(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060158
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】複導体単相誘導給電トラック
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20161226BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20161226BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-521588(P2014-521588)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-521304(P2014-521304A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】NZ2012000127
(87)【国際公開番号】WO2013019124
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】594158
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】504448092
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】グラント アンソニー コビック
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ラーベ
【審査官】
竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】
特表平01−501195(JP,A)
【文献】
特開2003−070188(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0303749(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/016737(WO,A1)
【文献】
特開2004−224179(JP,A)
【文献】
特開平08−168195(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0265684(US,A1)
【文献】
米国特許第06515878(US,B1)
【文献】
特開平09−312902(JP,A)
【文献】
特開2008−109317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−13/00
15/00−15/42
B60M 1/00−7/00
H01F 38/14
38/18
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
H04B 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、前記電源に電気的に接続され、互いに実質的に隣接して配置された複数のループを含む導体とを備えるIPTトラック構成であって、前記ループの隣接部分の極性が同じであるように前記導体が複数の点で重なり合い、前記電源は1つ以上のインバータを含む、IPTトラック構成。
【請求項2】
前記電源は、前記トラック構成の負荷を分散させるように配置された複数のインバータを含む、請求項1に記載のIPTトラック構成。
【請求項3】
前記インバータは互いに電気的に並列に接続された、請求項2に記載のIPTトラック構成。
【請求項4】
前記導体は単一の導体を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のIPTトラック構成。
【請求項5】
前記複数のループは実質的に同じ大きさである、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のIPTトラック構成。
【請求項6】
前記隣接部分間の距離はそれぞれのループの幅より実質的に小さい、請求項5に記載のIPTトラック構成。
【請求項7】
前記隣接部分は、前記ループの直線の辺を備える、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のIPTトラック構成。
【請求項8】
前記複数のループは少なくとも2つのループを含む、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のIPTトラック構成。
【請求項9】
前記複数のループは少なくとも3つのループを含む、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のIPTトラック構成。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のIPTトラック構成と、IPTピックアップとを含むIPTシステム。
【請求項11】
前記IPTピックアップは複数のコイルを含む、請求項10に記載のIPTシステム。
【請求項12】
前記IPTピックアップは、前記IPTトラック構成が発生する磁束のうちの空間直交する成分を受け取るように適合されている、請求項10または請求項11に記載のIPTシステム。
【請求項13】
1つのコイルが前記IPTトラック構成が発生する磁束の第1の成分を受け取るように適合され、他のコイルが前記IPTトラック構成が発生する磁束の第2の成分を受け取るように適合され、前記第1の成分と前記第2の成分とは空間直交する、請求項11に記載のIPTシステム。
