(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数本のリブのうち、タイヤ赤道に位置するリブには、タイヤ周方向に略沿って延びる周サイプと、前記周サイプに交差して延びる連続サイプと、がタイヤ周方向に間隔を置いて複数形成されたことを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
前記複数本のリブのうち、タイヤ幅方向における少なくとも一端側領域に位置するリブに、タイヤ幅方向に略沿って延びる溝であって、タイヤ周方向に所定ピッチで複数形成された溝を備え、
前記第1溝部のタイヤ周方向での長さは前記所定ピッチに相当する長さ以上であることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制することにより、走行ノイズの悪化を抑制できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トレッド部にリブパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の主溝と、前記主溝により形成され、タイヤ周方向に延びる複数本のリブと、を備え、前記複数本のリブのうち少なくとも1本には、細溝がタイヤ周方向に間隔を置いて複数形成され、前記複数の細溝のうち少なくとも1本に対応して分断サイプが形成され、前記細溝は前記主溝よりも溝幅が小さく、タイヤ周方向に略沿って延びる部分を有する溝であり、前記分断サイプは、断続的に形成された複数の穴部と、隣り合う前記穴部の間に位置する中実部と、を有し、前記穴部と前記中実部とは前記細溝に交差する方向に配置されており、
前記分断サイプは、前記複数の穴部の一つとして、前記分断サイプの外側端部に形成された短サイプを有し、前記短サイプは前記主溝に接続されており、前記分断サイプは、前記細溝に対して前記中実部にて交差する。
【0009】
この構成によれば、分断サイプは細溝に対して中実部にて交差する。このため、分断サイプの形成により細溝が形成されたリブの剛性を適切な大きさまで低下させることができる。これに加え、分断サイプの形成されたリブにおける細溝の周辺領域が分断サイプにより分断されずにつながった状態とできる。よって、タイヤが回転して分断サイプの形成された部分が路面に当たった際でも、前記つながった状態で路面に当たることから、分断された状態で路面に当たることに比べ、この当たった部分が分断サイプを境として異なる変形をすることを抑制できる。この結果、偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制できる。
【0010】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記細溝は少なくとも一部がサイプであり、前記細溝及び前記分断サイプは、前記複数本のリブのうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道よりも車両外側に位置するリブに形成された構成とすることもできる。
【0011】
この構成によれば、細溝の少なくとも一部は溝幅が極細であるサイプであり、細溝及び分断サイプは、前記車両外側に位置するリブに形成されている。このため、タイヤ赤道よりも車両外側に位置するリブにて溝幅の大きな溝を形成した場合に比べ、少なくとも一部がサイプである細溝が形成されたリブの剛性を適切に大きく保つことができる。よって、特に車両のコーナリング(旋回)時に前記リブの変形を抑制できる。結果として、操縦安定性を向上できる。
【0012】
また、前記複数本のリブのうち、タイヤ赤道に位置するリブには、タイヤ周方向に略沿って延びる周サイプと、前記周サイプに交差して延びる連続サイプと、がタイヤ周方向に間隔を置いて複数形成された構成とすることもできる。
【0013】
この構成によれば、前記と同様、タイヤ赤道よりも車両外側に位置するリブでは細溝が分断されずにつながった状態とできる。これに対し、タイヤ赤道に位置するリブでは周サイプに連続サイプが交差することで、周サイプが分断された状態となっている。このため、前記タイヤ赤道に位置するリブについては相対的に剛性を小さくできる。よって、前記リブの路面への接地性を良好にできるため、駆動力及び制動力の路面への伝達性を向上できる。また、剛性が相対的に小さい分振動吸収性が良好となる。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減できる。
【0014】
また、前記周サイプは前記細溝と略平行な部分を有する構成とすることもできる。この構成によれば、略平行な部分ではタイヤ周方向において剛性を均一とできるため、主溝に面したリブの幅方向端部(溝際)につき、剛性差によって周方向の一部分が集中的に偏摩耗することを抑制できる。また、タイヤ(トレッド部)を見る者に対し、デザイン上の統一感を与えることができる。
【0015】
また、前記細溝は、第1溝部と第2溝部とを有し、前記第1溝部は、前記細溝に隣接する主溝に対し3°〜20°で傾斜し、前記第2溝部は、前記第1溝部の一端、他端のうち少なくとも一方の端部と前記主溝とを連結した構成とすることもできる。この構成によれば、第1溝部が第2溝部を介して主溝に連結している。このため、第2溝部を通して水を効率良く主溝に流すことができる。よって、降雨時等で路面が濡れている場合(湿潤路)であっても、路面と細溝が形成されたリブとの間に水膜ができにくく、摩擦力の低下を抑制できる。
【0016】
また、前記複数本のリブのうち、タイヤ幅方向における少なくとも一端側領域に位置するリブに、タイヤ幅方向に略沿って延びる溝であって、タイヤ周方向に所定ピッチで複数形成された溝を備え、前記第1溝部のタイヤ周方向での長さは前記所定ピッチに相当する長さ以上である構成とすることもできる。この構成によれば、第1溝部のタイヤ周方向での長さは前記所定ピッチに相当する長さ以上である。このように第1溝部が長いため、細溝が形成されたリブに位置する水を速やかに第1溝部へと導くことができる。
【0017】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記第1溝部は、前記一端が前記第1溝部の車両外側に隣接する主溝に近づくように傾斜し、前記第2溝部は、前記隣接する主溝に接続された構成とすることもできる。この構成によれば、湿潤路において、第1溝部から第2溝部を介した主溝への排水がより良好になされる。
【0018】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記複数本のリブのうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置するリブには、サイプまたは溝によって区画されたことで略F字状に形成されたF字状ブロックがタイヤ周方向に隣り合うように複数位置し、前記各F字状ブロックは、前記車両内側に位置するリブのうちタイヤ赤道寄りの領域にてタイヤ周方向に沿って延びる柱部と、前記柱部の周方向途中からタイヤ赤道と反対側に分岐する第1枝部と、前記柱部におけるタイヤ周方向の一端からタイヤ赤道と反対側に分岐する第2枝部と、を有し、前記タイヤ赤道よりも車両内側に位置するリブには、隣り合う二つの前記F字状ブロックのうち一方側のF字状ブロックにおける第1枝部と他方側のF字状ブロックにおける第2枝部とに挟まれるように第1小ブロックが位置し、前記各F字状ブロックにおける柱部、第1枝部、第2枝部に挟まれるように第2小ブロックが位置し、前記第1枝部及び前記第2枝部は剛性が相対的に大きく、前記第1小ブロック及び前記第2小ブロックは剛性が相対的に小さいものとすることもできる。
