(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の糖化タンパク質測定用試薬キット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、一態様において、タール色素を用いる酵素反応系で糖化タンパク質を測定する自動分析装置において、自動分析装置の反応セル上面で析出物が生じてセルが汚染される場合がある、という課題を見出したことに基づく。
【0014】
前記析出物の詳細な組成はまだ明らかではないが、前記析出物には少なくとも前記試薬中の色素が含まれる。本開示は、一態様において、前記析出物が、前記試薬に多価アルコールを含有させることで抑制できるという知見に基づく。したがって、本開示は、一態様において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)又はプロテアーゼ、水、タール色素、及び多価アルコールを含む試薬組成物に関する(以下、「本開示の試薬組成物」ともいう)。本開示の試薬組成物は、一又は複数の実施形態において、FAODとプロテアーゼの2成分を同時に含有しない。
【0015】
[多価アルコール]
本開示の試薬組成物は、析出物の発生を抑制する観点から、多価アルコールを含有する。同様の観点から、多価アルコールとしては、分子内ヒドロキシル基の数が2〜4であるものが好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。多価アルコールは、限定されない一又は複数の実施形態において、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#300、ポリエチレングリコール#400、ポリエチレングリコール#600、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
また、測定対象試料中のヘモグロビン濃度の影響を受けにくいという観点から、多価アルコールとして、平均重量分子量が200未満のものが好ましく、より好ましくは190以下、さらに好ましくは、150以下である。多価アルコールの分子量の下限は特に限定されないが、例えば、50以上である。したがって、析出物の発生を抑制する観点、及び、測定対象試料中のヘモグロビン濃度の影響を受けにくいという観点から、多価アルコールは、限定されない一又は複数の実施形態において、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
さらに、多価アルコールの添加の有無で測定結果が大きく変動すると測定精度が低下する恐れがある。よって、多価アルコールの添加が測定結果に与える測定値の変化は、抑制されることは好ましい。測定値に与える多価アルコールの影響を抑制する観点、及び、析出物の発生を抑制する観点から、多価アルコールは、限定されない一又は複数の実施形態において、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#400、ポリエチレングリコール#600又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
よって、析出物の発生を抑制する観点、測定対象試料中のヘモグロビン濃度の影響を受けにくいという観点、及び、測定値に与える多価アルコールの影響を抑制する観点から、多価アルコールは、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
さらにまた、本開示の試薬組成物に含まれるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)が耐熱安定性を有する場合、その耐熱安定性を大きく阻害しないことが好ましい。析出物の発生を抑制する観点、測定対象試料中のヘモグロビン濃度の影響を受けにくいという観点、測定値に与える多価アルコールの影響を抑制する観点、及び、FAODの耐熱安定性の維持の観点から、多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
本開示の試薬組成物における多価アルコールの含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、析出物の発生を抑制する観点から、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは0.8重量%以上、さらにより好ましくは0.9重量%以上である。本開示の試薬組成物における多価アルコールの含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、測定値に与える多価アルコールの影響を抑制する観点から、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、又は4重量%以下である。
【0021】
[タール色素]
本開示の試薬組成物は、タール色素を含有する。糖化タンパク質測定試薬において、タール色素は一般にフェノチアジン誘導体色素の吸収スペクトルのシフト剤、及び発色剤などの光により分解する化合物に対する保護剤として使用することを目的として含有されることがある(特許文献1)。しかしながら、本開示において、タール色素を含有する目的はこれに限定されない。
【0022】
