(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハニカムセグメントは、前記軸方向に直交する断面における面積が、前記軸方向の少なくとも一部において、前記流入端面から前記流出端面に向かって漸増するように構成されたものである請求項1に記載のハニカムフィルタ。
前記セルは、前記軸方向に直交する断面における開口面積が、前記軸方向の少なくとも一部において、前記流入端面から前記流出端面に向かって漸増するように形成されたものである請求項2に記載のハニカムフィルタ。
前記流入端面における前記接合層の厚さが、前記流出端面から前記軸方向において最も近い位置の前記接合層の厚さの120%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
前記隔壁が、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、サイアロン、アルミニウムチタネート、アルミナ、及びコージェライトからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
(1)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの一の実施形態は、
図1〜
図5に示すようなハニカムフィルタ100である。
図1〜
図5に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、複数個のハニカムセグメント4と、複数個の目封止部5と、接合層7と、を備えたセグメント構造のハニカムフィルタ100である。セグメント構造のハニカムフィルタ100とは、複数個のハニカムセグメント4が、接合層7により接合されたハニカムフィルタのことをいう。
【0024】
ここで、
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、流入端面を上向きにした状態を示す。
図2は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、流出端面を上向きにした状態を示す。
図3は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態の、流入端面を模式的に示す平面図である。
図4は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態の、流出端面を模式的に示す平面図である。
図5は、
図3のA−A’断面を模式的に示す断面図である。
【0025】
ハニカムセグメント4は、流体の流路となる流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有する筒状のものである。ハニカムセグメント4は、
図6に示すように、最外周に位置する外壁3を更に有するものであってもよい。
図6は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態に用いられるハニカムセグメントを模式的に示す斜視図である。
【0026】
図1〜
図5に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、複数個のハニカムセグメント4の側面同士の一部を接合する接合層7を備える。
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100においては、16個のハニカムセグメント4が接合層7によって接合されている。
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100においては、接合層7によって接合されたハニカムセグメント4を囲繞するように、外周コート層8が配設されている。
【0027】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4に形成されたセル2の流入端面11側又は流出端面12側の端部が、目封止部5によって封止されている。即ち、目封止部5によって、ハニカムセグメント4に形成されたセル2のうちの第一セル2aの流入端面11側の開口部が封止され、また、第一セル2a以外の第二セル2bの流出端面12側の開口部が封止されている。「第一セル2a」は、流入端面11におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセルである。「第二セル2b」は、流出端面12におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセルである。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、第二セル2bの流入端面11の開口部から、排ガス等の流体が流入する。一方、第一セル2aには、排ガス等の流体が直接流入することはできず、第二セル2bに流入した流体が、隔壁1を通過して第一セル2a内に流入し、第一セル2aの流出端面12の開口部から流出される。第二セル2bから第一セル2aに流体が移動する際に、多孔質の隔壁1によって流体中の粒子状物質が捕集される。
【0028】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4が、
図6に示すように、流入端面11の面積よりも、流出端面12の面積が大きくなるように構成されている。ハニカムセグメント4の流入端面11の面積は、最外周に位置する外壁3により囲われる流入端面11の面積のことである。また、ハニカムセグメント4の流出端面12の面積は、最外周に位置する外壁3により囲われる流出端面12の面積のことである。また、このハニカムセグメント4は、ハニカムセグメント4の流入端面11から流出端面12に向かう軸方向Xに垂直な断面形状が、当該軸方向Xにおいて相似性を有するように構成されている。なお、ハニカムセグメント4は、軸方向Xに直交する断面における面積が、軸方向Xの少なくとも一部において、流入端面11から流出端面12に向かって漸増するように構成されたものであることが好ましい。例えば、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4の全体形状が、錐台形状であることが好ましい。
図6に示すハニカムセグメント4は、ハニカムセグメント4の全体形状が、四角錐台形状の場合の例を示す。
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100においては、接合層7によって接合された16個のハニカムセグメント4のうち、中央部分に配置された4個のハニカムセグメント4が、四角錐台形状である。また、接合層7によって接合された16個のハニカムセグメント4のうち、外周部分に配置された12個のハニカムセグメント4は、ハニカムフィルタ100の全体形状(円筒形状)に合わせて、その外周が研削加工されている。ハニカムフィルタ100の外周部分には、接合層7によって接合された16個のハニカムセグメント4を囲繞するように外周コート層8が配設されている。
