【実施例】
【0015】
図1〜
図5に示す本実施例の可変動弁機構1は、内燃機関のバルブ6,6を駆動するとともに、そのバルブ6,6の駆動状態を内燃機関の運転状況に応じて変更する機構である。詳しくは、この可変動弁機構1は、バルブスプリング7,7がそれぞれ取り付けられた2つのバルブ6,6を同時に押圧することで、該2つのバルブ6,6を同時に駆動する2弁同時駆動型の可変動弁機構であって、該2つのバルブ6,6の駆動状態を高リフト駆動状態と低リフト駆動状態との2段階で切り換える。この可変動弁機構1は、次に示すカムシャフト8と、ロッカシャフト9と、高リフトカム10と、低リフトカム15と、ロッカアーム20と、切換溝30と、リンクアーム40と、回動装置50とを含み構成されている。なお、
図1〜
図3では、バルブ6,6の図示を省略している。また、
図1では、リターンスプリング58の図示を省略している。
【0016】
カムシャフト8は、複数の可変動弁機構1,1・・に共用の一本の左右方向L,Rに延びるシャフトであって、内燃機関が2回転する毎に1回転する。
【0017】
ロッカシャフト9は、カムシャフト8の下方に設けられた、左右方向L,Rに延びるシャフトである。
【0018】
高リフトカム10は、バルブ6,6を所定のリフト量で駆動するためのカムであって、カムシャフト8に設けられている。この高リフトカム10は、断面形状が真円形のベース円11と、該ベース円11から突出したカムノーズ12とを含み構成されている。
【0019】
低リフトカム15は、バルブ6,6を前記の所定のリフト量よりも低いリフト量で駆動するためのカムであって、カムシャフト8の高リフトカム10よりも右方Rに位置する部位に設けられている。この低リフトカム15は、断面形状が真円形のベース円16と、該ベース円16から突出した、高リフトカム10のカムノーズ12よりも低いカムノーズ17とを含み構成されている。
【0020】
ロッカアーム20は、ロッカアーム本体21と、ローラ26とを含み構成されている。そのロッカアーム本体21は、左右2つのロッカアーム基部22L,22Rと、ロッカアーム第一架橋部23と、ロッカアーム第二架橋部24と、ローラシャフト25とを含み構成されている。ロッカアーム基部22L,22Rは、左右方向L,Rに間隔をおいて並設されてそれぞれがロッカシャフト9に軸支されている。ロッカアーム第一架橋部23は、左右2つのロッカアーム基部22L,22Rの後端部の下部どうしを繋いでいる。ロッカアーム第二架橋部24は、左右2つのロッカアーム基部22L,22Rの先端部どうしを繋いでいる。ローラシャフト25は、左右2つのロッカアーム基部22L,22Rの長さ方向中間部どうしを繋ぐシャフトであって、ロッカアーム第三架橋部を兼ねている。
【0021】
ローラ26は、ローラシャフト25にベアリングを介して外嵌されることで、ローラシャフト25に回転可能かつ左右方向L,Rに変位可能に軸支されている。そして、ローラシャフト25上で左方Lに変位することで高リフトカム10に当接する第一位置に配され、右方Rに変位することで高リフトカム10に当接しないで低リフトカム15に当接する第二位置に配される。そして、このロッカアーム20は、ローラ26が第一位置に変位すると高リフトカム10のカムプロフィールに従い揺動して2つのバルブ6,6を相対的に高いリフト量で駆動し、ローラ26が第二位置に変位すると低リフトカム15のカムプロフィールに従い揺動して2つのバルブ6,6を相対的に低いリフト量で駆動する。
【0022】
切換溝30は、カムシャフト8の高リフトカム10よりも左方Lに位置する部位に設けられた第一螺旋溝34と中央溝35と第二螺旋溝36との3本の溝からなる。中央溝35は、カムシャフト8の周方向に左右方向L,Rにずれることなく延びる環状の溝である。第一螺旋溝34は、中央溝35よりも右方Rに設けられており、基端から所定の位置までは、カムシャフト8の回転方向の反対方向に左右方向にずれることなく延びている。そして、所定の位置からは、カムシャフト8の回転方向の反対方向に進むに従い左方Lに進む螺旋状に延びて中央溝35に合流している。また、第二螺旋溝36は、中央溝35よりも左方Lに設けられており、基端から所定の位置までは、カムシャフト8の回転方向の反対方向に左右方向にずれることなく延びている。そして、所定の位置からは、カムシャフト8の回転方向の反対方向に進むに従い右方Rに進む螺旋状に延びて中央溝35に合流している。そして、第一螺旋溝34及び第二螺旋溝36の螺旋状に延びる部分は、高リフトカム10のカムノーズ12及び低リフトカム15のカムノーズ17のいずれもがローラ26に当接しないときに、リンクアーム40に当接する位相に設けられている。
【0023】
リンクアーム40は、左右2つのリンクアーム基部42L,42Rと、リンクアーム架橋部43と、第一アーム44と、第二アーム46と、左右2つの摺接部48L,48Rとを含み構成されている。左側のリンクアーム基部42Lは、左側のロッカアーム基部22Lよりも左方Lに設けられてロッカシャフト9に外嵌されて軸支されている。右側のリンクアーム基部42は、左右2つのロッカアーム基部22L,22Rどうしの間に設けられてロッカシャフト9に外嵌されて軸支されている。リンクアーム架橋部43は、左右2つのリンクアーム基部42L,42Rの上端部どうしを繋いでいる。第一アーム44は、リンクアーム架橋部43からカムシャフト8の後方に突出しており、先端部には第一螺旋溝34に係入可能な第一係入突起44aが設けられている。第二アーム46は、左側のリンクアーム基部42Lからカムシャフト8の下方に突出しており、先端部には第二螺旋溝36に係入可能な第二係入突起46aが設けられている。左側の摺接部48Lは、ローラ26を右方Rに変位させるための部位であって、右側のリンクアーム基部42Rの左端部から突出してその右側面がローラ26の左側面に摺接している。右側の摺接部48Rは、ローラ26を左方Lに変位させるための部位であって、右側のリンクアーム基部42Rの右端部から突出してその左側面がローラ26の右側面に摺接している。そのため、リンクアーム40は、両摺接部48L,48Rによってローラ26に、ロッカシャフト9の周方向には相対変位を許容しつつも左右方向L,Rには共に変位するように係合している。
