(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記床板支持材は、前記斜め方向に沿った端面を有し、該端面が、前記免震建物側の出隅頂点に沿って摺動することで、前記床板支持材が前記斜め方向に沿って上方移動、下方移動することを特徴とする請求項2に記載の免震クリアランス用床板垂直可動装置
前記床板の上端が保持され、前記一方の側壁側に形成されたピン受けに挿入された水平固定ピンを更に備え、前記水平固定ピンが前記ピン受けに対して鉛直方向に抜き差し可能に保持されることにより、前記床板は、水平方向に移動することなく鉛直方向のみ移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震クリアランス用床板垂直可動装置。
前記床板の先端部は、水平方向に対して角度θの傾きを有する端面を有し、前記前記他方の側壁側に形成された前記段落ち部に前記端面と合致する、前記角度θを有する斜面が形成され、前記床板支持材が前記角度θで、前記斜め方向に上方移動、下方移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震クリアランス用床板垂直可動装置。
前記ロック部材は、前記床板支持材の前記床板に対する水平スライドに伴って吊り軸回りに回動して該床板支持材の一部に係止して、その後のスライド時に前記床板と前記床板支持材とを一体動作させる請求項2に記載の免震クリアランス用床板垂直可動装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、第1発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は矢視b−bから見た側面図である。
【0018】
[第1発明による実施形態の構成]
免震建物40は、例えば、基礎と上部構造との間に免震用のゴム支承が据え付けられた建物からなる。
図1においては、免震建物40と、地盤(以後、本明細書において、同義で固定側、地球側とも称する。)50と、を連絡するように設けられた免震クリアランス用床板垂直可動装置10(以下、簡略のために床板垂直可動装置10と記す。)の全体図が示されている。免震建物40の周囲には、地震時に免震建物40が地盤50に接触しないように、地盤50との間の隙間である、いわゆる免震クリアランス15が設けられている。本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10では、後述するデッキプレート20で免震クリアランス15を覆い塞ぐことにより、地盤50側と免震建物40内との間の通路を確保するものである。なお、免震建物40の端部及び地盤50の端部には、免震建物40の床面及び地盤50面から一段下がった、床板垂直可動装置10を収容するための段落ち部40b、50bが形成されている。床板垂直可動装置10は、通常時、これらの段落ち部40b、50bに設置され収容されている。
【0019】
免震建物40に設置された段落ち部40bは、免震建物40の外周に沿って設けられている。
図1(b)に示す段落ち部の幅W1は、デッキプレート20の端部の所定の掛かり代(たとえば50mm程度)と掛かり状態のクリアランスを確保し、さらに後述する水平固定ピン60を挿入できる程度のピン穴40cを設置できる程度に設定することが好ましい。本実施形態では60mmに設定されている。また、段落ち部40bの側壁面は、略鉛直となるように形成されている。
【0020】
一方、地盤50に設置された段落ち部50bも同様に、免震建物40の外周に沿って設けられている。段落ち部50bの幅W3は、免震クリアランス15の幅W2よりも大きい値に設定されている。また、段落ち部50bの側面は、水平面に対して角度θを有する斜面である。なお、本実施形態においては、θ=45°に設定されている。
【0021】
[床板垂直可動装置の構成]
床板垂直可動装置10は、免震クリアランス15を塞いで歩行者等の通行路となる、床板として機能するデッキプレート20と、このデッキプレート20を上昇、下降させる昇降装置30と、デッキプレート20の水平方向の動きを制限する水平固定ピン60とを備えている。なお、
図1(a)においては、昇降装置30及び段落ち部40b、50bを表現するために、デッキプレート20の一部の図示を省略している。
【0022】
デッキプレート20としては、建物の外構意匠等に合わせて、例えば、縞鋼板、エキスパンドメタル、各種グレーチング、あるいは表面に滑り止め加工が施された鋼板の他、プレキャストコンクリート板、タイル、自然石、人工石、PVCシート等の合成樹脂シートによる仕上げ面を有するコンクリートあるいはモルタル加工板、ウッドデッキ、所定強度の樹脂フレーム、パネル等で製作することができる。デッキプレート20は、その形状が通常時に段落ち部40b、50bにより画定される空間とほぼ一致するように製作されている。すなわち、デッキプレート20の幅は、略W1+W2+W3の幅を有し、デッキプレート20の厚みは、段落ち部40b、50bの深さと略同一である。また、デッキプレート20の先端は、水平上面に対して角度θ=45°となるように加工されている。ここで、デッキプレート20、あるいはその他の部材の「先端」とは、地盤50側(