【0019】
この構成によれば、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に位置するリブにおいて接地圧の大きな外側領域の剛性を大きくし、接地圧の小さな内側領域の剛性を小さくできる。このため、コーナリング(旋回)時において車両外側に位置するタイヤで、トレッド部における内側領域が外側領域に比べて接地圧が小さくなることに合わせた剛性差を実現できる。また、前記リブの内側領域の剛性を相対的に小さくできるため振動吸収性が良好であり、走行音(インパクトノイズ)を低減できる。
【0020】
また、前記リブにおける内側領域では、第1枝部及び第2枝部は柱部と一体であることから剛性が相対的に大きく、第1小ブロック及び第2小ブロックは剛性が相対的に小さい。この内側領域では、タイヤ周方向に、第1小ブロック、第1枝部、第2小ブロック、第2枝部の順に位置する。このため、この内側領域では、相対的な剛性に関し、タイヤ周方向に「小・大・小・大」と交互に規則正しく並ぶパターン構成となる。よって、例えば「大・小・小・大・大・小」と交互には並ばないパターン構成に比べると、タイヤ周方向の摩耗の均一化を図ることができる。
【0021】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記トレッド部はタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を備え、前記複数本の主溝のうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道から最も車両外側に離れて位置する主溝は、他の主溝よりも溝幅が小さい構成とすることもできる。この構成によれば、タイヤ赤道から最も車両外側に離れて位置する主溝を挟む二つのリブの剛性を、他の主溝を挟む二つのリブよりも相対的に大きくできる。よって、操縦安定性を向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、分断サイプの形成されたリブにおける細溝の周辺領域が分断サイプにより分断されずにつながった状態とできる。よって、タイヤが回転して分断サイプの形成された部分が路面に当たった際でも、前記つながった状態で路面に当たることから、分断された状態で路面に当たることに比べ、この当たった部分が分断サイプを境として異なる変形をすることを抑制できる。このため、偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制することにより、走行ノイズの悪化を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明につき、一実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」と表記)を取り上げて説明を行う。なお、下記に記載した方向の表現にて、「内外」については、車両装着時において車両の幅方向中央に近い側を内側、遠い側を外側としている。
【0025】
−概要−
図1は、本実施形態のタイヤのトレッドパターンを示している。このタイヤのトレッドパターンは、タイヤ赤道Eを基準としてタイヤ幅方向に非対称である。図示右側が車両装着時における外側であり、図示左側が同内側である。
【0026】
このタイヤには、タイヤ周方向に延びる主溝1が4本(11〜14)形成され、これら主溝1によりトレッド部Tが分割されることで、5本の陸部であるリブ2が形成されている。前記4本の主溝1は、タイヤに形成された他の溝よりも太い溝として形成されている。そして、4本の主溝1のうち、最も外側の1本(以下、「最外主溝」)14は、他の主溝11〜13よりも溝幅が小さく形成されている。このため、この最外主溝14を挟む外側メディエイトリブ24及び最外側リブ25の剛性を大きくできる。よって、操縦安定性を向上できる。
【0027】
次に、リブ2に関し、外側メディエイトリブ24、センターリブ23、内側メディエイトリブ22の順にパターン構成を説明する。なお、タイヤショルダー部に隣接するリブ(ショルダーリブ)である、最外側リブ25及び最内側リブ21については、タイヤにおいてごく一般的な形状の溝が形成されているため、これらリブ21,25については、必要な部分以外の説明はしていない。
【0028】
なお、本実施形態で形成されるサイプは、溝状のサイプ(タイヤ製造のために用いる金型中の板状部分により形成される)であれば溝幅0.3mm〜1.5mm、穴状のサイプ(同金型中の棒状部分により形成される)であれば直径1.5mm〜2.5mmとすることが適当である。
【0029】
−外側メディエイトリブのパターン構成−
まず、外側メディエイトリブ24のパターン構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、この外側メディエイトリブ24には、外側緩斜サイプ311、外側片流れ溝312、分断サイプ32が、タイヤ周方向に一定間隔で形成されている。これらのうち、外側緩斜サイプ311及び外側片流れ溝312は、請求項に記載の「細溝(31)」に相当する。外側緩斜サイプ311と外側片流れ溝312の組は、タイヤ周方向に一定の間隔を置いて複数形成されている。
【0030】
外側緩斜サイプ311は、請求項に記載の「第1溝部」に相当し、径外方向から見た場合、最外主溝14に対する傾斜角度(外側緩斜サイプ311の延長線と最外主溝14との挟角)θ1が好ましくは3°〜20°、より好ましくは5°〜15°の鋭角に形成された直線状のサイプ(極細の溝)である。すなわち、この外側緩斜サイプ311は、タイヤ赤道Eに対しても傾斜角度が45°未満の鋭角に形成されている(トレッド部Tがタイヤ幅方向で水平であるとした場合)。
【0031】
外側緩斜サイプ311における一端部(図示上側の端部、以下同じ)311aは外側メディエイトリブ24における外側領域に位置し、同他端部(図示下側の端部、以下同じ)311bは外側メディエイトリブ24における内側領域に位置する。つまり外側緩斜サイプ311は、図示右上がりに形成されたサイプである。一端部311aは外側片流れ溝312の他端部312bに接続されている。これにより、外側緩斜サイプ311に入った水は、外側緩斜サイプ311内を図示上方に移動して外側片流れ溝312に流れ込む。一方、外側緩斜サイプ311の他端部311bは外側メディエイトリブ24内で閉塞している。
【0032】
外側緩斜サイプ311の、一端部311aから他端部311bまでの長さ(タイヤ周方向に沿う長さ)311L(
