(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060091
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】車間距離制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20161226BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/00 624B
B60R21/00 624C
B60R21/00 624G
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-547392(P2013-547392)
(86)(22)【出願日】2010年12月29日
(65)【公表番号】特表2014-502759(P2014-502759A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】SE2010000321
(87)【国際公開番号】WO2012091637
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】500277711
【氏名又は名称】ボルボ ラストバグナー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】コールバリ,ペータ
(72)【発明者】
【氏名】サンドブローム,フレデリク
【審査官】
相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−102564(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/004963(WO,A1)
【文献】
特開平11−059355(JP,A)
【文献】
特開2006−160111(JP,A)
【文献】
特開2009−134455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00− 1/16
G01C 21/00−21/36
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)用の車間距離制御システムであって、
−装備車両(1)の予測経路及び隣接する経路で移動する複数の対象物(3、4、5)を同時に検知するように構成され、更に前記対象物(3、4、5)の各々の速度、及び前記対象物(3、4、5)の各々までの距離を継続的に監視するように構成された前方物体検知手段と、
−前記検知手段からの信号を処理して、前記装備車両(1)の前方を走行する車両(3、4、5)までの距離及び相対速度の情報を自身に提供し、更に、前記装備車両(1)の前方を走行する車両(3、4,5)までの距離及び相対速度の情報に基づいて速度制御信号を反復的に生成するように構成された処理手段と、
−前記処理手段からの前記制御信号に応答して前記装備車両(1)の速度を制御する手段と、を備え、
前記処理手段が更に、
前記装備車両(1)の前方を走行する車両(3、4、5)からなる車両群の挙動から仮想対象車両(6)の位置を決定し、
前記装備車両(1)から前記仮想対象車両(6)までの時間距離、前記装備車両(1)から前記仮想対象車両(6)までの距離及び前記仮想対象車両(6)の速度、前記車両群の距離の分散、ひいては前記車両群の車両密度、及び前記車両群内の位置の変動性を計算するように構成されることで、前記処理手段のアルゴリズムが上記パラメータから前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離の許容偏差を決定し、
前記処理手段が、前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離及び前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離の許容偏差に基づく前記装備車両(1)の速度を制御する前記手段への信号を生成するように構成され、前記仮想対象車両(6)は前記装備車両(1)の前方を走行する前記車両(3、4、5)とは異なる位置として計算され得る車間距離制御システム。
【請求項2】
前記処理手段により生成された、速度を制御する前記手段への前記信号が、所望の速度値を表す、請求項1に記載の車間距離制御システム。
【請求項3】
前記処理手段が、前記検知される車両群内の全ての対象物(3、4、5)の共分散を計算するように構成され、該共分散は前記仮想対象車両(6)の挙動を予測するためのアルゴリズムで使用される、請求項1又は2に記載の車間距離制御システム。
【請求項4】
前記仮想対象車両(6)が、エコドライブ特性を有するように導出される、請求項1乃至3のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項5】
前記物体検知手段が、前記検知される対象物(3、4、5)の各々の距離の値及び速度値を定めるためのレーダーユニット、又はLIDARユニット、又はカメラユニットを備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項6】
前記道路(2)の表面状態を測定するセンサが備えられる、請求項1乃至5のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項7】