図1(a)中の右側)の端部をいい、デッキプレート20、あるいはその他の部材の「後端」とは、免震建物40側(
図1(b)中の左側)の端部をいうものとする。同様に、本明細書において、「前方」の語は地盤50側の方向をさし、「後方」の語は免震建物40側の方向をさして用いることとする。なお、デッキプレート20には、免震建物40にあけられたピン穴40cに挿入された水平固定ピン60の頭部が連結されている。水平固定ピン60はピン穴40cに沿って上下方向のみにスライド可能にピン穴40cに保持されている。そのため、デッキプレート20は、水平固定ピン60により水平方向の移動が制限され、上下方向のみの移動が可能である。
【0023】
昇降装置30は、地震時の免震建物40の揺れによる水平方向力がデッキプレート20に作用しないように、デッキプレート20を垂直に上昇、下降する装置である。
図2は、本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10の昇降装置を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は全体斜視図である。
【0024】
図2(a)に示すように、昇降装置30は、免震クリアランス15を画定する免震建物40の側壁40a(
図1(b))に昇降装置30を取り付けるための取付部材31と、この取付部材31に溶接されたストッパ33と、デッキプレート20を支持するためのデッキプレート支持材34とを有している。
【0025】
取付部材31は、例えば、既製の溝型鋼を利用したり、鋼板をコ字形状断面となるように曲げ加工することにより形成されている。取付部材31は、アンカーボルト(不図示)等により、免震建物40の側壁40a(
図1(b))に取り付けられる。また、取付部材31は、上部を貫通したスライド軸32を有している。スライド軸32は、例えば、M8の普通ボルトである。
【0026】
ストッパ33は、例えば、鋼板を等脚台形の形状で切り出し、両サイドの三角形の部分を直角に折り曲げて形成されたものである。切り出した等脚台形の下底の両端の内角は、本実施形態では角度θ=45°に設定されている。ストッパ33は、その開放部が取付部材31の外側にはめ込まれ、取付部材31に溶接付けされている。
【0027】
デッキプレート支持材34は、例えば、鋼板を曲げ加工することにより形成されたものである。デッキプレート支持材34の後方には、水平方向に対して角度θ=45°で切断されたスライド端面34aが形成されている。また、デッキプレート支持材34には、長手方向をスライド端面34aに沿ってあけられた長孔であるガイド溝34bが形成されている。このガイド溝34bに取付部材31に設けられたスライド軸32が挿通され、ナットで固定されることにより、デッキプレート支持材34が取付部材31に取り付けられる。このようにデッキプレート支持材34が取り付けられることで、ストッパ33のスライド端面33aと、デッキプレート支持材34のスライド端面34aとが当接する。そして、デッキプレート支持材34に後方に向かう力が加えられると、デッキプレート支持材34はストッパ33のスライド端面33aを摺動し、斜め上方に押上げられる。
【0028】
次に、昇降装置30の具体的な動作について説明する。
図3各図は、本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10が有する昇降装置の種々の状態を示した斜視図であり、(a)は通常時、(b)はデッキプレート支持材が半分程度押上げられた状態、(c)はデッキプレート支持材が最大に押上げられた状態を示している。
【0029】
(通常時)
図3(a)に示すように、通常時に、デッキプレート支持材34はデッキプレート20等の自重により押し下げられた状態にある。スライド軸32は、ガイド溝34bの上端に位置しているため、これ以上デッキプレート支持材は斜め下方に押し下げられることはない。この状態から、デッキプレート支持材34の先端が後方に向けて押圧されると、デッキプレート支持材34はストッパ33に沿って斜め上方にせり上がるとともに、スライド軸32はガイド溝34bの上端から中央部分にまで移動する(
図3(b))。
