(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058986
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】差圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/02 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
G01L13/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-260919(P2012-260919)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-106184(P2014-106184A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 達夫
(72)【発明者】
【氏名】石倉 義之
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−039653(JP,U)
【文献】
特開昭52−014470(JP,A)
【文献】
実開平02−097643(JP,U)
【文献】
特表2007−524084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 13/02
G01L 15/00
G01L 19/06,19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムの一方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの一方の面へ第1の流体圧力を導く第1の導圧孔を有する第1の保持部材と、前記センサダイアフラムの他方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの他方の面へ第2の流体圧力を導く第2の導圧孔を有する第2の保持部材とを少なくとも備えたセンサチップと、
前記センサチップを収容するセンサ室と、前記センサ室の第1の内壁面まで前記第1の流体圧力を導く第1の導圧路と、前記センサ室の前記第1の内壁面と対向する第2の内壁面まで前記第2の流体圧力を導く第2の導圧路とを有するセンサハウジングとを備えた差圧センサにおいて、
前記センサチップの一方の面に接合され前記第1の導圧孔に連通する第1の連通孔を有する第1の接続部材と、
前記センサチップの他方の面に接合され前記第2の導圧孔に連通する第2の連通孔を有する第2の接続部材と、
前記第1の接続部材の第1の連通孔にその一端が挿入固定され、前記センサハウジングの第1の導圧路にその他端が挿入固定された第1の導圧管と、
前記第2の接続部材の第2の連通孔にその一端が挿入固定され、前記センサハウジングの第2の導圧路にその他端が挿入固定された第2の導圧管とを備え、
前記第1の導圧管の管路を封入室の一部として、前記第1の流体圧力を前記センサダイアフラムの一方の面に導く第1の圧力伝達媒体が封入され、
前記第2の導圧管の管路を封入室の一部として、前記第2の流体圧力を前記センサダイアフラムの他方の面に導く第2の圧力伝達媒体が封入されており、
前記センサハウジングは、
前記センサ室の第1の内壁面を提供する第1の壁面部材と、
前記センサ室の第2の内壁面を提供する第2の壁面部材とを備え、
前記第1および第2の壁面部材は、
前記第1および第2の圧力伝達媒体が膨張もしくは収縮してその媒体の容積が変化した場合に、その媒体の容積変化による応力の発生を緩和する方向に変位する
ことを特徴とする差圧センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された差圧センサにおいて、
前記第1の接続部材は、
前記センサチップの一方の面との間に前記第1の連通孔につながる間口の広い第1の空間を有し、
前記第2の接続部材は、
前記センサチップの他方の面との間に前記第2の連通孔につながる間口の広い第2の空間を有する
ことを特徴とする差圧センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された差圧センサにおいて、
前記第1の流体圧力を受圧して前記第1の圧力伝達媒体に伝える第1の受圧ダイアフラムと、
前記第2の流体圧力を受圧して前記第2の圧力伝達媒体に伝える第2の受圧ダイアフラムとを備え、
前記第1および第2の受圧ダイアフラムは、
前記センサハウジングの外周面に設けられている
