(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脱色組成物が、少なくとも一種の過酸化塩とアルカリ剤とを含む固体第1剤と、過酸化水素を含む水性第2剤とを混合して生成される二剤組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
直毛化組成物が、グリオキシル酸及び/又はその水和物及び/又はその塩を、直毛化組成物の総重量を基準として計算して0.1〜40重量%の範囲の濃度で含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
直毛化組成物及び/又は脱色組成物が、毛髪上に、毛髪対組成物の重量比が0.5:2〜2:0.5の範囲となるように適用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
pHが4以下であり、グリオキシル酸及び/又はその水和物及び/又はその塩を含む直毛化組成物と、少なくとも1種のアルカリ剤を含む第1剤及び少なくとも1種の酸化剤を含む第2剤を含み、第1剤と第2剤が適用前に混合され、混合後のpHが8〜11である、二剤型の脱色組成物とを含む、毛髪を直毛化及び脱色するための毛髪処理キット。
【背景技術】
【0002】
カールした髪や縮毛を直毛化する方法として、ストレートアイロンの使用が知られている。アイロンの高温によって毛髪ケラチンの水素結合が切断され、一時的な直毛化が達成される。この水素結合は水分の作用により再形成されるので、空気中の水分により経時的に元の毛髪形状が復元され、洗髪を行うと直毛化の効果は消失する。
【0003】
毛髪形状の大部分を決定しているのは、毛髪ケラチンの2個のシステイン部分を連結するジスルフィド結合である。毛髪をより長い時間変形させておくための方法として、スルフィド基又はチオ基を含む還元剤を作用させることによってジスルフィド結合を開裂させることを含む方法が知られている。毛髪を所望の形状に変形した後に過酸化水素等の酸化剤を適用すると新たにジスルフィド結合が形成され、それによって毛髪形状が固定される。しかし、この種の薬剤を使用すると毛髪にダメージを与える可能性がある。
【0004】
この種の毛髪形状処理の例として、特許文献1には、還元剤としてのチオグリコレート又はチオラクテートを含む還元組成物及び酸化剤としての過酸化水素を含む固定化組成物を開示されている。この還元組成物は、緩衝剤として、グリオキシル酸等の酸の塩を更に含むことができる。
【0005】
上述の2段階で行われる還元及び酸化プロセスの別法として、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を約11以上のpHで作用させることによってジスルフィド架橋を開裂することができる。この条件下においては、ジスルフィド(又はシスチン)部分に硫黄を脱離する不均化反応を起こさせることができ、ジスルフィド部分はα,β-不飽和デヒドロアラニン部分とシステイン部分とに開裂する。毛髪を所望の形状に調節した後、デヒドロアラニン部分及びシステイン部分にチオエーテル結合を形成することによりこれらを結合すると、ランチオニンが生成し、直毛化した状態が安定化する。ジスルフィド部分又はシステイン部分がランチオニン部分に変換されることから、アルカリ剤を用いるこの種の直毛化プロセスはランチオニン化とも称される。
【0006】
2段階還元/酸化法及びランチオニン化法は、いずれもジスルフィド結合の開裂及び毛髪のタンパク質間に新たな結合を形成することに基づいており、その結果として毛髪形状が不可逆的に変化する。これは、このプロセスによって永久的な直毛化を達成できることを意味しており、処理された毛髪の部分はその形状を維持し続け、直毛化の効果は毛髪の成長によってのみ消失する。
【0007】
最近になって、化粧料組成物の緩衝剤として知られる、カルボキシル基に隣接するカルボニル基を有するカルボン酸(グリオキシル酸等)を機械的直毛化手段と併用すると、半永久的な直毛化効果が得られることが見出された。これに関連して、半永久的とは、毛髪が4、5回の洗髪サイクルを経た後もその直毛化した外観を維持することを意味する。これは、毛髪形状が不可逆的に変更される永久的な直毛化(上述したジスルフィド結合の開裂に基づく方法のように)とは異なっており、また、ストレートアイロンにより達成される、水分の作用で消失する一時的な直毛化とも異なっている。
【0008】
これに関して、特許文献2には、α-ケト酸を含む組成物を毛髪に適用し、この組成物を毛髪と15〜120分間接触させたまま放置し、200±50℃の温度のストレートアイロンで毛髪を乾燥及び直毛化することを含む、半永久的に直毛化するためのプロセスが開示されている。
