(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、2つのカッター刃が排出口を挟むように設けられ、被印字物を上方に持ち上げても下方に引っ張っても切断することができる印字装置が検討されている。
【0004】
しかしながら、被印字物を上下どちらの方向に引っ張っても切断することができる印字装置では、排出口から上下のカッター刃それぞれまでの距離が等しくない場合、被印字物を切断後に次の被印字物が繰り出されたとき、被印字物の端から印字領域までの余白が上下どちらのカッター刃で切断したかによって異なり、無駄が多い。
【0005】
本発明の課題は、被印字物の端から印字領域までの余白を低減し、ラベルの使用量を削減することができる印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る印字装置は、被印字物を発行する印字装置であって、印字部と、搬送機構と、第1カッター刃と、第2カッター刃と、検知部と、制御部とを有している。印字部は、被印字物に印字する。搬送機構は、被印字物を正方向および戻り方向に搬送する。第1カッター刃は、被印字物の表面側と対峙する位置に固定的に配置される。第2カッター刃は、被印字物の裏面側と対峙する位置に固定的に配置される。検知部は、第1カッター刃および第2カッター刃のどちらのカッター刃で切断したのかを検知する。制御部は、搬送機構が被印字物を戻り方向に搬送するときの距離を検知部の検知結果に基づいて変更する。
また、印字部の出口から第1カッター刃および第2カッター刃それぞれまでの距離が異なる。
【0007】
通常、印字装置では、印字する前に被印字物を戻り方向に搬送させて余白を低減する動作が行なわれるが、その搬送距離が一定で且つ印字部から第1カッター刃および第2カッター刃それぞれまでの距離が異なる場合、使用したカッター刃によって、被印字物はその余白が前後両端にあるもの、前後いずれかの端部にあるもの、および余白がないものという形態のいずれかで発行される。したがって、被印字物の長さがまちまちで無駄が多い。
【0008】
しかし、この印字装置では、搬送機構が被印字物を戻り方向に搬送するときの距離を検知部の検知結果に基づいて制御部が変更するので、少なくとも切断後の被印字物の先頭余白を一定長さに維持することができ、その分だけ無駄な長さが削減される。
【0009】
また、通常、印字部の出口から第1カッター刃および第2カッター刃それぞれまでの距離が異なる印字装置では、被印字物はその余白が前後両端にあるもの、前後いずれかの端部にあるもの、および余白がないものという形態のいずれかで発行される。
【0010】
しかし、この印字装置では、搬送機構が被印字物を戻り方向に搬送するときの距離を検知部の検知結果に基づいて制御部が変更するので、少なくとも切断後の被印字物の先頭余白を一定長さに維持することができ、その分だけ無駄な長さが削減される。
【0011】
本発明の
第2観点に係る印字装置は、第1観点に係る印字装置であって、搬送機構が被印字物を戻り方向に搬送するとき、被印字物の先端が前記印字部に到達するまで搬送する。
【0012】
この印字装置では、搬送機構が被印字物の先端が印字部に到達するまで搬送するので、被印字物の書き出し位置が統一され、少なくとも切断後の被印字物の先頭余白を一定長さに維持することができ、その分だけ無駄な長さが削減される。
【0013】
本発明の
第3観点に係る印字装置は、
第1観点に係る印字装置であって、検知部が印字部の出口と第2カッター刃との隙間おいて被印字物の有無の検知を行う。
【0014】
被印字物は引っ張られた方向に留まる性質があり、被印字物が第2カッター刃で切断される際、及び切断された後は、被印字物はその出口と第2カッター刃との隙間を遮る。
【0015】
この印字装置では、検知部はその隙間が遮られているか否かによって第2カッター刃が使われたか否かを識別することができる。
【0016】
本発明の
第4観点に係る印字装置は、
第3観点に係る印字装置であって、切断された後の被印字物が隙間にないときは検知部が第1信号を前記制御部に発信し、切断された後の被印字物が隙間にあるときは検知部が第1信号とは異なる第2信号を前記制御部に発信する。
【0017】
この印字装置では、制御部は、検知部から入力された信号が第1信号のときは第1カッター刃が使用されたと判定し、検知部から入力された信号が第2信号のときは第2カッター刃が使用されたと判定することができる。
【0018】
本発明の
第5観点に係る印字装置は、
