(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上述したようなノズル列を複数設けた記録ヘッドを用いて高速印刷を行う場合、記録媒体を高速で搬送しつつ複数のノズル列から順次にインクを吐出し、記録媒体の搬送方向に沿って着弾位置を相互に補完することがある。これは、インクジェット印刷の原理上、インクの吐出間隔を一定以上には短くできないことによるものである。
【0008】
ところが、このような場合に、印刷すべき画像中に白抜き部分が存在していると複数のノズル列の吐出間隔に乱れが生じて印刷結果に2本以上の白抜き線が出現する問題が生じていた。本来1本であるべき白抜き線が2本以上となって出現すると画像品質が著しく劣化する。このような特定パターンの問題に対しては、特許文献1〜特許文献3に提案される技術によっても品質改善することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、白抜き線を含む画像を高い品質にて印刷することができる画像記録装置および画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、インクの液滴を吐出する記録ヘッドに対して記録媒体を第1の方向に沿って相対移動させることにより前記記録媒体上に画像を形成する画像記録装置において、前記記録ヘッドは、インクの液滴を吐出して前記記録媒体上に前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って着弾させるように制御される複数の第1吐出口を有する第1吐出部と、インクの液滴を吐出して前記記録媒体上に前記第2の方向に沿って着弾させるように制御される複数の第2吐出口を有する第2吐出部と、を備え、前記記録ヘッドに対して前記記録媒体を前記第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記移動手段によって相対移動される前記記録媒体上における前記第1吐出部による着弾位置と前記第2吐出部による着弾位置とが前記第1の方向に沿って交互となるように前記複数の第1吐出口および前記複数の第2吐出口の吐出を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の第1吐出口の少なくとも一部および前記複数の第2吐出口の少なくとも一部が一定周期でインクの液滴を吐出しているときに、前記複数の第1吐出口の少なくとも一部から液滴を吐出させない吐出休止状態として前記記録媒体に白抜き線を形成する直前または直後の前記複数の第2吐出口の少なくとも一部も吐出休止状態とすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像記録装置において、前記制御部は、前記記録媒体上における前記白抜き線を挟んで第1の画像よりも第2の画像の前記第2の方向に沿った長さが長い場合に、前記白抜き線に隣接する前記第2の画像の前記第2の方向に沿った全長について前記複数の第2吐出口の少なくとも一部を吐出休止状態とすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る画像記録装置において、前記制御部は、前記記録媒体上に形成する画像の画像データから前記白抜き線に対応する1画素分の白抜き領域を検出する白抜き線検出部と、前記画像データの前記白抜き領域を2画素分に拡張するフィルタ処理部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る画像記録装置において、前記記録ヘッドには、前記複数の第1吐出口が少なくとも1列に配列されるとともに、前記複数の第1吐出口とは異なる列に、前記複数の第2吐出口が少なくとも1列に配列されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、インクの液滴を吐出する記録ヘッドに対して記録媒体を第1の方向に沿って相対移動させることにより前記記録媒体上に画像を形成する画像記録方法において、前記記録ヘッドに対して前記記録媒体を前記第1の方向の方向に相対移動させる移動工程と、前記記録媒体を相対移動させつつ、前記記録ヘッドの第1吐出部が備える複数の第1吐出口からインクの液滴を吐出して前記記録媒体上に前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って着弾させる第1吐出工程と、前記記録媒体を相対移動させつつ、前記記録ヘッドの第2吐出部が備える複数の第2吐出口からインクの液滴を吐出して前記記録媒体上に前記第2の方向に沿って着弾させる第2吐出工程と、を備え、相対移動される前記記録媒体上における前記第1吐出部による着弾位置と前記第