図1参照)は、トレッド部Tの、タイヤ幅方向における少なくとも一端側領域に位置するリブ(最内側リブ21と最外側リブ25のうち少なくとも一方)に所定ピッチで複数形成されている溝の、前記所定ピッチに相当する長さ以上とされている。本実施形態では、最外側リブ25において相対的に太い溝71と相対的に細い溝(サイプ)72とが、タイヤ周方向に一定の間隔で交互に形成されている。前記「所定ピッチに相当する長さ」とは、前記太い溝71,71同士のタイヤ周方向の間隔に相当する長さP、または、前記細い溝(サイプ)72,72同士のタイヤ周方向の間隔に相当する長さである。
【0033】
ここで、車両のコーナリング時にカーブ外側に位置するタイヤにおける外側メディエイトリブ24には、路面からタイヤが受ける力(車両重量による力に遠心力が加わった力)が集中して加わる。外側緩斜サイプ311は溝幅が極小であることから、外側緩斜サイプ311の空間を挟む一方側の領域と他方側の領域との位置ずれを許容する空間が小さい。このため、溝幅の大きな溝(例えば特許文献1に記載の「湾曲溝」)に比べると前記位置ずれを小さくできる。よって、溝幅の大きな溝を形成した場合に比べると、外側メディエイトリブ24の剛性を適切に大きく保つことができる。この結果、車両のコーナリング時に外側メディエイトリブ24の変形を抑制することで操縦安定性を向上できる。
【0034】
外側片流れ溝312は、請求項に記載の「第2溝部」に相当し、サイプよりも溝幅が大きい溝である。この外側片流れ溝312は、外側緩斜サイプ311の一端部311aから図示斜め上方に延び、最外主溝14に接続されるラグ溝である。この外側片流れ溝312の溝幅は、外側緩斜サイプ311の一端部311aに接続された他端部312bが狭く、最外主溝14に接続された一端部312aが広い「V」字形である。このため、外側緩斜サイプ311から流れてくる水に対して流路が一端部312aに向かうにつれ広がっている。これにより、外側片流れ溝312を通して水を効率良く最外主溝14に流すことができる。よって、降雨時等で路面が濡れている場合であっても、路面と外側メディエイトリブ24との間に水膜ができにくく、摩擦力の低下を抑制できる。更に、前記のように外側緩斜サイプ311のタイヤ周方向に沿う長さ311Lが前記所定ピッチ以上の長さである。このように外側緩斜サイプ311が長いため、外側メディエイトリブ24に位置する水を速やかに外側緩斜サイプ311へと導くことができる。
【0035】
分断サイプ32は、本実施形態では、外側緩斜サイプ311の他端部311bから図示上方に約2/5(全長基準)の位置で交差する。この分断サイプ32は、外側緩斜サイプ311を挟むように位置する二つの小穴321,321と、この二つの小穴321,321の延長線上外方にあり、最外主溝14に接続されている短サイプ322とが断続的に形成されて構成されている。二つの小穴321,321の間、及び、一つの小穴321と短サイプ322との間は中実である(溝や凹部が形成されていない)中実部323とされている。分断サイプ32は、外側緩斜サイプ311に対して、二つの小穴321,321の間に位置する中実部323にて交差する。中実部323を挟む一方の小穴321と外側緩斜サイプ311との、分断サイプ32における延長線32Xに沿う距離Dは1〜5mmが適当である。小穴321は、径外方向から見て円形の穴である。二つの小穴321,321及び短サイプ322は、いずれも外側緩斜サイプ311には接続されていない。また、二つの小穴321,321、短サイプ322、中実部323,323の配置に関する延長方向については、一端部32a(短サイプ322に属する)が外側メディエイトリブ24の外側領域に位置し、他端部32b(内側に位置する小穴321に属する)が外側メディエイトリブ24の内側領域に位置する点で前記外側緩斜サイプ311と同様であるが、分断サイプ32における延長線32Xの、最外主溝14に対する傾斜角度(延長線32Xと最外主溝14との挟角)θ2は外側緩斜サイプ311(傾斜角度θ1)よりも大きい。
【0036】
この分断サイプ32の形成により、外側メディエイトリブ24に外側緩斜サイプ311と交差する溝を全く形成しない場合と比べ、外側メディエイトリブ24の剛性を適切な大きさまで低下させることができる。このように外側メディエイトリブ24の剛性を適切に小さくすること、言い換えると外側メディエイトリブ24を程良く柔らかくすることで、外側メディエイトリブ24の路面への接地性を良好にできる。このため、駆動力及び制動力の路面への伝達性を向上できる。また、剛性を小さくした分振動吸収性が良好となる。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減でき、昨今における車両の騒音規制をクリアすることに寄与できる。また、乗客の乗り心地も良くなる。
【0037】
前記に加え、分断サイプ32の形成により、外側メディエイトリブ24における外側緩斜サイプ311の周辺領域を分離させないようにできる。この点につき、例えば、
図5(A)(B)に示すように、外側緩斜サイプ311を直線状に形成された別のサイプZが交差した比較例を挙げて説明する。この比較例では、外側メディエイトリブ24における外側緩斜サイプ311の周辺領域がサイプZにより、タイヤ回転方向R(
図5(B)参照)を基準とした前後に分断されてしまう。このため、タイヤが回転して前記分断された角部24F,24Bが路面に当たったとすると、当該各角部24F,24Bが路面との摩擦によって、タイヤ回転方向Rと反対方向である図示矢印Yの方向に移動(変形)する。この移動した状態で当該各角部24F,24Bに路面との摩擦力が働くと、サイプZを挟んで、後に路面に接触する角部24Bよりも、先に路面に接触する角部24Fの方が広範囲に摩擦力を受けることにより激しく(集中的に)摩耗し、摩耗が進行すると、
図5(A)(B)に破線で示すラインLよりも別のサイプZ寄りの領域が削られて無くなってしまう。このため、前記摩耗の進行後には、各角部24F,24Bで径方向の段差が生じる。これがつまり偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)である。
【0038】
一方、本実施形態では、前記比較例のように、外側メディエイトリブ24における外側緩斜サイプ311の周辺領域が、分断サイプ32によりタイヤ回転方向Rを基準とした前後に分断されずにつながった状態とできる。このため、前記比較例のような偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制できる。
【0039】
−センターリブのパターン構成−
次に、センターリブ23のパターン構成について説明する。
図1及び
図3に示すように、このセンターリブ23には、中央側緩斜サイプ41、中央側片流れ溝42、連続サイプ43が、タイヤ周方向に一定間隔で形成されている。
【0040】
中央側緩斜サイプ41は、請求項に記載の「周サイプ」に相当する直線状のサイプである。一端部41aはセンターリブ23の外側領域に位置し、他端部41bはセンターリブ23のうち、タイヤ赤道Eのやや外側部分に位置する。つまり中央側緩斜サイプ41は、前記外側緩斜サイプ311と同様、図示右上がりに形成されたサイプである。タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対する傾斜角度(中央側緩斜サイプ41の延長線と前記主溝13との挟角)θ3は、外側緩斜サイプ311の傾斜角度θ1と略同一とされている。つまり、
