特許第6060147号(P6060147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6060147特に自動車用の熱交換器用コレクターボックスおよびその熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060147
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】特に自動車用の熱交換器用コレクターボックスおよびその熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20161226BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20161226BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   F28F9/02 301Z
   F28D1/053 A
   B60H1/32 613E
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-501657(P2014-501657)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-512502(P2014-512502A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012055807
(87)【国際公開番号】WO2012131046
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】1152693
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、モロー
(72)【発明者】
【氏名】ソリー、シディベ
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−301455(JP,A)
【文献】 特開2002−048488(JP,A)
【文献】 特開平09−113177(JP,A)
【文献】 米国特許第05816321(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28D 1/053
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱交換管(3)を有する熱交換コアを備えた主に自動車用の熱交換器用であって、前記複数の熱交換管(3)の端部を支える平底(13)を有する流体コレクター(9)を備えたコレクターボックスにおいて、
前記流体コレクター(9)は、前記平底(13)から延びる二つの側壁(15)を有し、前記側壁(15)はそれぞれ前記平底(13)との間に、1.5mm〜4mmの半径(R)の曲面を形成し、
前記コレクターボックス(15)の高さ(h)は10〜15mmであり、
前記流体コレクター(9)は、1mm〜1.2mmの厚さ(e)を有し、
前記流体コレクター(9)における、単位バール(Bar)での破裂強度と単位ミリメートル(mm)での前記コレクターボックス(15)の高さ(h)の比は10より大きいことを特徴とするコレクターボックス。
【請求項2】
前記半径(R)は、2mm〜4mmであることを特徴とする請求項1に記載のコレクターボックス。
【請求項3】
前記半径(R)は、2mm〜3mmであることを特徴とする請求項1に記載のコレクターボックス。
【請求項4】
前記流体コレクター(9)は、全体形状が略「U」であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコレクターボックス。
【請求項5】
前記流体コレクター(9)の形状を補完する形状の、前記流体コレクター(9)を閉鎖する蓋体を有することを特徴とする請求項に記載のコレクターボックス。
【請求項6】
前記高さ(h)は、11mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコレクターボックス。
【請求項7】
前記流体コレクター(9)は前記熱交換管(3)の端部を受けるフランジ(19)を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のコレクターボックス。
【請求項8】
複数の熱交換管(3)を備えた熱交換コアと、請求項1〜のいずれか一項に記載の少なくとも一つのコレクターボックスとを有することを特徴とする自動車用の熱交換器。
【請求項9】