2吐出部による着弾位置とが前記第1の方向に沿って交互になるとともに、前記複数の第1吐出口の少なくとも一部および前記複数の第2吐出口の少なくとも一部が一定周期でインクの液滴を吐出しているときに、前記複数の第1吐出口の少なくとも一部から液滴を吐出させない吐出休止状態として前記記録媒体に白抜き線を形成する直前または直後の前記複数の第2吐出口の少なくとも一部も吐出休止状態とすることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る画像記録方法において、前記記録媒体上における前記白抜き線を挟んで第1の画像よりも第2の画像の前記第2の方向に沿った長さが長い場合に、前記白抜き線に隣接する前記第2の画像の前記第2の方向に沿った全長について前記複数の第2吐出口の少なくとも一部を吐出休止状態とすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項5または請求項6の発明に係る画像記録方法において、前記記録媒体上に形成する画像の画像データから前記白抜き線に対応する1画素分の白抜き領域を検出し、前記画像データの前記白抜き領域を2画素分に拡張することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項4の発明によれば、複数の第1吐出口の少なくとも一部および複数の第2吐出口の少なくとも一部が一定周期でインクの液滴を吐出しているときに、複数の第1吐出口の少なくとも一部から液滴を吐出させない吐出休止状態として記録媒体に白抜き線を形成する直前または直後の複数の第2吐出口の少なくとも一部も吐出休止状態とするため、吐出再開時に第1および第2吐出口の双方のインクの着弾位置が揃って同程度に目標位置からずれるため、一方のみがずれることに起因した白抜き線の二重化を抑制することができ、白抜き線を含む画像を高い品質にて印刷することができる。
【0018】
特に、請求項2の発明によれば、記録媒体上における白抜き線を挟んで第1の画像よりも第2の画像の第2の方向に沿った長さが長い場合に、白抜き線に隣接する第2の画像の第2の方向に沿った全長について複数の第2吐出口の少なくとも一部を吐出休止状態とするため、第2画像の太さを均一として視認性を良好にすることができる。
【0019】
請求項5から請求項7の発明によれば、複数の第1吐出口の少なくとも一部および複数の第2吐出口の少なくとも一部が一定周期でインクの液滴を吐出しているときに、複数の第1吐出口の少なくとも一部から液滴を吐出させない吐出休止状態として記録媒体に白抜き線を形成する直前または直後の複数の第2吐出口の少なくとも一部も吐出休止状態とするため、吐出再開時に第1および第2吐出口の双方のインクの着弾位置が揃って同程度に目標位置からずれるため、一方のみがずれることに起因した白抜き線の二重化を抑制することができ、白抜き線を含む画像を高い品質にて印刷することができる。
【0020】
特に、請求項6の発明によれば、記録媒体上における白抜き線を挟んで第1の画像よりも第2の画像の第2の方向に沿った長さが長い場合に、白抜き線に隣接する第2の画像の第2の方向に沿った全長について複数の第2吐出口の少なくとも一部を吐出休止状態とするため、第2画像の太さを均一として視認性を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明に係る画像記録装置1の全体概略構成を示す側面図である。この画像記録装置1は、一定速度で搬送される記録媒体5に対してインクの液滴を吐出して記録媒体5上に画像を形成するインクジェット印刷装置である。画像記録装置1は、主たる要素として、インクの液滴を生成して吐出する記録ヘッド10と、記録媒体5を一定速度で搬送する搬送部30と、これらが有する各駆動部を制御して画像形成を進行させる制御部90と、を備える。なお、
図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0024】
搬送部30は、巻出ローラ31および巻取ローラ32を備えている。巻出ローラ31には記録媒体5が巻回されている。記録媒体5としては、インクジェット印刷によって印刷可能な種々の媒体を採用することができるが、本実施形態では紙を用いている。巻取ローラ32は、駆動モータ33(
図4参照)によって回転されることにより、巻出ローラ31から送り出された記録媒体5を巻き取る。このようにして、搬送部30は、いわゆるロール・ツー・ロール(roll-to-roll)方式にて記録媒体5を一定速度で(+X)方向に搬送する。なお、巻出ローラ31は、別途の駆動モータによって巻取ローラ32とは独立に回転するものであっても良いし、記録媒体5の張力により巻取ローラ32に従動して回転するものであっても良い。また、搬送部30の搬送方式は、ロール・ツー・ロール方式に限定されるものではなく、インクジェット印刷装置に採用されている公知の種々の方式を採用することが可能である。
