特許第6060017号(P6060017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060017
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】回転電機用のステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20161226BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20161226BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H02K15/085
   H02K15/04 A
   H02K3/04 J
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73204(P2013-73204)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197963(P2014-197963A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴憲
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真吾
(72)【発明者】
【氏名】川浦 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 哲也
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−141962(JP,A)
【文献】 特開2008−220093(JP,A)
【文献】 特開2012−223056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアにおける複数のティースのそれぞれに複数相のコイルを1つずつ配置して、回転電機用のステータを製造する方法であって、
各相の上記コイルは、角線導体を複数回巻回して形成されたコイル本体と、該コイル本体の一端において上記ステータコアの軸方向一方側に引き出される一端部と、上記コイル本体の他端において上記ステータコアの軸方向一方側に引き出される他端部とを有しており、
各相の上記コイルにおける上記一端部は、他相の上記コイルの上記コイル本体に対する上記ステータコアの軸方向外方を跨いで、同相の上記コイルにおける上記他端部に合わさるよう、上記ステータコアの軸方向に対して直交する方向に引き出されており、
複数相の上記コイルを、上記ステータコアの周方向一方側に回って上記ティースの1つずつに順番に配置するに当たり、各相の上記コイルにおける上記一端部を、上記ステータコアの軸方向一方側から、又は上記ステータコアの軸方向に直交する方向から、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置するとともに、各相の上記コイルの軸方向位置を、上記ティースの軸方向位置に合わせ、
次いで、各相の上記コイルにおける上記一端部が、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置された状態を維持したままで、各相の上記コイルにおける、上記一端部が引き出された側に位置する、上記コイル本体の上記角線導体の部分から先に、上記ティースに配置し、
次いで、上記状態を維持したままで、各相の上記コイルを、上記ステータコアの軸方向に沿った仮想軸線を中心に回しながら上記ティースのさらに奥に配置するとともに、各相の上記コイルにおける上記一端部を、同相の上記コイルにおける上記他端部に対して、径方向外側から合わせることを特徴とする回転電機用のステータの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の回転電機用のステータの製造方法において、複数相の上記コイルは3相のコイルであり、
各相の上記コイルを上記ティースに配置する際には、該各相のコイルにおける上記一端部を、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間、及び上記ティースに2つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置して、同相の上記コイルにおける上記他端部に合わせることを特徴とする回転電機用のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアにおける複数のティースに複数相のコイルを配置して、回転電機用のステータを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機用のステータを製造する方法としては、一体形状のステータコアにコイルを配置する方法、ステータコアを分割して形成した分割コアにコイルを配置し、このコイルが配置された分割コアを互いに連結する方法等がある。また、コイルは、複数本の細径のマグネットワイヤをまとめて巻回して形成する場合と、1本の角線導体を巻回して形成する場合とがある。