第4観点に係る印字装置であって、制御部が、第1信号を受けているとき、次回の被印字物の発行時には搬送機構を介して被印字物を戻り方向に第1距離だけ搬送し、第2信号を受けているとき、次回の被印字物の発行時には搬送機構を介して被印字物を前記戻り方向に第1距離と異なる第2距離だけ搬送する。
【0019】
この印字装置では、例えば、第1距離と第2距離との差が印字部の出口から第1カッター刃および第2カッター刃それぞれまでの距離の差に設定されたと想定した場合、第1カッター刃が使用され被印字物が第1距離だけ戻り方向に搬送されたときの被印字物の先端位置は、第2カッター刃が使用され被印字物が第2距離だけ戻り方向に搬送されたときの被印字物の先端位置と一致する。
【0020】
本発明の
第6観点に係る印字装置は、
第5観点に係る印字装置であって、制御部が、第2信号を受けているとき、次回の被印字物の発行時に搬送機構を介して被印字物を戻り方向に第2距離だけ搬送した後も検知部からの信号が第2信号のままである場合は、搬送機構を介して被印字物を正方向に第2距離だけ搬送する。
【0021】
この印字装置では、前回の被印字物が切断されなかった場合、被印字物を戻り方向に第2距離だけ搬送した後も検知部からの信号が第2信号のままである。したがって、被印字物を正方向に第2距離だけ搬送することによって、切断されなかった被印字物の切断を促すことができる。
【0022】
本発明の
第7観点に係る印字装置は、
第6観点に係る印字装置であって、音声発生部をさらに備えている。制御部は、
被印字物が正方向に第2距離だけ搬送された後に、音声発生部を介して被印字物の切断を促す音声メッセージを発生させる。
【0023】
この印字装置では、被印字物が正方向に第2距離だけ搬送された後に、音声発生部が被印字物の切断を促すことによって、被印字物の切り忘れを抑制することができる。
【0024】
本発明の
第8観点に係る印字装置は、
第6観点に係る印字装置であって、表示部をさらに備えている。制御部は、
被印字物が正方向に第2距離だけ搬送された後に、表示部を介して被印字物の切断を促すメッセージを表示させる。
【0025】
この印字装置では、例えば、被印字物が正方向に第2距離だけ搬送された後に、表示部が、例えば、点滅表示によって被印字物の切断を促すことによって、被印字物の切り忘れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る印字装置では、搬送機構が被印字物を戻り方向に搬送するときの距離を検知部の検知結果に基づいて制御部が変更するので、少なくとも切断後の被印字物の先頭余白を一定長さに維持することができ、その分だけ無駄な長さが削減される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
(1)計量機10の構成
図1Aは、本発明の一実施形態に係る印字装置50を搭載した計量機10の操作部側から視た斜視図である。
図1Bは、本発明の一実施形態に係る印字装置50を搭載した計量機10のお客様側液晶表示部側から視た斜視図である。
【0030】
図1A及び
図1Bにおいて、計量機10は、本体ケーシング21、計量部23、操作部25、お客様側液晶表示部27、印字装置50、及び制御部40(
図2参照)を備えている。
【0031】
計量部23は本体ケーシング21の上面に配置され、操作部25は本体ケーシング21の前面に設けられている。お客様側液晶表示部27は、本体ケーシング21を挟んで操作部25の反対側に配置されている。
【0032】
また、印字装置50は、操作部25を正面から視て本体ケーシング21の右側に配置されている。印字装置50には、印刷済みのラベルまたはレシートが排出される排出口50aが設けられている。排出口50aの内部には、ラベル用紙あるいはレシート用紙が収納されており、これらラベル用紙あるいはレシート用紙は搬送経路上を搬送されて、印字機構によって印字が行われた後に、排出口50aから排出される。
【0033】
図2は、計量機10の制御ブロック図である。
図2において、制御部40は、CPU41とメモリ43とを搭載しており、本体ケーシング21若しくは操作部25の内部に配置される。本実施形態では、制御部40は、操作部25の内部に配置され、計量部23、操作部25、お客様側液晶表示部27、印字装置50及び音声発生部81と信号の送受信ができるように接続されている。
【0034】
(2)印字装置50の構成
図3は、印字装置50の断面図である。また、
図4は、印字装置50の排出口50a周辺の拡大斜視図である。
図3及び
図4において、印字装置50は、印字機構51、用紙検知センサ61、第1カッター刃71および第2カッター刃72を備えている。
【0035】
