【実施例】
【0027】
本発明の実施の形態に係るOリング組付け機について、
図1乃至
図8を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係るOリング組付け機の分解側面図である。
図1に示すように、実施例に係るOリング組付け機1は、ワーク50の孔部51に形成される環状溝52に、弾性を有するOリング100(
図5乃至
図8参照)を組み付けるOリング組付け機であって、その一端2aが環状溝52を閉鎖しないように孔部51へ挿入される筒状のガイド2と、このガイド2の内部3へ挿抜される(図中V
1,V
2方向)軸体4と、軸体4の外周面5に係止される複数の爪部材6と、を備える。なお、ワーク50は台座54に固定され、孔部51は環状溝52の下方(図中V
1方向)に底面53が形成されている。また、環状溝52は、ワーク50を台座54に固定した際に、側面視で底部52aが水平となるように形成されている。
【0028】
次に、本実施例にかかるOリング組付け機を構成するガイド及び軸体について、
図2を用いながらより詳細に説明する。
図2(a)及び
図2(b)は、それぞれ実施例に係るOリング組付け機を構成するガイド及び軸体の側面図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2(a)に示すように、ガイド2は、内部3を構成する円周面3aのうち一部に、その他端2bから一端2aの方向に向かって縮径するテーパ状面3bが設けられることで、一端2a及び他端2bにそれぞれ小径の開口端7及び大径の開口端8が形成される。
より詳細には、大径の開口端8は、その直径がOリング100の外径と同等である。また、小径の開口端7は、軸体4とこの軸体4に係止される複数の爪部材6が通過可能に開口し、かつ、軸体4の外周面5が摺動しつつ通過可能である。一方、小径の開口端7は、Oリング100の外径よりも小さい直径を有する。
【0029】
また、
図2(b)に示すように、軸体4は、その先端4aが先細部4bを形成するとともに、その外周面5に複数の爪部材6を係止するための係止爪スライド部12と、押圧爪スライド部13が設けられる。さらに、軸体4は、先端4aに、内部3への軸体4の挿入を制限するために、底面53(
図1参照)に当接可能なストッパー部材9が備えられる。具体的には、ストッパー部材9は、小径の開口端7を通過可能な直径dを有する円板状部材である。
【0030】
さらに、本実施例に係るOリング組付け機を構成する複数の係止爪について、
図2(b)乃至
図4を用いてより詳細に説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、それぞれ実施例に係るOリング組付け機を構成する複数の係止爪の側面図及び
図3(a)のB方向矢視図であり、
図3(c)及び
図3(d)は、それぞれ複数の押圧爪の側面図及び
図3(c)のC方向矢視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
まず、再度
図2(b)に戻ると、複数の爪部材6は、軸体4が内部3へ挿入される以前に(
図5(a)参照)、Oリング100がそれぞれの係止部10aに係止される複数の係止爪10と、軸体4が内部3へ挿入された場合に(
図6(a)参照)、複数の係止爪10に係止されたOリング100(
図5乃至
図8参照)を押圧する複数の押圧爪11と、からなる。
【0031】
次に、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、複数の係止爪10は、それぞれ、長尺状をなし、その一端に凹状の係止部10aと、その他端及び中間部に係止爪10を上下動させるエアシリンダ(図示せず)に固定するための固定部10bと、を備える。このうち、
図3(b)に示すように、係止部10aの上縁uは、下方へ凸の緩く湾曲した形状となっており、
図7(b)及び
図8(a)に示すように、Oリング100が屈曲し易いように構成されている。
また、複数の係止爪10は、軸体4が内部3へ挿入される場合に、ストッパー部材9に当接する当接端10cがそれぞれ備えられる。
なお、係止部10aは、先端4a(
図2(b)参照)がストッパー部材9に当接した場合に、環状溝52と略同一高さとなるように当接端10c付近に設けられる。
【0032】
続いて、
図3(c)に示すように、複数の押圧爪11は、それぞれ、略L字状をなし、その一端にOリング100を押圧する押圧部11aと、その他端及び中間部に押圧爪11を支持体55(
図5,6参照)に固定するための固定部11bと、を備える。このうち、
図3(d)に示すように、押圧部11aは、溝部Sが設けられ、Oリング100を押圧する際に、圧力が高まり易いように構成されている。
【0033】
さらに、本実施例に係るOリング組付け機を構成する軸体及び複数の爪部材について、
図4を用いながらより詳細に説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、それぞれ実施例に係るOリング組付け機を構成する軸体及び複数の爪部材の側面図であり、
図4(c)は
