(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルの延びる方向に平行な断面において、前記凸部の前記幅が前記ハニカム基材の全長の1〜80%であり、かつ、前記傾斜角が10〜80度である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
前記ハニカム基材が、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種からなるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
前記複数のセルのうちの所定のセルである第1セルの前記第1端面側の開口部および前記複数のセルのうちの残余のセルである第2セルの前記第2端面側の開口部を、目封止する目封止部を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
(1)ハニカム構造体:
図1〜
図3に示されているように、本発明の一実施形態のハニカム構造体100aは、ハニカム基材4と、凸部10とを備える。ハニカム基材4は、一方の端面である第1端面3から他方の端面である第2端面5まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する。凸部10は、ハニカム基材4の外周の少なくとも一部をリング状に連続的または断続的に取り囲む凸部である。また、凸部10は、ハニカム基材4の外周から外側に突出し、ハニカム基材4の外周の一部を覆うように配設されている。凸部10の少なくとも片方の端部の形状は、外周との接合部分13まで傾斜した表面であるテーパー面11を有するテーパー状である。セルの延びる方向(以下、「Z方向」と簡略)に直交する断面において、「凸部10の最大厚さ(H)」が1〜20mmである。Z方向に平行な断面において、「凸部10の幅L」がハニカム基材4の全長の1%以上であり、かつ、テーパー面11とZ方向とのなす角度である「傾斜角」が80度以下である。凸部10の表面の一部が、Z方向に平行な平面である平面部15である。平面部15は、表面に開口部18を有する裂け目である応力緩和部17を1個または複数個有する。そして、全ての応力緩和部17の長さの合計は、ハニカム基材4の外周長の3%以上である。なお、
図1は、本発明の一実施形態のハニカム構造体100aを模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態のハニカム構造体100aのZ方向に平行な断面を示す模式図である。
図3は、本発明の一実施形態のハニカム構造体100aを第1端面側から見た平面図である。
【0020】
ここで、「テーパー状」は、先端に向かうに従ってリング形状の外径が細くなる形状のことである。また、「凸部の最大厚さ(H)」は、「ハニカム構造体のZ方向に平行な断面において、『凸部の外周(但し、テーパー部分以外)に接するように配置されたハニカム基材の外周と平行な線』と『ハニカム基材の外周』との距離」ということもできる。また、ハニカム基材4の外周面に外周コート層が配設されている場合には、「凸部の最大厚さ(H)」は、
図2および
図3に示されるように、外周コート層の表面からの厚さである。
【0021】
凸部10は、「ハニカム基材4の外周から外側に突出し、ハニカム基材4の外周の一部を覆うように」配設されている。即ち、ハニカム構造体100aの一部の外径が、大きくなっている。そのため、ハニカム構造体100aは、引張応力に対する耐久性が向上されている。その結果、ハニカム構造体100aは、引張応力が生じたとしてもリングクラックが発生し難いものである。
【0022】
更に、ハニカム構造体100aにおいて、凸部10は、「ハニカム基材4の外周の少なくとも一部を連続的または断続的に取り囲むリング状」である。そのため、ハニカム構造体100aは、引張応力に対する耐久性が向上されている。その理由は、「ハニカム基材4の外周の少なくとも一部を連続的または断続的に取り囲む」ことによって、引張応力が均等にかかるからである。従って、ハニカム構造体100aは、引張応力が生じたとしてもリングクラックが発生し難いものである。
【0023】
本明細書において「ハニカム基材4の外周長」とは、Z方向に垂直な断面におけるハニカム基材4の外周長のことを意味する。
【0024】
「応力緩和部17」とは、凸部10の平面部15の表面に開口部(応力緩和部の開口部)18を有する裂け目である。応力緩和部17が凸部10の平面部15に存在することにより、引張応力を緩和し、リングクラックが発生し難いものとすることができる。特に、全ての応力緩和部17の長さの合計は、ハニカム基材4の外周長の3%以上であるので、応力緩和部17によるリングクラックの抑制作用が発現するようになる。
【0025】
応力緩和部17における「裂け目の深さ」は、特に限定されない。凸部10の外周が外周コート層7から構成されている場合には、
図2に示されているように、応力緩和部17の「裂け目の深さ」は、外周コート層7内に裂け目がとどまる程度であることが好ましい。「裂け目」が外周コート層7内にとどまる程度である場合、凸部10の構造的強度を維持できる。
【0026】
ハニカム構造体100aでは、全ての応力緩和部17の長さの合計がハニカム基材4の外周長の10%以上であることが好ましい。全ての応力緩和部17の長さの合計がハニカム基材4の外周長の10%以上である場合、引張応力を緩和し、リングクラックがより発生し難いものとすることができる。さらに、全ての応力緩和部17の長さの合計がハニカム基材4の外周長の、15%以上であることがより好ましく、特に、25〜90%であることが最も好ましい。全ての応力緩和部17の長さの合計がハニカム基材4の外周長の90%まであれば、リングクラック抑制への効果を十分に発揮させることができる。また、全ての応力緩和部17の長さの合計がハニカム基材4の外周長の90%以下の場合、応力緩和部の製造時間(例えば、工業用ドライヤーでの乾燥時間)を抑えることが可能になる。
