特許第6059521号(P6059521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6059521自動細胞剥離装置および細胞剥離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6059521
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】自動細胞剥離装置および細胞剥離システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20161226BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20161226BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M1/26
   C12M3/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-267172(P2012-267172)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-113062(P2014-113062A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ヒト幹細胞産業応用促進基盤技術開発/ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 慶三
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真平
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勝己
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−325517(JP,A)
【文献】 特開2010−273603(JP,A)
【文献】 中嶋勝己他,再生医療用細胞培養の自動化技術,生物工学会誌, 2007.10.25, ,Vol.85, No.10,pp.432-434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に配置された、培養容器を固定する載置台と、
前記培養容器の底面に接着した細胞を掻き取るためのスクレーパと、
前記スクレーパの上部を挟持する一対の爪を有するチャックと、
前記チャックを昇降させる昇降機構と、
前記テーブル上に配置された、交換用の複数のスクレーパをこれらのスクレーパの上部が露出する状態で保持する保持台と、
前記チャックを前記保持台と前記載置台との間で移動させる移動機構と、
を備えた、自動細胞剥離装置。
【請求項2】
前記培養容器の底面は円形であり、前記スクレーパは前記培養容器の底面の半径よりも小さな幅の短冊状であり、
前記移動機構は、前記チャックを、平面視における前記培養容器の底面の中心を通る線上で移動するように構成されており、
前記載置台は、前記培養容器と共に当該培養容器の底面の中心回りに回転するように構成されている、請求項1に記載の自動細胞剥離装置。
【請求項3】
前記チャックを当該チャックの鉛直方向の中心線回りに回転させる回転機構をさらに備える、請求項2に記載の自動細胞剥離装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記チャックを、水平面上の直交する二方向に沿って移動するように構成されており、
前記チャックを当該チャックの鉛直方向の中心線回りに回転させる回転機構をさらに備える、請求項1に記載の自動細胞剥離装置。
【請求項5】
前記載置台と前記保持台との間に配置された、使用済のスクレーパが投入される回収箱をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動細胞剥離装置。
【請求項6】
培養容器に被せられた蓋を前記培養容器から取り外す蓋除去装置と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動細胞剥離装置と、
前記自動細胞剥離装置により前記培養容器の底面から剥離された細胞を培地と共に吸引するピペット装置と、
前記ピペット装置で処理された前記培養容器を撮像し、前記培養容器内に細胞が残っているか否かを判定する細胞観察装置と、
前記培養容器を、前記蓋除去装置、前記自動細胞剥離装置、前記ピペット装置および前記細胞観察装置の間で搬送する搬送装置と、
を備えた、細胞剥離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器の底面に接着した細胞を装置自らが剥離する自動細胞剥離装置、およびこの自動細胞剥離装置を用いた細胞剥離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、細胞を培養する過程で、培養容器の底面に接着した細胞をスクレーパを用いて剥離することが行われている。近年では、その剥離作業を自動的に行う自動細胞剥離装置が開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、載置台上に載置される培養容器の上方に駆動部が配置されることを避けるために門型のアームを採用し、そのアームの先端にスクレーパが一体的に設けられた自動細胞剥離装置が開示されている。