(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、環境及び作業情報構造化の技術を用いて、仕上げ作業に必要な情報を工具と加工対象とに分散配置し、その情報から動作プログラムを自動生成することで作業を行うロボットシステムが提案されている。その際、仕上げロボットが収納トレー内の加工対象を把持して仕上げ作業を行うためには、加工対象の位置及び姿勢情報の取得を行う必要がある。
【0003】
一般的には、ロボットによって物体を把持する場合、カメラやレーザセンサ等によって物体の位置や姿勢を検出し、検出した物体の位置及び姿勢情報を取得する。ところが、カメラやレーザセンサを用いる方法では、物体の表面状態や物体に照射される外光の影響によって正確な位置情報が得られず、物体の位置や姿勢の検出精度が落ちたり、物体が検出されなかったりする場合もある。特に、仕上げ作業で用いられる加工対象の多くが金属光沢のある金属製であり、カメラやレーザセンサによる位置及び姿勢情報の取得が容易ではない。
【0004】
そこで、特許文献1には、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いて物体の位置及び姿勢情報を取得する方法が提案されている。この特許文献1では、座標情報(物体の局所座標)や操作部位の位置(把持場所)等が記録されたRFIDタグと、物体の姿勢に応じて見え方が変わる微小な識別マークとを物体に設置している。このように物体に設置されたRFIDタグをロボットのハンドに設置された検出器で検出して物体の位置(物体の局所座標系の原点)を取得し、さらにレーザセンサ等で識別マークを検出してその見え方から物体の姿勢を求めている。そして、得られた物体の位置や姿勢をロボットの座標系に変換することで、ロボットに対する物体の位置及び姿勢情報を取得している。
【0005】
また、特許文献2には、円筒状の物体の外壁面の全周に亘って幅のある二次元バーコード等の識別マークを設け、この識別マークを検出することで物体の位相を検出し、この位相すなわち姿勢に基づいてロボットによって物体を把持する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、カメラを用いた物体の位置や姿勢の検出は、照明の状態等の周囲の環境状態に影響を受けやすく、特に、照明光の届き難い物体の奥行き方向の位置や傾きについては検出精度が悪く、検出そのものに失敗することがある。また、レーザセンサを用いた物体の位置や姿勢の検出は、周囲の環境状態に影響は受け難いものの、物体がレーザ光を反射する金属材等からなるような場合には迷光等が生じることから用いることができない。また、レーザセンサを用いた方法では、物体の全域にレーザ光を照射し、その戻り光から物体の形状を求めてから、物体の姿勢を算出することになるため、演算が複雑となり、姿勢を算出するまでに時間を要することがある。
【0008】
特許文献1の方法では、RFIDタグを用いることで物体の大まかな位置や姿勢を知ることができるため、識別マークを用いた位置や姿勢の検出するときの検出範囲を限定することができる。しかしながら、特許文献1の方法では、RFIDタグを用いた大まかな位置や姿勢の検出と、識別マークを用いたレーザセンサによる位置や姿勢の検出との2段階の検出が必要となり、装置及び制御が複雑化し、最終的に位置や姿勢を検出するまでの時間が長くなる。このような特許文献1の方法は、RFIDタグの周辺に位置及び姿勢計測を容易にするために、画像処理を補助する識別マークを貼っていることが特徴であり、必ず識別マークを必要とするものである。
【0009】
特許文献2の方法は、物体の外周面の全周に亘って識別マークを設け、物体を転がしながら移動させるときの位相を姿勢として検出するものであることから、物体の形状が限定される。また、特許文献2の方法は、物体が配置される位置が限定されており、また物体の移動方向は1方向のみに限定されている。
【0010】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、姿勢検出装置において、被検出物体の形状に寄らず、簡易な構成でかつ正確に被検出物体の姿勢を検出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0012】
