特許第6059898号(P6059898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6059898
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   C01B3/04 R
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-162581(P2012-162581)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-19633(P2014-19633A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】512129217
【氏名又は名称】株式会社TI
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/011499(WO,A1)
【文献】 特開2005−131509(JP,A)
【文献】 特開2005−098669(JP,A)
【文献】 実開昭62−112096(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応剤を収納する鉄又はステンレス鋼からなるケーシング内に加熱ヒータを設置し、NaOH又はKOHからなる反応剤の内部から加熱して反応剤の微粒子をケーシング内に飛散せしめ、ケーシング内に水蒸気を供給して水素を発生せしめるようにした水素発生装置において、前記ケーシング内には、反応剤を収納する上部が開口された樋形の反応剤受けが設けられ、前記加熱ヒータは、電気ヒータと、この電気ヒータを内蔵するヒータパイプとからなり、このヒータパイプは、反応剤受けの両端板及び両端板間に設けたフィンにより支持され、前記ヒータパイプの後端はケーシング外において開放され、この開放端は、ケーシングの後端面に付着された密閉筒内に収納され、この密閉筒の端面に電気ヒータの後端部に形成されたフランジが付着されてヒータパイプの後端部が密閉筒により密閉された水素発生装置。
【請求項2】
前記ヒータパイプは、くり抜き加工により、後端のみが開放したくり抜き筒であり、前記密閉筒内は真空引きされるか、不活性ガスが注入されている請求項1記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記密閉筒には、温度上昇により不活性ガスが膨張したときに、それを排出する安全弁が形成されるとともに不活性ガス注入口が設けられている請求項2記載の水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水から水素を発生せしめるための水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属溶融塩をステンレスケーシング内に収納し、それを500〜600℃に加熱して前記溶融塩の液面から微細粒子群を反応空間内に飛散せしめ、この微細粒子に水蒸気を接触せしめて水から水素を採集する水素発生装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2011/66472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記先行特許文献1の図22、29に開示されている反応セル内には反応剤が収納され、この反応剤を均一に500〜600℃に加熱するために電気ヒータが反応セル内に収納されている。ところが、前記電気ヒータは、ヒータ管に挿入自在に収納されているが、大気に開放されているために空気に触れ、電気ヒータの外表面およびヒータ管の内面が著しく酸化してヒータ管および電気ヒータの寿命が短いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水素発生装置は、反応剤を収納するケーシング内に加熱ヒータを設置し、反応剤の内部から加熱して反応剤の微粒子をケーシング内に飛散せしめ、ケーシング内に水蒸気を供給して水素を発生せしめるようにした水素発生装置において、前記加熱ヒータは、電気ヒータと、この電気ヒータを内蔵するヒータパイプとからなり、このヒータパイプは、その前端部が端板により密閉され、その後端部は電気ヒータに設けたフランジにより直接密閉されるか又は他の部材を介して形成された密閉空間に臨まされている。
【0006】
また、前記ヒータパイプの後端はケーシング外において開放され、この開放端は、ケーシングの後端面に付着され前記他の部材をなす密閉筒内に収納され、この密閉筒の端面に電気ヒータの後端部に形成されたフランジが付着されてヒータパイプの後端部が密閉筒により密閉されていることが好ましい。
【0007】
更に、また、前記ヒータパイプは、くり抜き加工により、後端のみが開放したくり抜き筒であり、前記密閉空間内は真空引きされるか、不活性ガスが注入されていることが好ましい。
【0008】
更に、また、前記密閉筒には、温度上昇により不活性ガスが膨張したときに、それを排出する安全弁が形成されるとともに不活性ガス注入口が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