【0025】
記録ヘッド10は、搬送部30によって搬送される記録媒体5にインクの液滴を吐出する。記録ヘッド10から吐出するインクとしては、染料系インク、顔料系インク、水性インク、油性インク、UV硬化インクなど、インクジェット印刷に使用される公知の種々のものを用いることができる。
【0026】
図2は、記録ヘッド10の平面図である。
図2に示すように、本実施形態の記録ヘッド10は、記録媒体5の搬送方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)である記録媒体5の幅方向全域をカバーするフルラインヘッドである。よって、記録ヘッド10は、Y方向に沿って走査されることはなく、固定設置されている。固定された記録ヘッド10に対して記録媒体5が(+X)方向に搬送される。
【0027】
図3は、記録ヘッド10に設けられたノズルの配置構成を示す図である。記録ヘッド10の底面(記録媒体5と対向する面)には、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11x、16a,16b,16c,・・・,16xが形設されている。記録ヘッド10には、Y方向に沿ってノズル列が2列形成されており、そのうちの第1のノズル列が第1吐出部12であり、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xを有する。また、第2のノズル列が第2吐出部17であり、複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xを有する。なお、第1吐出部12が備えるノズル11a,11b,11c,・・・,11xを特に区別しない場合にはノズル11と総称する。同様に、第2吐出部17が備えるノズル16a,16b,16c,・・・,16xを特に区別しない場合にはノズル16と総称する。
図3では、識別の目的で、ノズル11には斜線を付し、ノズル16は白抜きとしている。
【0028】
図3に示すように、本実施形態では、第1吐出部12の複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xと第2吐出部17の複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xとが千鳥状に配置されている。すなわち、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xと複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xとは、記録媒体5の搬送方向と直交する方向に沿って異なるノズル列に配置されるとともに、同方向に沿って交互となるように配置されている。第1吐出部12および第2吐出部17のそれぞれにおいて、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xおよび複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xが配置される個数および間隔(ピッチ)は、記録媒体5の幅および画像形成の解像度に応じて適宜のものとすることができる。
【0029】
記録ヘッド10のノズル11およびノズル16のそれぞれは、いわゆるインクジェットノズルであり、インクの液滴を生成して吐出する。ノズル11,16は、ピエゾ素子(圧電素子)に電圧を加えて変形させてインクの液滴を吐出するピエゾ方式であっても良いし、ヒータに通電してインクを加熱することによってインクの液滴を吐出するサーマル方式であっても良い(本実施形態ではピエゾ方式を採用している)。
【0030】
図4は、制御部90による制御機構を示すブロック図である。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部90には、搬送部30の駆動モータ33および記録ヘッド10のノズル11,16などが電気的に接続されている。駆動モータ33およびノズル11,16は制御部90によって駆動が制御される。なお、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xおよび複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xのそれぞれが制御部90によって個別に制御される。
【0031】