【0027】
ハニカム構造体100aでは、開口部の幅が10μm以上の応力緩和部17の長さの合計は、全ての応力緩和部17の長さの合計の50%以上であることが好ましい。開口部の幅が10μm以上の応力緩和部17の長さの合計は、全ての応力緩和部17の長さの合計の50%以上である場合、引張応力を緩和し、リングクラックがより発生し難いものとすることができる。さらに、開口部の幅が10μm以上の応力緩和部17の長さの合計が全ての応力緩和部17の長さの合計の、55%以上であることがより好ましく、特に、65〜95%であることが最も好ましい。本明細書において「応力緩和部17の開口部18の幅」とは、ハニカム基材4の外周の表面において、裂け目の延びる方向に垂直な方向に沿って測定した裂け目の幅である。開口部の幅が10μm以上の応力緩和部17の長さの合計が全ての応力緩和部17の長さの合計の95%まであれば、リングクラック抑制への効果を十分に発揮させることができる。また、開口部の幅が10μm以上の応力緩和部17の長さの合計が全ての応力緩和部17の長さの合計の95%以下の場合、応力緩和部の製造時間(例えば、工業用ドライヤーでの乾燥時間)を抑えることが可能になる。
【0028】
凸部10の、Z方向に直交する断面における最大厚さ(H)は、1〜20mmであり、3〜15mmであることが好ましく、5〜10mmであることが特に好ましい。凸部10の、Z方向に直交する断面における最大厚さ(H)が1mm未満であると、凸部が薄過ぎるため、DPFの捕集機能に影響を及ぼす程度のリングクラックが発生する。20mm超であると、自動車等における限られた搭載スペースに、ハニカム構造体を搭載できなくなる。
【0029】
凸部10は、Z方向における少なくとも片方の端部がテーパー状である。そのため、搬送中などに凸部10が外力を受けたとしても、この凸部10は欠けなどの欠陥を生じ難いものである。
【0030】
ハニカム構造体100aは、Z方向に平行な断面において、テーパー面11とZ方向とのなす角度である「傾斜角」が80度以下である。「傾斜角」が80度より大きいと、凸部の端部(最外周部分)が欠けたりすることがある。「傾斜角」は、10〜80度が好ましく、20〜60度が特に好ましい。「傾斜角」が10度より小さいと、自動車等における限られた搭載スペースに、ハニカム構造体100aを搭載できなくなるという不具合がある。なお、「傾斜角」は、テーパー面11とZ方向のなす角度のうちの、鋭角の角度αのことである(
図2を参照)。「テーパー面11」はテーパー状になっている凸部10の端面のことである。
【0031】
凸部10の幅Lは、ハニカム構造体100aのZ方向の長さ(ハニカム基材4の全長)の1%以上であり、1〜80%であることが好ましく、5〜20%であることが特に好ましい。凸部10の幅Lが上記範囲であることにより、自動車等における限られた搭載スペースに、ハニカム構造体を良好に搭載することができる。また、凸部10が、大き過ぎないため、ハニカム構造体100aを軽量化できる。凸部10の幅Lが1%未満であると、リングクラックを良好に防止することができないおそれがある。また、凸部10の幅Lが80%超であると、ハニカム構造体100aが大型化して、自動車等における限られた搭載スペースに、ハニカム構造体100aを搭載できなくなるおそれがある。「凸部10の幅L」は、凸部の、Z方向における長さである。つまり、「凸部10の幅L」は、テーパー状の両端部の、両先端間の距離である。
【0032】
凸部10は、ハニカム基材4の外周の一部を覆うように配設される限り配設位置は特に制限はない。即ち、リングクラックの発生を防止できる限り、ハニカム基材4の中央部に配設してもよいし、端部に配設してもよい。ハニカム基材4の中央部は、ハニカム基材4の、Z方向における中央部のことである。ハニカム基材4の中央部にクラックが発生し易い場合、凸部10は、ハニカム基材4の中央部に配設されることが好ましい。「凸部10が、ハニカム基材4の中央部に配設される」とは、「凸部10の少なくとも一部が、ハニカム基材4の、Z方向のおける中央(ハニカム基材4の中央)を覆うように配置される」ことを意味する。即ち、「凸部10が、ハニカム基材4の中央部に配設される」というときは、以下の2つの場合を含む。つまり、「凸部10の、Z方向における中央(凸部10の中央)」が、ハニカム基材4の中央と重なる(中央を覆う)場合、及び、凸部10の中央以外の部分が、ハニカム基材4の中央と重なる(中央を覆う)場合の両方を含む。尚、ハニカム構造体100aは、全長(A)と外径(B)の比(A/B)が大きくなるほど、ハニカム基材4の中央にクラック(リングクラック)が発生し易くなる。
【0033】
ハニカム構造体100aは、全長(A)と外径(B)の比(A/B)が小さくなるほど、ハニカム基材4の端面にクラック(端面クラック)が発生し易くなる。特に、排ガスの出口側の端面に、端面クラックが発生し易い。このように、ハニカム基材4の端面にクラックが発生し易い場合、凸部10は、ハニカム基材4の当該クラックが発し易い端面を有する端部に、配設されることが好ましい。
【0034】
凸部10の数は、1つに限らず複数とすることができる。複数の凸部10を配設する場合、凸部10は、少なくとも、排ガスの出口側の端部と中央部とに配設されることが好ましい。
【0035】
凸部10は、