前記処理手段からの前記制御信号に応答して前記装備車両(1)の速度を制御する前記手段が、エンジン制御手段とブレーキ制御手段を備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項8】
前記システムがプリクラッシュシステムに結合される、請求項1乃至7のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項9】
前記システムがナビゲーションシステムと組み合わされる、請求項1乃至8のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項10】
前記システムが更に、前記装備車両の横方向の車両を監視する手段を備える、請求項1乃至9のいずれかに記載の車間距離制御システム。
【請求項11】
車間距離制御システムを搭載した自動車(1)の速度を制御するための方法であって、
−装備車両(1)の予測経路と隣接経路で移動する複数の対象物(3、4、5)を、前方物体検知手段で同時に検知するステップと、
−前記対象物(3、4、5)の各々の速度及び前記対象物の各々までの距離を継続的に監視するステップと、
−前記検知手段からの信号を処理手段で処理して、前記装備車両(1)の前方を走行する車両(3、4、5)までの距離及び前記車両(3、4、5)の相対速度の情報を自身に提供するステップと、
−前記処理手段を使用して、前記装備車両(1)の前方を走行する前記車両(3、4、5)までの距離及び前記車両(3、4、5)の相対速度の前記情報に基づいて速度制御信号を反復的に生成するステップと、
−前記処理手段からの前記制御信号に応答して前記装備車両(1)の速度を制御するステップと、
を含み、
前記方法が更に、
−前記装備車両(1)の前方を走行する車両(3、4、5)からなる車両群の挙動から仮想対象車両(6)の位置を決定し、前記装備車両(1)から前記仮想対象車両(6)までの時間距離、前記装備車両(1)から前記仮想対象車両(6)までの距離及び前記仮想対象車両(6)の速度、前記車両群の車両距離の分散、ひいては前記車両群の車両密度、及び前記車両群の位置の変動性を計算するステップと、
−前記処理手段のアルゴリズムで上記パラメータから前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離の許容偏差を決定するステップと、
−前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離及び前記装備車両(1)と前記仮想対象車両(6)との間の時間距離の許容偏差に基づく前記装備車両(1)の速度を制御する手段への信号を前記処理手段で生成し、前記仮想対象車両(6)は前記装備車両(1)の前方を走行する前記車両(3、4、5)とは異なる位置として計算され得るステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記処理手段を使用して、検知される前記車両群内の全ての対象物(3、4、5)の共分散を計算するステップを更に含み、該共分散が前記仮想対象車両(6)の挙動を予測するための前記アルゴリズムで使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
レーダーユニット、又はLIDARユニット、又はカメラユニットを使用して、検知される前記対象物(3、4、5)の各々の距離の値及び速度値を定めるステップを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
センサ手段を使用して、前記道路(2)の表面状態を測定するステップを含む、請求項11乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ナビゲーションシステムからの情報を用いて対象車両の速度を予測するステップを含む、請求項11乃至14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装備車両の予測経路と隣接経路で移動する複数の対象物を同時に検知するように構成された前方物体検知手段を備える、自動車用車間距離制御システムに関する。この手段は更に、前記対象物の各々の速度及び距離を継続的に監視するように構成されている。
【0002】
本発明は更に、前記検知手段からの信号を処理して、装備車両の前方を走行する車両との距離及び相対速度の情報を提供するように構成された処理手段も備え、この処理手段は更に、装備車両の前方を走行する車両との距離及び相対速度の情報に基づいて、速度制御信号を反復的に生成するように構成されている。更に、処理手段からの制御信号に応答して装備車両の速度を制御する手段を備えている。
【0003】
本発明は更に、上記のシステムを搭載した装備車両の速度を適応させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、先行車までの時間距離(タイムギャップ)を保つように車両を快適に制御するために利用できる複数の車間距離制御システム、又は自律型車間距離制御システムが存在する。これらのシステムは一般に、車両が別の車両に近づくと減速し、交通量が許せばプリセット速度に再び加速することを可能にする、レーダー又はレーザー装置のいずれかを用いる。車間距離制御(ACC)技術は次世代のインテリジェントカーの鍵を握る要素であることは広範に認められている。レーザーを用いるシステムはレーダーを用いるシステムよりも大幅に低コストである。しかし、レーザーを用いるACCシステムは、天候状態が悪い時は車両をさほど良好に検知及び追尾せず、また、極めて汚れた(非反射性の)車両をさほど良好に追尾しない。レーザーを用いるセンサは露出されている必要があり、センサ(かなり大きいブラックボックス)は通常は、車両の片側に片寄ったロアグリルにみられる。