【0029】
また、本実施形態のハニカムフィルタ100において、ハニカムセグメント4の側面同士を接合する接合層7は、流入端面11側から流出端面12側に向かう方向の少なくとも一部において、流入端面11側の厚さよりも流出端面12側の厚さが薄くなるように構成されている。即ち、上述したように、ハニカムセグメント4は、流入端面11の面積よりも、流出端面12の面積が大きくなるように構成されたものである。そのため、それぞれのハニカムセグメント4の流出端面12が同一平面上に位置するように配列した際には、各ハニカムセグメント4の側面相互間には、流出端面12側よりも、流入端面11側に広い隙間ができることとなる。言い換えれば、各ハニカムセグメント4の側面相互間の隙間は、流入端面11よりも、流出端面12側が狭くなる。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、このように配列した複数個のハニカムセグメント4の側面相互間の隙間を埋めるように接合層7が配置されている。このため、各ハニカムセグメント4を、流入端面11側の側面同士を接合層7によって良好に接合しつつ、流出端面12側の接合層7の厚さを薄くすることができる。ハニカムセグメント4の流出端面12の面積が大きく、また、流出端面12側の接合層7の厚さを薄くすることにより、流出端面12側でのガス流速を低減させることができる。そのため、従来のセグメント構造のハニカムフィルタに比して、圧力損失の増加を抑制することができる。
【0030】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4の流入端面11から流出端面12に向かう軸方向Xの長さL1に対して、接合層7の上記軸方向Xの長さL2が、95%未満の長さである。また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、流出端面12から上記軸方向Xに5mm以上の範囲には、ハニカムセグメント4の側面同士を接合する接合層7が配設されていない。即ち、流出端面12を起点として、この流出端面12から軸方向Xに0〜5mmまでの範囲には、少なくとも接合層7が配設されていない。このように、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、熱応力が最も大きく生じる流出端面12において、ハニカムセグメント4相互間が、接合層7によって拘束されていない。このため、各ハニカムセグメント4が、流出端面12側においてそれぞれ自由に変形(例えば、熱膨張)することができ、熱応力を良好に低減することができる。「ハニカムセグメント4の流入端面11から流出端面12に向かう軸方向X」とは、ハニカムセグメント4の流出端面12に対して直角な方向のことをいう。
【0031】
このように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、従来のセグメント構造のハニカムフィルタに比して、圧力損失の増加を抑制することができるとともに、ハニカムフィルタ100に生じる熱応力を良好に低減することができる。
【0032】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4の軸方向Xに垂直な断面形状が、この軸方向Xに相似性を有する。以下、「ハニカムセグメント4の軸方向Xに垂直な断面形状」を、単に「ハニカムセグメント4の断面形状」ということがある。「ハニカムセグメント4の断面形状が、軸方向Xに相似性を有する」とは、例えば、以下のように構成されていることを意味する。ハニカムセグメント4の断面形状が、流入端面11から流出端面12に向かって拡大する場合に、ハニカムセグメント4を構成する隔壁1の厚さ、及び当該隔壁1によって区画されるセルの大きさが、一定の比率を維持しながら拡大する。例えば、このようなハニカムセグメント4においては、当該ハニカムセグメント4の軸方向Xにおいて、そのセル密度が一定である。このように構成することによって、流出端面12側でのガス流速を良好に低減させることができ、ハニカムフィルタ100の圧力損失の増加を抑制することができる。ハニカムセグメント4に形成されるセル2は、軸方向Xに直交する断面における開口面積が、この軸方向Xの少なくとも一部において、流入端面11から流出端面12に向かって漸増するように形成されたものであることが更に好ましい。
【0033】
また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、流入端面11における接合層7の厚さが、流出端面12から軸方向Xにおいて最も近い位置の接合層7の厚さの120%以上であることが好ましい。このように構成することによって、ハニカムセグメント4の流出端面12側の拘束が十分に開放されるため、流出端面12側の熱応力の発生をより有効に抑制することができる。このため、ハニカムフィルタ100の隔壁1に堆積した粒子状物質に高温のガスを当てて、粒子状物質を強制的に燃焼除去する再生時においても、ハニカムフィルタ100にクラック等の破損がより生じ難くなる。
【0034】
本実施形態のハニカムフィルタ100の全体形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形やレーストラック形状の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の角筒状等が好ましい。ハニカムフィルタ100の全体形状は、極端に小さな曲率半径を避け、応力集中を避ける観点から、円筒形状、端面が楕円形やレーストラック形状の筒形状であることがより好ましい。
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100は、円筒形状の場合の例を示している。また、
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100は、外周コート層8を有している。外周コート層8は、複数個のハニカムセグメント4が互いの側面同士が対向するように配置された状態で接合された接合体の外周部分に、セラミック材料を塗工して形成したものであることが好ましい。
【0035】
以下、本実施形態のハニカムフィルタについて、構成要素ごとに更に詳細に説明する。
【0036】
(1−1)ハニカムセグメント:
ハニカムセグメント4は、流体の流路となる流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有する筒状のものである。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、複数個のハニカムセグメント4が接合層7によって接合されている。複数個のハニカムセグメント4は、