また、制御部90には、白抜き線検出部91およびフィルタ処理部92が設けられている。白抜き線検出部91およびフィルタ処理部92は、制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。白抜き線検出部91およびフィルタ処理部92の動作内容については、さらに後述する。
【0032】
次に、上記構成を有する画像記録装置1における処理動作について説明する。まず、記録ヘッド10による基本的な印刷処理について説明する。
図5は、記録ヘッド10による印刷処理を模式的に示す図である。搬送部30によって一定速度で搬送される記録媒体5に対して記録ヘッド10からインクの液滴を吐出することにより印刷処理が進行する。記録媒体5は、
図5に付した矢印の向きに搬送される(
図6,7,12,17において同じ)。記録ヘッド10のノズル11およびノズル16は、一定周期でインクの液滴を吐出する。ノズル11およびノズル16がインクを吐出することが出来る最短の周期はノズル構造によって規定されおり、それよりも短い間隔でインクの液滴を吐出することはできない。
【0033】
従って、高速印刷を行うべく、記録媒体5の搬送速度を高めた場合には、最短周期でインクを吐出したとしてもノズル11(またはノズル16)のみでは記録媒体5の搬送方向に沿って連続してインクを着弾させることができず、一定間隔を空けて着弾することとなる(いわゆるインターレース)。このため、ノズル11とノズル16とは最短周期の半周期だけずれたタイミングで交互にインクの液滴を吐出する。このようにすれば、記録媒体5の搬送方向に沿って連続してインクを着弾させることができ、高速印刷が可能となる。なお、
図5において、ノズル11による着弾領域は斜線を付した円で示し、ノズル16による着弾領域は白抜きの円で示している。
【0034】
ここで、ノズル11およびノズル16は、一定周期で常にインクの液滴を吐出し続けるものではなく、印刷すべき画像の形状に応じてインクの吐出を停止することもある。例えば、印刷すべき画像にY方向に沿った白抜き線が存在する場合には、ノズル11またはノズル16がインクの吐出を一回分休止する。
【0035】
ところが、一定周期でインクの液滴を吐出し続けるているノズル11(またはノズル16)が一回分吐出を休止してから再度吐出を開始すると、その再開時のインクの吐出速度が変化するという現象が生じる。すなわち、ノズル11(またはノズル16)が一定周期でインクの液滴を吐出し続けているときには一定速度で液滴が吐出されるのであるが、一回分吐出を休止することによってノズル内の圧力状態に変動が生じて吐出を再開したときのインクの液滴の吐出速度が変化するのである。
【0036】
図6は、吐出再開時にインクの吐出速度が遅くなった場合の印刷処理を模式的に示す図である。この例では、ノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出した後、第2吐出部17のノズル16が一回分の吐出を休止し、その後再びノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出して白抜き線SP1を形成する。すなわち、ノズル11が一定周期でインクの液滴を吐出し続けるのに対して、ノズル16は一回分の吐出を休止してから吐出を再開する。しかし、一定周期で続けてインクの液滴を吐出し続けるノズル11は同じ吐出速度でインクの吐出を継続するものの、一回分の吐出を休止したノズル16についてはノズル内の圧力変動に起因して吐出再開直後に吐出速度が低下している。このため、ノズル11から吐出されたインクの液滴は目標位置に正確に着弾する一方で、吐出再開直後のノズル16から吐出されたインクの液滴は目標とする着弾位置から後方にずれて着弾することとなり、その着弾位置は直後にノズル11から吐出されたインクの着弾位置とオーバーラップする。その結果、
図6に示すように、予定されていない位置に白抜き線SP2が形成されることとなり、白抜き線が二重化されることとなる。
【0037】
一方、
図7は、吐出再開時にインクの吐出速度が速くなった場合の印刷処理を模式的に示す図である。この例においても、ノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出した後、第2吐出部17のノズル16が一回分の吐出を休止し、その後再びノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出して白抜き線SP1を形成する。一定周期で続けてインクの液滴を吐出し続けるノズル11は同じ吐出速度でインクの吐出を継続するものの、一回分の吐出を休止したノズル16についてはノズル内の圧力変動に起因して吐出再開直後に吐出速度が速くなっている。このため、ノズル11から吐出されたインクの液滴は目標位置に正確に着弾する一方で、吐出再開直後のノズル16から吐出されたインクの液滴は目標とする着弾位置から前方にずれて着弾することとなり、その着弾位置は直前にノズル11から吐出されたインクの着弾位置とオーバーラップする。その結果、