図2に示すように、Z方向に平行な複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有することが好ましい。凸部10にセル2が形成されると、リングクラックの発生を防止しつつ、ハニカム構造体100aを軽量化することができる。凸部10は、ハニカム基材4と一体的に形成されていることが好ましい。これにより、凸部10が、強固にハニカム基材4に結合されることになる。ここで、「凸部10とハニカム基材4とが一体的に形成されている」とは、以下のことを意味する。即ち、凸部10を構成する隔壁1と、ハニカム基材4を構成する隔壁1との間に、境界が存在せず、それぞれの隔壁1の材質が連続するように、凸部10の隔壁1と、ハニカム基材4の隔壁1とが接合されている状態を意味する。このような、「凸部10とハニカム基材4とが一体的に形成された」ハニカム構造体100aは、「凸部10になる部分とハニカム基材4になる部分とを含む」一つのハニカム成形体を成形して、乾燥、焼成、加工等を行うことにより得られる。「凸部10に形成されるセル2」を区画形成する隔壁1には、触媒となる貴金属を担持させる必要がない。「凸部10に形成されるセル2」には、排ガスが流入し難いためである。ハニカム構造体100aに触媒を担持させる方法としては、ハニカム構造体100aの一方の端部を触媒用スラリーに浸漬し、他方の端部を吸引して上記触媒用スラリーを吸い上げる方法が好ましい。この方法によれば、「凸部10に形成されるセル2」に触媒が担持されていないハニカム構造体100aを容易に作製することができる。
【0036】
ハニカム構造体100aは、ハニカム基材4の「凸部10の表面を含む外周面」上に、外周コート材からなる外周コート層7を備えることが好ましい。外周コート層7を備えることにより、上記触媒用スラリーを吸い上げる際における上記触媒用スラリーの漏れを防止できる。更に、外周コート層7は、
図1〜
図3に示すように、「凸部10に形成されるセル2」の開口部を塞ぐように形成されることが好ましい。外周コート層7が「凸部10に形成されるセル2」の開口部を塞ぐように形成されることにより、「凸部10に形成されるセル2」に流入した排ガスが「凸部10に形成されるセル2」の開口部から排出されることを防止できる。即ち、ハニカム構造体100aから排ガスが漏れることを防止できる。上述したように、「凸部10に形成されるセル2」を区画形成する隔壁1には触媒を担持させない場合がある。この場合、上記のように外周コート層7が形成されていないと、十分に浄化されていない排ガスが排出されることになる。即ち、「凸部10に形成されるセル2」の開口部から排ガスが漏れることに起因して浄化性能が低下するおそれがある。そこで、外周コート層7を、「凸部10に形成されるセル2」の開口部を塞ぐように形成すると、浄化性能の低下を抑制できる。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに、水を加えて混練したもの、などを挙げることができる。
【0037】
外周コート層7の厚さは、1〜5000μmが好ましく、10〜3000μmが特に好ましい。外周コート層7の厚さを上記範囲とすると、外周コート層7の塗布後における乾燥を均一な状態で行うことが可能となるため、乾燥収縮時に外周コート層7に「意図していないクラック」が生じることを防止できる。外周コート層7の厚さが、1μm未満であると、触媒を担持させる際に上記触媒用スラリーがハニカム基材4から漏れ出るおそれがある。外周コート層7の厚さが、5000μm超であると、排ガス浄化機能を有さない部分の断面比率が大きくなるため、浄化性能が低下することがある。応力緩和部17の裂け目を形成する方法としては、外周コート層7に意図的にクラックを生じさせるという方法もある。ここでいう「意図していないクラック」とは、応力緩和部17の裂け目には該当しないクラックのことを意味する。
【0038】
また、ハニカム構造体100aのように、表面の一部が平面状である凸部10を備えることにより、凸部10の最大厚さ(H)が薄くなる(平面部15の部分の厚さが薄い)。そのため、ハニカム構造体100aの移送時に用いる梱包容器として小さなものを用いることができる。
【0039】
ハニカム構造体100aにおいては、凸部10は、平面部15が形成された部分以外は、周方向において均一な形状であることが好ましい。「周方向において均一な形状」とは、周方向に直交する断面の形状が、どの部分でも同じ形状であることを意味する。尚、ハニカム構造体100aは、凸部10における、平面部15が形成された部分以外の部分が、周方向において均一な形状でなくてもよい。
【0040】
図1に示すハニカム構造体100aのように「凸部10の表面の一部が平面部15である」ハニカム構造体は、凸部10の厚さが平面部15において薄くなっている。そのため、
図4に示すように、ハニカム構造体100aは、リング状凸の存在のために特別に大きめに設計された梱包容器でなくても、既存の梱包容器20に収納され得る。従って、既存の梱包容器20を使用することができる。
図4において、ハニカム構造体100aの隔壁は、省略されている。
図4は、既存の梱包容器20に、ハニカム構造体100aを複数個収納した状態を模式的に示す平面図である。
【0041】
凸部10には、互いに平行な1対の平面部15が形成されることが好ましい。更に、凸部10には、
図3に示すように、互いに平行な1対の平面部15が、2組形成されており、一方の1対の平面部15が他方の1対の平面部15に直交するように形成されることが好ましい。このように平面部15が形成されることにより、凸部10に薄い部分(平面部15)が形成されることになるため、平面部15が形成されない場合に比べて、収納スペースを小さくすることが可能になる。そのため、ハニカム構造体100aは、自動車等のように搭載スペースが小さい場所であっても、良好に搭載することができる。
【0042】
平面部15(表面)とハニカム基材4の外周(凸部10に覆われている部分)との距離(最短距離)T(