タール色素を用いる酵素反応系で糖化タンパク質を測定する自動分析装置の反応セル上面で生み出す析出物には、少なくともタール色素が含まれる。ただし、前記析出物の詳細な組成は未だ明らかではない。
【0023】
本開示の試薬組成物に使用されるタール色素としては、限定されない一又は複数の実施形態において、アゾ色素である。アゾ色素としては、限定されない一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
R
1−N=N−R
2 (I)
前記式(I)において、R
1は、
【化1】
R
2は、
【化2】
R
1及びR
2において、
Xは、水素、ハロゲン、ナトリウム又はカリウムであり、
Yは、水素又はSO
3Xであり、
各Xは同一でも異なっていても良く、各Yは同一でも異なっていてもよく、
Zは、水素、メチル基又はメトキシ基であり、各Zは同一でも異なっていてもよい。
【0024】
前記式(I)で表されるアゾ色素物質の限定されない一又は複数の実施形態として、5−ヒドロキシ−1−(4−スルホフェニル)−4−(4−スルホフェニルアゾ)ピラゾール−3−カルボン酸又はその塩(例えば、三ナトリウム塩)、6−ヒドロキシ−5−(4−スルホフェニルアゾ)−2−ナフタレンスルホン酸又はその塩(例えば、二ナトリウム塩)、3−ヒドロキシ−4−(4−スルホナフチルアゾ)−2,7−ナフタレンジスルホン酸(「3−ヒドロキシ−4−[(スルホナトナフタレン−1−イル)ジアゼニル]ナフタレン−2,7−ジスルホン酸」ともいう)又はその塩(例えば、三ナトリウム塩)、7−ヒドロキシ−8−(4−スルホナフチルアゾ)−1,3−ナフタレンジスルホン酸もしくはその塩(例えば、三ナトリウム塩)又は水和物(例えば、11/2水和物)等が挙げられる。これらの塩や水和物としては、例えば、市販品であるタートラジン(黄色4号)、黄色5号、赤色2号、赤色40号、赤色102号等が挙げられる。これらの色素物質は、食用であってもよいし、非食用であってもよい。
【0025】
本開示の試薬組成物に含まれるタール色素は、一種類であってもよく二種類以上であってもよい。本開示の試薬組成物におけるタール色素の含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、反応系に含まれるフェノチアジン誘導体色素1モルに対して、1〜1000モル、2〜200モル、又は、4〜100モルである。また、本開示の試薬組成物におけるタール色素の含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、反応液に添加する発色剤の量に応じて決定でき、発色剤1モルに対して、0.1〜1000モル、1〜500モル、又は4〜300モルである。また、反応系におけるタール色素の最終濃度は、限定されない一又は複数の実施形態において、1×10
-7〜0.1mol/L、2×10
-7〜0.05mol/L、又は、5×10
-7〜0.03mol/Lである。
【0026】
[FAOD]
本開示の試薬組成物に含まれうるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)は、糖化アミノ酸及び/又は糖化ペプチドを酸化的加水分解する酵素をいい、糖化タンパク質の検出に従来使用され或いは今後開発され使用されるものを含む。FAODの基質としては、限定されない一又は複数の実施形態において、フルクトシルバリン、フルクトシルリジン、及び/又はフルクトシルバリルヒスチジンが挙げられる。FAODとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、商品名FPOX-CE(キッコーマン社製)、耐熱性が付与された商品名FPOX-CET(キッコーマン社製)、商品名FPOX−EE(キッコーマン社製)、商品名FOD(旭化成社製)等が挙げられる。
【0027】
本開示の試薬組成物におけるFAODの含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、0.1〜10.0U/ml、0.2〜8.0U/ml、0.5〜5.0U/ml、0.6〜3.0U/mlである。本開示において、FAODの酵素単位「U」は、フルクトシルバリンを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとする。
【0028】
[プロテアーゼ]
本開示の試薬組成物に含まれうるプロテアーゼとしては、測定対象試料中のヘモグロビン(及び糖化ヘモグロビン)のβ鎖N末端バリンや、前記N末端バリンを含むペプチド(β鎖N末端ペプチド)を切り出すことができるものであって、糖化タンパク質の検出に従来使用され或いは今後開発され使用されるものを含む。
【0029】
前記プロテアーゼとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、Bacillus subtilis由来プロテアーゼ、Aspergillus oryzae由来プロテアーゼ等が使用できる。前記プロテアーゼは、限定されない一又は複数の実施形態において、測定感度及び精度を向上する観点から、好ましくはエンドプロテアーゼである。限定されない一又は複数の実施形態において、市販品として、メタロプロテアーゼ(商品名、アークレイ社製)、プロテアーゼA「アマノ」G(商品名、天野エンザイム社製)、プロテアーゼM「アマノ」G(商品名、天野エンザイム社製)、プロテアーゼS「アマノ」G(商品名、天野エンザイム社製)、ペプチダーゼR(商品名、天野エンザイム社製)、パパインM−40(商品名、天野エンザイム社製)、プロテアーゼN(商品名、フルカ社製)、プロテアーゼN「アマノ」(商品名、天野製薬社製)、Bacillus属由来メタロプロテイナーゼ(商品名、トヨチーム東洋紡社製)等が挙げられる。
