【実施例1】
【0009】
本実施例では、交差点上の4方向に撮像装置を配備し、車両の通過速度計算、車両のナンバープレートの情報の読み取り、直進・左折・右折などの車両の進行を把握する例を説明する。
【0010】
(システム構成)
図1は、本実施例の道路交通量と通過経路を把握するためのシステムの構成を示す図である。
【0011】
撮像部100は、夜間でも撮影可能なLED照明装置を搭載し、高速連写可能及び絞り調整可能な非蓄積型CMOSカメラ100−1から100−nから構成され車両撮影を提供する。1つの交差点には、4台のカメラが設けられている。
【0012】
画像情報処理装置200は、撮像部100に接続され、画像情報受信部201、画像情報処理部202、通過車両情報送信部203を有する。画像情報処理装置200は、いくつかの交差点における各画像を同時に処理し、所定の領域内に複数台設けられている。
【0013】
撮像部100と画像情報処理装置200は対となっており、各交差点に対応して複数対設置することができる。画像情報処理装置200は、4台のカメラからの画像情報に基づいて、予め定められた時間間隔で、当該交差点における通過車両情報を生成する。
【0014】
通過車両情報とは、車両の車番、車両の通過速度、車両の進行方向、車両に関する色・車種の情報、である。
【0015】
中央処理装置300は、ネットワークを介して画像情報処理装置200に接続され、通信処理装置301、通過車両情報蓄積装置302、通過車両情報データベース303、通過車両情報操作装置311を有し、所定の領域内の各交差点における通過車両情報に基づいて、総合的な交通流(道路交通量と各車両の通過経路)を把握する。
【0016】
通信処理装置301は複数の画像情報処理装置200からの通過車両情報を通信で受信することが可能である。
【0017】
本実施例の撮像部100で取得した画像から画像情報処理装置200で通過車両情報に変換し通過車両情報DB(データベース)303に格納される例を次に示す。
【0018】
図2は、撮像部100と画像情報処理装置200との対を交差点に設置した場合の設置例である。
【0019】
先ずシャッタースピードが固定されたカメラ100−1にて撮影された連続画像を画像情報受信部201にて受取り、画像情報処理部202に渡す。画像情報処理部202では1つのカメラに対し連続で撮影された画像の変化を検知し、設定した閾値以上の変化があれば車両の侵入と判定し、画像処理を行い、画像の移動量とシャッタースピードの関係から車両の速度を計算する。
【0020】
又、撮影した画像から車両のナンバープレートの位置を決定し、画像の文字認識からナンバープレートの記載内容を読取る。
【0021】
又、複数毎の画像の変化により車両の進行方向、すなわち車両画像が手前に移動した場合には直進、車両画像が左側に移動した場合には右折、車両画像が右側に移動した場合には左折と判断し、進行方向を決定する。
【0022】
又、撮影された画像の色により車色を、撮影された画像から画像処理によりその輪郭を抽出しトラック、バン、乗用車などの車種を判定する。
【0023】
以上の処理により得られた通過車両情報を通過車両情報送信部203へ渡す。
【0024】
通過車両情報送信部203では画像情報処理部202にてえられた通過車両情報を中央処理装置300に渡す。
【0025】
中央処理装置300は、所定領域内の複数個所に設けられた画像情報処理装置200から、各交差点における交通流(道路交通量と各車両の通過経路)の情報を受信する通信処理装置301、交通流の情報を通過車両情報DB303に蓄積する通過車両情報蓄積装置302、及び通過車両情報DB303に蓄積された交通流(道路交通量と各車両の通過経路)の情報に基づいて、1台の車両の速度を求めると共に、進行方向を決定し、更に、所定の領域内の複数の交差点における交通流の情報に基づいて、総合的な交通流を把握して表示する。
【0026】
(1)1つの交差点における交通流の把握
(1−1)交差点における車両の移動状況のパターン
1つの交差点における車両の移動状況のパターンを
図3に示す。