【0009】
更に、特許文献3には、グリオキシル酸溶液の適用に、200±30℃の温度のストレートアイロンを用いる機械的直毛化を組み合わせることによる、カールした毛髪、縮毛又はウエーブ毛髪を半永久的に直毛化するための処理が開示されている。この処理を施した後の毛髪は、少なくとも6回連続して洗髪を行った後も形状を保持するとされている。
【0010】
毛髪脱色は、酸化剤による毛髪のメラニン色素の酸化的分解によって、毛髪の脱色、ブロンド化又は明色化を行うことを含む。酸化剤としては、通常、アルカリ性過酸化水素又は過硫酸塩等の過酸化化合物が使用される。
【0011】
毛髪脱色組成物は一般に2剤型であり、第1剤は、アルカリ剤を含有し水を含まない組成物であり、第2剤は過酸化水素水溶液である。これらの剤は毛髪に適用する前に混合される。
【0012】
水を含まない第1剤は、過硫酸塩及びアルカリ剤の組合せを含む脱色用粉末とすることができる。粉立ちを抑えるために、結合剤で粉末を凝集させて粒状組成物とすることができる。通常、結合剤には鉱物油が用いられ、これは特許文献4の主題である。更に特許文献5では、懸濁物を調製するために油及びワックスコンパウンド又はこれらの混合物を使用することを提案している。
【0013】
脱色プロセスは酸化活性が強力であるため、特に脱色を繰り返している毛髪にはダメージを与える可能性がある。特許文献6においては、毛髪にダメージを与えるリスクを軽減する問題に取り組んでおり、ジアミド化合物を含むことを特徴とする実質的に水を含まない毛髪脱色及び/又は明色化組成物が記載されている。
【0014】
しかしながら、これらの直毛化方法及び毛髪脱色方法を組み合わせることについては、いずれの先行技術文献にも記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
従来、毛髪の直毛化処理及び脱色処理は2期間に分けて行われており、施術を受ける者にとっては時間も費用もかかることになる。
【0025】
更に、毛髪脱色は酸化剤の作用によって毛髪にダメージを与えるのが常であり、その結果毛髪の機械的特性が悪くなり、くすんだ外観を呈することもある。
【0026】
この種の毛髪のダメージは従来の直毛化技術、例えばジスルフィド結合開裂剤及び/又はジスルフィド結合再形成剤によっても惹起されることが知られている。したがって、毛髪脱色の直前に従来の直毛化を行う組み合わせは、重大なヘアダメージを引き起こしがちで、毛髪のくすみや機械的性質の低下を招いていた。
【0027】
本発明は、直毛化及び毛髪の脱色を、一回のヘアサロン入店で、間を置かずに一続きの2段階で行うと同時に毛髪をダメージから保護する方法を提供することによりこの問題を解決するものである。
【0028】
この目的のために、本発明の方法は、下に示す式(I)で表される少なくとも1種のカルボン酸を含む第1組成物(直毛化組成物)と、少なくとも1種の酸化剤と少なくとも1種のアルカリ剤とを含む第2組成物(脱色組成物)とを使用する。毛髪は前記組成物を連続して使用することによって処理され、従って、直毛化処理の直後に脱色処理が行われる。
【0029】
「直後」という語は、2種の処理の間の時間的間隔が2乃至3時間を超えず、好ましくは1時間を超えず、より好ましくは30分間を超えないことを意味する。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、下記の式(I)で表されるカルボン酸の少なくとも一種を用いる直毛化処理と脱色処理とを、有害な相互作用なしに直接連続的に行えることを見出した。
【0031】
また予期せぬことに、本発明の毛髪処理方法は、例えば脱色だけを行った場合に比べ毛髪の機械的性質の改善をもたらす。この機械的性質は応力歪み法によって測定することができる。
【0032】
1.直毛化組成物
直毛化組成物は、活性成分として次式(I)で表される少なくとも1種のカルボン酸を含む。
【0034】
(式中、Rは、水素、COOH、CN、置換されていてもよいC
1〜C
10アルキル、置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル、置換されていてもよいC
2〜C
10アルキニル、置換されていてもよいC
3〜C
10シクロアルキル、置換されていてもよいC
6〜C
10アリール及び置換されていてもよい5〜10員環のヘテロアリール基から選択され、アルキル基の任意の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ及びC
1〜C
4アルコキシから選択され、他の基の任意の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜C