図1〜
図5に示すように、ハニカムフィルタ100の全体形状(円筒形状)に合わせて、外周部分が研削加工されたハニカムセグメント4を有することがある。以下、接合層7によって接合されたハニカムセグメント4のうち、中央部分に配置され、その外周が研削加工されていないハニカムセグメントを、完全セグメントということがある。また、接合層7によって接合されたハニカムセグメント4のうち、外周部分に配置され、その外周が研削加工されたハニカムセグメントを、不完全セグメントということがある。以下、特に断りのない限り、ハニカムセグメントの説明については、完全セグメントを例に説明する。なお、不完全セグメントは、完全セグメントの外周が、ハニカムフィルタ100の全体形状に合わせて研削加工されたものである。このため、研削加工前の不完全セグメントは、完全セグメントと同様に構成されたものであることが好ましい。
【0037】
ハニカムセグメント4は、流入端面11の面積よりも、流出端面12の面積が大きくなるように構成されている。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、流入端面11の面積S1に対して、流出端面12の面積S2が、1.02〜1.06倍であることが好ましく、1.03〜1.05倍であることが好ましく、1.04〜1.05倍であることが特に好ましい。このように構成することによって、圧力損失の増加を抑制することができるとともに、ハニカムフィルタに生じる熱応力を良好に低減することができる。流入端面11の面積S1に対して、流出端面12の面積S2が、1.02倍未満であると、面積S1と面積S2との差異が小さすぎ、圧力損失の増加抑制効果と、熱応力の低減効果との両立が困難になることがある。特に、圧力損失の増加抑制効果が得られ難い。また、流入端面11の面積S1に対して、流出端面12の面積S2が、1.06倍超であると、面積S1と面積S2との差異が大きすぎ、接合層7の占める比率が増大して、圧力損失の増加抑制効果が十分に得られなくなることがある。
【0038】
また、ハニカムセグメントの流入端面の面積S1は、400〜16000mm
2であることが好ましく、800〜3000mm
2であることが更に好ましく、1000〜2000mm
2であることが特に好ましい。特に、ハニカムセグメントの流入端面が四角形の場合には、ハニカムセグメントの流入端面の一辺の長さが、30mm以上、50mm以下であることが好ましい。流入端面の一辺の長さが、30mm未満であると、接合層の相対的な厚さが厚くなり、これまでに説明した圧力損失の増加抑制効果を超える圧力損失の増加を生じることがある。流入端面の一辺の長さが、50mmを超えると、個々のハニカムセグメント内の最大、最小温度差が過大になり、ハニカムセグメントに極めて大きな熱応力が発生してしまうことがある。
【0039】
ハニカムセグメント4の形状は、完全セグメントと不完全セグメントの場合で異なる。完全セグメントの形状は、軸方向Xに直交する断面形状が多角形の錐台形状であることが好ましい。なお、ハニカムセグメント4の形状は、上記断面形状が、正方形又は長方形の四角錐台形状、上記断面形状が、六角形の六角錐台形状であることがより好ましい。一方、不完全セグメントの形状は、軸方向Xに直交する断面形状の一部に、ハニカムフィルタの外周形状に対応した形状(例えば、円弧部分)を有する錐台形状である。
【0040】
セルの形状(軸方向Xに垂直な断面における開口形状)については特に制限はない。例えば、三角形、四角形、六角形、八角形等の形状を挙げることができる。四角形の場合には、正方形、又は長方形が好ましく、正方形がより好ましい。
【0041】
隔壁の厚さは、流入端面において、125〜430μmであることが好ましく、150〜360μmであることが更に好ましく、180〜360μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが125μmより薄いと、溜まったススを燃焼により除去する際に、ハニカムフィルタの温度が過大になり、これまでに説明した熱応力の低減効果を得られたとしても、熱応力によって隔壁が破損してしまうことがある。隔壁の厚さが430μmより厚いと、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が高くなることがある。即ち、これまでに説明した圧力損失の増加抑制効果を超えるような過大な圧力損失の増加が生じることがある。本実施形態のハニカムフィルタにおいては、上述したように、ハニカムセグメントの断面形状が、このハニカムセグメントの軸方向Xに相似性を有することが好ましい。このため、ハニカムセグメントの断面形状が、流入端面から流出端面に向かって拡大する場合に、隔壁の厚さ、及び当該隔壁によって区画されるセルの大きさが、一定の比率を維持しながら拡大することが好ましい。
【0042】
隔壁の気孔率は、35〜85%であることが好ましく、38〜70%であることが更に好ましく、40〜68%であることが特に好ましい。気孔率が35%より小さいと、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が高くなることがある。気孔率が85%より大きいと、ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。ハニカムセグメントの隔壁は、ハニカムフィルタを構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じ気孔率となるように形成されたものであることが好ましい。
【0043】
隔壁の平均細孔径は、5〜30μmであることが好ましく、7〜25μmであることが更に好ましく、8〜21μmであることが特に好ましい。平均細孔径が5μmより小さいと、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が高くなることがある。平均細孔径が30μmより大きいと、ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。ハニカムセグメントの隔壁は、ハニカムフィルタを構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じ平均細孔径となるように形成されたものであることが好ましい。
【0044】
ハニカムセグメントのセル密度は、特に制限されないが、15〜70個/cm
2であることが好ましく、23〜62個/cm
2であることが更に好ましい。セル密度が、15個/cm
2より小さいと、ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。セル密度が、70個/cm
