(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外乱オブザーバは、所定速度以下のモータ速度で駆動される場合には前記摩擦係数を最小値にすることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の位置決め装置の制御装置。
前記外乱オブザーバは、前記摩擦パラメータとしての関数に対して複数の摩擦係数を有しており、位置決め位置に応じて摩擦係数を動的に切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の位置決め装置の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、
図1から
図7を参照して、本発明の第1の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電子部品の実装装置の全体図である。なお、以下においては、モジュラー型の実装装置に本発明の位置決め装置の制御装置を適用した構成を例示して説明するが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の位置決め装置の制御装置をロータリー型の実装装置で使用される位置決め装置にも適用可能である。
【0031】
実装装置1は、フィーダ3から供給された電子部品を、実装ヘッド4によって基台2上の基板W(基材)に実装するように構成されている。基台2上には、実装ヘッド4をX軸方向及びY軸方向に移動させる実装ヘッド移動機構5が設けられている。実装ヘッド移動機構5は、基台2の四隅に立設された支柱部6により支持されており、基台2上面から所定の高さで実装ヘッド4をX軸方向及びY軸方向に移動させる。
【0032】
実装ヘッド移動機構5は、不図示のモータによってX軸テーブル11(負荷)に沿って実装ヘッド4(負荷)をX軸方向に移動させる。また、実装ヘッド移動機構5は、不図示のモータによってX軸テーブル11と共に実装ヘッド4をY軸テーブル12及びスライドガイド13に沿ってY軸方向に移動させる。このような構成により、実装ヘッド4は、基板Wの上方を水平移動され、フィーダ3から供給された電子部品を基板Wの所望の位置に搬送することが可能となっている。
【0033】
基台2上には、実装ヘッド4の下方に基板W(負荷)を位置付ける基板搬送部7が設けられている。基板搬送部7は、X軸方向に延在する搬送ベルト等により、一端側から部品実装前の基板Wを取り込み、他端側から部品実装後の基板Wを搬出する。本実施の形態に係る位置決め装置の制御装置は、実装装置1においてモータ駆動される実装ヘッド移動機構5や基板搬送部7等に適用される。そして、モールねじやタイミングベルト等の弾性体でモータと負荷とを連結した構成において、高速かつ高精度の位置決めを実現している。
【0034】
図2を参照して、通常の外乱オブザーバについて説明する。
図2は、通常の外乱オブザーバのブロック線図である。なお、
図2において、I
refが電流指令値、I
cmpが電流補償値、K
tがトルク定数、K
tnがトルク定数のノミナル値、J
mがモータイナーシャ、J
mnがモータイナーシャのノミナル値、sがラプラス演算子、T
dismが外乱トルク、T
^dismが外乱トルクの推定値、θ
・mがモータ速度、G
disがオブザーバゲインをそれぞれ示す。なお、モータ速度θ
・mは、例えば、モータの出力軸に設けられたエンコーダの情報を元に測定される。なお、以下の説明では、記号θに付される「・」は微分を示し、記号Tに付される「^」は推定値を示す。
【0035】
図2に示すように、モータ制御系では外乱オブザーバ10によってモータへの外乱トルクT
dismを補償するように構成されている。電流指令値I
refは、演算要素e102にてトルク定数K
tが乗算され、トルク指令値として減算要素e103に出力される。トルク指令値は、減算要素e103にて外乱トルクT
dismとの偏差が算出される。このトルク偏差が演算要素e104にてモータイナーシャJ
mで除算され、さらに積分されたものがモータ速度θ
・mとなる。ここで、電流指令値I
refからモータ速度θ
・mまでの伝達関数は次式(5)で示される。
【数5】
【0036】
式(5)を外乱トルクT
dismについて整理すると次式(6)となり、
【数6】
電流指令値I
refとモータ速度θ
・mから外乱トルクを推定演算できることが分かる。外乱オブザーバ10は、この原理を用いて外乱トルクを推定してモータ制御系にフィードバックすることで外乱を除去している。
【0037】
この場合、外乱オブザーバ10には、電流指令値I
refとモータ速度θ
・mとが入力され、これら各値からモータへの外乱を除去するための指令値として外乱トルクの推定値T
^dismが算出される。外乱オブザーバ10では、演算要素e105にて電流指令値I
refにトルク定数のノミナル値K
tnが乗算され、演算要素e106にてモータ速度θ
・mを微分したものにモータイナーシャのノミナル値J
mnが乗算されて単位が合わせられる。
【0038】