【請求項14】
2つのコイルが前記第1の成分を受け取るように適合され、1つのコイルが前記第2の成分を受け取るように適合されている、請求項13に記載のIPTシステム。
【請求項15】
前記コイルは互いにデカップリングされている、請求項11に記載のIPTシステム。
【請求項16】
前記電源は、前記トラック構成上の負荷を分散させるように配置された複数のインバータを含む、請求項10乃至請求項15のいずれか一項に記載のIPTシステム。
【請求項17】
前記導体は単一の導体を含み、前記ループの形成において前記導体が複数の点で重なり合う、請求項10乃至請求項16のいずれか一項に記載のIPTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導給電(IPT)システムに関し、特に改良型トラックおよび該トラックと共に使用するピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
IPTは、変動する磁界を使用して、物理的接触なしに空隙を横断して電力を負荷に結合する。空隙は、導電材料の長尺閉回路などの一次導体(本明細書では一般にトラックと呼ぶ)と該トラックに付随する磁界から電力を受ける二次コイルを有する1つ以上のピックアップ装置との間に存在する。構成部品が完全に絶縁されているため、システムの性能が湿った環境または汚れた環境に影響されず、そのような条件下における安全性に関わるリスクもない。IPTは、路面電車や電気バスで使用されるような従来のプラグまたはブラシおよびバー接触式の方法とは異なり、信頼性が高く保守が不要である。IPTは現在、マテリアルハンドリングやIC製造などの多くの産業用途で使用されている。このようなシステムには1W〜200kWの様々な能力のものがあり、ロボット、無人搬送車(AGV)、電子装置、レクリエーション用乗客運搬車、バス、電気自動車(EV)への電力供給と充電の両方に使用可能である。IPTシステムは、トラック上の任意の場所に配置可能な1つ以上の可動負荷からなる分散型システムと、定められた場所での電力伝達のみが可能な集中型システムの2種類に分類される。
【0003】
分散型システムは、路上給電EV(PREV)用途に特に適しているが、現在のところ実用大型RPEVシステムは実現不可能である。これは、無誘導EVが必要とする水平許容値(約700mm)と最低地上高(150〜200mm)が大きいことによる。本明細書に記載のトラックトポロジは、システムコストを最小限に抑えつつ、水平許容値の増大を可能にすることにより、従来の設計を大幅に改善する。本明細書では、主としてAGVの環境での本発明の適用について述べるが、本発明は他の多くのIPTシステム用途にも適用可能であることが、当業者ならわかるであろう。たとえば、本明細書で開示するトラック構成に関連して強磁性材料(フェライトなど)に言及する場合、本発明はEVおよびRPEV用のIPTシステムにも適用可能である。
【0004】
EVは、化石燃料への依存、温室効果ガスの排出および汚染物質の排出の削減に寄与する。したがって、EVの導入は1990年代から増加しているが、これまで市場への浸透度は低かった。これは、EVの費用対効果が従来型車両に及ばないことが理由である。現在のEV市場は、内燃機関からエネルギーを得るハイブリッド車が主流である。しかし、最近、プラグインEV(PHEV)が導入され、送電線からのエネルギーによってガソリン消費を抑えることを可能にしている。EVの普及には、バッテリ寿命およびバッテリコスト、さらに送電線接続において大幅な改善が要求される。後者により、毎走行後に機会を捉えて充電することが可能になり、一日の終わりに長時間かけて充電しなくても済む。その結果、充電深度が最小限に抑えられることによりバッテリの消耗が大幅に低減されるとともに、より小型化されたバッテリで済むため、EVのコストが削減される。EVの費用対効果をガソリン車より高める好適な解決策は、EVに路面給電および充電することである。なお、州間高速道路での走行が総車道距離に占める割合は1%であるが、総車両通行距離の22%を占めるため、そのような動的充電システムのためのインフラは比較的小規模とすることができることに注目すべきである。走行距離の50%が動的充電システムに接続された場合のEVの費用対効果は従来型車両と同程度となり、しかもガソリン費が上積みされない。
【0005】
IPTシステムは、3つの主要構成要素を備える。これを車道での使用例に基づく
図1の単相システムで示す。電源は、誘導一次導体路、すなわちトラックにおいて、電流(I
1)を駆動する正弦波電流(通常、10〜40kHz周波数帯域内)を発生する。
図1には図示しないが、トラックはLCL回路網の一部を含み(ただしこれには限定されない)、トラックインダクタンスL
1は回路網の最終インダクタンス「L」を含む。並列補償コンデンサC
1がトラック電流I
1を共振させ、それによってトラック近傍における磁界強度を高める。これにより、所与の負荷に対する電源の定格VAが抑えられる。トラックとピックアップ(PU)とは疎結合変圧器として機能し、比較的大きな空隙を介した電力伝達を可能にする。IPT PUインダクタンスL
2は、C
2と共振するように同調される。これにより、比較的大きなPU漏洩インダクタンスが補償される。C
2両端間の電圧は整流され、スイッチモード制御器が共振タンクを所定のQ値で動作可能にし、電力伝達を促進し、使用に適した直流出力とする。IPTシステムの電力出力(P
out)は、PUの開回路電圧(V
oc)および短絡回路電流(I
sc)とQ値によって式(1)に示すように定量化される。
【0006】
【数1】