ことを特徴とする差圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを用いた差圧センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業用の差圧センサとして、圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを用いた差圧センサが用いられている。この差圧センサは、高圧側および低圧側の受圧ダイアフラムに加えられる各測定圧を、圧力伝達媒体としての封入液によってセンサダイアフラムの一方の面および他方の面に導き、そのセンサダイアフラムの歪みを例えば歪抵抗ゲージの抵抗値変化として検出し、この抵抗値変化を電気信号に変換して取り出すように構成されている。
【0003】
このような差圧センサは、例えば石油精製プラントにおける高温反応塔等の被測定流体を貯蔵する密閉タンク内の上下2位置の差圧を検出することにより、液面高さを測定するときなどに用いられる。
【0004】
図3に従来の差圧センサの概略構成を示す。この差圧センサ100は、センサダイアフラム(図示せず)を有するセンサチップ1をメータボディ2に組み込んで構成される。センサチップ1におけるセンサダイアフラムは、シリコンやガラス等からなり、薄板状に形成されたダイアフラムの表面に歪抵抗ゲージが形成されている。メータボディ2は、金属製の本体部3とセンサ部4とからなり、本体部3の側面に一対の受圧部をなすバリアダイアフラム(受圧ダイアフラム)5a,5bが設けられ、センサ部4のセンサ室4a内にセンサチップ1が設けられている。
【0005】
メータボディ2において、センサ室4a内に設けられたセンサチップ1と本体部3に設けられたバリアダイアフラム5a,5bとの間は、大径のセンタダイアフラム6により隔離された圧力緩衝室7a,7bを介してそれぞれ連通され、センサチップ1とバリアダイアフラム5a,5bとを結ぶ連通路8a,8bにシリコーンオイル等の圧力伝達媒体9a,9bが封入されている。
【0006】
なお、シリコーンオイル等の圧力媒体が必要となるのは、センサダイアフラムに対する計測媒体中の異物付着を防ぐこと、センサダイアフラムを腐食させないため、耐食性を持つ受圧ダイアフラムと応力(圧力)感度を持つセンサダイアフラムとを分離する必要があるためである。
【0007】
この差圧センサ100では、
図4(a)に定常状態時の動作態様を模式的に示すように、プロセスからの測定圧P1がバリアダイアフラム5aに印加され、プロセスからの測定圧P2がバリアダイアフラム5bに印加される。これにより、バリアダイアフラム5a,5bが変位し、その加えられた圧力P1,P2がセンタダイアフラム6により隔離された圧力緩衝室7a,7bを介し、圧力伝達媒体9a,9bを通して、センサチップ1のセンサダイアフラムの一方の面および他方の面にそれぞれ導かれる。この結果、センサチップ1のセンサダイアフラムは、その導かれた圧力P1,P2の差圧ΔPに相当する変位を呈することになる。
【0008】
これに対して、例えば、バリアダイアフラム5bに過大圧Poverが加わると、
図4(b)に示すようにバリアダイアフラム5bが大きく変位し、これに伴ってセンタダイアフラム6が過大圧Poverを吸収するように変位する。そして、バリアダイアフラム5bがメータボディ2の凹部10bの底面(過大圧保護面)に着底し、その変位が規制されると、バリアダイアフラム5bを介するセンサダイアフラムへのそれ以上の差圧ΔPの伝達が阻止される。バリアダイアフラム5aに過大圧Poverが加わった場合も、バリアダイアフラム5bに過大圧Poverが加わった場合と同様にして、バリアダイアフラム5aがメータボディ2の凹部10aの底面(過大圧保護面)に着底し、その変位が規制されると、バリアダイアフラム5aを介するセンサダイアフラムへのそれ以上の差圧ΔPの伝達が阻止される。この結果、過大圧Poverの印加によるセンサチップ1の破損、すなわちセンサチップ1におけるセンサダイアフラムの破損が未然に防止される。
【0009】
この差圧センサ100では、メータボディ2にセンサチップ1を内包させているので、プロセス流体など外部腐食環境からセンサチップ1を保護することができる。しかしながら、センタダイアフラム6やバリアダイアフラム5a,5bの変位を規制するための凹部10a,10bを備え、これらによってセンサチップ1を過大圧Poverから保護する構造をとっているので、その形状が大型化することが避けられない。
【0010】
そこで、センサチップに第1のストッパ部材および第2のストッパ部材を設け、この第1のストッパ部材および第2のストッパ部材の凹部をセンサダイアフラムの一方の面および他方の面に対峙させることによって、過大圧が印加された時のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止し、これによってセンサダイアフラムの破損・破壊を防止する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
図5に特許文献1に示された構造を採用したセンサチップの概略を示す。同図において、11−1はセンサダイアフラム、11−2および11−3はセンサダイアフラム11−1を挟んで接合された第1および第2のストッパ部材、11−4および11−5はストッパ部材11−2および11−3に接合された台座である。ストッパ部材11−2,11−3や台座11−4,11−5はシリコンやガラスなどにより構成されている。