図3(b)の状態から、さらにデッキプレート支持材34の先端が側壁50aによって後方に向けて押圧されると、デッキプレート支持材34はさらに斜め上方にせり上がる。このように、デッキプレート支持材34の先端が後方に向けて押圧されることにより、デッキプレート支持材34を斜め45度の方向に所定量移動させることができる。なお、デッキプレート支持材34はの高さ分だけ上昇するが、その高さ以上では側壁50aからの押圧力が伝わらないので、デッキプレート支持材34は上昇することはない。その後、
図3(c)の状態からデッキプレート支持材34に前方からの押圧がなくなると(側壁50aとの接触が解かれると)、デッキプレート支持材34は自重により斜め下方に押し下げられ、
図3(a)の状態に復帰する。
【0030】
(昇降動作時)
図1(b)に示すように、水平固定ピン60は、例えば普通ボルトから構成されており、免震建物40に形成されたピン穴40c及びデッキプレート20に形成されたピン孔(不図示)に連通されている。免震建物40に形成されたピン穴40cの径は、水平固定ピン60の径よりも大きい。そのため、水平固定ピン60はピン穴40cに抜き差し自在となっている。また、水平固定ピン60の首下長さLは、デッキプレート20が上下方向に移動可能な長さ以上が確保されている。そのため、デッキプレート20の上下方向の移動により水平固定ピン60が抜け落ちることはない。このような構成とすることで、デッキプレート20は、固定ピンがピン穴40cに引っ掛ることより水平方向の移動が拘束される一方、上下方向の移動は可能である。
【0031】
なお、デッキプレート20は、昇降装置30のデッキプレート支持材34上に載置されている。そのため、デッキプレート20と、デッキプレート支持材34との間には、水平方向へのずれが許容される。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る床板垂直可動装置10の動作について説明する。
図4、
図5は、本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10の種々の状態を示した側面図であり、
図4(a)は通常時、
図4(b)は躯体間が通常時よりも広い時、
図5(a)は免震クリアランス用床板垂直可動装置10がせり上がった状態、
図5(b)は免震クリアランス用床板垂直可動装置10が最大に押上げられた状態を示している。また
図6は、本発明の実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10の種々の状態を示した斜視図であり、(a)は通常時、(b)は躯体間が通常時よりも広い時、(c)は免震クリアランス用床板垂直可動装置10が最大に押上げられた状態を示している。
【0033】
図4(a)、
図6(a)に示すように、通常時には、デッキプレート20は、免震建物40及び地盤50に形成された段落ち部40b、50bに収容される。前述したように、デッキプレート20は、その形状が段落ち部40b、50bにより区画された空間とほぼ一致するため、デッキプレート20と免震建物40との間には殆ど隙間は存在しない。また、デッキプレート20と免震建物40と地盤50とは同一面で納まった状態にある。また、昇降装置30は、通常時、免震クリアランス15内に収容され、デッキプレート支持材34は、その先端が地盤50の側壁50aにほぼ接するように構成されている。
【0034】
図4(b)、
図6(b)に示すように、地震が発生し、免震建物40と地盤50との隙間が大きくなると、デッキプレート20は地盤50上をスライドする。地盤50の段落ち部50bの幅は、前述したように免震クリアランス15の幅以上確保されており、そのため、デッキプレート20は躯体間を塞ぐのに十分な幅を有している。
【0035】
図5(a)に示すように、地震により免震建物40と地盤50との隙間が通常時よりも小さくなると、デッキプレート支持材34は、その先端部が地盤50の側壁50aにより免震建物40の方向へ押圧される。先端部が押圧されたデッキプレート支持材34は、上述したように斜め45度の方向へ押上げられる。なお、本明細書においては、説明の複雑化を防ぐために、昇降装置30、及びデッキプレート20が固定されている免震建物40を不動として、昇降装置30、及びデッキプレート20の具体的な動きを説明するものとする。デッキプレート20はデッキプレート支持材34上に載置されているため、デッキプレート支持材34と同様に斜め45度の方向へ動こうとする。しかしながら、デッキプレート20は、水平固定ピン60により水平方向の動きが制限されている。そのため、デッキプレート20は、デッキプレート支持材34の移動量のうち、高さ成分の移動量だけ上方に押上げられる。
【0036】
なお、地盤50に形成された段落ち部50bの斜面、及びデッキプレート20の先端部は、共に水平に対して45°の傾きを有している。この角度は、デッキプレート支持材34の移動する方向と水平面との角度と同一である。これにより、デッキプレート20の先端部を段落ち部50bの斜面に沿わせながら押上げることができ、デッキプレート20は略水平状態を保持して上下方向に移動することができる。