【0007】
P
suは非補償電力、ωはトラック電流I
1の角周波数、MはトラックとPUとの間の相互インダクタンスである。式(1)に示すように、出力電力は電源(ωI
12)、磁気結合(M
2/L
2)およびPU制御器(Q)に依存する。出力電力およびトラックとPUとの分離とを高めることがきわめて望ましいが、効率はシステムの動作周波数(スイッチング損失)と定格電流(銅損)によって制約される。システムを高いQ値で動作可能にすれば、電力伝達が促進されるが、実用用途においては、構成部品の各定格VAと許容値により、システムは通常4と6の間で動作するように設計される。これらの制約のため、システム性能の最大の向上は優れた磁気設計によって得られる。
【0008】
水平許容値を向上させるために、これまでに
図2(a)に示すような三相トラックトポロジが提案されている。車両はトラックTxの長さ方向に走行する。これをx軸と呼ぶ。このシステムは、電圧型インバータを誘導トラックの駆動に適した電流源に変換するインダクタ−コンデンサ−インダクタ(LCL)インピーダンス変換回路網を使用する。絶縁変圧器の漏洩インダクタンスを最初のインダクタとして使用し、トラックが最後のインダクタを構成し、それにより実効電力のみが変圧器を流れる。大きな無効電流(
図1のI
1)がトラック内およびコンデンサ内のみを循環する。デルタ−デルタ構成で接続された3つの個別の絶縁変圧器を各相に使用しているが、変圧器の出力端子は各トラックループの始点と回帰点とに直接接続されており、その結果、6線トラックとなっていた。PUが電源に対する順方向電流と戻り電流の両方にさらされているため、このトラックトポロジを本明細書では「双極」と呼ぶ。このトラック位相の重なり性質により、隣接する各ワイヤにおいて電流が60度だけ異なり、これにより、かご形誘導電動機における巻線と同様にトラックの幅(Ty)にわたって進行磁界が生じる。この移動磁界により、単純な単一コイルPUによる広くて均一な電力プロファイルが形成される。
【0009】
しかし、重なりトラックを備える結果として、位相間に相互インダクタンスが存在し、それにより、各トラック導体とPUとの間の電力結合と同様に、1つのトラック位相からのエネルギーが隣接する位相に結合する。このクロス結合により、インバータにエネルギーが供給されるときに、インバータ内の異なるレグが大電流および直流バス電圧サージを発生させる。この相互インダクタンスの問題を解決するために2つの手法が示されている。第1に、トラックループ間の重なり面積を変えて、相互インダクタンスを低減することができる。しかし、これによって、トラック間の間隔が不均等になり、トラックの幅方向の電力プロファイルの平滑さに影響を及ぼす。第2に、磁束相殺手法を用いることができる。この手法では、トラックの始点に変圧器結合を導入して、幾何形状によりトラック間の長さ方向の結合とは位相がずれた位相間結合を生じさせる。これは、始点において環状コアを介してトラックを適切にループさせることによって実現される。第1の技法は、位相間相互インダクタンスの影響を最小限にするが、結合されたPUの性能が低下する。一方、第2の技法は、性能は良好であるが、磁気構成部品を余分に必要とするために費用がかさむ。
【0010】
したがって、横距離が向上するとともに、改善された(たとえばより平滑化された)電力プロファイルを有するトラックを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の問題のうちの1つ以上の問題を少なくとも改善する構成を提供するか、または少なくとも有用な選択肢を公衆に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は一般に、電源と、前記電源に電気的に接続され、互いに実質的に隣接して配置された複数のループを含む導体手段とを含むIPTトラック構成であって、前記ループの隣接部分の極性が同じであり、前記電源は1つ以上のインバータを含むIPTトラック構成を提供する。
【0013】
好ましくは、前記インバータは前記トラック構成上の負荷を分散させる。
【0014】
好ましくは、前記インバータは互いに電気的に並列に接続されている。
【0015】
好ましくは、前記導体手段は単一の導体を含み、前記ループの形成において前記導体が複数の点において重なり合う。
【0016】
好ましくは、隣接するループ間の距離は前記ループの幅よりも実質的に小さい。
【0017】
好ましくは、前記複数のループは少なくとも2つのループを含む。
【0018】
他の実施形態では、前記複数のループは少なくとも3つのループを含む。
【0019】
第2の態様では、本発明は一般には、電源と、前記電源に電気的に接続され、互いに実質的に隣接して配置された複数のループを形成する単一の導体を含む導体手段とを含むIPTトラック構成であって、前記ループの隣接部分の極性が同じであるIPTトラック構成を提供する。
【0020】
好ましくは、前記電源はインバータを含む。
【0021】
好ましくは、隣接するループ間の距離は前記ループの幅より実質的に小さい。
【0022】
好ましくは、前記複数のループは少なくとも2つのループを含む。
【0023】
他の実施形態では、前記複数のループは少なくとも3つのループを含む。
【0024】
第3の態様では、本発明は一般には、第1または第2の態様に係るIPTトラック構成と共に使用されるIPTピックアップであって、前記IPTピックアップは、前記IPTトラック構成が発生する磁束の水平成分と垂直成分の両方を受け取るIPTピックアップを提供する。
【0025】
好ましくは、前記IPTピックアップは、直交ピックアップと、DDPパッドと、DDPQパッドと、BPRPパッドとのうちの1つ以上を含む。