図3参照)は、1〜15mmであることが好ましく、2.5〜10mmであることが特に好ましい。平面部15とハニカム基材4の外周との距離Tを上記範囲とすることにより、リングクラックの発生を防止することができる。更に、自動車等のように搭載スペースが小さい場所であっても、ハニカム構造体100aを良好に搭載することができる。平面部15(表面)とハニカム基材4の外周との距離Tは、凸部10の、平面部15における最も薄い部分の厚さということができる。尚、ハニカム構造体100aが外周コート層7を備える場合、距離Tは、平面部15(表面)とハニカム基材4の外周との距離(最短距離)から、外周コート層7を差し引いた値である。
【0043】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、ハニカム基材4の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とすることが好ましい。また、ハニカム基材4の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種からなることが更に好ましい。ここで、「主成分」は、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0044】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、隔壁1の平均細孔径は、5〜100μmが好ましく、8〜50μmが特に好ましい。平均細孔径が5μmより小さいと、圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が100μmより大きいと、ハニカム構造体100aの強度が低くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0045】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、隔壁1の気孔率は、25〜80%が好ましく、35〜75%が特に好ましい。気孔率が25%より小さいと、圧力損失が大きくなることがある。気孔率が80%より大きいと、ハニカム構造体100aの強度が低くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0046】
隔壁1の厚さは、40〜600μmであることが好ましく、150〜400μmであることが特に好ましい。40μmより薄いと、ハニカム構造体100aの強度が低くなることがある。600μmより厚いと、圧力損失が高くなることがある。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、ハニカム基材4の形状は、特に限定されない。ハニカム基材4の形状としては、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の筒形状、等が好ましい。
図1に示すハニカム構造体100aにおいては、ハニカム基材4の形状は円筒形状である。
【0048】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、ハニカム基材4のセル形状(Z方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はない。セル形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでは、正方形又は長方形が好ましい。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体100aにおいて、ハニカム基材4のセル密度については、特に制限はない。ハニカム基材4のセル密度は、15〜200セル/cm
2であることが好ましく、30〜100セル/cm
2であることが特に好ましい。セル密度が、15セル/cm
2より低いと、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなったり、ハニカム構造体100aの強度が低くなったりすることがある。セル密度が200セル/cm
2より高いと、圧力損失が大きくなることがある。
【0050】
本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体100b)は、上記本発明のハニカム構造体の一実施形態(ハニカム構造体100a)において、凸部10が、ハニカム基材4の端部(一方の端部)に配設されているものである。
図5に示すハニカム構造体100bは、本発明のハニカム構造体の他の実施形態である。このように、凸部10がハニカム構造体100bの一方の端部に配設されることにより、端面クラックの発生を防止することができる。さらに、ハニカム構造体100bでは、応力緩和部17も一方の端部の近傍に配設される。そのため、応力緩和部17の働きにより、端面クラックの発生を防止することができる。ハニカム構造体をDPFとして使用した場合には、排ガス出口側端面に端面クラックが発生することがある。この端面クラックは、以下のように発生する。自動車等のエンジンの排ガスに含まれる煤などは、ハニカム構造体の出口側端部に多く堆積する。そこで、煤などを燃焼させてハニカム構造体を再生した際には、煤などを燃焼したことに起因してハニカム構造体の出口側端部がその他の部分よりも高温になる。そのため、ハニカム構造体の端部に応力が生じる。その結果、ハニカム構造体の出口側端面にクラック(端面クラック)が発生する。
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0051】
