(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060101
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】歯科用靭帯内注射針、および関連の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/08 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
A61C19/08
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-39595(P2014-39595)
(22)【出願日】2014年2月28日
(62)【分割の表示】特願2010-550836(P2010-550836)の分割
【原出願日】2009年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-121642(P2014-121642A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年2月28日
【審判番号】不服2015-13998(P2015-13998/J1)
【審判請求日】2015年7月24日
(31)【優先権主張番号】61/035,967
(32)【優先日】2008年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/035,977
(32)【優先日】2008年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/398,039
(32)【優先日】2009年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399128493
【氏名又は名称】ウルトラデント プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダン イー.フィッシャー
【合議体】
【審判長】
高木 彰
【審判官】
山口 直
【審判官】
熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−57948(JP,U)
【文献】
実公昭29−13986(JP,Y1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0065473(US,A1)
【文献】
特開昭63−92345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に局所麻酔薬を投与する微小針装置であって、
セラミックまたは金属の材料から形成され、外径、中空内部、および長さを有する近位針部分と、
セラミックまたは金属から形成され、前記近位針部分に剛性固着した遠位針部分と
を備え、
前記遠位針部分は、前記近位針部分の前記中空内部を少なくとも部分的に通って延びる埋込み区間と、前記近位針部分を越えて遠位に延びる露出区間とを有し、
前記埋込み区間の少なくとも一部分は、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうちの1つまたは複数により、前記近位針部分との剛性で摺動不能な係合を成し、
前記遠位針部分の前記露出区間は、長さ1mmと8mmとの間、外径25ゲージ以下であり、
前記遠位針部分の前記露出区間と前記近位針部分との間の移行部において、組織を通る前記微小針装置の貫入を制限するための急勾配ストップ面をさらに備え、当該急勾配ストップ面は前記遠位針部分の外壁に垂直であり、前記急勾配ストップ面を画成する前記移行部における前記近位針部分の外径は、当該移行部における前記遠位針部分の外径よりも少なくとも100%大きいことを特徴とする微小針装置。
【請求項2】
前記遠位針部分の前記埋込み区間は、前記近位針部分の前記中空内部の内径に実質的に等しい外径を有し、前記摩擦嵌めを成すことを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項3】
前記近位針部分の長さは、2mmと50mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項4】
前記近位針部分の長さは、5mmと30mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項5】
前記近位針部分の長さは、7mmと20mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項6】
前記近位針部分は金属から形成され、前記遠位針部分はセラミックから形成されることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項7】
前記遠位針部分の前記露出区間の外径は、28ゲージと38ゲージの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項8】
前記遠位針部分の前記露出区間の外径は、30ゲージと35ゲージの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項9】
