(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体素子を備えた電子部品と該電子部品が発する熱を放熱するための放熱部材とが無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物によって接着されている半導体装置の形成に用いられ、前記放熱部材の表面に前記電子部品を接着させるための接着剤層が前記熱硬化性樹脂組成物で形成されている接着剤層付放熱部材を製造する接着剤層付放熱部材の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物で作製されたシート体を一面側から冷却用部材で冷却しつつ該冷却用部材で冷却している側とは逆側の他面側に予め加熱された放熱部材を当接させ、該放熱部材の熱でシート体の表面に接着性を発揮させるとともに前記冷却用部材と前記放熱部材との間に前記シート体を挟んで加圧することにより前記シート体を前記放熱部材に接着させて前記接着剤層を形成させることを特徴とする接着剤層付放熱部材の製造方法。
前記熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とが含有され、前記無機フィラーが40体積%〜70体積%含有されており、該無機フィラーとして窒化ホウ素粒子が含有されている請求項1記載の接着剤層付放熱部材の製造方法。
前記無機フィラーとして、アルミナ粒子及びシリカ粒子の少なくとも一方からなる金属酸化物粒子がさらに含有されており、該金属酸化物粒子と前記窒化ホウ素粒子との体積比率が10:90〜50:50で、前記金属酸化物粒子のメジアン径が0.5μm〜30μmである請求項2記載の接着剤層付放熱部材の製造方法。
半導体素子を備えた電子部品と該電子部品が発する熱を放熱するための放熱部材とが無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物によって接着されている半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の接着剤層付放熱部材の製造方法によって得られた接着剤層付放熱部材と前記電子部品とを用い、前記接着剤層付放熱部材を加熱して該接着剤層付放熱部材の接着剤層の表面に前記電子部品を接着させるとともに該接着剤層を構成している前記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタなどの発熱量の大きな電子部品を半導体装置の構成部品として用いる場合には、当該半導体装置からの放熱性を促進させるべく放熱フィンなどの放熱部材も前記半導体装置を構成させる部材として用いられている。
前記パワートランジスタとしては、背面側に放熱板を露出させたタイプのものが広く用いられており、半導体チップを樹脂モールドした部分よりも外側に前記放熱板が延出され、該延出部分において螺子止め用の貫通孔が穿設されたものが広く用いられている。
そして、この種のパワートランジスタを半導体装置に利用する場合には、前記放熱板に放熱フィンを面接させる形で放熱フィンとパワートランジスタとが前記貫通孔を使って螺子止めによって固定されたりしている。
このときパワートランジスタから放熱フィンへの熱伝達を良好にさせるべく間に無機フィラーを含有したシリコーンゴムシート(放熱シート)やシリコーングリス(放熱グリス)を介在させることが行われている。
【0003】
このパワートランジスタなどの電子部品から放熱フィンなどの放熱部材への熱伝達性については、より一層良好なものとすることが求められている。
そのために、近年では、下記特許文献1にも示されているようにエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と、窒化ホウ素粒子や窒化アルミニウム粒子などの熱伝導性に優れた無機フィラーとを含有する熱硬化性樹脂組成物によって熱伝導性に優れた接着シートなどと呼ばれるシート体を形成させて該接着シートで電子部品と放熱部材とを接着させることが行われている。
例えば、前記放熱シートであれば、通常、弾性変形を生じさせる必要があるために無機フィラーを高充填させるのにも限界があり、その熱伝導率は、高くても5W/(m・K)程度であるが、前記接着シートの場合には無機フィラーを50体積%以上含有させることも困難ではなく、5W/(m・K)を超え、場合によっては10W/(m・K)に及ぶような熱伝導率を有するものも作製することが容易である。
【0004】
また、放熱グリスや放熱シートを用いる場合には、通常、電子部品と放熱部材との接触状態を保持させるための固定具を別途必要とするが、接着シートの場合は、その接着力をもって電子部品と放熱部材とを接着固定させることができる点においても有利である。