図6は、本発明の更に他の実施形態のハニカム構造体100cのZ方向に平行な断面を示す模式図である。本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体100cのように、第1端面3における所定のセル(第1セル2a)の開口部および第2端面5における残余のセル(第2セル2b)の開口部に配設された目封止部23を備えていてもよい。上記第1セル2aと上記第2セル2bとは、交互に並んでいることが好ましい。そして、それによって、ハニカム構造体100cの両端面に、目封止部23と「セルの開口部25」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。目封止部23の材質は、ハニカム基材4(隔壁1)の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部23の材質とハニカム基材4の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0052】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体は、以下の方法で製造することができる。即ち、本発明のハニカム構造体は、ハニカム焼成体を作製するハニカム焼成体作製工程と、このハニカム焼成体の外周部を切削して凸部を形成する切削工程とを有する方法により製造できる。更に、外周コート層を備える場合には、ハニカム焼成体の外周部を切削した後、外周コート層形成工程を有することが好ましい。「ハニカム焼成体」は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えるハニカム焼成体である。
【0053】
このような方法によれば、本発明のハニカム構造体を容易に作製することができる。
【0054】
「凸部の表面の一部が、Z方向に平行な平面状である平面部」(凸部に平面部が形成された)を形成するためには、例えば、以下の方法で製造することができる。つまり、まず、「凸部に平面部が形成されていない」ハニカム構造体を作製する。その後、このハニカム構造体の凸部の一部を、平面部が形成されるように切削することにより、
図1に示すような、凸部に平面部が形成されたハニカム構造体を製造することができる。また、「凸部の表面の一部が、Z方向に平行な平面状である」場合、本発明のハニカム構造体は、以下の方法で製造することもできる。即ち、上記ハニカム焼成体作製工程と、上記切削工程と、を有し、上記ハニカム焼成体作製工程において、多角柱状のハニカム焼成体を作製する。更に、切削工程において、ハニカム焼成体の側面の一部が残り、残った側面の一部が凸部の平面部となるようにハニカム焼成体を切削する。このようにすることにより、切削工程の後に、平面部を形成する操作を改めて行う必要がなくなり、製造プロセスを合理化することができる。
【0055】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0056】
(2−1)ハニカム焼成体作製工程;
ハニカム焼成体作製工程は、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えたハニカム焼成体を作製する工程である。ハニカム焼成体を作製する方法は、特に限定されない。以下、ハニカム焼成体作製工程を、段階的に工程に分けて説明する。
【0057】
(2−1−1)成形工程;
まず、成形工程において、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁(未焼成)を備えるハニカム成形体を形成することが好ましい。ハニカム成形体は、ハニカム構造の成形体である。
【0058】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0059】
また、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0060】
セラミック成形原料を成形する際には、まずセラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0061】
ハニカム成形体の形状としては、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状、等を挙げることができる。「平面部が形成された凸部」を備えるハニカム構造体を製造する場合、多角柱状のハニカム成形体とすることが好ましい。多角柱の側面の一部を残すことにより、この残った側面の一部を凸部の平面部とすることができるためである。即ち、平面部を形成する操作を省略することができるためである。ハニカム成形体としては、四角柱状が更に好ましい。
【0062】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0063】
(2−1−2)焼成工程;
次に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する。
【0064】
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前に、ハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。ハニカム成形体を仮焼する方法は、特に限定されるものではなく、有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0065】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0066】
(2−2)切削工程;
切削工程は、ハニカム焼成体の外周部を切削する工程である。ハニカム焼成体を切削する方法は特に限定されない。ハニカム焼成体の外周部を切削する方法としては、従来公知の方法を適宜採用できるが、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、押し当てる手法が好ましい。切削工程において「切削される、ハニカム焼成体の外周部」の厚さは、切削後に形成される凸部の厚さと同じになる。
【0067】