図7に示すように、予定されていない位置に白抜き線SP3が形成されることとなり、やはり白抜き線が二重化されることとなる。なお、典型的には、吐出休止後に吐出を再開した場合には、
図6のようにインクの吐出速度が遅くなる。
【0038】
図6および
図7に示すように、予定されていない位置に白抜き線が出現して二重化されると印刷結果である画像の品質が低下することとなる。そこで、本実施形態においては、以下のようにして白抜き線の二重化を防止している。
【0039】
図8は、画像処理装置1における処理動作の手順を示すフローチャートである。まず、画像記録装置1の制御部90が記録媒体5上に形成すべき画像の画像データを取得する(ステップS1)。画像データは、オンラインで画像処理装置1に接続されたコンピュータシステムから供給されるようにしても良いし、CD−ROM等の媒体に記録されているものを読み込むようにしても良い。取得された画像データは制御部90の記憶部(例えば、メモリ)に格納される。
【0040】
次に、制御部90は、取得した画像データに対してRip(Raster Image Processor)処理を行う(ステップS2)。Rip処理は、ベクターデータで表現された画像データを画像記録装置1の解像度等に応じて記録ヘッド10による記録可能なラスターデータの形式に変換する処理である。また、Rip処理時には、画像データがC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色に分解され、それぞれの色ごとにラスターデータの形式に変換される(分版)。
【0041】
続いて、制御部90は、ラスターデータで表現された画像データに対して白抜き線の検出処理を行う(ステップS3)。具体的には、制御部90の白抜き線検出部91が画像データに含まれる1画素(pixel)分の白抜き領域を検出する。白抜き線検出部91は、画像データ上において、記録媒体5の搬送方向に対応した画素列に含まれる1画素分の白抜き領域を検出する。なお、白抜き領域であっても、記録媒体5の搬送方向に沿って2画素以上連続した領域については検出の対象外である。
【0042】
図9は、1画素分の白抜き領域を含む画像データの一例を示す図である。ここでの例は、黒色文字の画像データであり、黒色文字の場合は通常K(ブラック)の画像データに対して白抜き線の検出処理を行えば足りる。Rip処理後の画像データでは、画素毎に例えば8ビットの階調値が与えられており、黒色文字の場合はほとんどの画素が”0”(白)または”255”(黒)となる。
図9にて、斜線を付した画素の階調値は”255”であり、白抜きの画素の階調値は”0”である。なお、第1の閾値以上の階調値を黒とし、第2の閾値以下の階調値を白としても良い。
【0043】
第1実施形態では、制御部90の白抜き線検出部91は、
図9に示す画像データから1画素分の白抜き領域WP1を検出する。この画像データに基づいて忠実にインクの液滴が吐出されて画像形成がなされた場合には、白抜き領域WP1に対応して記録媒体5上には1ライン分の白抜き線が形成される。すなわち、白抜き線検出部91は、形成すべき画像の白抜き線に対応する1画素分の白抜き領域を画像データから検出するのである。なお、元の画像データが黒色以外を含む場合には、K(ブラック)以外の画像データに対しても白抜き線の検出処理を行っても良い。
【0044】
次に、制御部90は、ステップS3にて画像データから検出された1画素分の白抜き領域に対してフィルタ処理を行って白抜き領域を拡張する(ステップS4)。具体的には、制御部90のフィルタ処理部92が1画素分の白抜き領域を2画素分に拡張する。
図10は、フィルタ処理部92によるフィルタ処理を模式的に示す図である。第1実施形態においては、記録媒体5の搬送方向に沿って1画素分の白抜き領域を中央に挟む5画素の領域PP1に対してフィルタFTを適用する。すなわち、1画素分の白抜き領域に隣接する2つの画素のうちの1つの画素(
図10では領域PP1の下から2つめの画素)の階調値に0をかけ、それ以外の画素の階調値には1をかけるフィルタ処理を行う。0をかけられた画素の階調値は0となり、1をかけられた画素の階調値はフィルタ処理前の値が保持される。その結果、
図10に示すように、1画素分の白抜き領域が2画素分に拡張された5画素の領域PP2が得られる。なお、
図10の例では、フィルタFTの下から2つめの画素を0としていたが、これに代えて、上から2つめの画素を0とするようにしても良い。すなわち、1画素分の白抜き領域に隣接する2つの画素のうちのいずれか一方の階調値に0をかける処理であれば良い。
