(P6058968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058968
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20161226BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20161226BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/058
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-228284(P2012-228284)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-82063(P2014-82063A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124730
【弁理士】
【氏名又は名称】正津 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松山 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 極
(72)【発明者】
【氏名】古田 知康
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−288712(JP,A)
【文献】 特開2004−288515(JP,A)
【文献】 特開2009−004389(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/036705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に対して初充電を行う初充電工程と、
前記初充電工程の後に、前記二次電池を所定の高温である第一の温度に維持しつつ、所定の第一の時間の間放置する高温エージング工程と、
前記初充電工程の後で、かつ、前記高温エージング工程の前に、40℃以上かつ60℃以下の第二の温度で、前記二次電池を5時間以上かつ25時間以下の第二の時間の間放置するプレエージング工程と
を備え、
ここで、前記第一の温度が前記第二の温度以上であり、かつ、
前記初充電工程の後、前記プレエージング工程を経て前記高温エージング工程が終わるまで、前記二次電池を充電しない、
ことを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第一の温度を、85℃以下とする、
ことを特徴とする請求項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
さらに、
前記高温エージング工程の後に、
前記二次電池を前記第一の温度に比して低い所定の低温で、所定の時間の間放置する低温エージング工程と、
前記低温エージング工程の間における前記二次電池の電圧降下量を測定し、前記電圧降下量を所定の閾値と比較して微小短絡の有無を検出する微小短絡検出工程と
を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池等の二次電池の製造過程においては、サイクル特性の向上や電池内部における微小短絡の検出精度向上等のために、初充電後に所定の高温でエージングを行う(以下、高温エージングと呼ぶ)ことが有効であることが知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され、公知となっている。
【0003】
特許文献1に開示されている技術では、ステップ1において、二次電池のSOC(State Of Charge)が約100%(第1のSOC)になるまで初充電を行った後に、ステップ2において、第1のSOCを維持しながら、第1のエージング処理(高温エージング)を行う構成としている。
次に、ステップ3において、二次電池のSOCが約0%(第2のSOC)になるまで放電させて、ステップ4において、二次電池の温度をステップ1〜3のときの温度よりも低下させる構成としている。
そして、ステップ5において、低下した温度の下、第2のエージング(低温エージング)を行い、その後、ステップ6において、電圧降下量を測定して、精度よく微小な内部短絡の有無を検出する構成としている。
【0004】
バリ等の異物金属が二次電池に混入されていると、電解液に接触している異物金属は溶解しイオン化して負極に誘導され、負極表面において析出するようになる。
この析出物が成長すると、セパレータを介して正極にまで到達することとなり、微小な内部短絡が生じる原因となっている。
高温エージングを行う理由の一つは、斯かる析出物の成長を促進させることにあり、高温エージングを行うことで、エージング時間の短縮を可能にするとともに、異物金属の確実な検出が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−69775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高温エージングを行うときの温度を高くすると、エージング時間の短縮を図ることができる反面、二次電池の劣化(正極合材層の溶出)を招くことが判明しており、従来は、高温エージングの温度をあまり高くすることができず、エージング時間の短縮を思うように図ることができなかった。
【0007】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、二次電池の生産性向上および性能向上を図るべく、二次電池の劣化を抑制しつつ、エージング温度の高温化を可能にして、エージング時間の短縮を実現する二次電池の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