さらに、ヒートスプレッダがケーシングも兼用しているような電子部品で、動作時に該ヒートスプレッダに通電がなされるような非絶縁型の電子部品は、放熱部材との間に絶縁性を確保することが求められるが前記接着シートは電気絶縁性にも優れ、通常、その硬化物が1×10
12Ω・cm以上もの体積抵抗率を有することからこの種の電子部品の放熱に特に適したものであるといえる。
【0005】
一方で、接着シートは無機フィラーが高充填されることで脆くて割れやすい状態になるためにその熱伝導率を向上させようとすると、通常、慎重な取り扱いが必要になる。
このことから接着シートの形成に用いられるような熱硬化性樹脂組成物によって放熱部材の表面に接着剤層を形成させた接着剤層付放熱部材が半導体装置の形成に利用されるようになっている。
即ち、この種の接着剤層付放熱部材においては、接着剤層が放熱部材表面に保持された状態となっているために半導体装置を作製する作業において該接着剤層に割れ等のトラブルを生じるおそれが低く接着シートを単体で用いて半導体装置を作製する場合に比べて作業を容易にさせることができる。
【0006】
この接着剤層付放熱部材の製造方法について説明すると、例えば
図4に示すように、無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物で作製したシート体11xを、放熱フィン10xの上面中央部にセットしたものを複数個用意し、これらを油圧シリンダーによって上下動可能にされた熱プレス500xの下側熱板510xの上に適度な間隔を設けて並べ、この状態で下側熱板510xを持ち上げて、シート体11xをセットした放熱フィン10xを上側熱板520xとの間に挟み込んで上下熱板によって熱を加え、前記シート体を軟化させて表面接着性を発揮させるとともに該シート体を放熱フィンに圧接させてこれらを接着一体化させることが行われている。
このような放熱フィンとの接着に際しては、シート体を構成している熱硬化性樹脂が過度に熱硬化されてBステージ化が過度に進行してしまうと電子部品を接着させる際の接着力が失われてしまうおそれを有する。
【0007】
このようなことから接着剤層付放熱部材を製造する際には、上記のようにして熱プレスで接着が行われた後に、シート体が常温程度になるまで素早く冷却する工程が実施されたりしている。
しかし、放熱部材に良好に接着させるべく無機フィラーを高充填させたシート体を十分に軟化させるためには該シート体を高温にさせなければならないことからシート体を構成している熱硬化性樹脂の硬化反応を抑制させることが難しい。
即ち、良好なる放熱性を有しながらも電子部品との接着性に優れた接着剤層付放熱部材を得ることが難しくなってきており、電子部品の発する熱の放熱性に優れた半導体装置を得ることが難しくなってきている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の熱伝導性シートに係る好ましい実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
まず、接着剤層付放熱部材、及び、電子部品を示した概略斜視図である
図1を参照しつつ本実施形態の接着剤層付放熱部材の利用方法について説明する。
なお、図にも示されているように、ここでは半導体装置の形成に用いる電子部品として、扁平な直方体形状を有する本体部20を備えた電子部品2を例示して該電子部品2の冷却に用いる接着剤層付放熱部材1について説明する。
また、該電子部品2は、3本の板状の主端子21aと10本の針状の制御端子21bとを前記本体部20の4つの側面部の内の互いに対向する2つの側面から突出させており、該端子21a,21bを前記本体部20の厚み方向略中央部において外向きに突出させている。
また、本実施形態の電子部品2は、本体内の半導体素子の熱を外部に放熱するための放熱板22が備えられており、該電子部品2の底面部2bの中央部において前記放熱板22の下面側を露出させているとともに該放熱板22の上面側は、前記半導体素子(図示せず)が搭載されているとともに樹脂モールドが施されている。
即ち、本実施形態の電子部品2は、動作時においては前記放熱板22が通電状態となる非絶縁型のものである。
【0015】
前記電子部品2と、該電子部品2が発する熱を放熱するための放熱部材10とが無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物で接着されている半導体装置の形成に用いられる本実施形態の接着剤層付放熱部材1は、
図1に示すように前記放熱部材10の表面に前記電子部品2を接着させるための接着剤層11が形成されており、該接着剤層11が熱硬化性樹脂組成物からなるシート体11aによって形成されている。
そして、本実施形態の接着剤層付放熱部材1は、前記放熱部材10に、前記電子部品2の輪郭形状よりも一回り大きなシート体11aを接着させることによって形成されている。
【0016】