前記遠位針部分の前記露出区間の長さは、2mmと6mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項10】
前記遠位針部分の前記露出区間の長さは、2.5mmと5mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項11】
前記近位針部分の前記外径は、前記遠位針部分の前記露出区間の外径より100%から1000%大きいことを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項12】
前記遠位針部分の前記露出区間の外径は実質的に一定であることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項13】
前記遠位針部分の前記露出区間は先細りすることを特徴とする請求項1に記載の微小針装置。
【請求項14】
組織に局所麻酔薬を投与する微小針装置であって、
セラミックまたは金属の材料から形成され、外径、内径を有する中空内部、および長さを有する近位針部分と、
セラミックまたは金属から形成され、前記近位針部分に剛性固着した遠位針部分と
を備え、
前記遠位針部分は、前記近位針部分の前記中空内部を通って少なくとも部分的に延びる埋込み区間と、前記近位針部分を越えて遠位に延びる露出区間とを有し、
前記埋込み区間の少なくとも一部分は、前記近位針部分の前記中空内部の内径と実質的に同様の外径を有し、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうちの1つまたは複数により、剛性で摺動不能な係合を成し、
前記遠位針部分の前記露出区間は、長さ1mmと8mmとの間、外径25ゲージ以下であり、
微小針装置はさらに
遠位針部分の前記露出区間と前記近位針部分の間の移行部において、組織を通る前記微小針装置の貫入を制限する急勾配ストップ面を備え、当該急勾配ストップ面は前記遠位針部分の外壁に垂直であり、前記急勾配ストップ面を画成する前記移行部における前記近位針部分の外径は、当該移行部における前記遠位針部分の外径よりも少なくとも100%大きいことを特徴とする微小針装置。
【請求項15】
前記遠位針部分の外径は30ゲージ以下であることを特徴とする請求項14に記載の微小針装置。
【請求項16】
組織に局所麻酔薬を投与する微小針装置の製造方法であって、
セラミックまたは金属の材料から形成され、外径、および内径を有する中空内部を有する近位針部分を設けるステップと、
セラミックまたは金属から形成された遠位針部分を、遠位針部分と前記近位針部分の間の移行部において前記遠位針部分と前記近位針部分の間の空間を無くすようにして、前記近位針部分に剛性固着させるステップと
を含み、
前記遠位針部分の露出した長さは1mmと8mmとの間、露出した最大の外径は25ゲージであり、
前記近位針部分は、前記移行部において、組織を通る前記微小針装置の貫入を制限するための急勾配ストップ面を備え、当該急勾配ストップ面は前記遠位針部分の外壁に垂直であり、前記急勾配ストップ面を画成する前記移行部における前記近位針部分の外径は、当該移行部における前記遠位針部分の外径よりも少なくとも100%大きいことを特徴とする微小針装置の製造方法。
【請求項17】
前記遠位針部分が、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうち1つによって前記近位針部分に取り付けられることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
組織に局所麻酔薬を投与する微小針装置であって、
セラミックまたは金属の材料から形成され、外径、中空内部、および長さを有する近位針部分と、
セラミックまたは金属から形成され、前記近位針部分に剛性固着した遠位針部分と
を備え、
前記遠位針部分は、前記近位針部分の前記中空内部を少なくとも部分的に通って延びる埋込み区間と、前記近位針部分を越えて遠位に延びる露出区間とを有し、
前記埋込み区間の少なくとも一部分は、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうちの1つまたは複数により、前記近位針部分との剛性で摺動不能な係合を成し、
前記遠位針部分の前記露出区間は、骨組織、セメント質、及び歯根のいずれにも貫入できない1mmと8mmとの間の長さを有し、且つ外径25ゲージ以下であり、
前記遠位針部分の前記露出区間と前記近位針部分との間の移行部において、組織を通る前記微小針装置の貫入を制限するための急勾配ストップ面をさらに備え、当該急勾配ストップ面は前記遠位針部分の外壁に垂直であり、前記急勾配ストップ面を画成する前記移行部における前記近位針部分の外径は、当該移行部における前記遠位針部分の外径よりも少なくとも100%大きいことを特徴とする微小針装置。
【請求項19】
組織に局所麻酔薬を投与する微小針装置であって、
セラミックまたは金属の材料から形成され、外径、中空内部、および長さを有する近位針部分と、
セラミックまたは金属から形成され、前記近位針部分に剛性固着した遠位針部分であって、ただし硬度が高い前記金属はステンレス鋼でない遠位針部分と
を備え、
