特許第6060003号(P6060003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6060003無線通信装置及びこの無線通信装置の起動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060003
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】無線通信装置及びこの無線通信装置の起動方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20161226BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H04B1/40
   H04M1/00 R
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-32001(P2013-32001)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165516(P2014-165516A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年6月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】宮長 健二
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典昭
(72)【発明者】
【氏名】築澤 貴行
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/144558(WO,A1)
【文献】 特開2007−282067(JP,A)
【文献】 特開2006−345223(JP,A)
【文献】 特開2011−024232(JP,A)
【文献】 特表2008−512907(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0048239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号処理を行うBBICと、高周波信号処理を行うRFICと、水晶振動子と、を備える無線通信装置であって、
前記RFICは、
前記水晶振動子の発振周波数に基づくクロック信号の周波数を調整するための調整値を保持し、リセットがアクティブの状態から解除されると前記調整値を出力する記憶部と、
前記記憶部が記憶する調整値に従って前記クロック信号の周波数を調整する周波数調整部と、
前記クロック信号に従って動作し、高周波信号処理を行うRF信号処理部と、を有し、
前記水晶振動子及び前記周波数調整部から構成される発振回路から出力される前記クロック信号は、前記RF信号処理部及び前記BBICに供給され、
前記BBICは、前記記憶部のリセット及び前記BBICが行うベースバンド信号処理のリセットを制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記記憶部のリセットを解除して前記クロック信号が前記BBICに入力された後、前記ベースバンド信号処理のリセットを解除することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記記憶部のリセットを解除して所定時間経過後に、前記ベースバンド信号処理のリセットを解除することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記記憶部のリセットを解除した後、前記クロック信号の入力を検出すると、前記ベースバンド信号処理のリセットを解除することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記ベースバンド信号処理のリセットを解除した後、前記RF信号処理部が行う高周波信号処理のリセットを解除することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記記憶部のリセットを解除して前記クロック信号が前記BBICに入力された後、前記RF信号処理部が行う高周波信号処理のリセットを解除することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、
前記クロック信号に従って動作し、ベースバンド信号処理を行うBB信号処理部と、
前記記憶部のリセット及び前記BBICが行うベースバンド信号処理のリセットを制御するBB制御部と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、
前記BB制御部に外部クロック信号を供給するBBクロック端子と、
前記BB制御部のリセットを制御するBBリセット端子と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記BBICは、前記RFICへの電源供給を制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