そして、減算要素e107にて演算要素e105からの出力と演算要素e106からの出力とが比較され、低域フィルタe108によって低周波帯域の成分が取り出されて、これが外乱トルクの推定値T
^dismとして出力される。外乱トルクの推定値T
^dismは、演算要素e109にてトルク定数のノミナル値K
tnで除算され、外乱を補償するための補償電流値I
cmpに変換される。補償電流値I
cmpは、加算要素e101にてモータに入力される電流指令値I
refに加算される。このようにして、外乱トルクの推定値T
^dismがモータ制御系にフィードバックされる。
【0039】
本実施の形態においては、外乱オブザーバ内に摩擦パラメータ(摩擦項)を追加することにより、高速かつ高加減速時の位置決めにおいてもオーバーシュートを抑制可能にしている。以下、
図3から
図5を参照して、本実施の形態の外乱オブザーバを適用したモータ制御系について説明する。
【0040】
図3及び
図4は、摩擦パラメータを含む外乱オブザーバのブロック線図である。
図5は、摩擦パラメータを含む外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置のブロック線図である。なお、
図3から
図5のI
ref、I
cmp、K
t、K
tn、J
m、J
mn、s、T
dism、T
^dism、θ
・m、G
disは
図2と同様である。また、K
pが位置ゲイン、K
vが速度ゲイン、K
fがバネ定数(軸剛性)、J
lが負荷イナーシャ、T
dislが負荷側の外乱トルク、T
reacが軸ねじれ反力、θ
cmdが目標位置、θ
mがモータ位置、θ
lが負荷位置、θ
tが軸ねじれ量、θ
・cmdが速度指令値、Bが摩擦をそれぞれ示す。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態に係るモータ制御系では、外乱の一部として摩擦Bを含めて、電流指令値I
refからモータ速度θ
・mが算出される。この場合、電流指令値I
refからモータ速度θ
・mまでの伝達関数は次式(7)で示される。
【数7】
【0042】
式(7)を外乱トルクT
dismについて整理すると次式(8)となり、
【数8】
図3に示すような外乱オブザーバ20を構成することができる。
図3に示す外乱オブザーバ20を実用的に変形すると
図4のような構成にすることができる。
【0043】
次に、この外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置について説明する。
図5に示すように、減算要素e201では目標の位置指令値θ
cmdとモータからフィードバックされたモータ位置θ
mとが減算され、位置偏差が算出される。位置偏差は、演算要素e202にて位置ゲインK
pが乗算され、速度指令値θ
・cmdとして減算要素e203に出力される。減算要素e203では速度指令値θ
・cmdとモータからフィードバックされたモータ速度θ
・mとが減算され、速度偏差が算出される。速度偏差は、演算要素e204にて速度ゲインK
vが乗算され、演算要素e205にて単位が変換されて電流指令値I
refとして加算要素e206に出力される。
【0044】
電流指令値I
refは、加算要素e206にて電流補償値I
cmpが加算され、演算要素e207及び外乱オブザーバ20に出力される。電流指令値I
refは、演算要素e207にてトルク定数Ktが乗算され、トルク指令値として減算要素e208に出力される。トルク指令値は、減算要素e208にて外乱トルクT
dismとの偏差が算出され、さらに減算要素e209にて軸ねじれ反力T
reacとの偏差が算出される。このトルク偏差が演算要素e211にてモータイナーシャJ
mで除算され、さらに積分されたものがモータ速度θ
・mとなる。モータ速度θ
・mは、演算要素e212、外乱オブザーバ20に出力されると共に、速度偏差を求めるために減算要素e203にフィードバックされる。
【0045】
モータ速度θ
・mは、演算要素e212にて積分されてモータ位置θ
mに変換される。モータ位置θ
mは、モータの出力軸の角度位置であり、例えば出力軸に設けられた角度位置検出器としてのロータリーエンコーダの情報を元に測定される。なお、角度位置検出器は、出力軸の角度位置を検出可能であればどのような構成でもよい。モータ位置θ
mは、減算要素e213に出力されると共に、位置偏差を求めるために減算要素e201にフィードバックされる。モータ位置θ
mは、減算要素e213にて負荷側からフィードバックされた負荷位置θ
lが減算され、軸ねじれ量θ
tが算出される。負荷位置θ
lは、モータ駆動によって移動された負荷の移動位置(角度位置)である。
【0046】
軸ねじれ量θ
tは、演算要素e214にてバネ定数K
fが乗算され、軸ねじれ反力T
reacとして減算要素e215に出力されると共に減算要素e209にフィードバックされる。軸ねじれ反力T
reacは、減算要素e215にて負荷側の外乱トルクT
dislが減算され、演算要素e216に出力される。軸ねじれ反力T
reacが演算要素e216にて負荷イナーシャJ
lで除算され、演算要素e217にて積分されることで負荷位置θ
lが算出される。負荷位置θ
lは、軸ねじれ量θ
tを求めるために減算要素e213にフィードバックされている。