第1の発明は、姿勢検出装置であって、被検出物体に設置されると共に各々が固有情報を有する複数のRFIDタグと、前記RFIDタグからの信号を受信すると共に検出面となる平面に沿って縦横に複数配列される複数のアンテナを有する検出装置と、前記RFIDタグからの信号を受信した前記アンテナの位置情報に基づいて前記被検出物体の姿勢を求める算出手段とを備えるという構成を採用する。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記検出装置が、上記アンテナ同士の間に配置されると共に上記アンテナ同士の磁束干渉を防止する遮蔽板を備えるという構成を採用する。
【0014】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記アンテナが基板の表面に形成されたアンテナパターンからなり、上記基板が、上記アンテナパターンが形成される表面が上記検出面に対して交差する姿勢で設置されているという構成を採用する。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、安定姿勢の被検出物体の下面に対して2つ以上のRFIDタグが設置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、検出装置が、検出面となる平面に沿って縦横に複数配列されたアンテナを有している。1つのアンテナのRFIDタグの読み取り範囲は限られているため、このような本発明では、被検出物体が検出面に対向配置されたときに、RFIDタグが存在する範囲に位置するアンテナのみでRFIDタグから信号を受信する。このため、本発明では、RFIDタグが存在する位置を特定することができる。さらに、RFIDタグが固有情報を有していることから、本発明によれば、RFIDタグから受信した信号に基づいて、どのRFIDタグがどの位置に存在するかを特定することができる。
【0017】
また、本発明においては、上述のようにRFIDタグからの信号を受信したアンテナの位置情報(すなわちRFIDタグの存在位置)から、算出手段によって、上記位置情報に基づいて被検出物体の姿勢を求める。よって、本発明によれば、被検出物体の姿勢を知ることが可能となる。
【0018】
このような本発明によれば、カメラやレーザセンサを用いることなく被検出物体の姿勢を知ることができる。また、カメラのように照明状態等の周囲の環境が検出精度に影響を与えることがなく、また金属材からなる物体であってもRFIDタグからの信号をアンテナにて受信することができる。したがって、常に正確な被検出物体の姿勢を容易に求めることができる。また、本発明によれば、特許文献1のように2段階の検出を行う必要がなくなり、装置及び制御が簡単になり、短時間にて被検出物体の姿勢を検出することができる。また、本発明によれば、被検出物体に対しては、複数のRFIDタグを設置するのみで被検出物体の姿勢を求めることができる。したがって、被検出物体がどのような形状であっても、被検出物体の姿勢を容易に検出することができる。以上のように、本発明によれば、被検出物体の形状に寄らず、簡易な構成でかつ正確に被検出物体の姿勢を検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本実施形態の姿勢検出装置の考え方について説明する。以下に説明する姿勢検出装置は、ロボットによって金属部品の仕上げ作業を行うに当たり、当該金属部品の位置及び姿勢を検出し、金属部品の座標をロボットの座標に変換する用途に用いられることを想定する。このため、本発明のRFIDタグとして、金属用のRFIDタグを使用することとした。金属用のRFIDタグは金属に貼り付けていても読み取り可能であるが、通常のタグと比べ読み取り範囲が10分の1程度になる。この特性を逆に利用して金属部品の位置及び姿勢の検出分解能を高めるようにしている。
【0021】
また、近い範囲に存在するRFIDタグを読み取る為に近接型のタグリーダを使用する。このタグリーダには、RFIDタグとの間で電波(信号や電力)をやり取りするためのアンテナを複数備えているものとする。また、位置情報とともに姿勢情報を取得する為にRFIDタグを金属部品の両端に各々貼り付ける。金属部品に対するRFIDタグの貼り付け位置を情報としてこれらのRFIDタグに記述しておく。そして、給電するアンテナを1枚1枚切り替えながらRFIDタグの読み取りを行い、読み取りが出来たアンテナの位置とRFIDタグに記載された情報より位置及び姿勢情報を取得する。
【0022】