【0005】
レーダーを用いたセンサはプラスチック製ダッシュボードの背後に隠すことができる。しかし、ダッシュボードの外観はこの機能がない車両とは異なることがある。例えば、車両メーカーによってはレーダーを中央のアッパーグリルの背後に実装することができる。しかし、このような用途のグリルは、グリルの他の部分の上のスラットに似せるために、スラットを塗装した堅牢なプラスチックパネルをレーダーの前方に含んでいる。
【0006】
単一式のレーダーシステムが最も一般的である。複数のセンサを含むシステムは、同類の2つのハードウエアセンサ、又は車両の隅に設置された2つの短距離レーダーセンサと結合された中央の1つの遠距離レーダーのいずれかを使用する。勿論、あらゆる組み合せが市販されている。
【0007】
燃費の観点から、先行車が所望の「タイムギャップ」から外れる許容差を超えてブレーキをかけ、加速すると、装備車もブレーキをかけ、加速するので性能が低下することがある。このような経験は、かかるシステムの燃費に悪影響を及ぼす。
【0008】
上記の問題を解決するために複数台の車両を同時に監視することができるが、それは、複数の車両を同時に追尾している場合、第1の動作を補償するために短時間で再び装備車両の加速/ブレーキが必要となりそうな場合、装備車両がブレーキ/加速を回避できれば、車間距離制御を向上させることができるからである。
【0009】
特許文献1は、1台又は複数台の車両を監視して距離の値及び速度目標値を定める車間距離制御システムを開示している。このシステムは、個々の車両の検出により生じるそれぞれの制御命令を比較し、最も遅い速度を与える命令を選択する。
【0010】
特許文献2には、センサが装備車両の前方の複数台の車両までの距離を検知する車間距離制御システムが開示されている。検知される各車両が対象となり、通常は装備車両の直接の経路内の最も近い対象である最適な対象が選択される。
【0011】
更に、特許文献3は、周囲環境が少なくとも1つの近距離ゾーンと少なくとも1つの遠距離ゾーンとに区分される複数台の車両を監視する車間距離制御システムを開示している。監視される各車両の、例えば車線、速度、及び距離等の位置が近距離ゾーンと遠距離ゾーンに関して判定される。次いで装備車両の速度が当該位置に基づいて調節される。システムは、異なるゾーンに対して少なくとも2つの前方監視センサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007/069997号
【特許文献2】米国特許第5,629,851号明細書
【特許文献3】米国特許第6,816,084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、1台の先行車だけではなく、先行し隣接する車両群を考慮に入れることによって、先行車の挙動の悪影響を軽減しようとする車間距離制御システムを提供することにある。更に別の目的は、1台の先行車だけではなく、先行し隣接する車両群を考慮に入れて車両の速度を適応させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、添付の特許請求の範囲に記載のシステム及び方法によって達成される。
【0015】
本発明による自動車用の車間距離制御システムは、装備車両の予測経路及び隣接する経路で移動する複数の対象物を同時に検知するように構成された前方物体検知手段を備えている。これらの手段は更に、前記対象物の各々の速度、及び前記対象物の各々までの距離を継続的に監視するように構成されている。本システムは更に、前記検知手段からの信号を処理して、装備車両の前方を走行する車両までの距離及び相対速度の情報を提供する処理手段を備え、この処理手段は更に、装備車両の前方を走行する車両までの距離及び相対速度の情報に基づいて速度制御信号を反復的に生成するように構成されている。処理手段からの制御信号に応答して装備車両の速度を制御する手段も車間距離制御システムに備えられている。
【0016】
処理手段は更に、装備車両
の前方を走行する車両からなる車両群の挙動から仮想対象車両の位置を決定し、前記装備車両から
前記仮想対象車両までの時間距離、
前記装備車両から前記仮想対象車両までの距離及び前記仮想対象車両の速度、前記車両群の距離の分散、ひいては前記車両群の車両密度、及び車両群内の位置の変動性を計算するように構成されている。処理手段のアルゴリズムは、上記パラメータから
前記装備車両と前記仮想対象車両との間の時間距離の許容偏差を決定し、処理手段
が、
前記装備車両と前記仮想対象車両との間
の時間距離
及び前記装備車両と前記仮想対象車両との間の時間距離の許容偏差に基づく
前記装備車両の速度を制御す
る手段への信号を生成するように構成されている。
【0017】
好ましくは、角度並びに横方向距離を監視する。このシステム又は方法では、監視される車両を速度ベクトルと見なすことができる。
【0018】
本発明の着想は、複数台の車両を同時に追尾し、車間距離制御の目的のうち1つだけを選択するのではなく全てを活用するというものである。対象車両群は1台の個々の車両よりも「スムーズ」に挙動する傾向にあり、方法/システムはこのスムーズさを評価しようとする。すぐに修正される必要にある動作を装備車両に実行させる動作が不明な場合は、これを予測し、装備車両を制御する際にこれを考慮する。車両群内の個々の車両の動きは、強く相関すると思われる。また、車両群内の全ての車両は必ずしも等しく「重要」とは限らず、好ましくは、例えば距離及び速度に基づいて重み付けされる。