【0047】
外乱オブザーバ20には、電流指令値I
refとモータ速度θ
・mとが入力される。電流指令値I
refは、演算要素e218にてトルク定数のノミナル値K
tnが乗算され、低域フィルタe222の前段側の加算要素e221に出力される。モータ速度θ
・mは、演算要素e219、e223にて外乱の一部に摩擦Bを考慮して変換され、低域フィルタe222の前段側の加算要素e221及び後段側の減算要素e224に出力される。低域フィルタe222にて加算要素e221からの出力信号から低周波帯域の成分が取り出され、減算要素e224にて演算要素e223からの出力信号が減算されることで外乱トルクの推定値T
^dismが算出される。
【0048】
外乱トルクの推定値T
^dismは、演算要素e225にてトルク定数のノミナル値K
tnで除算され、外乱を補償するための補償電流値I
cmpに変換される。補償電流値I
cmpは、加算要素e206にフィードバックされ、指令電流値I
refに加算される。このように、本実施の形態に係る外乱オブザーバ20は、摩擦を考慮した補償電流値I
cmpが指令電流値I
refにフィードバックされる。よって、摩擦のパラメータBの値を調整することによって、モータ制御系に任意の摩擦を与えた場合のモータの挙動を得ることが可能となっている。
【0049】
ところで、外乱オブザーバ20に摩擦を加えることによりオーバーシュートを小さくすることが可能になるが、高速駆動時にも摩擦が作用してモータ出力が損失する。このため、高速駆動している間には摩擦の影響を与えず、位置決め整定時にのみ摩擦が作用することが望ましい。そこで、摩擦Bを定数のパラメータではなく、関数として用いることも可能である。例えば、摩擦として次式(1)で示される関数を用いることができる。式(1)において、Bは摩擦係数、uは入力、f(u)は出力を示している。
【数9】
【0050】
以下、摩擦として式(1)に示す関数の特性について説明する。
図6は、式(1)に示す関数の特性の説明図である。なお、
図6は、摩擦係数Bを0.3に設定した場合を示す。
【0051】
図6に示すように、式(1)は、入力uが0で出力f(u)が最大値(B=0.3)となり、入力uが増加するのに伴って出力f(u)が0に近付くという特性を有している。この関数を利用することにより、高速駆動している間、すなわち入力uが大きい場合には、摩擦の影響を無くすことができる。よって、モータ出力の損失を防ぐことができる。一方で、位置決め整定時、すなわち入力uが0に近付く場合には、速度の低下に応じて摩擦が増加され、オーバーシュートを小さくして整定時間を短くできる。
【0052】
式(1)の関数を用いて位置決め整定を実施したところ、
図7に示すようなシミュレーション結果が得られた。ここでは、
図7Aに示すように、モータ制御系のパラメータを設定し、摩擦を掛けない場合(B=0)と摩擦を掛けた場合(B=5.0×10
-4)についてそれぞれシミュレーションを実施した。なお、整定時間とは、位置指令終了から目標の位置決め位置の±0.01%以内に応答信号が収束するまでの時間とする。また、
図7B及び
図7Cの図示右側のシミュレーション結果は、図示左側のシミュレーション結果の部分拡大図である。
【0053】
図7Bに示すように、摩擦が掛らない場合には、ステップ状の位置指令が入力されると、位置決め整定時の応答信号のオーバーシュートが大きい。このため、応答信号が位置指令終了から収束するまでの整定時間が104msとなって長くなる。一方、
図7Cに示すように、摩擦が掛る場合には、ステップ状の位置指令が入力されると、位置決め整定時の応答信号のオーバーシュートが小さい。このため、応答信号が位置指令終了から収束するまでの整定時間が57msとなり、摩擦が掛らない場合と比較して大幅に短縮されている。
【0054】
なお、関数は、式(1)の関数に限定されるものではない。モータ速度の増加に伴って摩擦が小さくなる関数であればよく、例えば、式(1)の関数の代わりに、次式(2)及び次式(3)に示す関数を用いることもできる。式(2)、式(3)において、Bは摩擦係数、uは入力、f(u)は出力を示している。
【数10】
【数11】
【0055】
摩擦として式(2)及び式(3)に示す関数の特性について説明する。
図8は、式(2)に示す関数の特性の説明図である。
図9は、式(3)に示す関数の特性の説明図である。なお、
図8は、式(2)の摩擦係数Bを0.3に設定した場合を示す。また、
図9は、式(3)の摩擦係数Bを0.3に設定し、aを1に設定した場合を示す。
【0056】
図8に示すように、式(2)は、入力u(速度)が0で出力f(u)が最大値(B=0.3)となり、入力uが増加するのに伴って出力f(u)が0に近付くという特性を有している。この関数を利用することにより、式(1)を関数とした場合と同様に、速度駆動している間には摩擦の影響を無くすことができ、位置決め整定時にはオーバーシュートを小さくして整定時間を短くできる。
【0057】