【0030】
前記プロテアーゼとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、測定感度及び精度を向上する観点から、β鎖N末端に特異的に作用してN末端ペプチドの切断を触媒するプロテアーゼ(例えば、特開2000−300294号公報、特開2004−344052号公報等)が好ましい。また、β鎖N末端バリンの切断を触媒するプロテアーゼとしては、例えば、国際公開第2000/50579号パンフレット(日本国特許3668801)、国際公開第2000/61732号パンフレット、特開2002−315600号公報等に開示されているプロテアーゼが挙げられる。
【0031】
本開示の試薬組成物におけるプロテアーゼの含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、500〜8000U/ml、600〜7000U/ml、700〜5000U/ml、800〜4000U/mlである。本開示において、プロテアーゼの活性「U」は、1分間に1マイクロモルのチロシンに相当する275nmの吸光度の増加を与える酵素量を1Uとする。
【0032】
[水]
本開示の試薬組成物は、水溶液であり、水を含む。水は、蒸留水、イオン交換水、又は超純水等が使用され得る。
【0033】
[その他の成分]
本開示の試薬組成物は、その他の成分として、ペルオキシダーゼ(POD)又は発色剤を含有しうる。本開示の試薬組成物は、一又は複数の実施形態において、PODと発色剤の2成分を同時に含有しない。したがって、本開示の試薬組成物は、限定されない一又は複数の実施形態において、水、タール色素、及び多価アルコールに加えて下記表1の組み合わせの成分を含む実施形態1〜4が挙げられる。
【表1】
【0034】
本開示の試薬組成物は、一又は複数の実施形態において、さらに、亜硝酸又はその塩、緩衝液又は緩衝剤、及び界面活性剤の1つ以上を含有しうる。また、本開示の試薬組成物が発色剤を含む場合、さらに発色剤安定化剤を含有しうる。
【0035】
[POD]
本開示の試薬組成物に含まれうるペルオキシダーゼ(POD)は、FAODが反応することで生成された過酸化水素を基質として分解するとともに発色剤を酸化することで過酸化水素の測定を可能とするものが使用でき、糖化タンパク質の検出に従来使用され或いは今後開発され使用されるものを含む。
【0036】
本開示の試薬組成物におけるPODの含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、0.5〜100U/ml、1.0〜80U/ml、2.0〜50U/ml、又は3.0〜20U/mlである。本開示において、PODの活性「U」は、20秒間に1ミリグラムのプルプロガリンを生成できる量を1プルプロガリンUとする。
【0037】
[発色剤]
本開示の試薬組成物に含まれうる発色剤としては、反応系の過酸化水素とPODとの反応に応じて発色、変色、消失するものであって、糖化タンパク質の検出に従来使用され或いは今後開発され使用されるものを含む。発色剤は、1つの化合物であってもよく、二種類以上の化合物の組み合わせであってもよい。本開示の試薬組成物における発色剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、フェノチアジン骨格を有する酸化発色剤、酸化還元反応によりフェノチアジン誘導体色素を生成する発色剤、又は、フェノチアジン誘導体色素が挙げられる。
【0038】
フェノチアジン誘導体色素は、限定されない一又は複数の実施形態において、下記化学式で表されるメチレンブルー、アズールA、アズールB、アズールC、トルイジンブルーO、1,9−ジメチル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩、メチレングリーン等が挙げられる。
【化3】
【0039】
酸化還元反応によりフェノチアジン誘導体色素を生成する発色剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、酸化又は還元によってフェノチアジン誘導体色素を遊離(脱離
)する発色剤(化合物)が挙げられる。
【0040】
酸化によりフェノチアジン誘導体色素であるメチレンブルーを遊離する発色剤(化合物)としては、限定されない一又は複数の実施形態において、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩(例えば、商品名DA−67、和光純薬社製)、10−(アセチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩、特公平4−27839号記載の10−(フェニルカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩等が挙げられる。また、特公昭60−33479号記載の化合物No.II−4〜9、II−10である、10−(3−(メチルカルボキシアミノ)−ヘキサメチル−アミノ)−フェノチアジン、10−(3−(メチルカルボキシアミノ)−4−メチル−フェニル)−アミノ)−フェノチアジン、10−((3−(メチルカルボキシアミノメチル)−フェニル)−メチルアミノ)−フェノチアジン、10−(1−ナフタレンアミノ)−フェノチアジン、10−(メチル)−フェノチアジン、10−(フェニルアミノ)−フェノチアジン、10−(メチルアミノ)−フェノチアジンや、これらの塩も挙げられる。中でも、水溶性が高いという観点から、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩が好ましい。