図4(a)におけるD−D線矢視断面図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、複数の係止爪10及び複数の押圧爪11は、それぞれレール状をなし外周面5に設けられる係止爪スライド部12及び押圧爪スライド部13を介し、軸体4の長手方向Yに沿ってスライド可能に構成される。
【0034】
また、
図4(c)に示すように、複数の係止爪10は、軸体4の中心軸Eを中心として対称的に外周面5に配置される一対の係止爪10,10である。
さらに、複数の押圧爪11は、中心軸Eを中心として対称的に、かつ一対の係止爪10,10に対し、中心軸Eを中心として90度回動するように外周面5に配置される一対の押圧爪11,11である。
【0035】
さらに、本実施例に係るOリング組付け機の動作について、
図5及び
図6を用いてより詳細に説明する。
図5(a)及び
図5(b)、
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ実施例に係るOリング組付け機の動作を説明する側面図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5及び
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
まず、
図5(a)は、軸体4が内部3へ挿入される以前の初期状態を示したものである。
図5(a)に示すように、まず、中心軸Eと同一軸線上に配列されるワーク50の孔部51へ、ガイド2が挿入される。そして、軸体4、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11は、ワーク50及びガイド2の直上に配置される。このうち、図示しないエアシリンダによって上下動される一対の係止爪10,10は、係止部10a,10aが軸体4の先細部4bよりもやや下方(V
1に向かう側)で停止した状態となっている。そのため、係止部10a,10aにOリング100が係止される。また、一対の押圧爪11,11は、それぞれ支持体55,55によって支持されており、この支持体55は、これを上下動させるためのエアシリンダ(図示せず)と接続されている。
なお、軸体4に先細部4bが設けられる理由は、係止部10aが凹状であることに起因する。すなわち、仮に先細部4bが設けられない場合では、係止部10aを下降させ係止爪スライド部12から脱出させた場合であっても、係止部10aにOリング100を係止させることができないためである。
次に、
図5(b)は、軸体4と一対の係止爪10,10が内部3へ挿入され始めた状態を示したものである。
図5(b)に示すように、ストッパー部材9が孔部51の底面53へ当接するまで軸体4が下降した後、一対の係止爪10,10のみが、なおも独立して下降する。
【0036】
続いて、
図6(a)は、軸体4のストッパー部材9が孔部51の底面53へ当接するとともに、当接端10cがストッパー部材9に当接した状態を示したものである。
図6(a)に示すように、軸体4と一対の係止爪10,10が停止した後、一対の押圧爪11,11が、Oリング100を押圧するように、いずれも押圧爪スライド部13を同一速度でスライドして下降する。
さらに、
図6(b)は、一対の押圧爪11,11が最も下降した状態を示したものである。
図6(b)に示すように、一対の押圧爪11,11は、ガイド2に当接している。なお、軸体4と一対の係止爪10,10が小径の開口端7(
図2参照)を通過した後に、一対の押圧爪11,11も小径の開口端7を通過可能である。ただし、一対の押圧爪11,11がガイド2に当接するとき、押圧部11a,11a(
図3参照)とストッパー部材9の間に、Oリング100の幅と同等な幅の隙間がそれぞれ形成されるため、一対の押圧爪11,11によって環状溝52が閉鎖されることはない。すなわち、一対の押圧爪11,11によって環状溝52に嵌め込まれたOリング100が押圧され続けることはない。
【0037】
加えて、本実施例に係るOリング組付け機によって組み付けられるOリングの変形について、
図7及び
図8を用いてより詳細に説明する。
図7(a)及び
図7(b)、
図8(a)及び
図8(b)は、それぞれ実施例に係るOリング組付け機を動作させた場合に対応する、Oリングの変形について説明する縦断面図である。なお、
図1乃至
図6で示した構成要素については、
図7及び
図8においても同一の符号を付して、その説明を省略するとともに、軸体のハッチングも省略する。また、
図8では、支持体55の図示も省略する。
まず、
図7(a)は、
図5(a)に対応するものである。
図7(a)に示すように、Oリング100が一対の係止爪10,10によって中心軸Eを中心として対称的(図の前後方向)に係止されることで、側面視でほぼ水平になるように保持される。
次に、
図7(b)は、
図5(b)に対応するものである。
図7(b)に示すように、小径の開口端7の直径がOリング100の外径よりも小さく、かつ、大径の開口端8の直径がOリング100の外径と同等であることから、係止部10a,10aに係止されたOリング100は、軸体4が内部3へV