例えば、特許文献1においては、固定子コアにおける複数のティースに、矩形断面の平角導体を曲げ加工して形成された複数の台形コイルを挿入するモータ固定子の製造装置が開示されている。この製造装置は、台形コイルを斜め変形状態に規制するコイル形状規制部材を有している。そして、コイル形状規制部材によって巻きひねりを防止した状態で、台形コイルをティースに挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−257410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイル本体の端部から他のコイル本体の端部まで渡る渡り線を、予めコイル本体に形成しておく場合には、ステータコアに対して、コイル本体と渡り線とを有するコイルを配置することが困難になる。この場合、コイルの配置の仕方に工夫をしなければ、ステータコアにコイルを配置する際に、渡り線が他のコイルに干渉してしまう。
なお、上記特許文献1の製造装置においては、渡り線が形成されていない台形コイルをステータコアへ配置することが示されているだけである。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、ステータコアに対するコイルの配置が容易であり、ステータ全体の軸方向長さを短くすることができる回転電機用のステータの製造方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ステータコアにおける複数のティースのそれぞれに複数相のコイルを1つずつ配置して、回転電機用のステータを製造する方法であって、
各相の上記コイルは、角線導体を複数回巻回して形成されたコイル本体と、該コイル本体の一端において上記ステータコアの軸方向一方側に引き出される一端部と、上記コイル本体の他端において上記ステータコアの軸方向一方側に引き出される他端部とを有しており、
各相の上記コイルにおける上記一端部は、他相の上記コイルの上記コイル本体に対する上記ステータコアの軸方向外方を跨いで、同相の上記コイルにおける上記他端部に合わさるよう、上記ステータコアの軸方向に対して直交する方向に引き出されており、
複数相の上記コイルを、上記ステータコアの周方向一方側に回って上記ティースの1つずつに順番に配置するに当たり、各相の上記コイルにおける上記一端部を、上記ステータコアの軸方向一方側から、又は上記ステータコアの軸方向に直交する方向から、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置するとともに、各相の上記コイルの軸方向位置を、上記ティースの軸方向位置に合わせ、
次いで、各相の上記コイルにおける上記一端部が、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置された状態を維持したままで、各相の上記コイルにおける、上記一端部が引き出された側に位置する、上記コイル本体の上記角線導体の部分から先に、上記ティースに配置し、
次いで、上記状態を維持したままで、各相の上記コイルを、上記ステータコアの軸方向に沿った仮想軸線を中心に回しながら上記ティースのさらに奥に配置するとともに、各相の上記コイルにおける上記一端部を、同相の上記コイルにおける上記他端部に対して、径方向外側から合わせることを特徴とする回転電機用のステータの製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記回転電機用のステータの製造方法においては、ステータコアの軸方向に対して直交する方向に引き出された一端部を有するコイルを、ステータコアに対して容易に配置する工夫をしている。
本製造方法においては、複数相のコイルを、ステータコアの周方向一方側に回ってティースの1つずつに順番に配置する。このとき、ステータコアに対して、最初に配置されるコイルと最後に配置されるコイルとを除く、少なくともいずれかのコイルは、次のようにティースに配置する。すなわち、この少なくともいずれかのコイルについては、その一端部を、ステータコアの軸方向一方側から、又はステータコアの軸方向に直交する方向(径方向及び周方向)から、ティースに1つ前に配置された他相のコイルにおける一端部と他端部との間に配置して、ティースに配置する。このとき、各相のコイルにおける一端部と、ティースに1つ前に配置された他相のコイルにおける一端部とは、ステータコアの径方向視において重なる位置に配置される。
【0008】
これにより、ティースに配置する際に、各相のコイルにおける一端部が、ティースに既に配置された他相のコイルに干渉することを容易に防止することができる。また、この配置の仕方により、複数相のコイル間において、一端部及び他端部の形成位置を軸方向にずらす必要がなくなる。そのため、各相のコイルにおける一端部及び他端部がステータコアの軸方向端面から突出する量を小さくすることができる。
【0009】
また、各相のコイルにおける一端部の折曲げ形状を、ステータコアに配置する前に予め形成しておくことができる。これにより、ステータコアに配置されたコイルの折曲げ等の加工が不要になる。そのため、この理由によっても、各相のコイルにおける一端部及び他端部がステータコアの軸方向端面から突出する量を小さくすることができる。
なお、ティースに配置された各相のコイルは、その一端部が、同相のコイルにおける他端部に合わさる。そして、溶接等によって、同相のコイルにおける一端部と他端部とが接合される。この接合は、ティースに各相のコイルを配置するごとに行うことができ、ティースに全てのコイルを配置した後に行うこともできる。また、この接合は、ティースにコイルを配置した後の適宜タイミングで行うこともできる。また、コイルをティースに配置することの意味は、コイルをティース間のスロットに配置することの意味と同じである。
【0010】