図9に示すように、式(3)は、入力u(速度)が0で出力f(u)が最大値(B=0.3)となり、入力uが所定値aまでは出力f(u)が0に近付き、入力uがa以上になると、出力f(u)が0になるという特性を有している。この関数を利用することにより、式(1)を関数とした場合と同様に、速度駆動している間には摩擦の影響を無くすことができ、位置決め整定時にはオーバーシュートを小さくして整定時間を短くできる。なお、これら式(1)から式(3)に示す関数は、目的に応じて任意の関数を適用することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る位置決め装置の制御装置によれば、外乱オブザーバ20の摩擦パラメータによってオーバーシュートを抑制することができ、高速の整定や高精度の位置決めを行うことができる。外乱オブザーバ20の外乱として摩擦パラメータを設けるだけでよいので、状態フィードバック制御やH∞制御に比べて簡易な構成で演算量が少なく、高価なCPU等が不要である。また、現場での調整実施も容易である。また、装置剛性を高めることなくオーバーシュートが抑制されるため、装置全体の重量を抑えて省エネルギーとコスト低減を実現できる。
【0059】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0060】
例えば、上記した第1の実施の形態に係る制御装置のブロック線図では、速度演算にP制御を用いているが、速度偏差や速応性等に応じてPI制御、PD制御、PID制御を用いてもよい。また、本実施の形態に係る位置決め装置の制御装置を、回転型モータだけでなくリニアモータに適用することも可能である。
【0061】
例えば、上記した式(1)から式(3)において、モータ起動時には摩擦係数Bを最小値にして、位置決め整定時にのみに強い摩擦が掛るように構成してもよい。これにより、モータ起動時の低速状態と位置決め整定時の低速状態とを区別して、モータ起動時の摩擦によるモータ出力の損失を防ぐことができる。なお、摩擦係数Bの最小値は0でもよいし、0付近の非常に小さな値でもよい。
【0062】
また、上記した式(1)から式(3)において、所定速度以下で低速駆動される場合には、摩擦係数Bを最小値にして、位置決め整定時にのみに強い摩擦が掛るように構成してもよい。これにより、オーバーシュートが生じない程度の速度で駆動し続けられる場合には、摩擦によるモータ出力の損失を防ぐことができる。なお、摩擦係数Bの最小値は0でもよいし、0付近の非常に小さな値でもよい。
【0063】
また、上記した式(1)から式(3)において、複数の摩擦係数Bを設けて、位置決め位置に応じて摩擦係数Bを動的に切り替える構成としてもよい。これにより、負荷の位置決め位置によって変化するオーバーシュートの挙動に合わせて摩擦係数Bを切り替えることができ、最適な位置決めが可能となる。この場合、位置決め位置と摩擦係数Bとの対応関係を事前に求めるようにする。
【0064】
また、上記した式(1)から式(3)において、負荷側の位置偏差の量、又はモータ側の位置偏差の量を一定値以下にするように摩擦係数Bを動的に調整してもよい。これにより、位置偏差に応じて摩擦係数を変更することで、最適な位置決めが可能となる。この場合、位置偏差と摩擦係数Bとの対応関係を事前に求めるようにする。
【0065】
次に、
図10から
図19を参照して、本発明の第2の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、第2の実施の形態に係る電子部品の実装装置は、第1の実施の形態に係る電子部品の実装装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。電子部品の実装装置で用いられる実装ヘッド移動機構5等の位置決め装置では、モータと負荷(実装ヘッド4等)とがバネ性を持つ軸で結合された2慣性共振系と見なすことができる(
図10参照)。
【0066】
モータと負荷との間の機械剛性が低い場合、位置決め時に振動が発生して位置決め精度と位置決め時間を悪化させる。位置決め剛性を高くすることで振動を抑制することができるが、重量及びコストの増加等が生じるため剛性による振動抑制には限界がある。このような共振系の振動抑制と外乱抑圧制御に対して、状態フィードバック制御、H∞制御、外乱オブザーバ制御、共振比制御等の手法が提案されている。
【0067】
状態フィードバック制御及びH∞制御は、制御系が複雑であり、演算量が膨大になることから実機への適用することが難しい。これに対して、外乱オブザーバ制御及び共振比制御は比較的簡易な制御系であり、調整も容易で実用性が高い。しかしながら、外乱オブザーバは、1慣性系での外乱トルクやパラメータ変動を補償することを目的としており、剛性の低い2慣性系に適用すると負荷慣性とバネ性とによる大きな振動を誘発する可能性がある。また、共振比制御は、通常の外乱オブザーバに加えて軸ねじれ反力推定用のオブザーバが必要となり、単独のオブザーバを設ける構成と比較して演算量が増加する。
【0068】
そこで、第2の実施の形態においては、出力軸の角度位置と負荷の角度位置(移動位置)とから軸ねじれ反力を算出して、モータに対する電流指令値とモータ速度と軸ねじれ反力とから外乱を推定する軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いている。軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いることで、モータと負荷とを低剛性の弾性軸で結合した2慣性共振負荷の振動抑制制御を容易に実現できる。