【0045】
制御部90のフィルタ処理部92は、ステップS3にて画像データから検出された全ての1画素分の白抜き領域に対して上記のようなフィルタ処理を行う。
図9に例示する画像データに対してフィルタ処理部92が上記のフィルタ処理を行うと、
図11に示す画像データが得られる。
図9に示した1画素分の白抜き領域WP1は、フィルタ処理によって2画素分の白抜き領域WP2に拡張されている。
【0046】
次に、制御部90は、フィルタ処理後の画像データに対して網掛け処理を行う(ステップS5)。網掛け処理は、ラスターデータから画素の階調値に応じて大きさの異なる網点(ハーフトーンドット)を生成する処理である。上述した白抜き線の検出処理およびフィルタ処理をCMYKの各色について行った場合には、網掛け処理も各色の画像データについて実行する。
【0047】
最後に、網掛け処理が施された画像データに従って記録媒体5に対する印刷処理を行う(ステップS6)。具体的には、制御部90が搬送部30に記録媒体5を一定速度で搬送させつつ、画像データに基づいて記録ヘッド10の各ノズルの吐出を制御することにより記録媒体5に対する印刷処理を進行させる。
【0048】
第1実施形態においては、印刷の前処理として、形成すべき画像の白抜き線に対応する1画素分の白抜き領域を画像データから検出し、その白抜き領域を2画素分に拡張している。従って、フィルタ処理後の画像データに従って制御部90が記録ヘッド10の吐出を制御すると、ノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出した後、ノズル11およびノズル16の双方がともに一回分の吐出を休止し、その後再びノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出することとなる。
【0049】
一回分の吐出を休止したノズル11およびノズル16には同様の圧力変動が生じ、吐出再開後に同程度の吐出速度の変化が生じる。このため、吐出再開直後のノズル11およびノズル16から吐出されたインクの液滴は目標位置から同程度にずれて記録媒体5に着弾することとなる。
【0050】
図12は、2画素分に拡張された白抜き領域を含む画像データに従った印刷処理を模式的に示す図である。この例では、ノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出した後、ノズル11およびノズル16の双方がともに一回分の吐出を休止し、その後再びノズル11およびノズル16が吐出を再開したときにはインクの吐出速度が遅くなっている。このため、一回分の吐出を休止して吐出を再開した直後のノズル11およびノズル16から吐出されたインクの液滴は目標とする着弾位置から同程度に後方にずれて着弾することとなる。その結果、
図12に示すように、1本の白抜き線SP5のみが形成され、白抜き線の二重化が抑制される。
【0051】
もっとも、元の画像データでは1画素分であった白抜き線が2画素分に拡張され、さらに吐出再開直後のノズル11およびノズル16から吐出されたインクの液滴が目標とする着弾位置から後方にずれて着弾するため、白抜き線が予定よりも太くなることとなる。しかしながら、インクジェット印刷の場合、記録媒体5にてインクのにじみが生じて白抜き線が細くなる傾向にあるため、白抜き線が2画素分以上に拡張されたとしても大きな問題とはならない。
【0052】
以上のように、第1実施形態においては、記録媒体5上に形成すべき画像の画像データから白抜き線に対応する1画素分の白抜き領域を検出し、その白抜き領域を2画素分に拡張している。そして、得られた画像データに従って記録ヘッド10の吐出を制御することにより、第1吐出部12のノズル11および第2吐出部17のノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出しているときに、ノズル16から液滴を吐出させない吐出休止状態として記録媒体5に白抜き線を形成する直前または直後のノズル11も吐出休止状態としている。これにより、吐出再開直後のノズル11およびノズル16から吐出されたインクの液滴が目標位置から同程度にずれて着弾し、白抜き線の二重化を抑制してその視認性を良好にするとともに、記録媒体5の搬送方向に沿って白抜き線の前後のエッジを明瞭なものとすることができる。その結果、白抜き線を含む画像を高い品質にて印刷することができる。
【0053】
なお、フィルタ処理部92が使用するフィルタFTが