ベースバンド信号処理を行うBBICと、高周波信号処理を行うRFICと、水晶振動子と、を備える無線通信装置の起動方法であって、
前記RFICが有する、前記水晶振動子の発振周波数に基づくクロック信号の周波数を調整するための調整値を保持する記憶部が、リセットがアクティブの状態から解除されると前記調整値を出力し、
前記記憶部が記憶する調整値に従って前記クロック信号の周波数を調整し、
前記水晶振動子を含む発振回路から出力された前記クロック信号が、前記クロック信号に従って動作し、高周波信号処理を行うRF信号処理部及び前記BBICに供給され、
前記BBICが、前記記憶部のリセット及び前記BBICが行うベースバンド信号処理のリセットを制御することを特徴とする起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICに供給する基準クロックの周波数を調整する無線通信装置及びこの無線通信装置の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話又はノートパソコン等のモバイル機器には、外部機器とデータ通信を行うための無線通信機能が搭載されている。
【0003】
図6は、特許文献1に記載されている無線LAN装置の構成図である。図6に示す無線LAN装置は、高周波信号処理を行うICチップ4と、ベースバンド信号処理を行うICチップ2と、ICチップ2にクロック信号を供給するオシレータ3と、ICチップ4にクロック信号を供給するオシレータ5と、アンテナ6とから構成されている。当該無線LAN装置は、他の端末へ送信する情報を上位CPU1から受け取り、変調した後にアンテナ6から送信する。また、当該無線LAN装置は、他の端末から送信された信号をアンテナ6で受信して復調した後に上位CPU1へ渡す。
【0004】
ICチップ2には、オシレータ3からクロック信号が供給される。このクロック信号は、チップ内CPU22を動作させるために用いられる。ICチップ4には、オシレータ5からクロック信号が供給される。当該クロック信号は、ICチップ4を介してICチップ2へも供給される。ICチップ2内のBB処理部24及びMAC処理部23は、ICチップ4を介して供給されたクロック信号で動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4413753号公報
【特許文献2】特開2010−192042号公報
【特許文献3】特開2007−334514号公報
【特許文献4】特開2006−115130号公報
【特許文献5】特許第4728655号公報
【特許文献6】特開2011−166368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ICチップ内で変復調処理に用いられるクロック信号には、周波数精度が求められる。クロック信号の供給源である発振回路は、固有の周波数で発振する水晶振動子と、水晶振動子を駆動する周波数調整部とから構成される。但し、周波数調整部はICチップに内蔵され、水晶振動子はICチップの外付けとすることが望ましい。周波数調整部は、発振回路における負荷容量等の定数を調整することで、クロック信号の発振周波数等を調整する。
【0007】
通常、発振回路の定数を調整するための調整値は、ICチップ内に設けられたヒューズ又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリに格納されることが多い(特許文献6の段落[0025]などの記載を参照)。水晶振動子を含む発振回路の個体ばらつきに起因する発振周波数のばらつきは、例えば、ヒューズに格納する値をあらかじめ調整しておくことで補正できる。
【0008】
ヒューズは、ライトワンス(1回のみ書き込み可能)なメモリであり、電気的にプログラムして値を書き込むもの又はレーザーにより切断することで値を書き込むものがある。一度書き換えられた値は電源供給を停止しても保持されており、再度電源を投入すれば同じ値が得られる。
【0009】
ヒューズにはリセット端子が設けられていることがある。このようなヒューズから正しく値を読み出すには、電源投入後にリセットをアクティブにする必要がある(特許文献2の段落[0003]などの記載を参照)。通常、リセットをアクティブにした状態のヒューズからは全て1(又は全て0)のデータで示される値が出力され、リセットを解除すると、当該ヒューズに書き込まれた値が出力される。
【0010】
しかし、特許文献1の無線LAN装置に対し、上記説明したヒューズによりクロック信号の発振周波数を調整する機能を適用すると、以下の問題が発生することが考えられる。上述したように、リセット端子が設けられたヒューズから正しい調整値を読み出すためには、ヒューズのリセットをアクティブの状態から解除する必要がある。なお、ヒューズのリセットがアクティブの状態では、クロック信号の発振周波数を所望の値に調整するための調整値は当該ヒューズから出力されていないため、発振回路が発振せずにクロック信号が出力されない場合がある。一方、高周波信号処理又はベースバンド信号処理を行うICチップにもリセット端子があり、電源投入時にはICチップにおけるリセットを一旦アクティブにした後、解除する必要がある。つまり、電源投入時には、ヒューズ及びICチップに対するリセット信号を適切に制御しなければクロック信号が供給されず、この場合、無線LAN装置を正しく起動できない。なお、特許文献1には、クロック信号とICチップ内の信号処理回路の起動の順番が開示されているが、リセット信号に関する開示はない。