2より大きいと、セルの断面積(軸方向Xに直交する断面の面積)が小さくなるため、圧力損失が高くなることがある。複数個のハニカムセグメントは、ハニカムフィルタを構成する複数個のハニカムセグメントにおいて、それぞれ同じセル密度となるように構成されたものであることが好ましい。
【0045】
ハニカムフィルタ100を構成するハニカムセグメント4の個数についても特に制限はない。例えば、
図1〜
図5に示すハニカムフィルタ100は、12個のハニカムセグメント4を備えたものである。このハニカムフィルタ100においては、4個のハニカムセグメント4が完全セグメントであり、この完全セグメントが、軸方向Xに直交する断面において、縦2個×横2個の配列で並んだ状態になっている。また、上記4個の完全セグメントの外周(軸方向Xに直交する断面における外周)に位置する12個のハニカムセグメント4が、不完全セグメントである。
【0046】
隔壁の材料としては、多孔質の隔壁を形成可能な材料であれば特に制限はないが、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、サイアロン、アルミニウムチタネート、アルミナ、及びコージェライトからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とすることが好ましい。上記群から選択される少なくとも一種を主成分とする材料を用いることにより、強度及び耐熱性に優れた隔壁とすることができる。なお、「主成分」とは、当該主成分を含む構成材料全体に対して、50質量%以上含有される成分のことをいう。
【0047】
ハニカムセグメントの流入端面から流出端面までの長さについては特に制限はないが、50〜500mmであることが好ましく、100〜400mmであることが更に好ましい。ハニカムセグメントの流入端面から流出端面までの長さが短すぎると、熱応力の低減効果が十分に発現しないことがある。
【0048】
(1−2)目封止部:
図1〜
図5に示すように、目封止部5は、ハニカムセグメント4に形成されたセル2の流入端面11側又は流出端面12側の端部に配置され、セル2の一方の端部を封止するものである。このような目封止部5が、セル2の一方の端部を封止することにより、多孔質の隔壁1を有するハニカムセグメント4が、排ガス等の流体を浄化するためのフィルタとして機能する。
【0049】
目封止部の配置については、セル2の一方の端部を封止することにより、ハニカムセグメント4がフィルタとして機能し得るものであれば、特に制限はない。即ち、流入端面側に目封止部が配置されたセル(第一セル)と、流出端面側に目封止部が配置されたセル(第二セル)との配置については、特に制限はない。但し、流体中の粒子状物質を隔壁によって良好に捕集するという観点からは、第一セルと第二セルとが、隔壁を隔てて交互に配置されていることが好ましい。なお、第一セルの一部、或いは第二セルの一部が、ハニカムセグメントの端面の一ヶ所に集合するように配置されたものであってもよい。
【0050】
目封止部の材料については特に制限はないが、セラミックが好ましく、上記隔壁の好ましい材料として挙げられた材料を好適に用いることができる。
【0051】
(1−3)接合層:
図1〜
図5に示すように、接合層7は、複数個のハニカムセグメント4の側面同士の一部を接合するものである。即ち、この接合層7は、複数個のハニカムセグメント4を接合して一体化するための接合材からなるものである。
【0052】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4の側面同士を接合する接合層7の厚さが、流入端面11側から流出端面12側に向かう方向の少なくとも一部において薄くなるように構成されている。これまでに説明したように、ハニカムセグメント4の側面相互間の隙間は、流入端面11よりも、流出端面12側が狭くなるように構成されている。このように配列した複数個のハニカムセグメント4の側面相互間の隙間を埋めるように接合層7が配置されるため、接合層7の厚さが、流入端面11側から流出端面12側に向かう方向の少なくとも一部において薄くなっている。
【0053】
接合層7の実際の厚さについては、ハニカムセグメント4の形状、複数個のハニカムセグメント4の配列、及び流出端面12におけるハニカムセグメント4の相互間の隙間の大きさによって、適宜決定される。例えば、流出端面12にて、複数個のハニカムセグメント4が、それぞれの相互間に隙間が無い状態で配列した場合に、接合層7の厚さが最も薄くなる。ハニカムセグメント4の側面相互間の隙間の大きさが、接合層7の厚さに相当する。なお、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、流出端面12における、複数個のハニカムセグメント4の相互間に隙間は、0〜4mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることが更に好ましく、0.3〜2mmであることが特に好ましい。流出端面12における、複数個のハニカムセグメント4の相互間に隙間が、4mmを超えること、接合層7の厚さが厚くなり過ぎて、ハニカムフィルタの初期の圧力損失が増大することがある。
【0054】
また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、ハニカムセグメント4の流入端面11から流出端面12に向かう軸方向Xの長さL1に対して、接合層7の上記軸方向Xの長さL2が、95%未満の長さである。即ち、ハニカムセグメント4の長さL1に対して、接合層7が配設されていない部分の長さが5%以上である。ハニカムセグメント4の長さL1に対して、接合層7が配設されていない部分の長さは、5〜30%であることが好ましく、5〜20%であることが更に好ましく、5〜15%であることが特に好ましい。ハニカムセグメント4の長さL1に対して、接合層7の長さL2が、95%以上(即ち、接合層7が配設されていない部分の長さが、5%未満)であると、流出端面12側に大きな熱応力が発生した場合に、熱応力を低減することが困難となる。また、接合層7の長さL2が、70%未満となると、接合層7の長さが短くなり過ぎて、ハニカムセグメント4同士を接合する接合力が十分に得られないことがある。
【0055】
更に、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、流出端面12から上記軸方向Xに5mm以上の範囲には、ハニカムセグメント4の側面同士を接合する接合層7が配設されていない。流出端面12から接合層7が配設されていない範囲については、流出端面12から5〜30mmであることが好ましく、10〜20mmであることが更に好ましく、10〜15mmであることが特に好ましい。流出端面12から5mm未満の範囲にも接合層7が配設されていると、流出端面12側に大きな熱応力が発生した場合に、熱応力を低減することが困難となる。なお、接合層7が配設されていない範囲が過剰に大きくなると、ハニカムセグメント4同士を接合する接合力が十分に得られないことがある。