【0041】
また、フェノチアジン誘導体色素であるメチレンブルーを生成する発色剤としては、この他に、例えば、ロイコメチレンブルー等のロイコ化合物が挙げられる。ロイコメチレンブルーは、無色の化合物(還元型)であり、酸化によってメチレンブルー(酸化型)となる。このため、ロイコメチレンブルーは、例えば、酸化物質を検出するための基質として使用できる。本発明においては、例えば、前記反応系に発色剤としてロイコメチレンブルーを添加し、ロイコメチレンブルーと前記反応系における酸化物質との酸化還元反応により、メチレンブルーを生成させ、これを吸光度測定すればよい。また、メチレンブルー以外のフェノチアジン誘導体色素を生成する発色剤としては、各種フェノチアジン誘導体色素のロイコ体等が挙げられる。
【0042】
本開示の試薬組成物における発色剤の含有量は、限定されない一又は複数の実施形態において、0.001〜0.100mg/ml、0.003〜0.080mg/ml、0.006〜0.050mg/ml、又は、0.008〜0.030mg/mlである。
【0043】
[亜硝酸又はその塩]
本開示の試薬組成物に含まれうる亜硝酸又はその塩は、ヘモグロビンを変性させるために使用され得る。亜硝酸塩としては、限定されない一又は複数の実施形態において、亜硝酸カリウム、亜硝酸アミル、亜硝酸ブチル、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。本開示の試薬組成物における亜硝酸又は亜硝酸塩としては、0.05〜3.00mg/ml、0.10〜1.50mg/ml、又は0.15〜0.75mg/mlである。
【0044】
[緩衝液又は緩衝剤]
本開示の試薬組成物に含まれうる緩衝液又は緩衝剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、Tris (Tris(hydroxymethyl)amino-methane) 緩衝液、Tris−HCl緩衝液、MES (2-Morpholinoehanesulfonic acid) 緩衝液、MES−Tris緩衝液、MOPS (3-Moropholinopropanesulfonic acid) 緩衝液、MOPS−Tris緩衝液、ADA (N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid) 緩衝液、Bis−Tris緩衝液、PIPES (Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)) 緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES (2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid) 緩衝液、TAPS (N-Tris(hydroxymethyl)methyl-3-aminopropanesulfonic acid) 緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、グリシンアミド緩衝液等が挙げられる。上記緩衝液の濃度は、限定されない一又は複数の実施形態において、1〜500mmol/Lの範囲であり、又は、5〜100mmol/Lの範囲である。
【0045】
[界面活性剤]
本開示の試薬組成物に含まれうる界面活性剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、n−ドデシル−β−D−マルトシド(n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド)、6−シクロヘキシルヘキシル−β−D−マルトシド、スクロースモノラウレート(β−D−フルクトピラノシル−α−D−グルコピラノシドモノドデカノエート)、n−デシル−β−D−マルトシド(n−デシル−β−D−マルトピラノシド)、n−ノニル−β−D−チオマルトシド(n−ノニル−β−D−チオマルトピラノシド)、5−シクロヘキシルペンチル−β−D−マルトシド、ウンデシル−β−D−マルトシド、n−ドデシル−α−D−マルトシド、ヘキサデシル−β−D−マルトシド、及び、3−オキサトリデシル−α−D−マンノシド等が挙げられる。上記界面活性剤の濃度は、限定されない一又は複数の実施形態において、発色剤と界面活性剤のモル比が、1:1〜1:100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1:2〜1:50,000の範囲である。
【0046】
[pH]
本開示の試薬組成物のpHは、酵素活性の維持及び/又は効率化の観点から、5.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.5〜8.5、より好ましくは6.0〜8.0である。
【0047】