4アルキル及びC
1〜C
4アルコキシから選択される)
【0035】
このカルボン酸の好ましい例として、グリオキシル酸、ピルビン酸及び2-ケト酪酸を挙げることができる。
【0036】
式(I)のカルボン酸は、本組成物中に、遊離酸形態で含有させることができる。この酸の酸基に隣接するカルボニル基は水和形態で存在することもできる。遊離酸及びその水和物形態ではなく、酸の塩又は水和物も用いることができる。
【0037】
式(I)の酸の水和物は本組成物を水溶液として提供した場合に生成させることができる。例えば、グリオキシル酸(H−CO−COOH)は、水溶液中においてほぼ定量的な量が水和物(H−C(OH)
2−COOH)として存在する。更に、この水和物は縮合して二量体になる可能性もある。
【0038】
式(I)のカルボン酸の塩を使用することもできる。その例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0039】
本発明においては、グリオキシル酸が式(I)のカルボン酸として最も好ましい。
【0040】
式(I)の少なくとも1種のカルボン酸及び/又はその水和物及び/又はその塩の濃度は、直毛化組成物の総重量を基準として0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、更に好ましくは2.5〜20重量%の範囲にある。
【0041】
直毛化組成物のpH(室温(25℃)で直接測定)は、4.0以下、好ましくは0.5〜3の範囲、より好ましくは1〜2.5の範囲にある。組成物のpHは公知のアルカリ性溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を用いて調整することができる。
【0042】
上述したように、従来の永久的な毛髪形状の変形技法/直毛化技法は、ジスルフィド架橋の再構成に基づいており、硫黄系還元剤、アルカリ剤のいずれかによるジスルフィド結合の開裂に続いて、毛髪を変形させ、新たな結合を形成すること(即ち、それぞれ、酸化剤の作用により形成されるジスルフィド結合又はチオエーテル結合)を含む。このような永久的な直毛化方法とは異なり、本発明はジスルフィド結合の開裂も、新たな形状での結合の固定も利用しない。従って、本発明の直毛化組成物には硫黄系還元剤を存在させる必要がない。しかしながら、組成物の総重量を基準として計算して2重量%までであれば、硫黄系還元剤が組成物の直毛化性能を妨げることはない。従って、直毛化組成物の硫黄系還元剤含有量は2重量%未満であり、好ましくは硫黄系還元剤を含まない。
【0043】
直毛化組成物は、好適には、下に定義する界面活性剤及び/又はコンディショニング成分等の更なる成分を含むことができ、好適には、溶液、エマルション、クリーム、ペースト及びムースの形態をとることができる。
【0044】
2.界面活性剤
本発明の直毛化組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤として、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤のいずれかを使用することができる。2タイプ以上の界面活性剤を組み合わせて使用することも可能である。
【0045】
カチオン界面活性剤は、好ましくは1個のC
8〜C
24アルキル基及び3個のC
1〜C
4アルキル基を有するモノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩である。
【0046】
好ましくは、少なくとも1種のモノアルキル四級アンモニウム界面活性剤は、下記一般式で表される化合物から選択される。
【0048】
(式中、R
8は、8〜22個のC原子を有する飽和若しくは不飽和の、分岐若しくは直鎖アルキル鎖、
【0050】
(式中、R
12は、7〜21個のC原子を有する飽和又は不飽和の分岐又は直鎖アルキル鎖であり、nは1〜4の整数である)、又は
【0052】
(式中、R
12は、7〜21個のC原子を有する飽和又は不飽和の分岐又は直鎖アルキル鎖であり、nは1〜4の整数である)を示し、
R
9、R
10及びR
11は、互いに独立に、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシルアルキル鎖又はエトキシ若しくはプロポキシ基(エトキシ又はプロポキシ基の数は1〜4個の間で変化する)を示し、
Xはクロリド、ブロミド、メトサルフェート又はエトサルフェートを示す。)
【0053】
好適なカチオン界面活性剤は、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、トリメチルセチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロリド等の長鎖四級アンモニウム化合物であり、これらは単独で使用することもでき、これらの混合物として使用することもできる。