前記遠位針部分は、前記近位針部分の前記中空内部を少なくとも部分的に通って延びる埋込み区間と、前記近位針部分を越えて遠位に延びる露出区間とを有し、
前記埋込み区間の少なくとも一部分は、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうちの1つまたは複数により、前記近位針部分との剛性で摺動不能な係合を成し、
前記遠位針部分の前記露出区間は、長さ1mmと8mmとの間、外径25ゲージ以下であり、
前記遠位針部分の前記露出区間と前記近位針部分との間の移行部において、組織を通る前記微小針装置の貫入を制限するための急勾配ストップ面をさらに備え、当該急勾配ストップ面は前記遠位針部分の外壁に垂直であり、前記急勾配ストップ面を画成する前記移行部における前記近位針部分の外径は、当該移行部における前記遠位針部分の外径よりも少なくとも100%大きいことを特徴とする微小針装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所浸潤のために患者の体に局所麻酔薬を注射する、具体的には、歯科医師の作業(例えば、抜歯、根管の清浄、または他の手技)の前に1つまたは複数の歯の周りの非常に強靭で密な靭帯組織に局所麻酔薬を注射する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科手術では、手技を実行する前に局所麻酔を必要とすることが多い。口腔の半分超の歯に、歯根尖の位置の近くで麻酔薬の配合物を浸潤させることによって局所に効果的に麻酔をかけることができる。こうした手技に関連する痛みによって、最初に歯に隣接する位置に局所麻酔薬(例えば、ベンゾカイン)を投与し、次いで、局所浸潤、靭帯内手技、または遠隔の神経ブロックによって歯に局所麻酔薬(例えば、リドカイン)を注射することが望ましい。局所浸潤および靭帯内手技の場合、典型的には小径の針が使用される。近年では、直径が小さく針の点が鋭利であるほど結果として注射の痛みが小さくなることが分かっている。そのため、こうした作業の前に歯の根元に隣接する位置に局所麻酔薬を投与するときに、非常に小さい針を使用することがある。不都合なことに、針を押し込む靭帯組織の性質が非常に強靭で密であり、骨が歯根の表面に近いことにより、針を組織中に押し込もうとすると、小径の針は屈曲するかまたは「曲折する(noodle)」ことが多い。さらに、口腔内には非常に敏感な神経が多くあるので、針が可能な限り小さくても痛みを誘発するには十分大きい。さらに小さい針を使用するとさらに痛みが低減されると考えられるが、針を強靭で密な組織に押し込んで通そうとする際に屈曲する傾向が大きくなるので、こうした針の使用は現実的でない。
【0003】
さらに、麻酔薬を密で強靭な靭帯組織中に効果的に注射するには、非常に高い流体圧力を医師が手で加えなければならないので、局所麻酔薬を注射しようとしながら、針を一定の深さに維持することが非常に難しい場合がある。例えば、注射中に数百ポンド/平方インチ(「psi」)(数キログラムから数十キログラム/平方センチメートル(kgf/cm2))の流体の圧力が必要な場合があり、これにより、針を安定して保持し組織中にさらに針を押し込むのを避けることが非常に難しくなり、非常に敏感な歯根に隣接した部分を覆う骨膜または骨に接触または貫入するリスクを生じる。さらに、現行のレバータイプの注射シリンジは、位置合わせするのに扱いにくいことがあり、麻酔薬を送出するときに簡単に揺動を生じる恐れがある。最後に、これらは、具体的には第三世界の国々で働く臨床医にとって、比較的コストがかかる。
【0004】
さらに、局所浸潤および従来の神経ブロックによって歯に隣接する位置に局所麻酔薬を注射する現在の方法は、非常に複雑であり、正確かつ効果的に行うために教育および練習を非常に多く必要とする。具体的には第三世界の国々の医師の一部は、単純に技術を学ばず、それどころか、根管、抜去、または他の歯科手術の作業を麻酔なしで行い、これにより患者にとってその手技は極めて痛みを生じるものになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】TWO PHOTON POLYMERIZATION OF POLYMER−CERAMIC HYBRID MATERIALS FOR TRANSDERMAL DRUG DELIVERY、Int.J.Appl.Ceram.Technol.、4[1]22〜29(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、歯の根元での組織への貫入中の痛みを最小限抑えることができ、靭帯組織の密で強靭な性質の結果、挿入中に針が屈曲または座屈する傾向も最小限に抑える針装置が必要である。医師がより簡単にこうした技術を学び効果的に利用できるように、局所麻酔を施す単純化した方法でこうした針装置を用いることができる場合はさらに有利になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、歯の周りの非常に強靭で密な靭帯組織中に局所麻酔薬を投与する、専用の2部構成注射針装置を対象とする。2部構成針は、剛性の材料から形成された近位針部分と、セラミックまたは硬度が高い金属から形成された遠位針部分とを含む。近位および遠位針部分は、互いに剛性固着し、そのため一方がもう一方に対して摺動することができない。一実施形態によれば、遠位針部分は、近位針部分の中空内部に配置された埋込み区間と、遠位に近位針部分を越えて延びる露出区間とを含む。このようにして、遠位および近位針部分は、テレスコープ型の関係を成す。遠位針部分の埋込み区間の少なくとも一部分は、近位針部分の中空内部との摩擦嵌めを形成することができる。