図3において、レシート用紙Rは、収納部(図示せず)においてはロール状に収納されており、その収容部から搬送経路50bを経て排出口50aに導かれる。
【0036】
(2−1)印字機構51
印字機構51は、その搬送経路50bの途中に配置されている。印字機構51は、サーマルヘッド53と、プラテンローラ55と、放熱板57と、ヘッド押付バネ59とを有している。
【0037】
サーマルヘッド53は、基板上に多数の発熱素子が配列されることによって構成されており、レシート用紙Rに接触した状態で熱を加えて印刷する。プラテンローラ55は、サーマルヘッド53との間にレシート用紙Rを挟んで搬送する。プラテンローラ55は、ステッピングモータ55aからベルト(図示せず)を介して駆動力が伝達され回転する。
【0038】
放熱板57は、サーマルヘッド53の熱を逃がす。ヘッド押付バネ59は、サーマルヘッド53をプラテンローラ55に向けて押し付けている。
【0039】
制御部40は、レシートRの発行に先立ってプラテンローラ55を介してレシート用紙Rを戻り方向に必要距離だけ搬送し、サーマルヘッド53を介してレシート用紙Rに必要事項を印字した後、今度は、プラテンローラ55を介してレシート用紙Rを正方向に所定距離だけ搬送する。
【0040】
(2−2)用紙検知センサ61
用紙検知センサ61は、レシート用紙Rの終端部を検知するセンサである。そのため、用紙検知センサ61は、レシート用紙Rの搬送経路50bのうち、印字機構51より下流側に存在する空間で、且つ排出口50aより上方の空間に配置される。具体的には、印字装置50の本体内で、排出口50aを通る水平面と、第2カッター刃72の刃先を通る水平面との間の空間に配置されている。
【0041】
用紙検知センサ61は、反射式赤外線センサである。もちろん、用紙検知センサ61は反射式赤外線センサに限定されるものではなく、発行素子と受光素子とを組み合わせた透過式赤外線センサが選択されてもよい。
【0042】
図3に示すように、レシート用紙Rは排出口50aから斜め上方向に排出されるので、排出されたレシート用紙Rは排出口50aと第2カッター刃72との隙間に留まり、用紙検知センサ61の前方を遮ることになる。用紙検知センサ61は、その前方の隙間が遮られていないときはLo信号を制御部40に発信し、その隙間が遮られているときはHi信号を制御部40に発信する。
【0043】
また、レシート用紙Rは、引っ張られた方向に留まる性質があり、第2カッター刃72で切断される際および切断された後は、レシート用紙Rは排出口50aと第2カッター刃72との隙間を遮るので、制御部40は、レシート用紙Rへの印字に先立ってレシート用紙Rを戻り方向に必要距離だけ搬送する際に、用紙検知センサ61からの信号がLo信号であるときは前回のレシート用紙Rの切断が第1カッター刃71で行われたと判定し、用紙検知センサ61からの信号がHi信号であるときは前回のレシート用紙Rの切断が第2カッター刃72で行われたと判定する。
【0044】
仮に、前回に発行したレシート用紙Rが切断されなかった場合、制御部40がレシート用紙Rを戻り方向に必要距離だけ搬送する前も、搬送した後も用紙検知センサ61が用紙検知センサ61の前方を遮っているので、用紙検知センサ61のからの信号はHi信号のままである。したがって、そのような場合、制御部40はレシート用紙Rを正方向に所定距離だけ搬送することによって、切断されなかったレシート用紙Rの切断を促す。
【0045】
(2−3)第1カッター刃71及び第2カッター刃72
図4に示すように、第1カッター刃71及び第2カッター刃72は、排出口50aの近傍に配置されている。第1カッター刃71は、排出口50aの前方かつ下方に位置している。第2カッター刃72は、排出口50aの前方かつ上方に位置している。第1カッター刃71及び第2カッター刃72は、刃先が鋸歯状に成形されている。
【0046】
印字装置50の使用者がレシート用紙Rを上下どちらの方向に引っ張るのかは、使用者の慣れ、或いは経験則によって異なるが、この構成によって、レシート用紙Rは上下どちらの方向に引っ張られても切断される。
【0047】
また、裏面側に糊層を有するラベルを用紙として用いる場合には、ラベルを糊層のある裏面側から切断した場合、糊が第2カッター刃72に付着して離れず、次に印字されて繰り出されたラベルの先端が第2カッター刃72の刃先に付着し、後続部分が筒状に巻かれてしまう。それゆえ、本実施形態では、第2カッター刃72に非粘着コーティングが施されており、ラベルの裏面側が第2カッター刃72に付着する事態を防止することができる。
【0048】