【0054】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシ−C
1-4アルキレンC
8-24アルキルエーテル、ポリオキシ−C
1-4アルキレンC
8-24アルケニルエーテル、高級(C
12〜C
24)脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリンC
8-24脂肪酸エステル、高級(C
12〜C
24)脂肪酸モノ−又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンC
8-24脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットC
8-24脂肪酸エステル、C
8-24アルキルサッカライド系界面活性剤、C
8-24アルキルアミンオキシド及びC
8-24アルキルアミドアミンオキシドが挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン系界面活性剤、カルボベタイン系界面活性剤、アミドベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、ヒドロキシスルホベタイン系界面活性剤及びアミドスルホベタイン系界面活性剤が挙げられる。
【0056】
アニオン界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルサルフェート、アルキル又はアルケニルサルフェート、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤及びスルホコハク酸塩が挙げられる。アルキルエーテルサルフェートの例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン性残基の対イオンの例としては、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン等);アルカリ土類金属イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン等);アンモニウムイオン;及びそれぞれ2又は3個の炭素原子を有する1〜3個のアルカノール基を有するアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はトリイソプロパノールアミン)が挙げられる。
【0057】
界面活性剤は、単独で使用することもでき、2種以上を組み合わせて使用することもできる。界面活性剤を本発明の直毛化組成物に添加する場合、その含有率は、直毛化組成物の総重量を基準として、通常は0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0058】
3.コンディショニング成分
本発明の直毛化組成物は、任意的に、毛髪への適用に適したコンディショニング成分を含むことができる。コンディショニング成分は、毛髪に付着し、感触及び髪のまとまりを改善するオイル又はポリマーである。
【0059】
コンディショニング成分を使用する場合、その総量は、直毛化組成物の総重量を基準として、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0060】
コンディショニング成分の例としては、一般に、シリコーン、高級アルコール及び有機コンディショニングオイル(例えば、炭化水素油、ポリオレフィン及び脂肪酸エステル)が挙げられる。本組成物は、単一種のコンディショニング成分又は2種以上の成分の組合せを含むことができる。
【0061】
シリコーン
本発明の直毛化組成物は、使用感を改善するためにシリコーンを含むことが好ましい。シリコーンの例としては、ジメチルポリシロキサン及び変性シリコーン(例えば、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等)が挙げられ、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0062】
ジメチルポリシロキサンとしては、いずれの環状又は非環状ジメチルシロキサンポリマーを用いることもでき、その例として、SH200シリーズ、BY22-019、BY22-020、BY11-026、B22-029、BY22-034、BY22-050A、BY22-055、BY22-060、BY22-083、FZ-4188(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-9008、KM-900シリーズ、MK-15H、MK-88(いずれも信越化学工業株式会社)が挙げられる。
