(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献4,5に記載される従来技術では、ジャグ本体内に収容された液体が外部に漏出するのを抑制することができるが、ジャグ本体内を真空引きするために、ジャグ蓋体に針が刺込まれるとともに、ジャグ本体内に液体を注入するためにもジャグ蓋体に針が刺込まれる。そのためジャグ蓋体には、針の刺込みによる亀裂が残存し、液体が揮発性の高い物質を含む場合などには、このような亀裂から液体の漏れが生じるおそれがある。したがって、より高い漏出防止効果を有し、液体の漏洩を確実に防止することができる搬送容器が望まれている。
【0007】
したがって本発明の目的は、ジャグ本体とジャグ蓋体との間および針の刺入によって生じた亀裂からの液体の漏洩を確実に防止することができる搬送容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有底筒状のカートリッジ本体と、
カートリッジ本体の開口部に着脱自在に装着されるカートリッジ蓋体と、
有底筒状に形成されて内部空間に液体が収容されるジャグ本体であって、カートリッジ本体の開口部側に底部が配置され、かつカートリッジ本体の底部側に開口部が配置された状態で、カートリッジ本体に収容されるジャグ本体と、
ジャグ本体の開口部に着脱自在に装着されるジャグ蓋体とを含み、
ジャグ蓋体は、
合成樹脂から成り、ジャグ本体の開口部の内周面に接触する外周面を有する有底筒状の収容部と、
合成樹脂から成り、前記収容部の開口端部に設けられる環状の端壁部と、
前記収容部および端壁部によって規定される内部空間に収容される、ゴムから成る栓体と、を含むことを特徴とする搬送容器である。
【0009】
また本発明の搬送容器において、 前記栓体は、前記収容部の他端部の内径よりも大きい外径を有する直円柱体から成ることを特徴とする。
【0010】
また本発明の搬送容器において、前記収容部および端壁部は、ポリエチレンから成り、前記栓体はフッ素ゴムから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部に液体を収容するジャグ本体は、有底筒状に形成されて、カートリッジ本体の開口部側に底部が配置され、かつカートリッジ本体の底部側に開口部が配置された状態でカートリッジ本体に収容される。このジャグ本体の開口部には、ジャグ蓋体が装着される。
【0012】
ジャグ蓋体は、ジャグ本体の開口部の内周面に接触する外周面を有する有底筒状の収容部と、収容部の開口端部に設けられる環状の端壁部とを有する。これらの収容部および端壁部によって規定される内部空間に、ゴムから成る栓体が収容される。
【0013】
ジャグ蓋体は、ゴムから成る栓体が合成樹脂から成る収容部および端壁部によって囲まれた2重構造とされる。このような構成によって、ジャグ本体の開口部とジャグ蓋体とを密着させて高い液密性を達成し、針の刺入によって栓体に生じた亀裂を、栓体自体の弾性復元力によって閉鎖することができる。また収容部の底部に針の刺入によって生じた亀裂から液体が外部へ漏洩しようとしても、収容部および端壁部の各内面に栓体が密着して、収容部と栓体との間、および端壁部と栓体との間が液密に塞がれ、液体の漏洩が防がれる。
【0014】
このように、ジャグ本体の開口部とジャグ蓋体との間およびジャグ蓋体の針の刺入による亀裂から液体が漏洩することを確実に防ぎ、高い液密性を有する搬送容器を提供することができる。
【0015】
また本発明によれば、栓体が、収容部の他端部の内径よりも大きい外径の直円柱体から成るので、栓体が収容部によって圧縮され、栓体の外周面全体を自己の弾性復元力によって収容部の内周面に弾発的に当接させて、栓体と収容部との間により高い液密性を実現することができる。
【0016】
また本発明によれば、収容部および端壁部がポリエチレンから成り、栓体がフッ素ゴムから成るので、ジャグ本体内に収容された液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が抑制されて、該液体に対する高い耐性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の搬送容器100の構成を示す断面図である。また、
図2は、ジャグ蓋体11の拡大断面図である。搬送容器100は、カートリッジ20と、カートリッジ20に収容されるジャグ10とを含んで構成され、気送管40内を気送させて、ジャグ10内部に収容した液体を搬送する。
【0019】
搬送容器100は、図示しない真空引き装置によってジャグ10内の内部空間10aが真空化され、ジャグ10が有する後述のジャグ蓋体11の外部からシリンジの針30を突き刺して、真空化されたジャグ10内に液体を真空吸引して注入できるように構成されている。ここで、ジャグ10内に注入される液体は、たとえば、放射性物質を含む濃硝酸、フッ化水素酸、n−ドデカン、TBP(Tri-Butyl Phosphate)、キシレンなどを含む液体である。
【0020】
図3はジャグ蓋体11の外枠体15を示す断面図であり、
図4は外枠体15を
図3の右方から見た側面図であり、
図5は外枠体15の一部を示す拡大断面図である。
図6はジャグ本体12の構成を示す断面図であり、
図7はジャグ本体12の左側面図であり、