上述したように、凸部に「Z方向に平行な平面部」が形成されたハニカム構造体を作製する場合には、ハニカム焼成体を、以下のように切削することが好ましい。即ち、多角柱状のハニカム焼成体の側面の一部が残り、残った側面の一部が凸部の平面部となるようにハニカム焼成体を切削することが好ましい。このようにすることにより、切削の後に、改めて平面部を形成する操作を行う必要がなくなる。
【0068】
尚、切削は、ハニカム成形体の焼成前後のいずれでもよいが、焼成後に行うことが好ましい。焼成後に切削することにより、焼成によってハニカム焼成体が変形した場合でも、ハニカム焼成体の形状を切削によって整えることが可能となる。
【0069】
(2−3)目封止工程;
目封止部を備えるハニカム構造体を作製する場合には、切削工程の後に、下記目封止工程を行うことが好ましい。この目封止工程において、ハニカム焼成体の、一方の端面(第1端面)における「所定のセル(第1セル)」の開口部及び他方の端面(第2端面)における「残余のセル(第2セル)」の開口部に、目封止部を配設する。以下に具体的に説明する。
【0070】
まず、ハニカム焼成体(ハニカム基材)の一方の端面(第1端面)のセルの開口部に目封止材料を充填する。一方の端面(第1端面)のセルの開口部に目封止材料を充填する方法としては、マスキング工程と圧入工程とを有する方法が好ましい。マスキング工程は、ハニカム焼成体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカム焼成体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム焼成体のセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカム焼成体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0071】
目封止材料は、上記セラミック成形原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。目封止材料に含有されるセラミック原料としては、隔壁の原料として用いるセラミック原料と同じであることが好ましい。
【0072】
次に、ハニカム焼成体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。
【0073】
ハニカム焼成体の一方の端面(第1端面)において、目封止部が形成されたセルと目封止部が形成されていないセルとが交互に並ぶことが好ましい。この場合、目封止部が形成された一方の端面において、目封止部と「セルの開口部」とにより市松模様が形成されることになる。
【0074】
次に、ハニカム焼成体の、他方の端面(第2端面)における「残余のセル(第2セル)」の開口部に、一方の端面(第1端面)の場合と同様にして、目封止部を配設することが好ましい。尚、目封止材料の乾燥は、ハニカム焼成体の両端面において、目封止材料を充填した後に、行ってもよい。また、ハニカム成形体に目封止材料を充填した後に焼成工程を行ってもよい。
【0075】
(2−4)外周コート層形成工程;
切削されたハニカム焼成体の外周に、外周コート材を塗布して外周コート層を形成することが好ましい。外周コート層を形成することにより、凸部が欠けてしまうことを防止できる。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削されたハニカム焼成体」をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【0076】
応力緩和部は、例えば、ハニカム焼成体の外周部を凸部が形成されるように研削し、研削した外周部に外周コート材を塗布した後、凸部における平面部の一部に工業用ドライヤーなどで部分的に急速乾燥させることにより形成することが可能である。応力緩和部を形成しない他の部分については、自然乾燥で外周コート材を乾燥させるとよい。上述の急速乾燥により応力緩和部を形成できる理由は、急速乾燥により外周コート材の表面と内部とで温度差が生じ、その結果として、乾燥収縮の差が発生するからである。応力緩和部の幅や長さを調整するためには、急速乾燥させる時間、対象範囲、外周コート材中の水分量などを変更するとよい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
セラミック原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを混合したものを用いた。そして、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材を添加すると共に、水を添加して成形原料を作製した。そして、成形原料を真空土練機により混練し、坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0079】
得られた坏土を押出成形機を用いて成形し、四角柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。
【0080】
乾燥後のハニカム成形体を脱脂し、焼成して四角柱状のハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0081】
得られた四角柱状のハニカム焼成体の外周部を、「リング状の凸部が形成されるとともに、ハニカム焼成体の各側面の一部がリング状の凸部上に形成された平面部分として残るように」、切削した。リング状の凸部は、ハニカム焼成体の「Z方向における中央部」に形成されるようにした。その後、切削されたハニカム焼成体の外周に、外周コート材を塗布して外周コート層を形成した。このようにして
図1に示すようなハニカム構造体を得た。
【0082】
なお、ハニカム焼成体の外周部を切削する方法としては、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、Z方向に対して35度の角度でハニカム焼成体の外周部に押しあてる方法とした。このようにして、「4つの平面部が形成されるとともに、両端部がテーパー状である」凸部、を有するハニカム構造体を得た。このハニカム構造体における凸部のテーパーの角度(「傾斜角」)は、両端部ともに35度であった。本実施例のハニカム構造体の凸部には、