【0008】
遠位針部分は、露出した長さが約8mm以下、最大の外径が約25ゲージ以下である。近位針部分の剛性を増大し、強靭な靭帯内組織中に挿入されるときに遠位針部分の望ましくないように屈曲するかまたは曲折するのを防止または阻止するように、近位針部分の最小の外径は、両者が交差する位置で遠位針部分の最大の外径より大きい。
【0009】
近位針部分と遠位針部分の露出区間の移行部の直径を急に大きくすることができ、これは、歯肉組織を通る2部構成針の貫入を制限するストップ(「急勾配ストップ面」)として働く。急勾配ストップ面は、歯肉組織を通る近位針部分の貫入を阻止または防止する。急勾配ストップ面は、有利なことに、医師が遠位針部分の長さと実質的に等しい最大の深さにのみ組織を貫通するのを助けることができる。遠位針部分の露出した長さが約8mm未満であり、外径が約25ゲージ以下なので、局所麻酔薬の注射中の患者の痛みおよび不快感が最小限に抑えられる。露出遠位針部分が比較的短く、しかも遠位針区間が近位針部分に対して剛性固定されることにより、具体的には非常に小径の遠位針部分の場合に非常に大きい遠位針部分を使用すると起きやすい、遠位の針区間の屈曲、座屈、または「曲折する」傾向が最小限に抑えられるかまたは無くなる。遠位針部分が曲折する傾向は、近位針区間と遠位針区間が互いに剛性固定されなかった場合にも起きやすくなる。
【0010】
一実施形態によれば、近位針部分は、急勾配ストップ面を設けないように遠位針部分との境界で先細りしてよい。近位針部分が、靭帯内組織への遠位針部分の挿入中に、歯肉と歯の間の空間に一部分挿入されることが望ましいときは、これが有利な場合がある。一実施形態によれば、近位針部分をシリンジに接続するハブまたは他の手段に向かって、近位針部分を累進的に厚くすることができる。あるいは、近位針部分のうち遠位針部分に最も近い部分のみ先細りさせることができる。
【0011】
近位針部分と遠位針部分の両方が有利なことに剛性である。近位針部分のより大きい直径は、2部構成針に全体的な剛性および強度をもたらす。近位針部分の長さは、遠位針部分より著しく長く(すなわち、最大50mm、好ましくは約5mmと約30mmの間に)することができる。2部構成針の全体の長さを制限すると、針の長さ対幅のアスペクト比が制限され、これは、近位または遠位部分の屈曲または座屈なしに非常に強靭で密な靭帯組織を通して貫通することを容易にするように、針装置全体に剛性および強度をもたらすことができる。
【0012】
近位針部分は、適切な剛性の材料から形成されるが、金属が好ましい。近位針部分を金属(例えば、ステンレス鋼)から形成すると、他の材料ではあり得る脆性の特徴を最小限に抑えながらも、強度および剛性をもたらす。セラミックおよび剛性のポリマーを使用して近位針部分を作製することもできる。
【0013】
遠位針部分をセラミック材料(例えば、有機変性セラミック)から形成すると、非常に小径であっても遠位針部分を強くかつ剛性にすることが可能になる。アディティブプロセス(例えば、順送りの層のめっき)などによって、硬度が高い金属を使用して遠位針部分を形成することもできる。剛性および強度は、遠位針部分が、麻酔する歯の周りの強靭な靭帯組織に押し込まれるように設計されるので重要である。
【0014】
一方法によれば、2部構成針装置は、剛性の材料、例えば、スチール、セラミックまたは剛性のプラスチックから形成された近位針部分を設けるステップと、セラミックまたは硬度が高い金属から形成された遠位針部分を設け、遠位針部分を近位針部分に(例えば、遠位の針区間の一部を近位針部分の中空内部中に挿入し、次いで2つを互いに固定することによって)取り付けるステップによって製造することができる。取付けは、任意の適切な技術によって実行することができる。いくつかの例は、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手のうち1つまたは複数を含む。これらは、2つの部分の間に剛性で摺動不能なテレスコープ型の係合をもたらし、それにより、近位針部分と遠位針部分の長手方向の相対移動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記のおよび他の利点および特性をさらに明確にするために、添付の図面に示される本発明の特定の実施形態を参照することによって本発明のより具体的な説明を示す。これらの図面が本発明の典型的な実施形態しか示さず、したがってその範囲を限定するとみなすべきではないことが理解されよう。本発明を、添付の図面を用いてさらなる特異性および詳細によって描写および説明する。
【
図1A】例示的な2部構成針を含む、シリンジに連結可能な注射器先端部を示す図である。
【
図1B】
図1Aの注射器先端部の2部構成針装置の遠位部分およびストップ面の拡大断面図である。