図8はジャグ本体12の右側面図である。
【0021】
ジャグ10は、ジャグ本体12とジャグ蓋体11とを有する。ジャグ本体12は、内部に液体を収容する部材であり、有底円筒状に形成される筒部12aと、筒部12aの上方で縮径されるテーパー部12bと、テーパー部12bを介して円筒状に形成される開口部12cとを有する。
【0022】
ジャグ本体12は、後述するカートリッジ本体21に収納できる大きさに設定される。ジャグ本体12は合成樹脂によって形成されるが、その中でも、前述の液体に対する耐性(液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が抑制される)、放射線に対する耐性および大きな引張強度、曲げ弾性率、ねじり弾性率を有するという観点から、高密度ポリエチレンによって形成されるのが好ましい。
【0023】
ジャグ蓋体11は、ジャグ本体12の開口部12cに着脱自在に装着される弾性を有する部材であり、ジャグ本体12内に液体を注入するときに、シリンジの針30を突き刺す部位となる。
【0024】
ジャグ蓋体11がゴムのみによって構成されている場合、ジャグ本体12内に収容される液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が懸念される。そこで、本実施形態では、ゴムの液体に対する接触面積を可能な限り小さくするために、ジャグ蓋体11は、合成樹脂から成る外枠体15と、ゴムから成る栓体16とを含んで構成され、合成樹脂とゴムとの2重構造を有する。ジャグ蓋体11の外枠体15は、ジャグ蓋体11がジャグ本体12の開口部12cに装着された状態で、ジャグ本体12の開口部12cの内周面に接触する円筒状の外周面を有する周壁部11aと、ジャグ蓋体11が開口部12cに装着された状態で、周壁部11aにおいて開口部12cの開口端側に配置される軸線方向一端部に連なって該軸線に垂直に形成される環状の端壁部11bと、ジャグ蓋体11が開口部12cに装着された状態で、周壁部11aの軸線方向一端部とは反対側の軸線方向他端部に連なって、該軸線方向他端部を塞ぐ底部11cと、端壁部11bに軸線方向一端部が連なり、周壁部11aと同軸に底部11cを超えて延びる円筒状の外カバー部11dとを含んで構成される。ジャグ蓋体11の外枠体15において、周壁部11aと底部11cとによって、ジャグ本体12の開口部12cの内周面に接触する外周面を有する有底筒状の収容部が構成される。
【0025】
周壁部11aの軸線方向一端部と端壁部11bの内周部との交差部には、周壁部11aの内周面よりも半径方向内方に突出する環状の突片11eが一体的に形成される。突片11eは、製造時において、
図5に示されるように、周壁部11aと端壁部11bとの交差部から、軸線方向他端部から軸線方向一端部へ向かう方向、すなわち
図5の左方へ突出した状態から加熱成形(超音波溶着による熱カシメ)することによって、半径方向内方に屈曲した突片11eが形成される。
【0026】
このような突片11eによって、後述の栓体16が抜止めされ、内部空間11g内に保持され、栓体16を周壁部11aの内周面、端壁部11bの内周面および底部11cの内面に密着させることができる。
【0027】
ジャグ蓋体11の外枠体15は、端壁部11bに軸線方向一端部が連なり、周壁部11aと同軸に底部11cを超えて延びる円筒状の外カバー部11dを含んで構成されることが好ましい。この場合、ジャグ蓋体11は、周壁部11aと外カバー部11dとが協働して、ジャグ本体12の開口部12cを、半径方向外方および内方の両側から周方向全周にわたって挟持するように構成される。これによって、ジャグ本体12内に収容された液体が、外部に漏出することの防止効果(液体漏洩防止効果)を高めることができる。この液体漏洩防止効果は、液体漏洩試験によって確認することができる。液体漏洩試験とは、気送管を模擬して、ジャグ本体12内に液体を収容した状態で遠心力を加えて、ジャグ本体12内から漏洩する液体の量を測定する試験である。
【0028】
また、ジャグ蓋体11の外枠体15は、端壁部11bから半径外方に突出する突部11fを有することが好ましい。このように、ジャグ蓋体11が突部11fを有することによって、カートリッジ20内に収容されたジャグ10が、半径方向に必要以上に動くのを抑制することができる。
【0029】
そのため、ジャグ本体12内に液体を注入するとき、中心軸線に対して大きくずれるのを防止して、後述する栓体16に形成される、ジャグ本体12内に液体を注入するときにシリンジの針30を突き刺す部位となる刺入部16aに、シリンジの針30を突き刺して液体を注入することができる。
【0030】
周壁部11a、端壁部11b、底部11c、外カバー部11d、突片11e、および突部11fを含んで構成される、ジャグ蓋体11の外枠体15は、前述したように、合成樹脂によって形成されている。
【0031】
外枠体15を構成する合成樹脂としては、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性(液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が抑制される)、および放射線に対する耐性を有する樹脂であれば特に限定されないけれども、前記液体に対する耐性および放射線に対する耐性が良好であるという観点から、ポリエチレンが特に好ましい。