ここで、金属部品の姿勢情報を取得する方法について説明する。金属部品の両端に貼り付けられたRFIDタグ間の距離をaとする。距離aは貼り付けたRFIDタグに情報として記述しておき、アンテナでRFIDタグを読み取るときに情報として取得し、姿勢の計算に利用する。例えば、直交座標系におけるRFIDタグ同士のX軸方向の距離をb、Y軸方向の距離をcとすると、パラメータa,b,cより、下式(1)あるいは(2)を用いて金属部品のX軸に対する傾きθが求まる。なお、式(1)と式(2)のいずれからも傾きθを求めることができる。ただし、誤差を減らすために、距離bと距離cとのうち、値が大きくなった方をパラメータとする式を用いることが好ましい。
【0025】
姿勢検出装置では、タグリーダにおいてマトリクス状にアンテナを並べ、電波を透過可能な材料で形成されたトレーに金属部品を入れてタグリーダ上に載置し、金属部品に貼り付けられたRFIDタグを検出したアンテナの位置情報に基づいて金属部品の位置及び姿勢情報の取得を行う。
【0026】
このような姿勢検出装置では、RFIDタグに対するアンテナの読み取り範囲を重ね、1枚のRFIDタグを複数のアンテナで読み取ることで、位置検出の精度を上げることが考えられる。ただし、RFIDタグをこのように並べると、アンテナの種類によっては、読み取り範囲が重なる部分でRFIDタグの読み取りができないことがある。たとえば、使用するアンテナの読み取り範囲が15mm×30mmである場合には、15mm以上の誤差が出てしまう可能性がある。
【0027】
そこで、RFIDタグに対してアンテナを平行ではなく、垂直に配置することによってRFIDタグに対する読み取り範囲を狭くすることが考えられる。これによって1つのアンテナの読み取り範囲を狭くなり、読み取り範囲が重ならないようにアンテナを密に配列することができる。しかし、この方法では、アンテナ間の距離が縮まるため、アンテナ同士で磁束干渉し読み取りが行えない場合がある。そこで、磁束干渉を防ぐため、アンテナ間に遮蔽板を挟むことが考えられる。遮蔽板を挟むことにより、アンテナの磁束を遮蔽板が吸収するため、隣のアンテナとの磁束干渉を防ぐ事が出来る。
【0028】
このような姿勢検出装置に対する評価実験を行った。本実験では、溝のあるアクリル板のレールに遮蔽板を固定し、遮蔽板の一方側の面にアンテナを貼り付けるようにアンテナが形成された基板を配置したこと。また、遮蔽板として1mmと3mmのアルミニウム板を用いた。また、1mmの遮蔽板を用いたときのアンテナから対向する遮蔽板までの距離は5mmであり、3mmの遮蔽板を用いたときのアンテナから対向する遮蔽板までの距離は3mmである。なお、本実験では、トレーを用いずに金属部品を直接タグリーダ上に置き、読み取りを行った。また、金属部品をアンテナ上に置き、金属部品を1mmずつずらし、その際に読み取りを行うことができる範囲を調べた。
【0029】
本実験では、3mmの遮蔽板を用いたときには、RFIDタグの読み取りを行うことができなかった。これは、アンテナ上ではRFIDタグに対して磁束が平行に発生しているため、十分に磁束が鎖交しなかったと考えられる。また、1mmの遮蔽板を用いたときには、上方から見て、アンテナが形成された基板の裏面とアルミ板とのごく薄い領域にてRFIDタグの検出ができなかったが、遮蔽板と遮蔽板とに挟まれた領域においてRFIDタグを検出することができた。アンテナの種類や他の条件によっては必ずしも3mm以上の遮蔽板を用いたときにRFIDタグの読み取りを行うことができないとまでは言えないが、遮蔽板が薄い方が読み取り精度が高いことが分かる。
【0030】
続いて、図面を参照して、本発明に係る姿勢検出装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0031】
図1は、本実施形態の姿勢検出装置1の概略構成を模式的に示した全体図であり、(a)が平面図であり、(b)がブロック図である。これらの図に示すように、本実施形態の姿勢検出装置1は、タグリーダ2(検出装置)と、位置姿勢算出装置3(算出手段)と、IDタグ4(RFIDタグ)と、IDタグ5(RFIDタグ)とを備えている。
【0032】
タグリーダ2は、
図1(a)に示すように、基台2aと、複数のアンテナ基板2bとを備えている。基台2aは、アンテナ基板2bを支持するための台である。アンテナ基板2bは、
図2(a)に示すように、基板2b1と、当該基板2b1の表面に形成されたアンテナパターン2b2(アンテナ)とから構成されている。このようなアンテナ基板2bは、基台2aの上面にアンテナを上方に向けた状態で固定されている。これによって、タグリーダ2の上面がIDタグ4及びIDタグ5から電波を受信するための検出面とされている。
【0033】
本実施形態においては、25個のアンテナ基板2bが、水平面(X−Y平面)に沿って縦横に複数配列されている。なお、以下の説明において、水平な軸をX軸及びY軸とし、垂直な軸をZ軸とする。そして、アンテナ基板2bは、