【0037】
図5(a)に示す状態から、さらに免震建物40と地盤50との隙間が小さくなると、デッキプレート支持材34はさらに押圧されて斜め上方に移動すると共に、デッキプレート20はさらに上方に移動する。やがて、
図5(b)、
図6(c)に示すように、デッキプレート支持材34は地盤50の段落ち部50bに乗り上げて段落ち部50b上を移動するとともに、デッキプレート20は地盤50に乗り上げて地盤50上を移動する。
【0038】
図5(b)の状態から、免震建物40と地盤50との隙間が広くなると、デッキプレート支持材34は地盤50の段落ち部50bから降りる。そして、デッキプレート20及びデッキプレート支持材34の自重により、デッキプレート支持材34は斜め下方に押し下げられるとともに、デッキプレート20は下方へ移動する。このように、本実施形態に係る床板垂直可動装置10は、免震建物40の揺れにより変化する免震建物40と地盤50との隙間に応じて種々の状態をとりながら、各状態において躯体間の隙間を覆い塞ぐことができる。
【0039】
[第2発明の実施形態の構成]
次に、第2発明の実施形態として、床板垂直可動装置100の構成について
図7を参照して説明する。
この実施形態は、免震建物40と地盤50の間の開口幅が大きい(例えば600mm以上)場合に、昇降装置130をデッキプレート120の下面に取り付けるようにしたことを特徴とする。開口幅に合わせてデッキプレート支持材が長くなると、第1発明の昇降装置では、デッキプレート支持材の地盤側が片持ち状態となるおそれがある。第2発明の床垂直可動装置は、そのような問題を解消できる構成となっている。以下、実施形態としての床板垂直可動装置100の構成について、
図7を参照して説明する。
【0040】
[床板垂直可動装置の構成]
床板垂直可動装置100は、第1発明の実施形態と同じく、免震クリアランス15(
図1)を塞いで歩行者等の通行路となる、床板として機能するデッキプレート120と、このデッキプレート120に支持され、デッキプレート120を上昇、下降させる昇降装置130と、デッキプレート120の水平方向の動きを所定範囲でロックするロックプレート133とを備えている。なお、
図10においては、デッキプレート120を支持している免震建物40、地盤50を仮想線で示している。
【0041】
デッキプレート20としては、第1発明の実施形態と同様の材質の鋼板が使用されている。また、代替品としても第1発明と同じものが適用可能である。デッキプレート120の幅、厚みも、第1発明と同じく、開口幅と免震建物側、地盤側の段落ち部の和、段落ち部40b、50bの深さも略同一としてよい。デッキプレート20の図中、右先端は、水平上面に対して角度θ=45°となるように加工されている。ここで、本実施形態でも、デッキプレート20、あるいはその他の部材の「先端」、「後端」、「前方」、「後方」の語の定義は第1発明の実施形態と同様とする。
【0042】
デッキプレート支持材134は、
図7に示すように、その全長が開口幅の内のり寸法よりわずかに短く、例えば、鋼板を下方が開口する断面略C字形に曲げ加工された加工材である。デッキプレート支持材134の後方は水平方向に対して角度θ=45°に切断され、その端面に斜め板状のスライド板130aが取り付けられている。
【0043】
デッキプレート支持材134は、デッキプレート120に、長手方向に所定距離をあけてボルト122で取り付けられた2枚の連結プレート121を介して吊持されている。連結プレート121には、
図7に示すように、横方向に沿って長孔121aが形成されている。この長孔121aにボルト状の連結ピン131が貫通し、ナットで固定されることにより、デッキプレート支持材34がデッキプレート120に対して、長孔121aの分だけ水平方向にスライド可能に支持されている。このスライド動作を可能にするために、デッキプレート支持材134の上面には連結プレート121がスライド可能に挿通されるスリット134aが形成されている。なお、デッキプレート支持材134の後端の上端は、
図7に示すように、デッキプレート支持材134が取り付けられる際、免震建物40側の段落ち部に設けられた受け枠141の出隅頂点141a(
図8(a))に接した状態にある。そして、デッキプレート支持材134に後方に向かう力が加えられると、デッキプレート支持材134は、スライド板134aが受け枠141の出隅頂点141aに対して摺動した状態で、斜め上方に押上げられる。
【0044】