【0032】
ポリエチレンは、結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂であり、ポリエチレンには、エチレンホモポリマー(単一重合体)だけではなく、エチレンとα−オレフィンとのコポリマー(共重合体)が含まれる。α−オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが挙げられ、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。またそれらを2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、ポリエチレンは、密度で区分すると、JIS K6748:1995において定義される、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど持たず直鎖状に結合した、密度0.942g/cm
3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)と、JIS K6748:1995において定義される、繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐を持って結合した、密度0.910g/cm
3以上0.930g/cm
3未満の低密度ポリエチレン(LDPE)と、JIS K6899−1:2000において定義される、密度0.910〜0.925g/cm
3程度のリニアポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、L−LDPE)と、リニアポリエチレンよりも短鎖分岐(SCB)の数が多く密度0.910g/cm
3未満の超低密度ポリエチレン(V−LDPE)と、リニアポリエチレンよりも短鎖分岐(SCB)の数が少なく密度0.925〜0.940g/cm
3程度の中密度ポリエチレン(MDPE)と、を含む。
【0034】
なお、ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999に準拠して測定された値である。
【0035】
ジャグ蓋体11の外枠体15を構成する合成樹脂としてポリエチレンを使用する場合、1種類のポリエチレンを単独で用いてもよいし、分子構造、密度の異なる2種類以上のポリエチレンを混合して用いてもよい。たとえば、分子構造および密度の異なる2種類以上のポリエチレンを混合して用いることが好ましい。本実施形態では、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性(液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が抑制される)および放射線に対する耐性が良好であるという観点から、ジャグ蓋体11の外枠体15を構成する合成樹脂として、エチレンとプロピレンと1−ヘキセンとの3元コポリマー(共重合体)から成る、密度0.880g/cm
3程度のポリエチレン(たとえば、日本ポリエチレン株式会社製のKJ640T)と、エチレンホモポリマーから成る、密度0.915g/cm
3程度のポリエチレン(たとえば、日本ポリエチレン株式会社製のLJ902)との混合物を用いる。
【0036】
ジャグ蓋体11の合成樹脂から成る外枠体15の、周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cによって規定される内部空間11gには、直円柱状のゴムから成る栓体16が装着される。すなわち、ジャグ蓋体11は、ゴムから成る栓体16が、合成樹脂から成る周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cによって囲まれた2重構造となっている。ジャグ本体12の開口部12cの端面に当接するジャグ蓋体11の端壁部11bの厚み方向外側の面には、ジャグ本体12内に液体を注入するときにシリンジの針30を突き刺す部位となる、栓体16の刺入部16aが露出する。
【0037】
ゴムから成る栓体16は、圧縮率が3%以上、より好ましくは5%以上となるように圧縮変形された状態で、周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cによって規定される外枠体15の内部空間11gに収容されている。ここで、栓体16の圧縮率は、栓体16の外径の、外枠体15に対する取付け前後の変化率として求めたものである。栓体16の圧縮率を3%以上、より好ましくは5%以上に設定することによる、前記液体漏洩防止効果は、前述の液体漏洩試験によって確認することができる。
【0038】
ジャグ蓋体11は、端壁部11bがジャグ本体12の開口部12cの端面に当接し、周壁部11aの外周面がジャグ本体12の開口部12cの内周面に当接して、ジャグ本体12の開口部12cを施蓋するように構成されている。このとき、ジャグ蓋体11は、外枠体15の内部空間11gに収容される栓体16のゴム弾性によって、端壁部11bおよび周壁部11aがジャグ本体12の開口部12cの内周面を押圧し、その押圧により生じる弾性反発力によって、ジャグ本体12の開口部12cを密閉する。