図1(a)に示すように、X方向に5個並び、これを1列としてY方向に5列並んで配置されている。なお、
図1(a)に示すように、最も+Y側で−X側に配置されたアンテナ基板2bが備えるアンテナをアンテナaとし、当該アンテナaからX方向に向けて配列順にアンテナb、アンテナc、アンテナd、アンテナeとし、列を変えながら配列順にアンテナf〜yとする。これらのアンテナa〜yは、位置姿勢算出装置3に対して電気的に接続されており、IDタグ4あるいはIDタグ5から読み取った情報を位置姿勢算出装置3に向けて出力する。
【0034】
図2(b)は、アンテナa〜yの読み取り範囲を模式的に示した図である。この図に示すように、アンテナa〜yは、アンテナ同士の間に読み取り範囲が重なる領域が存在する間隔で配列されている。この読み取り範囲が重なる領域では、2つあるいは4つのアンテナが、IDタグ(IDタグ4あるいはIDタグ5)と電波の送受信が可能となっている。
【0035】
図1に戻り、位置姿勢算出装置3は、例えばコンピュータから構成されており、予め記憶するプログラム、アンテナa〜yで取得した情報、予め記憶するアンテナa〜yの位置情報等に基づいて、金属部品Xの位置及び姿勢情報を算出する。この位置姿勢算出装置は、予めアンテナa〜yの位置(XY座標値)を記憶している。そして、位置姿勢算出装置3は、IDタグ4及びIDタグ5の位置情報等から金属部品Xの姿勢を算出する。なお、本実施形態における金属部品Xの姿勢算出方法については、後に説明する。
【0036】
IDタグ4及びIDタグ5は、固有情報を有するICチップからなり、タグリーダ2からの電波(信号)を受信して動作するパッシブタグである。なお、本実施形態においては、IDタグ4及びIDタグ5がパッシブタグである構成について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、IDタグ(RFIDタグ)として、電池を内蔵したアクティブタグやセミアクティブタグを用いることもできる。また、IDタグ4及びIDタグ5とタグリーダ2との信号の伝達方式は、電磁誘導方式であっても電波方式であっても良い。
【0037】
図3(a)は、金属部品Xの下面図である。この図に示すように、IDタグ4とIDタグ5とは、安定姿勢とされる金属部品Xの下面X1に対して設置されている。IDタグ4は、長尺状の金属部品Xの一方の端部に設置されており、IDタグ5は、同じ金属部品Xのもう一方の端部に設置されている。すなわち、IDタグ4とIDタグ5とは、金属部品Xの長手方向に配列され、できる限り互いの距離が長くなるように配置されている。なお、金属部品Xの安定姿勢とは、金属部品Xがタグリーダ2上に載置されるときに、最も安定する姿勢であり、例えば最も広い面を下面とする姿勢であったり、最も重心が下となる姿勢であったりする。
【0038】
図1(b)に示すように、IDタグ4は、個体情報である固有番号と、IDタグ4からIDタグ5までの距離aと、金属部品Xの操作部位の位置座標(操作部位wxと操作部位xy)とを固有情報として記憶している。なお、金属部品Xの操作部位の位置座標とは、
図3(a)に示すように、金属部品Xの形状を規定する部品座標系における操作部位の位置を示す座標である。操作部位とは、ロボットによって把持される部位である。また、本実施形態においては、部品座標系は、IDタグ4が設置される位置を原点とし、金属部品Xの長手方向をX軸方向とし、金属部品Xの短手方向をY方向する直交座標系とされている。そして、金属部品Xの操作部位の位置座標は、部品座標系における操作部位のX軸方向での位置を示す座標wxと、部品座標系における操作部位のY軸方向での位置を示す座標wyとして、IDタグ4に記憶されている。また、IDタグ5は、個体情報である固有番号を記憶している。
【0039】
次に、本実施形態の姿勢検出装置1による金属部品Xの姿勢検出方法について説明する。なお、ここでは、
図1(a)に示すように、IDタグ4がアンテナiのみの読み取り範囲に位置し、IDタグ5がアンテナqとアンテナvとの間(アンテナqの読み取り範囲とアンテナvの読み取り範囲とが重なる領域)に位置した状態で金属部品Xがタグリーダ2に載置されているものとする。
【0040】
まず位置姿勢算出装置3は、アンテナiからIDタグ4の固有番号と、IDタグ4とIDタグ5との距離aと、操作部位wxと、操作部位wyとを取得し、これらの情報をアンテナiで取得した情報として記憶する。また、位置姿勢算出装置3は、アンテナq,vからIDタグ5の固有番号を取得し、アンテナq,vで取得した情報として記憶する。