本開示の試薬組成物に含まれうる発色剤安定化剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、マルトシル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、モノアミノ−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、グルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、トリ−O−メチル−β−シクロデキストリン、サクシニル−β−シクロデキストリン、スルホプロピル−β−シクロデキストリン、サクシニルヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、トリアセチル−β−シクロデキストリン等が挙げられる。発色剤安定化剤の濃度は、特に制限はされないが、発色剤と発色剤安定化剤のモル比が例えば、1:1〜1:100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1:2〜1:50,000の範囲である。
【0048】
[本開示の試薬組成物の調製方法]
本開示の試薬組成物の調製方法は、水又は緩衝液に上述した成分を添加混合することで調製できる。本開示の試薬組成物は、溶液の状態であってもよく、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であってもよい。
【0049】
[第2の試薬組成物]
本開示の試薬組成物のみでは、糖化タンパク質を測定することは難しい。糖化タンパク質を測定する場合、第2の試薬組成物として、水を含む試薬組成物を使用することが好ましい(以下、「本開示の第2の試薬組成物」ともいう)。本開示の第2の試薬組成物は、本開示の試薬組成物がFAODを含む場合プロテアーゼを含み、本開示の試薬組成物がプロテアーゼを含む場合FAODを含む。
【0050】
[第2の試薬組成物の水、FAOD、及びプロテアーゼ]
本開示の第2の試薬組成物は、水溶液であり、水を含む。水は、蒸留水、イオン交換水、又は超純水等が使用され得る。本開示の第2の試薬組成物に含まれうるFAOD及びプロテアーゼは、本開示の試薬組成物に含まれ得る上述の物が使用できる。
【0051】
[第2の試薬組成物のその他の成分]
本開示の第2の試薬組成物は、その他の成分として、タール色素、ペルオキシダーゼ(POD)又は発色剤の少なくとも1つを含有しうる。本開示の第2の試薬組成物は、一又は複数の実施形態において、PODと発色剤の2成分を同時に含有しない。したがって、本開示の試薬組成物と本開示の第2の試薬組成物は、限定されない一又は複数の実施形態において、下記表2の組み合わせの成分を含む実施形態1〜4が挙げられる。なお、表2において、本開示の試薬組成物の成分は、水、タール色素、及び多価アルコールに加えて含有する成分を示し、本開示の第2の試薬組成物は、水に加えて含有する成分を示す。
【表2】
【0052】
本開示の第2の試薬組成物は、一又は複数の実施形態において、その他の成分として、さらに、緩衝液又は緩衝剤、界面活性剤を含有しうる。また、本開示の第2の試薬組成物が発色剤を含む場合、本開示の第2の試薬組成物はさらに発色剤安定化剤を含有しうる。
【0053】
本開示の第2の試薬組成物に含まれうる緩衝液又は緩衝剤、及び、発色剤安定化剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、本開示の試薬組成物に含まれ得る上述の物が使用できる。
【0054】
本開示の第2の試薬組成物に含まれうる界面活性剤は、限定されない一又は複数の実施形態において、ベンゼトニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンザルコニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、およびココナットアミンアセテート等が挙げられる。上記界面活性剤の濃度は、特に制限はされないが、前記発色剤と安定化剤のモル比が例えば、例えば、1:1〜1:100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1:2〜1:50,000の範囲である。
【0055】
[本開示の第2の試薬組成物のpH]
本開示の第2の試薬組成物のpHは、酵素活性の維持及び/又は効率化の観点から、5.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.5〜8.5、より好ましくは6.0〜8.0である。
【0056】
[本開示の第2の試薬組成物の調製方法]
本開示の第2の試薬組成物の調製方法は、水又は緩衝液に上述した成分を添加混合することで調製できる。本開示の第2の試薬組成物は、溶液の状態であってもよく、粉末、例えば、凍結乾燥粉末であってもよい。
【0057】
[糖化タンパク質の測定方法]
本開示の試薬組成物及び本開示の第2の試薬組成物を用いて検体中の糖化タンパク質を測定する方法の限定されない一又は複数の実施形態は以下のようになる。
工程(1):本開示の試薬組成物と、測定対象試料とを混合する工程。
工程(2):本開示の試薬組成物と測定対象試料とを混合した混合液に、さらに、本開示の第2の試薬組成物を混合する工程。
工程(3):工程(1)の混合液を光学測定するか、或いは、工程(2)の混合後速やかに混合液を光学測定する工程。
工程(4):工程(2)の混合液を一定時間後に光学測定する工程。