図1に示すように、中央側緩斜サイプ41は、前記外側緩斜サイプ311に対して略平行である。このため、略平行の関係にある中央側緩斜サイプ41と外側緩斜サイプ311との間の領域では、タイヤ周方向において剛性を均一にできる。このため、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に面した、センターリブ23及び外側メディエイトリブ24の幅方向端部(溝際)につき、剛性差によって周方向の一部分が集中的に摩耗してしまうことを抑制できる。また、タイヤ(トレッド部T)を見る者に対し、デザイン上の統一感を与えることができる。ただし、中央側緩斜サイプ41は外側緩斜サイプ311と略同一の傾斜角度に形成されたものに限定されず、例えば、中央側緩斜サイプ41が図示下広がり(外側緩斜サイプ311と逆「V」の字状の関係)となるもの等、外側緩斜サイプ311と異なる傾斜角度で形成されていてもよい。
【0041】
この中央側緩斜サイプ41の一端部41aは中央側片流れ溝42の一端部42aに対し接続されている。これにより、中央側緩斜サイプ41に入った水は、中央側緩斜サイプ41内を図示上方に移動して中央側片流れ溝42に流れ込む。
【0042】
そして、中央側緩斜サイプ41の他端部41bも、当該中央側緩斜サイプ41の図示下方に位置する(前記一端部41aが接続されたものとは別の)中央側片流れ溝42に接続されている。図示のように、この中央側緩斜サイプ41の他端部41bは、中央側片流れ溝42の途中であり、当該中央側片流れ溝42における側方に接続されている。
【0043】
中央側片流れ溝42は、中央側緩斜サイプ41よりも溝幅の大きい溝である。この中央側片流れ溝42は、中央側緩斜サイプ41の一端部41aから図示斜め下方に延び、他端部42bでタイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12に接続されるラグ溝である。この中央側片流れ溝42の溝幅は、大部分が一定幅であり、中央側緩斜サイプ41に接続される側の一端部42a周辺で縮小している。この中央側片流れ溝42により、中央側緩斜サイプ41から流れてくる水を主溝12に導くことができる。
【0044】
連続サイプ43は直線状のサイプであり、一端部43aがタイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に接続され、他端部43bがタイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12に接続されている。この連続サイプ43は、中央側片流れ溝42のうち溝幅が一定である部分と略平行に形成されている。この連続サイプ43の、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対する傾斜角度(連続サイプ43と前記主溝13との挟角)θ4は、中央側緩斜サイプ41の傾斜角度θ3よりも大きい。よって、中央側緩斜サイプ41は連続サイプ43と交差する。この交差は、中央側緩斜サイプ41の略中央の位置でなされる。
【0045】
前記のように構成されたセンターリブ23は、中央側緩斜サイプ41の他端部41bが中央側片流れ溝42に接続されており、中央側緩斜サイプ41と連続サイプ43とが交差していることから、前記のように外側緩斜サイプ311が分断サイプ32によって分断されていない前記外側メディエイトリブ24に比べ、相対的に剛性を小さくできる。このようにセンターリブ23の剛性を相対的に小さくすること、言い換えるとセンターリブ23を柔らかくすることで、センターリブ23の路面への接地性を良好にできる。このため、駆動力及び制動力の路面への伝達性を向上できる。また、剛性が相対的に小さい分振動吸収性が良好となる。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減でき、昨今における車両の騒音規制をクリアすることに寄与できる。また、乗客の乗り心地も良くなる。
【0046】
なお、前記外側メディエイトリブ24では偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制するために、分断サイプ32の形成により、外側緩斜サイプ311が分断されずにつながった状態とされている。これに対し、センターリブ23では中央側緩斜サイプ41と連続サイプ43とが交差しており、中央側緩斜サイプ41が分断された状態となっている。こうしている理由は、空気入りタイヤはタイヤ赤道Eにおいて最も周長が大きいことから、タイヤ赤道Eから離れた部分に比べてセンターリブ23では車両走行時の周速度が小さくなるからである。つまり、偏摩耗が発生する可能性は、外側メディエイトリブ24よりもセンターリブ23の方が小さい。よって、センターリブ23ではサイプの交差があっても顕著な問題とはならないためである。
【0047】
−センターリブと外側メディエイトリブとの関係−
なお、外側メディエイトリブ24に関しては、隣接するセンターリブ23よりも剛性が相対的に大きい。このため、車両のコーナリング時に外側メディエイトリブ24が受ける路面からの力(車両重量による力に遠心力が加わった力)に対して有効に対抗できる。よって、車両のコーナリング時に外側メディエイトリブ24の変形を抑制することで操縦安定性を向上できる。
【0048】
また、前記のように、センターリブ23の中央側緩斜サイプ41は、中央側片流れ溝42を介してタイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12に接続されている。一方、この中央側緩斜サイプ41は、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対しては閉塞している。また、センターリブ23の連続サイプ43は、タイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12、及び、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に接続されている。そして、外側メディエイトリブ24の外側緩斜サイプ311は、外側片流れ溝312を介して最外主溝14に接続されている。一方、外側緩斜サイプ311は、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対しては閉塞している。また、外側メディエイトリブ24の分断サイプ32は、短サイプ322が最外主溝14に接続されているが、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対しては閉塞している。つまり、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対して接続されているのは連続サイプ43だけである。
【0049】