図3に示すように互いに平行な1対の平面部が、2組(合計4つの平面部が)形成されていた。
【0083】
さらに、上述の工程において、外周コート材を塗布した後、凸部における平面部の一部を工業用ドライヤーなどで部分的に急速乾燥させることにより、応力緩和部を形成した。応力緩和部を形成しない他の部分については、自然乾燥で外周コート材を乾燥させ、応力緩和部が形成されないようにした。
【0084】
得られたハニカム構造体の底面は直径14.4cmの円形であり、ハニカム構造体のZ方向における長さは20.3cmであった。また、隔壁の厚さは305μmであり、セル密度は46.5セル/cm
2であった。凸部の最大厚さ(H)は10mmであり、凸部の幅(L)は20mm、ハニカム構造体(ハニカム基材)の全長に対する凸部幅の割合は10%、傾斜角35度であった。平面部深さ(D)(4箇所)は5mmであった。なお、「平面部深さ(D)」は、凸部の最大厚さ(H)と「平面部(表面)とハニカム基材の外周との距離」Tとの差である(
図3参照)。凸部は、「ハニカム構造体の一方の端部から、この一方の端部に近い側の凸部の端部までの距離」が6.4cmの位置に、配置された。
【0085】
凸部の最大厚さ(H)は、ハニカム構造体のZ方向に平行な断面において、「凸部の外周(但し、テーパー部分以外)に接するように配置されたハニカム基材の外周と平行な線」と「ハニカム基材の外周」との距離のことである。凸部の幅(L)は、凸部の、ハニカム構造体のZ方向の長さのことである。
【0086】
表1において、「凸部取り付け位置」の欄は、凸部を配設した位置を示す。「中央」は、ハニカム構造体のZ方向の中央部に凸部を配設したことを示す。「端部」は、ハニカム構造体のZ方向における端部に凸部を配設したことを示す。「傾斜角(度)」は、凸部の両端部のテーパー面とZ方向とのなす角度のうちの鋭角の角度を示す。
【0087】
得られたハニカム構造体について、下記方法で、「応力緩和部の位置」、「応力緩和部の長さ」、「応力緩和部の幅」、「リングクラック」、「凸部強度」、及び「搭載性」の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(応力緩和部の位置、長さ、および幅)
応力緩和部の位置、長さ、幅については、物差しやノギスを用いて測定した。応力緩和部の幅については10μmのシクネスゲージ(JIS B 7524)を用いて、幅10μm以上の応力緩和部を特定した。
【0089】
(リングクラック)
まず、バーナー試験機にハニカム構造体を取り付ける。次に、このバーナー試験機によって下記操作を行う。即ち、以下の昇温冷却操作を1サイクルとする。昇温冷却操作は、「ハニカム構造体に、ハニカム構造体の入口端面から20mm手前で800℃となる高温ガスを2Nm
3/minにて10分間流した後、ハニカム構造体の入口端面から20mm手前で150℃となる冷却ガスを2Nm
3/minにて10分間流す」という操作である。そして、当該昇温冷却操作を100サイクル行う。その後、ハニカム構造体に形成されるリングクラックの有無を目視で確認し、以下の基準で評価する。ハニカム構造体に、DPFとしての機能を低下させる程度のリングクラックが発生した場合は「C」とする。ハニカム構造体にリングクラックは発生するが、DPFとしての機能を低下させない程度のものである場合は「B」とする。ハニカム構造体にリングクラックが無い場合は「A」とする。「A」及び「B」を合格とし、「C」を不合格とする。なお、「DPFとしての機能」については、処理(DPFによる排ガス処理)におけるPM(スート)捕集効率が90%以上であれば、「DPFとしての機能を低下させない程度である」とする。また、PM(スート)捕集効率が90%に満たなければ、「DPFとしての機能を低下させる程度である」とする。PM(スート)捕集効率の測定においては、以下のようにしてハニカム構造体を通過させた後のガスに含まれるPM(スート)を濾紙で捕集し、PM(スート)の重量(W1)を測定した。即ち、まず、ハニカム構造体を、軽油を燃料としたバーナーによりPM(スート)を発生させるスートジェネレーター装置に取り付ける。その後、スートジェネレーター装置に取り付けたハニカム構造体に、スートジェネレーターによりPM(スート)を発生させた、ハニカム構造体の入口端面から190mm手前で200℃となるガスを、3Nm
3/minにて2分間通過させる。このようにして、上記重量(W1)を測定した。また、同じ時間、PM(スート)を発生させたガスを、ハニカム構造体を通過させずに濾紙で捕集し、PM(スート)の重量(W2)を測定した。次いで、得られた各重量(W1)(W2)を以下に示す式に代入して捕集効率を求めた。
(W2−W1)/(W2)×100
【0090】
(凸部強度)
まず、先端に直径11mmの鉄球(重さ5.4g)を備えた紐(長さ75cm)を有する振り子を用意する。次に、この振り子を、鉄球の最下点で(即ち、振り子が振られていない状態で)鉄球がハニカム構造体の凸部の端部(最外周部分)に当たるように配置する。次に、振り子の鉄球を振り上げて鉄球を凸部の端部に衝突させる。その後、凸部の端部を目視にて観察する。そして、以下の基準で評価する。上記紐の長さの80%の高さに鉄球を振り上げて、上記鉄球を凸部の端部に衝突させたときに、凸部の端部に欠けなどの欠陥が生じた場合は「C」とする。上記紐の長さの100%の高さに鉄球を振り上げて、上記鉄球をリンク状凸部の端部に衝突させたときに、凸部の端部に欠けなどの欠陥が生じた場合は「B」とし、このときに欠陥が生じなかった場合は「A」とする。「A」評価及び「B」評価を合格とし、「C」評価を不合格とする。