【0069】
ここで
図11を参照して、通常の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置について説明する。
図11は、通常の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置のブロック線図である。なお、
図11のI
ref、I
cmp、K
p、K
v、K
t、K
tn、K
f、J
m、J
mn、J
l、s、T
dism、T
^dism、T
disl、T
reac、θ
cmd、θ
m、θ
l、θ
t、θ
・cmd、θ
・m、G
disは
図5と同様である。
【0070】
図11に示すように、モータ制御系では演算要素e307からe311の間で、トルク指令値から外乱トルク
dismと共に軸ねじれ反力T
reacが減算されて、モータに入力されるように構成されている。電流指令値I
refは、トルク定数K
tが乗算されてトルク指令値に変換される。このトルク指令値と外乱トルクT
dism及び軸ねじれ反力T
reacとのトルク偏差からモータ速度θ
・mが算出される。ここで、電流指令値I
refからモータ速度θ
・mまで(演算要素e307から演算要素e311まで)の伝達関数は次式(9)で示される。
【数12】
【0071】
通常の外乱オブザーバでは軸ねじれ反力T
reacは、外乱トルクT
dismに含めて扱うが、ここではそれぞれを分けて使う場合について考える。軸ねじれ反力T
reacは、モータの出力軸の角度位置であるモータ位置θ
mと、負荷の角度位置である負荷位置θ
lの差分である軸ねじれ量にバネ定数K
fを乗算して、次式(10)で示される。
【数13】
【0072】
式(9)を外乱T
dismについて整理し、式(10)を代入すると、
【数14】
になり、電流指令値I
refとモータ速度θ
・mと軸ねじれ量(θ
m−θ
l)から外乱トルクを推定演算できることが分かる。フルクローズド制御系の軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバ30は、軸ねじれ量(θ
m−θ
l)とバネ定数のノミナル値K
fnとに基づいて算出される軸ねじれ反力の推定値T^
reacがフィードバックされる構成となっている。
【0073】
軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置について説明する。最初に、負荷位置を直接検出可能なフルクローズド制御について説明する。
図12は、フルクローズド制御において、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置のブロック線図である。なお、
図12のI
ref、I
cmp、K
p、K
v、K
t、K
tn、K
f、J
m、J
mn、J
l、s、T
dism、T
^dism、T
disl、T
reac、θ
cmd、θ
m、θ
l、θ
t、θ
・cmd、θ
・m、G
disは
図5と同様である。また、K
fnは、バネ定数のノミナル値を示す。
【0074】
図12に示すように、減算要素e401では目標の位置指令値θ
cmdとモータからフィードバックされたモータ位置θ
mとが減算され、位置偏差が算出される。位置偏差は、演算要素e402にて位置ゲインK
pが乗算され、速度指令値θ
・cmdとして減算要素e403に出力される。減算要素e403では速度指令値θ
・cmdとモータからフィードバックされたモータ速度θ
・mとが減算され、速度偏差が算出される。速度偏差は、演算要素e404にて速度ゲインK
vが乗算され、演算要素e405にて単位が変換されて電流指令値I
refとして加算要素e406に出力される。
【0075】
電流指令値I
refは、加算要素e406にて電流補償値I
cmpが加算され、演算要素e407及び外乱オブザーバ40に出力する。電流指令値I
refは、演算要素e407にてトルク定数Ktが乗算され、トルク指令値として減算要素e408に出力される。トルク指令値は、減算要素e408にて外乱トルクT
dismとの偏差が算出され、さらに減算要素e409にて軸ねじれ反力T
reacとの偏差が算出される。このトルク偏差が演算要素e411にてモータイナーシャJ
mで除算され、さらに積分されたものがモータ速度θ
・mとなる。モータ速度θ
・mは、演算要素e412、外乱オブザーバ40に出力されると共に、速度偏差を求めるために減算要素e403にフィードバックされる。
【0076】
モータ速度θ
・mは、演算要素e412にて積分されてモータ位置θ
mに変換される。モータ位置θ
mは、モータの出力軸の角度位置であり、例えば出力軸に設けられた角度位置検出器としてのロータリーエンコーダの情報を元に測定される。モータ位置θ
mは、減算要素e413に出力されると共に、位置偏差を求めるために減算要素e401にフィードバックされる。モータ位置θ
mは、減算要素e413にて負荷側からフィードバックされた負荷位置θ
lが減算され、軸ねじれ量θ