【
図2A】2部構成針を含む、シリンジに連結可能な注射器先端部の代替的例を示す図である。
【
図2C】
図2Aおよび
図2Bの注射器先端部の2部構成針の遠位部分およびステップ面の拡大断面図である。
【
図3A】2部構成針の代替的例を含む別の例示的な注射器先端部装置を示す図である。
【
図3B】
図3Aの注射器先端部の2部構成針装置の部分拡大断面図である。
【
図4A】2部構成針の代替的例を含む別の例示的な注射器先端部を示す図である。
【
図4B】
図4Aの注射器先端部の2部構成針装置の部分拡大断面図である。
【
図5A】歯に隣接する密で強靭な靭帯組織中に
図2A〜
図2Cの注射器先端部を使用して局所麻酔薬を注射する状態を示す斜視図である。
【
図5B】歯肉を通して靭帯組織中への遠位針部分を貫入し、より大きい近位部分が患者の組織を貫通するのを制限または防止するようにストップ面が歯肉組織の外面に接して配置された状態を示す、
図5Aの部分断面図である。
【
図5C】近位針部分の先細りした面の先端が、歯に隣接する歯肉軟部組織を通して貫入する状態の、
図4Aおよび
図4Bに示す実施形態と同様の代替的注射器先端部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.概要
本発明は、歯の周りの強靭で密な靭帯内組織中に局所麻酔薬を投与する、専用の2部構成針装置を対象とする。一実施形態によれば、2部構成針は、剛性の材料(例えば、金属、セラミックまたは剛性のプラスチック)から形成された近位針部分と、剛性のセラミックまたは硬度が高い金属から形成された遠位針部分とを含む。遠位針部分は露出した長さが約8mm以下、最大の外径が約25ゲージ以下である。両者が急勾配ストップ面を形成するように交差する位置では、近位針部分の最遠位点での外径は、遠位針部分の外径より大きい。急勾配ステップは、組織を通る針の貫入の深さを制限するのを助ける。あるいは、急勾配ストップ面を設けないようにして、近位針部分を交差部分で先細りさせることができる。2部構成針装置は、どんな特定の使用にも限定されず、歯の周りの靭帯内組織以外の組織中に流体を注射するように適合できることを理解されたい。
II.例示的な2部構成の歯科用靭帯内の注射針
図1Aは例示的な注射器先端部100の斜視図であり、この注射器先端部100は、本発明の一態様による、例示的な2部構成の歯科用靭帯内注射針104を含む。注射器先端部100はハブ102を含み、そのハブ102は、シリンジまたは他の流体送出装置と2部構成針104を注射器先端部100の遠位端で連結するように構成される。2部構成針104は、近位針部分106および遠位針部分108を含み、その遠位針部分108は、近位針部分106の遠位端を越えて延びる。この実施形態では、遠位針部分108は、近位針部分106の中空内部内に配置された埋込み区間と、近位針部分106を遠位に越えて延びる露出区間とを含む。近位針部分106の外径は、遠位針部分108の外径より大きい。この実施形態では、露出した遠位針部分108のより小さい外径と、近位針部分106のより大きい外径との間の移行部は、急勾配であり(すなわち、滑らかな先細りではなく)、それにより、有利なことにこの移行部で急勾配ストップ面110が形成される。あるいは、以下で検討するように、近位針部分は、急勾配ストップ面ではなく、遠位針部分と近位針部分の間でより緩やかな移行部(
図4Aおよび
図4B参照)を設けるように、遠位針部分との交差部分で先細りしてよい。
【0017】
ハブ102は、本体112およびネック114を含む2つの主要な構成要素を有する。ネック114は、先細りするように示されるが、あるいは先細りしなくてもよい。ネック114は、好ましくは図示のように本体112より細い。本体112からネック114まで緩やかな移行部を設けるように、先細りしたショルダー116が存在してよい。
【0018】
ネック114の遠位端で近位針部分106の近位端の周りに配置されたニブ117は、ハブ102内に針104を保持し、近位針部分106の周りにシールを設ける助けをする。ニブ117は、近位針部分106をネック114内に配置した後で硬化する接着剤プラグを備えることができる。例えば、ステンレス鋼をポリプロピレンなどのプラスチックに貼付するための市販のエポキシなど、任意の適切な接着剤を用いることができる。あるいは、ニブ117は、単純に、ネック114の遠位端を構成することができ(例えば、ネック114を、近位針部分106の近位の露出していない部分の周りに成形することができ)、そのため、ニブ117はネック114の残りの部分と同じ材料から形成される。
【0019】
ハブ102は、好ましくは、針104中を通して流体を投与するために、シリンジまたは他の流体送出装置に連結されるように設計される。ハブ102はさらに、雄型または雌型のねじまたは溝連結部材118(例えば、ルアーロック構造)を含み、その連結部材118は、注射器先端部100をシリンジまたは同様の装置に係合させるように別のねじおよび溝構造と噛み合う。ハブ102は、好ましくは、注射器先端部100をシリンジに連結するのを助ける把持面を設ける構造を含む。図示の例はウイング120を含み、そのウイング120は本体112から長手方向に延びるが、あるいは隆起部または別の把持構造を使用することができる。さらなる代替的形態では、ハブは、連結構造118も把持構造も設ける必要がない、シリンジなどの装置の一体型の延長部分でよい。