【0024】
回動装置50は、リンクアーム40を一方P及び他方Qに回動させるための装置であって、油圧装置51と、リターンスプリング58とを含み構成されている。油圧装置51は、リンクアーム40を一方Pに回動させるための装置であって、油圧ピン52と油圧経路53とを含み構成されている。油圧ピン52は、基端部がロッカシャフト9に取り付けられ、先端部がリンクアーム架橋部43に当接している。また、油圧経路53は、ロッカシャフト9の内部に設けられており、油圧ピン52を油圧でロッカシャフト9から突出させることで油圧ピン52の先端部をリンクアーム架橋部43に押圧する。リターンスプリング58は、リンクアーム40を他方Qに回動させるためのバネであって、第二アーム46とシリンダヘッドとの間に取り付けられている。
【0025】
次に、本実施例の可変動弁機構1のローラ26を第一位置に変位させるときと、第二位置に変位させるときとを説明する。
【0026】
[1]第一位置に変位させるとき
ローラ26を第一位置に変位させるときには、油圧経路53の油圧を上げる(ONにする)ことで、
図2(a)、
図3(a)、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、油圧ピン52がロッカシャフト9から進出する。その油圧ピン52の先端部にリンクアーム架橋部43が押圧されることでリンクアーム40が一方Pに回動する。それにより、リンクアーム40の第一係入突起44aが第一螺旋溝34に係入するとともに、第二係入突起46aが中央溝35から退出する。その後、リンクアーム40は、カムシャフト8の回転に伴い第一螺旋溝34にガイドされて、高リフトカム10及び低リフトカム15並びにロッカアーム本体21に対して左方Lにローラ26と共に変位する。それにより、リンクアーム40は、ロッカアーム本体21を介さずにローラ26を第一位置に変位させる。その後は、第一係入突起44aがそのまま中央溝35に入ることでリンクアーム40の左右方向L,Rの位置が保持される。
【0027】
[2]第二位置に変位させるとき
ローラ26を第二位置に変位させるときには、油圧経路53の油圧を下げる(OFFにする)ことで、
図2(b)、
図3(b)、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、リンクアーム40がリターンスプリング58の復元力で、油圧ピン52をロッカシャフト9に退入させつつ他方Qに回動する。それにより、リンクアーム40の第一係入突起44aが中央溝35から退出するとともに、第二係入突起46aが第二螺旋溝36に係入する。その後、リンクアーム40は、カムシャフト8の回転に伴い第二螺旋溝36にガイドされて、高リフトカム10及び低リフトカム15並びにロッカアーム本体21に対して右方Rにローラ26と共に変位する。それにより、リンクアーム40は、ロッカアーム本体21を介さずにローラ26を第二位置に変位させる。その後は、第二係入突起46aがそのまま中央溝35に入ることでリンクアーム40の左右方向L,Rの位置が保持される。
【0028】
本実施例によれば、次の[A]〜[D]の効果を得ることができる。
【0029】
[A]第一螺旋溝34又は第二螺旋溝36に係合して変位するリンクアーム40がロッカアーム本体21を介さずにローラ26を左方L又は右方Rに変位させるので、各螺旋溝34,36とローラ26との間にはリンクアーム40が介在するのみで、ロッカアーム本体21は介在しない。そのため、各螺旋溝34,36とローラ26との間に介在する部品点数が従来例1に比べて1つ減り、高リフトカム10及び低リフトカム15に対するローラ26の左右方向L,Rの位置精度が向上する。その結果として、ローラ26の左右幅に対する高リフトカム10及び低リフトカム15の左右幅の余裕代を少なくでき、可変動弁機構1の軽量化・コンパクト化に繋がる。また更に、各螺旋溝34,36とローラ26との間に介在する部品点数が1つ減ることで、切換の安定性も向上する。
【0030】
[B]リンクアーム40は、ローラ26と共に左右方向L,Rに変位するのみで、ロッカアーム本体21とは共に左右方向L,Rに変位しないので、ローラ26を第一位置及び第二位置に変位させるときの慣性質量が減り、これによっても、切換の安定性が向上する。
【0031】
[C]左右2つのロッカアーム基部22L,22Rの間に右側のリンクアーム基部42Rが配されることで、ロッカアーム20とリンクアーム40とが左右方向L,Rに一部重なり合う。そのため、ロッカアーム20とリンクアーム40とが左右方向L,Rに重なり合わずに左右方向L,Rに並ぶ場合に比べて、可変動弁機構1が左右方向L,Rにコンパクトになる。
【0032】
[D]リンクアーム40がローラ26を第二位置から第一位置に変位させた後は、第一係入突起44aがそのまま中央溝35に入ることでリンクアーム40の左右方向L,Rの位置が保持され、リンクアーム40がローラ26を第一位置から第二位置に変位させた後は、第二係入突起46aがそのまま中央溝35に入ることでリンクアーム40の左右方向L,Rの位置が保持されため、リンクアーム40及びローラ26の左右方向L,Rの位置が正確に決まる。
【0033】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。