また、第2カッター刃72に切断後のラベルやレシート用紙Rの先端が付着したままの状態になっても、ラベルやレシート用紙Rの発行に先立ってラベルやレシート用紙Rが戻り方向に必要距離だけ搬送されるので、付着は解消される。
【0049】
なお、上記(2−2)の後段で記載した「戻り方向に必要距離だけ搬送」および「正方向に予め設定された距離だけ搬送」という事項の「必要距離」については、前回の切断が第1カッター刃71で行われている場合には第1カッター刃71の刃先からサーマルヘッド53までの距離に相当する第1距離であって、前回の切断が第2カッター刃72で行われている場合には第2カッター刃72の刃先からサーマルヘッド53までの距離に相当する第2距離である。
【0050】
また、同じく上記(2−2)の後段で記載した「正方向に所定距離だけ搬送」という事項の「所定距離」については、前回の切断が第1カッター刃71及び第2カッター刃72にどちらで行われていようとも、第2カッター刃72の刃先からサーマルヘッド53までの距離に相当する第2距離に設定されている。
【0051】
(3)動作
印字装置50では、印字する前にレシート用紙Rを戻り方向に搬送させて余白を低減する動作が行なわれる。
【0052】
例えば、レシート用紙Rの切断条件は、前回および今回とも第1カッター刃71で切断されるという第1切断条件、前回および今回とも第2カッター刃72で切断されるという第2切断条件、前回が第1カッター刃71で切断され、今回が第2カッター刃72で切断されるという第3切断条件、及び、前回が第2カッター刃72で切断され、今回が第1カッター刃71で切断されるという第4切断条件が想定される。
【0053】
図5Aは、第1切断条件下の前回および今回におけるレシート用紙R周辺の側面図である。
図5Bは、第2切断条件下の前回および今回におけるレシート用紙R周辺の側面図である。
図5Cは、第3切断条件下の前回および今回におけるレシート用紙R周辺の側面図である。
図5Dは、第4切断条件下の前回および今回におけるレシート用紙R周辺の側面図である。
【0054】
図6Aは、戻り搬送距離が一定の場合の第1切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図6Bは、戻り搬送距離が一定の場合の第2切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図6Cは、戻り搬送距離が一定の場合の第3切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図6Dは、戻り搬送距離が一定の場合の第4切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
【0055】
戻り方向の搬送距離が一定の場合、
図5Aに示す第1切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図6Aに示すようにレシート用紙Rの余白が後端に存在する。また、
図5Bに示す第2切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図6Bに示すようにレシート用紙Rの余白が前端に存在する。また、
図5Cに示す第3切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図6Cに示すようにレシート用紙Rの余白が前後両端ともに存在しない。また、
図5Dに示す第4切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図6Dに示すようにレシート用紙Rの余白が前後両端ともに存在する。
【0056】
つまり、本実施形態では排出口50aから第1カッター刃71および第2カッター刃72それぞれまでの距離が異なるので、どちらのカッター刃を使用したかによってレシート用紙Rの余白が前後両端にあるもの、前後いずれかの端部にあるもの、および余白がないものという形態のいずれかで発行され、無駄が多い。なお、余白のでき方が各切断条件によって異なる理由については、本書末段の[(6)補足事項]を参照されたし。
【0057】
本実施形態では、そのような余白の有無の形態が多数存在することを避けるため、制御部40がプラテンローラ55を介してレシート用紙Rを戻り方向に搬送するときの距離を用紙検知センサ61からの信号に基づいて変更している。
【0058】
具体的には、レシート用紙Rは、引っ張られた方向に留まる性質があり、第2カッター刃72で切断される際および切断された後は、レシート用紙Rは排出口50aと第2カッター刃72との隙間を遮る。用紙検知センサ61は、その隙間が遮られていないときはLo信号を制御部40に発信し、その隙間が遮られているときはHi信号を制御部に発信する。