それ故、上記回転電機用のステータの製造方法によれば、ステータコアに対するコイルの配置が容易であり、ステータ全体の軸方向長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、ステータを示す斜視図。
図2】実施例にかかる、ステータを示す平面図。
図3】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を示す平面図。
図4】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を示す平面図。
図5】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を示す平面図。
図6】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を拡大して示す説明図。
図7】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を拡大して示す説明図。
図8】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を拡大して示す説明図。
図9】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を拡大して示す説明図。
図10】実施例にかかる、ステータコアにコイルを配置する状態を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した回転電機用のステータの製造方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記回転電機用のステータの製造方法において、各相の上記コイルにおける上記一端部は、コイルの巻き始め部分及び巻き終わり部分のいずれか一方から延びるリード部とすることができる。また、各相の上記コイルにおける上記他端部は、コイルの巻き始め部分及び巻き終わり部分の他方から延びるバスバー部とすることができる。
また、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置する、各相の上記コイルにおける上記一端部の部位は、その先端部とすることができ、先端部から基端部までのいずれかの部位とすることもできる。
また、上記回転電機用のステータの製造方法は、上記ステータコアに最後に配置されるコイルを除く全てのコイルに適用することができる。また、この製造方法は、上記ステータコアに最後に配置されるコイルを除くいずれかのコイルにのみ適用することもできる。
【0013】
また、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に上記一端部を配置する各相の上記コイルは、上記一端部が引き出された側に位置する、上記コイル本体の上記角線導体の部分から先に、上記ティースに配置する。
これにより、各相のコイルをティースに配置する際に、この各相のコイルがティースに干渉することを容易に避けることができる。また、ティース間のスロットにおいて角線導体が占める体積の割合を増やすことができる。
【0014】
また、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置する、各相の上記コイルにおける上記一端部は、同相の上記コイルにおける上記他端部に対する径方向外側から該他端部に合わせる。
これにより、各相のコイルにおける一端部が、ステータコアの軸方向端面の外方に引き出される量をできるだけ小さくして、各相のコイルをステータコアのティースに容易に配置することができる。
【0015】
また、複数相の上記コイルは3相のコイルであり、各相の上記コイルを上記ティースに配置する際には、該各相のコイルにおける上記一端部を、上記ティースに1つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間、及び上記ティースに2つ前に配置された他相の上記コイルにおける上記一端部と上記他端部との間に配置して、同相の上記コイルにおける上記他端部に合わせることができる(請求項)。
この場合には、3相のコイルをステータコアに配置して、3相回転電機用のステータを容易に製造することができる。
【実施例】
【0016】
以下に、回転電機用のステータの製造方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の回転電機用のステータ1の製造方法においては、図1図2に示すごとく、ステータコア2における複数のティース21のそれぞれに複数相のコイル3を1つずつ配置して、回転電機用のステータ1を製造する。
各相のコイル3は、角線導体301を複数回巻回して形成されたコイル本体31と、コイル本体31の一端においてステータコア2の軸方向一方側L1に引き出された一端部32と、コイル本体31の他端においてステータコア2の軸方向一方側L1に引き出された他端部33とを有している。各相のコイル3における一端部32は、同相のコイル3における他端部33に合わさるよう、他相のコイル3のコイル本体31に対するステータコア2の軸方向Lの外方を跨ぐ状態で、ステータコア2の軸方向Lに対して直交する方向に引き出されている。
【0017】