電気ヒータが収納される密閉空間は真空引きされるか、不活性ガスが注入されるので、ヒータの外表面およびヒータパイプの内壁の酸化が有効に防止され、それらの寿命が著しく延びる。また、密閉空間内の不活性ガスは高温で熱膨張するので、安全弁が設けられていれば自動的に不活性ガスが排出される。なお、密閉空間が真空の場合でも、特にヒータパイプをSUS304で形成すると、高温でその内壁から水素が発生することが判明しているので、真空引きの場合にも安全弁は必要となり、更に、ヒータパイプにくり抜き管を使用し、その閉塞前端を反応セル内に位置せしめれば、溶接の場合と異なり、反応によりヒータパイプ前端が破れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の水素発生装置の破断図である。
図2】反応セル内に収容される反応剤収納ユニットの斜視図である。
図3】ヒータパイプと電気ヒータとの関係説明図である。
図4】ヒータパイプの前端の状態説明図である。
図5】反応セルの端面に取付けられた密閉筒の構造を示す概略図である。
図6】反応剤収納ユニットを着脱自在とした本発明の他の実施例を示す図である。
図7】ヒータパイプ内に密閉空間を作る他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、本発明の水素発生装置Mは、円筒状の鉄又はステンレス鋼からなる反応セルをなすケーシング1を有し、このケーシング1内には、NaOH又はKOH等のアルカリ水酸化物からなる反応剤Rが収納される反応剤収納ユニットUが保持されている(図1図2)。前記ユニットUは、反応セル1の内壁に接触してその中に収納され、上部が開口された樋形の反応剤受け2を備え、この中には、NaOH又はKOHの反応剤Rが収納され、その両端には、後端板3と前端板4が設けられ、これら両端板3、4に左右2本のヒータパイプ5、6が支持されている。前記ヒータパイプ5、6の後端部5a、6aは後端板3から後方に突出し、これらの開口部から電気ヒータ7、8がヒータパイプ5、6内に挿入され、ヒータ7、8の後端にはフランジ9、10が取付けられ、これらフランジ9、10の周囲が反応セルの端板1aに付着された筒形の密閉筒11の端板11aに溶接されている(図3図5)。
【0012】
なお、図1図2に示すように、前記ヒータパイプ5、6には、パンチングされたSUS製のフィン12、12…12が所定間隔で保持され、前記反応セル1の後部上方には水を供給するための水管13が取付けられ、その前部上方には生成した水素を排出するための水素管14が取付けられている。
【0013】
前記ヒータパイプ5、6は、棒材のSUS304をドリル等でくり抜き形成され、その前端部は、継ぎ目無しで端板5a(6a)で密封され溶接部分を有しない(図4)。したがって、活発なアルカリ金属溶融塩(反応剤は300℃以上で溶融塩を作る)の作用によってもヒータパイプ5、6の前端が侵されることがない。なお、ヒータパイプ5、6の前端部はフィン12によって支持され、特に、反応剤受け2の前端板4に支持される必要はない。
【0014】
また、前記密閉筒11には、図5に示すように、安全弁20と、アルゴン等の不活性ガス注入弁21と、密閉筒11および前記ヒータパイプ5、6内の圧力を検出するための圧力計22が設けられている。
【0015】
一般的には、不活性ガスとしてのアルゴンがガス注入弁21を開いて密閉筒11およびヒータパイプ5、6内の空間S(図3)からなる密閉空間に流入され、電気ヒータ7、8の外表面の酸化が有効に防止される。なお、前記アルゴンが注入される密閉空間は、真空引きして真空としてもよい。前記反応剤Rは500〜600℃に加熱されているが、このときの電気ヒータ7、8の表面温度は650℃以上となるので、ヒータ表面の酸化防止はヒータの寿命に大きく影響する。なお、流入されたアルゴンは温度上昇とともに膨張するので、過度な膨張は安全弁20を作動させ安全を保持する。
【0016】
なお、図6に示すように、反応剤収納ユニットUを反応セル1に着脱自在に形成してもよい。すなわち、反応セル1の端部にフランジ1bを形成し、このフランジ1にボルトb、b…bにより着脱自在に円形端板30を付着せしめ、この円形端板30に前記密閉筒11を溶着せしめてもよく、こうしてボルトb、b…bを外してユニットU、端板30および密閉筒11を一体的に反応セル1に着脱自在とすることができる。
【0017】
なお、図1図5に示すようにヒータパイプ5、6内の密閉空間は、他の部材をなす密閉筒11により間接的に形成されるが、図7に示すように、ヒータパイプ5の後端部をケーシング1の端板1aから大きく後方に突出せしめるとともに、電気ヒータ7の後端近傍にフランジ40を設け、このフランジ40でヒータパイプ5の突出端を密閉してもよい。この場合には、安全弁20とガス注入弁21はヒータパイプ5に直接取付けられる。この構造は、ヒータパイプ5が一本設けられる場合には好適である。
【符号の説明】
【0018】
1…反応セル
2…反応剤受け
5、6…ヒータパイプ
7、8…電気ヒータ
9、10…フランジ
11…密閉筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7