【0026】
他の態様では、本発明は一般には、電源と、前記電源に電気的に接続され、互いに実質的に隣接して配置された複数のループを含む導体手段とを有し、前記ループの隣接部分の極性が同じであるIPTトラック構成と、IPTピックアップとを含むIPTシステムを提供する。
【0027】
好ましくは、前記ピックアップは複数のコイルを含む。
【0028】
好ましくは、前記ピックアップは、前記IPTトラック構成が発生する磁束のうちの空間直交する成分を受け取る。
【0029】
好ましくは、前記電源は、電気的に並列接続された複数のインバータを含む。
【0030】
好ましくは、前記導体手段は、前記複数のループを形成する単一の導体を含む。
【0031】
好ましくは、前記ループの形成において、前記導体は複数の点において重なり合う。
【0032】
好ましくは、隣接するループ間の距離は前記ループの幅より実質的に小さい。
【0033】
好ましくは、前記複数のループは少なくとも2つのループを含む。
【0034】
他の実施形態では、前記複数のループは少なくとも3つのループを含む。
【0035】
好ましくは、前記IPTピックアップは、直交ピックアップと、DDPパッドと、DDPQパッドと、BPRPパッドとのうちの1つ以上を含む。
【0036】
他の態様では、本発明は、導電性材料の複数の長尺ループを含むIPTシステムトラック構成であって、前記ループの隣接部分における極性が同じであり、ループがほぼ
図12または
図20に示すような断面を有するIPTシステムトラック構成を提供する。
【0037】
他の態様では、本発明は一般に、実質的に本明細書に記載のようなIPTトラック構成、IPTピックアップおよび/またはIPTシステムを提供する。
【0038】
本発明の他の各態様は、以下の説明を読めば明らかになろう。
【0039】
添付図面を参照しながら、例示のみを目的として本発明の実施形態について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】単相トラックシステム用のIPTシステム構成要素の公知の構成を示す図である。
【
図2】三相IPTトラックトポロジを示す図であり、(a)は双極トポロジ、(b)は単極トポロジを示す図である。
【
図4】
図3におけるトラックの極性を示す、線4−4’断面図である。
【
図4A】
図3のトラックを実施するための、インバータとLCL回路網の構成を示す図である。
【
図6】
図5のトラックの極性を示す、線6−6’断面図である。
【
図8】
図7のトラックの極性を示す、線8−8’断面図である。
【
図8A】
図7の反復単相トラック用のインバータとLCL回路網の構成を示す図である。
【
図9A】二相双極トラック用の構成(各インバータは位相が90度ずれて同期されている)を各インバータおよびLCL回路網用の構成と共に示す図である。
【
図10】
図9のトラックの極性を示す、線10−10’断面図である。
【
図11】2つの導体を有する複導体反復単相トラックを示す図である。
【
図11A】
図11の複導体反復単相トラック用のインバータとLCL回路網の構成を示す図である。
【
図12】
図11のトラックの極性を示す、12−12’断面図である。
【
図13】
図3に示すトラックの(a)開回路電圧(V
oc)、(b)短絡回路電流(I
sc)および(c)非補償電力(S
u)を示す一組のグラフである。
【
図14】
図5に示すトラックの(a)開回路電圧(V
oc)、(b)短絡回路電流(I
sc)および(c)非補償電力(S
u)を示す一組のグラフである。
【
図15】
図7に示すトラックの(a)開回路電圧(V
oc)、(b)短絡回路電流(I
sc)および(c)非補償電力(S
u)を示す一組のグラフである。
【
図16】
図9に示すトラックの(a)開回路電圧(V
oc)、(b)短絡回路電流(I
sc)および(c)非補償電力(S
u)を示す一組のグラフである。
【
図17】
図11に示すトラックの(a)開回路電圧(V
oc)、(b)短絡回路電流(I
sc)および(c)非補償電力(S
u)を示す一組のグラフである。
【
図18A】
図7に示すような直列同調トラックの(a)P合計、(b)VAR合計および(c)S合計を示す一組のグラフである。
【
図18B】
図7に示すような並列同調トラックの(a)P合計、(b)VAR合計および(c)S合計を示す一組のグラフである。
【
図18C】
図11の4線複導体反復単相トラックと、
図9に示すような0.29の重なりを有する二相双極トラックとの比較を示すグラフである。
【
図18D】120mmのトラック間隔と0.29の重なり(すなわち
図9に示すトラックに対応するトラック構成)を有する二相双極トラックの上方において、2キロワットで動作する並列同調直交ピックアップ(フェライト作用を備える)に対し、各インバータによって供給される(a)実効電力、(b)無効電力、および(c)合計電力を示す一組のグラフである。
【
図18E】120mmのトラック間隔(複導体間で20mm)を有する4線複導体反復単相トラック、すなわち
図11に示すトラックに対応するトラックの上方において、2キロワットで動作する並列同調直交ピックアップ(フェライト作用を備える)に対し、各インバータによって供給される(a)実効電力、(b)無効電力、および(c)合計電力を示す一組のグラフである。
【
図19】本発明の一実施形態に係るトラックを示す図である。
【
図19A】
図19に示すトラック用の、3つのインバータおよびそれに付随するLCL回路網の構成を示す図である。
【
図19B】単相複導体反復トラックの他の構成を、インバータおよびLCL回路網と共に示す図である。