本例の製造方法においては、複数相のコイル3を、ステータコア2の周方向一方側C1に回ってティース21の1つずつに順番に配置するに当たり、図6図10に示すごとく、各相のコイル3における一端部32を、ステータコア2の軸方向Lに直交する方向(径方向及び周方向)から、ティース21に1つ前に配置された他相のコイル3における一端部32と他端部33との間に配置して、同相のコイル3における他端部33に合わせる。なお、図6図10においては、理解を容易にするために、ステータコア2及びコイル3の断面に対して、一端部32を実線で示している。
【0018】
以下に、本例の回転電機用のステータ1の製造方法につき、図1図10を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、本例のステータ1は、U相、V相、W相の3相のコイル3U,3V,3Wを、ステータコア2における複数のティース21に同じ配置順序で複数回繰り返し配置して形成されている。各相のコイル3は、一端部32と他端部33とによって互いに接合され、U相、V相、W相の連コイルを形成している。また、各相の連コイルはスター結線されており、各相の連コイルにおける一端部32には、各相のコイル3の一端部32が互いに接合された中性点34が形成され、各相の連コイルにおける他端部33には、外部に接続されるリード部35が形成されている。
【0019】
各相のコイル3を形成する角線導体301は、略矩形状の断面形状を有しており、銅材料等からなる導体層の外周を、樹脂材料等からなる被覆層によって被覆して形成されている。なお、角線導体301の断面形状は、互いに平行な平坦面を有する扁平形状とすることもできる。
本例の各相のコイル3は、角線導体301を複数回巻回して形成されたコイル本体31から、一端部32及び他端部33を引き出して形成された集中巻コイルである。図3図5に示すごとく、各相のコイル3は、ティース21の周方向両側に位置するスロット22に配置されるように、ティース21の外周に1つずつ単独で装着される。
【0020】
図1に示すごとく、各相のコイル3における一端部32は、各相のコイル3における径方向内側の端部から、ステータコア2の軸方向一方側L1において、軸方向端面201よりも外方に引き出された後、ステータコア2の軸方向Lに対して直交する方向に延びている。各相のコイル3における他端部33は、ステータコア2の軸方向一方側L1において、コイル3における径方向外側の端部から、ステータコア2の軸方向Lの外方に引き出されている。
本例の各相のコイル3における一端部32は、コイル本体31の巻き始め部分及び巻き終わり部分のいずれか一方から延びるリード部である。また、本例の各相のコイル3における他端部33は、コイル本体31の巻き始め部分及び巻き終わり部分の他方から延びるバスバー部である。
【0021】
図6に示すごとく、各相のコイル3におけるコイル本体31は、角線導体301が内外周に2段に重なる状態で巻回されて形成されている。なお、コイル本体31は、角線導体301が1段で巻回されて形成されていてもよく、角線導体301が内外周に3段以上に重なる状態で巻回されて形成されていてもよい。
【0022】
図3に示すごとく、ステータコア2における各ティース21は、内周側の端部の外径が最も縮小して形成されている。各相のコイル3のコイル本体31は、外周側に行くに連れて拡径する、四角環形状に形成されている。
各相のコイル3は、ステータコア2との絶縁を行う樹脂であるインシュレータ4の外周に配置される。インシュレータ4は、その外周にコイル本体31を保持し、ティース21に対して装着される。
【0023】
次に、各相のコイル3をステータコア2のティース21に配置する方法及び本例の作用効果につき説明する。
以下の説明において、コイル3A,3B,3C,3D,3E,3a,3b,3cは、いずれも各相のコイル3について便宜的につけた符号である。
本例においては、まず、図3に示すごとく、ステータコア2に最後に配置されるコイル3Eを保持するためのインシュレータ4を、ティース21に装着しておく。そして、インシュレータ4の外周に保持された3相のコイル3A,3B,3C,3Dを、ステータコア2の周方向一方側C1に回ってティース21の1つずつに順番に配置する(図2参照)。
【0024】
図3に示すごとく、ステータコア2に最初に配置されるコイル3Aは、他相のコイル3に干渉しない。そのため、このコイル3Aは、ステータコア2におけるティース21の内周側に対向させ、径方向に対して平行な状態で外周側に移動させて、ティース21に装着する。本例においては、ステータコア2に最初と最後に配置されるコイル3A,3Eは、中性点34を形成するためのものである。
【0025】
次いで、図4に示すごとく、ステータコア2に対して2番目に配置されるコイル3Bも、最初に配置されるコイル3Aと同様に、径方向に対して平行な状態で外周側に移動させて、ティース21に装着する。本例においては、ステータコア2に2番目に配置されるコイル3Bは、中性点34を形成するためのものである。
次いで、図5に示すごとく、ステータコア2に対して3番目に配置されるコイル3Cは、その一端部32を、既にステータコア2に配置された2番目のコイル3Bにおける一端部32と他端部33との間を通過させて、ティース21に配置する。
【0026】
そして、ステータコア2に対して、最後に配置されるコイル3を除いて4番目以降に配置されるコイル3D(以下、回り配置コイル3Dという。)がティース21に配置される状態を、図6図10を参照して段階的に説明する。
まず、図6に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32の先端部321が、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側に配置する。