【0056】
また、接合層7は、ハニカムセグメント4の流入端面11まで配設されていることが好ましい。即ち、流入端面11側の接合層7は、軸方向Xにおいて、ハニカムセグメント4の流入端面11と同じ位置まで配設されていることが好ましい。
【0057】
接合層の材料については特に制限はないが、例えば、炭化珪素、アルミナ、窒化珪素、等のセラミック粒子を、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナにより結合した材料等を好適例として挙げることができる。このような材料を用いることによって、ハニカムフィルタに生じる熱応力を良好に低減することができる。また、このような材料を用いることにより、接合層が、ハニカムフィルタに負荷がかかったときの緩衝材としての役割も果たす。
【0058】
また、接合層としては、熱膨張係数が、2.0×10
−6/K以上、4.0×10
−6/K以下であることが好ましい。また、接合層のヤング率は、0.01GPa以下であることが好ましい。熱膨張係数は、接合層の40℃から800℃における熱膨張係数とする。
【0059】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本実施形態のハニカムフィルタを製造する方法について説明する。まず、ハニカムセグメントを作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、複数個のハニカムセグメントの成形体を作製する(成形工程)。ハニカムセグメントの成形体は、流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きくなるように形成することが好ましい。得られたハニカムセグメントの成形体を、乾燥して、ハニカムセグメントの乾燥体を得ることが好ましい。
【0060】
次に、得られたハニカムセグメントの成形体(或いは、必要に応じて行われた乾燥後のハニカムセグメントの乾燥体)を焼成してハニカムセグメントを作製する(ハニカムセグメント作製工程)。
【0061】
次に、得られた各ハニカムセグメントの流入端面における所定のセル(第一セル)の開口部、及び流出端面における残余のセル(第二セル)の開口部に目封止を施して、目封止部を形成する(目封止工程)。
【0062】
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材で接合して、
図1〜
図5に示すような、ハニカムセグメント接合体(ハニカムフィルタ)を作製する(ハニカムセグメント接合工程)。即ち、複数個のハニカムセグメントが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されるとともに、対向する側面同士が接合材により接合されたハニカムセグメント接合体(ハニカムフィルタ)を作製する。接合させるハニカムセグメントの個数は、作製しようとするハニカムフィルタの大きさに合わせた個数であることが好ましい。接合材は、ハニカムセグメントの流入端面から流出端面に向かう軸方向の長さL1に対して、95%未満の長さに配設する。また、流出端面から軸方向に5mm以上の範囲には、接合材を配設しないようにする。接合材は、ハニカムセグメントが熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、各ハニカムセグメントを接合する役割を果たす。この接合材が、本実施形態のハニカムフィルタにおける接合層となる。
【0063】
また、接合体を形成した後、接合体の外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。本実施形態のハニカムフィルタを製造する場合には、最外周に位置するハニカムセグメントが切削されるようにして、軸方向に垂直な断面における形状が円形、楕円径、レーストラック形状になるように、接合体の外周部分を切削することが好ましい。
【0064】
また、接合体を形成した後に、又は、更に外周部分を切削して所望の形状にした後に、外周コート処理を行い、接合体の最外周に外周コート層を配設してハニカムフィルタを得ることが好ましい。
【0065】
このようにして本実施形態のハニカムフィルタを製造することができる。以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
【0066】
(2−1)成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカムセグメントの成形体を複数個形成する。
【0067】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、サイアロン、アルミニウムチタネート、アルミナ、コージェライト化原料、及びコージェライトからなる群より選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0068】
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカムセグメントの構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0069】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカムセグメントの成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0070】
流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きなハニカムセグメントの成形体を作製する方法としては、例えば、以下のような方法を挙げることができる。ハニカムセグメントの成形体を、上述した口金を用いて押出成形する際に、成形時の押出速度を、押出中に変化させる。押出速度を変化させることにより、流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きなハニカムセグメントの成形体を得ることができる。特に、押出速度の変化率を、ハニカムセグメントの長押し出し開始時と終了時において、20%以上変化させることがより好ましい。このような方法により、流入端面から流出端面に向かう軸方向に垂直な断面形状が、当該軸方向において相似性を有するハニカムセグメントの成形体を得ることができる。
【0071】
上述したハニカムセグメントの成形体を作製した後に、得られたハニカムセグメントの成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0072】