アームの基部は、当該アームを昇降させる、昇降台の側方に配置された昇降機構に連結されており、昇降機構は、移動機構により水平方向に移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、細胞を培養する過程では、コンタミネーションを防止するために、一度使用したスクレーパを新しいスクレーパと交換することが望まれる。しかしながら、特許文献1に開示された自動細胞剥離装置では、スクレーパを交換するには、スクレーパが一体的に設けられたアームを昇降機構から手作業で切り離し、アームごと交換する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、スクレーパの交換を自動的に行うことのできる自動細胞剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の自動細胞剥離装置は、培養容器を固定する載置台と、前記培養容器の底面に接着した細胞を掻き取るためのスクレーパと、前記スクレーパの上部を挟持する一対の爪を有するチャックと、前記チャックを昇降させる昇降機構と、交換用の複数のスクレーパをこれらのスクレーパの上部が露出する状態で保持する保持台と、前記チャックを前記保持台と前記載置台との間で移動させる移動機構と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、スクレーパの上部がチャックの爪で挟持されているので、爪を開けば使用済のスクレーパを放すことができる。さらに、保持台では交換用のスクレーパの上部が露出しているので、チャックを保持台上に移動すればチャックに新たなスクレーパを装備することができる。従って、スクレーパの交換を自動的に行うことができる。
【0009】
前記培養容器の底面は円形であり、前記スクレーパは前記培養容器の底面の半径よりも小さな幅の短冊状であり、前記移動機構は、前記チャックを、平面視における前記培養容器の底面の中心を通る線上で移動するように構成されており、前記載置台は、前記培養容器と共に当該培養容器の底面の中心回りに回転するように構成されていてもよい。この構成によれば、スクレーパを培養容器の底面に接した状態で載置台を培養容器と共に一回転させれば、底面に接着した細胞をリング状に掻き取ることができる。そして、チャックを移動させることにより、そのリング状の径を変更することができるため、円形の底面の全面に亘って細胞を掻き取ることができる。
【0010】
上記の自動細胞剥離装置は、前記チャックを当該チャックの鉛直方向の中心線回りに回転させる回転機構をさらに備えてもよい。この構成によれば、培養容器の回転だけでは細胞が剥離できなかった場合でも、その残った細胞をスクレーパの回転により剥離することができる。
【0011】
あるいは、前記移動機構は、前記チャックを、水平面上の直交する二方向に沿って移動するように構成されており、上記の自動細胞剥離装置は、前記チャックを当該チャックの鉛直方向の中心線回りに回転させる回転機構をさらに備えてもよい。この構成によれば、培養容器の底面がどのような形状であっても、培養容器の底面の全面に亘って細胞を掻き取ることができる。
【0012】
上記の自動細胞剥離装置は、前記載置台と前記保持台との間に配置された、使用済のスクレーパが投入される回収箱をさらに備えてもよい。この構成によれば、使用済のスクレーパをまとめて破棄することができる。
【0013】
また、本発明の細胞剥離システムは、培養容器に被せられた蓋を前記培養容器から取り外す蓋除去装置と、上記の自動細胞剥離装置と、前記自動細胞剥離装置により前記培養容器の底面から剥離された細胞を培地と共に吸引するピペット装置と、前記ピペット装置で処理された前記培養容器を撮像し、前記培養容器内に細胞が残っているか否かを判定する細胞観察装置と、前記培養容器を、前記蓋除去装置、前記自動細胞剥離装置、前記ピペット装置および前記細胞観察装置の間で搬送する搬送装置と、を備える。このような細胞剥離システムは、熟練者に頼らずとも再現性の高い作業を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スクレーパの交換を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る自動細胞剥離装置を用いた細胞剥離システムの平面図である。
図2】蓋除去装置の側面図である。
図3】ピペット装置の側面図である。
図4】細胞観察装置の側面図である。
図5】自動細胞剥離装置の一部断面正面図である。
図6】自動細胞剥離装置の一部断面側面図である。
図7】載置台の平面図である。
図8】(a)および(b)はスクレーパが細胞を掻き取る様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る自動細胞剥離装置5を用いた細胞剥離システム1を示す。この細胞剥離システム1は、蓋除去装置2、ピペット装置3、細胞観察装置4および自動細胞剥離装置5を備えており、これらの装置2〜5の間で培養容器10がロボット(本発明の搬送装置に相当)11により搬送される。
【0018】
本実施形態では、ロボット11がレール13に沿って走行可能に構成されており、このレール13の両側に上記の装置2〜5が配置されている。その中でも蓋除去装置2およびピペット装置3は、同一のテーブル14上に設置されている。ただし、装置2〜5のレイアウトは図1に示すものに限られず、適宜決定可能である。また、装置2〜5がロボット11の作業エリア内に配置されていれば、ロボット11は走行不能なものであってもよい。
【0019】
レール13は、内部の温度および湿度が一定に保たれたインキュベータ(図示せず)まで延びており、このインキュベータ内から培養容器10がロボット11により取り出される。本実施形態では、培養容器10は円盤状の透明なディッシュである。ロボット11は多関節アームを有し、そのアームの先端には細胞培養容器10の側面を挟み込む一対の棒状の指12を有するハンド13が取り付けられている。
