【実施例】
【0016】
以下に、回転電機用のステータの製造方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の回転電機用のステータ1の製造方法においては、
図1、
図2に示すごとく、ステータコア2における複数のティース21のそれぞれに複数相のコイル3を1つずつ配置して、回転電機用のステータ1を製造する。
各相のコイル3は、角線導体301を複数回巻回して形成されたコイル本体31と、コイル本体31の一端においてステータコア2の軸方向一方側L1に引き出された一端部32と、コイル本体31の他端においてステータコア2の軸方向一方側L1に引き出された他端部33とを有している。各相のコイル3における一端部32は、同相のコイル3における他端部33に合わさるよう、他相のコイル3のコイル本体31に対するステータコア2の軸方向Lの外方を跨ぐ状態で、ステータコア2の軸方向Lに対して直交する方向に引き出されている。
【0017】
本例の製造方法においては、複数相のコイル3を、ステータコア2の周方向一方側C1に回ってティース21の1つずつに順番に配置するに当たり、
図6〜
図10に示すごとく、各相のコイル3における一端部32を、ステータコア2の軸方向Lに直交する方向(径方向及び周方向)から、ティース21に1つ前に配置された他相のコイル3における一端部32と他端部33との間に配置して、同相のコイル3における他端部33に合わせる。なお、
図6〜
図10においては、理解を容易にするために、ステータコア2及びコイル3の断面に対して、一端部32を実線で示している。
【0018】
以下に、本例の回転電機用のステータ1の製造方法につき、
図1〜
図10を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、本例のステータ1は、U相、V相、W相の3相のコイル3U,3V,3Wを、ステータコア2における複数のティース21に同じ配置順序で複数回繰り返し配置して形成されている。各相のコイル3は、一端部32と他端部33とによって互いに接合され、U相、V相、W相の連コイルを形成している。また、各相の連コイルはスター結線されており、各相の連コイルにおける一端部32には、各相のコイル3の一端部32が互いに接合された中性点34が形成され、各相の連コイルにおける他端部33には、外部に接続されるリード部35が形成されている。
【0019】
各相のコイル3を形成する角線導体301は、略矩形状の断面形状を有しており、銅材料等からなる導体層の外周を、樹脂材料等からなる被覆層によって被覆して形成されている。なお、角線導体301の断面形状は、互いに平行な平坦面を有する扁平形状とすることもできる。
本例の各相のコイル3は、角線導体301を複数回巻回して形成されたコイル本体31から、一端部32及び他端部33を引き出して形成された集中巻コイルである。
図3〜
図5に示すごとく、各相のコイル3は、ティース21の周方向両側に位置するスロット22に配置されるように、ティース21の外周に1つずつ単独で装着される。
【0020】
図1に示すごとく、各相のコイル3における一端部32は、各相のコイル3における径方向内側の端部から、ステータコア2の軸方向一方側L1において、軸方向端面201よりも外方に引き出された後、ステータコア2の軸方向Lに対して直交する方向に延びている。各相のコイル3における他端部33は、ステータコア2の軸方向一方側L1において、コイル3における径方向外側の端部から、ステータコア2の軸方向Lの外方に引き出されている。
本例の各相のコイル3における一端部32は、コイル本体31の巻き始め部分及び巻き終わり部分のいずれか一方から延びるリード部である。また、本例の各相のコイル3における他端部33は、コイル本体31の巻き始め部分及び巻き終わり部分の他方から延びるバスバー部である。
【0021】
図6に示すごとく、各相のコイル3におけるコイル本体31は、角線導体301が内外周に2段に重なる状態で巻回されて形成されている。なお、コイル本体31は、角線導体301が1段で巻回されて形成されていてもよく、角線導体301が内外周に3段以上に重なる状態で巻回されて形成されていてもよい。
【0022】
図3に示すごとく、ステータコア2における各ティース21は、内周側の端部の外径が最も縮小して形成されている。各相のコイル3のコイル本体31は、外周側に行くに連れて拡径する、四角環形状に形成されている。
各相のコイル3は、ステータコア2との絶縁を行う樹脂であるインシュレータ4の外周に配置される。インシュレータ4は、その外周にコイル本体31を保持し、ティース21に対して装着される。
【0023】
次に、各相のコイル3をステータコア2のティース21に配置する方法及び本例の作用効果につき説明する。
以下の説明において、コイル3A,3B,3C,3D,3E,3a,3b,3cは、いずれも各相のコイル3について便宜的につけた符号である。
本例においては、まず、
図3に示すごとく、ステータコア2に最後に配置されるコイル3Eを保持するためのインシュレータ4を、ティース21に装着しておく。そして、インシュレータ4の外周に保持された3相のコイル3A,3B,3C,3Dを、ステータコア2の周方向一方側C1に回ってティース21の1つずつに順番に配置する(
図2参照)。
【0024】
図3に示すごとく、ステータコア2に最初に配置されるコイル3Aは、他相のコイル3に干渉しない。そのため、このコイル3Aは、ステータコア2におけるティース21の内周側に対向させ、径方向に対して平行な状態で外周側に移動させて、ティース21に装着する。本例においては、ステータコア2に最初と最後に配置されるコイル3A,3Eは、中性点34を形成するためのものである。
【0025】
次いで、
図4に示すごとく、ステータコア2に対して2番目に配置されるコイル3Bも、最初に配置されるコイル3Aと同様に、径方向に対して平行な状態で外周側に移動させて、ティース21に装着する。本例においては、ステータコア2に2番目に配置されるコイル3Bは、中性点34を形成するためのものである。