【0039】
前記弾性反発力は、一例として述べると、栓体16の厚み、周壁部11aおよび端壁部11bの厚みによって調整することができ、栓体16の厚みを大きくし、周壁部11aおよび端壁部11bの厚みを小さくすることで、弾性反発力を大きくすることができる。また、詳細は後述するが、栓体16を構成する材質によっても、弾性反発力を調整することができる。
【0040】
このような、ゴムから成る栓体16が、合成樹脂から成る周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cによって囲まれた2重構造となるジャグ蓋体11の構成によって、ジャグ本体12の開口部12cとジャグ蓋体11とを密着させて高い液密性を達成し、シリンジの針30の刺入によって栓体16に生じた亀裂を、栓体16自体の弾性復元力によって閉鎖することができる。また底部11cに針30の刺入によって生じた亀裂から液体が外部へ漏洩しようとしても、周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cの各内面に栓体16が密着して、周壁部11aと栓体16との間、端壁部11bと栓体16との間、および底部11cと栓体16との間が液密に塞がれ、液体の漏洩が防がれる。
【0041】
このように本実施形態によれば、ジャグ本体12の開口部12cとジャグ蓋体11との間およびジャグ蓋体11の針30の刺入による亀裂から液体が漏洩することを確実に防ぎ、高い液密性を有する搬送容器100を提供することができる。
【0042】
また、本実施形態のジャグ蓋体11において、周壁部11aの内周面は、軸線方向一端部(端壁部11b側の一端部)から軸線方向他端部(底部11c側の他端部)に向かって直径が増加するように傾斜した円錐台状に形成され、栓体16は、周壁部11aの軸線方向他端部の内径よりも大きい外径を有する直円柱体から成る。これによって、栓体16が周壁部11aによって圧縮され、栓体16の外周面全体を自己の弾性復元力によって周壁部11aの内周面に弾発的に当接させて、栓体16と周壁部11aとの間に、より高い液密性を実現することができる。
【0043】
ジャグ蓋体11の栓体16は、前述したように、ゴムによって形成されている。栓体16を構成するゴムとしては、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性(液体に対して膨潤、含有不純物の溶出が抑制される)、および、シリンジの針30を突き刺して引き抜いたあとに生じる亀裂を塞ぐことが可能な弾性を有するゴムであれば特に限定されず、フッ素ゴム、シリコンゴム、フロロシリコンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。これらの中でも、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性に優れるという観点から、フッ素ゴムがより好ましい。
【0044】
また、ジャグ蓋体11の栓体16を構成するフッ素ゴムは、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し、かつゴム弾性を有する非晶質の重合体から成る。このフッ素ゴムは、1種の重合体から成るものであってもよいし、2種以上の重合体から成るものであってもよい。
【0045】
フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、VdF/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体、および、TFE/PAVE共重合体から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性に優れるという観点から、VdF単位を含む共重合体から成るフッ素ゴム、またはTFE/PAVE共重合体から成るフッ素ゴムが、特に好ましい。
【0046】
フッ素ゴムの加硫系としては、たとえば、パーオキサイド加硫系、および、ポリオール加硫系から成る群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0047】
パーオキサイド加硫は、パーオキサイド加硫可能なフッ素ゴムおよび加硫剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
【0048】
パーオキサイド加硫可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド加硫可能な部位(ラジカル活性点)を有するフッ素ゴムであればよい。パーオキサイド加硫可能な部位(ラジカル活性点)としては特に限定されず、たとえば、ヨウ素原子、臭素原子などを挙げることができる。
【0049】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートなどを挙げることができる。
【0050】
加硫剤が有機過酸化物である場合、加硫助剤として、たとえばトリアリルイソシアヌレート(TAIC)などを用いる。
【0051】
ポリオール加硫は、ポリオール加硫可能なフッ素ゴムおよび加硫剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。
