(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6059945
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】先端ループ型電極カセーター
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-233529(P2012-233529)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83171(P2014-83171A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−155082(JP,A)
【文献】
米国特許第05354297(US,A)
【文献】
特表2012−517306(JP,A)
【文献】
特表2001−521774(JP,A)
【文献】
特開2012−034852(JP,A)
【文献】
特開2011−224373(JP,A)
【文献】
特開昭55−050371(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0250056(US,A1)
【文献】
米国特許第5702438(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を有して湾曲するループ部を形成した細長形状の先端ループ型電極カセーターであって、
前記ループ部が、半径内外方向に蛇行する形状を有しており、
前記複数の電極が、前記ループ部の半径が極大となる位置に配置されていることを特徴とする先端ループ型電極カセーター。
【請求項2】
前記ループ部が、前記先端ループ型電極カセーターの遠近方向に蛇行する形状を有しており、
前記複数の電極が、前記ループ部の近位側からの距離が極大となる位置に配置されている請求項1に記載の先端ループ型電極カセーター。
【請求項3】
前記複数の電極が、前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極から成り、
前記先端ループ型電極カセーターが、複数のルーメンを長さ方向に開口した長尺状のルーメンチューブと、該ルーメンチューブに挿通され前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され、前記ループ部の蛇行形状を形状記憶する形状記憶芯線とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の先端ループ型電極カセーター。
【請求項4】
前記複数の電極が、前記先端ループ型電極カセーターの先端を覆う先端電極と前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極とを含み、
前記先端ループ型電極カセーターが、複数のルーメンを長さ方向に開口した長尺状のルーメンチューブと、該ルーメンチューブを長尺状に覆う外皮チューブと、前記ルーメンチューブに挿通され前記先端電極に高周波電流を通電するための長尺状の先端電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され、前記ループ部の蛇行形状を形状記憶する形状記憶芯線とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の先端ループ型電極カセーター。
【請求項5】
前記複数の電極が、前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極から成り、
前記先端ループ型電極カセーターが、前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記リング状電極導線を長尺状に覆う外皮チューブと、該外皮チューブに挿通され該外皮チューブを蛇行形状を有するループ状に形成するように形状記憶された形状記憶芯線とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の先端ループ型電極カセーター。
【請求項6】
前記複数の電極が、前記先端ループ型電極カセーターの先端を覆う先端電極と前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極とを含み、
前記先端ループ型電極カセーターが、前記先端電極に高周波電流を通電するための長尺状の先端電極導線と、リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記先端電極導線及びリング状電極導線を長尺状に覆う外皮チューブと、該外皮チューブに挿通され該外皮チューブを蛇行形状を有するループ状に形成するように形状記憶された形状記憶芯線とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の先端ループ型電極カセーター。
【請求項7】
前記リング状電極近傍の温度を検出する温度センサーと、該温度センサーからの電流を流すための導線とを備えたことを特徴とする請求項3から6何れかに記載の先端ループ型電極カセーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整脈の治療のための心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)等、特に心房細動の頻脈性不整脈の治療等に用いられる、先端をループ状に湾曲させ電極を有する先端ループ型電極カセーター(カテーテル)に係り、特に施術部に複数の電極を容易に接触させることができる先端ループ型電極カセーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、先端ループ型電極カセーターは、ラッソーカテーテルとも呼ばれ、先端に複数の電極部を有して湾曲するループ部を形成する細長形状のものであって、例えば