【0011】
特許文献3は、電源投入時にCPUの動作開始を待ち合わせるためのタイミング調整手段を要せず、速やかに装置を起動させることを目的としたものである。特許文献3には、外部から複数のICへ共通のリセット信号を供給する構成が開示されている。
【0012】
特許文献4は、複数の半導体集積回路に同一のクロック信号を出力する情報処理装置において、取り付け基板のアートワークの自由度を高めつつパワーオンリセットを安価な構成にて実現することを目的としたものである。特許文献4には、ある1つのICが起点となって、他のICへクロック信号を供給して一定時間経過後、他のICへリセット信号を供給する構成が開示されている。
【0013】
特許文献5は、メインCPUとサブCPUと周辺IOから構成される装置において、サブCPUなどを異常状態から自動復旧することを目的としたものである。特許文献5には、メインCPUからサブCPUへリセット信号を送出し、サブCPUが周辺IOに向けてリセット信号を送出する構成が開示されている。
【0014】
特許文献3〜特許文献5は、いずれも各ICがリセット端子を1つだけ有していることを想定している。当該構成を適用した場合には、高周波信号処理を行うICチップ内のヒューズと信号処理回路に対するリセットが同時に解除され、ヒューズのリセットが解除されることで発振回路が発振を始める。しかし、発振回路が発振を開始してから安定するまでは不安定なクロック信号がICチップに供給される。この不安定なクロック信号は誤動作の原因となる。
【0015】
この状態を回避するための対策として、ヒューズ及びICチップに対する各リセット信号を外部から供給する端子を構成することも考えられる。しかし、この場合、ユーザが複数のリセット信号の供給を適切に制御する必要があるので、ユーザの負担が増大してしまう。また、端子数が増えるため、装置の小型化を阻害する。
【0016】
本発明の目的は、電源投入時に正しく起動できる小型化可能な無線通信装置及びこの無線通信装置の起動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ベースバンド信号処理を行うBBICと、高周波信号処理を行うRFICと、水晶振動子と、を備える無線通信装置であって、前記RFICは、前記水晶振動子の発振周波数に基づくクロック信号の周波数を調整するための調整値を保持し、リセットがアクティブの状態から解除されると前記調整値を出力する記憶部と、前記記憶部が記憶する調整値に従って前記クロック信号の周波数を調整する周波数調整部と、前記クロック信号に従って動作し、高周波信号処理を行うRF信号処理部と、を有し、前記水晶振動子及び前記周波数調整部から構成される発振回路から出力される前記クロック信号は、前記RF信号処理部及び前記BBICに供給され、前記BBICは、前記記憶部のリセット及び前記BBICが行うベースバンド信号処理のリセットを制御する無線通信装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、ベースバンド信号処理を行うBBICと、高周波信号処理を行うRFICと、水晶振動子と、を備える無線通信装置の起動方法であって、前記RFICが有する、前記水晶振動子の発振周波数に基づくクロック信号の周波数を調整するための調整値を保持する記憶部が、リセットがアクティブの状態から解除されると前記調整値を出力し、前記記憶部が記憶する調整値に従って前記クロック信号の周波数を調整し、前記水晶振動子を含む発振回路から出力された前記クロック信号が、前記クロック信号に従って動作し、高周波信号処理を行うRF信号処理部及び前記BBICに供給され、前記BBICが、前記記憶部のリセット及び前記BBICが行うベースバンド信号処理のリセットを制御する起動方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電源投入時に正しく起動できる小型化可能な無線通信装置及びこの無線通信装置の起動方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1の無線通信装置100の内部構成を示すブロック図
図2】周波数調整部108と水晶振動子103から構成される発振回路110の回路の一例を示す図
図3】実施の形態1の無線通信装置100の電源が投入された際の起動手順を示すフローチャート
図4】本発明の実施の形態2の無線通信装置200の内部構成を示すブロック図
図5】実施の形態2の無線通信装置200の電源が投入された際の起動手順を示すフローチャート