また、デッキプレート支持材134の先端側にはロックプレート133が吊り軸132によって回動可能に吊持されている。このロックプレート133は、通常時は鉛直下方を向いて吊持され、下端部には図示しないフック133aが形成されている。フック133aは、後述するように、ロックプレート133が水平位置まで吊り軸132に回りに時計回りに回動した状態で、連結プレート121の一部に係止して、デッキプレート支持材134がデッキプレート120に対して長孔121a分スライドした状態をロックして保持する。
【0045】
さらに、免震建物40側の端部表面には受け枠141がコンクリート構造の上端部の一部に、図示しない定着具を介して取り付けられている(
図8(a))。この受け枠141は、出隅頂点141aでデッキプレート支持材134のスライド板134aを線接触して支持することで、デッキプレート120の後端を免震建物40側で支持する役割を果たす。なお、第1発明の実施形態の場合と同様に、デッキプレート120の水平方向移動を制御する水平固定ピン160が免震建物40側の側壁40aに取り付けられたブラケット142の水平フランジにピン本体が落とし込まれるように取り付けられている(
図7、
図8(a))。
【0046】
次に、本実施形態に係る床板垂直可動装置100の動作について、
図8〜
図10を参照して説明する。
図8〜
図10は、本実施形態に係る免震クリアランス用床板垂直可動装置10の種々の状態を示した側面図であり、
図8(a)は通常時、
図8(b)は躯体間が通常時よりも狭まり、免震クリアランス用床板垂直可動装置100が段落ち部の深さの半分程度せり上がった状態を示している。
図9(a)は免震クリアランス用床板垂直可動装置10が段落ち部において、最大高さまで押上げられた状態を示している。
図9(b)は、デッキプレート支持材134の先端側が地盤50の段落ち水平部50c上にわずかに乗り上げた状態を示している。
図10(a)は、デッキプレート支持材134の先端側が地盤50側の段落ち水平部50c上に完全に乗り上げるとともに、デッキプレート120が地盤表面をスライドして、開口幅がさらに狭まる状態でを示している。
図10(b)は、他の実施形態からなるロックプレート133による、
図10(a)と同様の状態を示している。
【0047】
本実施形態において、
図8(a)に示すように、デッキプレート120は、免震建物40及び地盤50に形成された段落ち部40b、50bに収容される。前述したように、デッキプレート120は、その形状が段落ち部40b、50bにより区画された空間とほぼ一致するため、デッキプレート20と免震建物40との間には殆ど隙間は存在しない。また、デッキプレート120の上面は、免震建物40と地盤50の上面と同一面で納まった状態にある。デッキプレート支持材134の後端は、スライド板134aの上端と免震建物40側の受け枠141の出隅頂点141aとがほぼ接する一方、デッキプレート支持材134の先端は、地盤50の側壁50aにほぼ接した状態にある。ロックプレート133は、側壁50aに沿って下方を向いて吊持された状態にある。
【0048】
図8(b)には、デッキプレート120が段落ち部の深さの約1/2程度までせり上がった状態が示されている。
図8(b)に示すように、地震が発生し、免震建物40と地盤50との隙間が通常時よりも小さくなると、デッキプレート支持材134の先端が、地盤50の側壁50aにより免震建物40の方向へ押圧される。先端部が押圧されたデッキプレート支持材134は、段落ち部50bの傾斜面と、受け枠141の出隅頂点141aに当接したスライド板134aが、斜め45度の方向へ押上げられる。これにより、デッキプレート120の後端は、受け枠141のデッキプレート120が載置された受け面141bから、先端は段落ち水平部50cから持ち上がった状態となる。このデッキプレート120とデッキプレート支持材134の一体とした上昇は、連結プレート121に形成された長孔121aに沿って連結ピン131がスライドすることで実現する。
【0049】
図9(a)、(b)はデッキプレート支持材134が地盤50側の段落ち水平部50cまで上昇し、その後、先端側から段落ち水平部50cに乗り上げてスライドし始めた状態を示している。この状態では、このデッキプレート支持材134のスライド動作により、先端近傍に設けられていたロックプレート133が先端側の連結プレート121に向けて吊り軸132に関して時計回りに回動し始めている。
【0050】
図10(a)は、デッキプレート120の先端が地盤面50上、デッキプレート支持材134の先端側のロックプレート133の、側面視して略L字形をなすフック133aが連結プレート121の連結ピン131を長孔121a後端に保持したロック状態を示している。開口幅が最小幅まで狭まり、デッキプレート120とデッキプレート支持材134とが追従して最小幅となった後に、免震建物40側と地盤50側との間が広がる(開口幅が広がる)場合にも、このロック状態が保持される。これにより、デッキプレート支持材134が地盤50側の段落ち水平部50c上を広がる方向にスライドする際にも、ロックプレート133が連結プレート121のスライドをロックしているので、デッキプレート120とデッキプレート支持材134との一体化が保持され、床板垂直可動装置100の安定したスライド動作が保証される。