【
図20】
図19に示すトラックの極性を示す、線20−20’断面図である。
【
図23】磁束受信器パッドの側面図および平面図である。
【
図24】直交コイルを含む
図23のパッドの側面図および正面図である。
【
図25】磁束受信器パッドの他の形態の側面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書で使用する「トラック」との用語は、IPTトラック構成の一次回路を指す。ただしこれは、本発明を車両などでの使用に限定するものと解釈すべきではない。
【0042】
〔トラック構成〕
最初に
図19を参照すると、電源208に接続された導体202を含むトラック200が示されている。導体202は、略面内において3つのループを形成するように配置されるが、本発明から逸脱することなく、設けるループの数はこれより多くても少なくてもよいことが、当業者ならわかるであろう。ループは、2つの異なる点204、206で重なり合う導体202によって形成され、3つのループのそれぞれが略同じ形状および大きさであり、ループどうしが略隣接するようになっている。隣接する側どうしの距離が狭められ、ゼロであってもよく、またはループの幅に対して相対的に小さい他の値であってもよい。
【0043】
安全な動作のために、導体202は、定格トラック電流に対して十分な断面積を有する必要があり、その結果としてのケーブルの直径によって隣接するケーブル間の間隔が制約される。また、ケーブルの絶縁および支持材によって、ケーブルの太さがさらに増すことになる。たとえば、125Aのトラック電流の場合、直径約15mmのリッツケーブルを使用することができる。その結果、隣接ケーブル間に用いられる間隔は20mmとなる。ただし、適切な導体および隣接する導体間の適切な間隔の選定は、当業者には明らかであり、したがってここではこれ以上詳述する必要はない。
【0044】
本実施形態では、ループは略、丸みを帯びた矩形のような形状であり、略長尺状の直線の2辺と略丸みを帯びた2辺とを有し、ループは互いに直線の辺に沿って隣接している。点204、206は、丸みを帯びた辺上の、直線の辺寄りにある。
図19に示すトラックレイアウトは、模式例であることはわかるであろう。他の構成を使用することもできる。
【0045】
電源208は、LCL回路網を使用してトラック200の総電力を供給する定格の単一のインバータを備えることができる。
【0046】
たとえば他の諸実施形態(および
図19に示すような実施形態)では、電源208は、互いに電気的に並列接続された複数のインバータを備えることができる。この場合も、
図19Aに示すようにLCL回路網を使用することができる。好ましくは、インバータは互いに同じものであり、互いに同相となるように同期される。インバータは、典型的には共通主電源から電力供給される。図のように、各インバータに個別の整流器を備え、必要なら整流器どうしを接続して共通直流バスを形成してもよい。あるいは、単一の整流器を使用して共通直流バスを設け、この直流バスがインバータに電力供給してもよい。
【0047】
トラック200の極性を、
図19の8−8’断面である
図8に示す。具体的には、ループの隣接部分が同じ極性を有することがわかる。これにより、ヌルスポットや低電力帯など、隣接部分における磁束の逆相によって起こる不都合が回避または低減される。
【0048】
トラック200の有利な属性を示すために、公知のトラック構成をいくつかシミュレートし、試験した。これらの構成と結果について以下に詳述する。
【0049】
〔他の構成〕
図3に、三相双極トラックを示す。このトラック100は、3つの延長ループ102A、102B、102Cからなり、6本の導体を含み、各ループはその遠端付近で他の2つのループと交差し、基端においても交差している。ループ102A、102B、102Cは、それぞれ独立したインバータ104A、104B、104Cによって駆動され、周波数と大きさは等しいが電気的に位相が互いに120度だけ異なる電流を伝達する。整流器を使用して共通直流バスを設けてもよい。3つのインバータは、位相がずれている以外は等しく、
図4Aに示すように3相すべてがそれぞれLCL回路網と同調され、LCL回路網は当該位相の負荷とは独立したトラック定電流を供給する。これは、ピックアップの位置がトラックの幅の両端間で変化するにつれ総負荷のうちの各位相にかかる負荷部分が変化するため、望ましい。各位相における電流は、典型的には等しく、電源および動作周波数によって少なくとも公称的には一定に保たれる。状況によっては、たとえば部品公差を考慮して多少調整を加えるために、位相を個別に制御してもよい。
【0050】
図4にトラック100の各導体の極性を、
図3の線4−4’断面図で示す。具体的には、符号108a、108bが第1の相にある導体102に対応し、符号110a、110bが第2の相にある導体104に対応し、符号112a、112bが第3の相にある導体106に対応する。符号108a、110a、112aは同じ極性を共有し、同様に符号108b、110b、112bは同じ極性を共有する。フェーザ
図114に、異なる位相間の相対関係を示す。
【0051】
図5に、反復単相トラックを示す。
図3に示すトラック100と同様に、トラック120は3つの延長ループ122、124、126からなり、6本の導体を含む。トラックループはそれぞれ別個のインバータ128、130、132によって駆動され、周波数と大きさが等しく、互いに略同相の電流を伝達する。トラック100とは異なり、ループ122、124、126は交差しておらず、トラック間隔134によって隔てられている。トラック間隔134はループのうちの1つの幅と同じであってもよい。