【0012】
このセンサチップ11において、ストッパ部材11−2,11−3には凹部11−2a,11−3aが形成されており、ストッパ部材11−2の凹部11−2aをセンサダイアフラム11−1の一方の面に対峙させ、ストッパ部材11−3の凹部11−3aをセンサダイアフラム11−1の他方の面に対峙させている。凹部11−2a,11−3aは、センサダイアフラム11−1の変位に沿った曲面(非球面)とされており、その頂部に圧力導入孔(導圧孔)11−2b,11−3bが形成されている。また、台座11−4,11−5にも、ストッパ部材11−2,11−3の導圧孔11−2b,11−3bに対応する位置に、圧力導入孔(導圧孔)11−4a,11−5aが形成されている。
【0013】
このようなセンサチップ11を用いると、センサダイアフラム11−1の一方の面に過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−3の凹部11−3aの曲面によって受け止められる。また、センサダイアフラム11−1の他方の面に過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−2の凹部11−2aの曲面によって受け止められる。
【0014】
これにより、センサダイアフラム11−1に過大圧が印加された時の過度な変位が阻止され、過大圧の印加によるセンサダイアフラム11−1の不本意な破壊を効果的に防ぎ、その過大圧保護動作圧力(耐圧)を高めることが可能となる。また、
図3に示された構造において、センタダイアフラム6や圧力緩衝室7a,7bをなくし、バリアダイアフラム5a,5bからセンサダイアフラム11−1に対して直接的に測定圧P1,P2を導くようにして、メータボディ2の小型化を図ることが可能となる。
【0015】
このメータボディ2の小型化を図った構造において、センサチップ11は、
図8に示すように、センサ室4aに収容され、そのセンサ室4aの底面(壁面)4bに台座11−5を接合することによって固定される。この場合、測定圧P1,P2を受けて、その測定圧P1,P2の差圧ΔPに応じてセンサダイアフラム11−1が低圧側に撓む。この撓みは、センサチップ11のセンサ室4aの壁面4bとの接合部に向かうことが望ましい。逆の方向に撓みが生じる場合には、センサ室4aの壁面4bとの接合部からセンサチップ11を剥離する場合が生じる。センサ室4aの壁面4bとの接合部外周から形成される面積Sと測定圧P1との積(S・P1)に応じた力F1で接合部は押し付けられる。一方、センサ室4aの壁面4bとの接合部に内包され、かつ、測定圧P2に連結された未接合面積Xと測定圧P2との積(X・P2)に応じた力F2で接合部は引き離される。接合部が単独で接合を維持する力F3とF1の合計が、F2により常に大きくなければ、接合は剥離される。面積Sは面積Xよりその定義上大きく、P1がP2より大きければ、接合部は剥離されることが無い。またセンサチップ11内のセンサダイアフラム11−1とストッパ部材11−3との接合部等でも同様な関係となる。このため、通常、圧力P1を受ける側を高圧側、圧力P2を受ける側を低圧側として定めて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−69736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このようなセンサチップ11の構造において、圧力P1と圧力P2との高低関係が逆転しうるような場合や、圧力P1と圧力P2との高低関係は逆転しないが、差圧センサを現場に設置する際に作業者が誤って、圧力P1側を低圧側、圧力P2側を高圧側として選択してしまうこともあり、高圧側・低圧側を定めただけでは、センサチップ11の接合部(センサチップ11のセンサ室4aの壁面4bとの接合部、センサチップ11内の多層構造の接合部)の剥離を防止することができない。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、センサチップの接合部の剥離を防止することが可能な差圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するために、本発明は、一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムと、センサダイアフラムの一方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの一方の面へ第1の流体圧力を導く第1の導圧孔を有する第1の保持部材と、センサダイアフラムの他方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの他方の面へ第2の流体圧力を導く第2の導