【0041】
続いて、位置姿勢算出装置3は、
図1(b)に示すように、操作部位wxと、操作部位wyと、距離aと、IDタグ4の位置と、IDタグ5の位置とからなる、姿勢算出用データ群Dを作成する。操作部位wxと、操作部位wyと、距離aとは、アンテナbで取得した情報に含まれる情報を移動させて姿勢算出用データ群Dに含める。IDタグ4の位置は、IDタグ4のX軸方向の位置と、Y軸方向の位置とからなるデータである。ここで、IDタグ4のX軸方向の位置及びY軸方向の位置は、アンテナiの座標であるx1,y1とする。IDタグ5の位置は、IDタグ5のX軸方向の位置と、Y軸方向の位置とからなるデータである。ここで、IDタグ5のX軸方向の位置は、アンテナqのX軸方向の座標とアンテナvのX軸方向の座標とを平均することによって得られるx2とする。また、IDタグ5のY軸方向の位置は、アンテナqのY軸方向の座標とアンテナvのY軸方向の座標とを平均することによって得られるy2とする。
【0042】
続いて、位置姿勢算出装置3は、姿勢算出用データ群Dから金属部品Xの姿勢を算出する。IDタグ4のX軸方向の位置x1とIDタグ5のX軸方向の位置x2との差分の絶対値を、X軸方向におけるIDタグ4とIDタグ5との距離b(
図3(b)参照)とし、IDタグ4のY軸方向の位置y1とIDタグ5のY軸方向の位置y2との差分の絶対値を、Y軸方向におけるIDタグ4とIDタグ5との距離c(
図3(b)参照)とする。ここで、位置姿勢算出装置3は、距離bと距離cとのうち長い方を選択し、選択した距離をパラメータとする演算式(上述の式(1)あるいは式(2))に選択した距離と、さらに距離aを代入することによって、金属部品Xの姿勢(傾きθ)を算出する。
【0043】
そして、位置姿勢算出装置3は、求められた金属部品Xの姿勢から、操作部位wxと操作部位wyとを、ロボットの座標系で表される座標に変換する。例えば、ロボットの座標系が、本実施形態のX軸とY軸とからなる座標系である場合には、X軸に対する傾きθから、下式(3)に基づいて、操作部位の座標(wx,wy)をロボットの座標(Wx,Wy)に変換することができる。
【0045】
以上、説明したような本実施形態の姿勢検出装置1においては、タグリーダ2がマトリクス状に配列される複数のアンテナa〜yを備え、1つのアンテナa〜yの読み取り範囲は限られているため、このような姿勢検出装置1では、金属部品Xがタグリーダ2に載置されたときに、IDタグ4とIDタグ5とが存在する範囲に位置するアンテナのみでIDタグ4及びIDタグ5から信号を受信する。このため、本実施形態の姿勢検出装置1では、アンテナa〜yの位置情報に基づけば、IDタグ4及びIDタグ5が存在する位置を特定することができる。さらに、IDタグ4及びIDタグ5が固有情報を有していることから、本実施形態の姿勢検出装置1によれば、IDタグ4及びIDタグ5から受信した信号に基づいて、どのIDタグがどの位置に存在するかを特定することができる。そして、本実施形態の姿勢検出装置1では、このようにして特定したIDタグ4とIDタグ5との位置情報から金属部品Xの姿勢を求める。
【0046】
このような本実施形態の姿勢検出装置1によれば、カメラやスキャナを用いることなく金属部品Xの姿勢を検出することができ、また正確な操作部位の座標を得るために複数回に分けての検出を行う必要がない。よって、簡易な構成でかつ正確に金属部品Xの姿勢を検出することができる。
【0047】
また、本実施形態の姿勢検出装置1においては、金属部品Xに対しては、2つのIDタグ4及びIDタグ5を設置するのみで金属部品Xの姿勢を求めることができる。したがって、金属部品Xがどのような形状であっても、金属部品Xの姿勢を容易に検出することができる。
【0048】
また、本実施形態の姿勢検出装置1においては、安定姿勢の金属部品Xの下面X1に対して2つのIDタグ(IDタグ4及びIDタグ5)が設置されている。このため、金属部品Xをタグリーダ2に載置したときに、確実にタグリーダ2に複数のIDタグを対向させることができる。よって、確実に金属部品Xの姿勢を検出することができる。
【0049】