このため、タイヤ赤道Eよりも外側に位置する領域(タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13を挟む内外のリブ23,24が相当する)の剛性を、他の領域(他の主溝を挟むリブ)よりも大きくできる。よって、車両のコーナリング時にカーブ外側に位置するタイヤにおいて、路面からタイヤが受ける力(車両重量による力に遠心力が加わった力)が集中して加わる、前記タイヤ赤道Eよりも外側に位置する領域の変形を抑制することで操縦安定性を向上できる。
【0050】
また、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対しては、外方で接続されている溝が全く無い。一方、内方では前記のように連続サイプ43が接続されている。このため、前記タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13を挟む内外の領域のうちで、外側領域の剛性を内側領域の剛性よりも大きくできる。このことからも、車両のコーナリング時に当該領域の変形を抑制することで操縦安定性を向上できる。
【0051】
−内側メディエイトリブのパターン構成−
次に、内側メディエイトリブ22のパターン構成について説明する。
図1及び
図4に示すように、この内側メディエイトリブ22には、内側ラグ溝51、延長サイプ52、第1湾曲サイプ53、第2湾曲サイプ54が、タイヤ周方向に一定間隔で形成されている。
【0052】
内側ラグ溝51は最も内側の主溝11から図示斜め上方にわずかに湾曲しながら(具体的には図示下方に凸の湾曲である)延びる溝である。一端部51aは内側メディエイトリブ22における外側から約1/3の位置に位置し、他端部51bは最も内側の主溝11に接続されている。この内側ラグ溝51の溝幅は中央側片流れ溝42とほぼ同一である。
【0053】
延長サイプ52は、内側ラグ溝51の外側延長線上に位置している。一端部52aは内側から2本目の主溝12に接続されており、他端部52bは内側ラグ溝51の一端部51aに接続されている。この延長サイプ52は、溝幅が内側ラグ溝51よりも小さく、下記第1湾曲サイプ53よりも大きい。
【0054】
第1湾曲サイプ53は、内側ラグ溝51及び延長サイプ52の図示下方に位置している。他端部53bが最も内側の主溝11に接続され、内側ラグ溝51及び延長サイプ52に対して略平行に延び、内側メディエイトリブ22における外側から約1/5の位置である変曲部53cで図示略上方に延長方向が転換され、一端部53aが延長サイプ52に接続されている。第1湾曲サイプ53、内側ラグ溝51、延長サイプ52、最も内側の主溝11に囲まれることで、略平行四辺形である第1小ブロック62が形成されている。なお、第1湾曲サイプ53のうち一端部53aと変曲部53cとの間の区間は、
図1に示すように、外側緩斜サイプ311及び中央側緩斜サイプ41に対して略平行に形成されている。このため、デザイン上の統一感を、タイヤを見る者に与えることができる。
【0055】
第2湾曲サイプ54は、第1湾曲サイプ53の図示下方に位置しており、第1部541と第2部542とからなる。第1部541は、他端部541bが最も内側の主溝11に接続され、内側ラグ溝51及び延長サイプ52に対して略平行に延び、一端部541aが内側メディエイトリブ22における外側から約1/4の位置にある。この第1部541は、延長サイプ52と等しい溝幅とされている。そして第2部542は、第1部541の図示下方に位置し、他端部542bが最も内側の主溝11に接続され、第1部541に対して略平行に延び、内側メディエイトリブ22における外側から約1/4の位置である変曲部542cで図示略上方に延長方向が転換されて、一端部541aが第1部541の一端部541aに接続されている。この第2部542は、第1湾曲サイプ53と等しい溝幅とされている。第2湾曲サイプ54と最も内側の主溝11とに囲まれることで、略平行四辺形である第2小ブロック63が形成されている。なお、第2部542のうち一端部542aと変曲部542cとの間の区間は、
図1に示すように、外側緩斜サイプ311、中央側緩斜サイプ41、第1湾曲サイプ53(一端部53aと変曲部53cとの間の区間)に対して略平行に形成されている。このため、タイヤ(トレッド部T)を見る者に対し、デザイン上の統一感を与えることができる。
【0056】
前記各溝51〜54の形成により、内側メディエイトリブ22には、径外方向から見てアルファベット大文字の「F」に似た形状(略F字状)に形成されたF字状ブロック61と、このF字状ブロック61に隣接する、第1小ブロック62及び第2小ブロック63とが形成される。F字状ブロック61は、図示のように「F」が上下逆転した形状がタイヤ周方向に複数、延長サイプ52を介して隣り合って形成され、第1小ブロック62及び第2小ブロック63はタイヤ周方向に交互に形成されている。
【0057】
図4に示すように、各F字状ブロック61は、内側メディエイトリブ22のうちタイヤ赤道E寄りの領域(図示右側領域)にてタイヤ周方向に沿って延びる柱部611と、この柱部611の周方向略中央からタイヤ赤道Eと反対側に分岐する第1枝部612と、前記柱部611におけるタイヤ周方向の一端(図示下端)からタイヤ赤道Eと反対側(図示左側)に分岐する第2枝部613と、を有する。柱部611は「F」字の縦棒部分に相当し、第1枝部612及び第2枝部613は「F」字の横枝部分に相当する。
【0058】
そして、周方向に隣り合う二つのF字状ブロック61,61のうち、一方側のF字状ブロック61における第1枝部612と他方側のF字状ブロック61における第2枝部613とに挟まれるように前記第1小ブロック62が位置し、各F字状ブロック61における柱部611、第1枝部612、第2枝部613に挟まれるように前記第2小ブロック63が位置する。
【0059】
これら各ブロック61〜63の形状により、略タイヤ幅方向に延びるサイプが相対的に少数形成された内側メディエイトリブ22の外側領域(柱部611が形成された領域)は相対的に剛性が大きく、略タイヤ幅方向に延びるサイプが相対的に多数形成された内側メディエイトリブ22の内側領域(第1枝部612、第2枝部613、第1小ブロック62、第2小ブロック63が形成された領域)は相対的に剛性が小さい。ここで、コーナリング(旋回)時において車両外側に位置するタイヤでは、トレッド部Tにおける内側領域は外側領域に比べて接地圧が小さい。本実施形態の内側メディエイトリブ22では、前記接地圧の差に相当する剛性差を実現できる。つまり、内側メディエイトリブ22において接地圧の大きな外側領域の剛性を大きくし、接地圧の小さな内側領域の剛性を小さくできる。また、内側メディエイトリブ22の内側領域では、剛性が相対的に小さいため振動吸収性が良好である。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減できる。
【0060】
そして、内側メディエイトリブ22における内側領域(図示左側領域)では、第1枝部612及び第2枝部613は柱部611と一体であることから剛性が相対的に大きく、第1小ブロック62及び第2小ブロック63は剛性が相対的に小さい。この内側領域では、
図1及び