前記放熱部材10は、電子部品2の放熱に利用可能なものであれば、特にその形状、大きさ、材質などが限定されるものではなく、アルミニウム、銅、錫、ニッケル、鉄、チタンなどの一般的な金属、及び、その合金、或いは、セラミックスなどによって形成されたものを採用することができるが、本実施形態においては、比較的安価なものを入手が容易で、類似品種が多数市販されているために設計変更等も容易である点から、アルミニウムをフィン形状に押出して所定長さで切断した放熱フィン(アルミ押出放熱フィン)を採用している。
なお、前記放熱部材10は、平板ブロック状に形成されたものであっても良く、内部を中空状とし該中空領域に作動液が減圧封入されたヒートパイプ機能を有するものであっても良い。
【0017】
該アルミ押出放熱フィンは、矩形板状の基板部10aと該基板部10aの裏面S1から立設された複数のフィン部10bとを有しており、前記フィン部10bの設けられている側とは逆の前記基板部10aの表面S2は、前記シート体11aが接着される略平坦面となって形成されている。
【0018】
前記放熱部材10に接着されて接着剤層11を形成させるためのシート体11aは、熱抵抗、絶縁信頼性、接着性などの特性をバランス良く付与するために、その厚みが、通常、10μm〜500μmとされ、好ましくは、50μm〜300μmとされ、より好ましくは、100μm〜200μmとされる。
なお、優れた熱伝導性、及び、接着性をこれらの接着剤層11に付与する上において、前記シート体11aを構成する前記熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、無機フィラーを含有させ、該無機フィラーを40体積%〜70体積%含有させることが好ましい。
【0019】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を単独又は2種以上併用して採用することができる。
【0020】
また、前記フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等を採用することができる。
なかでも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性において有利であり、フェノールアラルキル樹脂は、放熱部材や電子部品との間に良好なる接着性を発揮させ得る上において好ましく用いられ得る。
【0021】
なお、前記フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能するものであるが、要すれば、他の硬化剤や硬化促進剤をさらに加えて熱硬化性樹脂組成物の熱硬化性を調整してもよい。
該硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
前記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤が挙げられる。
【0022】
さらに、前記無機フィラーとしては、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ガリウム粒子などの窒化物、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子、シリカ(酸化ケイ素)粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子、酸化チタン(チタニア)粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化ハフニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子などの金属酸化物粒子、炭化ケイ素粒子、ダイヤモンド粒子などを採用することができる。
これらの中でも、熱伝導性に優れる窒化ホウ素粒子が好ましく用いられ得る。
特に、六角板状の一次粒子を複数凝集一体化させて20μm〜100μm程度の大きさの凝集粒子の形態となった窒化ホウ素粒子を採用することが好ましい。
ただし、窒化ホウ素粒子は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂との間に相互作用を発揮させるのに有効な表面官能基を殆ど有しておらず、接着剤層に優れた凝集破壊強度を発揮させるためには、アルミナ粒子、シリカ粒子を併用することが好ましい。
なお、アルミナ粒子やシリカ粒子は、その表面官能基を利用すべく熱硬化性樹脂組成物に含有させることから粒径が細かい方が好ましい。
【0023】
即ち、前記熱硬化性樹脂組成物には、アルミナ粒子及びシリカ粒子の少なくとも一方からなる金属酸化物粒子と窒化ホウ素粒子とを合計40体積%〜70体積%含有させ、且つ、前記金属酸化物粒子と前記窒化ホウ素粒子とを体積比率が10:90〜50:50(金属酸化物粒子:窒化ホウ素粒子)となるように含有させることが好ましく、前記金属酸化物粒子は、メジアン径が0.5μm〜30μmであることが好ましい。