tが算出される。負荷位置θ
lは、モータ駆動によって移動された負荷の移動位置(角度位置)であり、例えば負荷側に設けられた移動位置検出器としてのリニアエンコーダによって測定される。
【0077】
軸ねじれ量θ
tは、演算要素e414にてバネ定数K
fが乗算され、軸ねじれ反力T
reacとして減算要素e415に出力されると共に減算要素e409にフィードバックされる。軸ねじれ反力T
reacは、減算要素e415にて負荷側の外乱トルクT
dislが減算され、演算要素e416に出力される。軸ねじれ反力T
reacが演算要素e416にて負荷イナーシャJ
lで除算され、演算要素e417にて積分されることで負荷位置θ
lが算出される。負荷位置θ
lは、軸ねじれ量θ
tを求めるために減算要素e413にフィードバックされている。
【0078】
外乱オブザーバ40には、電流指令値I
ref、モータ速度θ
・m、軸ねじれ量θ
tが入力される。電流指令値I
refは、演算要素e418にてトルク定数のノミナル値K
tnが乗算され減算要素e422に出力される。モータ速度θ
・mは、演算要素e419にて微分されると共にモータイナーシャのノミナル値J
mnが乗算され、減算要素e422に出力される。また、軸ねじれ量θ
tは、演算要素e421にてバネ定数のノミナル値K
fnが乗算され、軸ねじれ反力の推定値T^
reacとして減算要素e422に出力される。
【0079】
減算要素e422にて演算要素e418の出力から演算要素e419、e421の出力が減算され、低域フィルタe423によって低周波帯域の成分が取り出されて、これが外乱トルクの推定値T
^dismとして出力される。外乱トルクの推定値T
^dismは、演算要素e424にてトルク定数のノミナル値K
tnで除算され、外乱を補償するための補償電流値I
cmpに変換される。補償電流値I
cmpは、加算要素e406にフィードバックされ、指令電流値I
refに加算される。このように、本実施の形態に係る外乱オブザーバ40では、軸ねじれ反力T
reacを考慮した補償電流値I
cmpが指令電流値I
refにフィードバックされる。
【0080】
よって、リニアエンコーダ等で負荷位置θ
lを直接検出するフルクローズド制御において、外乱オブザーバ40によって軸ねじれ反力T
reacによる振動を補償して、位置決め時のオーバーシュートを小さくすることが可能となっている。また、モータと負荷との間のバネ定数(剛性)が低い場合にも、オブザーバゲインG
disを高くすることが可能である。さらに、負荷側の動作を軸ねじれ反力T
reacを通して制御に反映できるので、負荷イナーシャのノミナル値の変動の影響を受けることがない。
【0081】
上記したフルクローズド制御では、モータに設けた角度位置検出器でモータ位置θ
mを直接検出し、負荷側に設けた移動位置検出器で負荷位置θ
lを直接検出して、軸ねじれ量θ
tを求めている。しかしながら、リニアエンコーダ等の移動位置検出器を持たないセミクローズド制御では、一般にモータの出力軸に設けた角度位置検出器を元に位置決め制御するため、負荷位置θ
lを直接検出することはできない。
【0082】
以下、負荷位置を直接検出不能なセミクローズド制御において、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置について説明する。
図11において、軸ねじれ反力T
reacはモータ位置θ
mと負荷位置θ
lの差分である軸ねじれ量(θ
m−θ
l)にバネ定数K
fを乗算して式(10)で示される。また、軸ねじれ反力T
reacから負荷位置θ
lまで(減算要素e315から演算要素e317まで)の伝達関数は次式(12)で示される。
【数15】
【0083】
ここで、負荷側の外乱トルクT
dislに軸ねじれ反力T
reacを含めて考えると、T
disl=0として式(12)は、
【数16】
になり、この式(13)と式(10)とによって、
【数17】
を得ることができ、モータ位置θ
mから軸ねじれ反力T
reacを推定演算できることがわかる。セミクローズド制御系の軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバは、モータ位置θ
mから推定される軸ねじれ反力T
reacの推定値T^
reacがフィードバックされる構成となっている。
【0084】
図13は、セミクローズド制御において、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを適用した位置決め装置の制御装置のブロック線図である。なお、
図13のI
ref、I
cmp、K
p、K
v、K
t、K
tn、K
f、J
m、J
mn、J
l、s、T
dism、T
^dism、T
disl、T
reac、θ
cmd、θ
m、θ
l、θ
t、θ
・cmd、θ
・m、gは
図5と同様である。また、K
fnは、バネ定数のノミナル値を示す。また、
図13に示すセミクローズド制御のブロック線図は、
図12に示すフルクローズド制御のブロック線図と同様な構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0085】