【0063】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリオキシアルキレン基を有するあらゆるシリコーンを用いることができ、ポリオキシアルキレン基を構成する基は、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基とすることができる。より具体的な例としては、KF-6015、KF-945A、KF-6005、KF-6009、KF-6013、KF-6019、KF-6029、KF-6017、KF-6043、KF-353A、KF-354A、KF-355A(いずれも信越化学工業株式会社)、FZ-2404、SS-2805、FZ-2411、FZ-2412、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、SH3749、SS-280Xシリーズ、BY22-008M、BY11-030、BY25-337(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)を挙げることができる。
【0064】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有するあらゆるシリコーンを用いることができ、その例として、全部又は一部の末端ヒドロキシル基がメチル基等で末端封止されたアミノ変性シリコーンオイル及び末端封止されていないアモジメチコンが挙げられる。好ましいアミノ変性シリコーンとして、例えば、次式で表される化合物を用いることができる。
【0066】
(式中、R'は、ヒドロキシル基、水素原子又はR
Xを示し;R
Xは、1〜20個の炭素原子を有する置換又は無置換の1価の炭化水素基を示し;Dは、R
X、R"-(NHCH
2CH
2)
mNH
2、OR
X又はヒドロキシル基を示し;R"は、1〜8個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を示し;mは、0〜3の数を示し;p及びqは、数平均の総和が10以上20,000未満、好ましくは20以上3000未満、より好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す)
【0067】
好適なアミノ変性シリコーンの市販品の具体例としては、アミノ変性シリコーンオイル(SF8452C、SS-3551(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社)、KF-8004、KF-867S、KF-8015(いずれも信越化学工業株式会社));及びアモジメチコンエマルション(SM8704C、SM8904、BY22-079、FZ-4671、FZ-4672(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社))が挙げられる。
【0068】
本発明の組成物中におけるこれらのシリコーン全体の含有率は、直毛化組成物の総重量を基準として、通常は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0069】
オイル成分
本発明の直毛化組成物は、使用感を改善するために有機コンディショニングオイルも含むことができる。コンディショニング成分として使用するのに適した有機コンディショニングオイルは、好ましくは、低粘度且つ水に不溶な液体であり、少なくとも10個の炭素原子を有する炭化水素油、ポリオレフィン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリアルキレングリコール及びこれらの混合物から選択される。この種の有機コンディショニングオイルの粘度(40℃で測定)は、好ましくは1〜200mPa・s、より好ましくは1〜100mPa・s、更に好ましくは2〜50mPa・sである。粘度の測定には毛細管粘度計を使用することができる。
【0070】
炭化水素油の例としては、環状炭化水素、直鎖脂肪族炭化水素(飽和又は不飽和)及び分岐脂肪族炭化水素(飽和又は不飽和)が挙げられ、これらのポリマー又は混合物も包含される。直鎖炭化水素油は、好ましくは12〜19個の炭素原子を有する。分岐炭化水素油としては、好ましくは19個を超える炭素原子を有する炭化水素ポリマーが挙げられる。
【0071】
ポリオレフィンは、液状ポリオレフィン、より好ましくは液状ポリ-α-オレフィン、更に好ましくは水素化液状ポリ-α-オレフィンである。本発明において使用されるポリオレフィンは、4〜14個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有するオレフィンモノマーを重合することにより調製される。