また、前記金属酸化物粒子は、メジアン径が0.5〜10μmのものが特に好ましい。
このメジアン径については、レーザー回折散乱式粒度分布計による測定によって求めることができる。
上記のようにして窒化ホウ素粒子と金属酸化物粒子とを含有させることにより、熱硬化後における接着剤層の熱伝導率を、例えば、4.5W/mK以上とすることができ、3oz(105μm)の厚みの電解銅箔のマット面との間の接着力(90度ピール強度)を5.7N/cm以上とすることができる。
【0024】
前記接着剤層11に窒化ホウ素粒子を凝集粒子の状態で含有させることが好ましいのは、該接着剤層11の厚み方向に良好なる伝熱パスを形成させるのに前記凝集粒子が有効に作用するためである。
なお、窒化ホウ素の一次粒子は、通常、前記のように六角板状となっており、前記凝集粒子はこの一次粒子が複数集合した球状に近い形状を示していることから、当該接着剤層の断面を顕微鏡観察するなどすれば、窒化ホウ素粒子が凝集粒子として含有されているかどうかを容易に判別することができる。
上記のようにこの凝集粒子は、良好なる伝熱パスを形成させるのに有効な成分であり、接着剤層11に優れた熱伝導性を発揮させ得る点において含有させる窒化ホウ素粒子の内、50質量%以上を凝集粒子の状態で含有させることが好ましい。
【0025】
なお、窒化ホウ素粒子と金属酸化物粒子とが、上記範囲内の体積比率となっていることが好ましいのは、窒化ホウ素粒子と金属酸化物粒子との合計に占める金属酸化物粒子の体積比率が50%を超えると接着剤層に十分な熱伝導性を付与することが難しくなり、該金属酸化物粒子の体積比率が10%未満では接着剤層に優れた凝集破壊強度を付与することが難しくなるためである。
【0026】
また、金属酸化物粒子のメジアン径が上記範囲内であることが好ましいのは、上記範囲外では、窒化ホウ素凝集粒子によって形成される良好なる伝熱パスを金属酸化物粒子が阻害して接着剤層の熱伝導性を低下させてしまうおそれを有するためである。
【0027】
また、前記熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂やフェノール樹脂以外のポリマーや、窒化ホウ素粒子や金属酸化物粒子以外の無機フィラーを含有させることができる。
さらに、前記熱硬化性樹脂組成物には、分散剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといった樹脂製品に一般に用いられる配合薬品を適宜含有させることができる。
【0028】
このような熱硬化性樹脂組成物からなるシート体を用い、該シート体で放熱部材に接着剤層を形成させて接着剤層付放熱部材を作製する方法としては、例えば、下記a)〜g)の工程を順に実施する方法が挙げられる。
a)コーティング液作製工程
前記エポキシ樹脂や前記フェノール樹脂を溶解可能な有機溶媒に所望の濃度となるようにエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを溶解させるとともにこの樹脂溶液に前記窒化ホウ素粒子や前記金属酸化物粒子等を分散させてコーティング液を作製するコーティング液作製工程、
b)コーティング工程
マット加工された樹脂フィルムや電解銅箔などを転写用シートとして用い、該転写用シートのマット面に前記コーティング液をコーティングするコーティング工程、
c)乾燥工程
前記コーティング液がコーティングされた転写用シートを乾燥炉に導入して前記有機溶媒を除去し前記コーティング液の乾燥被膜を転写用シート上に形成させる乾燥工程、
d)積層工程
前記乾燥被膜の形成された転写用シートを2枚用意し、前記乾燥被膜が内側になるように重ね合わせ、熱プレスしてこれらの乾燥被膜を積層一体化させて、2つの乾燥被膜が積層されてなるシート体が2枚の転写用シートの間に挟まれた積層シートを形成させる積層工程、
e)外形加工工程
前記積層シートを、前記電子部品2の輪郭形状よりも一回り大きな形状に切断した後に転写用シートを取り除き接着剤層形成用のシート体11aを作製する外形加工工程、
f)予熱工程
前記放熱部材10の基板部10aの表面温度が、前記シート体11aに表面粘着性を発揮させ得る温度となるように放熱部材10を加熱する予熱工程、
g)冷却プレス工程
前記予熱工程によって所定温度に加熱された放熱部材を前記シート体の表面に当接させて該表面に接着性を発揮させるとともに裏面側から板状の冷却用部材(冷却板)を当接させて前記シート体を冷却し、該冷却板と前記放熱部材との間に前記シート体を挟んで加圧することにより該シート体を前記放熱部材に接着させて前記接着剤層を形成させる冷却プレス工程。
【0029】