前記熱交換器は、自動車における空調回路用の凝縮器であることを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車用の熱交換器用コレクターボックス(collector box)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用される、例えば空調回路における凝縮器のような熱交換器は、既に知られている。
【0003】
そのような空調回路は、一般に、圧縮機、凝縮器またはガス冷却器、膨張弁および蒸発器を備えている。凝縮器は、第一の流体を第二の流体と熱交換させることによって第一の流体を凝縮および/または冷却するようになっている。
【0004】
この場合、使用される第一の流体はフロン(Freon)系流体のような冷媒であり、第二の流体は空気のような冷却流体である。
【0005】
一般に熱交換器は、熱交換管のコアおよびコレクターボックスを備えている。
【0006】
公知の対応策において、コレクターボックスは、例えば押し出し加工によってシングルピースで作られている。
【0007】
コレクターボックスは、二つの部品から成るもの、すなわち、熱交換管の端部を支えるコレクターおよびコレクターに固定されて液密にコレクターボックスを閉鎖する蓋体から構成されるものも知られている。
【0008】
通例、コレクターボックスは全体が略円形であり、この構成によって破裂強度が良好となっている。
【0009】
しかしながら、この構成は、コレクターボックス内に収容される熱交換管の材料の過剰消費をもたらすことになる。さらに、コレクターボックス内の熱交換管の長さが長いため、圧力損失の問題が発生する。
【0010】
加えてこの構成は、熱交換器の全容積が大きいことに加えて高さが高い。
【0011】
他方で、平底のコレクターも知られているが、破裂強度の理由から、そのようなコレクターは一般に非常にかさばるものになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、良好な破裂強度を備える熱交換器用の最適なコレクターを提供することによって先行技術のこれらの不利益を軽減し、同時に、コレクターの全容積を小さくし、またそれによって熱交換器の全容積を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明の対象は、複数の熱交換管を有する熱交換コアを備えた主に自動車用の熱交換器用であって、前記複数の熱交換管の端部を受け入れる平底を有する流体コレクターを備えたコレクターボックスであって、前記流体コレクターは前記平底から延びる二つの側壁を有し、前記側壁はそれぞれ、前記底板との間に1.5mm〜4mmの半径の曲面を形成し、前記流体コレクターにおける破裂強度とコレクターボックスの高さの比は10より大きいことを特徴とする。
【0014】
前記コレクターボックスは、一つ以上の下記の特徴を単独であるいは組み合わせて有する。
・前記半径は、約2mm〜3mmである、
・前記流体コレクターは、全体形状が略「U」である、
・前記熱交換器は、前記コレクターの形状を補完する形状の、前記コレクターを閉鎖する蓋体を有する、
・前記コレクターは、15mm未満の高さを有する、
・前記高さは、約11mmである、
・前記流体コレクターは、1mm〜1.2mmの厚さを有する、
・前記流体コレクターは前記熱交換管の端部を受けるフランジを有する。
【0015】
本発明は、また、複数の熱交換管を備えた熱交換コアと、上記にて規定された少なくとも一つのコレクターボックスとを有する主に自動車用の熱交換器に関する。
【0016】
一実施例によれば、前記熱交換器は、特に自動車における空調回路用の凝縮器である熱交換器である。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的かつ例示的な実施例を介して付与された下記の説明を読むことにより、および添付された図面を検討することにより、より明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】熱交換器の斜視図である。
図2a】略U字形の平底コレクターを備えた、図1の熱交換器のコレクターボックスの断面図である。
図2b】熱交換器の熱交換コアの管端部を収容する略U字形の平底コレクターを備えた、図1の熱交換器のコレクターボックスの断面図である。
図3a】破裂強度が平底コレクターの半径の関数としてどのように変化するかを概略的に示すグラフである。
図3b】平底コレクターの高さが平底コレクターの半径の関数としてどのように変化するかを概略的に示すグラフである。
図4】破裂強度とコレクターの高さの比が、平底コレクターの半径の関数としてどのように変化するかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの図において、実質的に同じ部材は同じ参照符号を有する。
【0020】
図1は、空調回路の凝縮器のような、一列以上の管3の列をなす多数の管3からなるコアを備えた熱交換器1を簡易的に示している。