図10に示す例のように下から2つめの画素を0としている場合には、ノズル16を吐出休止状態とするときの直前のノズル11を吐出休止状態とすることになる。一方、フィルタFTとして上から2つめの画素を0としたものを採用した場合には、ノズル16を吐出休止状態とするときの直後のノズル11を吐出休止状態とすることになる。また、上記の例では、ノズル16が吐出休止状態となるときにノズル11も吐出休止状態としていたが、これとは逆に、ノズル11が吐出休止状態となるときにノズル16を吐出休止状態とするようにしても良い。
【0054】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の画像記録装置の装置構成は第1実施形態と全く同じである。また、第2実施形態の画像記録装置における処理動作の手順も第1実施形態と概ね同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、画像の形状に応じてフィルタ処理の適用領域を拡張している点である。
【0055】
図13は、Rip処理後の画像データの他の例を示す図である。第1実施形態の
図9に示したのと同様に、第1画像IM1と第2画像IM2との間に1画素分の白抜き領域WP2が存在している。但し、
図13の例では、白抜き領域WP2の長手方向、つまり記録媒体5の幅方向(搬送方向と直交する方向)に沿った第2画像IM2の長さが第1画像IM1よりも長い。
【0056】
図13に示すような画像データに対してフィルタ処理部92が第1実施形態と同様のフィルタ処理を行うと、
図14に示すような画像データが得られることとなる。すなわち、
図13の如き画像データにおいて、1画素分の白抜き領域WP2をフィルタ処理によって単純に2画素分に拡張すると、第2画像IM2の太さが不均一となる。
図14に示す画像データに従って印刷処理を実行した場合には、白抜き線の二重化は抑制できるものの、記録媒体5上における第2画像IM2の太さが不均一となって画像品質が低下することとなる。
【0057】
そこで、第2実施形態においては、長い方の第2画像IM2にフィルタ処理によって階調値が0とされる画素が発生する場合に、記録媒体5の幅方向に沿った第2画像IM2の全長にわたって階調値が0となる画素を拡張している。すなわち、第1実施形態と同様のフィルタ処理によって長い方の第2画像IM2に生じる凹凸を平坦化している。具体的には、制御部90が1画素分の白抜き領域WP2を挟んで第1画像IM1よりも第2画像IM2の方が長いことを検出した場合には、フィルタ処理部92が記録媒体5の幅方向に沿った第2画像IM2の全長にわたってフィルタ処理を行う。
【0058】
このような処理を行うことによって、
図15に示すような画像データが得られる。
図15に示すように、第1画像IM1と第2画像IM2との間の白抜き領域が2画素分に拡張されるとともに、第2画像IM2の太さが均一とされている。
図15に示す画像データに従って記録媒体5に対する印刷処理を行うことにより、白抜き線の二重化を抑制するとともに、第2画像IM2の太さを均一として視認性を良好にすることができる。
【0059】
以上のように、第2実施形態においては、第1画像IM1と第2画像IM2との間に1画素分の白抜き領域WP2が存在し、かつ、記録媒体5の幅方向に沿った第2画像IM2の長さが第1画像IM1の長さよりも長い場合に、記録媒体5の幅方向に沿った第2画像IM2の全長にわたってフィルタ処理を行っている。すなわち、記録媒体5上における白抜き線を挟んで第1画像IM1よりも第2画像IM2のY方向に沿った長さが長い場合に、その白抜き線に隣接する第2画像IM2のY方向に沿った全長についてノズル11またはノズル16を吐出休止状態としている。なお、第1画像IM1の長さが第2画像IM2の長さよりも長い場合には、記録媒体5の幅方向に沿った第1画像IM1の全長にわたってフィルタ処理を行うことにより同様の処理結果を得ることができる。
【0060】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、記録ヘッド10に複数のノズル11およびノズル16を千鳥状に配置していたが、記録ヘッドに設けるノズルの形態はこれに限定されるものではない。
図16は、記録ヘッドに設けられたノズルの配置構成の他の例を示す図である。
図16に示す例では、記録ヘッド110の底面に、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11x、16a,16b,16c,・・・,16xが形設されている。記録ヘッド110には、Y方向に沿ってノズル列が2列形成されており、そのうちの第1のノズル列が第1吐出部12であり、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xを有する。また、第2のノズル列が第2吐出部17であり、複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xを有する。