【0059】
制御部40は、用紙検知センサ61から入力された信号がLo信号のときは第1カッター刃71が使用されたと判定し、Hi信号のときは第2カッター刃72が使用されたと判定することができる。
【0060】
制御部40は、Lo信号を受けているときは、レシート用紙Rの発行に先立って、一旦、戻り方向に第1距離だけ搬送する。他方、Hi信号を受けているとき、レシート用紙Rの発行に先立って戻り方向に第1距離より長い第2距離だけ搬送する。第1距離と第2距離との差は、排出口50aから第1カッター刃71および第2カッター刃72それぞれまでの距離の差に設定されている。
【0061】
したがって、第1カッター刃71が使用されレシート用紙Rが第1距離だけ戻り方向に搬送されたとき、その先端位置は、第2カッター刃72が使用されレシート用紙Rが第2距離だけ戻り方向に搬送されたときの先端位置と一致する。
【0062】
但し、制御部40が、Hi信号を受けているとき、レシートRの発行に先立って戻り方向に第2距離だけ搬送した後も用紙検知センサ61からの信号がHi信号のままである場合は、前回に発行したレシート用紙Rが切断されなかった可能性が高く、レシート用紙Rを戻り方向に第2距離だけ搬送した後も用紙検知センサ61の前方を遮っているので、信号はHi信号のままである。したがって、そのような場合は、レシート用紙Rを正方向に第2距離だけ搬送することによって、切断されなかったレシート用紙Rの切断を促すことができる。
【0063】
そして、制御部40は、サーマルヘッド53を介してレシートRの表面に印字データを印字したのち、レシート用紙Rを正方向に搬送する。このときの搬送距離は、少なくとも第2カッター刃72で切断されても印字領域の後端部が切断されない距離に設定される。それは、理論的には第2距離に相当する。
【0064】
次に、上記のような構成による効果を、
図7A〜
図7Dを用いて説明する。
図7Aは、戻り搬送距離が可変の場合の第1切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図7Bは、戻り搬送距離が可変の場合の第2切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図7Cは、戻り搬送距離が可変の場合の第3切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
図7Dは、戻り搬送距離が可変の場合の第4切断条件で切断されたレシート用紙Rの平面図である。
【0065】
なお、
図7B及び
図7Dの印字領域の前端に描かれている点線で囲まれた空白部分は、
図6B及び
図6Dで余白として描かれていた部分である。
【0066】
図5Aに示す第1切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図7Aに示すようにレシート用紙Rの余白が後端に存在する。また、
図5Bに示す第2切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図7Bに示すようにレシート用紙Rの余白が前後両端ともに存在しない。また、
図5Cに示す第3切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図7Cに示すようにレシート用紙Rの余白が前後両端ともに存在しない。また、
図5Dに示す第4切断条件で切断されたレシート用紙Rは、
図7Dに示すようにレシート用紙Rの余白が後端に存在する。
【0067】
つまり、レシート用紙Rに対して、印字開始位置を一定にすることができるので、戻り方向の搬送距離が一定の場合に比べて、切断後にレシート用紙Rの余白が前端に存在するもの、及び前後両端に存在するものを解消することができており、不要な余白の削減が成されている。
【0068】
(4)制御フロー
(4−1)前回排出されたレシート用紙Rが切断されている場合
次に、上記動作を制御の観点から、制御フローチャートを用いて説明する。
【0069】
図8Aは、印字装置50の制御内容を示す制御フローのメインルーチンのチャートである。便宜上、計量機10において、販売員の操作によって商品販売の決済が終了した以降から説明する。
【0070】
先ず、制御部40は、ステップS1において、商品販売の決済が終了したか否かを判定し、その決済が終了していると判定したときはステップS2に進み、その決済が終了していないと判定したときは、引き続き、商品販売の決済が終了したか否かを判定するための監視を行う。
【0071】