【0019】
好ましくは、処理手段によって生成される、速度を制御する手段への信号は、所望の速度値を示す。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、処理手段は検知される車両群内の全ての対象物の共分散を計算するように構成され、この共分散は仮想対象車両の挙動を予測するためのアルゴリズムで使用される。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態では、仮想対象車両はエコドライブ特性を有するように導出される。
【0022】
本発明の更に別の実施形態では、物体検知手段は、検知される各対象物の距離の値及び速度値を定めるためのレーダーユニット、又はLIDARユニット、又はカメラユニットを備えている。LIDAR(光検出及び測距)は、散乱光の特性を計測して遠隔対象までの距離及び/又はその他の情報を得る遠隔光検出技術である。物体又は表面までの距離を判定する一般的な方法は、レーザーパルスを使用するものである。無線波を使用する類似するレーダー技術と同様に、パルスの伝送と反射信号の検出との間の時間遅延を測定することによって、物体までの距離を測定する。「レーザーレーダー」という用語は、レーダーを定義付けるマイクロ波又は無線波をLIDARが使用しない場合にも用いられる。
【0023】
好ましくは、路面状態を測定するセンサが備えられる。例えば、道路が凍結している場合、速度制御信号は、装備車両の前方車両の速度だけではなく、ホイールと道路間の摩擦の低減に関する危険性の分析にも基づくべきである。
【0024】
また、好ましくは、車間距離制御システムにおいて、処理手段からの制御信号に応答して装備車両の速度を制御する手段が、エンジン制御手段とブレーキ制御手段を更に備える。
【0025】
好ましくは、車間距離制御システムは更に、プリクラッシュシステムを備えるか、又はこれに結合されている。このようなシステムは、衝突の危険が大きい場合はドライバーに警告し、且つ/又はブレーキをかける。更に、ある種の車両では、車間距離制御システムが起動すると、コーナーでのステアリング入力の負担を軽減するためにパワーステアリングアシストを行う車線維持システムも有することが好ましい。
【0026】
更に別の実施形態では、車間距離制御システムはGPSを援用する。GPSナビゲーションシステムは、車間距離制御システムへのガイダンス入力を提供する。例えば、自動車道上で、前方車両が減速するがウインカがオンになり、車両は実際に高速道路の出口に向かっているとする。通常は、車間距離制御システムは、前方車両が減速していることを検知し、それに応じてブレーキをかけて装備車両を減速する。しかし、GPS援用車間距離制御システムは、高速道路の出口に接近していることを考慮に入れ、同時にカメラからの画像を受信する。カメラは前方車両のウインカを検知できる。したがって、この新規のシステムで、前方車両が車線から外れることがわかるので、ブレーキをかけるのではなく、停滞のない状態を持続する。ナビゲーションシステムの場合は、様々な種類の地図データベースを使用できる。更に、本発明はGPSシステムに限定されず、別のシステムを使用できよう。例えば、ロシア運用グローバルナビゲーション衛星測位システム(GLONASS)、中国運用コンパスナビゲーションシステム、又は欧州連合のガリレオ測位システムである。
【0027】
車間距離制御システムを搭載した自動車の速度を制御するための本発明の方法の第1の実施形態によれば、装備車両の予測経路と隣接経路で移動する複数の対象物を、前方物体検知手段で同時に検知するステップを含む。更に、前記各々の対象物の速度及び対象物までの距離を継続的に監視し、検知手段からの信号を処理手段で処理して、装備車両の前方を走行する車両までの距離及びその速度の情報を提供し、処理手段を使用して、装備車両の前方を走行する車両までの距離及びその相対速度の情報に基づいて速度制御信号を反復的に生成し、処理手段からの制御信号に応答して装備車両の速度を制御するステップを含む。
【0028】
本方法は更に、装備車両から仮想対象車両までの時間距離、前記車両群の車
両に基づいて計算された前記仮想対象車両までの距離及びその速度、前記車両群の車両距離の分散、ひいては前記車両群の車両密度、及び車両群の位置の変動性を計算し、処理手段のアルゴリズムで上記パラメータから時間距離の許容偏差を決定し、最後に装備車両と前記仮想
対象車両との間の計算された時間距離に基づく装備車両の速度を制御するための手段への信号を、処理手段を用いて生成するステップを含む。
【0029】
本発明のシステム及び方法を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のシステム及び方法を使用できる状況を例示する図である。
【
図2】センサを車両に取付け可能な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のシステム及び方法を、添付図面を参照して説明する。実施例は本発明のシステム及び方法を読み、理解し易くするために選択されている。
【0032】
図1は、車間距離制御システムを搭載した車両1が同じ方向に通行する2車線の道路2上を走行する例示的状況の概略図である。図示のように、3台の別の車両、即ち第1の車両3、第2の車両4、及び第3の車両5が示されている。第3の車両5に一部重なり、その少し左前方に仮想対象車両6がある。3台の車両3、4、5は車間距離制御アルゴリズムでは1つの車両群とみなされる。先行技術のアルゴリズムでは、装備車両の前方の車両群が監視対象の車両であるか、単に最も近い車両であるかにかかわらず、一般に最も近い車両、即ち