なお、前記コーティング液作製工程は、ボールミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、三本ロールミル等の攪拌装置を用いて実施することができる。
ただし、コーティング液に過度にせん断が加えられると窒化ホウ素の凝集粒子を破砕してしまうおそれを有することから、そのようなことが起こり難い装置を選択することが好ましい。
また、装置の運転条件としても凝集粒子の破砕が生じないように調整することが好ましい。
【0030】
前記コーティング工程は、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等のコーティング装置を用いて実施することができ、前記乾燥工程は、一般的な加熱乾燥炉を用いて実施することができる。
【0031】
前記コーティング液には、含有する固形分に対して、好ましくは、金属酸化物粒子と窒化ホウ素粒子とが合計40体積%〜70体積%含有されることになるが、通常、これだけの無機フィラーを含有させると乾燥被膜中に細かな空隙部が形成されるおそれがあり、見かけ上の被膜厚みを厚くさせてしまうおそれがある。
前記積層工程は、乾燥被膜を2枚重ねとして、厚み方向に貫通する欠陥を形成させないようにする上においても有効なものではあるが、上記の空隙部を原因としたボイドなどの欠陥が接着剤層に形成されることを抑制させる上においても有効となる。
また、窒化ホウ素粒子どうしを接近させて、特に凝集粒子を主体とした伝熱パスを形成させるのにも該積層工程は有効なものであるといえる。
【0032】
上記のような効果をより顕著に発揮させ得る点においては、積層工程を、より高温、且つ、高圧で実施する方が好ましいが、該積層工程において熱硬化性樹脂組成物に過度に熱を加えるとエポキシ樹脂等の硬化反応が過度に進行して放熱部材に対する接着力を大きく低下させてしまうおそれを有する。
また、後段の熱プレス工程においても同種の効果を期待することができるため、この積層工程における熱プレスは仮接着程度のものであってもよい。
【0033】
前記外形加工工程は、トムソン刃型による打抜きを行うなどして実施することができる。
【0034】
前記予熱工程は、前記放熱部材を所定温度に設定された加熱炉中に一定時間保管して放熱部材全体を加熱する方法の他に、例えば、
図2に示すように、ホットプレート200の熱盤210の上に前記基板部10aの表面S2が下向きになるようにして放熱部材10を載置したり、基板部側から電磁誘導加熱を実施するなどして基板部の表面部のみを選択的に加熱して該基板部表面を所定の温度に加熱するとともにフィン部10bなどのシート体11aとの接着に関与しない部分を基板部表面よりも低温にさせる方法を採用することができる。
当該予熱工程は、次段の冷却プレス工程における冷却性を考慮すると上記のように必要箇所のみを必要温度に加熱することが好ましいものではあるが、局所的な加熱によって放熱部材に歪が生じるようなおそれを有する場合には、放熱部材全体を必要温度にまで加熱してもよい。
【0035】
なお、このときの放熱部材の温度は、該放熱部材の熱容量などにもよるが、通常、前記シート体に対してJIS K7234(環球法)に基づく試験を実施して求められる該シート体の軟化点よりも5℃〜20℃高温とすることができる。
【0036】
前記冷却プレス工程は、例えば、
図3に示すように、冷媒CLが内部循環されて常温以下の表面温度となるように冷却されている冷却板310を水平に配置して、その上に前記シート体11aを載置し、更にその上に前記予熱工程において予め加熱された放熱部材10を前記基板部10aの表面S2が下向きになるようにして載せ、該放熱部材10と前記冷却板310との間に前記シート体11aを挟んで所定の圧力Fで加圧するなどして実施させることができる。
【0037】
なお、このときの前記冷却板の表面温度は、通常、20℃未満とすることができる。
また、この冷却プレス工程は、通常、シート体に0.5MPa〜10MPaの圧力が0.5分(30秒)〜30分の時間作用するように実施すれば良い。
【0038】
なお、本実施形態においては、シート体11aの冷却効率を考慮して冷却板310をシート体11aに当接させるようにしているが、シート体11aと冷却板310との間に樹脂フィルムや金属箔を介挿させるようにしてもよい。
例えば、フッソ樹脂コートされたアルミニウム箔などをシート体11aと冷却板310との間に介挿させた状態で冷却プレスを実施してもよい。
また、上記においては、シート体11aの冷却に板状の冷却部材を用いる場合を例示しているが、当該冷却プレス工程には、板状以外のブロック状などといった種々の形状を有する冷却部材を前記冷却板に代えて用いうる。
【0039】
従来の接着剤層付放熱部材の製造方法においては、熱プレスによって放熱部材とシート体との両方から加熱を行っていたため、接着を行うシート体と放熱部材との界面が所定の温度に達するまでに、熱プレスの熱板とシート体との接触面において硬化反応が進行してしまい、過度にBステージ化が進行するおそれを有していたが、本実施形態の接着剤層付放熱部材の製造方法においては、このような問題を生じさせるおそれが低い。