ここで提案される二次電池の製造方法の一形態は、二次電池に対して初充電を行う初充電工程と、前記初充電工程の後に、前記二次電池を所定の高温である第一の温度に維持しつつ、所定の第一の時間の間放置する高温エージング工程と、初充電工程の後で、かつ、高温エージング工程の前に、40℃以上かつ60℃以下の第二の温度で、二次電池を5時間以上かつ25時間以下の第二の時間の間放置するプレエージング工程とを備えている。
ここで、前記第一の温度が前記第二の温度以上であり、かつ、
前記初充電工程の後、前記プレエージング工程を経て前記高温エージング工程が終わるまで、前記二次電池を充電しない
【0011】
前記第一の温度は、85℃以下であってもよい。
【0012】
らに、前記高温エージング工程の後に、前記二次電池を前記第一の温度に比して低い所定の低温で、所定の時間の間放置する低温エージング工程と、前記低温エージング工程の間における前記二次電池の電圧降下量を測定し、前記電圧降下量を所定の閾値と比較して微小短絡の有無を検出する微小短絡検出工程を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
上述のプレエージングを行うことにより、初充電後の二次電池の内部における局所的な高電位を緩和することができる。
これにより、高温エージング時における二次電池の劣化(正極合材の溶出)を抑制し、エージング温度の高温化を図ることができ、ひいては、エージング時間の短縮を図ることができる。
【0015】
また、上述の低温エージング工程と、微小短絡検出工程とを備えた形態では、二次電池の電池電圧が安定した状態で電圧降下量を測定することができる。
これにより、短時間で精度よく微小短絡の有無を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法により製造する二次電池の全体構成を示す斜視模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法の流れを示すフロー図。
図3】二次電池の製造工程における電池温度の時間変化を表す図、(a)本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法の場合、(b)従来の二次電池の製造方法の場合。
図4】二次電池における放置時間と自己放電量の関係を表す図、(a)プレエージング後に高温エージングを実施した場合、(b)高温エージングのみを実施した場合。
図5】良品たる二次電池を製造するためのエージング時間およびエージング温度の条件を表す図、(a)本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法の場合、(b)従来の二次電池の製造方法の場合。
図6】プレエージング工程の条件と二次電池の不良率との関係を示す図、(a)プレエージング時間と不良率との関係を示す図、(b)プレエージング温度と不良率との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法により製造する二次電池の全体構成について、図1を用いて説明をする。
【0018】
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法により製造する二次電池1は巻回型非水電解質二次電池であり、一面(上面)が開口した有底角筒形状のケース本体21と、平板状に形成されケース本体21の開口部を閉塞する蓋体22とで構成される電池ケース2に、電解液とともに電極体3を収容して構成されている。
【0019】
電池ケース2は、一面(上面)が開口した直方体状の有底角筒形状に形成されるケース本体21の開口部を、平板状の蓋体22にて閉塞した角型ケースに構成されている。
蓋体22の長手方向一端部(図1における左端部)には正極端子4aが設けられ、蓋体22の長手方向他端部(図1における右端部)には負極端子4bが設けられている。
【0020】
電極体3は、正極シート31、負極シート32、およびセパレータ33を、正極シート31と負極シート32との間にセパレータ33が介在するように積層し、積層した正極シート31、負極シート32、およびセパレータ33を巻回して断面が略楕円状となるように扁平させることにより構成されている。
【0021】
電池ケース2に電極体3および電解液を収容して二次電池1を構成する際には、まず電極体3の正極シート31および負極シート32に、それぞれ蓋体22の正極端子4aおよび負極端子4bを接続して、電極体3を蓋体22に組み付けて、蓋体サブアッシーを形成する。
その後、電極体3および電解液をケース本体21内に収容するとともに、ケース本体21の開口部に蓋体22を嵌合して、蓋体22とケース本体21とを溶接により密封することにより、二次電池1を構成する。
【0022】
正極シート31は、正極活物質、導電材、および結着材等の電極材料を溶媒とともに混練して得られたペースト状の正極合材を、箔状に形成される集電体の表面(片面又は両面)に塗布するとともに乾燥・加圧して構成されている。
【0023】
同様に、負極シート32は、負極活物質や増粘剤や結着材等の電極材料を混練して得られたペースト状の負極合材を、箔状に形成される集電体の表面(片面又は両面)に塗布するとともに乾燥・加圧して構成されている。
セパレータ33は、例えば多孔質ポリオレフィン系樹脂等で構成されるシート状部材であり、正極シート31と負極シート32との間に配置される。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法について、図2および図3を用いて説明をする。
本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、組み立てが完了した二次電池1に対して、初充電を行う時点から、その二次電池1に対する微小短絡の有無の検査を行う時点までの間における一連の工程に関するものである。