【0052】
ポリオール加硫可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール加硫可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。ポリオール加硫可能な部位としては特に限定されず、たとえば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位などを挙げることができる。
【0053】
ポリヒドロキシ化合物としては、ポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。このポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。
【0054】
加硫剤がポリヒドロキシ化合物である場合、加硫促進剤を用いる。加硫促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0055】
加硫促進剤としては、オニウム化合物が挙げられ、オニウム化合物の中でも、第4級アンモニウム塩などのアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩などのホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、および、1官能性アミン化合物から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、ジャグ本体12内に収容される液体に対する耐性が良好であるという観点から、ジャグ蓋体11の栓体16を構成するゴムとして、VdF/HFP/TFE共重合体の3元パーオキサイド加硫系フッ素ゴム(たとえば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−902)を用いる。
【0057】
また、ジャグ蓋体11の栓体16を構成するフッ素ゴムの硬さは、ショアA(ShoreA)硬さが40以上80以下であり、特に好ましくは60以上80以下である。ショアA硬さが40以上80以下のフッ素ゴムによって形成された栓体16を有するジャグ蓋体11は、充分な弾性反発力を有するので、ジャグ本体12の開口部12cとジャグ蓋体11とを密着させて高い液密性を達成し、シリンジの針30の刺入によって栓体16に生じた亀裂を、栓体16自体の弾性復元力によって閉鎖することができる。
【0058】
なお、ショアA硬さは、被測定物の表面に圧子を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定し、数値化するデュロメータ(スプリング式硬さ計)を用いて算出されたものである。ショアA硬さを測定するときに用いるデュロメータは、JIS K6253に規定されたタイプAデュロメータと比較して、スプリング荷重と圧子の高さの値が若干異なるけれども、測定原理は同じであるので、ショアA硬さとタイプAデュロメータ硬さとは同値として取り扱うことができる。
【0059】
ジャグ蓋体11の栓体16を構成するフッ素ゴムの硬さは、ゴムの分子構造やゴムを補強するカーボンブラック、シリカ、酸化チタンなどの添加剤の配合量によって調整することができる。
【0060】
また、ジャグ蓋体11は、含有不純物が少ない状態であることが好ましい。一例として、鉄分の含有量について述べると、鉄分の含有量が少ないジャグ蓋体11は、鉄分含有量の少ない原材料を選定するとともに、純水などによる洗浄処理を施すことによって得ることができる。また、ジャグ蓋体11を製造するときに使用する機器や室内環境から鉄分が混入することを防止して、鉄分含有量の少ないジャグ蓋体11を得ることもできる。
【0061】
図9はカートリッジ本体21を示す正面図であり、
図10はカートリッジ本体21の左側面図であり、
図11はカートリッジ本体21の右側面図である。
図12はカートリッジ蓋体22を示す断面図であり、
図13はカートリッジ蓋体22の左側面図であり、
図14はカートリッジ蓋体22の右側面図である。
【0062】
カートリッジ20は、カートリッジ本体21とカートリッジ蓋体22とを有する。カートリッジ本体21およびカートリッジ蓋体22は、前述したジャグ本体12と同様に、合成樹脂によって形成され、好ましくは高密度ポリエチレンによって形成される。
【0063】
カートリッジ本体21は、有底円筒状に形成され、カートリッジ本体21の開口側にジャグ本体12の底部が配置され、かつカートリッジ本体21の底部側にジャグ本体12の開口部12cが配置された状態で、ジャグ10を収容する。カートリッジ本体21の中心軸線方向の長さは、一例として70mm程度であり、外径は一例として20〜30mm程度である。
【0064】
カートリッジ本体21の底部には、ジャグ本体12の開口部12cと連通する円形状の孔部21cが形成されている。この孔部21cは、ジャグ蓋体11の栓体16にシリンジの針30を突き刺して液体を注入するときに、針が通過する案内孔となる。また、カートリッジ本体21の開口の外周縁に沿った位置には、係止部21dが形成されている。
【0065】