図1に示すようなガイドカセーター(ガイドカテーテル)20等に挿通されて患部まで到達し、電極を患部に当接した状態で通電することによって患部の焼灼や電位測定を行うものである。
【0003】
従来技術による先端ループ型電極カセーターは、
図8(a)の平面図及び
図8(b)の側面図に示すように、ガイドカセーター等の先端から突出させた状態において、先端部分が金属の弾性復元力を利用して円環状に湾曲してループ部を形成し、このループ部に等間隔に配置されたリング状電極42に通電することによって広範囲の円環状に患部の焼灼及び電位測定を行うように構成される。
【0004】
なお、従来技術による先端ループ型電極カセーター(カテーテル)が記載された文献としては、下記の特許文献が挙げられる。特許文献1には、流体連通のためのチャンバーを有してループルーメン外径よりも太いパイプルーメンと、隆起した複数の電極とを備えることにより、この電極の隆起の心臓組織と接触する表面積が増加して焼灼時の電気抵抗を低下させる先端ループ型電極カテーテル(カセーター)技術が記載され、特許文献2には、内管及び外管からなる二重管構造のカテーテル先端部と、この内管と外管との間に挟まれた状態で各々が軸方向に離間して配置された複数の金属リングと、カテーテルの先端を覆う外観樹脂材料とを備えることによって、電極の造影性(X線画像などによる視認性)に優れ、電極によるノイズの少ないシャープな電位を測定することができる先端ループ型電極カテーテル(カセーター)技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−224373号公報
【特許文献2】特開2012−34852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1及び2に記載された技術は、焼灼性・感知性・電極の造影性に優れたカセーター(カテーテル)技術が記載されているものの、特許文献1記載の技術は、電極がループルーメンよりも径が太くなることによって、ガイドカセーターの内径が増加して外径が太くなり、限られた太さの肺動脈血管等に通すことによる患者への負担が増加すると共に先端ループ型電極カセーターの回転等の操作性への障害になるという課題と、電極が隆起しているためにガイドカセーターから突没させる際に引っかかり、あるいは抵抗が増して細かな操作が困難になるととう課題があり、特許文献2記載の技術は、先端ループ型電極カセーターの先端を外観樹脂材料で覆うために電極が陥没してしまうという課題があった。
【0007】
このような課題に鑑みて、本発明は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、複数の電極が患部に柔らかく接して患部の焼灼や電位測定を確実に行うことができる先端ループ型電極カセーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、複数の電極部を有して湾曲するループ部を形成した細長形状の先端ループ型電極カセーターであって、前記ループ部が、複数の電極を湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように配置していることを第1の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記第1の特徴の先端ループ型電極カセーターにおいて、前記複数の電極が、前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極から成り、前記先端ループ型電極カセーターが、複数のルーメンを長さ方向に開口した長尺状のルーメンチューブと、該ルーメンチューブに挿通され前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され前記複数のリング状電極の位置を前記ループ部の湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように形状記憶する形状記憶芯線とを備えたことを第2の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第1の特徴の先端ループ型電極カセーターにおいて、前記複数の電極が、前記先端ループ型電極カセーターの先端を覆う先端電極と前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極とを含み、前記先端ループ型電極カセーターが、複数のルーメンを長さ方向に開口した長尺状のルーメンチューブと、該ルーメンチューブを長尺状に覆う外皮チューブと、前記ルーメンチューブに挿通され前記先端電極に高周波電流を通電するための長尺状の先端電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記ルーメンチューブに挿通され前記先端電極及び複数のリング状電極の位置を前記ループ部の湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように形状記憶する形状記憶芯線とを備えたことを第3の特徴とする。
【0011】