外乱オブザーバ50には、電流指令値I
ref、モータ速度θ
・m、モータ位置θ
mが入力される。電流指令値I
refは、演算要素e518にてトルク定数のノミナル値K
tnが乗算され減算要素e522に出力される。モータ速度θ
・mは、演算要素e519にて微分されると共にモータイナーシャのノミナル値J
mnが乗算され、減算要素e522に出力される。また、モータ位置θ
mは、演算要素e521にて式(4)に示す伝達関数によって軸ねじれ反力の推定値T^
reacに変換され、減算要素e522に出力される。
【0086】
減算要素e522にて演算要素e518の出力から演算要素e519、e521の出力が減算され、低域フィルタe523によって低周波帯域の成分が取り出されて、これが外乱トルクの推定値T
^dismとして出力される。外乱トルクの推定値T
^dismは、演算要素e524にてトルク定数のノミナル値K
tnで除算され、外乱を補償するための補償電流値I
cmpに変換される。補償電流値I
cmpは、加算要素e506にフィードバックされ、指令電流値I
refに加算される。このように、本実施の形態に係る外乱オブザーバ50では、軸ねじれ反力T
reacを考慮した補償電流値I
cmpが指令電流値I
refにフィードバックされる。
【0087】
よって、リニアエンコーダ等で負荷位置θ
lを直接検出しないセミクローズド制御においても、外乱オブザーバ50によって軸ねじれ反力T
reacによる振動を補償して、位置決め時のオーバーシュートを小さくすることが可能となっている。また、モータと負荷との間のバネ定数(剛性)が低い場合にも、オブザーバゲインG
disを高くすることが可能である。さらに、負荷側の動作を軸ねじれ反力T
reacを通して制御に反映できるので、負荷イナーシャのノミナル値の変動の影響を受けることがない。
【0088】
フルクローズド制御において、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを適用して位置決め整定を実施したところ、
図14から
図19に示すシミュレーション結果が得られた。ここでは、
図14Aから
図19Aに示すようにモータ制御系のパラメータを設定し、通常の外乱オブザーバを用いた場合と軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合についてそれぞれシミュレーションを実施した。
図14から
図19において図示右側のシミュレーション結果は、図示左側のシミュレーション結果の部分拡大図である。
【0089】
図14から
図16は、バネ定数K
fを調整した場合の位置決め整定のシミュレーション結果である。
図14はバネ定数K
fを1250(共振周波数236Hzに相当)に設定した場合のシミュレーション結果である。
図15はバネ定数K
fを120(共振周波数73Hzに相当)に設定した場合のシミュレーション結果である。
図16はバネ定数K
fを10(共振周波数21Hzに相当)に設定した場合のシミュレーション結果である。
【0090】
図14B及び
図14Cに示すように、バネ定数K
fを1250に設定して剛性を高くすると、通常の外乱オブザーバを用いた場合も軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合もオーバーシュートの大きさや整定時間に大きな差はない。この状態からバネ定数K
fを小さく設定するのにつれて、通常の外乱オブザーバを用いた場合と軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合とでオーバーシュートの大きさや整定時間の差が大きくなる。
【0091】
すなわち、
図15B及び
図15Cに示すように、バネ定数K
fを120に設定すると、通常の外乱オブザーバを用いた場合と比較して、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合には出力波形の振動の収束が速くなる。さらに
図16B及び
図16Cに示すように、バネ定数K
fを10に設定すると、通常の外乱オブザーバを用いた場合には出力波形の振動が収束しないが、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合には出力波形の振動が収束する。
【0092】
図17は、オブザーバゲインを調整した場合の位置決め整定のシミュレーション結果である。
図17Bに示すように通常の外乱オブザーバを用いた場合には、バネ定数K
fが10に設定されると、オブザーバゲインG
disを20rad/s程度に下げなければ出力波形の振動を収束できない。一方、
図17Cに示すように軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合には、バネ定数K
fが10に設定されていれも、オブザーバゲインG
disを600rad/sに上げることができる。このため、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合には、通常の外乱オブザーバを用いた場合と比較して整定時間を短くできる。また、オブザーバゲインG