また、カートリッジ本体21の開口側および底部側の所要位置には、半径方向外方に突出する搬送案内部21a,21bが形成されている。搬送容器100が気送管40内を気送されるとき、搬送案内部21a,21bが気送管40の内壁面に沿ってスライドする構造になっている。
【0066】
カートリッジ蓋体22は、カートリッジ本体21の開口部23に着脱自在に装着される部材である。カートリッジ蓋体22は、略皿状に形成され、この皿状の外周縁には立上部が設けられるとともに、立上部の内周には、カートリッジ本体21が有する係止部21dと係合する係止段部22aが形成されている。
【0067】
搬送容器100は、カートリッジ本体21に設けられる搬送案内部21a,21bが気送管40の内壁面に沿うように気送される。気送管40は金属製であり、内径は30mm程度である。また、搬送容器100が気送管40内を気送される搬送速度は、約10〜20m/秒である。搬送容器100は、気送管40における曲率半径が最小値(約660mmR)となるコーナーを通過するとき、搬送案内部21a,21b以外の部位が気送管40の内壁面と接触しないように構成されている。
【0068】
また、搬送容器100は、ジャグ蓋体11の突部11fの外径D1とカートリッジ本体21の底部の内径D2との差Δd1が、ジャグ本体12の底部の外径D3とカートリッジ本体21の開口部23の内径D4との差Δd2よりも大きくなるように設定されることが好ましい。このように搬送容器100を構成することによって、ジャグ10内に収容された液体の移動による重心位置の変動が緩和される。そのため、気送管40内における搬送容器100の搬送安定性の低下を抑制することができる。
【0069】
気送管40内での搬送が完了した搬送容器100においては、ジャグ10がカートリッジ20から取出される。ジャグ10をカートリッジ20から取出すとき、トングと呼ばれる専用治具で、カートリッジ本体21と係合するカートリッジ蓋体22を取り外して開蓋する。
【0070】
トング50は、2つの部材が開閉するように構成されて、物体を挟持することができる挟み具である。搬送容器100においては、トング50によってカートリッジ蓋体22を容易に取り外すことができるように、カートリッジ本体21の開口側に設けられる搬送案内部21bの配置位置を設定している。
【0071】
また、カートリッジ20から取出されたジャグ10は、トング50によってジャグ本体12の開口部12cを挟持して、所望の位置に移動される。ジャグ蓋体11においては、ジャグ本体12の開口部12cの外周面に当接して被覆する外カバー部11dを有するので、トング50によって開口部12cを挟持するとき、トング50が外カバー部11dと接触することになる。そのため、トング50がジャグ本体12の開口部12cに直接接触することが防止され、開口部12cがトング50によって汚染されるのを防止することができる。
【0072】
図15は、本発明の他の実施形態の搬送容器に用いられるジャグ蓋体31を拡大して示す分解断面図である。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の搬送容器100では、周壁部11a、端壁部11b、底部11cおよび栓体16に加えて、突片11eに代わる環状の押え部材17を含んで、ジャグ蓋体31が構成される。
【0073】
押え部材17は、第1リング部17aと、第1リング部17aと同軸を成し、かつ軸線方向にずれた位置で第1リング部17aと一体的に形成される第2リング部17bと、第2リング部17bの一表面上の、第1リング部17aよりも半径方向外方の領域に、第1リング部17aと同一側、すなわち
図15の右側に突出して形成される突条部17cとを含んで構成される。
【0074】
第1リング部17aの外径は、周壁部11aの内径よりもわずかに小さく、周壁部11a内の栓体16に底部11cとは反対側から押圧して栓体16を主として軸線方向に圧縮変形させ、これによって栓体16を底部11cの内面に密着させて、栓体16と底部11cとの間の液密性を向上することができるように構成されている。
【0075】
このような押え部材17は、栓体16を収容した周壁部11aの軸線方向一端部に同軸に配置し、加熱成形することによって、突条部17cが端壁部11bに喰い込んだ状態で第2リング部17bの第1リング部17aよりも半径方向外方の部分を端壁部11bに熱融着させて一体化される。
【0076】
このような構成を採用することによって、栓体16を主として軸線方向に圧縮変形させ、さらに変形方向外方へも圧縮変形させて、周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cに大きな強度で密着させ、高い液密性を実現することができる。
【解決手段】 ジャグ蓋体11を、ゴムから成る栓体16が合成樹脂から成る周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cによって囲まれた2重構造とし、ジャグ本体12の開口部12cとジャグ蓋体11とを密着させて高い液密性を達成し、針30の刺入によって栓体16に生じた亀裂を、栓体16自体の弾性復元力によって閉鎖する。また底部11cに針30の刺入によって生じた亀裂から液体が外部へ漏洩しようとしても、周壁部11a、端壁部11bおよび底部11cに栓体16を密着させ、液体の漏洩を阻止する。