【0052】
図6に、トラック120の導体の極性を、
図5の線6−6’断面図で示す。符号122a、122bは、導体122の各側に対応し、符号124a、124bと符号126a、126bおよび導体124、126についてもそれぞれ同様である。特に、それぞれループの隣接側に対応する122bおよび124aと、124bおよび126aとは同じ極性を共有していることに留意されたい。トラック200に関して上述したように、これによって、ヌルスポットや低電力帯など、隣接部分における磁束の逆相によって起こる不都合が回避または低減される。
【0053】
図7に、複導体反復単相トラックを示す。トラック140は
図5に示すトラック120と類似しているが、トラック間隔148がトラック間隔134よりも大幅に狭くなっており、実質的にゼロであってもよく、またはトラックの幅に対して小さい値であってもよい。
図8Aに示すように、トラックループはLCL回路網を使用して駆動される。
【0054】
図8に、トラック140の極性を
図7の線8−8’断面図で示す。符号142a、142bは導体142の各側に対応し、符号144a、144bと符号146a、144b、および導体144、146についてもそれぞれ同様である。
【0055】
トラック120とは異なり、トラック140のループの隣接する側の極性は同じ、すなわちそれぞれループ142、144の隣接する側に対応する142b、144a、およびループ144、146の隣接する側に対応する144b、146aは同じ極性を共有することに留意されたい。これは、狭められたトラック間隔148による相互結合を防止するためであるが、トラック140もトラック120と同様の極性を持っていてもよく、トラックの隣接部分の極性を変化させることも考えられる。
【0056】
図9に、二相双極トラックを示す。トラック160は2つの延長ループ162、164からなり、4本の導体を含み、ループは遠端で交差している。ループ162、164はそれぞれ独立したインバータ166、168によって駆動され、周波数と大きさは等しいが電気的に位相が180度だけ互いに異なる電流を伝達する。整流器を使用して共通直流バスを設けてもよい。インバータ166、168は位相がずれている以外は互いに等しく、両方の位相はLCL回路網と同調され、LCL回路網は該位相上の負荷とは独立したトラック定電流を供給する。これは、ピックアップの位置がトラックの幅の両端間で変化するにつれ総負荷のうちの各位相にかかる負荷部分が変化するため、望ましい。各位相における電流は等しく、電源および動作周波数によって一定に保たれる。位相は
図9Aに示すLCL回路網によって駆動される。
【0057】
図10に、トラック160の極性を
図10の線10−10’断面図で示す。符号170a、170bは導体162に対応し、符号172a、172bは導体164に対応する。フェーザ
図174にトラック160の各位相間の関係を示す。
図11Aに示すように、この場合もループはLCL回路網を使用して駆動される。
【0058】
トラック160と比較しやすいように、
図11に2ループ複導体反復単相トラックを示す。トラック180はトラック140とほぼ同じであるが、2つのループを形成する2本の導体182、184しかない点が異なる。
【0059】
図12に、トラック180の導体の極性を、
図11の線12−12’断面図で示す。符号182a、182bは導体182の各側に対応し、符号184a、184bは導体184の各側に対応する。
【0060】
〔比較〕
次に
図13〜
図17を参照すると、開回路電圧(V
oc)、短絡回路電流(I
sc)および非補償電力(S
u)のグラフが示されており、トラック100、120、140、160、180のそれぞれのトラックの幅方向の変動を示している。比較のため、トラック上方20mmの高さで直交ピックアップ構造(
図21、22参照)を使用した。ピックアップ構造について以下に詳述する。
【0061】
当業者には明らかであろうが、ピックアップを中心から若干ずれた位置に配置できるように、トラックの幅方向のS
uが平滑であれば有利であろう。これは、EVで使用されるピックアップに特に言えることであるが、より一般的も当てはまる。
【0062】
なお、各グラフは、
図21、22の直交ピックアップ構造が受ける磁束の異なる空間成分を示している。したがって便宜上、成分を磁界の水平成分および垂直成分と呼ぶ。各グラフにこれらの成分を別々に示すとともに、合計(すなわち最上部の線)も示す。以下を読めばわかるように、ピックアップは両方の成分を拾うことができれば有利であり、したがって、一般的に、水平出力または垂直出力ではなく合計出力について述べることにする。水平成分および垂直成分の両方を使用するピックアップが、以下に説明される。
【0063】
具体的に
図13〜15を参照すると、トラック100、140をトラック120と比べると、トラック120の最大S
uは300VA未満にとどまっているのに対し、トラック100、140は、多少横距離を犠牲にしてはいるものの、はるかに大きいS
uを有しているという点で、概ねすぐれた電力プロファイルを示している。
【0064】
この狭められた横距離は、トラック140などの単層トラックにおいて、たとえばループを追加することによって補償可能であり、それによってわずかしか複雑化しない。したがって、トラック120を用いることでトラック100または140より有利になることはほとんどないことがわかる。
【0065】
トラック100とトラック140の出力プロファイルはほぼ同様である。トラック100などの多相トラックは位相間の相互インダクタンスの補償が余分に必要なため、多くの用途では単相構成のほうが好ましい可能性がある。したがって、トラック140には顕著な諸利点がある。