【0058】
より具体的には、限定されない下記実施形態1及び2が挙げられる。
実施形態1
工程(1):本開示の試薬組成物と測定対象試料とを混合する
工程(2):一定時間後に工程(1)の混合液を光学測定する。
工程(3):工程(2)後にさらに本開示の第2の試薬組成物を混合する。
工程(4):一定時間後に工程(3)後の混合液を光学測定する。
実施形態2
工程(1):本開示の試薬組成物と測定対象試料とを混合する
工程(2):一定時間後に工程(1)後にさらに本開示の第2の試薬組成物を混合する。
工程(3):工程(2)の実施後に速やかに混合液を光学測定する。
工程(4):一定時間後に工程(3)後の混合液を光学測定する。
【0059】
工程(1)の前に、検体から測定対象試料を調製してもよい。検体は、限定されない一又は複数の実施形態において、糖化タンパク質を含みうるものであって、全血、血漿、血清、血球等の血液試料、尿、髄液等の生体試料や、飲料水、食品類等が挙げられる。測定目的の糖化タンパク質が血球内成分の場合には、例えば、血球や血球を含む全血を溶血処理して測定対象試料を調製できる。溶血方法は、特に制限されず、例えば、浸透圧差を利用する方法、超音波による方法、界面活性剤処理方法等が使用できる。浸透圧差を利用する場合、全血(または血球)に対して、例えば、2〜100倍体積量の精製水を添加して溶血させればよい。或いは、測定対象試料は、限定されない一又は複数の実施形態において、検体そのものであってもよい。
【0060】
実施形態1の工程(2)と工程(4)で得られた光学的測定値の差、及び実施形態2の工程(3)と工程(4)で得られた光学的測定値の差から、糖化タンパク質量を算出できる。算出は、限定されない一又は複数の実施形態において、糖化量が既知の標準試料と光学的測定値との関係をプロットした検量線を用いることによって行える。標準試料は、1種類又は2種類以上である。光学的測定としては、限定されない一又は複数の実施形態において、吸光度測定、反射光測定等が挙げられる。実施形態1及び2の工程(2)における「一定時間」とは、限定されない一又は複数の実施形態において、1〜60分、1〜10分又は2〜5分である。実施形態1及び2の工程(4)における「一定時間」とは、限定されない一又は複数の実施形態において、1〜20分、1〜10分又は2〜5分である。また、実施形態1及び2の工程(1)〜(4)は、限定されない一又は複数の実施形態において、15〜45℃、25〜40℃、30〜40℃、又は35〜37℃の温度条件下で行われうる。
【0061】
測定目的となる糖化タンパク質は、限定されない一又は複数の実施形態において、糖化ヘモグロビン、糖化アルブミン、HbA1cなどが挙げられる。
【0062】
本開示の糖化タンパク質の測定方法は、その他の一又は複数の実施形態において、さらに測定対象試料中のタンパク質量(糖化タンパク質と非糖化タンパク質の合計量)を測定することを含みうる。このタンパク質量の測定は、本開示の第2の試薬組成物を混合する前又は後に測定することで達成できる。例えば、糖化タンパク質の測定方法の前記実施形態1においては、工程(2)と同時、工程(2)の前後、工程(4)と同時、又は工程(4)の前後に測定できる。糖化タンパク質の測定方法の前記実施形態1においては、工程(2)の前、工程(3)と同時、工程(4)と同時、又は工程(4)の前後に測定できる。
【0063】
本開示の試薬組成物を用いた糖化タンパク質の測定方法であれば、限定されない一又は複数の実施形態において、自動分析装置の反応セルにおける析出物の発生を抑制できる。よって、本開示は、一態様において、下記工程(1)〜(4)を行う自動分析装置を使用する糖化タンパク質の測定方法(以下、「本開示の測定方法」ともいう)に関する。
工程(1):本開示の試薬組成物である第一試薬と、測定対象試料とを混合する工程。
工程(2):第一試薬と測定対象試料とを混合した混合液に、さらに、本開示の第2の試薬組成物である第二試薬を混合する工程。
工程(3):工程(1)の混合液を光学測定するか、或いは、工程(2)の混合後速やかに混合液を光学測定する工程。
工程(4):工程(2)の混合液を一定時間後に光学測定する工程。
【0064】
[自動分析装置]
自動分析装置としては、糖化タンパク質の検出に従来使用され或いは今後開発され使用されるものが挙げられる。限定されない一又は複数の実施形態において、自動分析装置は、下記手段1〜4を備える。
測定手段1
手段(1):本開示の試薬組成物と測定対象試料とを混合する
手段(2):手段(1)の混合液を光学測定する。
手段(3):手段(2)後にさらに本開示の第2の試薬組成物を混合する。
手段(4):手段(3)後の混合液を光学測定する。
測定手段2
手段(1):本開示の試薬組成物と測定対象試料とを混合する
手段(2):一定時間後に手段(1)後にさらに本開示の第2の試薬組成物を混合する。
手段(3):手段(2)の実施後に速やかに混合液を光学測定する。
手段(4):一定時間後に手段(3)後の混合液を光学測定する。
【0065】
自動分析装置は、さらに、測定手段1では手段(2)と手段(4)で得られた光学的測定値の差、及び測定手段1では手段(2)と手段(4)で得られた光学的測定値の差から糖化タンパク質量を算出する手段を備えてもよい。
【0066】
[糖化タンパク質測定用試薬キット]
