(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6059042
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】マンホール
(51)【国際特許分類】
F27D 1/18 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
F27D1/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-38313(P2013-38313)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-163660(P2014-163660A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康夫
【審査官】
静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−87343(JP,U)
【文献】
実開平2−93699(JP,U)
【文献】
実開昭54−033455(JP,U)
【文献】
特開2010−065949(JP,A)
【文献】
実開昭48−070244(JP,U)
【文献】
実開平05−000256(JP,U)
【文献】
特表2007−510121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔の外側開口を被覆する金属製のベース、及び、該ベースの片面側に設けられ貫通孔を閉塞する耐火物層を備えるマンホールであって、
筒状に形成され端部の一方が前記ベースに固着されていると共に、複数の小孔部が貫通して穿設された金属製の筒体と、
該筒体より内側で前記ベースから突設された、又は/及び、前記筒体の内周面から突設されたアンカーとを具備し、
前記耐火物層は、
前記筒体の内側に充填された不定形耐火物の層である第一耐火物層、及び、
前記筒体の外周面及び前記筒体の開端を被覆している不定形耐火物の層である第二耐火物層からなり、
前記第一耐火物層と前記第二耐火物層とは、複数の前記小孔部を介して一体化している
ことを特徴とするマンホール。
【請求項2】
前記筒体の外周面から突設された第二アンカーを、更に具備する
ことを特徴とする請求項1に記載のマンホール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔を耐火物層で閉塞するマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶解炉、溶融炉、製銑用炉、製鋼用炉など溶融金属を収容する炉には、側壁、底部、天井部などの炉体に貫通孔が形成されていると共に、貫通孔を耐火物層で閉塞するマンホールを備えているものがある。このマンホールは、炉の稼動停止時に炉内を点検する目的や、炉体を補修する際に、損傷した耐火物を搬出し新しい耐火物を搬入する等の目的で、設けられているものである。
【0003】
一般的なマンホールとして、
図4に示すように、炉体に形成された貫通孔の外側開口を被覆する金属製のベース10と、ベース10の片面側に設けられ貫通孔を閉塞する耐火物層30とを備えるマンホール100が、従前より使用されている。耐火物層30は不定形耐火物で形成されており、ベース10から突設されたアンカー41を埋設するように耐火物層30を設けることにより、ベース10による耐火物層30の保持力の強化が図られている。
【0004】
しかしながら、上記構成の従来のマンホール100では、アンカー41を設けたとしても、耐火物層30をベース10に保持させる力が不十分であった。そのため、マンホール100から耐火物層30の一部が脱落しやすいという問題があった。特に、炉の使用に伴い、高温の溶融金属から受ける熱衝撃や構造的スポーリング等に起因して、耐火物層30に亀裂が発生するため、この亀裂をもとに耐火物層30が脱落しやすいもものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、溶融金属を収容する炉の側壁、底部、天井部などの炉体に形成された貫通孔を耐火物層で閉塞するマンホールであって、耐火物層が脱落するおそれが低減されているマンホールの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるマンホールは、「溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔の外側開口を被覆する金属製のベース、及び、該ベースの片面側に設けられ貫通孔を閉塞する耐火物層を備えるマンホールであって、筒状に形成され端部の一方が前記ベースに固着されていると共に、複数の小孔部が貫通して穿設された金属製の筒体と、該筒体より内側で前記ベースから突設された、又は/及び、前記筒体の内周面から突設されたアンカーとを具備し、前記耐火物層は、前記筒体の内側に充填された不定形耐火物の層である第一耐火物層、及び、前記筒体の外周面及び前記筒体の開端を被覆している不定形耐火物の層である第二耐火物層からなり、前記第一耐火物層と前記第二耐火物層とは、複数の前記小孔部を介して一体化している」ものである。
【0007】
「ベース」は、円形、楕円形、四角形などの多角形の平板状とすることができる。また、「筒体」は、断面形状が円形、楕円形、四角形などの多角形の筒状とすることができる。更に、「小孔部」は円形や楕円形とすることができる。或いは、四角形や六角形等の多角形の小孔部とすることができ、多角形の角部は湾曲した形状とすることもできる。
【0008】
「アンカー」の形状は特に限定されないが、例えば、Y字状、V字状、L字状、Y字やL字の脚の部分にV字状の部分が取り付けられた形状とすることができる。また、「アンカー」は、「筒体より内側でベースから突設されたアンカー」及び「筒体の内周面から突設されたアンカー」のうち、何れか一方であっても双方であっても良い。
【0009】
「不定形耐火物」の種類は特に限定されず、例えば、アルミナ質、アルミナ−マグネシア質、アルミナ−クロム質、アルミナ−シリカ質等の不定形耐火物を使用することができる。また、「第一耐火物層」を形成する不定形耐火物と「第二耐火物層」を形成する不定形耐火物とは、同一材料であっても異なる材料であっても良いが、同一または近似した組成であれば、熱膨張率が同程度となるため望ましい。
【0010】
図4に示したような従来のマンホールでは、ベースの片面とアンカーの表面との接触のみによって、耐火物層がベースに保持されていた。これに対し、本構成のマンホールでは、筒体の表面積の分、耐火物層との接触面積が増加しており、この筒体はベースに固着されている。これにより、筒体に接触する耐火物層(第一耐火物層及び第二耐火物層)を、筒体を介してベースに保持させることができる。すなわち、本構成のマンホールでは、耐火物層をベースに保持させる作用を、アンカーに加えて筒体も発揮するため、耐火物層をベースに保持させる作用効果が高く、耐火物層が脱落するおそれが低減されている。
【0011】
また、筒体は金属製であるため、筒体が溶融金属と接触した場合は、溶解、変形、腐食、酸化などの損傷が生じ、耐火物層をベースに保持させる作用を発揮できなくなるおそれがある。これに対し、本構成のマンホールでは、筒体の内側に充填された不定形耐火物によって第一耐火物層が形成されていることに加え、筒体の外周面及び開端を被覆する不定形耐火物によって第二耐火物層が形成されている。これにより、金属製の筒体が溶融金属と接触することが抑制され、筒体の損傷が低減されている。すなわち、本構成のマンホールでは、筒体は耐火物層をベースに保持させる作用を高める役割を果たしている一方で、耐火物層によって保護されている。
【0012】
加えて、筒体の内側に囲い込まれるように保持されている第一耐火物層に比べて、筒体の外周面及び開端を被覆する第二耐火物層は、筒体による保持力が小さいところ、本構成のマンホールでは、筒体を貫通する小孔部が複数穿設されており、小孔部を介して第一耐火物層と第二耐火物層とは一体化している。これにより、筒体を介して第二耐火物層をベースに保持させる作用が、第一耐火物層によって高められており、第二耐火物層の脱落が抑制されている。
【0013】
本発明にかかるマンホールは、上記構成に加え、「前記筒体の外周面から突設された第二アンカーを」具備している。
【0014】
「第二アンカー」としては、上記で例示したアンカーと同様の構成のものを使用可能である。
【0015】
本構成のマンホールでは、筒体の外周面及び筒体の開端を被覆する第二耐火物層が筒体に保持される作用が、第二アンカーによって高められている。これにより、筒体を介して第二耐火物層をベースに保持させる作用がより高められ、第二耐火物層の脱落がより抑制されている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔を耐火物層で閉塞するマンホールであって、耐火物層が脱落するおそれが低減されているマンホールを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施形態のマンホールの縦断面図である。