このため、二次電池1の組み立てが完了するまでの各工程においては、種々の製造方法を採用しうるものである。
【0025】
本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法は、図2に示すように、初充電工程(STEP−1)、プレエージング工程(STEP−2)、高温エージング工程(STEP−3)、低温エージング工程(STEP−4)、微小短絡検出工程(STEP−5)、の各工程を備えている。
【0026】
本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、まず始めに、初充電工程(STEP−1)を実施する。
初充電工程(STEP−1)は、組み立てが完了した(電解液が注入され、封口された)状態の二次電池1に対して、初充電を行う工程である。
【0027】
本実施形態において、図3(a)に示すように、初充電を行うときの二次電池1の温度t0は室温(20〜25℃)程度としており、温度t0を維持しつつ、例えば、二次電池のSOCが100%に到達するまで、充放電手段(図示せず)によって、所定の充電条件の下、初充電を行う。
また、本実施形態において、初充電工程(STEP−1)を行う所定の時間は、時間J1としている。
尚以下では、初充電工程(STEP−1)における温度t0を初充電温度t0とも呼び、初充電工程(STEP−1)の時間J1を、初充電時間J1とも呼ぶ。
【0028】
図2に示す如く、本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、次に、プレエージング工程(STEP−2)を実施する。
初充電工程(STEP−1)を経た二次電池1では、その内部において、局所的に高電位となっている部位が生じている。
プレエージング工程(STEP−2)は、二次電池1に対して高温エージング工程(STEP−3)を実施する前に、二次電池1内部の各部におけるリチウムイオンの拡散を促進し電位を均一化して、局所的な高電位を解消するために実施するものである。
【0029】
本実施形態において、図3(a)に示すように、プレエージング工程(STEP−2)における二次電池1の温度t1は、リチウムイオンの拡散を促進できる温度である40〜60℃の温度としており、二次電池1を温度t1まで昇温した状態で、所定の時間放置するようにしている。
尚以下では、プレエージング工程(STEP−2)における二次電池1の温度t1を、プレエージング温度t1とも呼ぶ。
【0030】
また、本実施形態において、プレエージング工程(STEP−2)における二次電池1の温度t1は、後述する高温エージング工程(STEP−3)を行うときにおける二次電池1の温度t2以下の温度を採用する(即ち、温度t1≦温度t2)ようにしている。
【0031】
さらに、本実施形態において、プレエージング工程(STEP−2)を行う所定の時間を時間J2と規定しており、時間J2は、5時間以上かつ25時間以下の間の時間を採用するようにしている。
尚以下では、プレエージング工程(STEP−2)の時間J2を、プレエージング時間J2とも呼ぶ。
【0032】
本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、次に、高温エージング工程(STEP−3)を実施する。
プレエージング工程(STEP−2)を経た二次電池1では、その内部における局所的な高電位が解消されている。
本実施形態においては、高温エージング工程(STEP−3)における二次電池1の温度t2は、85℃以下であって、かつ、プレエージング温度t1以上の温度としており、二次電池1を温度t2まで昇温した状態で、所定の時間放置するようにしている。
さらに、本実施形態において、高温エージング工程(STEP−3)を行う所定の時間を時間J3と規定している。
尚以下では、高温エージング工程(STEP−3)における二次電池1の温度t2を、高温エージング温度t2とも呼び、高温エージング工程(STEP−3)の時間J3を、高温エージング時間J3とも呼ぶ。
【0033】
尚、高温エージング時間J3は、所定の第一の時間に対応するものであり、また、プレエージング時間J2は、所定の第二の時間に対応するものである。
【0034】
本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、次に、低温エージング工程(STEP−4)を実施する。
低温エージング工程(STEP−4)では、二次電池1の温度を、自己放電に起因する電圧降下量に比して内部短絡に起因する電圧降下量が大きくなる温度まで二次電池1の温度を低下させて、所定の時間放置するようにしている。
そして、本実施形態において、低温エージング工程(STEP−4)における二次電池1の温度は、初充電時の温度t0と同様の室温(20〜25℃)程度としている。
さらに、本実施形態において、低温エージング工程(STEP−4)を行う所定の時間を時間J4と規定している。
尚以下では、低温エージング工程(STEP−4)の時間J4を、低温エージング時間J4とも呼ぶ。
【0035】
そして、低温エージング工程(STEP−4)の開始時における二次電池1の電圧V1と、低温エージング時間J4が経過した後の二次電池1の電圧V2を測定し、電圧V1と電圧V2の差から電圧降下量ΔV(ΔV=V1−V2)を算出するようにしている。
【0036】
本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、次に、微小短絡検出工程(STEP−5)を実施する。
微小短絡検出工程(STEP−5)では、低温エージング工程(STEP−4)の間に求めておいた電圧降下量ΔVを、所定の閾値と比較することによって、二次電池1における微小短絡の有無を検出する構成としている。
【0037】
次に、プレエージングを行った場合の効果について、図4を用いて説明をする。
尚、図4(a)(b)に示す測定結果は、高温エージング温度t2を75℃〜85℃とし、また、プレエージング温度t1を室温〜60℃とする条件の下、測定を行ったものである。