【0021】
図示された例における熱交換器1は、流体がコアを通過しついで除去することができるように二つの流体コレクターボックス5を備えている。
【0022】
このために、流体入口及び出口のカップリング7が設けられており、これらは、図示された例において、一つのコレクターボックス5に取り付けられている。
【0023】
図2aおよび図2bを参照すると、コレクターボックス5は、管3の端部を支える平底コレクター形成部9を備えており、ただ一つの管3の一端が図2bで視ることができる。
【0024】
コレクターボックス5はそれを閉鎖する蓋体11も備えている。
【0025】
図示の実施例によれば、コレクター9と蓋体11は二つの異なる部品として構成されている。
【0026】
図示の実施例によれば、コレクター9の材料の厚みは1mm〜1.2mm、例えば約1.2mmである。
【0027】
コレクター9は、例えば、約15mmの幅lおよび約11mmの高さhを有している。
【0028】
これらの寸法は、閉鎖されたコレクターボックス5の寸法に一致している。従ってこの例では、コレクターボックス5は、約15mmの幅lと、約11mmの高さを有している。
【0029】
平底コレクター9を備えたそのようなコレクターボックス5は、円形コレクターを備えたコレクターボックスと比較してより平らな形状を有しており、従って、円形コレクターを備えたコレクターボックスの高さより低い高さhを有しているため省スペースとなっている。
【0030】
更に、例としてのコレクター9は、中央壁13と、中央壁13の両側に延びる二つの側壁15を備えた、全体が略U字状の形状を有している。コレクター9は空洞17をこのように区切っている。
【0031】
コレクター9が平底であるとは、本例によれば、U字形のうちの中央壁13が略平らであることを意味する。この中央壁13はコレクター9の平底を形成している。
【0032】
この中央壁13は、多数の平行な横スロット(図では見えない)を有しており、その形状はコレクター9を通過する管3の端部の形状に合わせている。
【0033】
管3の端部を受ける(複数の)フランジ19(図2b)によって境界づけられるような横スロットを設けてもよい。
【0034】
図示の例によれば、側壁15は中央壁13に対して略直交するように延在している。
【0035】
このようにして、コレクター9は、中央壁13と側壁15の間をつなぐ曲面14を備えている。
【0036】
コレクター9における、側壁15と中央壁13の間の曲面14の半径R(図2a)は、1.5mm〜4mmである。
【0037】
半径Rが大きくなればなるほど、コレクター9の破裂強度はより良好となる。
【0038】
本出願人によって実施された計算のデータを挙げる。
・半径Rが1mmの場合、破裂強度は約90バール、
・半径Rが2mmの場合、破裂強度は約133バール、
・半径Rが3mmの場合、破裂強度は約147バールである。
【0039】
これが図3aに概略的に図示されており、横軸はミリメータ単位の半径Rを表し、縦軸はバール単位の破裂強度Pを表している。
【0040】
しかしながら、半径Rが大きくなればなるほど、管3がコレクター9内に突き出す長さがより長くなる。
【0041】
これは、再度図2bを参照すると、コレクター9の横スロットに挿入される各管3の高さが、一方ではコレクター9内の管3の端部と関連する横スロットの側端の間でh1であり、他方ではh2であることに因る。
【0042】
この管の高さh2は、コレクター9内の管3の端部と管3が入るスロットのポイントとの間の管の高さに一致する。第二の高さh2に対する基準は、例えば、大体、スロットの中央である。
【0043】
図2bに示されるように、スロットの側端に関する管3の高さh1は、コレクター9内の管3の高さh2より低い。
【0044】
第一の高さh1は熱交換器性能が最適となるように、主に機械的強度あるいは圧力低下関連を根拠として設定される。
【0045】
従って、スロットの側端に関する高さh1が決定され、コレクター9の形状に応じて変化するのはコレクター9内の管3の高さh2である。
【0046】
より詳しくは、コレクター9がより平らになればなるほど、すなわち、半径Rが小さくなればなるほど、この高さh2は低くなる。
【0047】
実際には、スロットの側端が高くなればなるほど、コレクター9内に突出する管の割合が大きくなる。というのは、この側端に関する管の高さh1が一定だからである。半径Rが大きくなればなるほど、スロットの側端がより高くなる。従って、コレクター9内の管の高さh2は、半径Rと共に大きくなる。
【0048】
それに対して、スロットの側端が低くなればなるほど、コレクター9内に突出した部分がより小さくなる。というのは、この側端に関する管の高さh1が一定だからである。半径Rが小さくなればなるほど、スロットの側端はより低くなる。従って、コレクター9内の管の高さh2は、半径Rと共に小さくなる。