【
図2】
図1のマンホールにおける筒体の斜視図である。
【
図3】第二実施形態のマンホールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。第一実施形態のマンホールは、
図1に示すように、溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔の外側開口を被覆する金属製のベース10、及び、ベース10の片面側に設けられ貫通孔を閉塞する耐火物層30を備えるマンホール1であって、筒状に形成され端部の一方がベース10に固着されていると共に、複数の小孔部22が貫通して穿設された金属製の筒体20と、筒体20より内側でベース10から突設されたアンカー41とを具備し、耐火物層30は、筒体20の内側に充填された不定形耐火物の層である第一耐火物層31、及び、筒体20の外周面及び筒体20の開端を被覆している不定形耐火物の層である第二耐火物層32からなり、第一耐火物層31と第二耐火物層32とは、複数の小孔部22を介して一体化しているものである。
【0019】
より詳細に説明すると、本実施形態では、マンホール1が取り付けられる炉の炉体に形成された貫通孔は円形孔であり、ベース10は貫通孔より大径の円板状である。また、耐火物層30は、筒体20を介在させた第一耐火物層31及び第二耐火物層32全体の形状として円柱状であり、その断面外径は炉の貫通孔の断面内径とほぼ同一である。ベース10の外周縁は、炉の貫通孔の外側開口の周縁部に重ねられるフランジ部11となっている。
【0020】
筒体20は、
図2に示すように円筒状であり、その断面外径は耐火物層30の断面外径より小さい。そして、筒体20には、円形の小孔部22が貫通して多数設けられている。筒体20の端部の一方は、筒体20と同じく金属製であるベース10に、溶接によって固着されている。
【0021】
アンカー41は、第一耐火物層31が設けられる側でベース10から突設されている。
図1では、アンカー41として、Y字の脚の部分にV字形の部分が取り付けられた形状のアンカー41を例示している。このアンカー41は金属製であり、その基端部が溶接によってベース10に固着されている。
【0022】
第一耐火物層31はアンカー41を埋設するように、筒体20の内側に設けられている。一方、第二耐火物層32は、筒体20の外周面及び開端と、第一耐火物層31におけるベース10側とは反対側の端部を被覆するように設けられている。
【0023】
第一耐火物層31及び二耐火物層32は、筒体20とアンカー41とが固着されたベース10を、筒体20及びアンカー41を上に向けて置き、筒体20の外側に円筒状の成形型を配置した上で、粉末状の不定形耐火材料を水及び硬化剤、分散剤等の調整剤と混合した泥しょうを、筒体20の内側、及び、筒体20と成形型との間に流し込み、固化、乾燥させることにより形成することができる。
【0024】
このようにすることにより、筒体21の内側に流し込まれた不定形耐火材料の泥しょうと、筒体20と成形型との間に流し込まれた不定形耐火材料の泥しょうとが、小孔部22を介して接合するため、第一耐火物層31と第二耐火物層32とを一体化することができる。
【0025】
上記構成のマンホール1によれば、耐火物層30をベース10に保持させる作用を、アンカー41に加えて筒体20も発揮するため、耐火物層30が脱落するおそれが低減されている。
【0026】
また、筒体20は金属製であるが、筒体20の内側は第一耐火物層31によって、筒体20の外側及び開端は第二耐火物層32によって保護されているため、筒体20が溶融金属と接触することによって損傷するおそれが低減されている。
【0027】
加えて、筒体20の外周面及び開端を被覆する第二耐火物層32は、筒体20による保持力が小さいところ、筒体20を貫通する小孔部22を介して第一耐火物層31と一体化している。これにより、筒体20を介して第二耐火物層32をベース10に保持させる作用が、第一耐火物層31によって高められ、第二耐火物層32の脱落が抑制されている。
【0028】
ここで、小孔部22の直径は、5mm〜200mmとすることが望ましく、10mm〜100mmとするとより望ましい。小孔部22の直径が5mmより小さい場合は、小孔部22内に不定形耐火物が充填されにくく、第一耐火物層31と第二耐火物層32が一体化されにくい。一方、小孔部22の直径が200mmより大きい場合は、筒体20の強度が低下するおそれがある。