図6】特許文献1に記載されている無線LAN装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の無線通信装置100の内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1の無線通信装置100は、BB(Baseband)IC101と、RF(Radio Frequency)IC102と、水晶振動子103と、アンテナ104とを備える。BBIC101は、BB制御部105と、BB信号処理部106とを有する。RFIC102は、ヒューズ107と、周波数調整部108と、RF信号処理部109とを有する。なお、水晶振動子103と周波数調整部108によって発振回路110が構成される。以下、各構成要素について説明する。なお,図1に示される括弧書きの番号は、無線通信装置100の電源が投入されたときの起動手順の順序を示す。
【0023】
BB制御部105は、無線通信装置100の外部から供給される外部クロック信号に従って動作する。また、BB制御部105は、BBIC用リセットがアクティブにされた後、当該BBIC用リセットが解除されると、それぞれ所定のタイミングで、RFIC102のヒューズ107のリセット及びBB信号処理部106のリセットを制御する。なお、BB制御部105に入力されるリセット信号がロー(L)レベルであればBBIC用リセットがアクティブになり、その後、当該リセット信号がハイ(H)レベルに変わればBBIC用リセットが解除される。なお、リセット信号の極性については、上記関係に限定されず、ハイ(H)レベルでリセットがアクティブになり、ロー(L)レベルでリセットが解除されるものであってもよい。以下の説明では、ロー(L)レベルでリセットがアクティブになり、ハイ(H)レベルでリセットが解除されるものとして説明を行う。
【0024】
BB制御部105によるRFIC102のヒューズ107のリセットの制御は、BBIC用リセットの解除後、行われる。また、BB制御部105によるBB信号処理部106のリセットの解除は、BB制御部105がヒューズ107のリセットを解除した時点から所定時間経過した時又は発振回路110からの安定したクロック信号の入力を検出した時に行われる。
【0025】
BB信号処理部106は、後述するRFIC102からのクロック信号に従って動作し、ベースバンド信号処理を行う。すなわち、BB信号処理部106は、送信するデジタルデータを所定の変調方式で変調したベースバンド帯の変調信号を生成するとともに、RFIC102のRF信号処理部109から入力される受信信号を復調して元のデジタルデータに復調する。また、BB信号処理部106は、メディアアクセス制御(Media Access Control:MAC)を行う。なお、BB信号処理部106は、BB制御部105によってリセットが制御される。BB信号処理部106に入力されるリセット信号がロー(L)レベルであればBBリセットがアクティブになり、その後、当該リセット信号がハイ(H)レベルに変わればBBリセットが解除される。
【0026】
ヒューズ107は、RFIC102に設けられたライトワンスのメモリである。ヒューズ107は、水晶振動子103の発振周波数のばらつきに応じた、発振回路110における負荷容量の定数を設定するための調整値を保持する。当該調整値は、あらかじめ無線通信装置100の出荷前にヒューズ107に書き込まれる。
【0027】
ヒューズ107は、BBIC101のBB制御部105によってリセットが制御される。ヒューズ107は、ヒューズリセットがアクティブにされた後、当該ヒューズリセットが解除されると、保持している調整値を示す調整信号を出力する。ヒューズ107に入力されるリセット信号がロー(L)レベルであればヒューズリセットがアクティブになり、その後、当該リセット信号がハイ(H)レベルに変わればヒューズリセットが解除される。なお、ヒューズリセットがアクティブの状態のヒューズ107からは全て1(または全て0)のデータの信号が出力される。
【0028】
周波数調整部108は、上述したように、水晶振動子103と共に発振回路110を構成する。周波数調整部108は、ヒューズ107からの調整信号に応じて、発振回路110における負荷容量の定数を調整する。その結果、発振回路110は、所定周波数のクロック信号を出力する。
【0029】
図2は、周波数調整部108と水晶振動子103から構成される発振回路110の回路の一例を示す図である。図2に示すように、周波数調整部108は、2つのコンデンサC1,C2と、帰還抵抗Rfと、制限抵抗Rdと、2つのインバータとを含む。コンデンサC1,C2は、可変容量コンデンサであり、ヒューズ107からの調整信号に応じた容量値に設定される。コンデンサC1,C2の容量値を変えることで、発振回路110が出力するクロック信号の周波数を調整することができる。
【0030】
帰還抵抗Rfは、発振段インバータの出力側から電流を帰還させ、水晶振動子103の発振を継続させる。制限抵抗Rdは、水晶振動子103に流れる電流を制御する。なお、ヒューズ107から出力される調整信号には、コンデンサC1,C2の容量値を調整するための値だけでなく、周波数調整部108の駆動電流も調整するための、制限抵抗Rdの抵抗値を設定するための調整値が含まれていてもよい。この場合、制限抵抗Rdには可変抵抗が用いられ、一般的に知られているように、制限抵抗Rdの抵抗値を最適に設定することで発振回路110が安定して発振する。