disを上げることで、軸ねじれ反力以外の外乱(摩擦、トルクリップル、パラメータ変動)に対する抑圧効果やロバスト性を向上させることもできる。
【0093】
図18及び
図19は、負荷イナーシャのノミナル値が変動した場合の位置決め整定のシミュレーション結果である。
図18は負荷イナーシャのノミナル値J
lnを負荷イナーシャJ
lの1.5倍に設定した場合のシミュレーション結果である。
図19は負荷イナーシャのノミナル値J
lnを負荷イナーシャJ
lの0.5倍に設定した場合のシミュレーション結果である。
【0094】
通常の外乱オブザーバは1慣性系のモデルであるため、モータイナーシャのノミナル値がJ
mn=J
m+J
lに設定される。一方、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバは負荷側の動作を軸ねじれ反力を通して制御に反映できるので、J
mn=J
mに設定される。したがって、通常の外乱オブザーバは、負荷イナーシャのノミナル値J
lnの変動に影響を受けるが、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバは負荷イナーシャのノミナル値J
lnの変動に影響を受けることがない。
【0095】
図18B及び
図19Bに示すように、通常の外乱オブザーバを用いた場合には、負荷イナーシャのノミナル値J
lnを負荷イナーシャJ
lの1.5倍から0.5倍に変動させると、出力波形が大きく変化する。一方、
図18C及び
図19Cに示すように、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバを用いた場合には、負荷イナーシャのノミナル値J
lnを負荷イナーシャJ
lの1.5倍から0.5倍に変動させても出力波形が変化しない。
【0096】
なお、モータイナーシャのノミナル値J
mnは、モータの仕様書等から正しい値を得ることができるが、負荷イナーシャのノミナル値J
lnは、計算から求めることが多く実際の値と異なることも多い。よって、負荷イナーシャのノミナル値J
lnの影響を受けないことで、高精度な位置決め制御を行うことが可能となっている。また、本実施の形態では、フルクローズド制御における位置決め整定のシミュレーションを実施したが、セミクローズド制御においても同様な傾向が得られることが想定される。
【0097】
以上のように、本実施の形態に係る位置決め装置の制御装置によれば、軸ねじれ反力T
reacによる外乱を推定してモータに対する指令値にフィードバックされるため、モータと負荷との間の剛性が小さい場合であっても振動を早めに収束させることができる。また、位置決め時のオーバーシュートが抑制されるため、整定時間を短くして、高速かつ高精度に位置決めすることができる。また、負荷側の動作を軸ねじれ反力を通して制御に反映できるので、負荷イナーシャのノミナル値の変動の影響を受けることがない。また、状態フィードバック制御、H∞制御、共振比制御に比べて簡易な構成で演算量が少なく、高価なCPU等が不要である。さらに、装置剛性を高めることなくオーバーシュートが抑制されるため、装置全体の重量を抑えて省エネルギーとコスト低減を実現できる。
【0098】
なお、本発明は上記第2の実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0099】
例えば、上記した第2の実施の形態に係る制御装置のブロック線図では、速度演算にP制御を用いているが、速度偏差や速応性等に応じてPI制御、PD制御、PID制御を用いてもよい。また、本実施の形態に係る位置決め装置の制御装置を、回転型モータだけでなくリニアモータに適用することも可能である。
【0100】
また、上記した第2の実施の形態においては、角度位置検出器がロータリーエンコーダである構成としたが、出力軸の角度位置を検出可能であればどのような構成でもよい。また、角度位置検出器は、出力軸に固定される必要はなく、ベルトやギアを介して角度位置を検出する構成でもよい。また、移動位置検出器がリニアエンコーダである構成としたが、負荷の移動位置(角度位置)を検出可能であればどのような構成でもよい。移動位置検出器は、例えばロータリーエンコーダや加速度センサで構成されてもよい。
【0101】
また、上記した第2の実施の形態においては、式(4)に示すような連続系の伝達関数を例示して説明したが、この構成に限定されない。デジタル制御の場合には離散系の伝達関数を用いてもよい。
【0102】
また、上記した第2の実施の形態においては、モータと負荷との間の剛性が負荷の移動位置に応じて変化する。そこで、軸ねじれフィードバック型の外乱オブザーバ40、50はバネ定数K
fを負荷の移動位置に応じて補正する構成としてもよい。この構成により、より高いロバスト性を保ち、効果的な振動抑制制御を行うことができる。また、軸ねじれフィードバック型の外乱オブザーバ40、50がバネ定数K
fを時間の経過に応じて補正する構成としてもよい。
【0103】
なお、上記した第1、第2の実施の形態を組み合わせて位置決め装置の制御を行ってもよい。すなわち、軸ねじれ反力フィードバック型の外乱オブザーバは、外乱の一部に摩擦パラメータを含む外乱モデルに基づいて設計されてもよい。