【0072】
脂肪酸エステルとしては、例えば、少なくとも10個の炭素原子を有する脂肪酸エステルを用いることができる。この種の脂肪酸エステルの例としては、脂肪酸及びアルコールから誘導された炭化水素鎖を有するエステル(例えば、モノエステル、多価アルコールエステル又はジ−及びトリカルボン酸エステル)が挙げられる。この脂肪酸エステルの炭化水素基は、置換基として適合性を有する他の官能基(アミド基、アルコキシ基等)を有していてもよいし、或いは炭化水素基がこれらの官能基に共有結合していてもよい。より具体的には、10〜22個の炭素原子を有する脂肪酸鎖を有する脂肪酸のアルキルエステル及びアルケニルエステル、10〜22個の炭素原子を有するアルキル及び/又はアルケニルアルコールから誘導される脂肪族鎖を有する脂肪族アルコールのカルボン酸エステル並びにこれらの混合物が好適に使用される。これらの好ましい脂肪酸エステルの具体例としては、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、アジピン酸ジヘキサデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オレイル、酢酸ラウリル、プロピオン酸セチル、アジピン酸ジオレイルが挙げられる。
【0073】
更なる好適なオイル成分は、流動パラフィン、天然トリグリセリド等の天然オイルである。
【0074】
好適な天然トリグリセリドは、アルガン油、シア脂油、カリテ油、オリーブ油、アーモンド油、アボカド油、ヒマシ(ricinus)油、ヤシ油、パーム油、ゴマ油、落花生油、ヒマワリ油、モモ核油、コムギ胚芽油、マカデミアナッツ油、マカデミア油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、ダイズ油、ラノリン、トウケイソウ油、ブラッククミン油、ルリジサ油、ブドウ種子油、麻実油、ククイナッツ油及びローズヒップ油である。
【0075】
有機コンディショニングオイルは2種以上を組み合わせて使用することもでき、全体の含有率は、直毛化組成物の総重量を基準として、通常は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲にある。
【0076】
アルコール
本発明の直毛化組成物は、触感及び安定性を改善するという観点から、8個以上の炭素原子を含む高級アルコールも含むことができる。通常、高級アルコールは、8〜22個の炭素原子、好ましくは16〜22個の炭素原子を含む。その具体例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
高級アルコールは2種以上を組み合わせて使用することもでき、その含有率は、直毛化組成物の総重量を基準として、通常は0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0078】
更に、ポリオールも組成物中に好適に含有させることができる。ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられ、この2種の混合物も使用することができ、或いはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーも使用することができる。
【0079】
4.脱色組成物
毛髪の脱色、ブロンド化又は明色化は、毛髪内のメラニン色素を酸化分解する脱色組成物を適用することによって達成される。脱色組成物は少なくとも1種の酸化剤及び少なくとも1種のアルカリ剤を含む。酸化剤としては、通常、水性媒体中のアルカリ性過酸化水素又は過硫酸塩等の過酸化物が使用される。
【0080】
本発明のプロセスに使用される脱色組成物に関する制限は特にない。あらゆる従来の脱色、ブロンド化又は明色化組成物を使用することができる。
【0081】
本発明の脱色組成物の過酸化水素濃度は、所望の脱色の程度に応じて、組成物の総重量を基準として、通常は1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲にある。脱色効果を高めるために過酸化水素を他の過酸化物と組み合わせて用いることができる。本発明の脱色組成物は、通常は8〜11、特に9〜10のアルカリ性のpHを有する。
【0082】