【0040】
この点に関してより詳しく説明すると、本実施形態の好ましい態様においては、無機フィラーが40体積%〜70体積%もの高充填されたシート体が用いられることになるため該シート体の表面を高温に加熱しないと放熱部材に対して良好な接着を行うことが難しくなるおそれを有する。
一方で、本実施形態での好ましい態様においては、含有させる樹脂成分としてエポキシ樹脂とフェノール樹脂とが採用されている熱硬化性樹脂組成物によって前記シート体が形成されることから、このシート体を加熱しすぎると多くのエポキシ樹脂とフェノール樹脂樹脂とが反応を起こし、エポキシ基やフェノール性水酸基とが消費されてしまい電子部品との接着に際して接着力を発揮させることが難しくなるおそれを有する。
【0041】
しかし、本実施形態においては、シート体は、放熱部材と接着される面とは逆側の面が冷却板で冷却されつつ放熱部材に接着されるために放熱部材との接着面を高温に加熱して良好な接着状態にさせながらも電子部品との接着に利用される面においてBステージ化が過度に進行することを防止することができる。
即ち、放熱部材の予熱温度を高温に設定しても、冷却板をそれに見合う冷却温度とすることで前記シート体によって形成される接着剤層の表面を電子部品との接着性に優れたものとすることができる。
また、放熱部材は、通常、金属製やセラミックス製であるために、通常、200℃〜300℃程度に加熱しただけでは、問題を生じるおそれは低く、放熱部材をこのような温度に加熱してシート体との接着に要する時間の短縮を図ることも可能である。
【0042】
このようにして得られた接着剤層付放熱部材を用いて得られる半導体装置は、電子部品と接着剤層、及び、接着剤層と放熱部材がそれぞれ良好に接着されることから、これらの界面熱抵抗が十分低く放熱性に優れたものとなる。
【0043】
なお、電子部品との接着性において接着剤層付放熱部材の個体差が生じているとこれらを電子部品に接着させて半導体装置を製造する際に、接着剤層の硬化の進行度合いに応じて接着条件を異ならせる必要性を生じさせてしまうことになる。
従って、作業効率の観点からは、電子部品への接着条件を一定化させることが好ましく、熱プレス工程後、電子部品との接着前に、接着剤層の硬化度合いを判定し、その度合いを調整する硬化度調整工程をさらに設けることが好ましい。
【0044】
接着剤層の硬化の進行度合い(Bステージ化の度合い)については近赤外分光分析(NIR)によって確認することができ、その分析精度の高さから、音響光学可変波長フィルタ(Acousto−Optic Tunable Filter) 分光方式の近赤外分光分析(AOTF−NIR)によって確認することが好ましい。
より詳しくは、AOTF−NIRによって、4611cm
-1近傍に出現する芳香族由来の吸収ピークと4525cm
-1近傍に出現するエポキシ基由来の吸収ピークとの強度比で硬化の進行度合いを判定することが好ましい。
【0045】
即ち、接着剤層の硬化反応が進行しても4611cm
-1近傍に出現する吸収ピークのピーク高さは殆ど変化をしないが、4525cm
-1近傍に出現する吸収ピークのピーク高さは接着剤層の硬化反応が進行するにつれて低くなるため、例えば、4611cm
-1近傍に出現する吸収ピークのピーク高さをI
ARM、4525cm
-1近傍に出現する吸収ピークのピーク高さをI
EPXとした場合に、これらの比(I
EPX/I
ARM)によって硬化度合いを精度良く判定することができる。
【0046】
なお、硬化度調整工程は、接着剤層付放熱部材を所定の温度で所定の時間加熱することで実施可能であり、その際の加熱温度や加熱時間については、前記のAOTF−NIRによる硬化度判定結果に基づいて設定すればよい。
【0047】
このようにして電子部品との接着性が調整された接着剤層付放熱部材1と電子部品2とを接着させる方法としては、従来の方法と同様に実施することができ、接着剤層付放熱部材1を、前記熱硬化性樹脂組成物を構成している熱硬化性樹脂の軟化温度以上に加熱して前記接着剤層11に表面タック性を出現させ、この接着剤層11に電子部品2を圧接させつつ加熱を継続させることで前記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させ、該電子部品2と前記接着剤層付放熱部材1とを接着一体化させる方法が挙げられる。
【0048】
また、ここではこれ以上の詳述は割愛するが、本発明の接着剤層付放熱部材や半導体装置は、上記例示に限定されるものではなく、従来これらの技術分野において公知の技術事項を本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて適宜採用することが可能なものであ