図4に示すように、タイヤ周方向(図示上から下への方向)に、第1小ブロック62、第1枝部612、第2小ブロック63、第2枝部613の順に位置し、この配置順がタイヤ全周で繰り返される。このため、この内側領域では、相対的な剛性に関し、タイヤ周方向に「小・大・小・大」と交互に規則正しく並ぶパターン構成となる。よって、例えば「大・小・小・大・大・小」と交互には並ばないパターン構成に比べると、タイヤ周方向の摩耗の均一化を図ることができる。
【0061】
また、F字状ブロック61では、図示上下方向に延びる柱部611が、幅方向に延びる第1枝部612及び第2枝部613により、タイヤ幅方向に補強される。このため、車両のコーナリング時等にタイヤに幅方向にかかる外力(横力)に対して有効に対抗でき、内側メディエイトリブ22の変形を抑制できる。よって、操縦安定性を向上できる。
【0062】
−各リブのまとめ−
以上のパターン構成である各リブ22〜24では、外側に位置する外側メディエイトリブ24の剛性が最も大きく、センターリブ23は外側メディエイトリブ24よりも剛性が小さく、内側メディエイトリブ22はセンターリブ23よりも剛性が小さい。このため、特に車両のコーナリング時に路面からの力が最も大きくなるトレッド面の外側領域を適切な強度とできる。一方、トレッド面の内側領域では、路面に対して相対的に柔らかく接触できるため、振動吸収性が良好である。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減でき、昨今における車両の騒音規制をクリアすることに寄与できる。また、乗客の乗り心地も良くなる。そして、このように内外で剛性差があることにより、内外で均一な剛性である場合に比べ、トレッド部のうちタイヤ幅方向の一方領域が多く摩耗してしまう「片落ち摩耗」を抑制することができる。
【0063】
−実施例とその評価−
次に、本願の発明者が
図6(比較例1)、
図7(比較例2)、
図8(実施例1)、
図9(実施例2)、
図1(実施例3)に示すトレッドパターンのタイヤを試作して評価を行ったのでこの評価につき説明する。
【0064】
図6に示す比較例1は、内側メディエイトリブ22において、延長サイプ52がタイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12に接続されていない。また、センターリブ23において、中央側片流れ溝42に接続された中央側緩斜サイプ41’が、
図1に示す中央側緩斜サイプ41とは逆方向(図示右下がり)に延びている。また、外側メディエイトリブ24において、溝311’が
図1に示す外側緩斜サイプ311よりも幅広に形成され、この溝311’に交差して、
図5(A)に示す別のサイプZと同様のサイプ32’が形成されている。
【0065】
図7に示す比較例2は、
図6に示すトレッドパターンとほぼ同じであるが、前記溝311’を
図1に示す外側緩斜サイプ311に置き換えたものである。また、
図8に示す実施例1は、
図7に示すトレッドパターンとほぼ同じであるが、前記サイプ32’を
図1に示す分断サイプ32に置き換えたものである。また、
図9に示す実施例2は、
図8に示すトレッドパターンとほぼ同じであるが、センターリブ23を
図1に示すパターン構成に置き換えたものである。
【0066】
ヒール・アンド・トウ摩耗の評価に関しては、主溝1の深さが半分になるまでタイヤが摩耗した状態(50%摩耗)にて、外側メディエイトリブ24におけるサイプ32,32’をタイヤ周方向に挟んで摩耗により生じた段差の寸法(径方向での「高低」差)の逆数につき、比較例1を100とした指数に換算して評価した。
【0067】
操縦安定性の評価に関しては、評価対象の各タイヤを装着した車両を、乾燥路及び湿潤路で2名のドライバーが運転した際の各ドライバーの官能評価につき、比較例1を100とした指数で評価した。
【0068】
偏摩耗(ヒール・アンド・トウ摩耗以外の摩耗も含む)の評価に関しては、主溝1の深さが半分になるまでタイヤが摩耗した状態(50%摩耗)にて、センターリブ23及び外側メディエイトリブ24で摩耗が相対的に多い部分と少ない部分の摩耗寸法差(径方向での「高低」差)の逆数につき、比較例1を100とした指数に換算して評価した。また、局所的な摩耗の評価に関しては、内側メディエイトリブ22で前記偏摩耗と同様にして評価した。
【0069】
ノイズの評価に関しては、評価対象の各タイヤを装着した車両を、乾燥路で2名のドライバーが、各種の運転モードにて運転した際の各ドライバーの官能評価につき、比較例1を100とした指数で評価した。
【0070】
前記各評価をまとめたものを表1に示す。数字が大きいほど高評価である。
【表1】
【0071】
表1に示すように、50%摩耗の状態における評価にて、実施例1〜3は比較例1及び2に対して高評価となった。特に、
図1に示す実施例3は最も高評価であった。これにより、従来のタイヤと比較した本発明に係るタイヤの優位性が裏付けられた。
【0072】
−実施形態の変形例−
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0073】
例えば、トレッドパターンは前記実施形態のようなタイヤ赤道E基準で非対称のものに限定されず、対称とすることもできる。また、回転方向の指定されたタイヤにも適用できる。
【0074】
また、前記実施形態では主溝1が4本(11〜14)形成されているが、1本だけを形成することもできるし、2本、3本、5本以上の複数本を形成することもできる。
【0075】
また、外側緩斜サイプ311についてはサイプに限定されず、サイプよりも溝幅の広い溝とすることもできる。また、外側緩斜サイプ311は両端とも、タイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13または最外主溝14に対して、他の溝(外側片流れ溝312等)を介して開放するように構成したり、両端とも閉鎖するように構成したりできる。また、前記実施形態の外側緩斜サイプ311は、図示右上がりに傾斜して形成されたサイプであったが、逆に、図示左上がりに傾斜して形成されたサイプとすることもできる。また、外側緩斜サイプ311を湾曲したサイプとすることもできる。また、前記実施形態の外側緩斜サイプ311は、前記所定ピッチ(長さP)以上の長さとされているが、前記所定ピッチ未満の長さとすることもできる。また、タイヤ周方向に一定の間隔を置いて複数形成されている外側緩斜サイプ311,311同士、または外側緩斜サイプ311と外側片流れ溝312とが、外側緩斜サイプ311とも外側片流れ溝312とも異なる溝が形成されて接続されるように構成することもできる。
【0076】
また、前記実施形態では、最外側リブ25において相対的に太い溝71の内方に連続して位置するサイプの内方に向かう延長線と、外側片流れ溝312の一端部312aの位置とがタイヤ周方向において一致しているが、一致しないものとすることもできる。
【0077】
また、分断サイプ32を構成する小穴321、短サイプ322、中実部323の形成数、連続数、組み合わせは任意に設定できる。また、分断サイプ32を構成する穴は、
図1に示す小穴321のような円形の穴に限定されず、例えば短サイプ322のような長方形状の長穴や、楕円形、長円形、三角形、正方形、菱形、六角形、星形など、種々の形状の穴とすることもできる。また、単一形状の穴だけで小穴321を構成することもできるし、異なる形状の穴で複数の小穴321を構成することもできる。