【0020】
2部構成針104の近位針部分106は、有利なことに、剛性の材料から形成される。適切な材料の例には、セラミック、剛性のプラスチック、または金属が含まれるが、金属が好ましい。近位部分の材料の剛性は、遠位針部分108と同程度に高くてよいが、遠位針部分108に加えられる回転力に抵抗するのに十分に剛性である限りわずかに低くてもよい。こうした理由で、脆性または簡単に変形可能ではなく近位針部分106に高い強度および剛性をもたらす能力に関して、金属材料(例えば、ステンレス鋼)が好ましい。
【0021】
図示のように、近位針部分106は、針104の長さ全体の大部分に相当する。圧縮および/または回転力によって屈曲する、曲折する、または外れるのを防止するように遠位針部分108をしっかりと固定するために、遠位端のてこの影響を低減するかまたは無くすように、近位針部分106の長さを、遠位針部分108の露出した長さと比較して十分に大きくすることができる。近位針部分のうち埋め込まれた遠位部分に重なる部分の長さは、好ましくは、遠位針部分の露出した長さの少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約4倍、場合によっては約10倍以上長くてよい。例えば、近位針部分106の長さは、約2mmと約50mmの間、より好ましくは約5mmと約30mmの間、最も好ましくは約7mmと約20mmの間でよい。
【0022】
やはり図示のように、近位針部分106の外径は、遠位針部分108の外径より大幅に大きい。近位部分106の外径は、少なくとも2つの利点、(1)使用中に遠位針部分108をしっかりと固定および保持するのに十分な強度および剛性をもたらすこと、および(2)実質的に遠位針部分108のみに貫入を制限できるストップ面110を設けるのに十分な直径をもたらすことを与えるように選択すべきである。近位針部分106のうち、少なくとも遠位針部分108の埋込み部分を囲む部分の内径は、遠位針部分108の外径と実質的に同じである。これにより、遠位針部分108による横方向の動きおよび座屈を防止するのが助けられる。概して、近位針部分106の外径は、壁厚の2倍と内径の合計に等しい。近位針部分106の壁厚は、好ましくは、近位針部分の内径の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは内径の少なくとも約50%である。場合によっては、壁厚は、内径の少なくとも約100%、またはそれどころか少なくとも約500%とすることができる。
【0023】
図示のように、近位針部分106は、円筒形でよく、例えば、実質的に一定の外径を有することができる(例えば、遠位針部分108との単一のテレスコープ型の構成でよい)。あるいは、累進的に直径が増大する複数のテレスコープ型の近位針部分を設けることができ、これは、近位部分106と遠位部分108の間の交差部分から離れる方に近位に移動する。近位針部分は、楕円形、正方形、矩形、五角形、六角形など、他の断面形状を有することができる。
【0024】
急勾配ストップ面を含むいくつかの実施形態では、近位針部分の外径は、好ましくは、遠位針部分108と近位針部分106の間の移行部において、遠位針部分108の最大の外径より約10%から約1000%大きい。より好ましくは、近位針部分の外径は、遠位針部分108と直径近位針部分106の間の移行部において、遠位針部分108の最大の外径より約20%から約700%大きい。最も好ましくは、近位針部分の外径は、急勾配ストップ面を有することが望ましい、遠位針部分108と近位針部分106の間の移行部において、遠位針部分108の最大の外径より約30%から約200%大きい。
【0025】
2部構成針104の遠位針部分108は、有利なことに、非常に小さい寸法上の特徴を有しながらも遠位針部分に剛性および強度をもたらすように、セラミック材料(例えば、有機変性セラミック)から形成してよい。例示的な有機変性セラミック材料は、Munich GermanyのFraunhofer−Gescllschaftから入手可能である。微小針を形成するこうした材料および方法に関する詳細は、非特許文献1に記載されており、この文献は特に参照することにより本明細書に援用される。
【0026】
前述の文献に記載のように、有機変性セラミック材料から形成された、セラミック製微小針は、明確な非常に局在化した体積内で光重合および材料の硬化につながる化学反応を誘発するように、光子の時間的重なりと空間的重なりの両方を含む2光子重合(2PP)プロセスを使用して形成された。所望の3次元の針構造が、ガルバノスキャナーおよび微小位置決めシステムを用いて3次元で移動するレーザーのトレースに沿って材料を重合させることによって生成した。所望の領域外の材料は、反応に関係せず、適切なアルコール溶液で洗い流して、例えば、針に孔を形成することができる。
【0027】