次に、制御部40は、ステップS2において、用紙検知センサ61からの信号がLo信号か否かを判定し、Lo信号と判定したときはステップS3Aに進み、Lo信号ではない(Hi信号)と判定したときはステップS3Bに進む。
【0072】
次に、制御部40は、ステップS3Aにおいては、レシート用紙Rを第1距離だけ戻り方向に搬送する。これは、用紙検知センサ61からの信号がLo信号であるので、前回に排出されたレシート用紙Rが第1カッター刃71で切断されたと判断したからでる。
【0073】
また、制御部40は、ステップS3Bにおいては、レシート用紙Rを第2距離だけ戻り方向に搬送する。これは、用紙検知センサ61からの信号がHi信号であるので、前回に排出されたレシート用紙Rが第2カッター刃72で切断されたと判断したからでる。その後、制御部40は、ステップS3Cに進んで、用紙検知センサ61からの信号がLo信号か否かを判定し、Lo信号と判定したときはステップS4に進み、Lo信号ではない(Hi信号)と判定したときはサブルーチンAに進む。
【0074】
次に、制御部40は、ステップS4において、その商品販売に関する印字データを生成し、ステップS5へ進む。
【0075】
次に、制御部40は、ステップS5において、印字データに基づいて、サーマルヘッド53を介してレシート用紙Rの表面に印字する。
【0076】
次に、制御部40は、ステップS6において、プラテンローラ55を回転させ、レシート用紙Rの印字済みの領域を排出口50aから外部へ排出する。
【0077】
次に、制御部40は、ステップS7において、お客様用液晶表示部27に「レシートをお取りください」などの、レシート取り忘れ防止用のメッセージを表示又は点滅表示する。なお、制御部40は、そのメッセージとともに、音声発生部81を介して「レシートをお取りください」などの音声メッセージを流してもよい。
【0078】
(4−2)前回排出されたレシート用紙Rが切断されていない場合
図8Bは、印字装置50の制御内容を示す制御フローのサブルーチンのチャートである。ここからは、制御部40がステップS3Cにおいてレシート用紙Rを第2距離戻した後の用紙検知センサ61からの信号がLo信号でなかった(Hi信号であった)と判定してサブルーチンAへ進んだ後の制御について説明する。
【0079】
制御部40は、ステップS31において、レシート用紙Rを第2距離だけ正方向に搬送する。
【0080】
次に、制御部40は、ステップS32において、音声メッセージ或いはお客様用液晶表示部27を介して前回発行したレシート用紙Rの切断を促す。
【0081】
次に、制御部40は、ステップS33において、レシート用紙Rを第2距離だけ戻り方向に搬送する。
【0082】
次に、制御部40は、ステップS34において、用紙検知センサ61からの信号がLo信号か否かを判定し、Lo信号と判定したときはメインルーチンのステップS4に戻り、Lo信号ではない(Hi信号)と判定したときはステップS35に進む。
【0083】
制御部40は、ステップS35において、前回のレシート用紙Rの切断は無理と判断し、メインルーチンのステップS4に戻る。なお、ステップS35は、別の処理に置き換えられてもよい。例えば、制御部40は、オペレータによるリセット操作を待って、リセット信号が入力されたか否かを判定して、リセット信号が入ったときにメインルーチンのステップS4へ戻ってもよい。
【0084】
(5)特徴
(5−1)
印字装置50では、その排出口50aから第1カッター刃71および第2カッター刃72それぞれまでの距離が異なり、用紙検知センサ61が前方を遮られているか否かによって第2カッター刃が使われたか否かを識別する。制御部40は、用紙検知センサ61から入力された信号がLo信号のときは第1カッター刃71が使用されたと判定し、用紙検知センサ61から入力された信号がHi信号のときは第2カッター刃72が使用されたと判定する。さらに、制御部40は、用紙検知センサ61からの信号がLoかHiかによって、プラテンローラ55がレシート用紙Rを戻り方向に搬送するときの距離を変更する。その結果、少なくとも切断後のレシート用紙Rの先頭余白を一定長さに維持することができる、余白の無駄な長さが削減される。
【0085】
(5−2)
印字装置50では、プラテンローラ55がレシート用紙Rの先端がサーマルヘッド53に到達するまで搬送するので、レシート用紙Rの書き出し位置が統一され、少なくとも切断後のレシート用紙Rの先頭余白を一定長さに維持することができ、その分だけ無駄な長さが削減される。
【0086】
(5−3)