次いで、
図5に示すごとく、ステータコア2に対して3番目に配置されるコイル3Cは、その一端部32を、既にステータコア2に配置された2番目のコイル3Bにおける一端部32と他端部33との間を通過させて、ティース21に配置する。
【0026】
そして、ステータコア2に対して、最後に配置されるコイル3を除いて4番目以降に配置されるコイル3D(以下、回り配置コイル3Dという。)がティース21に配置される状態を、
図6〜
図10を参照して段階的に説明する。
まず、
図6に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32の先端部321が、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側に配置する。
【0027】
次いで、
図7に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側において移動させる。
本例の回り配置コイル3Dは、その一端部32の先端部32
1が、ステータコア2の軸方向Lに直交する方向(径方向及び周方向)から、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に順次配置される。
【0028】
また、本例の回り配置コイル3Dは、ティース21の軸方向位置に合わせた軸方向位置にして、その一端部32が、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置される。言い換えれば、本例の回り配置コイル3Dは、その一端部32が、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aにおける一端部32と、ステータコア2の径方向視において重なる位置に配置された状態で、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置される。
【0029】
次いで、
図8に示すごとく、回り配置コイル3Dが保持されたインシュレータ4が、ティース21の先端部に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側において移動させる。このとき、回り配置コイル3Dは、ティース21の径方向に対して斜めにし、一端部32が引き出された側に位置する、コイル本体31の角線導体301の部分36から先に、ティース21に配置する。また、回り配置コイル3Dは、その一端部32を、他の2相のコイル3のコイル本体31に対する軸方向Lの外方を通過させるようにして、ティース21に配置する。
【0030】
次いで、
図9に示すごとく、インシュレータ4に保持された回り配置コイル3Dを回しながら、ティース21のさらに奥に配置する。このとき、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に3つ前に配置された同相のコイル3cの他端部33へ、径方向外側から近づく。
そして、
図10に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に3つ前に配置された同相のコイル3の他端部33に対して、径方向外側から合わさる。
【0031】
なお、3相のコイル3における各回り配置コイル3Dをステータコア2に配置した後には、ステータコア2に最後に配置されるコイル3Eを、最初にティース21に装着しておいたインシュレータ4に対して配置する。こうして、全ての3相のコイル3をステータコア2に対して配置する。
また、ステータコア2においては、互いに合わさった、同相の各コイル3の一端部32と他端部33、中性点34を形成する各一端部32、リード部35を形成する各他端部33について、溶接を行って接合することができる。
【0032】
このように、回り配置コイル3Dのステータコア2への配置の仕方により、各回り配置コイル3Dにおける一端部32が、ティース21に既に配置された他相のコイル3に干渉することを容易に防止することができる。また、この配置の仕方により、3相のコイル3間において、一端部32及び他端部33の形成位置を軸方向Lにずらす必要がなくなる。そのため、各相のコイル3における一端部32及び他端部33がステータコア2の軸方向端面201から突出する量を小さくすることができる。
【0033】
また、各相のコイル3における一端部32の折曲げ形状を、ステータコア2に配置する前に予め形成しておくことができる。これにより、ステータコア2に配置されたコイル3の折曲げ等の加工が不要になる。そのため、この理由によっても、各相のコイル3における一端部32及び他端部33がステータコア2の軸方向端面201から突出する量を小さくすることができる。
【0034】
また、各相のコイル3における一端部32は、ステータコア2の軸方向一方側L1から、ティース21に1つ前に配置された他相のコイル3における一端部32と他端部33との間に配置することもできる。この場合、回り配置コイル3Dにおける一端部32は、その先端部321又はその先端部321からその基端部までのいずれかの部位を、ステータコア2の軸方向一方側L1から、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に配置することができる(
図6、
図7参照)。
また、この場合には、回り配置コイル3Dは、ステータコア2のティース21に対する軸方向一方側L1にずれた位置に配置して、この位置のままティース21に近づける。その後、この回り配置コイル3Dは、ステータコア2の軸方向他方側に移動させて、ステータコア2のティース21に正対する軸方向位置にすることができる。
【0035】
それ故、本例の回転電機用のステータ1の製造方法によれば、ステータコア2に対するコイル3の配置が容易であり、ステータ1全体の軸方向Lの長さを短くすることができる。