アディティブめっきプロセスなどによって、硬度が高い金属材料から遠位針部分108を形成することも可能であり得る。上述のように、遠位針部分108は、針104の長さ全体のうちわずかな部分にのみ提供される。遠位針部分108は、好ましくは、最大露出長さ約8mm、好ましくは露出長さが約1mmと約8mmの間、より好ましくは約2mmと約6mmの間、最も好ましくは約25mmと約5mmの間である。上述のように、遠位針部分108の最大の外径は、近位針部分106の最大の外径より大幅に小さい。遠位針部分108は、好ましくは、最大の外径が25ゲージ、好ましくは約28と約38ゲージの間、より好ましくは約30と35ゲージの間、最も好ましくは約31と35ゲージの間である。
【0028】
概して、急勾配ストップを有する針は、ストップが歯肉と歯の間への近位針部分の挿入を阻止するので、靭帯内組織中に貫入するためにより大きい遠位針部分を必要とする。反対に、より極端に先細りさせると、近位針部分の少なくとも最初の先細りの区間が、歯肉と歯の間を貫入することによって針として機能できるので、遠位針部分の長さを短くすることが可能になる。
【0029】
遠位針部分の寸法が小さいと、歯肉中、および非常に強靭で密な靭帯組織中への2部構成針の貫入がほとんど痛みのないものになる。短い遠位針露出部分の長さは、遠位針部分108が座屈、屈曲、曲折する傾向を最小限に抑えるか、または非常に短い遠位針部分108を靭帯組織中に押し込むときにレバーとして働く。近位針部分106が長く、しかも直径が大きいと、針が使用中に屈曲または座屈するのを防止するために針104全体に十分な強度および剛性をもたらしながらも、歯の周り、および口腔内の構造の周りで針を操作するのに必要な作業長さが提供される。
【0030】
図1Bに示すように、遠位針部分108の埋込み区間は、近位針部分106の内部に埋め込まれている。例えば、使い捨ての先端部および針を有する再利用可能でオートクレーブ可能な金属シリンジで使用されるような麻酔カルプルの膜を穿刺可能にするために、遠位針部分108の埋込み区間は、近位針部分106の内部を部分的に通って、近位針部分106の全長を通って、またはハブ102を越えて延びることができる。概して、遠位針部分108の埋込み区間は、近位針部分106と遠位針部分108の間に安定した係合をもたらすのに十分な量だけ近位針部分106内に延びるべきである。例えば、遠位針部分の埋込み区間は、近位針部分106の内部を通って少なくとも約2mm、または少なくとも約10mm延びることができる。
【0031】
おそらく
図1Bで最も良く見られるように、遠位針部分108の貫通のための先端部122は、先端部122で鋭利な点を形成するように傾斜が付いていてよい。傾斜が付いた構成で示されているが、代替的先端部の構成を使用することができる。遠位針部分108は内腔124を含み、その内腔124は、近位針部分106を通して隣接する管腔(図示せず)と流体連絡し、その隣接する管腔は、ネック114を含むハブ102の内部チャンバー(図示せず)と流体連絡する。図示の実施形態では、遠位針部分108の露出していない埋込み部分は、ストップ面110を越えて近位針部分106内で近位に延びる。剛性の摺動不能な接続を形成するように、2つの部分を、任意の適切な手段、例えば、接着剤、レーザー溶接、はんだ付け、摩擦嵌め、または圧着継ぎ手によって互いに接合することができる。
【0032】
図2A〜
図2Cに、注射器先端部100と同様の連結可能な注射器先端部100’の代替的例示的なシリンジを示す。その注射器先端部100’は、ハブ102’、チャンバー103’(
図2B)、本体112’、ネック114’、ショルダー116’、ニブ117’、管腔105’および124’、ならびに連結構造118’を含む。装置100’と装置100の間の相違点の1つは、ウイング120ではなく、シリンジまたは他の流体送出装置に連結しながらハブ102’を把持するのを助ける複数の隆起部120’が存在することである。
【0033】
図1A〜
図1Bの装置100’と装置100の間の別の相違点は、注射器先端部100’が、長手方向軸A’に対して角度が付いた針104’を含むことである。好ましくは、角度αは、約15度から約90度、より好ましくは約20度から約70度、最も好ましくは約30度から約60度の範囲である。
図2A〜
図2Bに示す実施形態では、角度αは約60度である。角度の範囲は、具体的には最も好ましい範囲により、有利なことに、注射領域の近くの隣接する構造(例えば、麻酔する特定の歯および/または隣接する歯)からの干渉なしに、医師が先端部104’を操作することが可能になる。例えば、
図5Aに示すように、医師の手、取り付けたシリンジ、または連結した注射器先端部100’によって、歯90にも、反対側の顎の歯にも意図せずに接触することなしに、注射器先端部100’を快適かつ簡単に歯90に隣接する適位置に移動することができる。言い換えると、こうした角度の付いた構成は、注射器先端部104’、取り付けたシリンジ、および医師が把持する手を全て、注射位置から外れるように位置決めするのを助ける。
【0034】
図3A〜