【0078】
また、前記実施形態では、分断サイプ32の短サイプ322が最外主溝14に接続されているが、短サイプ322を分断サイプ32の内側端部寄りに形成し、この分断サイプ32をタイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に接続することもできる。また、分断サイプ32の一端部32a及び他端部32bがタイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13または最外主溝14に対して開放するように構成
できる。また参考例として、一端部32a及び他端部32bの両端とも閉鎖するように構
成できる。ただし、偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を避けるため、分断サイプ32は外側緩斜サイプ311に対しては接続されていないことが望ましい。また、前記実施形態の分断サイプ32は、延長線32Xが図示右上がりに傾斜して形成されているが、逆に、延長線32Xが図示左上がりに傾斜して形成することもできる。更に、分断サイプ32をタイヤ赤道Eに直交して(タイヤ幅方向に略平行に)形成することもできる。また、分断サイプ32における延長線32Xを円弧状とすることもできる。また、前記実施形態では、外側緩斜サイプ311の他端部311bから図示上方に約2/5(全長基準)の位置で分断サイプ32が交差するが、交差の位置は限定されず、一端部311a寄りの位置、または、他端部311b寄りの位置で交差させることもできる。また、前記実施形態では、最外側リブ25において相対的に太い溝71の内方に連続して位置するサイプの内方に向かう延長線と、分断サイプ32の一端部32aとがタイヤ周方向において大体一致しているが、全く一致しないものとすることもできる。そして前記実施形態では、センターリブ23における連続サイプ43の外方への延長線と、分断サイプ32における内方への延長線とがタイヤ周方向において大体一致しているが、全く一致しないものとすることもできる。
【0079】
また、外側緩斜サイプ311と分断サイプ32とは一対一で対応して形成されたものに限らず、複数の外側緩斜サイプ311のうち一部にだけ対応して分断サイプ32を形成することもできる。逆に、1本の外側緩斜サイプ311に対応して複数の分断サイプ32を形成することもできる。これらにより、外側メディエイトリブ24の剛性を適切な値とできる。また、外側緩斜サイプ311及び分断サイプ32と同様の組み合わせの溝をセンターリブ23等の、外側メディエイトリブ24以外のリブに形成することもできる。
【0080】
また、中央側緩斜サイプ41は、両端とも、タイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12またはタイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対して、他の溝(中央側片流れ溝42等)を介して開放するように構成したり、両端とも閉鎖するように構成したりできる。また、前記実施形態の中央側緩斜サイプ41は、図示右上がりに傾斜して形成されたサイプであったが、逆に、図示左上がりに傾斜して形成されたサイプとすることもできる。また、中央側緩斜サイプ41を湾曲したサイプとすることもできる。
【0081】
また、連続サイプ43は、タイヤ赤道Eの内側に位置する主溝12またはタイヤ赤道Eの外側に位置する主溝13に対して、一端側のみ開放するように構成したり、両端とも閉鎖するように構成したりできる。また、前記実施形態の連続サイプ43は、図示右上がりに傾斜して形成されているが、逆に、図示左上がりに傾斜して形成することもできる。更に、連続サイプ43をタイヤ赤道Eに直交して(タイヤ幅方向に略平行に)形成することもできる。また、連続サイプ43を湾曲したサイプとすることもできる。また、前記実施形態では、中央側緩斜サイプ41の略中央に連続サイプ43が交差するが、交差の位置は限定されず、一端部41a寄りの位置、または、他端部41b寄りの位置で交差させることもできる。
【0082】
また、前記実施形態では、センターリブ23における中央側緩斜サイプ41、中央側片流れ溝42、連続サイプ43から構成される組の、タイヤ周方向における形成ピッチは、外側メディエイトリブ24における外側緩斜サイプ311、外側片流れ溝312、分断サイプ32から構成される組の、タイヤ周方向における形成ピッチと一致しているが、不一致とすることもできる。
【0083】
−前記実施形態の構成及び作用−
最後に、前記実施形態の構成及び当該構成により奏する作用についてまとめておく。本発明は、トレッド部Tにリブパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部Tは、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の主溝1と、前記主溝1により形成され、タイヤ周方向に延びる複数本のリブ2と、を備え、前記複数本のリブ2のうち少なくとも1本(外側メディエイトリブ24)には、細溝31がタイヤ周方向に間隔を置いて複数形成され、前記複数の細溝31のうち少なくとも1本に対応して分断サイプ32が形成され、前記細溝31は前記主溝1よりも溝幅が小さく、タイヤ周方向に略沿って延びる部分を有する溝であり、前記分断サイプ32は、断続的に形成された複数の穴部(小穴、短サイプ)321,322と、隣り合う前記穴部321,322の間に位置する中実部323と、を有し、前記穴部321,322と前記中実部323とは前記細溝31に交差する方向に配置されており、前記分断サイプ32は、前記細溝31に対して前記中実部323にて交差する。
【0084】
この構成によれば、分断サイプ32は細溝31に対して中実部323にて交差する。このため、分断サイプ32の形成により細溝31が形成された外側メディエイトリブ24の剛性を適切な大きさまで低下させることができる。加えて、外側メディエイトリブ24における細溝31の周辺領域が分断サイプ32により分断されずにつながった状態とできる。よって、タイヤが回転して分断サイプ32の形成された部分が路面に当たった際でも、前記つながった状態で路面に当たることから、分断された状態で路面に当たることに比べ、この当たった部分が分断サイプ32を境として異なる変形をすることを抑制できる。この結果、偏摩耗(特にヒール・アンド・トウ摩耗)の発生を抑制できる。
【0085】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記細溝31は少なくとも一部がサイプ(外側緩斜サイプ311)であり、前記細溝31及び前記分断サイプ32は、前記複数本のリブ2のうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道Eよりも車両外側に位置するリブ2(外側メディエイトリブ24)に形成された構成とすることもできる。
【0086】