【0031】
前述したように、ヒューズ107におけるヒューズリセットがアクティブの状態では、ヒューズ107からは全て1(または全て0)のデータの信号が出力される。当該信号が周波数調整部108に入力されても発振回路110は発振しない。仮に発振したとしても、所定の周波数からは大きく離れた周波数で発振する。
【0032】
RF信号処理部109は、発振回路110からのクロック信号に従って動作し、高周波信号処理を行う。すなわち、RF信号処理部109は、BB信号処理部106から入力されたベースバンド帯の変調信号を所定のキャリア周波数に周波数変換し、所定の送信電力に増幅し、アンテナ104から送信する。また、RF信号処理部109は、アンテナ104が受信した高周波信号をベースバンド帯に周波数変換し、BB信号処理部106へ送る。なお、RF信号処理部109は、BBIC101のBB制御部105又はBB信号処理部106によってリセットが制御される。RF信号処理部109に入力されるリセット信号がロー(L)レベルであればRFリセットがアクティブになり、その後、当該リセット信号がハイ(H)レベルに変わればRFリセットが解除される。
【0033】
以下、電源投入時の実施の形態1の無線通信装置100の動作について説明する。図3は、実施の形態1の無線通信装置100の電源が投入された際の起動手順を示すフローチャートである。
【0034】
無線通信装置100の電源が投入されると、BBIC101及びRFIC102に電力が供給されるとともに、BB制御部105に外部クロック信号が供給される(ステップ2000:図1の(1))。次に、BB制御部105のリセットがアクティブにされた後、当該リセットが解除される(ステップ2010:図1の(2))。次に、BB制御部105は、RFIC102のヒューズ107のリセットをアクティブにした後、当該リセットを解除する(ステップ2020:図1の(3))。BB制御部105がヒューズ107のリセットを解除するタイミングは、RFIC102への電力供給が開始され、RFIC102が外部からの信号を入力できる状態になるまでの時間に基づいて決定される。
【0035】
次に、ヒューズ107は、保持している調整値を示す調整信号を出力する(ステップ2030:図1の(4))。次に、発振回路110が調整信号に応じた周波数で発振を開始する(ステップ2040)。次に、発振回路110から出力されたクロック信号がBB信号処理部106とRF信号処理部109へ供給される(ステップ2050:図1の(5))。
【0036】
次に、BB制御部105は、BB信号処理部106のリセットをアクティブにした後、当該リセットを解除する(ステップ2060:図1の(6))。BB制御部105がBB信号処理部106のリセットを解除するタイミングは、BB制御部105がヒューズ107のリセットを解除した時点から、発振回路110が安定して発振する状態になるまでの時間が経過した時である。また、BB制御部105がBB信号処理部106のリセットを解除するタイミングは、発振回路110から出力されたクロック信号がBB制御部105にも入力される場合、BB制御部105が安定したクロック信号の入力を検出した時であっても良い。
【0037】
次に、BB信号処理部106は、RF信号処理部109のリセットをアクティブにした後、当該リセットを解除する(ステップ2070:図1の(7))。ステップ2070の処理は、BB制御部105によって、ステップS2600と同時に行われても良い。すなわち、BB制御部105が、RF信号処理部109のリセットをアクティブにした後、当該リセットを解除しても良い(図1の(7’))。こうして、無線通信装置100の起動が完了し(ステップ2080)、無線通信装置100は通信可能な状態となる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ヒューズ107に対するリセットが解除され、安定して発振する状態の発振回路110からクロック信号がBB信号処理部106及びRF信号処理部109に供給されるようになってから、BB信号処理部106及びRF信号処理部109のリセットが解除される。このように、BB信号処理部106及びRF信号処理部109は、安定した所定の周波数のクロック信号が供給された状態で起動するため、電源投入時に無線通信装置100は正しく起動することができる。
【0039】
また、ヒューズリセットとRFリセットをBBIC101が制御する構成であるため、無線通信装置100のリセット端子はBBICリセットのための端子のみである。このように、無線通信装置100の端子数が少ないため、無線通信装置100の小型化を実現できる。また、無線通信装置100のユーザはBBICリセットのみを制御するだけでよいので、ユーザの負担が増大しない。