更に、本発明は、前記第1の特徴の先端ループ型電極カセーターにおいて、前記複数の電極が、前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極から成り、前記先端ループ型電極カセーターが、前記リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記リング状電極導線を長尺状に覆うと共に前記複数の電極の位置を前記ループ部の湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように形成された外皮チューブと、該外皮チューブに挿通され該外皮チューブをループ状に形成するように形状記憶された形状記憶芯線とを備えたことを第4の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第1の特徴の先端ループ型電極カセーターにおいて、前記複数の電極が、前記先端ループ型電極カセーターの先端を覆う先端電極と前記ループ部の所定間隔毎に配置された複数のリング状電極とを含み、前記先端ループ型電極カセーターが、前記先端電極に高周波電流を通電するための長尺状の先端電極導線と、リング状電極に高周波電流を通電するための長尺状のリング状電極導線と、前記先端電極導線及びリング状電極導線を長尺状に覆うと共に前記複数の電極の位置を前記ループ部の湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように形成された外皮チューブと、該外皮チューブに挿通され該外皮チューブをループ状に形成するように形状記憶された形状記憶芯線とを備えたことを第5の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記第2から第5の何れかの特徴の先端ループ型カセーターにおいて、前記リング状電極近傍の温度を検出する温度センサーと、該温度センサーからの電流を流すための導線とを備えたことを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による先端ループ型電極カセーターは、前記ループ部が、複数の電極を湾曲面に対して垂直方向且つ湾曲面の半径外方向に突出するように配置していることによって、患部に対して多数の電極が当たり易く、複数の電極が患部に柔らかく接して患部の焼灼や電位測定を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による先端ループ型電極カセーターの使用例を説明するための図。
【
図2】本発明の実施形態による先端ループ型電極カセーター形状を説明するための図。
【
図3】本発明の実施例1による先端ループ型電極カセーター構造を説明するための図。
【
図4】本発明の実施例2による先端ループ型電極カセーター構造を説明するための図。
【
図5】本実施形態による先端ループ型電極カセーターの効果を説明するための図。
【
図6】本実施形態による先端ループ型電極カセーターの効果を説明するための図。
【
図7】本実施形態による先端ループ型電極カセーターの効果を説明するための図。
【
図8】従来技術による先端ループ型電極カセーター形状を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による先端ループ型電極カセーターの実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
本発明による先端ループ型電極カセーター19は、
図2(a)の平面図及び
図2(b)の側面図に示すように、ガイドシース10の先端から突出させた状態において、先端部分が形状記憶合金等の形状記憶復元力を利用して円環状に湾曲してループ部40を形成している。そして、このループ部40の先端に先端電極44を配置すると共に、ループ部40の外周方向の一部を覆うようにリング状電極42を所定間隔をあけて配置し、この先端電極44及びリング状電極42が破線で示す円環面B(湾曲平面)に対して垂直方向且つ円環平面の半径外方向に星形に突出するように構成されている。なお、本実施形態においては先端電極44を設けた先端ループ型電極カセーターを説明するが、この先端電極44は必要に応じて設けるものである。
【0017】
即ち、本実施形態による先端ループ型電極カセーター19は、先端電極44及び複数のリング状電極42が、ループ部40が形成する円環平面に対して電極部のみが垂直方向(
図2[a]の円環面Bに対して図面垂直のカセーターが延びる方向)及びループ部40が形成する円環面Bに対して外方向(
図2[a]の円環面Bに対して外半径方向、星状に電極が突出する方向)に突出するように構成されている。
【0018】
このようにリング状電極42をループ部40が形成する円環平面に対して電極部のみが垂直方向及び外方向に突出するように配置したことによって、本実施形態による先端ループ型電極カセーター19は、例えば、
図5に示すように、肺静脈90内に先端ループ型電極カセーター19を挿入する際、先端ループ型電極カセーター19の星形に突出したリング状電極42が肺静脈90の入口付近で引っかかり易くなり、患部の焼灼が確実になる。また、従来技術においては円形のループ部に電極が配置されているため、真円形でない肺静脈90の内腔壁には直径方向の2箇所の電極が最初に接する可能性が高いのに対し、
図6に示すように、本実施形態による先端ループ型電極カセーター19は、ループ部40が形成する円環平面に対して垂直方向及び外方向に突出するように配置されたリング状電極42が挿入方向及び外方向に星形に突出しているため少なくとも3箇所(接触箇所A)が内腔壁に接すると共に、突出したリング状電極42が食い込むように接する為、患部の焼灼が確実になるという効果を奏する。
【0019】
更に、本実施形態による先端ループ型電極カセーター19は、
図7に示すように、例えば、心筋焼灼術のように臓器平面部92に押し当てた場合、従来技術においては平面的に配置された電極に比較して接触方向に突出したリング状電極42が臓器面に当たり易く、患部の焼灼が確実になるという効果を奏する。
【0020】
なお、使用時には、先端ループ型電極カセーター19は、ガイドカセーター等に挿通されて患部まで到達される。ガイドカセーター20は、例えば