【0051】
図10(b)は、他の実施形態によるロックプレート133によって連結プレート121をロックした状態を示している。このロックプレート133は、初期状態において、わずかに下端がデッキプレート支持材134下端から突出するようにしてデッキプレート支持材134内に畳まれた状態で収容されている。その先端ガイド133dがロックプレート133本体からわずかに上方に向けて折り曲げられた形状からなる。このような形状からなるロックプレート133では、
図7に示したロックプレート133が、開口幅が狭まる、すなわちデッキプレート支持材134が段落ち水平部50cを図中右方向にスライドするのにしたがって、後端側に回動するのに対して、地盤側50の出隅頂点50dに先端ガイド部133dが乗り上げることで、吊り軸132回りにわずかに反時計方向に回動し、先端ガイド133dの先端が連結プレート121の一部に係止して連結プレート121のスライドをロックする。その後、免震建物40側と地盤50側との間が広がる(開口幅が広がる)場合にも、このロック状態が保持される。この実施形態によるロックプレート133は、初期状態において、そのほとんどがデッキプレート支持材134内に収容されているため、コンパクトであり、また小さな回動角度で、連結プレート121を確実にロックすることができる。
【0052】
第1発明及び第2発明の実施形態に係る床板垂直可動装置10、100を採用することにより、以下のような効果を奏する。
【0053】
上述の各発明の実施形態に係る床板垂直可動装置10、100のデッキプレート20、120は、通常時において、免震建物40と地盤50との段落ち部40b、50bに画定された空間にほぼ合致する形状を有している。そのため、デッキプレート20、120と免震建物40との隙間を非常に小さくすることができる。そのため、これらの隙間に、ピンヒールのかかとが挟まったり、高齢者や盲人者の杖が挟まったりすることを防止することができ、転倒事故等の発生を抑制することが可能となる。また、これらの隙間を塞ぐためのカバープレート等を別途設置する必要がなく、製造コストを抑制した装置を提供することができる。
【0054】
また、免震建物40の揺れにより、免震建物40と地盤50との隙間が通常時よりも小さくなる場合、デッキプレート20は天端面の水平状態を保ちながら上方へ移動する。一方、免震建物40と地盤50との隙間が通常時よりも大きい状態から小さい状態になる場合、デッキプレート20、120は天端面の水平状態を保ちながら下方へ移動する。このように、地震により免震建物40が揺れた場合にも、デッキプレート20、120の天端面は水平状態に保たれることとなる。そのため、地震時等にデッキプレート20、120上を人が通行していたとしても、転倒事故等を極力防止することが可能となる。なお、デッキプレート20、120と地盤50との間に隙間が生じるような設定では、デッキプレート20、120側にその隙間を覆う塞ぎ板(図示せず)を取り付けておくことで、より安全性が高まる。
【0055】
なお、上述の各発明の実施形態は説明した部材の構成(形状、材質)は限定されず、様々な変形や改良が可能である。
【0056】
たとえば第1発明の実施形態において、免震建物40側を床板垂直可動装置10の後端として、免震建物40に昇降装置30や水平固定ピン60を設置する構成について説明した。その他、地盤50側を床板垂直可動装置10の後端として、地盤に昇降装置30や水平固定ピン60を設置する構成を採用してもよい。
【0057】
また、デッキプレート支持材34に形成されたガイド溝34bの形成方向、デッキプレート支持材34及びストッパ33のスライド端面33a、34aの傾斜角度、デッキプレート支持材134のスライド板130aの傾斜角度、デッキプレート20、120の先端部角度、ロックプレート133のフック133a、先端ガイド133dの曲げ角度、及び地盤50の段落ち部50bの斜面の角度は、水平面に対して45°であるとして説明した。これらの角度は、床板垂直可動装置10の動作させるために全てを同一の角度とする必要はあるが、必ずしも45°とする必要はない。角度θを45°よりも小さくすることにより、地震時のデッキプレート20、120の上昇、下降速度を遅くすることが可能となる。
【0058】
さらに、免震建物40の側壁40aとデッキプレート20、120とをチェーンで接続して、デッキプレート20、120が容易に取り外せないように配慮することができる。なお、デッキプレート20、120の上昇量は、予め求められるため(段落ち部の深さ、すなわちデッキプレート20、120の厚み)、取付けるチェーンの長さは容易に算出することができる。