印字装置50では、第1距離と第2距離との差が排出口50aから第1カッター刃71および第2カッター刃72それぞれまでの距離の差に設定されたと想定した場合、第1カッター刃71が使用されレシート用紙Rが第1距離だけ戻り方向に搬送されたときのレシート用紙Rの先端位置は、第2カッター刃が使用されレシート用紙Rが第2距離だけ戻り方向に搬送されたときのレシート用紙Rの先端位置と一致する。
【0087】
(5−4)
印字装置50では、前回のレシート用紙Rが切断されなかった場合、レシート用紙Rを戻り方向に第2距離だけ搬送した後に再び正方向に第2距離だけ搬送することによって、切断されなかったレシート用紙Rの切断を促すことができる。
【0088】
(5−5)
印字装置50では、レシート用紙Rが正方向に第2距離だけ搬送された後に、音声発生部81がレシート用紙Rの切断を促すことによって、レシート用紙Rの切り忘れを抑制することができる。
【0089】
(5−6)
印字装置50では、レシート用紙Rが正方向に第2距離だけ搬送された後に、お客様側液晶表示部27が、メッセージ若しくは点滅表示によってレシート用紙Rの切断を促すことによって、レシート用紙Rの切り忘れを抑制することができる。
【0090】
(6)補足事項:レシート用紙Rの余白の形態が複数ある原因
本実施形態では排出口50aから第1カッター刃71および第2カッター刃72それぞれまでの距離が異なるので、どちらのカッター刃を使用したかによってレシート用紙Rの余白が前後両端にあるもの、前後いずれかの端部にあるもの、および余白がないものという形態のいずれかで発行されている。
【0091】
このように余白の有無が切断条件によって異なる要因は、印字に先立ちレシート用紙Rを戻り方向に搬送する距離と、印字後にレシート用紙Rを正方向に搬送する距離とが異なることに起因する。
【0092】
図9Aは、第1カッター刃71で切断された直後のレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図9Aにおいて、レシート用紙Rは第1カッター刃71で切断された直後であるので、レシート用紙Rの先端は第1カッター刃71の刃先位置と対応している。
【0093】
また、排出口50aから第1カッター刃71及び第2カッター刃72までの距離それぞれは異なるので、説明の便宜上それぞれをd1及びd2、d1<d2とする。さらに、排出口50aからサーマルヘッド53までの距離をDとする。
【0094】
ここで、第1カッター刃71からサーマルヘッド53までの距離DC1、第2カッター刃72からサーマルヘッド53までの距離DC2とすると、DC1=d1+D、DC2=d2+Dであり、必然的にDC1<DC2である。
【0095】
図9Bは、印字に先立ち距離DC1だけ戻り方向に搬送されたレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図9Bにおいて、印字に先立ちレシート用紙Rを戻り方向に搬送する距離は、距離の短いDC1に設定されている。なぜなら、第1カッター刃71で切断された後に距離DC1より長い距離DC2も戻してしまうと、レシート紙Rの先端がサーマルヘッド53よりも上流側に到達してしまい、印字データの先頭部分が記載されない事態となるからである。
【0096】
図9Cは、印字が行われ印字領域の分だけ搬送されたときのレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図9Cにおいて、印字が開始と同時にレシート用紙Rは印字速度に対応した速度で正方向に搬送され、予め設定されている印字領域分だけは正方向に進む。
【0097】
印字後、レシート用紙Rを排出のために正方向に進めるときは、サーマルヘッド53から第2カッター刃72までの距離DC2だけ搬送しなければならない。なぜなら、印字されたレシート用紙Rが第1カッター刃71及び第2カッター刃72のどちらで切断されても、印字領域が切断されないようにするためである。
【0098】
図9Dは、距離DC2だけ正方向に搬送されたレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図9Dにおいて、距離DC2だけ正方向に搬送された結果、印字領域の端は第2カッター刃72の刃先位置と対応している。
【0099】
例えば、サーマルヘッド53から第1カッター刃71までの距離DC1だけしか搬送しなかった場合は、印字領域の端が第1カッター刃71の位置と一致し、第2カッター刃72には到達しておらず、仮に第2カッター刃72で切断されると印字領域が途中で切断されてしまうことになる。これを防止するため、印字装置50では、
図9A〜
図9Dに示す手順でレシート用紙Rの搬送が行われる。
【0100】
したがって、前回切断の刃が第1カッター刃71で今回切断の刃が第1カッター刃71の場合(