(2−2)ハニカムセグメント作製工程:
次に、得られたハニカムセグメントの成形体を焼成してハニカムセグメントを得ることが好ましい。ハニカムセグメントの成形体の焼成は、ハニカムセグメントの成形体に目封止部を配設した後に行ってもよい。また、このハニカムセグメント作製工程において、ハニカムセグメントの成形体を、流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きくなるように変形させることもできる。例えば、焼成時において、ハニカムセグメントの成形体を、流出端面が鉛直下方となり、流入端面が鉛直上方となるように、垂直に起立した状態で載置する。これにより、重力の掛かる、ハニカムセグメントの成形体の流出端面近傍の寸法が、流入端面に比して大きくなるように変形する。
【0073】
また、ハニカムセグメントの成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカムセグメントの成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法は、特に制限はなく、成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0074】
ハニカムセグメントの成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
【0075】
(2−3)目封止工程:
次に、ハニカムセグメントの、第一セルの流入端面側の開口部と、第二セルの流出端面側の開口部とに、目封止材料を充填して目封止部を形成する。
【0076】
ハニカムセグメントに目封止材料を充填する際には、まず、ハニカムセグメントの一方の端面(例えば、流入端面)側から、所定のセル(例えば、第一セル)内に目封止材料を充填する。その後、他方の端面(例えば、流出端面)側から、残余のセル(例えば、第二セル)内に目封止材料を充填する。目封止材料を充填する方法としては、以下のような、マスキング工程及び圧入工程を有する方法を挙げることができる。マスキング工程は、ハニカムセグメントの一方の端面(例えば、流入端面)にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカムセグメントの、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。ハニカムセグメントの他方の端面(例えば、流出端面)からセル内に目封止材料を充填する方法も、上記、ハニカムセグメントの一方の端面からセル内に目封止材料を充填する方法と同様の方法とすることが好ましい。また、ハニカムセグメントの両方の端面から、目封止材料を同時に充填してもよい。
【0077】
次に、ハニカムセグメントのセル内に充填された目封止材料を乾燥させて、目封止部を形成し、目封止ハニカムセグメントを得ることが好ましい。また、目封止材料を、より確実に固定化する目的で、目封止材料を乾燥させた後に焼成してもよい。また、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体に目封止材料を充填し、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体と共に、目封止材料を焼成してもよい。
【0078】
(2−4)ハニカムセグメント接合工程:
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材で接合して、複数個のハニカムセグメント4が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されるとともに、対向する側面同士が接合層により接合されたハニカムセグメント接合体を作製する。
【0079】
ハニカムセグメントは、接合材を用いて接合されることが好ましい。接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0080】
接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。
【0081】
ハニカムセグメントの側面同士を接合する接合材が、作製されるハニカム構造体における接合層となる。接合材を塗布する際には、ハニカムセグメントの流入端面から流出端面に向かう軸方向の長さL1に対して、接合材の軸方向の長さL2が、95%未満の長さとなるようにする。また、ハニカムセグメントの流出端面から軸方向に5mm以上の範囲には、接合材を塗布しないこととする。
【0082】
複数個のハニカムセグメントを接合材によって接合した後、得られたハニカムセグメントの接合体の外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。また、ハニカムセグメントを接合し、ハニカムセグメントの接合体の外周部分を切削した後に、その外周部分に外周コート材を配設して、ハニカムフィルタを作製することが好ましい。この外周コート材が、ハニカムフィルタの外周コート層となる。このような外周コート層を配設することにより、ハニカムフィルタの真円度が向上する等の利点がある。
【0083】
このように構成することによって、本実施形態のハニカムフィルタを製造することができる。但し、本実施形態のハニカムフィルタの製造方法は、上述した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0084】
以下、本発明のハニカムフィルタを実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
セラミック原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合したものを用いた。そして、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0086】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカムセグメントの成形体を複数個作製した。なお、実施例1においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、120%となるように、成形時の押出速度を変化させた。これにより、流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きなハニカムセグメントの成形体を得ることができた。
【0087】
次に、得られたハニカムセグメントの成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。なお、乾燥時には、ハニカムセグメントの成形体の流出端面が、鉛直下向きになるように配置して乾燥を行った。
【0088】