圧孔を有する第2の保持部材とを少なくとも備えたセンサチップと、センサチップを収容するセンサ室と、センサ室の第1の内壁面まで第1の流体圧力を導く第1の導圧路と、センサ室の第1の内壁面と対向する第2の内壁面まで第2の流体圧力を導く第2の導圧路とを有するセンサハウジングとを備えた差圧センサにおいて、センサチップの一方の面に接合され第1の導圧孔に連通する第1の連通孔を有する第1の接続部材(第1のセンサベース)と、センサチップの他方の面に接合され第2の導圧孔に連通する第2の連通孔を有する第2の接続部材(第2のセンサベース)と、第1の接続部材の第1の連通孔にその一端が挿入固定され、センサハウジングの第1の導圧路にその他端が挿入固定された第1の導圧管と、第2の接続部材の第2の連通孔にその一端が挿入固定され、センサハウジングの第2の導圧路にその他端が挿入固定された第2の導圧管とを備え、第1の導圧管の管路を封入室の一部として、第1の流体圧力をセンサダイアフラムの一方の面に導く第1の圧力伝達媒体が封入され、第2の導圧管の管路を封入室の一部として、第2の流体圧力をセンサダイアフラムの他方の面に導く第2の圧力伝達媒体が封入されており、センサハウジングは、センサ室の第1の内壁面を提供する第1の壁面部材と、センサ室の第2の内壁面を提供する第2の壁面部材とを備え、第1および第2の壁面部材は、
第1および第2の圧力伝達媒体が膨張もしくは収縮してその媒体の容積が変化した場合に、その媒体の容積変化による応力の発生を緩和する方向に変位することを特徴とする。
【0020】
本発明において、センサチップは、第1の接続部材と第2の接続部材との間に挟まれ、第1の接続部材の第1の連通孔にその一端が挿入固定された第1の導圧管を通して第1の流体圧力を受け、第2の接続部材の第2の連通孔にその一端が挿入固定された第2の導圧管を通して第2の流体圧力を受ける。すなわち、第1の導圧管の管路を封入室の一部として封入された第1の圧力伝達媒体がセンサダイアフラムの一方の面に第1の流体圧力を伝え、第2の導圧管の管路を封入室の一部として封入された第2の圧力伝達媒体がセンサダイアフラムの他方の面に第2の流体圧力を伝える。
【0021】
この場合、第1の導圧管の他端はセンサハウジングの第1の導圧路に挿入固定され、第2の導圧管の他端はセンサハウジングの第2の導圧路に挿入固定されているので、第1の流体圧力と第2の流体圧力との圧力の高低関係がどうであれ、大きな差圧が生じた場合でも、その差圧による押圧力により、センサチップはセンサ室の第1の内壁面側に、又は第2の内壁面側に押し付けられる。これにより、第1の流体圧力と第2の流体圧力との圧力の高低関係が逆転しても、センサチップがセンサ室の内壁面側に必ず押し付けられるものとなり、センサチップの接合部に加わる圧力が緩和され、センサチップの接合部の剥離が避けられる。
【0022】
また、本発明において、
センサハウジングは、センサ室の第1の内壁面を提供する第1の壁面部材(第1のバリアベース)と、センサ室の第2の内壁面を提供する第2の壁面部材(第2のバリアベース)とを備え、第1および第2の壁面部材は、第1および第2の圧力伝達媒体が膨張もしくは収縮してその媒体の容積が変化した場合に、その媒体の容積変化による応力の発生を緩和する方向に変位する。例えば、外部の熱がセンサハウジングを介して第1の圧力伝達媒体や第2の圧力伝達媒体へ伝導してきたような場合、この第1の圧力伝達媒体や第2の圧力伝達媒体の膨張収縮による容積変化を第1の壁面部材や第2の壁面部材の自身の変位により吸収する。これにより、センサチップの接合面へのせん断方向や引っ張り方向の熱応力を緩和させ、高圧時だけではなく、周囲温度が変化したような場合でも、センサチップの接合部の剥離を避けることが可能となる。
【0023】
また、本発明において、
第1の接続部材は、センサチップの一方の面との間に第1の連通孔につながる間口の広い第1の空間を有するものとし、第2の接続部材は、センサチップの他方の面との間に第2の連通孔につながる間口の広い第2の空間を有するものとすれば、センサチップは、第1の接続部材の第1の空間内の第1の圧力伝達媒体と第2の接続部材の第2の空間内の第2の圧力伝達媒体により両側から圧縮方向への力を受けるため、センサチップの接合部の剥離が押さえ込まれ、耐圧性をさらに向上させることが可能となる。
【0024】