【0091】
(搭載性)
凸部が形成されていないハニカム構造体(比較例1)についての搭載性は、凸部の最大厚さ(H)及び幅(L)によって評価する。凸部の最大厚さ(H)についての評価を「「径方向」の評価」と称することがある。また、凸部の幅(L)についての評価を「「全長方向」の評価」と称することがある。凸部の最大厚さ(H)についての評価は、以下の通りである。凸部の最大厚さ(H)が、10mm以下の場合を「A」とし、10mm超、20mm以下の場合を「B」とし、20mm超の場合を「C」とする。凸部の幅(L)についての評価は、以下の通りである。凸部の幅が、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さの80%を超える場合を「B」とし、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さの80%以下の場合を「A」とする。「B」の場合、ハニカム構造体の搭載性に影響がある。「A」の場合、ハニカム構造体の搭載性に影響を与えない。
【0092】
更に、搭載性については、凸部の最大厚さ(H)及び幅(L)及び角度(α)の全てを考慮した総合評価を行う。「径方向の評価」及び「全長方向の評価」の両方が「A」の場合、総合評価が「A」であるとする。「径方向の評価」及び「全長方向の評価」の少なくとも一方が「B」の場合、総合評価が「B」であるとする。「径方向の評価」が「C」の場合、総合評価が「C」であるとする。搭載性の総合評価は、「A」評価及び「B」評価を合格とし、「C」評価を不合格とする。また、「A」評価が最も好ましく、「B」評価が次に好ましい。そして、「C」評価がこれらA、B、C評価の中では最も劣る評価である。尚、比較例1のハニカム構造体は、凸部の厚さ(凸部の最大厚さ)が「0mm」のハニカム構造体であるとする。結果を表1に示す。
【0093】
平面部が形成された凸部を有するハニカム構造体(実施例1〜18、比較例2〜7)については以下のように評価を行う(平面部の効果)。まず、平面部が形成されたハニカム構造体(以下、「ハニカム構造体X」と記す場合がある)の中心軸に直交する断面における形状が上記ハニカム構造体Xと相似形であって上記ハニカム構造体Xとの間隔が一律5mmの外筒を想定する。次に、この外筒の中心軸に直交する断面において、外筒の中心を通り外筒の外周部の2点を結ぶ線分a、当該線分aと直交する線分b、及び上記線分aに対して45°傾いた線分cを描く。線分b及び線分cは、いずれも、外筒の中心を通り外筒の外周部の2点を結ぶ線分である。線分a、線分はb、外筒に形成された平面と直交するものとする。次に、線分a、線分b、及び線分cの合計を算出する。次に、上記ハニカム構造体Xにおいて凸部を有さないハニカム構造体(以下、「ハニカム構造体Y」と記す場合がある)を想定する。次に、上記ハニカム構造体Xの場合と同様に、ハニカム構造体Yと相似形であって上記ハニカム構造体Yとの間隔が一律5mmの外筒を想定する。次に、上記ハニカム構造体Xの場合と同様にして、線分a、線分b、及び線分cを描く。次に、線分a、線分b、及び線分cの合計を算出する。その後、以下の基準で評価を行う。ハニカム構造体Yの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」に対する、ハニカム構造体Xの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」の割合が104%以下の場合は「A」とする。ハニカム構造体Yの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」に対する、ハニカム構造体Xの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」の割合が106%以下の場合は「B」とする。ハニカム構造体Yの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」に対する、ハニカム構造体Xの場合に算出される「線分a、線分b、及び線分cの合計」の割合が106%より大きい場合は「C」とする。尚、平面部が形成された凸部を有するハニカム構造体についての上記評価は、「径方向の評価」に該当する。そして、平面部が形成された凸部を有するハニカム構造体についても、上記平面部が形成されていない凸部を有するハニカム構造体の場合と同様にして、「全長方向の評価」と「総合評価」を行う。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
(実施例2〜18、比較例1〜7)
表1に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。なお、応力緩和部の幅、長さを調整する際には、外周コート材を急速乾燥させる時間、対象範囲、外周コート材中の水分量などを変更した。得られたハニカム構造体について、上記方法で、「応力緩和部の位置」、「応力緩和部の長さ」、「応力緩和部の幅」、「リングクラック」、「凸部強度」、及び「搭載性」の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(判定)
「リングクラック」および「搭載性の総合評価」がA、かつ、「凸部強度」がAまたはBの場合を「良」(表1中では二重丸で表示)と判定した。「リングクラック」および「搭載性の総合評価」のうちの一方がB、他方がAまたはBであり、かつ、「凸部強度」がAまたはBの場合を「可」(表1中では丸印で表示)と判定した。「リングクラック」、「搭載性の総合評価」、および「凸部強度」のうちで1つでもCの場合は、「不可」(表1中ではクロス印で表示)と判定した。
【0097】
表1より、実施例1〜18のハニカム構造体は、「良」または「可」という判定結果であった。一方で、比較例1〜7のハニカム構造体は、「不可」という判定結果であった。