尚、ここで言う「室温」とは、20〜25℃の温度を指している。
【0038】
図4(b)には、プレエージング工程(STEP−2)を行わず、高温エージング工程(STEP−3)のみを行った場合の二次電池1における自己放電量の測定結果を示している。
図4(b)によると、高温エージング工程(STEP−3)のみを実施した場合には、異常値を示す二次電池1(図4(b)中の「NG」と示したもの)が多数生じていることが判る。
【0039】
これは、高温エージング工程(STEP−3)により、二次電池1がその耐熱温度以上の温度まで昇温されたことによって、正極合材の溶出が起き、電池性能の劣化が生じたためであると考えられる。
このような正極合材の溶出は、二次電池1のサイクル特性を悪化させるものである。
【0040】
正極合材の溶出が生じる条件は、二次電池1の内部に、局所的な高電位の部位が存在し、かつ、その高電位の部位が高温になることであり、これらの条件が揃ったときに正極合材の溶出が起きることが判っている。
即ち、二次電池1では、高温であっても、その部位が高電位でなければ、正極合材の溶出が起きることがない。
【0041】
一方、図4(a)には、プレエージング工程(STEP−2)を行った後に、高温エージング工程(STEP−3)を行った場合の二次電池における自己放電量の測定結果を示している。
図4(a)によると、高温エージング工程(STEP−3)を行う前にプレエージング工程(STEP−2)を実施した場合には、異常値を示す二次電池1が生じていない(図4(a)中の「OK」と示したもののみである)ことが判る。
これは、プレエージング工程(STEP−2)を行うことによって、二次電池1の内部における局所的な高電位が解消され、二次電池1の温度が高温になっても、正極合材の溶出が起きなかったものと考えられる。
また、このようにして正極合材の溶出を防止することによって、二次電池1のサイクル特性が向上する。
【0042】
即ち、図4(a)(b)によれば、二次電池1に対して、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を行うことにより、二次電池1に高温エージング工程(STEP−3)を施しても、二次電池1の性能の劣化が生じないことが判った。
また、図4(a)(b)に示す測定結果から、二次電池1に対して、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を行うことにより、高温エージング温度t2を従来に比して高温化することが可能であることが判った。
【0043】
さらに、プレエージング工程(STEP−2)を実施する場合の効果について、図5を用いて説明をする。
図5(b)には、プレエージング工程(STEP−2)を行わずに、高温エージング工程(STEP−3)のみを行った場合における、良品の(即ち、性能要件を満たした)二次電池1を得るためのエージング条件(エージング時間およびエージング温度)を示している。
【0044】
従来のように、二次電池1に対して高温エージング工程(STEP−3)のみを実施する場合には、正極合材の溶出を回避する必要がある(図4(b)参照)ため、高温エージング温度t2を60℃以下に制限する必要があった。
このため、図5(b)によれば、二次電池1に対して高温エージング工程(STEP−3)のみを実施した場合において、性能要件を満足する(即ち、図5(b)中に示す斜線部に該当する)二次電池1を得るためには、高温エージング時間J3を、T2以上とする必要があり、多大となっていることが判る。
【0045】
一方、図5(a)には、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を実施した場合における、良品の(即ち、性能要件を満たした)二次電池1を得るためのエージング条件(エージング時間およびエージング温度)を示している。
【0046】
高温エージング工程(STEP−3)を行う前にプレエージング工程(STEP−2)を実施した場合には、高温エージング温度t2を高くしても正極合材の溶出が起きない(図4(a)参照)ため、高温エージング温度t2を60℃以下に制限する必要がなく、例えば、高温エージング温度t2を80℃程度にすることができる。
但し、二次電池1の温度が85℃より高温になる場合、二次電池1に不良の発生するおそれがあるため、高温エージング温度t2は、85℃以下に制限する必要がある。
【0047】
そして、図5(a)に示す如く、例えば、高温エージング温度t2を80℃として高温エージング工程(STEP−3)を行い、プレエージング工程(STEP−2)を実施した場合には、性能要件を満足する(即ち、図5(a)中に示す斜線部に該当する)二次電池1を得るための高温エージング時間J3は、T1以上(T1<T2)でよいことが判る。
【0048】
即ち、図5(a)(b)から、高温エージング工程(STEP−3)を行う前にプレエージング工程(STEP−2)を実施すれば、高温エージング温度t2を60℃以上(但し、85℃以下)に高めることが可能であり、これにより、高温エージング時間J3の短縮が可能になることが判る。
【0049】
次に、プレエージング工程(STEP−2)におけるエージング条件について、図6を用いて説明をする。
尚、図6(a)に示す測定結果は、高温エージング温度t2を85℃とし、また、プレエージング温度t1を60℃とする条件の下、測定を行ったものである。
また、図6(b)に示す測定結果は、高温エージング温度t2を85℃とし、また、プレエージング時間J2を10時間とする条件の下、測定を行ったものである。
【0050】
図6(a)には、プレエージング時間J2と二次電池1の不良率との関係を示している。
図6(a)によれば、プレエージング温度t1が一定であれば、プレエージング時間J2を長くするほど、二次電池1の不良率が低下する傾向が把握できる。