また、本発明において、センサハウジングの外周面に、第1の流体圧力を受圧して第1の圧力伝達媒体に伝える第1の受圧ダイアフラム(第1のバリアダイアフラム)と、第2の流体圧力を受圧して第2の圧力伝達媒体に伝える第2の受圧ダイアフラム(第2のバリアダイアフラム)とを設けるようにすれば、第1および第2の流体圧力の受圧部とセンサハウジングとの一体化を図り、差圧センサの小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、センサチップの一方の面に第1の接続部材を接合し、センサチップの他方の面に第2の接続部材を接合し、第1の接続部材の第1の連通孔にその一端を挿入固定した第1の導圧管の他端をセンサハウジングの第1の導圧路に挿入固定し、第2の接続部材の第2の連通孔にその一端を挿入固定した第2の導圧管の他端をセンサハウジングの第2の導圧路に挿入固定し、第1の導圧管の管路を封入室の一部として第1の流体圧力をセンサダイアフラムの一方の面に導く第1の圧力伝達媒体を封入し、第2の導圧管の管路を封入室の一部として第2の流体圧力をセンサダイアフラムの他方の面に導く第2の圧力伝達媒体を封入するようにしたので、第1の流体圧力と第2の流体圧力との圧力の高低関係に拘わらず、センサチップがセンサ室の内壁面側に必ず押しつけられるようにして、センサチップの接合部に加わる圧力を緩和し、センサチップの接合部の剥離を防止することが可能となる。
また、本発明によれば、センサハウジングは、センサ室の第1の内壁面を提供する第1の壁面部材と、センサ室の第2の内壁面を提供する第2の壁面部材とを備え、第1および第2の壁面部材は、第1および第2の圧力伝達媒体が膨張もしくは収縮してその媒体の容積が変化した場合に、その媒体の容積変化による応力の発生を緩和する方向に変位するものとしたので、センサチップの接合面へのせん断方向や引っ張り方向の熱応力を緩和させ、高圧時だけではなく、周囲温度が変化したような場合でも、センサチップの接合部の剥離を避けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る差圧センサの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る差圧センサの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す断面図である。
【
図3】従来の差圧センサの概略構成を示す図である。
【
図4】この差圧センサの動作態様を模式的に示す図である。
【
図5】特許文献1に示された構造を採用したセンサチップの概略を示す図である。
【
図6】このセンサチップをメータボディのセンサ室の壁面に接合した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る差圧センサの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す断面図である。同図において、12はセンサハウジングであり、円筒状のリングボディ12−1と、円板状のバリアベース12−2,12−3とから構成されている。リングボディ12−1およびバリアベース12−2,12−3は例えばステンレス製とされている。
【0029】
バリアベース12−2はリングボディ12−1の一方の開口面に溶接接合され、バリアベース12−3はリングボディ12−1の他方の開口面に溶接接合され、リングボディ12−1の内周面12−1aとバリアベース12−2,12−3の内壁面12−2a,12−3aとによって囲まれた空間がセンサ室12aとされている。このバリアベース12−2および12−3が本発明でいう第1および第2の壁面部材に相当する。
【0030】
センサ室12aにはセンサチップ11が収容されている。センサ室12aにおいて、センサチップ11の一方の面(台座11−4の外面)にはセンサベース13−1が接合されており、センサチップ11の他方の面(台座11−5の外面)にはセンサベース13−2が接合されている。センサベース13−1は、台座11−4の導圧孔11−4aを通してストッパ部材11−2の導圧孔11−2bに連通する連通孔13−1aを有し、センサベース13−2は、台座11−5の導圧孔11−5aを通してストッパ部材11−3の導圧孔11−3bに連通する連通孔13−2aを有している。このセンサベース13−1および13−2が本発明でいう第1および第2の接続部材に相当する。
【0031】
また、センサ室12aにおいて、センサベース13−1の連通孔13−1aに導圧管14−1の一端が挿入固定(接着接合)され、この導圧管14−1の他端がバリアベース12−2に形成された導圧路12−2bに挿入固定(溶接接合)されている。また、センサベース13−2の連通孔13−2aに導圧管14−2の一端が挿入固定(接着接合)され、この導圧管14−2の他端がバリアベース12−3に形成された導圧路12−3bに挿入固定(溶接接合)されている。
【0032】
バリアベース12−2には導圧路12−2bにつながる凹部12−2cが形成されており、この凹部12−2cの前面に第1の受圧ダイアフラム(第1のバリアダイアフラム(金属ダイアフラム))15−1が設けられている。そして、この第1の受圧ダイアフラム15−1の背面側の空間、すなわちバリアベース12−2の凹部12−2cおよび導圧路12−2b、導圧管14−1の管路14−1a、台座11−4の導圧孔11−4a、ストッパ部材11−2の導圧孔11−2bおよび凹部11−2aを封入室として、第1の圧力伝達媒体16−1が封止されている。
【0033】