図3の交差点の表示画面の上方向を例えば「北」とすると、下方向は「南」、右方向は「東」、左方向は「西」となる。
図3の(1)は車両が上り方向(北)に向かって交差点に近づき、直進(北)、右折(東)、又は左折(西)している状況を示している。
図3の(2)車両が下り方向(南)に向かって交差点に近づき、直進(南)、右折(西)、又は左折(東)している状況を示している。
図3の(3)は車両が右向き(東)に向かって交差点に近づき、直進(東)、右折(南)、又は左折(北)している状況を示している。
図3の(4)は車両が左向き(西)に向かって交差点に近づき、直進(西)、右折(北)、又は左折(南)している状況を示している。
【0027】
後述のように、表示画面上の上下左右の方向と実際の東西南北の方向との対応は、交差点ごとに異なっており、隣り合う交差点同志で車両の移動状況の情報を連携させる場合には、実際の東西南北の方向が一致するように、他方の表示画面を例えば時計方向に90度回転させて一方の表示画面に合わせる操作を行う必要がある。
【0028】
(1−2)交差点における車両の進行方向の判定
図1に示した通過車両情報DB303には、
図5に示す、交差点ごとの各車両の移動状況管理表のように、交差点ごとに、各車両の番号、車種、撮影日時(t
k)、車両の座標値(X
i,Y
i)を保持し、更に、各車両の進行方向や速度を求めるために、前の時刻t
k−1、現在時刻t
k、次の時刻t
k+1の3つの時刻について上記の情報を保持している。これら3つの時刻の間隔は、必ずしも撮影時刻の時間間隔と同じである必要はなく、各車両の進行方向や速度を求めるために必要な時間間隔であればよい。
【0029】
2つの時刻における座標値の比較により、車両の進行方向、及び速度を求める。但し、前の時刻t
k−1と現在時刻t
kとでは車両進行の向きは同一(直進)とし、前の時刻t
k−1と現在時刻t
kとにおける座標値の比較により、車両の直進の向きを決める。即ち、δX
i=X
i−X
i−1,δY
i=Y
i−Y
i−1としたとき、直進の場合は、δX
i=0(上り/下り)、又はδY
i=0(右向き/左向き)の何れかであり、
δX
i=0でY
i>Y
i−1ならば上り、Y
i<Y
i−1ならば下り、
δY
i=0でX
i>X
i−1ならば右向き、X
i<X
i−1ならば左向き、である。
【0030】
次に、現在時刻t
kと次の時刻t
k+1とにおける車両の座標値の比較により、進行方向の変化を求める。即ち、ΔX
i=X
i+1−X
i,ΔY
i=Y
i+1−Y
iとしたとき、ΔX
i及びΔY
iの符号に基づいて、
図4に示す進行方向判定表のように、進行方向の変化を求める。
図4の上段は上り又は下りの場合を示し、下段は右向き又は左向きの場合を示し、上記のδX
i=0、又はδY
i=0の何れかであり、前の時刻t
k−1と現在時刻t
kとにおける座標値の比較結果に応じて使い分ける。
【0031】
図4に示した進行方向判定表では、符号の組み合わせによって車両の進行方向を判定できるため、処理が容易である。
【0032】
図5に示した交差点ごとの各車両の移動状況管理表では、車両番号(ナンバープレートから読み取った番号)及び車種(白色の自家用車、黒色のトラックなど)を、撮影日時(t
k)や車両の座標値(X
i,Y
i)と併記しているが、
図1に示した撮影部100の撮影状況によっては、車両番号の一部分が他の車両の影になって読み取れない、又は、撮影画像から車種を判別できないなどの場合もあるが、そのような場合でも判明した情報だけでも
図5の管理表に保持する。例えば、車両番号として、「012-34**」、車種として、「**色の自家用車」などの情報を保持する。このような一部不明な情報は、他の撮影日時、あるいは、当該交差点の近傍の交差点における情報との比較における部分的な一致に基づいて、推定できる。このような推定結果に基づいて、一部不明な情報を補完することができる。
【0033】
また、当該車両の時刻t
iに対応する時刻t
i−1、又は、時刻t
i+1の座標データが交差点C
nの移動状況管理表に存在しない場合は、その交差点C