図3Bに、装置100および100’と同様の、別の代替的注射器先端部100’’の遠位端を示す。装置100’’に対する相違点の1つは、針104’’が近位針部分106’’および遠位針部分108’’を含むように示され、遠位針部分108’’の露出パートが、遠位針部分108’’の露出した長さ全体に沿って外径が実質的に一定ではなく、概して円錐形であることである。図示のように、靭帯組織への局所麻酔薬の注射中に2部構成針104’’の組織中への過度の貫入を防止するように設計された急勾配ストップ面110’’がある。有利なことにセラミックから形成されるので、遠位針部分108の遠位の最先端部は、製造の点から商業上実現可能でありながら、不必要に強度および剛性を損なうことなく、最大の外径0.5mm(例えば、0.1mm)より大幅に小さくてよい。言い換えると、強度および剛性の所望の特性を維持しながら、このように寸法が小さいという特徴を有するこのような遠位針部分を金属または他の材料から形成することがほとんど不可能とまではいかなくても、非現実的となる場合がある。
【0035】
前の例で示すように、近位針部分と遠位針部分の間の移行部は、急勾配ストップ面を形成するように、遠位針部分の外壁に対して垂直でよい。それにもかかわらず、他の角度(例えば、約60度と150度の間の角度)のストップ面を設けることができることが理解されよう。あるいは、交差部分における遠位針部分との近位針部分の先細りの角度は、(例えば、約150と約179度の間、または約160度から約175度の間の)任意のストップ面を設けない程度の大きさでよい。このような場合には、近位針部分の先細りの遠位端は、歯肉と歯の間の空間に貫入することもできる針として働くことができる。
【0036】
一例として、
図4Aおよび
図4Bに、装置100および100’と同様の代替的装置200を示す。装置200の主要な相違点は、2部構成針204が、近位針部分206と、遠位針部分208と、ストップ面を設けないように角度θ(例えば、約175度)を有する先細りした面210とを含むように示されていることである。これにより、靭帯組織への局所麻酔薬の注射中に(例えば、歯肉と歯の間の)組織中への少なくとも近位針部分206の先細りした面210の貫入が可能になる。これにより、遠位針部分208が実際の長さを越えて組織中により深く貫入することが可能になる。概して、近位針の全てまたは一部を先細りさせることができる。さらに、先細りは、連続的でも(例えば、凹形または凸形の移行面210を形成するように)変化してもよい。
【0037】
図5A〜
図5Cに、歯の周りの靭帯内組織中に局所麻酔薬を注射するために本発明による2部構成針を使用する方法を示す。有用な局所麻酔薬の例には、これらに限定されないが、リドカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチシン(cyclomethycine)、デメトカイン(demethocaine)、プロポキシカイン、プロカイン、プロパラカイン、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、メピバカイン、およびピペロカインが含まれる。
【0038】
2部構成針は、歯肉組織150を通り靭帯組織152中に貫入する小径の短い遠位針部分108’の使用によって痛みを最小限に抑えながらも、2部構成注射針104’(
図5Aおよび
図5B)または104’’(
図5C)の屈曲または座屈を防止するのに十分な剛性をもたらす。
図5Aおよび
図5Bに示す実施形態によれば、遠位針部分108’は歯肉と歯の間の空間に挿入される。ストップ面110’は、医師が局所麻酔薬を簡単に歯肉組織150に隣接する靭帯組織152に注射するのを助ける。この構成は、骨組織156、セメント質154、および/または歯90の根への貫入を防止するように、遠位針部分108’の過度の貫入を防止する。(例えば、セメント質154または歯90の根に)過度に貫入すると、歯に不必要な損傷を与え、歯に隣接する組織内の深い位置に非常に敏感な神経組織が存在する結果、患者に激痛をもたらす恐れがある。
【0039】
ストップ部材110’は、遠位針部分108’が靭帯組織中に完全に挿入されるときに外側の歯肉組織150に隣接して着座する。ストップ部材110’は、近位針部分106’が患者の軟部組織を貫通するのを実質的に制限または防止し、これは遠位針部分108’による貫入中の痛みの感覚を著しく最小限に抑える。しかし、近位針部分106’は、歯90に隣接した位置で装置100’の簡単な操作を可能にするのに十分な作業長さを設けながらも、針構造全体に十分な強度および剛性を加える。
【0040】
図5Cに示す使用の代替的方法では、(例えば、
図4Aおよび
図4Bのように)近位針部分が先細りした2部構成針により、歯肉軟部組織150を通して、かつ/または歯肉と歯90の間で、先細りした近位針部分106’’の少なくとも先細り面110’’の最も細い部分を挿入することが可能になる。このような場合には、遠位針部分108’’の過度の貫入を防止するために(例えば、上述のような損傷を防止するために)、より短い遠位針部分108’’を使用することが有益な場合がある。
【0041】
本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなしに他の特定の形態で本発明を実施することができる。説明した実施形態は、全ての点において単に説明的であり限定的なものではないとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価物の意味および範囲内に包含される全ての変更形態が、それらの範囲内に含まれるものである。