乾燥後のハニカムセグメントの成形体に、目封止部を形成した。まず、ハニカムセグメントの成形体の流入端面側のセルの開口部に、マスクを施した。このとき、マスクを施したセルと、マスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。そして、ハニカムセグメントの成形体のマスクを施した側の端部を目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。そして、乾燥後のハニカムセグメントの成形体の流出端面における残りのセル(即ち、流入端面において目封止部を形成していないセル)についても、同様にして、目封止部を形成した。
【0089】
そして、目封止部を形成したハニカムセグメントの成形体を脱脂し、焼成して、目封止部がセルの開口部に配設されたハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。なお、焼成時には、ハニカムセグメントの成形体の流出端面が、鉛直下向きになるように配置して焼成を行った。
【0090】
得られたハニカムセグメントは、隔壁厚さが、200μmであり、セル密度が、62個/cm
2であった。また、ハニカムセグメントは、流入端面の面積よりも、流出端面の面積が大きくなるように構成された四角錐台形状である。実施例1のハニカムセグメントは、流入端面の一辺の長さが34.5mmの四角形であり、また、流出端面の一辺の長さが35.0mmの四角形である。表1に、実施例1のハニカムセグメントの「隔壁厚さ」、「セル密度」、「材料」、「セグメントサイズ」を示す。ハニカムセグメントの「材料」は、上述したように、ハニカムセグメントが炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを用いたセラミック原料からなるため、「Si−SiC」と記す。「Si−SiC」とは、珪素−炭化珪素複合材のことである。
【0091】
【表1】
【0092】
このようなハニカムセグメントを、16個作製した。そして、ハニカムセグメントの流入端面から流出端面に向かう軸方向に垂直な断面において、16個のハニカムセグメントが、4個×4個の並びになるようにして、接合材で接合し、接合材を乾燥させてハニカムセグメントの接合体を得た。乾燥させた接合材が、接合層となる。接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する際には、流入端面側の接合層の厚さが1.2mm、流出端面側の接合層の厚さが1.0mmとなるようにした。また、流出端面から10mmの範囲には、接合材を塗布せず、上記範囲には接合層が配設されないようにした。
【0093】
表2に、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」を示す。「流出端面からの非接合部分の長さ」は、ハニカムセグメントの側面に接合材を塗布せず、接合層が配設されない部分の長さのことである。また、流入端面側の接合層の厚さを「A」とし、流出端面側の接合層の厚さ「B」とした場合の、「A/Bの百分率」を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
次に、ハニカムセグメントの接合体を、その全体形状が円筒形状となるように、外周を研削加工した。その後、研削加工したハニカムセグメントの接合体の外周に、セラミック材料を塗工して外周コート層を形成した。このようにして、実施例1のハニカムフィルタを作製した。ハニカムフィルタの軸方向に垂直な断面の形状は、直径が144mmの円形である。また、ハニカムフィルタの軸方向の長さは、152mmである。ハニカムフィルタの「直径」及び「長さ」を表1に示す。
【0096】
得られたハニカムフィルタについて、以下に示す方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表2に示す。
【0097】
[圧力損失の比率]
圧力損失の比率においては、まず、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの圧力損失を測定した。具体的には、ハニカムフィルタに200℃の一定流量の空気を流入し、ハニカムフィルタの流入端面と流出端面とで圧力をそれぞれ測定し、その差圧を圧力損失とした。そして、実施例1〜3及び比較例2においては、比較例1のハニカムフィルタの圧力損失を基準として、圧力損失の比率を求めた。即ち、比較例1のハニカムフィルタの圧力損失を100%とした場合の、実施例1〜3及び比較例2のハニカムフィルタの圧力損失の比率を求めた。また、実施例4〜8及び比較例4においては、比較例3のハニカムフィルタの圧力損失を基準として、圧力損失の比率(百分率)を求めた。また、実施例9〜11及び比較例6においては、比較例5のハニカムフィルタの圧力損失を基準として、圧力損失の比率を求めた。実施例4〜11及び比較例4、6においても、圧力損失の比率は、基準となるハニカムフィルタの100%とした場合の、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの圧力損失の比率(百分率)である。
【0098】
[最大スス堆積量]
各実施例及び比較例のハニカムフィルタを用いて、粒子状物質としてススを含む排ガスの浄化を行った。ハニカムフィルタの再生として、ハニカムフィルタの隔壁上に堆積したススの燃焼を行った。順次、ススの堆積量を増加させて、ハニカムフィルタにクラックが発生する限界のススの堆積量を確認した。
【0099】
(実施例2及び3)
ハニカムセグメントの流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表1に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。実施例2においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、125%となるように、成形時の押出速度を変化させた。また、実施例3においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、130%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0100】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表2に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2及び3のハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表2に示す。
【0101】
(比較例1及び2)