nの近傍の交差点C
n−1,又は、交差点C
n+1における移動状況管理表から当該車両に関する情報を抽出し、上記の進行方向判定表に基づいて車両進行の向きを判定する。
【0034】
(1−3)各車両の速度
各車両の速度Vは、現在時刻t
kと次の時刻t
k+1とにおける座標値から距離L=√((X
i+1−X
i)
2+( Y
i+1−Y
i)
2)を求め、V=L/(t
k+1−t
k)によって求められる。あるいは、車両が、交差点を直角に曲がるか、直進するかのいずれかであると仮定して、現在時刻t
kと次の時刻t
k+1とにおける座標値から距離Lを、L=|X
i+1−X
i|+|Y
i+1−Y
i|(=|ΔX
i|+|ΔY
i|)のように求め、車両が交差点を曲がるときの速度Vを、V=L/(t
k+1−t
k)のように求めることもできる。
【実施例2】
【0035】
実施例1では、1つの交差点における各車両の進行方向や速度を求める場合を説明したが、実施例2では、1つの交差点だけでなく、その交差点の近傍の交差点における交通流を参照しながら交通流を把握する、交差点相互の連携処理について説明する。即ち、本実施例では、当該交差点の北側、南側、西側、及び東側に隣接する他の交差点における交通流が、当該交差点に至る道路における交通流に与える影響を推定する処理について説明する。
【0036】
交差点には、通常の十字路だけでなくT字路もあるため、これらを区別する交差点の形状、交差点の中心座標で表した交差点の位置、当該交差点に隣接する他の交差点の番号を、交差点ごとに管理する、各交差点の形状及び場所と交差点相互の位置関係を関するテーブルを
図6に示す。
【0037】
交差点の形状で、交差点C
1の「十」は十字路、交差点C
2の「T(S)」は南側が行き止まりのT字路であることを示す。以下では、特に断らない場合は、交差点は十字路であるとする。
【0038】
図6に示した交差点相互の位置関係を
図7に示す。交差点C
1の北側には隣接する交差点は無く、南側に交差点C
4があり、西側に交差点C
6があり、東側に交差点C
2があることを示しており、交差点C
2は、南側行き止まりのT字路で、西側に交差点C
1が隣接していることを示している。
【0039】
交差点の形状では、2つの道路が直交していなくても、十字に近い形状であれば、形状を「十」とし、T字路についても同様に厳密な直線部分を有していなくてもT字に近い形状であれば、形状を「T(S)」などとする。T字路というよりは、直進可能部分がない交差点である三差路の場合は、2つの道路のなす角が90度以上の方向が南側であれば「Y(S)」などとし、便宜的に、上り/下り、右向き/左向き、更には、直進/右折/左折などの方向を割り当て、上記のT字路と同様に処理を行う。
【0040】
図10に示す五差路については、以下の方法で処理を行う。
【0041】
方法1:交通量の少ない、例えば、道路(4)を無視し、道路(1)、(2)、(3)及び(5)からなる十字路の交差点として上記のように処理する。
【0042】
方法2:交通量の少ない、例えば、道路(3)と(4)を、破線で示すような仮想的な道路(3)′にまとめて十字路を構成し、仮想的な道路(3)′を、元の道路(3)及び(4)に対応してA及びBに分けて
図4に示した進路方向の判定を行い、処理後に元の 道路(3)及び(4)に分ければ、実施例1における通常の十字路に対する処理手順をそのまま利用できる。但し、
図4に示した進行方向判定表では、直進/右折/左折を、直進A/右折A/左折A、直進B/右折B/左折Bに分ける。即ち、方法2では、破線で示すような仮想的な道路(3)′は、片道2車線の道路とみなして、実施例1における通常の十字路に対する処理手順を利用する。
【0043】
なお、本実施例における表示画面では、交差点相互の位置関係は東西南北の方向で区別し、各車両の進行方向は上り/下り/右向き/左向きの方向で区別する。従って、各車両の進行方向を、交差点相互の位置関係を示す東西南北と対応付ける場合、その対応付けは、各交差点の画面表示における方向と実際の方位との関係を示す