図1の第3の車両5が先行車として選択される。
【0033】
本発明の着想は、複数台の車両を同時に追尾し、車間距離制御の目的の1つだけを選択するのではなく全てを活用するというものである。対象車両群は1台の個々の車両よりも「スムーズ」に挙動する傾向にあり、それらの動作も強く相関する傾向にある。例えば、
図1の第2の車両4にブレーキがかけられると、第3の車両5もブレーキをかけることが予測される。逆の場合も当てはまる場合、即ち第2の車両4が加速すると、ドライバーがその先行車、即ち第2の車両4にどのように適応するかを評価することによって、第3の車両5の非エコドライブ動作を無視することができる。
【0034】
更に別の例は、第2の車両4がブレーキをかけ、第3の車両5がブレーキをかけ、その後、第2の車両4が加速する例である。従来型の車間距離制御システムは、第3の車両5の速度及びブレーキに適応する。本発明のシステムは、1台の対象車両として車両群全体、この場合は第2の車両4と第3の車両5を利用する。したがって、装備車両1もブレーキをかけてもよいが、第3の車両5がすぐに加速するものと予期されるので、第3の車両5と同程度のブレーキではない公算が高い。
【0035】
同様に、第3の車両5がブレーキをかけるのを待つのではなく、装備車両1のシステムはここで前もって動作することが可能である。したがって、第2の車両4と第3の車両5との間に強い相関が予期される場合は、第2の車両4は再び加速するものと予期されるため、車間距離制御システムのホスト、即ち装備車両1のブレーキ動作を避けるか、又は少なくとも最小限に抑えることができる。本発明のシステムは、一実施形態では、異なる車線での交通密度と速度の相関を考慮に入れる。
【0036】
本発明によるシステム及び方法は主として、2台以上の車両の情報が本発明のアルゴリズムで入力データとして使用される点で先行技術の方法とは異なっている。装備車両1の前方に1台の車両しか見えない場合、又は装備車両1に最も近い車両が、通常予期されるようには動作しない場合は、本発明のシステム又は本発明の方法と先行技術との間には最も基本的な形態に差異はない。したがって、一部の極端な場合に、システムが特定の状況を認識しない場合、車間距離制御システムが先行技術のモードに戻ることがより良い代替策であることもある。しかし、ナビゲーションシステムと組み合わせた実施形態では、道路の出口が近付き、装備車両の前方の最も近い車両が減速することがあるが、このことは相関がない挙動を説明することになり得る。したがって、本発明によるシステムを搭載した車両は、道路から離れる車両だけではなく、間もなく道路を離れる、車両の前方の別の車両をも考慮に入れて、車両の速度を調節できる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、システムは、車両数、車両群の広がり又は長さ、車両群内の位置の変動
性に基づいて車両群の特性を評価する。これらのパラメータから、車間距離制御アルゴリズムは時間距離の許容偏差を決定する。
【0038】
別の実施形態では、車両群内の全車両の共分散を表すために適応モデルを使用する。全車両の移動を利用して、予測制御アルゴリズムを前提に、仮想
対象車両6の位置及び動作を予測する。この場合、仮想
対象車両の挙動を理解し予測するために、一般的にドライバーの相互作用をモデリングすることも可能である。代替実施形態では、仮想
対象車両は装備車両の前方の最も近い車両であってもよい。
【0039】
更に別の実施形態では、
図1に示すように、仮想対象車両6を、車両群に類似する動的挙動を有する車間距離制御システムによって作成する。この仮想
対象車両6がエコドライブ特性を有するように導出されると、装備車両1も同様に導出される。第3の車両5の少し左側の仮想
対象車両6の位置は、この場合、システムが第1の車両3を考慮に入れていることを示す。
【0040】
図2から、センサを取り付けて装備車両1のすぐ前の車両の他の車両も見ることができるので、トラックプラットフォームが本発明のアプローチには特に有利であることが分かる。更に、レーダーは、レーダービームのマルチパス挙動により、隠れていると思われる車両を捉えることができる場合も多いことも示されている。更に、トラック上で、カメラを比較的高い位置に取付けることができるので、複数台の車両を監視するためにカメラを使用してもよい。
【0041】
更に別の選択肢は、装備車両の前方車両だけではなく、横方向から来る車両も監視することである。場合によっては、より高速で走行する別の車両が装備車両を追い越し、装備車両の手前に割り込むことがある。追い越し車両が減速しない限り、装備車両は速度を保つことができよう。監視対象が前方車両だけではない場合は、システムがこのような状況に対処するのはより容易になる。
【0042】
以上、本発明の実施例を開示してきた。しかし、修正及び改変を組み込んだ方法が当業者には自明であることは明らかである。前述の開示は当業者が本発明を実施できるようにすることを意図しているため、これに限定されるものと解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に含まれる修正及び変形形態を含むものと解釈されるべきである。例えば、実施形態によっては、仮想
対象車両6を、実際に複数の「実物の」車両のうち1台であるものとして選択してもよい。