図1に示すように、細長いチューブ状のガイドシース10と、このガイドシース10の一端に取り付けられ、操作者が手の親指等をかけるためのノブ22と、このノブ22の軸方向にスライド可能に取り付けられて操作者が片手で握るためのグリップ21と、ノブ22の一端からガイドシース10に導通するように開口された開口部18とによって構成されている。そして、親指の操作でノブ22を軸方向に移動してガイドシース10の先端を屈曲させて、所望の部位に位置させてから、先端ループ型電極カセーター19を、ループ部40を直線状に伸ばした状態で開口部18から挿入してガイドシース10の他端(先端)から突出させ、ループ部40を金属の弾性復元力を利用して円環状(且つ星状)に湾曲させる。そして先端ループ型電極カセーター19の先端電極44及びリング状電極42を患部に当接した状態で通電することによって患部の焼灼や電位測定が行える。
【0021】
次に、前述のようにループ部40が形成する円環平面に対して電極部が垂直方向及び外方向に突出する先端ループ型電極カセーター19の内部構造を
図3及び4を参照して説明する。
【0022】
[実施例1]
前述した電極部が垂直方向及び外方向に突出する先端ループ型電極カセーター19は、ループ部40の先端部分の断面を示す
図3(a)及び
図3(a)のA−A断面を示す
図3(b)に示すように、中央部近傍と外周部近傍の2箇所のルーメンが長さ方向に開口された(マルチ)ルーメンチューブ51と、このルーメンチューブ51の外周を長さ方向に覆う外皮チューブ32と、前記ルーメンチューブ51の外周近傍に開口された一方のルーメンに挿通される銅線からなるリング状電極導線61と、前記外皮チューブ32のループ部の長さ方向に等間隔にリング状に配置され、前記外皮チューブ32およびルーメンチューブ51に開口された孔を通して前記リング状電極導線61と電気的に接続するリング状電極42と、前記外皮チューブ32及びルーメンチューブ51の先端に取り付けられた先端電極44と、前記ルーメンチューブ51の中央部近傍に開口されたルーメンに挿通され前記先端電極44と導通する銅線からなる先端電極導線70及び形状記憶合金製の形状記憶芯線50と、例えば温度の上昇に対して指数関数的に抵抗値が減少する特性をもつNTCタイプの抵抗温度センサー55と、該温度センサー55に電流を流すための導線56とを備え、ガイドシース10の先端から突出させた状態において、前記形状記憶芯線50が、先端電極44及び複数のリング状電極42を、先端ループが形成する円環平面に対して電極部が垂直方向(
図2[a]の円環面Bに対して図面垂直のカセーターが延びる方向)及び先端ループが形成する円環面Bに対して外方向(
図2[a]の円環面Bに対して外半径方向、星状に電極が突出する方向)に突出するように形状記憶されている。
なお、抵抗温度センサー55及び導線56は、必要に応じて設けられるものであり、例えば心筋焼灼術に用いる場合に焼灼時の温度を感知するために設けられるものである。
【0023】
[実施例2]
前記電極部が垂直方向及び外方向に突出する先端ループ型電極カセーター19は、ループ部40の先端部分の断面を示す
図4に示すように、長さ方向に延びる円筒形状の外皮チューブ43と、この外皮チューブ43の先端に取り付けられた先端電極44と、前記外皮チューブ43のループ部の長さ方向に等間隔にリング状に配置されたリング状電極42と、前記外皮チューブ32内に挿通され前記先端電極44と導通する銅線からなる先端電極導線70と、前記外皮チューブ43内に挿通され前記外皮チューブ32に開口された孔を通してリング状電極42と導通するリング状電極導線61と、前記外皮チューブ43内に挿通され前記外皮チューブ43がループ状を形成するように形状記憶された形状記憶芯線60と、前記NTCタイプの抵抗温度センサー55と、該温度センサー55に電流を流すための導線56とを備え、前記外皮チューブ43が、ガイドシース10の先端から突出させた状態において、先端電極44及び複数のリング状電極42を、ループ部40が形成する円環平面に対して電極部が垂直方向及びループ部40が形成する円環平面に対して外方向に星状に突出するように形成されている。
【0024】
特に本実施例による先端ループ型電極カセーター19は、前述の実施例1の構造と比較してルーメンチューブを内装しない中空構造であると共に電極の外方が形状記憶芯線50から離れているため、外皮チューブ43が心臓内壁等の患部に柔らかく接し、患部に多少の凸凹があっても患部形状に沿ってリング状電極42が確実に患部に接することができ、焼灼を確実に行うことができる。
【0025】
このように本実施例による先端ループ型電極カセーター19は、電極カセーターを構成する外皮チューブ43に先端電極44から軸方向に延びる形状記憶合金製の形状記憶芯線60を設けてループ部40を形成し、ガイドシース10の先端から突出させた状態におけるループ部40の形状を、外皮チューブ43によって先端電極44及び複数のリング状電極42が、電極部が垂直方向及びループ部40が形成する円環平面に対して外方向に星状に突出するように記憶させたことによって、肺静脈の入口及び内部並びに心臓臓器平面に対して複数のリング状電極42が確実に接して抵抗温度センサー55によるリング状電極42等の温度を監視しながら患部の焼灼を確実に行うことができる。
【0026】
なお、本発明による先端ループ型電極カセーター19は、前述した実施例の内部構造に限られるものではなく、先端電極及び複数のリング状電極を、先端ループが形成する円環平面に対して電極部のみが垂直方向及びループ部40が形成する円環平面に対して外方向に星状に突出するように配置させる内部構造のものも含むものである。また、抵抗温度センサー55はNTCタイプに限られるものではなく、リニア抵抗器や白金測温抵抗体等の他のセンサ素子やアルメル・クロメル線熱電対を用いても良く、先端電極の近傍に設けても良い。
【符号の説明】
【0027】
19 先端ループ型電極カセーター
32 外皮チューブ
40 ループ部
42 リング状電極
43 外皮チューブ
44 先端電極
50、60 形状記憶芯線
51 ルーメンチューブ
55 抵抗温度センサー
56 導線
61 リング状電極導線
70 先端電極導線
90 肺静脈