図9のように、各交差点によって異なる。従って、隣接する2つの交差点における交通流に関する情報を関連付ける際には、
図9に基づいて、交差点相互の位置関係は東西南北の方向を一致させる必要がある。例えば、車両が交差点C
1を画面上で下り方向に進んだ場合、C
1では下り方向はS(南)であるため、交差点C
1に隣接する交差点C
4では、表示画面上で、同じS(南)の方向に対応する左向き方向を関連付ける必要がある。その際、当該交差点に隣接する交差点がどれであるかは、
図6に示した交差点相互の位置関係から分かる。上記の情報を用いて道路の方向及び車両の進行方向を関連付けて、隣接している2つの交差点を通る道路の進行方向を特定することによって、特定の車両の移動経路を特定できる。
【0044】
図8は、
図9に示した、各交差点の画面表示における方向と実際の方位との関係に基づいて、隣接する交差点を通過しながら移動する各車両の移動状況を示した交通流の情報である。
【0045】
図8では、例えば、車両番号が「012-3456」の車両が交差点C
1を45km/hの速度で上り方向(北)から右折し(東)、約5分後に、交差点C
2を35km/hの速度で右向き(東)から左折して(北)いることを示している。
【0046】
以上に述べたように、
図6の交差点相互の位置関係、及び
図9の各交差点の画面表示における方向と実際の方位との関係を用いることにより、
図7に示した破線の矢印のように、特定の車両の移動経路を画面上に表示することができる。
【実施例3】
【0047】
実施例1及び2では、特定の(着目した)車両の交通流に関する情報について説明した。実施例3では、種々の方向から進行してきた複数の車両が交差点で合流して直線道路を進行する場合の交通流、特に交通量の推定処理について説明する。
【0048】
図11は、交差点Bで、右向き左折、上り直進、及び左向き右折の各車両が合流して、交差点Aに向かう直線道路を進行している状況を示す。
図11に示すような近傍の交差点における車両の合流パターンを
図12に示す。
図12は、直線道路における直進方向と、直線道路への合流に係る、近傍交差点における車両の進行方向の組との対応を示したものである。
【0049】
例えば、交差点Aに向かう上り方向の直線道路への合流に係る車両の進行方向は、上り直進、右向き左折、及び左向き右折であり、それぞれの交通流(交通量)の合計が、交差点Aに向かう上り方向の直線道路を進行する車両の台数となる。
【0050】
更に、交差点Aにおいて、
図3の、特に(1)に示したように直進/左折/右折の各車両台数を求め、このような処理を各交差点について繰り返すことにより、所定の領域内にある各交差点における交通流(道路交通量と各車両の通過経路)を把握することができる。
【0051】
また、当該交差点に、
図1に示す撮像部100及び画像情報処理装置200が無く、当該交差点に隣接する交差点には
図1に示す撮像部100及び画像情報処理装置200がある場合、隣接する交差点から、
図3に示したような、隣接交差点における車両の移動状況の情報を取得し、その情報に基づいて、当該交差点のように監視設備のない当該交差点における交通流を推定できる。
【0052】
例えば、
図6に示した交差点相互の位置関係の情報には、当該交差点のように監視設備のない交差点の情報も保持しておき、
図6の交差点相互の位置関係の情報に基づいて、当該交差点に隣接する複数の交差点におけるそれぞれの進行方向に対応した交通流(道路交通量)の値の平均値を用いて、当該交差点における交通流を推定する。例えば、当該交差点の北側に隣接する交差点における上り方向の直進の交通流と、当該交差点の南側に隣接する交差点における上り方向の直進の交通流との平均値を、当該交差点における上り方向の直進の交通流として推定する。(この推定方法では、当該交差点の西側及び東側に隣接する交差点からの影響は無視されている。)
以上の実施例1から3に示した処理により、道路上を走行する車両の速度のみならず、通過車両量及び交差点上における車両の進行方向を把握できるため、総合的な交通流を把握することが可能となる。