本開示は、その他の態様において、本開示の試薬組成物である第一試薬と、本開示の第2の試薬組成物である第二試薬とを含む、糖化タンパク質測定用試薬キット(以下、「本開示の試薬キット」ともいう)に関する。本開示の試薬キットと自動分析装置とを用いて、本開示の測定方法を行うことができる。本開示の試薬キットは、さらに、標準試料を含んでもよい。
【0067】
すなわち、本開示は以下の一又は複数の実施形態に関しうる;
[A1] 糖化タンパク質測定用試薬組成物であって、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)又はプロテアーゼ、水、タール色素、及び多価アルコールを含む試薬組成物。
[A2] タール色素が、アゾ色素である、[A1]記載の試薬組成物。
[A3] アゾ色素がタートラジンである、[A2]記載の試薬組成物。
[A4] 多価アルコールの分子内ヒドロキシル基数が2個である、[A1]から[A3]のいずれかに記載の試薬組成物。
[A5] 多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[A1]から[A4]のいずれかに記載の試薬組成物。
[A6] 試薬組成物中の多価アルコールの含有量が、0.5重量%以上10重量%以下である、[A1]から[A5]のいずれかに記載の試薬組成物。
[A7] 糖化タンパク質測定自動分析装置で用いるための、[A1]から[A6]のいずれかに記載の試薬組成物。
[A8] さらに、ペルオキシダーゼ(POD)又は発色剤を含む、[A1]から[A7]のいずれかに記載の試薬組成物。
[A9] [A1]から[A8]のいずれかに記載の試薬組成物である第一試薬と、水を含む第二試薬を含み、第二試薬は、さらに、第一試薬がFAODを含む場合プロテアーゼを含み、第一試薬がプロテアーゼを含む場合FAODを含む、糖化タンパク質測定用試薬キット。
[A10] 第二試薬が、さらに、タール色素、ペルオキシダーゼ(POD)及び発色剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A9]に記載の糖化タンパク質測定用試薬キット。
[A11] さらに、標準試料を含む、[A9]又は[A10]に記載の糖化タンパク質測定用試薬キット。
[A12] 下記工程(1)〜(4)を行うことを含む、糖化タンパク質の測定方法。
工程(1):[A1]から[A8]のいずれかに記載の試薬組成物である第一試薬と、測定対象試料とを混合する工程。
工程(2):第一試薬と測定対象試料とを混合した混合液に、さらに、水を含む第二試薬を混合する工程。ここで、第二試薬は、さらに、第一試薬がFAODを含む場合プロテアーゼを含み、第一試薬がプロテアーゼを含む場合FAODを含み、さらに、第一試薬が発色剤を含まない場合発色剤を含む。
工程(3):工程(1)の混合液を光学測定するか、或いは、工程(2)の混合後速やかに混合液を光学測定する工程。
工程(4):工程(2)の混合液を一定時間後に光学測定する工程。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
【0069】
血中のヘモグロビンA1c濃度及び総ヘモグロビン濃度を測定するための試薬組成物の組み合わせとして、下記第1試薬及び第2試薬を準備した。
<第1試薬>
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)(商品名:FPOX−CE、キッコーマン社製):0.6−3.0 U/ml
亜硝酸カリウム:0.15−0.75 mg/ml
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製):3−20 U/ml
タートラジン:0.05−0.30 mg/ml
緩衝液(Tris):2−10 mmol/L,pH 7.0
<第2試薬>
中性プロテアーゼ・・・800−4000 U/ml
10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン(和光純薬社製)・・・0.008−0.03 mg/ml
緩衝液(Tris):50−100 mmol/L,pH 6.5
界面活性剤:0.05−0.3 mg/ml
発色剤安定化剤:10−30 mg/ml
【0070】
[析出試験]
前記第1試薬に下記表3記載の多価アルコールを2w/v%添加して実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物を作製した。これらの試薬組成物100μLを、自動分析装置(商品名:JCA−MB8,日本電子社製)の反応セルに分注し、室温で5時間静置した。その結果の一例を
図1に示す。その結果、比較例1の試薬組成物(第1試薬そのもの)では、自動分析装置の反応セル上面の4つのコーナーに色素を含む析出物が発生した。一方で、多価アルコールを添加した実施例1〜10の試薬組成物では析出物が確認されず、析出物の発生が抑制された。
【0071】
【表3】
【0072】
実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物100μLを、自動分析装置(商品名:JCA−MB8,日本電子社製)の反応セルに分注し、室温で5時間静置した。その結果の一例を
図1に示す。
図1に示すとおり、比較例1の試薬組成物(第1試薬そのもの)では、自動分析装置の反応セル上面の4つのコーナーに色素を含む析出物が発生した。一方で、多価アルコールを添加した実施例1〜10の試薬組成物では析出物が確認されず、析出物の発生が抑制された。