そして、プレエージング時間J2を5時間以上とすれば、二次電池1の不良率を20%以下にまで低減させることができ、さらに、プレエージング時間J2を10時間以上とすれば、二次電池1の不良率をほぼ0%とすることが可能であることが判った。
【0051】
また、図6(b)には、プレエージング温度t1と二次電池1の不良率との関係を示している。
図6(b)によれば、プレエージング時間J2が一定であれば、プレエージング温度t1を高くするほど、二次電池の不良率が低下する傾向が把握できる。
そして、プレエージング温度t1を40℃以上とすれば、二次電池1の不良率を30%以下にまで低減させることができ、さらに、プレエージング温度t1を50℃以上とすれば、二次電池1の不良率をほぼ0%とすることが可能であることが判った。
【0052】
そして、図6(a)(b)により、本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、高温エージング温度t2の高温化および高温エージング時間J3の短縮を図るために、プレエージング時間J2を5時間以上、かつ、25時間以下として、プレエージング温度t1を40℃以上、かつ、60℃以下とするのが最適な条件であると判断した。
【0053】
プレエージング工程(STEP−2)の導入効果について、図3および図5を用いて説明をする。
図5(b)によれば、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を行わない場合、高温エージング時間J3は、150時間以上を要していた。
【0054】
一方、図5(a)によれば、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を行った場合、例えば、高温エージング温度t2を85℃と高温化して、高温エージング時間J3を20時間に短縮化できることが判る。
【0055】
そして、高温エージング工程(STEP−3)の前にプレエージング工程(STEP−2)を実施する場合において、プレエージング時間J2を、最適条件における最大値である25時間程度としても、プレエージングと高温エージングを合わせて、初充電後45時間程度で高温エージング工程(STEP−3)まで完了することが可能になることが判る。
【0056】
また、プレエージング工程(STEP−2)を実施すると、二次電池1の内部における局所的な高電位を解消することができるため、低温エージング工程(STEP−4)における電池電圧をより安定化させることができる。
これにより、低温エージング時間J4の短縮を図ることができるとともに、低温エージング工程(STEP−4)における各電圧V1およびV2の測定精度も向上させることができる。
【0057】
このため、図3(a)(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法を採用すれば、従来に比して、エージング処理に要する時間の短縮を図ることができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法によれば、二次電池1の劣化を抑制しつつ、高温エージング温度t2の高温化を可能にして、エージング時間(即ち、プレエージング時間J2と高温エージング時間J3の合計)の短縮を実現することができる。
【0058】
即ち、本発明の一実施形態に係る二次電池1の製造方法は、二次電池1に対して初充電を行う初充電工程(STEP−1)と、初充電工程(STEP−1)の後に、二次電池1を所定の高温である第一の温度たる高温エージング温度t2に維持しつつ、所定の第一の時間(高温エージング時間J3)の間放置する高温エージング工程(STEP−3)と、を備えるものであって、初充電工程(STEP−1)の後で、かつ、高温エージング工程(STEP−3)の前に、高温エージング温度t2に比して低い第二の温度たるプレエージング温度t1を、40℃以上かつ60℃以下として、所定の第二の時間(プレエージング時間J2)の間放置するプレエージング工程(STEP−2)を備えるものである。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法においては、第二の時間たるプレエージング時間J2を、5時間以上かつ25時間以下とし、また、第一の温度たる高温エージング温度t2を、85℃以下とするものである。
【0060】
このような条件でプレエージング工程(STEP−2)を行うことにより、初充電後の二次電池1の内部における局所的な高電位を緩和することができる。
これにより、高温エージング工程(STEP−3)時における二次電池1の劣化(正極合材の溶出)を抑制し、高温エージング温度t2の高温化を図ることができ、ひいては、エージング時間(即ち、プレエージング時間J2と高温エージング時間J3の合計)の短縮を図ることができる。
【0061】
また、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、さらに、高温エージング工程(STEP−3)の後に、二次電池1を高温エージング温度t2に比して低い所定の低温(本実施形態では、温度t0)で、所定の低温エージング時間J4の間放置する低温エージング工程(STEP−4)と、低温エージング工程(STEP−4)の間における二次電池1の電圧降下量ΔVを測定し、電圧降下量ΔVを所定の閾値と比較して微小短絡の有無を検出する微小短絡検出工程(STEP−5)を備えるものである。
【0062】
このような構成により、二次電池1の電池電圧が安定した状態で電圧降下量ΔVを測定することができる。
これにより、短時間で精度よく微小短絡の有無を検出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 二次電池
図1
図2
図3
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図5
図6