【0029】
また、小孔部22の開口面積(複数の小孔部22の開口面積の和)は、筒体20の周面の面積(小孔部22の開口面積を含む)に対して、10%〜80%とすることが望ましく、20%〜60%とするとより望ましい。小孔部22の開口面積が10%より小さい場合は、第二耐火物層32を第一耐火物層31と一体化することによって第二耐火物層32が脱落するおそれを低減する作用が、小さいものとなる。一方、小孔部22の開口面積が80%より大きい場合は、耐火物層30と接触する筒体20の表面積が小さいものとなり、筒体20を介して耐火物層30をベース10に保持させる作用が不十分となりやすい。
【0030】
次に、第二実施形態のマンホールについて説明する。第二実施形態のマンホールは、
図3に示すように、溶融金属を収容する炉の炉体に形成された貫通孔の外側開口を被覆する金属製のベース10、及び、ベース10の片面側に設けられ貫通孔を閉塞する耐火物層30を備えるマンホール2であって、筒状に形成され端部の一方がベース10に固着されていると共に、複数の小孔部22が貫通して穿設された金属製の筒体20と、筒体20より内側でベース10から突設されたアンカー41と、筒体20の外周面から突設された第二アンカー42とを具備し、耐火物層30は、筒体20の内側に充填された不定形耐火物の層である第一耐火物層31、及び、筒体20の外周面及び筒体20の開端を被覆している不定形耐火物の層である第二耐火物層32からなり、第一耐火物層31と第二耐火物層32とは、複数の小孔部22を介して一体化しているものである。
【0031】
第二実施形態のマンホール2が第一実施形態のマンホール2と相違する点は、筒体20の外周面から突設された第二アンカー42を備えている点である。なお、第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0032】
ここで
図3では、第二アンカー42として、V字状で、アンカー41より小型のものを例示している。第二アンカー42は金属製であり、基端部が溶接によって筒体20の外周面に固着されている。
【0033】
第二耐火物層32は、筒体20の外周面及び開端と、第一耐火物層31におけるベース10側とは反対側の端部を被覆し、且つ、第二アンカー42が埋設されるように設けられている。第一耐火物層31及び二耐火物層32は、筒体20及びアンカー41がベース10に固着され、第二アンカー42が筒体20に固着された状態で、ベース10を下側にして置き、筒体20の外側に円筒状の成形型を配置した上で、粉末状の不定形耐火材料を水及び硬化剤、分散剤等の調整剤と混合した泥しょうを、筒体20の内側、及び、筒体20と成形型との間に流し込み、固化、乾燥させることにより形成することができる。
【0034】
上記構成のマンホール2によれば、第二耐火物層32が筒体20に保持される作用が第二アンカー42によって高められているため、筒体20を介して第二耐火物層32をベース10に保持させる作用がより高められ、第二耐火物層32の脱落がより抑制されている。
【0035】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0036】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態のマンホール1,2では、アンカー41の長さが筒体20の長さとほぼ等しい場合を図示により例示したが、これに限定されず、アンカー41を筒体20の長さより長いものとすることができる。この場合は、アンカー41は第一耐火物層31に埋設された上で、アンカー41の先端部分は第二耐火物層32に埋設される。これにより、第一耐火物層31のみならず第二耐火物層32も、アンカー41を介してベース10に保持させることができ、第二耐火物層32の脱落がより有効に抑制される。
【0037】
また、マンホール1,2では、アンカー41としてベース10から突設されたものを例示したが、これに限定されず、筒体20の内周面から突設されたアンカーであってもよい。この場合のアンカーは、筒体20を介して、第一耐火物層31をベース10に支持させる。
【符号の説明】
【0038】
1,2 マンホール
10 ベース
20 筒体
22 小孔部
30 耐火物層
31 第一耐火物層(耐火物層)
32 第二耐火物層(耐火物層)
41 アンカー
42 第二アンカー