【0027】
次いで、図7に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側において移動させる。
本例の回り配置コイル3Dは、その一端部32の先端部32が、ステータコア2の軸方向Lに直交する方向(径方向及び周方向)から、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に順次配置される。
【0028】
また、本例の回り配置コイル3Dは、ティース21の軸方向位置に合わせた軸方向位置にして、その一端部32が、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置される。言い換えれば、本例の回り配置コイル3Dは、その一端部32が、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aにおける一端部32と、ステータコア2の径方向視において重なる位置に配置された状態で、ティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間に配置される。
【0029】
次いで、図8に示すごとく、回り配置コイル3Dが保持されたインシュレータ4が、ティース21の先端部に配置されるように、この回り配置コイル3Dをステータコア2の内周側において移動させる。このとき、回り配置コイル3Dは、ティース21の径方向に対して斜めにし、一端部32が引き出された側に位置する、コイル本体31の角線導体301の部分36から先に、ティース21に配置する。また、回り配置コイル3Dは、その一端部32を、他の2相のコイル3のコイル本体31に対する軸方向Lの外方を通過させるようにして、ティース21に配置する。
【0030】
次いで、図9に示すごとく、インシュレータ4に保持された回り配置コイル3Dを回しながら、ティース21のさらに奥に配置する。このとき、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に3つ前に配置された同相のコイル3cの他端部33へ、径方向外側から近づく。
そして、図10に示すごとく、回り配置コイル3Dの一端部32が、ステータコア2のティース21に3つ前に配置された同相のコイル3の他端部33に対して、径方向外側から合わさる。
【0031】
なお、3相のコイル3における各回り配置コイル3Dをステータコア2に配置した後には、ステータコア2に最後に配置されるコイル3Eを、最初にティース21に装着しておいたインシュレータ4に対して配置する。こうして、全ての3相のコイル3をステータコア2に対して配置する。
また、ステータコア2においては、互いに合わさった、同相の各コイル3の一端部32と他端部33、中性点34を形成する各一端部32、リード部35を形成する各他端部33について、溶接を行って接合することができる。
【0032】
このように、回り配置コイル3Dのステータコア2への配置の仕方により、各回り配置コイル3Dにおける一端部32が、ティース21に既に配置された他相のコイル3に干渉することを容易に防止することができる。また、この配置の仕方により、3相のコイル3間において、一端部32及び他端部33の形成位置を軸方向Lにずらす必要がなくなる。そのため、各相のコイル3における一端部32及び他端部33がステータコア2の軸方向端面201から突出する量を小さくすることができる。
【0033】
また、各相のコイル3における一端部32の折曲げ形状を、ステータコア2に配置する前に予め形成しておくことができる。これにより、ステータコア2に配置されたコイル3の折曲げ等の加工が不要になる。そのため、この理由によっても、各相のコイル3における一端部32及び他端部33がステータコア2の軸方向端面201から突出する量を小さくすることができる。
【0034】
また、各相のコイル3における一端部32は、ステータコア2の軸方向一方側L1から、ティース21に1つ前に配置された他相のコイル3における一端部32と他端部33との間に配置することもできる。この場合、回り配置コイル3Dにおける一端部32は、その先端部321又はその先端部321からその基端部までのいずれかの部位を、ステータコア2の軸方向一方側L1から、ステータコア2のティース21に1つ前に配置されたコイル3aの一端部32と他端部33との間、及びステータコア2のティース21に2つ前に配置されたコイル3bの一端部32と他端部33との間に配置することができる(図6図7参照)。
また、この場合には、回り配置コイル3Dは、ステータコア2のティース21に対する軸方向一方側L1にずれた位置に配置して、この位置のままティース21に近づける。その後、この回り配置コイル3Dは、ステータコア2の軸方向他方側に移動させて、ステータコア2のティース21に正対する軸方向位置にすることができる。
【0035】
それ故、本例の回転電機用のステータ1の製造方法によれば、ステータコア2に対するコイル3の配置が容易であり、ステータ1全体の軸方向Lの長さを短くすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 回転電機用のステータ
2 ステータコア
21 スロット
22 ティース
3 コイル
301 角線導体
31 コイル本体
32 一端部
33 他端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10