バリアベース12−3には導圧路12−3bにつながる凹部12−3cが形成されており、この凹部12−3cの前面に第2の受圧ダイアフラム(第2のバリアダイアフラム(金属ダイアフラム))15−2が設けられている。そして、この第2の受圧ダイアフラム15−2の背面側の空間、すなわちバリアベース12−3の凹部12−3cおよび導圧路12−3b、導圧管14−2の管路14−2a、台座11−5の導圧孔11−5a、ストッパ部材11−3の導圧孔11−3bおよび凹部11−3aを封入室として、第2の圧力伝達媒体16−2が封止されている。
【0034】
また、この差圧センサ200Aにおいて、バリアベース12−2の受圧ダイアフラム15−1の周囲の表裏面の対向する位置(リングボディ12−1の厚みと重なる位置)には、リング状の溝12−2d1,12−2d2が形成されている。また、バリアベース12−3にも、バリアベース12−2と同様に、その受圧ダイアフラム15−2の周囲の表裏面の対向する位置(リングボディ12−1の厚みと重なる位置)に、リング状の溝12−3d1,12−3d2が形成されている。
【0035】
なお、本実施の形態において、センサベース13−1,13−2はステンレス,ハステロイ(登録商標),チタンなどの鋼材とされ、導圧管14−1,14−2はステンレス鋼とされ、圧力伝達媒体16−1,16−2としては、シリコーンオイルなどの低圧縮性流体が用いられている。
【0036】
この差圧センサ200Aでは、受圧ダイアフラム15−1に加えられた流体圧力P1が圧力伝達媒体16−1を介して、バリアベース12−2の導圧路12−2b、導圧管14−1の管路14−1a、台座11−4の導圧孔11−4a、ストッパ部材11−2の導圧孔11−2bを通り、センサダイアフラム11−1の一方の面に印加される。また、受圧ダイアフラム15−2に加えられた流体圧力P2が圧力伝達媒体16−2を介して、バリアベース12−3の導圧路12−3b、導圧管14−2の管路14−2a、台座11−5の導圧孔11−5a、ストッパ部材11−3の導圧孔11−3bを通り、センサダイアフラム1−1の他方の面に印加される。
【0037】
この場合、センサダイアフラム11−1の一方の面に過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−3の凹部11−3aの曲面によって受け止められる。また、センサダイアフラム11−1の他方の面に過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−2の凹部11−2aの曲面によって受け止められる。
【0038】
この差圧センサ200Aにおいて、センサチップ11は、センサベース13−1と13−2との間に挟まれ、センサベース13−1の連通孔13−1aにその一端が挿入固定された導圧管14−1を通して流体圧力P1を受け、センサベース13−2の連通孔13−2aにその一端が挿入固定された導圧管14−2を通して流体圧力P2を受ける。すなわち、導圧管13−1の管路13−1aを封入室の一部として封入された圧力伝達媒体16−1がセンサダイアフラム11−1の一方の面に流体圧力P1を伝え、導圧管13−2の管路13−2aを封入室の一部として封入された圧力伝達媒体16−2がセンサダイアフラム11−1の他方の面に流体圧力P2を伝える。
【0039】
この場合、導圧管14−1の他端はセンサハウジング12を構成するバリアベース12−2の導圧路12−2bに挿入固定され、導圧管14−2の他端はセンサハウジング12を構成するバリアベース12−3の導圧路12−3bに挿入固定されているので、流体圧力P1と流体圧力P2との圧力の高低関係がどうであれ、大きな差圧が生じた場合でも、その差圧による押圧力により、センサチップ11はセンサ室12aの内壁面12−2a側に、又は内壁面12−3a側に押し付けられる。これにより、流体圧力P1と流体圧力P2との圧力の高低関係が逆転しても、センサチップ11がセンサ室12aの内壁面側に必ず押し付けられるものとなり、センサチップ11の接合部に加わる圧力が緩和され、センサチップ11の接合部の剥離が避けられる。
【0040】
また、この差圧センサ200Aでは、外部の熱がセンサハウジング12を介して圧力伝達媒体16−1や16−2伝導してきたような場合、この圧力伝達媒体16−1や16−2の膨張収縮による容積変化がバリアベース12−2や12−3の自身の変位により吸収される。
【0041】
すなわち、この差圧センサ200Aでは、バリアベース12−2の受圧ダイアフラム15−1の周囲の表裏面に対向する位置にリング状の溝12−2d1,12−2d2が形成されており、バリアベース12−3の受圧ダイアフラム15−2の周囲の表裏面に対向する位置にリング状の溝12−3d1,12−3d2が形成されている。これにより、圧力伝達媒体16−1や16−2が膨張もしくは収縮してその媒体の容積が変化した場合、バリアベース12−2や12−3が擬似的にダイアフラムとして働き、その媒体の容積変化による応力発生を緩和する方向に変位する。
【0042】