通常、本発明の脱色組成物は少なくとも2種の剤を含み、これらは別々に保管され、毛髪に適用する前に混合される。第1剤はアルカリ剤を含み、第2剤は水性過酸化水素組成物である。これら2剤は別々に保管され、毛髪に適用する前に混合される。第1剤のアルカリ剤の例としては、アンモニア、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジオール及び2-アミノブタノール並びにこれらの塩;アルカンジアミン(1,3-プロパンジアミン等)及びこれらの塩;並びに炭酸塩(炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
過酸化水素水溶液の濃度は、組成物の総重量を基準として、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜12重量%である。pHは、好ましくは2〜6、より好ましくは2.5〜4である。pHの調整は好適な有機酸又は無機酸、塩基及び緩衝剤を用いて行うことができる。
【0084】
第2剤においては、過酸化水素を唯一の酸化剤として使用することができる。この種の脱色組成物は、通常、「明色化組成物」と称される。アンモニア水溶液及び過酸化水素水溶液の混合物を明色化組成物として使用することも可能である。
【0085】
明色化組成物の好ましい例としては、アンモニア(3〜5重量%)及び過酸化水素(3〜5重量%)の水溶液を挙げることができる。アンモニア水溶液及び過酸化水素水溶液は使用直前に混合される。
【0086】
しかしながら、脱色効果を高めるために、第1剤に好ましくは更なる固形の酸化剤を含有させる。この酸化剤の例としては、過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アルカリ土類金属過酸化物(過酸化マグネシウム等)、過酸化メラミン、過酸化尿素又はフタルイミドペルオキシヘキサン酸及びこれらの混合物を挙げることができる。第1剤中の酸化剤の比率は、組成物の総重量を基準として少なくとも5重量%であり、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%の範囲にある。この種の組成物の例としては、EP2468247に記載されているもの等の脱色用粉末を挙げることができる。
【0087】
脱色組成物の脱色効果をより高くするためには、脱色用粉末の総重量を基準として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を20〜60重量%と、塩基性成分としてのケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属メタケイ酸塩を5〜15重量%とを含む脱色用粉末を使用することが好ましい。残余は珪藻土等の粉末状基材とすることができる。脱色用粉末は、使用前に過酸化水素組成物(4〜12重量%)と好ましくは1:1の比率で混合される。
【0088】
5.毛髪処理方法
本発明の毛髪処理プロセスは、2段階、即ち毛髪の直毛化処理(段階(a)〜(f))及び脱色処理(段階(g)〜(h))を含む。
【0089】
直毛化段階は、グリオキシル酸等の式(I)の酸を活性剤として利用することにより半永久的な直毛化を達成するものである。この直毛化効果は、還元によるジスルフィド結合の開裂や強アルカリの作用により達成されるものではない。従って、還元組成物もアルカリ性リラクサー(ランチオニン化剤)も不要である。
【0090】
段階(a)においては、直毛化組成物を毛髪に適用する。毛髪対適用する組成物の重量比は、好ましくは0.5:2〜2:0.5、より好ましくは0.5:1〜1:0.5、更に好ましくは約1:1である。
【0091】
適用後、直毛化組成物を20〜45℃の範囲の温度、好ましくは室温で毛髪上に1〜120分間、好ましくは5〜90分間、より好ましくは10〜60分間、特に15〜45分間放置する(段階(b))。組成物を毛髪上に放置する時間は、毛髪のタイプ(毛髪が損傷しているか否か及び/又は耐性を有するか否か)に依存する。
【0092】
この処理の後、毛髪をアイロンで処理する後段の段階で水蒸気が過度に発生しないように毛髪を乾燥させる(段階(c))。通常、この目的にはヘアドライヤーを使用する。毛髪の乾燥は、毛髪が絡まないように櫛で連続的に梳かしながら行うことが好ましい。
【0093】
任意的に、毛髪を水で濯いで、乾燥させることができる(段階(d))。
【0094】
乾燥後、毛髪をアイロンで処理する(段階(e))。通常、この目的にはストレートアイロンを使用することができる。毛髪のダメージを防ぐために、アイロンの表面温度は250℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは200℃以下とする。十分な直毛化効果を得るために、アイロンの温度は130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170°以上とする。アイロンの表面温度は、好ましくは180±50℃、より好ましくは170〜200℃とすることができる。