【0049】
この管3の突出量の増大によって、すなわち、コレクター9内のこの管3の高さh2の増大によって、コレクター9の高さhが非常に大きくなる。
【0050】
半径Rに伴うコレクターボックスの高さの増大が、図3bのグラフに直線によって概略的に示されている。図3bにおいて、横軸はミリメータ単位の半径Rを表し、縦軸はミリメータ単位のコレクターボックス5の高さを表している。
【0051】
管3の材料の余分な追加消費をせず、従ってコレクター9の高さを高くせず、結果としてコレクターボックス5の高さを高くせず、その結果として熱交換器1の全寸法の増大が生じないようにするために、半径Rを大きくしすぎる必要はない。
【0052】
図3aおよび図3bのグラフを参照すると、半径Rが1.5mm〜4mmの間にあるとき、コレクターボックス5の高さhが15mm未満、例えば、10mm〜15mmで良好な破裂強度が得られる。
【0053】
従って、そのような半径Rによって省スペースが可能となる。
【0054】
詳しくは、前述のように、コレクター9内の管の高さh2はコレクター9がより平らになるに伴い小さくなり、従って、半径Rと共に小さくなる。
【0055】
もしも、先行技術の対応策のように、管3が同じ長さに維持された場合、半径Rが小さくなった時コレクター内の管の高さh2が小さくなり、従って、熱交換用の管3の高さとコレクター9内に突出する高さh2の比が大きくなる。
【0056】
従って、追加材料を必要とすることなく大きくなるのが、熱交換に寄与する管3の高さである。
【0057】
従って、同じ寸法の場合、熱交換性能は改善される。
【0058】
別の方法として、一定なのが熱交換に有用な管3の高さの場合、半径Rと共に高さh2が小さくなり、管3の全長は減少し、材料が節約される。
【0059】
高さhが15mm未満で半径Rが1.5mm〜4mmであることによって、熱交換器1の全寸法は先行技術の対応策と比較して減少し、同時に良好な破裂強度を確保することができる。
【0060】
詳しくは、図4のグラフにおいてベル状の曲線が示すように、破裂強度のコレクター9の高さhに対する比を設定することによって、最適な比は、すなわちベル状の曲線の頂点であるが、1.5mm〜4mmの半径R、特に、略2mm〜4mmの半径Rに対応する。なお、図4のグラフにおいて、横軸はミリメータ単位の半径Rを表し、縦軸は前述の比を表している。
【0061】
詳しくは、半径Rが1.5mm〜4mmにおいて、破裂強度とコレクターボックスの高さの比は10より大きい。
【0062】
本出願人は、コレクターボックス5の高さhが約11mmで、半径Rが略2mm〜3mmの場合の最適な対応策について言及した。
【0063】
更に、再度図2aおよび図2bを参照すると、コレクター9の側壁15はそれらの端部に、縁曲げタブ(crimping tab)21が設けられている。この縁曲げタブ21は蓋部11の外面に押しつけられるように、空洞17の内側に向けて曲がっている。
【0064】
蓋部11について言うと、これは例えば、コレクター9と略同じ厚さを有している。すなわちこの場合、1mm〜1.2mmの厚さを有している。
【0065】
前述のように、蓋体11はコレクター9の形状を補完する形状を有している。
【0066】
図示の実施例によれば、蓋体11も全体が略「U」字状であり、中央壁部25とこの中央壁部25の両側から延びる二つの側壁27を有する。
【0067】
中央壁部25は、コレクター9の平底と同じように実質上平らでもよい。
【0068】
図示の例によれば、側壁27は、中央壁部25に対して略垂直に延びている。蓋体は、中央壁部25と側壁27の間の連結部を形成する曲面29を有してもよい。
【0069】
この曲面29は、蓋体11が空洞17内で動かないように、コレクター9の縁曲げタブ21の形状を補完する形状をなしている。
【0070】
蓋体11が、コレクター9によって区切られている空洞17内に導入できるように、蓋体11の両側壁27の外面同士を隔てる距離は、コレクター9の両側壁15の内面同士を隔てる距離と、より小さな値であるが、概略等しい。
【0071】
「外面」は、空洞17の外側に面する面を意味している。「内面」は、空洞17の内側に面する面を意味している。
【0072】
同様に、蓋体11の両曲面29の外面同士を隔てる距離は、コレクター9の両縁曲げタブ21の内面同士を隔てる距離と、より小さな値であるが、概略等しい。
【0073】
従って、コレクター9の平底を側壁15と連結する曲面が略1.5mm〜4mmの半径Rを有する平底コレクターは、スペースを節約し、かつ、破裂強度とコレクターボックス5の高さhの比を最適とすることが理解されるであろう。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4