【0066】
次に、
図16および
図17のグラフを参照すると、トラック180はトラック160よりも概ね優れた電力プロファイルを示し、横距離も若干より大きい。したがって、二相トラック160ではなく、単相トラック180を使用する方が明らかに有利である。
【0067】
したがって、全体的に、単相トラックは概ね電力プロファイルが優れ、S
uが向上し、幅により融通性があることがわかる。さらに、単相トラックのうちでは、トラック140およびトラック180などの複導体反復単相構成が他のトラック構成よりも一般的に好ましい。これは、4線複導体(すなわち2ループ)反復単相トラックと、0.29の重なりを有する二相双極トラックとの比較を示す
図18Cにおいて見られる。
【0068】
〔電源〕
図7に示すように、ループ142、144、146はそれぞれ別々のインバータ150、152、154に接続することができる。
【0069】
しかし、次に
図18Aを参照すると、
図18Aには直列同調ピックアップ(トラックに対する誘導負荷を反映する)の結果が、
図18Bには並列同調トラックピックアップ(トラックに対する容量性負荷を反映する)の結果が示されている。これらのトラック構成はそれぞれ3つの別個のインバータを有する。これらの図から、別個のインバータを使用することが好ましくないことがわかる。具体的には、特に横距離の両端部において、インバータ150および154は合計出力よりも大きな出力の定格とする必要があると考えられ、それによってシステムの製造コストが増加する可能性があることがわかる。さらに、単一のインバータによって各ループに給電すると、インバータのいずれか1つに障害が発生した場合、ヌルゾーンが生ずることによりシステム全体に支障をきたす可能性がある。
図18Dに、各インバータによって二相双極トラックの上方の並列同調直交ピックアップに供給される、実効電力、無効電力および合計電力を示す。
図18Eに、各インバータによって4線複導体反復単相トラックの上方の並列同調直交ピックアップに供給される実効電力、無効電力および合計電力を示す。二相トラックのVAR負荷は、1つのインバータにかかる容量性負荷と他のインバータにかかる誘導負荷が、±50mmの動作範囲にわたって±300VARに達し、きわめて望ましくないことがわかる。これと比較して、複導体反復単相トラックのVAR負荷は、トラックループ1本当たり−200VARの平滑な容量性負荷プロファイルである。4導体トラックに対し、複導体反復単相トラックが好ましいことが明らかである。
【0070】
図19に他のトラック構成を示す。トラック200は単一の導体202からなる。導体202は、3つのループを形成するように配置される(ただし、当業者には明らかなように、使用ループの数はこれより多くても少なくてもよい)。これは、導体を点204、206で重なり合わせることによって行うが、点204、206の位置は固定ではなく、導体202の任意の適切な場所とすることもできる。重なりによってトラックの高さがこの2点で必然的に増すため、トラック200は、付加上方空間を必要とする。導体の隣接部分間の距離は、前述の複導体反復単相トラックの諸利点を維持するように、より小さい値に狭めてもよい。
【0071】
導体202は、その端部で電源208に接続されている。電源208は、並列接続された複数のインバータを含むことが好ましい。これにより、万一インバータの1つに障害が発生した場合に、残りの機能しているインバータがより多くの負荷を引き受けて、システムに支障がきたすのを防ぐことができるという点で、システムの回復力が増す。
【0072】
トラック200は、トラック120と同じ電力出力を有するが、インバータが並列接続されているため、各インバータは合計負荷の一部のみを負う定格とすれば済む。たとえば、(たとえば
図19に示すように)インバータが3個ある場合、各インバータは合計負荷の約3分の1の負荷のみを負うような定格とすれば済む。これにより、より低定格の構成部品の使用が可能になることで、システムの製造コストが削減される。このように、1つ以上のインバータを使用して(ループの形成に単導体と多導体のいずれを用いるかにかかわらず)、反復単相トラック構成を形成するループ間で負荷を分散することができる。
【0073】
電源208は単一インバータのみとすることもでき、その場合、負荷全体を負うような定格とすればよく、それによってトラック120の問題が回避される。2つのループからなる類似のトラックを、
図19Bに示す。
【0074】
〔ピックアップ〕
1つの成分のみを利用する標準的ピックアップとは異なり、前述のようにIPTトラックが発生する空間直交する磁束の両方の成分(便宜上、本明細書では磁束の水平成分および垂直成分と呼ぶ)を利用するように適合されたピックアップを用いれば有利である。
【0075】
このようなピックアップの最も単純なものは直交ピックアップと呼ばれ、ピックアップコアに2本のコイルを巻き付けることで実現される。
【0076】
直交巻き線を実現する方法は2通りある。第1の方法は、
図21に示すように、第1のコイルと物理的に直交させて第2のコイルを巻く方法であり、これには平面Eコア5を使用する必要がある。第2の方法は、
図22に示すように、標準平面コア6の各端部に1つずつ、2本の個別のコイルを巻く方法である。これらのコイルを180度位相をずらして直列に接続すれば、垂直方向に向いた磁束の捕捉も可能になる。いずれのトポロジを選択するかにかかわらず、直交コイルはそれぞれ、個別に同調させることができ、その出力を合成し、単一のスイッチモード制御器によって制御することができる。
【0077】