【0095】
直毛化処理の後、毛髪を水で濯いで、更に任意的にシャンプー、及び乾燥することができる(段階(f))
【0096】
その後、脱色組成物を毛髪に塗布し(段階(g))、5〜45分作用させてから水で濯ぎおとす(段階(h))。脱色及び明度向上を均一とするには、処理時間は5分以上、好ましくは10分以上とする。一般に、最長30分あれば十分である。
【0097】
組成物に対する適用対象の毛髪の重量比(毛髪対組成物の重量比)は、好ましくは0.5:2〜2:0.5、より好ましくは0.5:1〜1:0.5、更に好ましくは約1:1である。
【0098】
次いで組成物を水で濯ぎ流す。組成物を濯ぎ流した後に、任意的に毛髪をシャンプーで処理し、乾燥(例えば、ヘアドライヤーを用いて)することができる。
【0099】
本発明において、脱色段階(g)〜(h)は直毛化段階(a)〜(f)の直後に実施される。従って、本発明の方法は1回の美容室入店で実施することができる。
【0100】
このことに関連する「直後」とは、段階(a)〜(f)の完了から段階(g)〜(h)の開始までの間隔が2乃至3時間を超えず、好ましくは1時間を超えず、より好ましくは30分間を超えないことを意味する。
【実施例】
【0101】
以下に示す実施例において本発明を例示するが、これらは本発明を制限するものではない。
【0102】
実施例1:
明色化組成物
重量%
H
2O
2 4%
アンモニア 4%
水 全体が100となる量
【0103】
直毛化組成物
重量%
グリオキシル酸 10%
アモジメチコン 1%
セテアリルアルコール 5%
セテアレス-20 2%
水酸化ナトリウム pHが2.0になる量
水 全体が100となる量
【0104】
実施例2:
脱色用粉末
重量%
過硫酸アンモニウム 45
ケイ酸ナトリウム 10
珪藻土 全体が100となる量
【0105】
脱色用粉末をH
2O
2水溶液(12%)と1:1の重量比で混合した後、毛髪に適用する。直毛化組成物としては、実施例1に記載した直毛化組成物を使用する。
【0106】
実施例3:
脱色用粉末
重量%
過硫酸ナトリウム 20
過硫酸カリウム 25
ケイ酸ナトリウム 10
パラフィン油 10
珪藻土 全体が100となる量
【0107】
脱色用粉末をH
2O
2水溶液(9%)と1:1の重量比で混合した後、毛髪に適用する。直毛化組成物としては、実施例1に記載した直毛化組成物を使用する。
【0108】
上述の実施例1〜3の組成物を使用して毛髪の直毛化及び明色化又は脱色を行う。直毛化を行ってから明色化又は脱色を行った毛髪繊維は、未処理の毛髪と同程度の歪み応力値を示すことが観測される。これは毛髪の機械的性質が驚くほど回復していることをはっきりと実証するものである。
【0109】
試験例
動的粘弾性測定(DMA)による機械特性評価用試料として人毛束(中国人、各2g)を用いた。
【0110】
試料(A)については何も処理を施さず、対照として使用した。
【0111】
試料(B)(比較用)については、先に直毛化処理を行わずに脱色を行った。この目的のために、50%過酸化水素溶液を24重量%及び25%アンモニア溶液を5重量%含む溶液(残余は水)に毛束を浸した。毛束を室温下で脱色溶液中に30分間放置した後、水で5分間濯ぎ、ドライヤーの温風で乾燥させた。
【0112】
試料(C)については、本発明に従い直毛化及び脱色を行った。グリオキシル酸10重量%を含む水溶液を直毛化組成物として使用した。この組成物を溶液対毛髪の比率が1.5:1となるように毛束に適用し、室温下で毛髪上に15分間放置した。次いで毛髪をドライヤーの温風で乾燥させ、ストレートアイロンで直毛化した(温度180℃、6回)。直毛化処理後の試料(C)に、試料(B)に関し上に述べた脱色処理と同様の処理を施した。
【0113】
試料(A)、(B)及び(C)からそれぞれ10本ずつ毛髪を抜き取り、20℃の蒸留水に30分間浸した。次いで余分な水を落とした後、各毛髪をDMA装置に取り付けて測定を行った。
【0114】
DMA測定パラメータを次に示す。
−機器名: Rheometric Scientific DMTA V
−試料長: 1cm
−振幅 : 0.1%
−振動数: 10Hz
−温度 : 20℃
【0115】
各毛髪の測定結果から各試料(A)、(B)及び(C)の弾性率E'の平均値を求めた。閣下を次に示す。
【0116】
E'(GPa)
(A)(未処理の対照):5.41
(B)(脱色のみ) :4.20
(C)(直毛化+脱色):4.71
【0117】
これらの結果から、本発明の方法は、脱色のみを行う場合と比較して、毛髪に優れた機械的性質を付与することが分かる。