1方向に向かって下降するにつれ、図中における左右端100a,100aがそれぞれテーパ状面3bに当接し始める。ただし、左右端100a,100aの中央部分100bは、係止部10a,10aに係止されていることから、Oリング100は、側面視で「くの字」に屈曲し始める。なお、左右端100a,100a及び中央部分100bとは、それぞれOリング100を構成する特定の一部を指すものではなく、側面視で左右端及び中央部分に相当することになるOリング100の位置を指すものである。
【0038】
続いて、
図8(a)は、
図6(a)に対応するものである。
図8(a)に示すように、Oリング100の中央部分100bがさらに屈曲され、側面視で「U字状」に変形される。より詳細には、中央部分100bは環状溝52の底部52a付近に到達し、左右端100a,100aは小径の開口端7付近に到達する。このとき、一対の押圧爪11,11がV
1方向に下降すると、Oリング100の左右端100a,100aはそれぞれ押圧部11a,11aによって押圧される。
さらに、
図8(b)は、
図6(b)に対応するものである。
図8(b)に示すように、Oリング100の左右端100a,100aがそれぞれ押圧部11a,11aによって押圧されると、左右端100a,100aは軸体4と小径の開口端7の隙間をくぐり抜ける。その後、Oリング100は、その復元力によって中央部分100bが係止部10a,10aから外れ、側面視でほぼ水平になるように復元される。したがって、Oリング100はその全周に亘って環状溝52に嵌め込まれる。この後、軸体4、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11は、ガイド2の内部3から抜き去られる。
【0039】
以上説明したように、実施例に係るOリング組付け機1によれば、
図5,6に示したように、ワーク50の孔部51へガイド2を挿入し、軸体4、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11を、ワーク50及びガイド2の直上に配置し、さらに係止部10a,10aにOリング100を係止した後、軸体4、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11をそれぞれ異なるタイミングで下降させるという簡単な動作によって、Oリング100を確実に環状溝52に組み付けることができる。したがって、Oリング100を完全に環状溝52に装着するために軸体4を中心軸E周りに回転駆動させる必要がないので、組み付けのための動作が煩雑とならない。
また、Oリング組付け機1によれば、ガイド2と、軸体4と、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11と、からなり、前述したような開閉機構が不要である。したがって、部品点数が少なく従来技術と比較して簡易な構成であることから、より安価な製造と導入が可能である。
【0040】
さらに、ガイド2の内部3にテーパ状面3bが形成され、かつ一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11が、軸体4の中心軸Eを中心として、90度毎に配置されていることによって、Oリング100にそれぞれ一対の最下部(中央部分100b,100b)及び最上部(左右端100a,100a)を無理なく形成することができる(
図7(b),
図8(a)参照)。すなわち、Oリング100の一部分のみをU字状に屈曲させるといった必要がないため、Oリング100の径に関わらず組み付けが可能である。
加えて、ガイド2の小径の開口端7は、軸体4の外周面5が摺動しつつ通過可能であることから、軸体4、一対の係止爪10,10及び一対の押圧爪11,11が下降する際のぐらつきが防止されるので、Oリング100が、ガイド2のテーパ状面3bを摺動する際に、軸体4の中心軸Eを中心として非対称に変形することや、特定の箇所が擦れたりすることを防止できる。したがって、Oリング100を精度良く環状溝52に組み付けることができる。
そして、Oリング100がガイド2の内部3に導入され易いので、Oリング100が捩じれて撚りが形成された状態のまま軸体4等の下降によってガイド2の内部3に押し込まれ、Oリング100が損傷するリスクが軽減される。したがって、Oリング組付けの再現性が良好である。
【0041】
また、複数の係止爪10の係止部10aが凹状であることから、これに係止されたOリング100が軸体4の下降の際にずれることがない。したがって、安定的にOリング100を屈曲させることが可能である。
また、軸体4の上下動の速度等と複数の係止爪10の上下動の速度等を組み合わせることで、太さの異なるOリング100に対しても、細かく対応可能であり、汎用性が向上する。
【0042】
なお、本発明に係るOリング組付け機1は、本実施例に示すものに限定されない。例えば、複数の係止爪10及び複数の押圧爪11は、Oリング100がその円周方向について均等に係止及び押圧されるのであれば、それぞれの個数は1対に限定されない。また、複数の係止爪10は、軸体4に沿ってスライド不能に固定されても良い。さらに、小径の開口端7は、複数の爪部材6の外側面が摺動しつつ通過可能であっても良い。