この構成によれば、細溝31の少なくとも一部は溝幅が極細であるサイプ(外側緩斜サイプ311)であり、細溝31及び分断サイプ32は、前記車両外側に位置するリブ2(外側メディエイトリブ24)に形成されている。このため、外側メディエイトリブ24にて溝幅の大きな溝を形成した場合に比べ、少なくとも一部がサイプ(外側緩斜サイプ311)である細溝31が形成された外側メディエイトリブ24の剛性を適切に大きく保つことができる。よって、特に車両のコーナリング時に外側メディエイトリブ24の変形を抑制できる。結果として、操縦安定性を向上できる。
【0087】
また、前記複数本のリブ2のうち、タイヤ赤道Eに位置するリブ2(センターリブ2
3)には、タイヤ周方向に略沿って延びる中央側緩斜サイプ41と、前記中央側緩斜サイプ41に交差して延びる連続サイプ43と、がタイヤ周方向に間隔を置いて複数形成された構成とすることもできる。
【0088】
この構成によれば、前記と同様、外側メディエイトリブ24では細溝31が分断されずにつながった状態とできる。これに対し、センターリブ2
3では中央側緩斜サイプ41に連続サイプ43が交差することで、中央側緩斜サイプ41が分断された状態となっている。このため、センターリブ2
3については相対的に剛性を小さくできる。よって、センターリブ2
3の路面への接地性を良好にできるため、駆動力及び制動力の路面への伝達性を向上できる。また、剛性が相対的に小さい分振動吸収性が良好となる。このため、走行音(インパクトノイズ)を低減できる。
【0089】
また、前記中央側緩斜サイプ41は前記細溝31と略平行な部分を有する構成とすることもできる。この構成によれば、略平行な部分ではタイヤ周方向において剛性を均一とできるため、主溝13に面したリブ23,24の幅方向端部(溝際)につき、剛性差によって周方向の一部分が集中的に偏摩耗することを抑制できる。また、タイヤ(トレッド部T)を見る者に対し、デザイン上の統一感を与えることができる。
【0090】
また、前記細溝31は、第1溝部(外側緩斜サイプ)311と第2溝部312とを有し、前記第1溝部(外側緩斜サイプ)311は、前記細溝31に隣接する主溝1(最外主溝14)に対し3°〜20°で傾斜し、前記第2溝部312は、前記第1溝部(外側緩斜サイプ)311の一端311a、他端311bのうち少なくとも一方の端部と前記主溝1(最外主溝14)とを連結した構成とすることもできる。この構成によれば、第1溝部(外側緩斜サイプ)311が第2溝部312を介して主溝1(最外主溝14)に連結している。このため、第2溝部312を通して水を効率良く主溝1(最外主溝14)に流すことができる。よって、降雨時等で路面が濡れている場合(湿潤路)であっても、路面と細溝31が形成されたリブ2(外側メディエイトリブ24)との間に水膜ができにくく、摩擦力の低下を抑制できる。
【0091】
また、前記複数本のリブ2のうち、タイヤ幅方向における少なくとも一端側領域に位置するリブ2(最外側リブ25)に、タイヤ幅方向に略沿って延びる溝であって、タイヤ周方向に所定ピッチ(長さP)で複数形成された溝71,72を備え、前記第1溝部(外側緩斜サイプ)311のタイヤ周方向での長さ311Lは前記所定ピッチに相当する長さP以上である構成とすることもできる。この構成によれば、第1溝部(外側緩斜サイプ)311のタイヤ周方向での長さ311Lは前記所定ピッチに相当する長さP以上である。このように第1溝部(外側緩斜サイプ)311が長いため、細溝31が形成されたリブ2(外側メディエイトリブ24)に位置する水を速やかに第1溝部(外側緩斜サイプ)311へと導くことができる。
【0092】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記外側緩斜サイプ311は、前記一端311aが前記外側緩斜サイプ311の車両外側に隣接する主溝1(最外主溝14)に近づくように傾斜し、前記第2溝部312は、前記隣接する主溝1(最外主溝14)に接続された構成とすることもできる。この構成によれば、湿潤路において、外側緩斜サイプ311から第2溝部312を介した主溝1(最外主溝14)への排水がより良好になされる。
【0093】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記複数本のリブのうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道Eよりも車両内側に位置するリブ2(内側メディエイトリブ22)には、サイプまたは溝51〜54によって区画されたことで略F字状に形成されたF字状ブロック61がタイヤ周方向に隣り合うように複数位置し、前記各F字状ブロック61は、内側メディエイトリブ22のうちタイヤ赤道E寄りの領域にてタイヤ周方向に沿って延びる柱部611と、前記柱部611の周方向途中からタイヤ赤道Eと反対側に分岐する第1枝部612と、前記柱部611におけるタイヤ周方向の一端からタイヤ赤道Eと反対側に分岐する第2枝部613と、を有し、前記内側メディエイトリブ22には、隣り合う二つの前記F字状ブロック61,61のうち一方側のF字状ブロック61における第1枝部612と他方側のF字状ブロック61における第2枝部613とに挟まれるように第1小ブロック62が位置し、前記各F字状ブロック61における柱部611、第1枝部612、第2枝部613に挟まれるように第2小ブロック63が位置し、前記第1枝部612及び前記第2枝部613は剛性が相対的に大きく、前記第1小ブロック62及び前記第2小ブロック63は剛性が相対的に小さいものとすることもできる。
【0094】
この構成によれば、内側メディエイトリブ22において接地圧の大きな外側領域の剛性を大きくし、接地圧の小さな内側領域の剛性を小さくできる。このため、コーナリング(旋回)時において車両外側に位置するタイヤで、トレッド部における内側領域が外側領域に比べて接地圧が小さくなることに合わせた剛性差を実現できる。また、前記リブの内側領域の剛性を相対的に小さくできるため振動吸収性が良好であり、走行音(インパクトノイズ)を低減できる。
【0095】
また、内側メディエイトリブ22における内側領域では、第1枝部612及び第2枝部613は柱部611と一体であることから剛性が相対的に大きく、第1小ブロック62及び第2小ブロック63は剛性が相対的に小さい。この内側領域では、タイヤ周方向に、第1小ブロック62、第1枝部612、第2小ブロック63、第2枝部613の順に位置する。このため、この内側領域では、相対的な剛性に関し、タイヤ周方向に「小・大・小・大」と交互に規則正しく並ぶパターン構成となる。よって、例えば「大・小・小・大・大・小」と交互には並ばないパターン構成に比べると、タイヤ周方向の摩耗の均一化を図ることができる。
【0096】
また、本発明は、トレッドパターンがタイヤ赤道基準で非対称のタイヤであり、前記トレッド部Tはタイヤ周方向に延びる複数本の主溝1を備え、前記複数本の主溝1のうち、タイヤの車両装着時にタイヤ赤道Eから最も車両外側に離れて位置する最外主溝14は、他の主溝1よりも溝幅が小さい構成とすることもできる。この構成によれば、タイヤ赤道Eから最も車両外側に離れて位置する最外主溝14を挟む二つのリブ24,25の剛性を、他の主溝1を挟む二つのリブ2,2よりも相対的に大きくできる。よって、操縦安定性を向上できる。