このようにして、この差圧センサ200Aでは、外部の熱がセンサハウジング12を介して圧力伝達媒体16−1や16−2伝導してきたような場合、この圧力伝達媒体16−1や16−2の膨張収縮による容積変化がバリアベース12−2や12−3の自身の変位により吸収されて、センサチップ11の接合面へのせん断方向や引っ張り方向の熱応力が緩和され、高圧時だけではなく、周囲温度が変化したような場合でも、センサチップ11の接合部の剥離が避けられるようになる。
【0043】
なお、この差圧センサ200Aにおいて、バリアベース12−2および12−3において、リング状の溝12−2d1,12−2d2および12−3d1,12−3d2は、圧力伝達媒体16−1,16−2の膨張収縮による容積変化に対してバリアベース12−2および12−3を擬似的にダイアフラムとして働かせるが、受圧ダイアフラム15−1および15−1が受圧する圧力が大きくてもほとんど変形させないような溝として設計されている。
【0044】
また、この差圧センサ200Aでは、センサハウジング12の外周面に受圧ダイアフラム15−1,15−2を設けるようにしているので、流体圧力P1,P2の受圧部とセンサハウジングとの一体化を図り、差圧センサの小型化を図ることができている。
【0045】
〔実施の形態2〕
図2にこの発明に係る差圧センサの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す。同図において、
図1と同一符号は
図1を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0046】
この差圧センサ200Bでは、センサベース13−1の片面を座ぐり面とし、センサチップ11の台座11−4との間に連通孔13−1aにつながる間口の広い空間13−1bを形成している。また、センサベース13−2の片面を座ぐり面とし、センサチップ11の台座11−5との間に連通孔13−2aにつながる間口の広い空間13−2bを形成している。他の構成は実施の形態1の差圧センサ200Aと同じである。
【0047】
この差圧センサ200Bにおいて、センサチップ11は、センサベース13−1の空間13−1b内の圧力伝達媒体16−1とセンサベース13−2の空間13−2b内の圧力伝達媒体16−2により両側から圧縮方向への力を受ける。このため、センサチップ11の接合部の剥離が押さえ込まれ、耐圧性がさらに向上するものとなる。
【0048】
なお、上述した実施の形態では、センサチップ11を台座11−4,11−5を有する構成としたが、ストッパ部材11−2,11−3の厚みを増して台座を兼ねさせるような構成としてもよい。
【0049】
また、上述した実施の形態では、バリアベース12−2,12−3にリング状の溝12−2d(12−2d1,12−2d2),12−3d(12−3d1,12−3d2)をを設けて、圧力伝達媒体16−1,16−2の膨張収縮による容積変化に対してバリアベース12−2,12−3を擬似的にダイアフラムとして働かせるようにしたが、他の方法でバリアベース12−2,12−3を擬似的にダイアフラムとして働かせるようにしてもよい。また、圧力伝達媒体16−1,16−2の膨張収縮が生じる虞がない環境で使用するものであれば、バリアベース12−2,12−3を擬似的にダイアフラムとして働かせるような構成をとらなくてもよい。
。
【0050】
また、上述した実施の形態では、センサダイアフラム11−1を圧力変化に応じて抵抗値が変化する歪抵抗ゲージを形成したタイプとしているが、静電容量式のセンサチップとしてもよい。静電容量式のセンサチップは、所定の空間(容量室)を備えた基板と、その基板の空間上に配置されたダイアフラムと、基板に形成された固定電極と、ダイアフラムに形成された可動電極とを備えている。ダイアフラムが圧力を受けて変形することで、可動電極と固定電極との間隔が変化してその間の静電容量が変化する。
【0051】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0052】
11…センサチップ、11−1…センサダイアフラム、11−2,11−3…ストッパ部材、11−2a,11−3a…凹部、11−2b,1−3b…圧力導入孔(導圧孔)、11−4,11−5…台座、11−4a,11−5a…圧力導入孔(導圧孔)、12…センサハウジング、12a…センサ室、12−1…リングボディ、12−1a…内周面、12−2,12−3…バリアベース、12−2a,12−3a…内壁面、12−2b,12−3b…導圧路、12−2c,12−3c…凹部、12−2d(12−2d1,12−2d2),12−3d(12−3d1,12−3d2)…リング状の溝、13−1,13−2…センサベース、13−1a,13−2a…連通孔、13−1b,13−2b…空間、14−1,14−2…導圧管、14−1a,14−2a…管路、15−1,15−2…受圧ダイアフラム、16−1,16−2…圧力伝達媒体、200A,200B…差圧センサ。