【0040】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2の無線通信装置200の内部構成を示すブロック図である。第2の実施形態の無線通信装置200が第1の実施形態の無線通信装置100と異なる点は、BBIC101のBB制御部105によってRFIC102への電力供給が制御される点である。この点以外は第1の実施形態と同様であり、図4において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、無線通信装置200の外部にはRF電源供給部211が設けられている。BBIC201のBB制御部205は、BBIC用リセットが解除された後、RFIC102への電源供給を制御するRFIC電源制御信号を出力する。RF電源供給部211は、RFIC電源制御信号に従ってRFIC102へ電力を供給する。なお、RF電源供給部211は、BBIC201への電力供給部と共用されれば好ましい。
【0042】
図5は、実施の形態2の無線通信装置200の電源が投入された際の起動手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、図4に示した実施の形態1のフローチャートにおけるステップS2000の代わりにステップS2001が行われ、ステップ2010とステップS2020の間に、ステップ2011とステップ2012が行われる。
【0043】
ステップS2001では、BBIC101に電力が供給されるとともに、BB制御部105に外部クロック信号が供給される(図4の(1))。ステップS2010の後に行われるステップS2011では、BB制御部205は、RFIC電源制御信号を出力にする。次に、RF電源供給部211は、RFIC102への電力供給を開始する(ステップ2012)。BB制御部105は、RFIC102へ電力が供給されてからヒューズリセットをアクティブにする。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、BBIC201のBB制御部205がRFIC102への電力供給を制御するため、RFIC102の電源を完全にオフすることができる。このため、無線通信装置200におけるスリープ状態等の消費電力を抑えたい場合には、実施の形態1に比べてさらなる低消費電力化を実現できる。例えば、スリープ状態ではBB制御部205のみが起動しているものとして、周期的にスリープ状態から復帰して必要な通信を行う場合、無線通信装置200がスリープ状態から復帰するには、図5のステップ2011以降の処理を行えば良い。
【0045】
上記説明では、RF電源供給部211が無線通信装置200の外に配置されているが、RF電源供給部211を無線通信装置内へ配置する構成としても良い。この場合、無線通信装置の端子を減らすことができるので、制御が簡易になり、ユーザ負担を増大させないという効果がある。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含される。
【0047】
上記各実施形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0048】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0049】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0050】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0051】
なお、上記実施形態ではアンテナとして説明したが、アンテナポートでも同様に適用できる。アンテナポート(Antenna port)とは、1本又は複数の物理アンテナから構成される論理的なアンテナを指す。すなわち、アンテナポートは必ずしも1本の物理アンテナを指すとは限らず、複数のアンテナから構成されるアレイアンテナ等を指すことがある。例えばLTE(Long Term Evolution)においては、アンテナポートが何本の物理アンテナから構成されるかは規定されず、基地局が異なる参照新号(Reference signal)を送信できる最小単位として規定されている。また、アンテナポートは、プリコーディング・ベクトル(Precoding vector)の重み付けを乗算する最小単位として規定されることもある。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る無線通信装置は、BBICとRFICとで構成される、無線LANやZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の各種無線通信装置として応用できる。また、小型化が可能となることから、特に携帯端末に搭載する無線通信装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
100、200 無線通信装置
101、201 BBIC
102 RFIC
103 水晶振動子
104 アンテナ
105、205 BB制御部
106 BB信号処理部
107 ヒューズ
108 周波数調整部
109 RF信号処理部
110 発振回路
211 RF電源供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6