図5Aにおける第1切断条件)では、
図6Aに示すように切断後のレシート用紙Rの後端にのみ余白が存在する。そして、前回切断の刃が第1カッター刃71で今回切断の刃が第2カッター刃72の場合(
図5Cにおける第3切断条件)では、
図6Cに示すように切断後のレシート用紙Rの前後両端に余白が存在しない。
【0101】
図10Aは、第2カッター刃72で切断された直後のレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図10Aにおいて、第2カッター刃72で切断された直後であるので、レシート用紙Rの先端は第2カッター刃72の刃先位置と対応している。
【0102】
図10Bは、印字に先立ち距離DC1だけ戻り方向に搬送されたレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図10Bにおいて、距離DC1だけ戻された結果、レシート用紙Rの先端がサーマルヘッド53の印字開始位置よりも排出口50a側に突出した状態になっている。その突出代は[d2−d1]に相当する。したがって、レシート用紙Rの前端に余白ができる。
【0103】
図10Cは、印字が行われ印字領域の分だけ搬送されたときのレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図10Cにおいて、印字が開始と同時にレシート用紙Rは印字速度に対応した速度で正方向に搬送され、予め設定されている印字領域分だけは正方向に進む。
【0104】
図10Dは、距離DC2だけ正方向に搬送されたレシート用紙Rの周辺の側面図である。
図10Dにおいて、距離DC2だけ正方向に搬送された結果、印字領域の後端は第2カッター刃72の刃先位置と対応している。
【0105】
この状態で、レシート用紙Rが第1カッター刃71で切断されると、切断後のレシート用紙Rの後端には余白ができ、その結果、レシート用紙Rの前後両端に余白が形成される。逆に、レシート用紙Rが第2カッター刃72で切断されると、切断後のレシート用紙Rの後端には余白ができず、その結果、レシート用紙Rの前端にのみ余白が存在する。
【0106】
したがって、前回切断の刃が第2カッター刃72で今回切断の刃が第1カッター刃71の場合(
図5Dにおける第4切断条件)では、
図6Dに示すように切断後のレシート用紙Rの前後両端に余白が存在する。そして、前回切断の刃が第2カッター刃72で今回切断の刃が第2カッター刃72の場合(
図5Bにおける第2切断条件)では、
図6Bに示すように切断後のレシート用紙Rの前端にのみ余白が存在する。
【0107】
(7)送り距離の調整方法
図11は、切断される前のレシート用紙Rの周辺の側面図である。ここでは、
図11を参照しながら、レシート用紙Rの送り距離の調整方法について説明する。調整パラメータとして、余白候補A、前進送り距離F、及び後進送り距離Bを用いる。
【0108】
なお、後進送り及び前進送りにおいて、スベリなどのない理想的な状態においては、Aは第1カッター刃71から第2カッター刃72までの水平距離に等しく、F及びBは第1カッター刃71からサーマルヘッド53までの距離DC1に等しく、A+Fは第2カッター刃72からサーマルヘッド53までの距離DC2に等しい。
【0109】
図11において、レシート用紙Rの切断が第1カッター刃71で行われる第1パターン、つまり、用紙検知センサ61の前方が遮られない場合、次回レシート発行時の印字前のレシート用紙Rの後進送り距離はBである。
【0110】
他方、レシート用紙Rの切断が第2カッター刃72で行われる第2パターン、つまり、用紙検知センサ61の前方が遮られる場合、次回レシート発行時の印字前のレシート用紙Rの後進送り距離はA+Bである。
【0111】
また、上記第1パターン及び上記第2パターンにおける印字後の前進送り距離は、第2カッター刃72で切断されることを想定すればA+Fである。
【0112】
なお、余白候補の寸法であるAは、上記第1パターンと上記第2パターンとで印字結果の位置が同じになるように調整される。
【0113】
前進送り距離A及び後進送り距離Bの2つのパラメータは、後進および前進におけるスベリなどの影響で実際の送り量を補正するために設定されている。
【0114】
前進送り距離Fは、前進印字で印字エリアが第2カッター刃72よりも前に出るように調整される。
【0115】
後進送り距離Bは、大き過ぎるとレシート用紙Rを押えるプラテンローラ55から脱落することがあるので、印字結果の開始位置がレシート用紙Rの先頭から余白分離れた位置となるように、安全度を確認しながら調整される。