なお、IDタグ5及びIDタグ6については、短距離でのみ検出が可能なものを用いることが好ましい。これによって、遠くのアンテナa〜fがIDタグ5及びIDタグ6を検出することを防止し、IDタグ5及びIDタグ6の位置をより正確に得ることが可能となる。ただし、このような場合には、IDタグ5及びIDタグ6がアンテナa〜fから遠方に存在したり、アンテナa〜fから見て金属部品Xの裏側に存在したりすると、IDタグ5及びIDタグ6の検出ができなくなる。このため、上述のように、安定姿勢の金属部品Xの下面X1に対して2つのIDタグ5及びIDタグ6を設置する等によって、IDタグ5及びIDタブ6を設置する位置をアンテナa〜fのいずれかで確実に検出するようにすることが好ましい。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、基板2b1上のアンテナパターン2b2が上方に向くように配置されたタグリーダ2を用いる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、
図4(a)に示すように、アンテナ基板2bを縦置きにしたタグリーダ2Aを用いても良い。このようなタグリーダ2では、アンテナパターン2b2が形成される基板2b1の表面が検出面に対して交差する姿勢となるように、アンテナ基板2bが設置される。これによって、検出面側(
図4(a)で図示されている側)から見たアンテナの設置領域が狭まり、同側からみたときに磁界範囲が小さくなる。したがって、検出面におけるアンテナの読み取り範囲が小さくなり、より検出の分解能を向上させることができる。
【0052】
また、
図4(a)に示すように、アンテナ基板2b同士の間(すなわちアンテナ同士の間)に遮蔽板6を設置することが好ましい。この遮蔽板6は、磁束を吸収するアルミニウム等の材料によって形成されており、アンテナ同士の磁束干渉を防止する。アンテナの種類によっては、上記実施形態において示した2つのアンテナの読み取り範囲が重なる領域でIDタグの検出ができなくなるものが存在する。このようなアンテナを用いる場合には、上記のように遮蔽板6を設置することによってアンテナ同士の磁束干渉を防止し、読み取り範囲が重なることを防止できる。このため、読み取り範囲が重ならないようにアンテナを密に配置することができる。また、
図4(a)に示すように、アンテナ基板2bを縦置きした場合には、上記実施形態よりも密にアンテナを配置することもできるが、この場合には磁束干渉が生じ易くなる。これに対して、遮蔽板6を設置することによって、磁束干渉が生じることを防ぎつつ、上記実施形態よりも密にアンテナを配置することができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、IDタグ4が、IDタグ4からIDタグ5までの距離aと、金属部品Xの操作部位の位置座標(操作部位wxと操作部位xy)とを記憶している構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、
図4(b)に示すように、位置姿勢算出装置3が、IDタグ4からIDタグ5までの距離aと、金属部品Xの操作部位の位置座標(操作部位wxと操作部位xy)とを記憶するようにしても良い。
【0054】
また、上記実施形態においては、姿勢を検出する対象が金属部品Xである構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、金属以外の材料からなる部品等を姿勢検出の対象とすることも可能である。すなわち、本発明の被検出物体は、材料が限定されるものではない。
【0055】
また、上記実施形態においては、金属部品Xの下方にタグリーダ2が配置される構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、タグリーダ2を金属部品Xの上方や側方に配置することも可能である。このときには、被検出物体が磁束を通さない金属材からなるときには、被検出物体のタグリーダ2側の面に2つ以上のIDタグを設ける必要がある。
【0056】
また、上記実施形態においては、2つのIDタグが金属部品Xに設置された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上のIDタグを金属部品Xに設置しても良い。このような場合には、例えば、IDタグの位置からIDタグを頂点する多角形状を導き、この多角形状の向きから金属部品Xの姿勢を検出しても良い。
【0057】
また、上記実施形態においては、小型の金属部品Xの姿勢を検出する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、大型の部品を被検出物体とし、例えばクレーン等で大型の部品を搬送するときにこの大型の部品の姿勢を検出するために用いることも可能である。このような場合には、数cm単位での分解能が必要なくなる場合もあり、例えば、IDタグとしてアクティブタグを用いてよりIDタグの読み取り可能範囲を拡大させても良い。