【0020】
インキュベータ内から取り出された培養容器10には蓋15(図2参照)が被せられている。蓋除去装置2は、培養容器10から蓋15を取り外すためのものである。より詳しくは、図2に示すように、蓋除去装置2は、図略の真空ポンプに接続された吸着パット21を有する。ロボット11は、蓋15付の培養容器10を吸着パット21の真下に搬送し、培養容器10を上昇させて吸着パット21に蓋15を吸着させた後に、培養容器10を下降させる。これにより、培養容器10から蓋15が取り外される。また、蓋除去装置2は、吸着パット21を支持するアーム22を旋回させる旋回機構を有し、吸着パット21に吸着された蓋15は、吸着位置の脇の保管位置に積み上げられる。なお、蓋除去装置2は、吸着パット21を昇降させる昇降機構を有していてもよい。
【0021】
培養容器10内には細胞を培養するための液体である培地が収容されており、培養容器10の円形の底面には細胞(接着系細胞)が接着している。自動細胞剥離装置5は、培養容器10の底面からの細胞の剥離作業を自動的に行うものである。自動細胞剥離装置5の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0022】
ピペット装置3は、自動細胞剥離装置5により培養容器10の底面から剥離された細胞を培地と共に吸引する。より詳しくは、図3に示すように、ピペット装置5は、図略の電動式のシリンジに接続されたピペット31と、このピペット31を支持するアーム32とを有している。ロボット11は、培養容器10を傾けた状態で、ピペット31の先端を培養容器10内の最下点近傍に挿入させる。その後、シリンジの稼動により、培養容器10内の培地および細胞がピペット31内に吸い込まれる。
【0023】
細胞観察装置4は、ピペット装置3で処理された培養容器10を撮像し、培養容器10内に細胞が残っているか否かを判定する。より詳しくは、図4に示すように、細胞観察装置4は、ロボット11により培養容器10が載置される本体部41と、培養容器10を上方から照らす、ブラケット42により本体部41に取り付けられた照明装置43を有する。本体部41内には、照明装置43により照らされた培養容器10を撮像する撮像装置44と、撮像装置44で撮像された画像を画像処理して培養容器10内に細胞が残っているか否かを判定する演算装置45とが配設されている。演算装置45により培養容器10内に細胞が残っていると判定された場合には、培養容器10はロボット11により自動細胞剥離装置5に搬送され、細胞の剥離が再度行われる。
【0024】
次に、図5および図6を参照して、自動細胞剥離装置5の構成を詳細に説明する。
【0025】
自動細胞剥離装置5は、培養容器10の底面に接着した細胞を掻き取るためのスクレーパ9と、このスクレーパ9を把持するチャック8を備えている。また、自動細胞剥離装置5はテーブル50を備えており、このテーブル50上には、支持部54、回収箱52、保持台53および移動機構6が配置されている。
【0026】
支持部54には、培養容器10を固定する載置台51が支持されている。本実施形態では、図7に示すように、載置台51が円盤状をなしており、載置台51の上面における培養容器10の下面と接する領域には複数の吸引孔56が設けられている。これらの吸引孔56は図略の真空ポンプに接続されており、培養容器10は吸引により載置台51に固定される。ただし、培養容器10を載置台51に固定する方法は吸引に限らず、例えば培養容器10を水平方向で挟み込む方法であってもよい。
【0027】
培養容器10は、ロボット11により、培養容器10の底面の中心C(図7参照)が載置台51の中心と合致するように載置台51上に載置される。なお、載置台51の上面には、培養容器10を位置決めするための突起または窪みが設けられていることが望ましい。
【0028】
また、本実施形態では、載置台51が培養容器10と共に当該培養容器10の底面の中心C回りに回転するように構成されている。具体的には、載置台51は、支持部54内に配置されたモータ55の出力軸に連結されており、モータ55により回転させられる。なお、支持部54はモータ55のみで構成されていてもよい。
【0029】
スクレーパ9は、培養容器10の底面に押し付けられた状態で当該底面に沿って動かされるものである。本実施形態では、スクレーパ9が上下方向に延びる短冊状をなしており、スクレーパ9の幅Wは培養容器10の底面の半径よりも小さく設定されている。スクレーパ9の下部は、厚さが徐々に小さくなって下向きに尖っている。
【0030】
チャック8は、スクレーパ9の上部を当該スクレーパ9の厚さ方向で挟持する一対の爪81と、これらの爪81を操作する本体部82とを有している。チャック8は、昇降装置7により、スクレーパ9が培養容器10の底面に押し付けられる作業位置と、スクレーパ9が培養容器10の上方に位置する退避位置との間で昇降させられる。本実施形態では、チャック8と昇降機構7との間に回転機構75が介在しており、昇降機構7はチャック8を回転機構75と共に昇降させる。
【0031】
回転機構75は、チャック8を当該チャック8の鉛直方向の中心線L回りに回転させるものである。例えば、回転機構75は、チャック8が出力軸に連結されたモータを内蔵する。昇降機構7は鉛直方向を軸方向とする駆動部71とこの駆動部71により駆動される可動部72を有しており、回転機構75は可動部72に連結されている。
【0032】