ハニカムセグメントの流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表1に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。比較例1においては、押出成形する際に、開始時から終了時までの押出速度を一定にした。また、比較例2においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、115%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0102】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表2に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1及び2のハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表2に示す。
【0103】
(実施例4〜8)
ハニカムセグメントの隔壁厚さ、セル密度、流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表3に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。実施例4においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、120%となるように、成形時の押出速度を変化させた。実施例5においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、125%となるように、成形時の押出速度を変化させた。また、実施例6〜8においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、130%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0104】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表4に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4〜8のハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表4に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
(比較例3及び4)
ハニカムセグメントの隔壁厚さ、セル密度、流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表3に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。比較例3においては、押出成形する際に、開始時から終了時までの押出速度を一定にした。また、比較例4においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、115%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0108】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表4に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3及び4のハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表4に示す。
【0109】
(実施例9〜11)
ハニカムセグメントの隔壁厚さ、セル密度、流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表5に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。実施例9においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、120%となるように、成形時の押出速度を変化させた。実施例10においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、125%となるように、成形時の押出速度を変化させた。また、実施例11においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、130%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0110】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表6に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例9〜11のハニカムフィルタを作製した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表6に示す。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
(比較例5及び6)
ハニカムセグメントの隔壁厚さ、セル密度、流入端面の一辺の長さ、及び流出端面の一辺の長さが、表5に示す値となるように、ハニカムセグメントを作製した。なお、ハニカムセグメントの成形体を作製するための坏土は、実施例1と同様の方法で調製した。比較例5においては、押出成形する際に、開始時から終了時までの押出速度を一定にした。また、比較例6においては、押出成形する際に、開始時の押出速度に対して、終了時の押出速度が、115%となるように、成形時の押出速度を変化させた。
【0114】
得られたハニカムセグメントを用いて、「流出端面からの非接合部分の長さ」、「流入端面側の接合層の厚さ」、及び「流出端面側の接合層の厚さ」が表6に示すような値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5及び6のハニカムフィルタを作製した。
【0115】
得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、「圧力損失の比率」、及び「最大スス堆積量」を求めた。結果を表6に示す。
【0116】
(結果)
表1〜表6に示すように、実施例1〜11のハニカムフィルタは、基準となる比較例1、3又は5のハニカムフィルタと比較して、圧力損失が低いものであった。また、実施例1〜11のハニカムフィルタは、同じ隔壁厚さ及びセル密度のハニカムフィルタと比較して、最大スス堆積量も大きな値を示した。即ち、実施例1〜11のハニカムフィルタは、従来のセグメント構造のハニカムフィルタに比して、圧力損失の増加を抑制することができるとともに、ハニカムフィルタに生じる熱応力を良好に低減することができるものであった。