【0073】
[試薬性能試験1]
第1試薬として実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物を用いてHbA1c値を測定し、試薬性能を確認した。
【0074】
〔測定対象試料〕
下記試料を使用してHbA1c (JDS)値が4〜14%のリファレンス試料を作成した。また、HbA1c (JDS)値が同じ(6.5又は7.0%)でヘモグロビン濃度が30〜150μmol/Lの範囲で異なるリファレンス試料を準備した。
糖尿病検査コントロールLevel 1−3(リクイチェック(商品名)、BIO−RAD社製)
−80℃凍結保存全血Hb濃度違い3種類
−80℃凍結保存全血HbA1c濃度違い8種類
【0075】
〔HbA1c濃度の測定手順〕
測定試料8μLと実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物(第1試薬)96μLを混合し、37℃、5分で反応する。その後、主波長694nm副波長751nmで吸光度を測定し、第2試薬63μLを添加する。さらに37℃、5分間反応させた後、再度、主波長694nm副波長751nmで吸光度を測定する。吸光度の差からHbA1c濃度(mmol/l)を算出する。
〔総ヘモグロビン濃度の測定手順〕
測定試料8μLと実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物(第1試薬)8μLを混合し、37℃、5分で反応する。その後、主波長571nm副波長694nmで吸光度を測定し、その吸光度から総ヘモグロビン濃度(mol/l)を算出する。
〔HbA1c(JDS)値の算出手順〕
HbA1c (JDS)値は、以下の式で求めた。その結果の一例を
図2及び3に示す。
HbA1c (NGSP)値=0.0915 × HbA1c濃度(mmol/l)/総Hb濃度(mol/l) + 2.15
HbA1c (JDS)値=0.980 × HbA1c (NGSP)値 − 0.245
【0076】
HbA1c(JDS)値が4〜14%の試料を実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物を用いて上記手順に従ってHbA1c(JDS)値を測定した。その結果の一例を
図2に示す。
図2は、実施例1〜10と比較例1とのHbA1c(JDS)値の差(ΔJDS%)を示すグラフである。
図2に示すとおり、実施例3(ジエチレングリコール)、実施例4(トリエチレングリコール)、実施例8(ポリエチレングリコール#300)では、比較例1と比べて高値化する傾向が見られた。
【0077】
ヘモグロビン(Hb)濃度が低(45μmol/L)、中(90μmol/L)、高(135μmol/L)の3種類の試料(HbA1c (JDS)値6.5%)を実施例1〜10及び比較例1の試薬組成物を用いて上記手順に従ってHbA1c(JDS)値を測定した。その結果の一例を
図3に示す。
図3は、Hb濃度が中濃度(90μmol/L)の試料の測定値と、低又は高濃度の試料の測定値との差を示すグラフである。
図3に示すとおり、実施例3(ジエチレングリコール)、実施例4(トリエチレングリコール)、実施例7(ポリエチレングリコール#200)、実施例8(ポリエチレングリコール#300)、実施例9(ポリエチレングリコール#400)、実施例10(ポリエチレングリコール#600)では、Hb濃度の影響を強く受けた。
【0078】
[試薬性能試験2]
前記第1試薬(比較例1)のFAOD(商品名:FPOX−CE、キッコーマン社製)を耐熱性FAOD(商品名:FPOX−CET、キッコーマン社製)に換えた試薬組成物を調製し、これを比較例2とした。比較例2の組成に、下記表4記載の多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリン)を1〜3w/v%添加して実施例11〜18及び比較例2の試薬組成物を作製した。
【0079】
【表4】
【0080】
第1試薬として、実施例11〜18、及び比較例1〜2の試薬組成物、及び、37℃で7日間保存した組成物を使用して上述の手順にしたがってHbA1c(JDS)値を算出した。測定試料として、下記4種類の試料を用いた。
【0081】
〔測定試料〕
酵素法HbA1測定試薬キャリブレータLow及びHigh(アークレイ社製)
(以下、「Cal L」及び「Cal H」とも表記する)
−80℃凍結保存全血Hb濃度違い2種類である、ヘモグロビン(Hb)濃度中(90μmol/L)および高(135μmol/L)検体(以下、それぞれ「MN」及び「MH」とも表記する)
【0082】
図4〜8は、37℃7日間保存の前(初期)と後(37℃7日)の実施例11〜18、及び比較例1〜2の試薬組成物を用いてHbA1c濃度の測定したときの反応タイムコースの吸光度(波長700nm)を示す。また、下記表5は、試料MN及びNHを測定した場合における保存前(初期)と保存後(37℃7日)におけるHbA1c(JDS)値とその変動値を示す。
【0083】
【表5】
【0084】
図4及び表5に示すとおり、比較例1の試薬組成物は、37℃7日間の培養後は反応活性が著しく低下していた。一方、比較例2及び実施例11〜17は、
図4〜7に示すとおり保存前後で反応性に変化は見られず、また、表5に示すとおり反応活性にも影響は見られなかった。実施例18のグリセリンは、
図8に示すとおり反応活性に変化があり、表5に示すとおり測定値も大幅に変化した。