【0061】
図16に示す記録ヘッド110においては、複数のノズル11およびノズル16が格子状に配置されている。すなわち、複数のノズル11a,11b,11c,・・・,11xと複数のノズル16a,16b,16c,・・・,16xとは、記録媒体5の搬送方向に沿っては同一線上に並んで配置されるとともに、搬送方向と直交する方向に沿っては異なるノズル列に配置される。
図16に示す記録ヘッド110においても、ノズル11とノズル16とは最短周期の半周期だけずれたタイミングで交互にインクの液滴を吐出する。この条件のもとで、ノズル11(またはノズル16)から液滴を吐出させない吐出休止状態として記録媒体5に白抜き線を形成する直前または直後のノズル16(またはノズル11)も吐出休止状態とすることにより上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、記録ヘッドへのノズルの配置は2列に限定されるものではなく、3列以上であっても良い。
図17は、記録ヘッドに設けられたノズルの配置構成の他の例を示す図である。
図17には、印刷処理の様子を示す模式図を併記している。記録ヘッド210には、複数のノズル11および複数のノズル16が形成されている。
図3と同様に、第1吐出部12の複数のノズル11には斜線を付し、第2吐出部17の複数のノズル16は白抜きとしている(第1吐出部12および第2吐出部17自体の図示は
図17では省略)。
【0063】
図17に示すように、この記録ヘッド210にはノズル11およびノズル16が合計8列形成されている。上記第1実施形態と同様に、ノズル11とノズル16とは最短周期の半周期だけずれたタイミングで交互にインクの液滴を吐出する。但し、
図17の記録ヘッド210では、全てのノズル11が同時にインクの液滴を吐出するのではなく、複数のノズル11が記録媒体5のY方向に沿って着弾位置が並ぶようにインクの液滴を吐出する。同様に、複数のノズル16が記録媒体5のY方向に沿って着弾位置が並ぶようにインクの液滴を吐出する。
【0064】
このように吐出を制御することにより、記録媒体5の搬送方向に沿って連続してインクを着弾させることができ、
図17の下段に示すような印刷処理結果を得られる。これを
図5と対比すると明らかなように、
図17の記録ヘッド210によってもノズル11およびノズル16を2列に配置した第1実施形態と同様の印刷処理結果が得られる。すなわち、ノズルの配置形態は異なるものの、
図17の記録ヘッド210は第1実施形態の記録ヘッド10(
図3)と同等の機能を有するものである。
図17のように、ノズル11およびノズル16を8列にわたって形設すれば、記録媒体5上に高い解像度で印刷する場合であっても、記録ヘッド210に形設するノズルのピッチには余裕を持たせることができる。
【0065】
図17に示す記録ヘッド210においても、ノズル11およびノズル16が一定周期で交互にインクの液滴を吐出しているときに、ノズル11(またはノズル16)から液滴を吐出させない吐出休止状態として記録媒体5に白抜き線を形成する直前または直後のノズル16(またはノズル11)も吐出休止状態とすることにより上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
要するに、本発明が適用可能な記録ヘッドは、インクの液滴を吐出して記録媒体5上に搬送方向と交差する方向に沿って着弾させるように制御される複数のノズルを2列以上にわたって形設しているものであれば良い。
【0067】
また、上記各実施形態においては、Rip処理後の画像データに対して白抜き線の検出処理およびフィルタ処理を行っていたが、網掛け処理後の画像データに対して白抜き線の検出処理およびフィルタ処理を行うようにしても良い。
【0068】
また、第1吐出部12の複数のノズル11および第2吐出部17の複数のノズル16の全てからインクの液滴を吐出する必要はなく、形成すべき画像の形状に応じて複数のノズル11および複数のノズル16の少なくとも一部からインクの液滴を吐出すれば良い。
【0069】
また、上記各実施形態においては、記録媒体5の幅方向全域をカバーするフルラインヘッドである記録ヘッド10を固定設置していたが、記録ヘッド10をX方向に沿って移動させるようにしても良い。すなわち、記録ヘッド10に対して記録媒体5をX方向に沿って相対移動させる形態であれば良い。
【0070】
また、上記各実施形態においては、記録ヘッド10に対して記録媒体5が1回通過するワンパス方式としていたが、記録媒体5が複数回通過するマルチパス方式であっても良い。
【0071】
また、上記各実施形態においては、記録媒体5として紙を採用していたが、これに限定されるものではなく、フィルムなどのインクジェット印刷可能な媒体であれば良い。