図23を参照すると、以前にボイズ、コーヴィック、ホアンおよびブディア(Boys、Covic、Huang、Budhia)によって以前に開示された、車両用途に適した優れた特性を有する磁束パッド構造が示されている。
図23の構造は、国際公開第2010/090539A1に公開されている。便宜上、本明細書ではこの全体構造をDDPパッド呼ぶ。
【0078】
図23に示すDDPパッドは大まかに、コア54に磁気的に結びつけられ、コア54上に載置された2つの略同一平面上にあるコイル52、53を含む。パッドは、実際には、コイルが一次トラックに対向するように裏返しにされる。
図23からわかるように、コア54は、互いに並列に配置され、互いに離隔されたフェライト細片またはフェライト棒55などの、磁気透過性材料の複数の個別の条材からなる。このパッド構造は、上にコアが配置されたスペーサ56と、スペーサの下方にあるプレート57とを含むことができる。実施形態によっては、平面コイル52、53の他方の表面にカバー58を設けることもできる。パッドの周縁部にパディング59を設けてもよい。図からわかるように、コイル52、53はそれぞれ極領域60および61を画定する。
図23に示すようなこのDDPパッド構造を、本明細書に記載のトラックトポロジ用のPUで使用可能な磁束受信器として使用することができる。
【0079】
次に、
図24を参照すると、
図23のDDP構造が示されているが、直交コイル62をさらに含む(本明細書ではDDPQパッドと呼ぶ)。この構造も国際公開第2010/090539A1に記載されている。直交コイルは、適切なインバータによって付勢されたときに
図23のDDPパッドなどの磁束発生器を基準にした
図24に示す構造の横方向の動きがある場合の電力伝達プロファイルを拡張する。直交コイルにより、受信器パッドが捕捉する磁界の「垂直」成分から電力を抽出することが可能になると同時に、他のコイル52、53により、捕捉された磁束の「水平」成分からの電力抽出が容易になる。したがって、
図24の構造は磁束受信器として適しており、これを本明細書に記載のトラックトポロジ用のPUで使用することができる。
【0080】
次に
図25を参照すると、他の磁束受信器構造が示されている。これを本明細書では双極受信器パッドまたはBPRPと呼ぶ。このBPRPパッドは、
図23および
図24を参照して前述したDDPと同様の構造を有する。一実施形態では、BPRPパッドは、下から上の順に、アルミニウムプレート57、誘電体スペーサ56、4列のフェライト棒55(本明細書ではフェライトと呼ぶ)を含むコア54、横方向に延びた、2つの平坦な、略同一平面上にあるが重なり合い、理論上は「矩形」形状のコイル52、53(実際にはこれらはリッツ線が巻きやすいように、より楕円である)、および誘電体カバー58からなる。コア54は、遮蔽体として機能し、それによってパッドの最上部を介してコア54により理論上はすべての磁束が生成される。プレート57は、単に、a)特定の環境でコア4上方に存在する場合がある小さな漂遊磁界またはスプリアス磁界を除去し、b)構造強度を増す働きをする。
【0081】
BPRPの磁気構造は、一次トラックにおいて2つのコイル52、53間に相互結合が実質的に起こらないように設計される。これにより、もし発生すればコイルの電力出力を妨害することになるコイル相互の電圧結合を起こさずに、コイルを任意の大きさまたは位相で独立して同調させることができる。各コイルは、他方のコイルの磁束捕捉および電力伝達に影響を及ぼすことなく、独立して同調、調整可能である。したがって、BPRPは、磁束受信器として適しており、本明細書に記載のトラックトポロジ用のPUにおいて使用することができる。
【0082】
図23〜25を参照しながら前述したピックアップ構造は、強磁性材料の細片を使用するが、強磁性材料の量および構成は、必要な用途に応じて大きく変わることがあることがわかるであろう。たとえば、実施形態によっては、フェライトを設けなくてもよく、また他の実施形態では全面シートとすることもできる。
【0083】
本明細書では、「含む」、「備える」などの語は、文脈により別様の解釈が明確に必要でない限り、排他的または網羅的な意味ではなく包含的な意味、すなわち、「〜を含むがこれに限定されない」という意味で解釈すべきものである。
【0084】
上記および下記で引用するすべての出願、特許、および公報の開示は、そうした引用が行われる場合には、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
本明細書で従来技術に言及している場合、そのような言及は、当該従来技術が世界のいかなる国においても当技術分野で共通の一般的知識の一部をなすことを認めるものではなく、またいかなる形式においてもそのように示唆するものと解釈すべきではない。
【0086】
本発明は、本願の本明細書で言及または示唆する部分、要素および特徴、個別または集合的に該部分、要素または特徴の2つ以上のいずれかの組み合わせ、またはすべての組み合わせに存在すると広く言うことができる。
【0087】
以上の説明では、完全体またはその公知の均等物を有する構成要素について言及したが、これらの完全体は個別に記載されたかのように本明細書に組み込まれる。
【0088】
本明細書に記載の現在のところ好ましい実施形態に加えられる様々な変更および改変は、当業者にとって明らかであることに留意されたい。そのような変更および改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、また付随する利点を損なうことなく行うことができる。したがって、そのような変更および改変は、本発明の範囲に含まれるものと意図される。