上述した移動機構6は、チャック8を回転機構75および昇降機構7と共に載置台51と保持台53との間で移動させる。移動機構6は、載置台51と保持台53が離間する水平方向を軸方向とする駆動部61とこの駆動部61により駆動される可動部62を有している。そして、この可動部62に、昇降機構7の駆動部71がブラケット65を介して取り付けられている。本実施形態では、図7に示すように、移動機構6がチャック8を平面視における培養容器10の底面の中心Cを通る線上で移動するように構成されている。
【0033】
保持台53は、交換用の複数のスクレーパ9をこれらのスクレーパ9の上部が露出する状態で保持する。具体的には、保持台53は上面が水平な直方体状をなしており、保持台53の上面には、スクレーパ9の断面形状と同形状で、スクレーパ9の高さよりも小さな深さ(例えばスクレーパ9の高さの半部程度)の複数の凹部が形成されており、これらの凹部にスクレーパ9が嵌め込まれている。保持台53に保持されるスクレーパ9の幅方向は、本実施形態では移動機構7によるチャック8の移動方向と平行であるが、チャック8の移動方向に対して斜めであってもよいし垂直であってもよい。なお、図示は省略するが、保持台53とテーブル50の間には複数の支柱が介在していて、保持台53がテーブル50から離れていてもよい。
【0034】
例えば、保持台53は、当該保持台53が保持するスクレーパ9が、培養容器10の底面に押し付けられるスクレーパ9と同レベルとなる高さ位置に配置される。すなわち、チャック8は、昇降機構7により作業位置に下降されたときには、培養容器10の底面へのスクレーパ9の押し付けと新たなスクレーパ9の把持の双方を行うことができる。ただし、昇降機構7が可動部72を任意の位置で停止可能な場合は、保持台53の高さ位置はどのような位置であってもよい。
【0035】
回収箱52は、載置台51と保持台53の間に配置されている。回収箱52には、当該回収箱52上でチャック8の爪81が開かれることにより、使用済のスクレーパ9が投入される。
【0036】
次に、図8(a)および(b)をも参照して、自動細胞剥離装置5の動作の一例を説明する。
【0037】
通常は、チャック8は、保持台53上の退避位置で待機する。ロボット11により培養容器10が載置台51上に載置されて載置台51に固定されると、昇降機構7によるチャック8の下降、爪81によるスクレーパ9の挟持、昇降機構7によるチャック8の上昇が行われる。ついで、移動機構6がチャック8を保持台53上から載置台51上に移動した後、昇降機構7がチャック8を下降させる。これにより、図8(a)に示すように、スクレーパ9が培養容器10の底面に、当該底面の中心Cを通る線上で押し付けられる。この状態で、載置台51が一回転させられる。載置台51が一回転した後は、図8(b)に示すように、回転機構75がチャック8をスクレーパ9と共に例えば90度回転させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の自動細胞剥離装置5では、スクレーパ9の上部がチャック8の爪81で挟持されているので、爪81を開けば使用済のスクレーパ9を放すことができる。さらに、保持台53では交換用のスクレーパ9の上部が露出しているので、チャック8を保持台53上に移動すればチャック8に新たなスクレーパ9を装備することができる。従って、スクレーパ9の交換を自動的に行うことができる。また、この自動細胞剥離装置5を用いた細胞剥離システム1は、熟練者に頼らずとも再現性の高い作業を実現できる。
【0039】
また、本実施形態では、載置台51が回転するように構成されているので、スクレーパ9を培養容器10の底面に接した状態で載置台51を培養容器10と共に一回転させれば、底面に接着した細胞をリング状に掻き取ることができる。そして、チャック8を移動させることにより、そのリング状の径を変更することができるため、円形の底面の全面に亘って細胞を掻き取ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態の自動細胞剥離装置5にはチャック8を回転させる回転機構8が設けられているので、培養容器10の回転だけでは細胞が剥離できなかった場合でも、その残った細胞をスクレーパ9の回転により剥離することができる。
【0041】
また、載置台51と保持台53の間には回収箱52が配置されているので、使用済のスクレーパ9をまとめて破棄することができる。
【0042】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、移動機構6がチャック8を水平面上の直交する二方向に沿って移動するように構成されている場合には、載置台51が回転不能となっていてもよい。この場合は、移動機構6による二方向の移動と回転機構75による回転とによって、培養容器10の底面がどのような形状であっても、培養容器10の底面の全面に亘って細胞を掻き取ることができる。
【0044】
また、前記実施形態では、回転機構75がチャック8と昇降機構7との間に介在していたが、昇降機構7として例えばシリンダを用いる場合は、回転機構75をブラケット65に取り付け、この回転機構75によりチャック8を昇降機構7と共に回転させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 細胞剥離システム
10 培養容器
11 ロボット(搬送装置)
15 蓋
2 蓋除去装置
3 ピペット装置
4 細胞観察装置
5 自動細胞剥離装置
51 載置台
52 回収箱
53 保持台
6 移動機構
7 昇降機構
75 回転機構
8 チャック
81 爪
9 スクレーパ
図1
図2
図3
図4
図7
図5
図6
図8